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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】圧縮機、空調器及び圧縮機の組立て方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20220308BHJP
   F04C 28/18 20060101ALI20220308BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F04B49/06 341K
F04C28/18
F04C18/356 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019571581
(86)(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 CN2017118327
(87)【国際公開番号】W WO2019029094
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】201710684426.7
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516074621
【氏名又は名称】グリーン リフリッジレイション エクィップメント エンジニアリング リサーチ センター オブ ズーハイ グリー シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Green Refrigeration Equipment Engineering Research Center of Zhuhai Gree Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.789, Jinji West Road, Qianshan, Zhuhai, Guangdong 519070, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】董 明珠
(72)【発明者】
【氏名】黄 輝
(72)【発明者】
【氏名】胡 余生
(72)【発明者】
【氏名】魏 会軍
(72)【発明者】
【氏名】胡 艶軍
(72)【発明者】
【氏名】楊 欧翔
(72)【発明者】
【氏名】闕 沛禎
(72)【発明者】
【氏名】▲ジァイ▼ 元彬
(72)【発明者】
【氏名】向 柳
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/101537(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104251207(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106567831(CN,A)
【文献】特開2008-133820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04C 28/18
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を有する筐体(10)と、
前記筐体(10)内に設けられ、第1シリンダ(20)を含み、第1排気通路を有し、前記第1排気通路の第1端が前記第1シリンダ(20)と連通し、前記第1排気通路の第2端が前記収容室と連通している第1シリンダ組立体と、
前記筐体(10)内に設けられ、前記第1シリンダ(20)と隣接して設けられた第2シリンダ(30)を含み、前記第1排気通路に対して相対的に独立して設けられた第2排気通路を有し、前記第2排気通路の第1端が前記第2シリンダ(30)と接続され、前記第2排気通路の第2端が前記収容室と連通している第2シリンダ組立体とを備え、
前記第1シリンダ(20)が作動状態にあるときには、前記第2シリンダ(30)は作動状態又はアイドル状態にあり、
前記第2シリンダ(30)は摺動溝(31)と給気通路(32)とを有し、
前記第2シリンダ組立体は摺動子(34)をさらに含み、摺動子(34)は前記摺動溝(31)内に設けられ、前記第2シリンダ(30)の外周面に近い端と前記摺動溝(31)の内壁との間に可変容量制御室が形成され、前記給気通路(32)の第1端が前記可変容量制御室と連通し、前記給気通路(32)の第2端が高圧冷媒又は低圧冷媒を取り込むためのものであり、
前記第2シリンダ組立体はロックピン(33)をさらに含み、ロックピン(33)は前記第2シリンダ(30)と隣接して設けられ、前記摺動子(34)の一方側に位置し、前記摺動子(34)をロックするロック位置及び前記摺動子(34)を前記ロック位置から解放するアンロック位置を有し、前記摺動子(34)が前記ロック位置にあるときには、前記第2シリンダ(30)はアイドル状態にあり、前記摺動子(34)が前記アンロック位置にあるときには、前記第2シリンダ(30)は作動状態にあり、
前記第2シリンダ組立体は第2吸気通路(35)をさらに有し、前記給気通路(32)は前記第2吸気通路(35)に対して相対的に独立して設けられ、前記給気通路(32)に高圧冷媒が取り込まれる場合、前記ロックピン(33)は前記アンロック位置にあり、前記給気通路(32)に低圧冷媒が取り込まれる場合、前記ロックピン(33)は前記ロック位置にあり、
前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)は同軸に設けられ、
前記第2シリンダ組立体は、前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)との間に位置する仕切板(40)をさらに含み、
前記仕切板(40)には前記第2シリンダ(30)にて圧縮された冷媒を格納するための収容キャビティが設けられ、
前記仕切板(40)は、
第1環状凹溝が設けられている第1仕切板(41)と、
前記第1仕切板(41)の下に位置し、前記第1仕切板(41)に対向する表面に第2環状凹溝が設けられ、前記第1環状凹溝と前記第2環状凹溝とにより前記収容キャビティを形成するように前記第1仕切板(41)と対向して設けられ、第1通路が設けられ、前記第1通路の第1端が前記収容キャビティと連通し、前記第1通路の第2端が前記第2シリンダ(30)と連通している第2仕切板(42)とを含み、
前記第2排気通路は、前記第1仕切板(41)及び/又は前記第2仕切板(42)に設けられた第2通路を含み、前記第2通路の一端が前記収容キャビティと連通し、前記第2通路の他端が前記収容室と連通し、前記第2シリンダ(30)から排出される冷媒は、前記第1通路を介して前記収容キャビティに入り、その後前記第2通路を介して前記収容室に排出され、
前記第2排気通路は第3通路をさらに含み、
前記第2シリンダ組立体は下フランジ(51)をさらに含み、下フランジ(51)は前記第2シリンダ(30)の下端面と接続され、前記第3通路が設けられ、前記第3通路の第1端が前記第2シリンダ(30)と連通し、前記第3通路の第2端が前記収容室と連通し、前記ロックピン(33)が前記下フランジ(51)内に設けられ、
前記第1通路の流体通過面積と前記第3通路の流体通過面積は同一であることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記第1シリンダ組立体は上フランジ(52)をさらに含み、上フランジ(52)は前記第1シリンダ(20)の上端面と接続され、前記第1排気通路が設けられ、前記第1排気通路の第1端が前記第1シリンダ(20)と連通し、前記第1排気通路の第2端が前記収容室と連通し、前記第1通路の最小流体通過面積と前記第3通路の最小流体通過面積との和が前記第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きいか等しいことを特徴とする、請求項に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)との容積比をQとすると、0.3<Q<1又は0.3<Q≦0.7又は0.5≦Q≦0.7であることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記第1シリンダ(20)は第1吸気通路(22)を有し、前記第2シリンダ(30)は第2吸気通路(35)を有し、前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)との容積比をQとし、0.3<Q≦0.7の場合、前記第2吸気通路(35)の最小流体通過面積が前記第1吸気通路(22)の最小流体通過面積よりも大きく、前記第2排気通路の最小流体通過面積と前記第3通路の最小流体通過面積との和が前記第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きくなることを特徴とする、請求項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)との容積比をQとし、
前記第1シリンダ(20)の内径をR1、前記第1シリンダ(20)の高さをH1、前記第2シリンダ(30)の内径をR2、前記第2シリンダ(30)の高さをH2とすると、
0.3<Q<0.7の場合、R1<R2,H1<H2となり、
0.7≦Q<1の場合、R1=R2,H1<H2となることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第1シリンダ(20)内に設けられた第1ローラ(61)と、
前記第2シリンダ(30)内に設けられた第2ローラ(62)と、
前記第1シリンダ(20)、前記仕切板(40)及び前記第2シリンダ(30)を順に貫通して前記第1ローラ(61)と前記第2ローラ(62)に接続されるシャフト(63)と、をさらに備え、
前記第1ローラ(61)の内径をr1、前記第2ローラ(62)の内径をr2、前記仕切板(40)の内径をr3、前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)との容積比をQとすると、
0.3<Q<0.7の場合、r1<r3<r2となり、
0.7≦Q<1の場合、r1=r2<r3となることを特徴とする、請求項に記載の圧縮機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の圧縮機を備えることを特徴とする空調器。
【請求項8】
前記第1シリンダ(20)と前記第2シリンダ(30)が同時に作動する場合、前記圧縮機の運転周波数をf1とすると、10HZ<f1<120HZであり、
前記第2シリンダ(30)がアイドル状態にある場合、前記圧縮機の運転周波数をf2とすると、10HZ<f2<70HZであることを特徴とする、請求項に記載の空調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機器の技術分野に関し、具体的には、圧縮機、空調器及び圧縮機の組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、家庭用マルチスプリット型空調システムは、1台の室外機と複数台の室内機とから構成され、複数の室内の温度を個別に調節可能なものであった。個別制御可能で、省エネルギ且つ快適性が高いという特徴がある。実際の使用においては、室内の総冷熱需要は、大部分の時間ではシステムの定格出力の20%~40%のみを占め、特に室内機を一台のみを運転させる時には、空調システムの最小冷熱出力が室内の冷熱需要より大きくなることで、圧縮機が長期間に低周波数で運転していた。あるいは、頻繁に停止と起動の間で切り替えられることにより、空調システムの圧縮機が低周波数で運転することになり、空調システムのエネルギ効率の低下を招いていた。従来技術による圧縮機によれば、圧縮機が頻繁に停止したり起動したりしやすく、室内の温度変動が大きくなってユーザ体験が低下するほか、圧縮機のエネルギ消費が増加してしまうという問題も生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は主として、従来技術による圧縮機が頻繁に停止したり起動したりするという課題を解決するために、圧縮機、空調器及び圧縮機の組立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、収容室を有する筐体と、筐体内に設けられ、第1シリンダを含み、第1排気通路を有し、第1排気通路の第1端が第1シリンダと連通し、第1排気通路の第2端が収容室と連通している第1シリンダ組立体と、筐体内に設けられ、第1シリンダと隣接して設けられた第2シリンダを含み、第1排気通路に対して相対的に独立して設けられた第2排気通路を有し、第2排気通路の第1端が第2シリンダと接続され、第2排気通路の第2端が収容室と連通している第2シリンダ組立体とを備え、第1シリンダが作動状態にあるときには、第2シリンダは作動状態又はアイドル状態にある圧縮機を提供している。
【0005】
さらには、第2シリンダは摺動溝と給気通路とを有し、第2シリンダ組立体は摺動子をさらに含み、摺動子は摺動溝内に設けられ、第2シリンダの外周面に近い端と摺動溝の内壁との間に可変容量制御室が形成され、給気通路の第1端が可変容量制御室と連通し、給気通路の第2端が高圧冷媒又は低圧冷媒を取り込むためのものである。
【0006】
さらには、第2シリンダ組立体はロックピンをさらに含み、ロックピンは第2シリンダと隣接して設けられ、摺動子の一方側に位置し、摺動子をロックするロック位置及び摺動子をロック位置から解放するアンロック位置を有し、摺動子がロック位置にあるときには、第2シリンダはアイドル状態にあり、摺動子がアンロック位置にあるときには、第2シリンダは作動状態にある。
【0007】
さらには、第2シリンダ組立体は第2吸気通路をさらに有し、給気通路は第2吸気通路に対して相対的に独立して設けられ、給気通路に高圧冷媒が取り込まれる場合、ロックピンはアンロック位置にあり、給気通路に低圧冷媒が取り込まれる場合、ロックピンはロック位置にある。
【0008】
さらには、第1シリンダと第2シリンダは同軸に設けられ、第2シリンダ組立体は、第1シリンダと第2シリンダとの間に位置する仕切板をさらに含む。
【0009】
さらには、仕切板には第2シリンダにて圧縮された冷媒を格納するための収容キャビティが設けられている。
【0010】
さらには、仕切板は、第1環状凹溝が設けられた第1仕切板と、第1仕切板の下に位置し、第1仕切板に対向する表面に第2環状凹溝が設けられ、第1環状凹溝と第2環状凹溝とにより収容キャビティを形成するように第1仕切板と対向して設けられ、第1通路が設けられ、第1通路の第1端が収容キャビティと連通し、第1通路の第2端が第2シリンダと連通している第2仕切板とを含む。
【0011】
さらには、第1通路内には閉位置と開位置とを有する排気弁が設けられ、排気弁が閉位置にあるときには、第2シリンダと収容キャビティが切断され、排気弁が開位置にあるときには、第2シリンダと収容キャビティが連通している。
【0012】
さらには、第2排気通路は、第1仕切板及び/又は第2仕切板に設けられた第2通路を含み、第2通路の一端が収容キャビティと連通し、第2通路の他端が収容室と連通し、第2シリンダから排出される冷媒は、第1通路を介して収容キャビティに入り、その後第2通路を介して収容室に排出される。
【0013】
さらには、第2排気通路は第3通路をさらに含み、第2シリンダ組立体は下フランジをさらに含み、下フランジは第2シリンダの下端面と接続され、第3通路が設けられ、第3通路の第1端が第2シリンダと連通し、第3通路の第2端が収容室と連通し、ロックピンが下フランジ内に設けられている。
【0014】
さらには、第1通路の流体通過面積と第3通路の流体通過面積は同一である。
【0015】
さらには、第1シリンダ組立体は上フランジをさらに含み、上フランジは第1シリンダの上端面と接続され、第1排気通路が設けられ、第1排気通路の第1端が第1シリンダと連通し、第1排気通路の第2端が収容室と連通し、第1通路の最小流体通過面積と第3通路の最小流体通過面積との和が第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きいか等しい。
【0016】
さらには、第1シリンダと第2シリンダとの容積比をQとすると、0.3<Q<1又は0.3<Q≦0.7又は0.5≦Q≦0.7である。
【0017】
さらには、第1シリンダは第1吸気通路を有し、第2シリンダは第2吸気通路を有し、第1シリンダと第2シリンダとの容積比をQとし、0.3<Q≦0.7の場合、第2吸気通路の最小流体通過面積が第1吸気通路の最小流体通過面積よりも大きく、第2排気通路の最小流体通過面積と第3通路の最小流体通過面積との和が第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きくなる。
【0018】
さらには、第1シリンダと第2シリンダとの容積比をQとし、第1シリンダの内径をR1、第1シリンダの高さをH1、第2シリンダの内径をR2、第2シリンダの高さをH2とすると、0.3<Q<0.7の場合、R1<R2,H1<H2となり、0.7≦Q<1の場合、R1=R2,H1<H2となる。
【0019】
さらには、圧縮機は、第1シリンダ内に設けられた第1ローラと、第2シリンダ内に設けられた第2ローラと、第1シリンダと仕切板と第2シリンダを順に貫通して第1ローラと第2ローラに接続されたシャフトと、をさらに備え、第1ローラの内径をr1、第2ローラの内径をr2、仕切板の内径をr3、第1シリンダと第2シリンダとの容積比をQとすると、0.3<Q<0.7の場合、r1<r3<r2となり、0.7≦Q<1の場合、r1=r2<r3となる。
【0020】
さらには、第1シリンダ組立体は複数設けられ、及び/又は、第2シリンダ組立体は複数設けられている。
【0021】
本発明の他の態様によれば、上記した圧縮機を備える空調器を提供している。
【0022】
さらには、第1シリンダと第2シリンダが同時に作動する場合、圧縮機の運転周波数をf1とすると、10HZ<f1<120HZであり、第2シリンダがアイドル状態にある場合、圧縮機の運転周波数をf2とすると、10HZ<f2<70HZである。
【0023】
本発明の他の態様によれば、上フランジを第1芯出しネジにより第1シリンダに取り付けること、下フランジと下カバープレートを第2芯出しネジにより第2シリンダに順に取り付けること、芯合わせネジを、上フランジ、第1シリンダ、仕切板を順に貫通させ、第2シリンダに螺合させること、とを含む圧縮機の組立て方法を提供している。
【0024】
さらには、第1芯出しネジの数はN1、ただし、2≦N1≦3であり、及び/又は、第2芯出しネジの数はN2、ただし、4≦N2≦8である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の解決手段によれば、第2シリンダは、第1シリンダと同時に作動する作動状態及びアイドリングするアイドル状態を有するように設けられている。これにより、当該圧縮機を備えた空調システムにおいては、室内に必要な冷熱量に応じて第2シリンダを作動状態やアイドル状態に調整するとともに、第1シリンダを常に作動状態にすることが可能になり、圧縮機はいつも作動状態にあり、停止することがなくなる。これにより、従来技術において室内に必要な冷熱量がプリセット値になると、圧縮機におけるすべてのシリンダが停止するという問題を回避し、当該圧縮機の実用性と信頼性が向上する。
【0026】
本発明の一部を構成する図面は、本発明の更なる理解のためのものであって、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するために用いられ、本発明を不当に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による空調器の実施例の構造模式図である。
図2図1における圧縮機のA箇所を拡大した構造模式図である。
図3図1における圧縮機の第1シリンダの構造模式図である。
図4図3におけるA-A線に沿った断面構造模式図である。
図5図1における圧縮機の第1シリンダの他の視点での構造模式図である。
図6図1における圧縮機の第2シリンダの構造模式図である。
図7図3におけるC-C線に沿った断面構造模式図である。
図8図1における圧縮機の第2シリンダの他の視点での構造模式図である。
図9図1における圧縮機の上フランジの構造模式図である。
図10図1における圧縮機の下フランジの構造模式図である。
図11図1における圧縮機の第2仕切板の構造模式図である。
図12図1における圧縮機の第1シリンダ組立体の構造模式図である。
図13図1における圧縮機の第2シリンダ組立体の構造模式図である。
図14図1における圧縮機のロックピンがアンロック位置にある時の構造模式図である。
図15図1における圧縮機のロックピンがロック位置にある時の構造模式図である。
図16図1における圧縮機の第1シリンダと第2シリンダによる異なる容積比での冷熱量の出力範囲曲線の模式図である。
図17図1における圧縮機の第1シリンダと第2シリンダが同時に作動する場合において異なる容積比でシャフトが一回転した回転数の変動曲線の模式図である。
図18図1における圧縮機の第1シリンダと第2シリンダによる異なる容積比での下フランジに対する付勢力曲線の模式図である。
図19図1における圧縮機のエネルギ効率が第1シリンダと第2シリンダが異な 容積比を有する場合に変化する傾向曲線の模式図である。
図20】本発明による空調器のポンプ本体構造の実施例の構造模式図である。
【符号の説明】
【0028】
10 筐体
20 第1シリンダ,21 摺動溝,22 第1吸気通路,23 バネ,24 摺動子
30 第2シリンダ,31 摺動溝,32 給気通路,33 ロックピン,34 摺動子,341 摺動子係止溝,35 第2吸気通路
40 仕切板,41 第1仕切板,42 第2仕切板
51 下フランジ,52 上フランジ
61 第1ローラ,62 第2ローラ,63 シャフト,64 芯出しネジ
71 熱交換器,71’ 熱交換器,72 絞り弁,73 四方弁,74 高圧弁,75 低圧弁,76 セパレータ,77 電機子,78 下カバープレート,79 戻しバネ
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例及びそれらの特徴は、矛盾が生じない限り、互いに組み合わせてもよいことは了解されたい。以下、図面を参照して、実施例と合わせて本発明について詳細に説明する。
【0030】
ここで使用される用語は、単に具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明による例示的な実施形態を制限するものではないことは注意されたい。例えば、ここで使用されるものの単数形は、文脈において別途明示しない限り、複数形も含むことを意図しており、また、本明細書において「含む」及び/又は「備える」という用語を使用する場合は、特徴、ステップ、操作、素子、組立体及び/又はそれらの組合せが存在することを示すことも理解されたい。
【0031】
本願の明細書や特許請求の範囲及び図面中の「第1」、「第2」等の用語は、類似の対象を区別するためのものであり、所定の順序や順次を説明するものとして用いられるわけではないことは了解されたい。このように使用される用語は、本明細書で説明する本願の実施例が、例えば、ここに示され又は説明されるもの以外の順で実施され得るように、場合によっては交換可能であることは理解されたい。また、「備える」や「有する」及びそれらの変形のいずれも、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連のステップやユニットを含む過程、方法、システム、製品又は設備は明示されたステップやユニットに限られるわけではなく、明示されておらず、あるいはこれらの過程、方法、製品又は設備に固有の他のステップやユニットを含むものであってもよい。
【0032】
説明の便宜上、ここで使用される相対的な空間用語、例えば「……の上に」、「……の上方に」、「……の上面に」、「上の」等は、例えば、図面に示される一つの部品や特徴とその他の部品や特徴との空間的な位置関係を説明するためのものである。相対的な空間用語は、部品の図面に描かれる方向以外の使用又は操作における異なる方向を含むことを旨としていることは理解されるはずである。例えば、図面中の部品を上下逆にする場合、「他の部品又は構造の上方にある」あるいは「他の部品又は構造の上にある」と説明されていた部品はこれから「他の部品又は構造の下方にある」あるいは「他の部品又は構造の下にある」とされる。よって、例示的な用語である「……の上方に」は「……の上方に」と「……の下方に」の両種類の方向を含むことが可能である。当該素子については、他の異なる形で方向を決定する(90度回転させ又は他の方向とする)こともでき、そこでの相対的な空間関係について対応する解釈を行えばよい。
【0033】
以下、図面を参照して、本発明による例示的な実施形態をより詳細に説明する。ただし、これらの例示的な実施形態は、複数種の異なる形で実施されてもよく、ここで説明されるものに限られるように解釈されるはずではない。これらの実施形態は、本願の開示を徹底的且つ完全なものとし、それら例示的な実施形態の思想を当業者に十分に伝えるために提供されており、図面では、見やすくするために、層や領域の厚さを拡大する場合があり、同一の番号で同一の部品を示しているため、それらについての説明は割愛する。
【0034】
図1図20を参照すると、本発明の実施例に係る圧縮機が提供されている。
【0035】
具体的には、図1に示されるように、当該圧縮機は、筐体10と、第1シリンダ組立体と、第2シリンダ組立体とを備える。筐体10は収容室を有する。第1シリンダ組立体は筐体10内に設けられ、第1シリンダ20を含み、第1排気通路を有する。第1排気通路の第1端が第1シリンダ20と連通し、第1排気通路の第2端が収容室と連通している。第2シリンダ組立体は筐体10内に設けられ、第2シリンダ30を含むものである。第2シリンダ30は第1シリンダ20と隣接して設けられ、第1排気通路に対して相対的に独立して設けられた第2排気通路を有するものである。第2排気通路の第1端が第2シリンダ30と接続され、第2排気通路の第2端が収容室と連通している。第1シリンダ20が作動状態にあるときには、第2シリンダ30は作動状態又はアイドル状態にある。
【0036】
本実施例の解決手段では、第2シリンダ30は、第1シリンダ20と同時に作動する作動状態及びアイドリングするアイドル状態を有するように設けられている。当該圧縮機を備えた空調システムにおいては、室内に必要な冷熱量に応じて第2シリンダ30を作動状態やアイドル状態に調整するとともに、第1シリンダ20を常に作動状態にすることが可能になり、圧縮機はいつも作動状態にあり、停止することがなくなる。これにより、従来技術において室内に必要な冷熱量がプリセット値になると、圧縮機におけるすべてのシリンダが停止するという問題を回避し、当該圧縮機の実用性と信頼性が向上する。
【0037】
図6図8に示されるように、第2シリンダ30は、摺動溝31と給気通路32とを有し、第2シリンダ組立体は、摺動子34とロックピン33とをさらに含む。摺動子34は摺動溝31内に設けられ、第2シリンダ30の外周面に近い端と摺動溝31の内壁との間に可変容量制御室が形成されたものであり(例えば、図6におけるB箇所に示されるように、可変容量制御室は、仕切板と第2シリンダと下フランジにより囲まれ、筐体内の高圧から隔離された密閉空間である)、給気通路32の第1端が可変容量制御室と連通し、給気通路32の第2端が高圧冷媒又は低圧冷媒を取り込むためのものである。ロックピン33は、第2シリンダ30と隣接して設けられ、摺動子34の一方側に位置し、摺動子34をロックするロック位置及び摺動子34をロック位置から解放するアンロック位置を有するものである。摺動子34がロック位置にあるときには、第2シリンダ30はアイドル状態にあり、摺動子34がアンロック位置にあるときには、第2シリンダ30は作動状態にある。このようにすれば、ロックピン33の信頼性と実用性を効果的に向上させることができる。
【0038】
具体的には、第2シリンダ組立体は、第2吸気通路35をさらに含む。給気通路32は第2吸気通路35に対して相対的に独立して設けられ、給気通路32に高圧冷媒が取り込まれる場合、ロックピン33はアンロック位置にあり、給気通路32に低圧冷媒が取り込まれる場合、ロックピン33はロック位置にある。このようにすれば、第2シリンダの作動状態に対する更なる制御が実現される。つまり、ロックピンの位置を制御することにより圧縮機の冷房出力が制御される。当該構造は簡単で、信頼性が高い。
【0039】
さらには、第1シリンダ20と第2シリンダ30は同軸に設けられ、第2シリンダ組立体は仕切板40をさらに含む。仕切板40は、第1シリンダ20と第2シリンダ30との間に位置している。このようにすれば、第1シリンダ20と第2シリンダ30との間の封止性や安定性を効果的に向上させることができる。
【0040】
当該圧縮機の性能を向上させるために、仕切板40に収容キャビティを設けてもよい。収容キャビティは、第2仕切板の排気口から排出される気体を一時格納し、第2仕切板の排気口との間の圧力脈動を低減し、排気損失を低下させ、圧縮機の効率を高める役割を果たしている。
【0041】
具体的には、仕切板40は、第1仕切板41と第2仕切板42とを含む。第1仕切板41に第1環状凹溝が設けられている。第2仕切板42は、第1仕切板41の下に位置し、第1仕切板41に対向する表面に第2環状凹溝が設けられ、第1環状凹溝と第2環状凹溝とにより収容キャビティを形成するように(図14図15におけるD箇所に示されるように)第1仕切板41と対向して設けられている。第2仕切板42には第1通路が設けられ、第1通路の第1端が収容キャビティと連通し、第1通路の第2端が第2シリンダ30と連通している。このようにすれば、第2シリンダによる排気損失を低下させることができる。これは、第2シリンダは容積が大きく、第1シリンダのものと面積の等しい排気口を使用すると、排気損失が大きくなるため、第1シリンダの排気口よりも第2シリンダの排気口が大きくなるようにする必要があるからである。
【0042】
さらには、第2排気通路は、第1仕切板41及び第2仕切板42に設けられた第2通路を含み、第2通路の一端が収容キャビティと連通し、第2通路の他端が収容室と連通し、第2シリンダ30から排出される冷媒は、第1通路を介して収容キャビティに入り、その後第2通路を介して収容室に排出される。このようにすれば、効果的に収容キャビティ内の高圧冷媒を迅速に収容室に排出することができる。
【0043】
図20に示されるように、第1通路内に排気弁80が設けられている。排気弁80は閉位置と開位置とを有し、排気弁80が閉位置にあるときには、第2シリンダ30と収容キャビティが切断され、排気弁80が開位置にあるときには、第2シリンダ30と収容キャビティが連通している。具体的には、第2シリンダ30において冷媒に対する圧縮が完了した場合、排気弁80が開位置になる。
【0044】
本実施例では、第2排気通路は第3通路をさらに含み、第2シリンダ組立体は下フランジ51をさらに含む。下フランジ51は、第2シリンダ30の下端面と接続され、第3通路が設けられたものであり、第3通路の第1端が第2シリンダ30と連通し、第3通路の第2端が収容室と連通し、ロックピン33は下フランジ51内に設けられている。当該実施形態を採用すれば、第2シリンダは、第1仕切板41及び第2仕切板42に設けられた第2通路を介して排気を行うことができまたは、同時に下フランジ51に設けられた第3通路を介して排気することもでき、第2シリンダの排気量を効果的に向上させ、即ち、圧縮機の性能が向上している。
【0045】
好ましくは、第1通路の流体通過面積と第3通路の流体通過面積は同一である。これにより、第2シリンダの排気損失を効果的に低下させることができる。
【0046】
具体的には、第1シリンダ組立体は上フランジ52をさらに含む。上フランジ52は第1シリンダ20の上端面と接続され、第1排気通路は上フランジ52に設けられ、第1排気通路の第1端が第1シリンダ20と連通し、第1排気通路の第2端が収容室と連通し、第1通路の最小流体通過面積と第3通路の最小流体通過面積との和が第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きいか等しい。このようにすれば、当該圧縮機の圧縮性能を一層高めることができる。
【0047】
好ましくは、第1シリンダ20と第2シリンダ30との容積比をQとし、容積比を0.3<Q<1や0.3<Q≦0.7又は0.5≦Q≦0.7として設定してもよい。このようにすれば、第1シリンダと第2シリンダが作動する時の協働性を効果的に向上させ、圧縮機の圧縮性能を効果的に高めることができる。
【0048】
図3図5に示されるように、第1シリンダ20は第1吸気通路22を有し、第2シリンダ30は第2吸気通路35を有し、第1シリンダ20と第2シリンダ30との容積比をQとし、0.3<Q≦0.7の場合、第2吸気通路35の最小流体通過面積が第1吸気通路22の最小流体通過面積よりも大きく、第2排気通路の最小流体通過面積と第3通路の最小流体通過面積との和が第1排気通路の最小流体通過面積よりも大きくなる。このようにすれば、圧縮機の効率や性能を一層高めることができる。
【0049】
具体的には、第1シリンダ組立体と第2シリンダ組立体の構造についてさらに工夫することで圧縮機の圧縮性能を高めることができ、具体的には、第1シリンダ20と第2シリンダ30との容積比をQとし、、第1シリンダ20の内径をR1、第1シリンダ20の高さをH1、第2シリンダ30の内径をR2、第2シリンダ30の高さをH2とすると、0.3<Q<0.7の場合、R1<R2,H1<H2となり、0.7≦Q<1の場合、R1=R2,H1<H2となる。異なる容積比を採用すれば、圧縮機の低冷熱出力を効果的に改善することができるとともに、寸法の異なる、つまり高さや内径の異なるシリンダとすることにより、圧縮機の低冷熱出力を一層改善することができ、当該圧縮機を使用したマルチスプリット型空調システムでは、低冷熱出力でのエネルギ効率は一般なマルチスプリット型空調システムよりも60%以上高くなり、それにより、従来のマルチスプリット型空調システムにおける低冷熱出力の場合にエネルギ効率が低くなるという問題が解消される。
【0050】
図12図15に示されるように、圧縮機は、第1ローラ61と、第2ローラ62と、シャフト63とをさらに備える。第1ローラ61は第1シリンダ20内に設けられている。第2ローラ62は第2シリンダ30内に設けられている。シャフト63は、第1シリンダ20、仕切板40及び第2シリンダ30を順に貫通して第1ローラ61と第2ローラ62に接続されている。第1ローラ61の内径をr1、第2ローラ62の内径をr2、仕切板40の内径をr3、第1シリンダ20と第2シリンダ30との容積比をQとすると、0.3<Q<0.7の場合、r1<r3<r2となり、0.7≦Q<1の場合、r1=r2<r3となる。本実施例では、異なる容積比で異なる内径をとることにより、容積比が小さくなり過ぎると第1シリンダの高さH1が低くなりすぎる場合におけるポンプ本体の組立て問題が解決され、当該圧縮機を使用したマルチスプリット型空調システムでは最小冷熱出力が定格冷熱の5%になり、圧縮機の最小冷熱出力が大きすぎることに起因した頻繁な停止・起動が完全になくなり、室内の温度変動が低減し、快適性が向上している。当該技術による圧縮機を一対一の空調システムに適用すれば、システムの最低冷熱出力を低下させて、低冷熱でのエネルギ効率レベルを向上させることができる。
【0051】
上記実施例による圧縮機は空調機器の技術分野に用いられてもよく、即ち、本発明の他の態様によれば、空調器が提供される。当該空調器は、上記実施例による圧縮機を備える。具体的には、当該圧縮機は、筐体10と、第1シリンダ組立体と、第2シリンダ組立体とを備える。筐体10は収容室を有する。第1シリンダ組立体は筐体10内に設けられ、第1シリンダ20を含み、第1排気通路を有するものであり、第1排気通路の第1端が第1シリンダ20と連通し、第1排気通路の第2端が収容室と連通している。第2シリンダ組立体は筐体10内に設けられ、第2シリンダ30を含むものである。第2シリンダ30は第1シリンダ20と隣接して設けられ、第1排気通路に対して相対的に独立して設けられた第2排気通路を有するものであり、第2排気通路の第1端が第2シリンダ30と接続され、第2排気通路の第2端が収容室と連通している。そのうち、第1シリンダ20が作動状態にあるときには、第2シリンダ30は作動状態又はアイドル状態にある。
【0052】
本実施例では、本実施例の解決手段を採用すれば、第1シリンダ20に対して、第2シリンダ30は、第1シリンダ20と同時に作動する作動状態及びアイドリングするアイドル状態を有するように設けられている。当該圧縮機を備えた空調システムにおいては、室内に必要な冷熱量に応じて第2シリンダ30を作動状態やアイドル状態に調整するとともに、第1シリンダ20を常に作動状態にすることが可能になり、圧縮機はいつも作動状態にあり、停止することがなくなる。これにより、従来技術において室内に必要な冷熱量がプリセット値になると、圧縮機におけるすべてのシリンダが停止するという問題が回避される。当該圧縮機の実用性と信頼性は向上している。
【0053】
第1シリンダ20と第2シリンダ30が同時に作動する(モード1とする)場合、圧縮機の運転周波数をf1とすると、10HZ<f1<120HZであり、第2シリンダ30がアイドル状態にある(モード2とする)場合、圧縮機の運転周波数をf2とすると、10HZ<f2<70HZである。冷熱需要の大きい場合、当該圧縮機を使用したマルチスプリット型空調システムではモード1として高周波数で運転することで、迅速に冷房することが可能になる。
【0054】
具体的には、空調器は、構造として、セパレータ76、絞り弁72、筐体10、電機子77(固定子と回転子を含む)、及びポンプ本体組立体から構成される。セパレータ76は筐体外に設けられ、電機子77とポンプ本体組立体は筐体内に設けられ、ポンプ本体組立体は電機子77の下に位置し、ポンプ本体組立体には、ポンプ本体上部に位置する上フランジ、ポンプ本体下部に位置する下フランジ、下カバープレート78、シャフト、圧縮シリンダ、第1ローラ61、第2ローラ62、摺動子24及び摺動子34が設けられている。摺動子34には、摺動子係止溝341と仕切板が設けられ、ポンプ本体組立体はシャフトを介して電機子の回転子と接続され、回転子に動かされて気体を圧縮するものである。当該ポンプ本体組立体は、少なくとも一つの可変容量圧縮シリンダである第2シリンダと、少なくとも一つの固定容量圧縮シリンダである第1シリンダとの複数の圧縮シリンダを有する。当該構造では、モード1とモード2の二種類の運転モードがある。モード1で運転する場合、可変容量圧縮シリンダと固定容量圧縮シリンダが同時に作動し、モード2で運転する場合、可変容量圧縮シリンダが作動せず、固定容量圧縮シリンダが作動し続けるようになる。可変容量圧縮シリンダの容積V2(シャフトが一回転するたびに可変容量圧縮シリンダから排出される気体の体積)は固定容量圧縮シリンダの容積V1(シャフトが一回転するたびに固定容量圧縮シリンダから排出される気体の体積)よりも大きく、且つ容積比がQ=V1/V2で、Qが0.3<V1/V2<1を満たしている。
【0055】
圧縮機の振動を一層小さくしその信頼性を高めるとともに、高いエネルギ効率を持たせるために、容積比を0.5≦V1/V2≦0.7の範囲にすることができる。
【0056】
固定容量圧縮シリンダは、可変容量圧縮シリンダの上に設けられ、上フランジと隣接しており、固定容量圧縮シリンダと可変容量圧縮シリンダは仕切板で仕切られている。容積比Qが0.3<V1/V2≦0.7を満たす場合、可変容量圧縮シリンダの第2吸気通路の最小流体通過面積C2が固定容量圧縮シリンダの第1吸気通路の最小流体通過面積C1よりも大きく、可変容量圧縮シリンダにて圧縮された気体を排出するための排気口の最小流体通過面積が固定容量圧縮シリンダにて圧縮された気体を排出するための排気口の最小流体通過面積よりも大きくなり、0.7<V1/V2<1の場合、可変容量圧縮シリンダと固定容量圧縮シリンダは排気口の面積が等しくなる。
【0057】
仕切板は、第1仕切板41と第2仕切板42の二つの部品として設けられてもよく、第1仕切板41は固定容量圧縮シリンダに隣接し、第2仕切板42は可変容量シリンダに隣接する。第2仕切板42には、可変容量圧縮シリンダにて圧縮された気体を排出するための排気口が更に設けられ、その排気口の面積S3は下フランジにおける排気口の面積S2と等しい。
【0058】
0.3<V1/V2<0.7の場合、各部品は以下のように接続される。
【0059】
I.上フランジは、2~3個の芯出しネジ64により、固定容量圧縮シリンダに固定されてねじ止めされ、固定容量シリンダ組立体が形成される。
【0060】
II.下フランジ及び下カバープレートは、n(n=4~8)個の芯出しネジ64により、可変容量シリンダに固定されてねじ止めされ、可変容量シリンダ組立体が形成される。
【0061】
III.n個の芯合わせネジは、上フランジ、固定容量圧縮シリンダ、仕切板を順に貫通し、可変容量圧縮シリンダに螺合され、ポンプ本体組立体が構成される。
【0062】
具体的には、当該圧縮機の組立て方法は、上フランジ52を第1芯出しネジで第1シリンダ20に取り付け、下フランジ51と下カバープレート78を第2芯出しネジで第2シリンダ30に順に取り付けることを含む。また、続いて、芯合わせネジを、上フランジ52、第1シリンダ20、仕切板40を順に貫通させ、第2シリンダ30に螺合させることを含む。好ましくは、第1芯出しネジの数はN1、ただし、2≦N1≦3であり、第2芯出しネジの数はN2、ただし、4≦N2≦8である。
【0063】
圧縮機の電機子は可変周波数電機子であり、空調器は室内の冷熱需要に応じて圧縮機の運転周波数及び運転モードを調整することが可能である。冷熱需要が大きい場合、圧縮機はモード1で運転するとともに運転周波数を大きくし、冷熱需要が小さい場合、圧縮機は、モード2で運転するとともに運転周波数を小さくしている。圧縮機がモード1で運転する時の周波数範囲は10~120Hz、モード2で運転する時の周波数範囲は10~70Hzとされている。
【0064】
圧縮機の構成及び冷媒の循環過程は下記の通りである。圧縮機は、セパレータ、筐体、電機子、及びポンプ本体組立体から構成される。電機子は筐体内の上部に設けられ、ポンプ本体組立体は筐体の下に設けられる。シャフトは回転子により動かされて回転し、可変容量圧縮シリンダや固定容量圧縮シリンダに吸入された気体を圧縮し、そして、圧縮された気体は対応する排気口から圧縮機の筐体内に排出され、四方弁73を通過してから熱交換器71と熱交換器71’の一方に入って外部と熱交換を行い、その後、セパレータに入って可変容量圧縮シリンダや固定容量圧縮シリンダの吸気口に戻る(熱交換器71と熱交換器71’の一方は吸熱するためのもので、他方は熱交換を行うためのものである)。
【0065】
固定容量シリンダ組立体は、固定容量圧縮シリンダ、上フランジ、第1ローラ61、摺動子24、及びバネ23で構成されている。二つの芯出しネジが上フランジを貫通し、それを固定容量圧縮シリンダと一体的に接続している。摺動子24は、固定容量圧縮シリンダの摺動溝21内に配置され、第2ローラ62は、固定容量圧縮シリンダ内に配置されてシャフトに外嵌されている。摺動子24と第2ローラ62は互いに当接している。
【0066】
可変容量シリンダ組立体は、可変容量圧縮シリンダ、下フランジ、下カバープレート、第2ローラ62、及び摺動子34で構成されている。ロックピンは戻しバネ79を含み、五つの芯出しネジが下カバープレートと下フランジを順に貫通し、それらを可変容量圧縮シリンダと一体的に接続している。摺動子34は、可変容量圧縮シリンダの摺動溝31内に配置され、第1ローラ61は可変容量圧縮シリンダ内に置かれてシャフトに外嵌され、摺動子34と第1ローラ61は互いに当接している。
【0067】
ポンプ本体組立体は、固定容量シリンダ組立体、可変容量シリンダ組立体、仕切板、及びシャフトで構成されている。五つの芯合わせネジが固定容量シリンダ組立体と仕切板を順に貫通し、可変容量圧縮シリンダに対して締め付けられ、固定容量シリンダ組立体と可変容量シリンダ組立体を一体的に連結することにより、ポンプ本体組立体が構成される。
【0068】
モード変換手段は、摺動子34、ロックピン、及び戻しバネを含み、摺動子34は可変容量圧縮シリンダにおける摺動溝31内に設けられ、その後段部が、可変容量圧縮シリンダ、仕切板、及び下フランジにより囲まれて密閉した可変容量制御室となる。可変容量圧縮シリンダには気体通路である給気通路が設けられており、気体通路の一端が可変容量制御室と連通し、他端が圧力入力口とされている。摺動子34において、下フランジ隣接する側に摺動子係止溝が設けられ、摺動子34の垂直方向下側にある下フランジ内にロックピン及び戻しバネが設けられている。ロックピンの下カバープレートに近い側の圧力は一定で低圧であり(可変容量圧縮シリンダ又は固定容量圧縮シリンダの吸気口の圧力と等しい)、ロックピンの可変容量圧縮シリンダに近い側は可変容量制御室と連通しているため、その圧力は可変容量制御室の圧力と等しい。
【0069】
モード変換について、圧縮機の運転周波数が60HZ~70HZより高く、且つ圧縮機の運転モードがモード2である(即ち、固定容量圧縮シリンダが作動し、可変容量圧縮シリンダがアイドリングしている)場合、高圧弁74が開いて低圧弁75が閉じ、高圧気体(圧縮室にて圧縮され排出された気体)は給気通路の圧力入力口を通過して可変容量制御室に入る。その結果、摺動子34の後段部及びロックピンの可変容量圧縮シリンダに近い側の圧力は高圧となり、ロックピンは下へ移動して摺動子34の摺動子係止溝から離れ、圧縮機はモード1での運転へ移行し、可変容量圧縮シリンダと固定容量シリンダは同時に作動する。この時、圧縮機の作動による排出量はV1+V2(図16における曲線Q(x)に示される)となり、圧縮機は高い冷熱量を出力する。圧縮機の運転周波数が20HZ~30HZより低く、且つ圧縮機の運転モードがモード1である(即ち、可変容量圧縮シリンダと固定容量圧縮シリンダが同時に作動している)場合、高圧弁74が閉じて低圧弁75が開き、低圧気体(圧力が可変容量圧縮シリンダ又は固定容量圧縮シリンダの吸気口の圧力と等しいもの)は圧力入力口、気流通路を介して可変容量制御室に入る。その結果、摺動子34の後段部及びロックピンの可変容量圧縮シリンダに近い側の圧力は低圧となり、ロックピンは摺動子34に近づくように上へ移動して摺動子係止溝内に入り、摺動子34の往復運動が止められ、圧縮機はモード2での運転へ移行し、可変容量圧縮シリンダが作動しなくなり(シャフトとともに回転するが、可変容量圧縮シリンダにて気体に対する吸気、圧縮、排気を行わなくなる)、固定容量シリンダが作動し続け、圧縮機の作動による排出量はV1となり、圧縮機は低い冷熱量を出力する。
【0070】
容積比V1/V2について、図16に示されるように、異なる容積比V1/V2の圧縮機がモード1で運転し、総排出量(V1+V2)が同一である場合、最大冷熱量(Qmax)出力は同様である。但し、容積比V1/V2が小さいほど、圧縮機のモード2での運転による最小冷熱出力は小さくなり、対応できる冷熱範囲は大きくなる。これは、室内温度の正確な制御や圧縮機の停止・起動頻度の低下に有利である一方、圧縮機のエネルギ効率は高く(図19に示されるように)なる。容積比V1/V2が小さいほど、モード1で運転する場合において一周期内の圧縮機の回転数変動は大きく(図17に示されるように)なり、その結果、圧縮機の振動が大きくなり、圧縮機の安定的な運転に支障をもたらす。更に、下フランジに対する付勢力が大きく(図18に示されるように)なり、圧縮機の信頼性が劣化する。試験に基づく検証によると、容積比をV1/V2>0.3とすれば、使用の需要を満たすように最小冷熱量を保証することができ、また、圧縮機をモード1で安定的且つ高い信頼性で運転することもできる。容積比が大きすぎると、モード1で運転する場合の最小冷熱出力が大きくなりすぎ、圧縮機のエネルギ効率が低下するため、容積比V1/V2を過度に大きく設定すべきではない。そのため、適切な容積比は0.3<V1/V2<1である。図17図18から分かるように、0.5<V1/V2<0.7の場合には、モード1で運転する場合の圧縮機の回転数変動や下フランジに対する付勢力はあまり高いものではなく、さらにまた、この場合の圧縮機のエネルギ効率は(図19に示されるように)高いレベルにあるため、当該容積比V1/V2を持った圧縮機は小さい振動と高い信頼性及び高いエネルギ効率の同時実現を可能としている。
【0071】
吸気通路の最小流体通過面積と排気通路の最小流体通過面積について、吸気通路の最小流体通過面積は吸気通路の中心を通る法平面の最小投影面積を言い、排気通路の最小流体通過面積は排気通路の中心を通る法平面の最小投影面積を言う。
【0072】
吸気通路と排気通路について、固定容量圧縮シリンダは容積V1が小さく、可変容量圧縮シリンダに比べると吸気・排気抵抗損失が小さいため、第1吸気通路の最小流体通過面積はより小さいC1とすると共に第1排気通路の流体通過面積はS1とすることから、固定容量圧縮シリンダの構造強度の向上に役立つだけでなく、圧縮機の性能の向上にも役立つ。可変容量圧縮シリンダは容積V2が大きく、冷熱需要の大きい場合のみに作動し、その運転周波数も高いため、第2吸気通路の最小流体通過面積はより大きいC2とすべきであると共に第3通路の流体通過面積はS2とする。両圧縮シリンダの吸気・排気通路の断面はC1<C2及びS1<S2の関係にある。
【0073】
ポンプ本体の構造寸法について、図2に示されるように、ローラ式圧縮機にとっては、扁平化(シリンダの高さ/内径の比が小さい)設計を採用すれば、より圧縮機の性能の向上に役立つ。しかしながら、そのような構造の圧縮機に関しては、容積比が0.3<V1/V2<0.7の範囲にある場合、固定容量圧縮シリンダの内径R1が可変容量圧縮シリンダの内径R2と等しいか大きいままにすると、固定容量圧縮シリンダの高さ/内径の比H1/R1が小さくなりすぎ、シリンダ強度が低下し、吸気口の断面に制限が発生することに繋がり、また、固定容量圧縮シリンダの構造強度も低下してしまい、圧縮機の性能の向上に支障をもたらすばかりか、圧縮機の信頼性の低下をも引き起こす。このため、比較的に合理的な寸法関係は、R1<R2,H1<H2であり、固定容量圧縮シリンダの高さと内径を小さくし、そにより、第1ローラ61の内径r1<第2ローラ62の内径r2となる。第1ローラ61の外周と仕切板の内周との封止距離、並びに、第2ローラ62の外周と仕切板の内周との封止距離を確保するために、仕切板の内径r3を過度に大きくも小さくもしない方が良い。内径r3が小さすぎると、正常に組み立てることができないため、適切な寸法関係は、r1<r3<r2である。
【0074】
仕切板は、第1仕切板41と第2仕切板42に分けられてもよく、第2仕切板42には可変容量圧縮シリンダにて圧縮された気体を排出するための排気口が設けられている。そのため、可変容量圧縮シリンダには同時に圧縮気体を排出する排気口が二つ設けられ、その一方は第1仕切板41と第2仕切板42の少なくとも一方に設けられ、他方は下フランジに設けられている。
【0075】
本実施例では、第1シリンダ組立体は複数設けられてもよく、第2シリンダ組立体もその分だけ複数設けられてもよい。
【0076】
上記した以外、本明細書に言及されている「一実施例」、「他の実施例」、「実施例」等は、当該実施例として説明される具体的な特徴や構造又は特性が本願で概括的に説明される少なくとも一つの実施例に含まれることを意味していることは了解されたい。明細書中の複数の箇所における同じ表現は必ずしも同一の実施例を意味していない。さらには、いずれかの実施例と組み合わせて具体的な特徴や構造又は特性を説明する場合は、このような特徴や構造又は特性を実現するために組み合わせる他の実施例も本発明の範囲に属するものである。
【0077】
上記実施例では、各実施例についての説明にそれぞれ偏りがあり、ある実施例において詳しく説明されていなかった部分は、他の実施例における関連する説明を参照とすることができる。
【0078】
上記は単に本発明の好ましい実施形態で、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとっては、本発明は様々な変更や修正を行うことができるものである。本発明の精神と原則の範囲においてなされたあらゆる変更,均等物との置換,改良等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
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