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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】能動素子構造
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20220308BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220308BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220308BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20220308BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
H01L41/09
H01L41/113
H01L41/193
H01L41/083
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020523053
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 FI2018050543
(87)【国際公開番号】W WO2018172622
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】20175691
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】503020563
【氏名又は名称】原相科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】マキネン、ビル
(72)【発明者】
【氏名】テヘーラ - ガルシア、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】サルミネン、アキ
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0112793(KR,A)
【文献】特開平08-168099(JP,A)
【文献】特開2013-017287(JP,A)
【文献】特開2013-101626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H01L 27/20
H01L 41/00-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの積み重ね可能な能動素子を有する能動素子構造であって、前記少なくとも2つの積み重ね可能な能動素子の前記能動素子の各々が、
導電性/半導電性電極レイを有する、基板フィルムと、
格子状配列に配置された多数の弾性支持ノジューを有する弾性レイであって、それにより前記能動素子とその隣接する素子との間に圧縮空間が配置され、前記圧縮空間は、前記多数の弾性支持ノジューの間の空間ギャップを有し、前多数の弾性支持ノジューは、同一材料のベース・レイヤとともに、前記弾性レイの一体的部分を形成する、弾性レイと、
少なくとも1つの絶縁レイであって、前記導電性/半導電性電極レイを覆い、前記導電性/半導電性電極レイのエリアの縁部を越えて延び、且つ電気的絶縁のためにこの領域において前記弾性レイと直接的に接触する少なくとも1つの絶縁レイ
を有し、
前記導電性/半導電性電極レイは、前記弾性レイと、前記少なくとも1つの絶縁レイのうちの1つとの間に位置付けられ、また
前記能動素子構造は、前記少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の間に電圧差が印加されたときに、前記少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の隣接する能動素子の間の静電引力によって縮むように構成されている、能動素子構造。
【請求項2】
前記少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の前記能動素子の各々が、前記少なくとも1つの絶縁レイの追加的な絶縁レイヤを有し、前記追加的な絶縁レイヤは高い電気的絶縁性の材料で作られ、また前記追加的な絶縁レイヤは、電気的絶縁を向上するために、露出した電極エリアを覆う、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項3】
前記弾性レイはベース弾性レイを有し、前記多数の弾性支持ノジューは前記ベース弾性レイ上に配置される、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項4】
前記能動素子構造は、可撓性の基板の一部として埋め込まれている、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項5】
前記少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の間の離は、1000マイクロメートル(1000μm)未満である、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項6】
前記多数の弾性支持ノジューの隣接する支持ノジューは、互いから10mm未満の距離だけ離間されて配置される、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項7】
前記少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の前記圧縮空間は、流体によって、例えば空気、窒素、又は例えば誘電性作動流体である誘電性液体によって、少なくとも部分的に満たされている、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項8】
前記多数の弾性支持ノジューは、シリコン・ベースの有機ポリマー、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られる、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項9】
前記多数の弾性支持ノジューは、先端部よりも厚い基端部を有する円錐状の形態を有する、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項10】
前記多数の弾性支持ノジューは、最大幅に対する高さのアスペクト比の最大値が2である、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項11】
前記能動素子の面は、本質的に疎水性であり、或いは疎水的又は超疎水的に被覆され、或いは疎水的又は超疎水的に処理されている、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項12】
前記能動素子のうちの2以上は、互いに上下に積み重ねられる、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項13】
前記能動素子のうちの2以上は、瓦状に互いに上下に積み重ねられる、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項14】
前記能動素子構造は、より剛性のタイル構造及びより展性のエリア構造の格子を有する、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項15】
前記能動素子構造は気密に封止される、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項16】
前記能動素子構造は、気体リザーバ、例えば空気リザーバを有する、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項17】
能動素子構造の少なくとも2つの積層体と、少なくとも1つの気体リザーバと、能動素子構造の前記少なくとも2つの積層体の上及び前記少なくとも1つの気体リザーバの上に配置された弾性表面レイヤとを有する、請求項15に記載の能動素子構造。
【請求項18】
前記能動素子構造は、前記弾性レイの上に追加的な堅固な構造を有する、請求項17に記載の能動素子構造。
【請求項19】
前記能動素子は可撓性である、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項20】
前記導電性/半導電性電極レイは、100kオーム/スクエアから100Mオーム/スクエアの間の表面抵抗の半導電性材料で作られる、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項21】
クチュエータにおける物理的変化の検知及び/又は制御を可能とするように、その電気信号特性が監視される、請求項1に記載の能動素子構造。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の能動素子構造を有するアクチュエータ。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載の能動素子構造を有するセンサ。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか一項に記載の能動素子構造を有するアクチュエータ/センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される主題は、概して、電気的に誘起される機械的運動を促進するように構成された表面構造を有するデバイス(例えばシステム又は他の装置)における表面作動機構を促進するための構成に関し、この構成は、電気的に誘起される機械的運動を介して触覚的フィードバック等の様々な触覚的効果を提供するように構成されたデバイスを含む。詳細には、本開示は、電気的に誘起される機械的運動を促進するように構成された表面構造を有するデバイス(例えばシステム又は他の装置)のための能動素子構造に対処する。
【背景技術】
【0002】
例えば民生用電子的デバイス等のデバイスにおいて電気的に誘起される機械的運動を促進する種々の技術がある。1つの一般的な技術は、偏心回転質量(ERM:Eccentric Rotating Mass)振動モータの使用である。ERM振動モータは、回転のポイントから中心の外れた小型の回転質量を運動させる。質量の回転は、求心力を生み出し、モータ全体を左右に運動及び振動させる。電気的に誘起される機械的運動を促進する別の一般的技術は、リニア共振アクチュエータ(LRA:linear resonant actuator)の使用である。リニア共振アクチュエータは、磁気フィールド及び電流を使用してコイルへの力を生成し、前記コイルは、磁気質量をばねに対して上下に駆動する。前記磁気質量の運動は、リニア共振アクチュエータ全体を運動させ、それによって電気的に誘起される機械的運動を生む。別の一般的な技術は、圧電アクチュエータの使用である。圧電アクチュエータは、印加された電荷に応じて圧電材料において機械的変化を生み、前記機械的変化が電気的に誘起される機械的運動を生む。
【0003】
従来技術において、このような電気的に誘起される機械的運動技術には多くの欠点がある。これらの欠点には、大きな電力消費、低い耐久性、より短い寿命、外部モータ及び/又は質量を有する複雑な設計、低い拡張性並びに広いエリアでの作動に対する低い適応性等がある。
【0004】
以前から、弾性構造によるいくつかの作動のための解決策が提案されてきた。
【0005】
米国特許第8587541B2号は、触覚的インタフェース・レイヤを作動するための方法のための1つの従来技術の解決策を開示しており、異なるリザーバにおいて流体を駆動してタッチ面に変形を生成する小型の液圧システムを使用することが提案されている。液圧ポンプによって生成される変形は、表面に触れる指によって容易に観察され得る。
【0006】
米国特許第9477076B2号は、光学的微小電子機械システム構造のために使用され得る柔軟性(可撓性)の支持ポストを有する電気機械的システム・デバイスのための1つの従来技術の解決策を開示している。提示された解決策は、巨視的な構造、例えば触覚的フィードバック用途のための構造を作動させるために適していない。
【0007】
特開2007-259663号は、誘電体構造を有する積層された静電アクチュエータのための1つの従来技術の解決策を開示している。提示された解決策において説明された材料構造は、巨視的な構造、例えば触覚的フィードバック用途のための構造を作動させるために適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8587541B2号
【文献】米国特許第9477076B2号
【文献】特開2007-259663号
【発明の概要】
【0009】
添付の図面の図において、いくつかの実施例が限定としてではなく実例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つの例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図2】離間された2次元的な行/列格子状配列に配置された本発明の1つの例示的な実施例による多数の弾性支持ノジュールを示す図である。
図3】離間された三角形状の格子状配列に配置された本発明の別の例示的な実施例による多数の弾性支持ノジュールを示す図である。
図4】本発明の別の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図5】本発明の1つの例示的な実施例による、4つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。
図6】本発明の第3の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図7】本発明の別の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。
図8】本発明の第3の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。
図9】本発明の第4の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。
図10A】本発明の1つの例示的な実施例による静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体の1つを示す図である。
図10B】本発明の1つの例示的な実施例による静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体の1つを示す図である。
図11A】追加的な堅固な構造を有する本発明の別の例示的な実施例による静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体の1つを示す図である。
図11B】追加的な堅固な構造を有する本発明の別の例示的な実施例による静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体の1つを示す図である。
図12A】本発明の第5の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図12B】本発明の第5の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図12C】本発明の第5の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。
図13A】本発明の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図13B】本発明の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図13C】本発明の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図13D】本発明の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14A】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14B】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14C】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14D】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14E】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図14F】本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図15A】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図15B】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図15C】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図15D】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図15E】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す図である。
図16A】本発明の例示的な実施例による能動素子積層体を示す図である。
図16B】本発明の例示的な実施例による能動素子積層体を示す図である。
図16C】本発明の例示的な実施例による能動素子積層体を示す図である。
図16D】本発明の例示的な実施例による能動素子積層体を示す図である。
図17A】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図17B】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図17C】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図17D】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図17E】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図17F】本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図18A】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図18B】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
図18C】本発明の第3の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
少なくとも1つの積み重ね可能な能動素子を有する新たな能動素子構造であって、前記少なくとも1つの積み重ね可能な能動素子の前記能動素子の各々は、
- 本質的に導電性又は半導電性であるか、又は導電性/半導電性電極レイヤを有する基板フィルムと、
- 格子状配列に配置された多数の弾性支持ノジュール(小突起)を有する弾性レイヤであって、前記多数の弾性支持ノジュールの間に圧縮空間が配置される、弾性レイヤと
を有し、
- 前記能動素子構造は、少なくとも2つの積み重ねられた能動素子の間に十分な電圧差が印加されたときに圧縮するように構成され、
- 前記能動素子構造は、顕著な圧縮をもたらす十分な電位が2つ以上の能動素子構造の間に印加されたときに、2つ以上の能動素子構造のレイヤの間での高電圧放電を防止する絶縁縁部又は完全封止を電極の上に有する、能動素子構造
が提供される。
【0012】
提示される新たな静電アクチュエータ構造は、従来技術の解決策に対する明らかな改良である。新たな静電アクチュエータ構造は、様々な革新的な特徴を提示し、これらは、巨視的な構造、例えば触覚的フィードバック用途のための構造を作動させるために適している。特には、本発明によって生成される作動距離及び振幅は、従来技術の解決策と比べるとずっと大きく、異なるスケール・レベルを示している。提示される新たな静電アクチュエータ構造は、射出成形等の新たなタイプの製造方法にも適している。
【0013】
積み重ねられた同一のモジュール構造を有する提示される新たな静電アクチュエータ構造のモジュール的な性質は、能動レイヤを追加又は除去し、それに応じてパワー信号を適合することによって、機械的作動における最終的なエネルギー(圧縮振幅及び力)を簡単に確立することを可能とする。
【0014】
本明細書において説明される新たな静電アクチュエータ構造は、適切な電圧範囲内において著しく圧縮し得る、内蔵された適切な弾性構造を有する、製造が簡単な絶縁体レイヤを有する。発明者らの試験において、弾性ノジュールの全体的なエリアは、最適には全体的な流体空間の1%前後であって、これは、従来技術の解決策と比べるとかなりの改良を示している。
【0015】
図1は、本発明の1つの例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤ10は、第1の基板フィルム11と第2の基板フィルム12とを有する。図1の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム11及び第2の基板フィルム12は、100マイクロメートル(100μm)の厚さを有する。第1の基板フィルム11は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図1の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム11は、第1の基板フィルム11の上に適用された第1の導電性/半導電性電極レイヤ13を有し、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ13は、第1の電極の一部である。第2の基板フィルム12は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図1の提示された例示的な実施例において、第2の基板フィルム12は、第2の基板フィルム12の上に適用された第2の導電性/半導電性電極レイヤ14を有し、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14は、第2の電極の一部である。図1の提示された例示的な実施例において、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ13は絶縁されている。本発明の代替的な実施例において、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14は絶縁されている。更に、本発明の別の代替的な実施例において、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ13及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14は、両方とも絶縁されている。
【0016】
前記第1の基板フィルム11及び前記第2の基板フィルム12並びに/又は前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ13及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14において、完全に導電性、すなわち金属導電性を有する材料の代わりに、半導電性材料を使用することの利点は、特に電極から透明性が期待される場合、又は高い柔軟性及び/又はいくらかの弾性が所望される場合の、よりコスト効果の高い材料の使用の可能性という利点であり得る。半導電性材料の使用は、デバイスの安全性も増大させ、予想外の故障の際に強い電気放電を防止する。
【0017】
前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ13を有する第1の基板フィルム11は、第1の基板フィルム11の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ13の上に適用された電気的絶縁弾性材料15のレイヤ、例えば、電気的絶縁エラストマー被覆15を有する。更に、格子状配列に配置され、第1の基板フィルム11の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ13の電気的絶縁弾性材料15の前記レイヤの上に接着された、又はこれの本質的構造の一部を形成する多数の弾性支持ノジュール16がある。
【0018】
本発明の代替的な実施例において、弾性ベース・レイヤ15は存在しなくてよく、導電性/半導電性電極レイヤ13及び14の両者の間の領域に弾性支持ノジュール16だけが存在する。
【0019】
図1の提示された例示的な実施例において、電気的絶縁弾性材料15の前記レイヤは20マイクロメートル(20μm)の厚さを有し、前記多数の弾性支持ノジュール16は60マイクロメートル(60μm)の高さ、及び60マイクロメートル(60μm)の直径を有する。前記多数の弾性支持ノジュール16は、最大幅に対する高さのアスペクト比の最大値が2であり得る。電気的絶縁弾性材料15のレイヤ及び/又は前記多数の弾性支持ノジュール16は、適切な堆積技術、例えば薄膜堆積技術を使用して適用され得る。前記多数の弾性支持ノジュール16は、シリコンをベースとする有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られ得る。前記多数の弾性支持ノジュール16は、互いから10mm未満の距離だけ離間されて配置され得、好ましくは互いから2mm未満の距離だけ離間されて配置され得る。前記多数の弾性支持ノジュール16は、先端部よりも厚手の基端部を有する円錐状の形状を有し得る。このフォーム・ファクタは、モールドから弾性レイヤを円滑に分離する射出成形において特に適している。図2において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール16は、例えば、離間された2次元的な行/列格子状配列の格子状配列に配置され得る。代替的に、図3において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール16は、離間された三角形状の格子状配列の格子状配列に配置され得る。
【0020】
前記多数の弾性支持ノジュール16が第1の基板フィルム11に適用された後、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14を有する第2の基板フィルム12は、裏返しにされ、多数の弾性支持ノジュール16の上に置かれて、静電作動レイヤを形成する。前記第2の基板フィルム12を第1の基板フィルム11及び多数の弾性支持ノジュール16の上に置く前に、前記第2の基板フィルム12及び/又は前記多数の弾性支持ノジュール16に接着剤が塗布され得る。前記第1の基板フィルム11及び前記第2の基板フィルム12が静電作動レイヤとして上下に積み重ねられたとき、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ13と前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ14との間の距離、すなわち、前記静電作動レイヤにおける電極間の距離は、1000マイクロメートル(1000μm)未満であり得、好ましくは200マイクロメートル(200μm)未満であり得る。図1の提示された例示的な実施例の前記静電作動レイヤにおいて、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ13、14の間の前記距離は80マイクロメートル(80μm)である。
【0021】
前記静電作動レイヤにおいて、前記多数の弾性支持ノジュール16は、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ13、14の間に圧縮空間を提供し、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。図1の提示された例示的な実施例において、前記圧縮空間は80マイクロメートル(80μm)の厚さであるとともに、20マイクロメートル(20μm)の厚さの電気的絶縁弾性材料レイヤ15を有するので、60マイクロメートル(60μm)の空間ギャップが残され、前記圧縮空間のこの空間ギャップは、流体、例えば、空気、窒素、又は例えば誘電性作動流体等の誘電性液体によって充填され得る。提示された例示的な実施例において、前記静電作動レイヤのうちの少なくとも1つは、多数の制限ノジュールを有する格子状配列も有し得、前記多数の制限ノジュールは、前記静電アクチュエータ構造の圧縮を制限するために、弾性支持ノジュールの間、及び前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置される。提示された例示的な実施例において、前記空間ギャップの両側の前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ13、14の表面及び弾性支持ノジュール16は、本質的に疎水性であり得、又は疎水的若しくは超疎水的に被覆され得、又は疎水的若しく超疎水的に処理され得る。
【0022】
本発明による静電アクチュエータ構造は、前記少なくとも第1の電極と第2の電極との間に十分な電圧差が印加されたときに、圧縮するように構成される。前記静電アクチュエータ構造は、柔軟性の基板の一部として埋め込まれ得る。前記静電アクチュエータ構造は、必ずしも平坦ではなく、柔軟性であり得、必ずしも平坦ではない剛性の又は柔軟性の基板の一部として埋め込まれ得る。静電アクチュエータ構造の示された単一の静電作動レイヤ10は、280マイクロメートル(280μm)の全体的な厚さを有し、これに前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ13、14の厚さ及び前記接着剤107の厚さが追加され、このため、全体的な厚さはおよそ290マイクロメートル(290μm)になる。
【0023】
発明者らは、システムは、ノジュール間隔及び寸法について非常に特異的であることを観察した。システムがそのために設計された巨視的作動用途のためには、例えば、100マイクロメートルの直径と1ミリメートルの間隔とを有する100マイクロメートルの高さのノジュールの寸法は、典型的なシリコーン・ラバー硬度で、良好に働く。このようなノジュールは、1KV電圧前後の電位差が印加されたときに、例えば、10から30マイクロメートル圧縮し得る。作動の振幅及び強さは、いくつかのレイヤを上下に積み重ねることによって増大され得る。
【0024】
図4は、本発明の別の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤ20は、第1の基板フィルム21と第2の基板フィルム22とを有する。図4の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム21は、100マイクロメートル(100μm)の厚さを有し、第2の基板フィルム22は、175マイクロメートル(175μm)の厚さを有する。第1の基板フィルム21は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図4の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム21は、第1の基板フィルム21の上に適用された第1の導電性/半導電性電極レイヤ23を有し、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ23は、第1の電極の一部である。第2の基板フィルム22は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図4の提示された例示的な実施例において、第2の基板フィルム22は、第2の基板フィルム22の上に適用された第2の導電性/半導電性電極レイヤ24を有し、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24は、第2の電極の一部である。図4の提示された例示的な実施例において、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ23は絶縁されている。本発明の代替的な実施例において、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24は絶縁されている。更に、本発明の別の代替的な実施例において、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ23及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24は、両方とも絶縁されている。
【0025】
前記第1の基板フィルム21及び前記第2の基板フィルム22並びに/又は前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ23及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24において、完全に導電性、すなわち金属導電性を有する材料の代わりに、半導電性材料を使用することの利点は、特に電極から透明性が期待される場合、又は高い柔軟性及び/又はいくらかの弾性が所望される場合の、よりコスト効果の高い材料の使用の可能性という利点であり得る。半導電性材料の使用は、デバイスの安全性も増大させ、予想外の故障の際に強い電気放電を防止する。
【0026】
前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ23を有する第1の基板フィルム21は、第1の基板フィルム21の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ23の上に適用された電気的絶縁弾性材料25のレイヤ、例えば、電気的絶縁エラストマー被覆25を有する。更に、格子状配列に配置され、第1の基板フィルム21の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ23の電気的絶縁弾性材料25の前記レイヤの上に接着された、又はこれの本質的構造の一部を形成する多数の弾性支持ノジュール26がある。
【0027】
本発明の代替的な実施例において、弾性ベース・レイヤ25は存在しなくてよく、導電性/半導電性電極レイヤ23及び24の両者の間の領域に弾性支持ノジュール26だけが存在する。
【0028】
図4の提示された例示的な実施例において、電気的絶縁弾性材料25の前記レイヤは20マイクロメートル(20μm)の厚さを有し、前記多数の弾性支持ノジュール26は150マイクロメートル(150μm)の高さを有する。前記多数の弾性支持ノジュール26は、最大幅に対する高さのアスペクト比の最大値が2であり得る。電気的絶縁弾性材料25のレイヤ及び/又は前記多数の弾性支持ノジュール26は、適切な微細加工技術、例えば薄膜堆積技術を使用して適用され得る。前記多数の弾性支持ノジュール26は、シリコンをベースとする有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られ得る。前記多数の弾性支持ノジュール26は、互いから10mm未満の距離だけ離間されて配置され得、好ましくは互いから2mm未満の距離だけ離間されて配置され得る。前記多数の弾性支持ノジュール26は、先端部よりも厚手の基端部を有する円錐状の形状を有し得る。このフォーム・ファクタは、モールドから弾性レイヤを円滑に分離する射出成形において特に適している。図2において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール26は、例えば、離間された2次元的な行/列格子状配列の格子状配列に配置され得る。代替的に、図3において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール26は、離間された三角形状の格子状配列の格子状配列に配置され得る。
【0029】
第2の基板フィルム22は、前記第2の基板フィルム22にウェル28を提供するために、微細加工、例えばエッチングされ、前記ウェル28は、第1の基板フィルム21の多数の弾性支持ノジュール26と合致するように配置される。ウェル28は、適切な微細加工技術、例えば異方性ウェット・エッチング技術を使用して微細加工され得る。前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24を有する微細加工された第2の基板フィルム22は、裏返しにされ、ウェル28が多数の弾性支持ノジュール26と一致するように第1の基板フィルム21の多数の弾性支持ノジュール26の上に置かれて、静電作動レイヤを形成する。前記静電作動レイヤにおいて、弾性支持ノジュール26は前記ウェル28内にある。前記第2の基板フィルム22を多数の弾性支持ノジュール26の上に置く前に、前記ウェル28及び/又は前記多数の弾性支持ノジュール26に接着剤27が塗布され得る。図4の提示された例示的な実施例において、前記ウェル28の前記深さは90マイクロメートル(90μm)である。微細加工されるべき第2の基板フィルム22の厚さに応じて、他の適切な深さも使用されてよい。
【0030】
前記第1の基板フィルム21及び前記第2の基板フィルム22が静電作動レイヤとして上下に積み重ねられたとき、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ23と前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ24との間の距離、すなわち、前記静電作動レイヤにおける電極間の距離は、1000マイクロメートル(1000μm)未満であり得、好ましくは200マイクロメートル(200μm)未満であり得る。図4の提示された例示的な実施例の前記静電作動レイヤにおいて、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ23、24の間の前記距離は80マイクロメートル(80μm)である。前記第1の基板フィルム21の多数の弾性支持ノジュール26と合致する前記第2の基板フィルム22のウェル28によって、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ23、24の間の前記距離は、多数の弾性支持ノジュール26の高さよりも著しく小さい。電極間の距離が短いと同じ高さのノジュールについてより強い静電圧縮力が可能となるので、これは、このタイプの構成の主な利点である。最終的に、このことは、同様の作動力に対するより高い圧縮率につながる。
【0031】
前記静電作動レイヤにおいて、前記多数の弾性支持ノジュール26は、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ23、24の間に圧縮空間を提供し、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。図4の提示された例示的な実施例において、前記圧縮空間は80マイクロメートル(80μm)の厚さであるとともに、20マイクロメートル(20μm)の厚さの電気的絶縁弾性材料レイヤ25を有するので、60マイクロメートル(60μm)の空間ギャップが残され、前記圧縮空間のこの空間ギャップは、流体、例えば、空気、窒素、又は例えば誘電性作動流体等の誘電性液体によって充填され得る。提示された例示的な実施例において、前記静電作動レイヤのうちの少なくとも1つは、多数の制限ノジュールを有する格子状配列も有し得、前記多数の制限ノジュールは、前記静電アクチュエータ構造の圧縮を制限するために、弾性支持ノジュールの間、及び前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置される。提示された例示的な実施例において、前記圧縮空間の前記空間ギャップの両側の前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ23、24の表面及び弾性支持ノジュール26は、本質的に疎水性であり得、又は疎水的若しくは超疎水的に被覆され得、又は疎水的若しく超疎水的に処理され得る。
【0032】
本発明による静電アクチュエータ構造は、前記少なくとも第1の電極と第2の電極との間に十分な電圧差が印加されたときに、圧縮するように構成される。前記静電アクチュエータ構造は、柔軟性の基板の一部として埋め込まれ得る。前記静電アクチュエータ構造は、必ずしも平坦ではなく、柔軟性であり得、必ずしも平坦ではない剛性の又は柔軟性の基板の一部として埋め込まれ得る。静電アクチュエータ構造の示された単一の静電作動レイヤ20は、355マイクロメートル(355μm)の全体的な厚さを有し、これに前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤ23、24の厚さ及び前記接着剤27の厚さが追加され、このため、全体的な厚さはおよそ365マイクロメートル(365μm)になる。
【0033】
図5は、本発明の1つの例示的な実施例による、4つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造は、4つの静電作動レイヤ211~214を有する。図5の提示された例示的な実施例において、静電作動レイヤ211~214の各々は、第1の導電性/半導電性電極レイヤを有する第1の基板フィルムであって、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤは第1の電極230の一部である、第1の基板フィルムと、第2の導電性/半導電性電極レイヤを有する第2の基板フィルムであって、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤは第2の電極240の一部である、第2の基板フィルムとを有し、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤのうちの少なくとも1つは、他の導電性/半導電性電極レイヤから絶縁されており、更に静電作動レイヤ211~214の各々は、多数の弾性支持ノジュールを有する格子状配列を有し、前記多数の弾性支持ノジュールは、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤの間に圧縮空間が配置されるように、前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置され、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。本発明による静電アクチュエータ構造は、高電圧ドライバ250、例えばフライバック・モード・ブースト・コンバータを有する高電圧ドライバも有し得る。
【0034】
図5の提示された例示的な実施例において、静電作動レイヤ211~214の各々は、前記静電作動レイヤ211~214の類似の構造要素が、少なくとも部分的に一致、好ましくは完全に一致するように、上下に積み重ねられる。本発明による静電アクチュエータ構造は、前記第1の電極230と前記第2の電極240との間に十分な電圧差が印加されたときに、圧縮するように構成される。前記静電作動レイヤ211~214の一致して接着及び接合された構造によって、前記静電アクチュエータ構造の圧縮効果は、実質的に、一致するレイヤの数の関数として増大される。前記静電作動レイヤ211~214の接着及び接合された構造によって補助されて、上部の穴は回避され、空気圧縮のための潜在的な柱間嚥下(inter-pillar swallowing)による効果の潜在的な減退がカバーされる。更に、潜在的なレイヤ間の揺れ(inter layer bouncing)又は不均一な分離が回避される。
【0035】
静電作動レイヤ211~214の各々は、およそ365マイクロメートル(365μm)の全体的厚さを有するので、提示された例示的な実施例による4つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の厚さは、365マイクロメートルのおよそ4倍(4×365μm)となり、これにより静電アクチュエータ構造の合計の厚さはおよそ1.46ミリメートル(1.46mm)となる。本発明による静電アクチュエータ構造は気密に封止され得る。
【0036】
説明された圧縮ノジュール構造は、気密な封止とともに、レイヤの圧縮を気圧式ポンプ構造として使用することを可能とする。気体又は液体材料が、圧力に影響される様々な弾性構造を作動させるために使用され得、気圧式又は液圧式手段を介してテクスチャー加工された表面を生成し又はシステムのいくらかの部分を作動させる。
【0037】
図6は、本発明の第3の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤの少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造の単一の静電作動レイヤ30は、第1の基板フィルム31と第2の基板フィルム32とを有する。図6の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム31は、100マイクロメートル(100μm)の厚さを有し、第2の基板フィルム32は、175マイクロメートル(175μm)の厚さを有する。第1の基板フィルム31は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図6の提示された例示的な実施例において、第1の基板フィルム31は、第1の基板フィルム31の上に適用された第1の導電性/半導電性電極レイヤ33を有し、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ33は、第1の電極の一部である。第2の基板フィルム32は、通常、電気的絶縁材料であるが、本質的に導電性又は半導電性であってもよい。図6の提示された例示的な実施例において、第2の基板フィルム32は、第2の基板フィルム32の上に適用された第2の導電性/半導電性電極レイヤ34を有し、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ34は、第2の電極の一部である。前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ33及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ34のうちの一方又は両方は、絶縁されている。
【0038】
前記第1の基板フィルム31及び前記第2の基板フィルム32並びに/又は前記第1の導電性/半導電性電極レイヤ33及び前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ34において、完全に導電性、すなわち金属導電性を有する材料の代わりに、半導電性材料を使用することの利点は、特に電極から透明性が期待される場合、又は高い柔軟性及び/又はいくらかの弾性が所望される場合の、よりコスト効果の高い材料の使用の可能性という利点であり得る。
【0039】
前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ33を有する第1の基板フィルム31は、第1の基板フィルム31の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ33の上に適用された電気的絶縁弾性材料35のレイヤ、例えば、電気的絶縁エラストマー被覆35を有する。更に、格子状配列に配置され、第1の基板フィルム31の前記絶縁された第1の導電性/半導電性電極レイヤ33の電気的絶縁弾性材料35の前記レイヤの上に接着された、又はこれの本質的構造の一部を形成する多数の弾性支持ノジュール36がある。図6の提示された例示的な実施例において、電気的絶縁弾性材料35の前記レイヤは20マイクロメートル(20μm)の厚さを有し、前記多数の弾性支持ノジュール36は80マイクロメートル(80μm)の高さを有する。前記多数の弾性支持ノジュール36は、最大幅に対する高さのアスペクト比の最大値が2であり得る。電気的絶縁弾性材料35のレイヤ及び/又は前記多数の弾性支持ノジュール36は、適切な微細加工技術、例えば薄膜堆積技術を使用して適用され得る。前記多数の弾性支持ノジュール36は、シリコンをベースとする有機ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作られ得る。前記多数の弾性支持ノジュール36は、互いから10mm未満の距離だけ離間されて配置され得、好ましくは互いから2mm未満の距離だけ離間されて配置され得る。前記多数の弾性支持ノジュール16は、先端部よりも厚手の基端部を有する円錐状の形状を有し得る。このフォーム・ファクタは、モールドから弾性レイヤを円滑に分離する射出成形において特に適している。図2において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール36は、例えば、離間された2次元的な行/列格子状配列の格子状配列に配置され得る。代替的に、図3において示されるように、前記多数の弾性支持ノジュール36は、離間された三角形状の格子状配列の格子状配列に配置され得る。
【0040】
更に、本例示的な実施例による静電アクチュエータ構造は、気体リザーバ37、例えば空気リザーバを有し、空気が圧縮するとき又は圧縮レイヤから移動するときに、全体的空気圧縮の減少を可能とする。第2の基板フィルム32は、前記第2の基板フィルム32に気体リザーバ37、例えば空気リザーバ37を提供するために、微細加工、例えばエッチングされ、前記気体リザーバ37は、空気体積の圧縮率を減少させるように構成される。気体リザーバ37は、適切な微細加工技術、例えば異方性ウェット・エッチング技術を使用して微細加工され得る。前記第2の導電性/半導電性電極レイヤ34を有する微細加工された第2の基板フィルム32は、裏返しにされ、多数の弾性支持ノジュール36の上に置かれて、静電作動レイヤを形成する。図6の提示された例示的な実施例において、前記気体リザーバ37の前記深さは90マイクロメートル(90μm)である。微細加工されるべき第2の基板フィルム32の厚さに応じて、他の適切な深さも使用されてよい。更に、前記気体リザーバ37の深さは、第2の基板フィルム32の厚さと同一であってもよく、気体リザーバは第2の基板フィルムを貫通する穴を形成する。
【0041】
発明者は、システムは、ノジュール間隔及び寸法について非常に特異的であることを観察した。システムがそのために設計された巨視的作動用途のためには、例えば、100マイクロメートルの直径と1ミリメートルの間隔とを有する100マイクロメートルの高さのノジュールの寸法は、典型的なシリコーン・ラバー硬度で、良好に働く。このようなノジュールは、1KV電圧前後の電位差が印加されたときに、例えば、10から30マイクロメートル圧縮し得る。作動の振幅及び強さは、いくつかのレイヤを上下に積み重ねることによって増大され得る。
【0042】
加えて、半導電性レイヤの抵抗は、前記アクチュエータ構造が、容量性タッチ・センサ又は容量性タッチ・パネルの上に位置決めされ得、タッチ・センサがレイヤを介して感知することを可能とし得るように選択され得る。このことは、容量性タッチ・センサ又は容量性タッチ・パネルは、典型的には、100kHzを超える信号を感知目的のために使用する一方、本発明のアクチュエータは、典型的には、500Hzよりも小さな信号で駆動されることで可能となる。従って、半導電性の材料のアクチュエータ電極を、例えば、100kオーム/スクエアから100Mオーム/スクエアの間の表面抵抗とすることが可能であり、それらは、アクチュエータが作動するために十分に速く荷電され得るが、感知タッチ・パネルのずっと高い周波数の感知信号に対しては絶縁レイヤとして現れる。第1の基板フィルム及び第2の基板フィルムの半導電性は、前記第1の基板フィルム及び前記第2の基板フィルムが、より高い周波数の感知信号に対して絶縁レイヤとして現れるように選択され得る。
【0043】
半導電性材料の使用は、なおも別の便益を有し得、前記アクチュエータが例えば導電性物体による穿刺のリスクに晒されたとき、半導電性材料は、追加的な安全性便益を提供する天然の電流制限方法として働く。
【0044】
図7は、本発明の別の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造は、6つの静電作動レイヤ111~116を有する。図7の提示された例示的な実施例において、静電作動レイヤ111~116の各々は、第1の導電性/半導電性電極レイヤを有する第1の基板フィルムであって、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤは第1の電極130の一部である、第1の基板フィルムと、第2の導電性/半導電性電極レイヤを有する第2の基板フィルムであって、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤは第2の電極140の一部である、第2の基板フィルムとを有し、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤのうちの少なくとも1つは、他の導電性/半導電性電極レイヤから絶縁されており、前記静電作動レイヤ111~116は、静電作動レイヤの積層体として上下に積み重ねられ、前記積層体の中ほどにおいて、二機能性の基板フィルムは、前記静電作動レイヤ111~116のうちの2つ、1つは前記二機能性の基板フィルムの下方のもの、もう一方は前記二機能性の基板フィルムの上方のもののために第1の基板フィルム又は第2の基板フィルムを形成する。本発明による静電アクチュエータ構造は、高電圧ドライバ150、例えばフライバック・モード・ブースト・コンバータを有する高電圧ドライバも有し得る。更に、静電作動レイヤの前記積層体における基板フィルムの各々は、埋め込まれた接続要素121~127、例えば、埋め込まれた金属ワイヤ121~127を有し得、前記埋め込まれた接続要素121~127は、1つ又は複数の導電性/半導電性電極レイヤを前記高電圧ドライバ150に接続する。静電作動レイヤの前記積層体の中ほどで、埋め込まれた接続要素122~126は、前記二機能性の基板フィルムの導電性/半導電性電極レイヤを一体に、及び前記高電圧ドライバ150に接続する。
【0045】
静電作動レイヤ111~116の各々は、多数の弾性支持ノジュールを有する格子状配列も有し、前記多数の弾性支持ノジュールは、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤの間に圧縮空間が配置されるように、前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置され、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。
【0046】
図8は、本発明の第3の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造は、6つの静電作動レイヤ131~136を有する。図8の提示された例示的な実施例において、静電作動レイヤ131~136の各々は、第1の導電性/半導電性電極レイヤを有する第1の基板フィルムであって、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤは第1の電極130の一部である、第1の基板フィルムと、第2の導電性/半導電性電極レイヤを有する第2の基板フィルムであって、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤは第2の電極140の一部である、第2の基板フィルムとを有し、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤのうちの少なくとも1つは、他の導電性/半導電性電極レイヤから絶縁されており、前記静電作動レイヤ131~136は、静電作動レイヤの積層体として上下に積み重ねられ、前記積層体の中ほどにおいて、二機能性の基板フィルムは、前記静電作動レイヤ131~136のうちの2つ、1つは前記二機能性の基板フィルム下方のもの、もう一方は前記二機能性の基板フィルムの上方のもののために第1の基板フィルム又は第2の基板フィルムを形成する。更に、静電作動レイヤの前記積層体の中ほどにおいて、前記二機能性の基板フィルムの二機能性の導電性/半導電性電極レイヤは、前記静電作動レイヤ131~136のうちの2つ、1つは前記二機能性の導電性/半導電性電極レイヤ下方のもの、もう一方は前記二機能性の導電性/半導電性電極レイヤの上方のもののために導電性/半導電性電極レイヤとして機能するように構成される。
【0047】
本発明による静電アクチュエータ構造は、高電圧ドライバ150、例えばフライバック・モード・ブースト・コンバータを有する高電圧ドライバも有し得る。更に、静電作動レイヤの前記積層体における基板フィルムの各々は、埋め込まれた接続要素141~147を有し得、前記埋め込まれた接続要素141~147は、導電性/半導電性電極レイヤ/被覆を前記高電圧ドライバ150に接続する。
【0048】
静電作動レイヤ131~136の各々は、多数の弾性支持ノジュールを有する格子状配列も有し、前記多数の弾性支持ノジュールは、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤの間に圧縮空間が配置されるように、前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置され、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。
【0049】
図9は、本発明の第4の例示的な実施例による、6つの静電作動レイヤを有する静電アクチュエータ構造の少なくとも一部分を示す概念図である。示された静電アクチュエータ構造は、6つの静電作動レイヤ151~156を有する。図9の提示された例示的な実施例において、静電作動レイヤ151~156の各々は、第1の導電性/半導電性電極レイヤを有する第1の基板フィルムであって、前記第1の導電性/半導電性電極レイヤは第1の電極130の一部である、第1の基板フィルムと、第2の導電性/半導電性電極レイヤを有する第2の基板フィルムであって、前記第2の導電性/半導電性電極レイヤは第2の電極140の一部である、第2の基板フィルムとを有し、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤのうちの少なくとも1つは、他の導電性/半導電性電極レイヤから絶縁されており、前記静電作動レイヤ151~156は、静電作動レイヤの積層体として上下に積み重ねられ、前記積層体の中ほどにおいて、二機能性の電気的絶縁弾性材料レイヤは、前記静電作動レイヤ151~156のうちの2つ、1つは前記二機能性の電気的絶縁弾性材料レイヤ下方のもの、もう一方は前記二機能性の電気的絶縁弾性材料レイヤの上方のもののために第1の基板フィルム又は第2の基板フィルムを形成する。更に、静電作動レイヤの前記積層体の中ほどにおいて、前記二機能性の電気的絶縁弾性材料レイヤの二機能性の導電性/半導電性電極レイヤは、前記静電作動レイヤ151~156のうちの2つ、1つは前記二機能性の導電性/半導電性電極レイヤ下方のもの、もう一方は前記二機能性の導電性/半導電性電極レイヤの上方のもののために導電性/半導電性電極レイヤとして機能するように構成される。
【0050】
本発明による静電アクチュエータ構造は、高電圧ドライバ150、例えばフライバック・モード・ブースト・コンバータを有する高電圧ドライバも有し得る。更に、静電作動レイヤの前記積層体における基板フィルムの各々は、埋め込まれた接続要素161~167を有し得、前記埋め込まれた接続要素161~167は、導電性/半導電性電極レイヤ/被覆を前記高電圧ドライバ150に接続する。
【0051】
静電作動レイヤ151~156の各々は、多数の弾性支持ノジュールを有する格子状配列も有し、前記多数の弾性支持ノジュールは、前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤの間に圧縮空間が配置されるように、前記第1の基板フィルムと前記第2の基板フィルムとの間に配置され、前記圧縮空間は、固体材料によって完全に充填されることはない。
【0052】
図10A図10B図11A及び図11Bにおいて示されるように、前記静電アクチュエータ構造の前記2つ以上の静電作動レイヤは、静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体を形成するように上下に積み重ねられたいくつかの静電作動レイヤを有し得る。提示された例示的な実施例において、前記空間ギャップの両側の前記第1及び第2の導電性/半導電性電極レイヤの表面及び弾性支持ノジュールは、本質的に疎水性であり得、又は疎水的若しくは超疎水的に被覆され得、又は疎水的若しく超疎水的に処理され得る。
【0053】
図10A図10B及び図11A図11Bは、静電作動レイヤの少なくとも2つの積層体を有する静電アクチュエータ構造を提示し、少なくとも1つの気体リザーバ、例えば空気リザーバが静電作動レイヤの前記少なくとも2つの積層体の間に配置され、弾性面レイヤが静電作動レイヤの前記少なくとも2つの積層体の上、及び前記少なくとも1つの気体リザーバの上に配置されている。図11A図11Bにおいて、前記静電アクチュエータ構造は、前記弾性面レイヤの上に追加的な堅固な構造も有する。図10A図11Aは、休止状態にあるときの前記静電アクチュエータ構造を提示する。図10B図11Bは、圧縮されて、前記少なくとも1つの気体リザーバの上の前記弾性面レイヤがそれに応じて膨らんだときの前記静電アクチュエータ構造を提示する。
【0054】
図12A図12B図12Cは、本発明の第5の例示的な実施例による、静電アクチュエータ構造の単一レイヤの少なくとも一部分を示す概念図を示す。図12A図12B図12Cにおいて、前記静電アクチュエータ構造は、柔軟性の上側基板を有する。
【0055】
図12Aは、休止状態にあるときの前記静電アクチュエータ構造を提示する。図12Bは、部分的に圧縮されたときの前記静電アクチュエータ構造を提示する。図12Cは、完全に圧縮されたときの前記静電アクチュエータ構造を提示する。図12B図12Cにおいて、前記静電アクチュエータ構造の柔軟性の上側基板が圧縮されると、余剰気体が、支持ノジュールの位置において膨らむ。
【0056】
図13A図13B図13C図13Dは、本発明の例示的な実施例による能動素子を示す。図13A及び図13Bはそれぞれ、能動素子の上面図及び底面図である。図13C及び13Dはそれぞれ、図13Bに描かれた軸AB及びCDに沿った能動素子の輪郭断面図である。
【0057】
図13A図13B図13C図13Dにおいて、電極レイヤは、参照符号101として描かれている。ノジュール103又は柱103は、同一材料のベース・レイヤによって全て接続され、同一材料のベース・レイヤとともに、それらは、弾性レイヤ102を表す単一ユニットを形成する。それにもかかわらず、これは単なる1つの実例に過ぎず、他の実施態様において、ノジュール又は柱は、個々に分散されて、それらの間の接続無しに圧縮的レイヤを形成し得、又は同一の若しくは異なる材料の格子状構造によって接続され得る。提示された能動素子は、隣接するものの間で吸着(引力)を生成するためのそれらの間での電荷の積み重ね及び駆動のためのものと意図される。本発明のもののような静電システムにおける重大な問題は、それらが比較的高い電位差に晒されたときに、電極レイヤの間で電気放電が起こり得ることである。この問題に対処するために、上述のように、種々の例示的な実施例において提示される構成の各々は、印加される電圧差が十分に高いときに、電極間の流体の絶縁破壊を防止するように具体的に適合されなければならない。現在の例示的な実施例において、非導電性の弾性レイヤ102は、電極レイヤ101よりも大きな表面積を有し、この面積差は、印加される電位差が十分に低ければ、電極間の電気放電を防止するために十分である。このように、電極は、弾性ノジュールを形成する同一の材料を使用して絶縁され得、同一のレイヤの一部分を形成し得るが、電極間の流体に接触する露出した電極エリアを、ポリマー又はポリイミド、例えばカプトン、等の高い電気的絶縁性の材料で作られた追加的な絶縁レイヤによって完全に覆うことによって、電気的絶縁も達成又は改善され得、それにより、能動素子の2つ以上の電極の間の電気放電を防止するためのレイヤを形成する。この後者の構成は、以下の図14A図14B図14C図14D図14E図14Fの例示的な実施例において示される。
【0058】
図14A図14B図14C図14D図14E図14Fは、本発明の別の例示的な実施例による能動素子を示す。図14A図14B図14C図14D図14E図14Fの提示された別の例示的な実施例において、電極間の電気放電は、追加的な絶縁レイヤを含むことによって更に防止される。図14A及び図14Bはそれぞれ、能動素子の上面図及び底面図である。図14C及び図14D図14E図14Fはそれぞれ、図14Bに描かれた軸AB及びCDに沿った能動素子の輪郭断面図であり、図14D図14E図14Fはそれぞれ、異なる代替的な構成を提示する。
【0059】
図14A図14B図14C図14D図14E図14Fにおいて、電極レイヤは、参照符号201として描かれている。ノジュール203又は柱203は、同一材料のベース・レイヤとともに、弾性レイヤ202の一体的部分を形成する。絶縁レイヤは、参照符号204として示され、前記絶縁レイヤ204の表面は、電極201のエリアの縁部を超えて延在し、電気的絶縁のために、この領域において非導電性の弾性レイヤ202と直接的に接触する。弾性レイヤ202と絶縁レイヤ204との間の電極201の位置は、図14A及び図14Bにおいては、細い点線として示される。
【0060】
図14D図14E図14Fの種々の代替的な構成は、電極レイヤ201の露出領域の構造のための種々の代替物の実例を表し、これは電気的接続のために必要である。これらは全て、能動素子の両側からの電気的な接触を可能とすることを目的し、以下に説明される図16A図16B図16C図16Dに示されたもの等、いくつかの基本的な積層体構成においてこれは非常に有益である。
【0061】
図14Dにおいて、電気的接触領域において電極レイヤ201は、絶縁レイヤ204の縁部の後で屈曲し、その上側に延在して、その上側面との直接的な接触を保つ。この図において示された構成は、電極レイヤの導電性が縁部における高屈曲によって損なわれない場合にのみ可能である。いくつかの実施例について、例えば、銅フォイル等の固体金属レイヤが適切な材料である。
【0062】
図14Eにおいて、電極レイヤ201は、絶縁レイヤ204の底部側と常に接触しており、接触領域においてそれとともに屈曲し、能動素子の両側から電極を露出させている。これらのレイヤの屈曲縁部の最大曲率に応じて、この構成は、例えば薄膜被覆等のずっと薄い電極レイヤの使用を可能とする。
【0063】
図14Fにおいて、極度に薄い電極レイヤ(図においては不可視)が、絶縁レイヤ204の底部側と常に接触している。より厚い導電性レイヤ205が、接触領域に置かれ、絶縁レイヤ204の底部において電極レイヤと直接的に電気的接触し、縁部の後で屈曲しており、これによって、この領域において能動素子の両側からの電気的接触を促進している。
【0064】
図15A図15B図15C図15D図15Eは、本発明の第3の例示的な実施例による能動素子を示す。図15A図15B図15C図15D図15Eの提示された別の例示的な実施例において、電極間の電気放電は、第2の追加的な絶縁レイヤ305を含むことによって更に防止される。図15A及び図15Bはそれぞれ、能動素子の上面図及び底面図である。図15C図15D及び図15Eはそれぞれ、図15Bに描かれた軸AB、CD及びEFに沿った能動素子の輪郭断面図である。
【0065】
図15A図15B図15C図15D図15Eにおいて、電極レイヤは、参照符号301として描かれている。ノジュール303又は柱303は、同一材料のベース・レイヤとともに、弾性レイヤ302の一体的部分を形成する。第1の絶縁レイヤ304及びその表面は、電極301のエリアの縁部を超えて延在し、電気的絶縁のために、延長された接触領域において非導電性の弾性レイヤ302又は追加的な絶縁レイヤ305と直接的に接触する。弾性レイヤ302(又は絶縁レイヤ305)と絶縁レイヤ304との間の電極301の位置は、図15A及び図15Bにおいては、細い点線として示される。
【0066】
図14A図14B図14C図14D図14E図14Fにおける実例と図15A図15B図15C図15D図15Eにおける実例との間の主な違いは、図14A図14B図14C図14D図14E図14Fにおいて接触領域に向かって狭い直線的エリアに沿って延在される非導電性弾性レイヤ202の一部が、図15A図15B図15C図15D図15Eにおいては、第2の絶縁レイヤ305によって置き換えられていることである。このことは、より単純若しくはより経済的な製造のために、又はより堅牢な最終製品のために有益であり得る。これは、この接続領域における電極レイヤの移動又は屈曲の制限も補助し得る。
【0067】
図16A図16B図16C図16Dは、本発明の例示的な実施例による能動素子積層体を示す。図16A及び図16Bはそれぞれ、能動素子積層体を構成する基本的な能動素子、及び最終的な能動素子積層体の1つの可能な構成の斜視図である。図16C及び図16Dはそれぞれ、図16Bに描かれた軸AB及びCDに沿った能動素子積層体の輪郭断面図である。図16A図16B図16C図16Dにおいて、電極レイヤは要素401として提示され、弾性レイヤは要素402として提示され、それらの対応する柱403を含み、絶縁レイヤは、要素404として提示される。
【0068】
図16A図16B図16C図16Dにおいて、電気的な接続のための接触ポイントは、180度構成に配置されて(直線に沿って)いるが、センサ又はアクチュエータ(センサ/アクチュエータ)の最終的な配置に応じて、それらの間で重なりがない限りは、それらは任意の他の角度を形成するように置かれてよい。
【0069】
能動素子積層体の各側における電極401の間の電気的接触は、それらを一緒に半田付けすることによって、又は、例えば鰐型クリップ等のいくつかの機械的クランプを使用することによって、又はそれらを小型の永久磁石の間にクランプすることによってなされ得る。電気的接続の堅牢さ及び安全性は、これを固体材料(例えば弾性レイヤにおけるもの等)によって封止することによって増大され得る。
【0070】
図17A図17B図17C図17D図17E図17Fは、本発明の別の例示的な実施例による能動素子積層体を構成する基本的な能動素子を示す。図17A及び図17Bはそれぞれ、この新たな能動素子の斜視図及び上面図である。図17C図17D図17E及び図17Fはそれぞれ、図17Bに描かれた軸AB、CD、EF及びGHに沿った能動素子の輪郭断面図である。図17A図17B図17C図17D図17E図17Fにおいて、電極レイヤは参照符号501として描かれ、弾性レイヤ(柱を含む)は参照符号502として描かれ、絶縁レイヤは参照符号504として描かれる。弾性レイヤ502と絶縁レイヤ504との間(又は図17Fの絶縁レイヤ504の間)の電極レイヤ501の位置は、図17Bにおいては、細い点線として示される。
【0071】
図18A図18B図18Cは、本発明の前述の例示的な実施例において説明された能動素子のための可能な積層構成を示す。これらの図において、図17A図17B図17C図17D図17E図17Fにおいて説明された基本的な能動素子は、インターレース構成において2つの基本的な能動素子だけが重なり合う構成に積み重ねられる。図18Aは、図17A図17B図17C図17D図17E図17Fにおいて説明された基本的な能動素子の可能な積層構成の斜視図を表し、図18B及び図18Cはそれぞれ、図18Aに描かれた軸AB及びCDに沿った積層体の輪郭断面図である。図18A図18B図18Cにおいて、電極レイヤは参照符号601として提示され、弾性レイヤは参照符号602として提示され(それらの対応する柱を含む)、絶縁レイヤは参照符号604として提示される。
【0072】
上に述べたように、積層体当たりの基本的な能動素子(図17A図17B図17C図17D図17E図17Fにおけるもの等)の数は、本発明のこの例示的な実施例においては、2つである。しかしながら、図18A図18B図18Cにおいて見られるように、能動レイヤの数(これは弾性レイヤ(502又は602)の数に相当する)は、基本的な能動素子の長さ、すなわちそれが内蔵する弾性レイヤの数によって決定される。
【0073】
図18A図18B図18Cにおいて説明された能動素子の積層体の、図16B図16C図16Dにおいて説明されたものに対する主な優位点は、電極レイヤ当たりの電気的な接続のための単一の接触ポイントの存在、及び積層体のより高い堅牢性である。加えて、図17A図17B図17C図17D図17E図17Fにおいて説明された能動素子の長さが、より長尺のストライプ・ロールを特定の長さで単純に切断することによって調節され得る。しかしながら、このオプションは、電気的な接続のための新たな接触ポイントが切断後に使用可能となることを要し、これは、例えば、弾性レイヤ502の間のエリアにおいて電極レイヤ501の一部を露出させることによって達成され得る。
【0074】
図13Aから図16Dの能動素子、又は図17Aから図18Cの能動素子のどちらのタイプも、射出成形、ロール・トゥー・ロール積層、及び切断ステージ等の既存の産業処理に従って製造され得る。
【0075】
能動素子の積層体は、単一の作動素子として働き得、又はいくつかの積層体(図16A図16B図16C図16D及び図18A図18B図18Cの各構成からのもの、又両者の組み合わせを含むもの)は、同一の電気信号源に並列に接続され得る。上述のような複数の積層体の水平分布は、異なる局所的エリアにおいて異なる作動の生成を促進し得る。
【0076】
信号源は、各積層体に、例えばそれらをケーブル又は積層された導体の導電性メッシュ若しくは格子、又はプリント回路基板、又は任意の他の構成に接続することによって、信号を提供し得る。
【0077】
全ての図において互いに直接的に接触しているように示される全てのレイヤについて、能動素子の堅牢さを増大させるためにそれらを接続する接着剤の小さなレイヤを含み得ることが可能であると想定され得る。
【0078】
圧縮のときに能動素子の表面積が変化しないので(これは、従来の電気活性ポリマー・アクチュエータに対する、柱をベースとした弾性レイヤの主な優位点である)、電極レイヤの材料は、任意の都合のよい導電性又は半導電性材料の中から自由に選択され得、電極の抵抗値は、このレイヤにおいて延伸が起こらないため、積層体の圧縮中に一定のままであることが予期される。
【0079】
弾性レイヤの材料は、天然ゴム、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)等のポリマー、又は複合材料等の任意の非導電性弾性材料でよい。
【0080】
最終的な用途に応じて、能動素子の表面積は1mmから100mの範囲であってよく、又はそれよりも大きくてよい。
【0081】
能動素子の表面形状は規定されない。能動素子は、円形状、六角形状、四角形状、三角形状であってよく、又は任意の複雑な多角形状等の任意の他の形状を有し得る。明確化のために、提示された実例においては、円形状のみが示されている。
【0082】
レイヤとして、能動素子は部分的に屈曲可能であり、緩やかな曲率の表面全体にわたって作動、感知又はその両方を提供するようにその積層体が適応され得る。
【0083】
機能的積層体を生むための個々の能動素子の最小量は2つである。機能的デバイスを生むための能動素子の最大数は規定されない。用途に応じて、それらは2から1000の範囲、又はそれよりも多くてよい。
【0084】
柱の形状は、筒状、立方体状であってよく、又は円錐台若しくは他の形状等のより複雑な構造を有してよい。
【0085】
図16A図16B図16C図16D及び図18A図18B図18Cにおいて提示された能動素子の積層体は、圧縮可能な又は柱構造を有する積層体の底部レイヤの存在が不都合である場合には、弾性レイヤ無しに追加的な底部レイヤ(電極及び絶縁レイヤのみ)を含み得る。
【0086】
図16A図16B図16C図16D及び図18A図18B図18Cにおいて提示された能動素子の積層体は、最終製品の安全性及び耐久性を増大させるため、及び、環境湿度によって引き起こされる潜在的な問題から最終製品を保護するために、絶縁材料のバッグ、パウチ、又は包装材内に収容され得る。
【0087】
代替的な実施例において、前記静電アクチュエータ構造の前記2つ以上の静電作動レイヤは、前記レイヤの類似の構造要素が部分的にも一致しないように上下に積み重ねられた、すなわち、瓦状に(又はうろこ状)上下に積み重ねられた、いくつかの静電作動レイヤを有する。前記代替的な実施例において、1つの静電作動レイヤにおける力によって引き起こされ得る屈曲が、1つ又は複数の別の静電作動レイヤの弾性支持体のうちの1つ又は複数のものの近傍に揃う。このことは、全体的な構造において、前記代替的な実施例による静電作動レイヤの積層体が、前記構造の個々のレイヤに起こる屈曲に関わらず、おおむね均一に圧縮することにつながる。ここで、この文脈において屈曲とは、弾性支持ノジュールの間のエリアが、弾性支持ノジュールの場所におけるよりも、対向する電極に接近するように静電作動レイヤが湾曲される処理を指す。
【0088】
別の代替的な実施例において、前記静電アクチュエータ構造は、より剛性のタイル構造及びより剛性の構造の間のより展性のエリアの格子を有する。前記別の代替的な実施例の構造は、展性のエリア構造の場所におけるアクチュエータ表面の屈曲を可能とする一方、剛性のタイル構造の場所における局所的な剛性を保持し、前記剛性のタイル構造は、圧縮を促進しつつ、静電作動レイヤに電位差が印加されたときにノジュール間の屈曲に抵抗する。
【0089】
本発明の特定の構成及び構造は、同一のシステムにおいて作動及び敏感な検知を提供し得、このことは便利であるとともに、既存のデバイスでは一般的ではない。
【0090】
本発明の特定の構成及び構造は、同一のシステムにおいて作動及び敏感な検知を提供し得る。駆動信号が知られていると、静電容量及びアクチュエータによって引き込まれる電流における変化が監視され得、前記アクチュエータの全体的圧縮を推定することが可能である。更に、システムの静電容量は、システムを顕著に圧縮する駆動信号無しでも監視され得る。この場合、システム静電容量における変化は、外力によるシステムの圧縮を示す。様々な較正処置が、測定された信号値を、システムの物理的変形の変化の推定値に変えることを可能とする。システムは、サブシステムに分割もされ得、その各々はそれ自体の監視回路を有し、システムにおける物理的変化のより局所的な監視を可能とする。静電容量変化は、電圧変化、電流引き込み変化、又はシステムにおける発振器周波数における変化等の様々な他の信号代理物を介して監視され得ることが更に留意される。
【0091】
電極レイヤの互いに入り込んだ構成は、積層体の静電容量を小さな積層体圧縮に対して非常に敏感にする。従って、圧縮感知についての機能性は、積層体の静電容量の常時監視によって達成される。
【0092】
弾性支持ノジュールを有する代わりに、前記静電アクチュエータ構造の更なる代替的な実施例は、例えば上部レイヤに装着された剛性の支持体、弾性レイヤ材料、発泡体充填構造、連続的支持体、連続的制限構造、ウェブ構造、隆起支持体を有し得る。前記静電アクチュエータ構造の1つの更なる代替的な実施例は、圧縮されたときにばねとして働く、空気が封止されたセルを有し得る。前記静電アクチュエータ構造の別の更なる代替的な実施例は、電極間でばねとして働く固体半発泡体(solid semi-foam)を有し得る。ここで、固体半発泡体とは、空気パックが完全には封止されていないが、気泡間の固体壁に穴を残して重合する固体発泡体を意味する。前記静電アクチュエータ構造の第3の更なる代替的な実施例は、圧縮されたときにばねとして働く、適切なポリマーから作られた3Dプリンティング又はモジュール化された3D格子を有し得る。この文脈において、磁石が利用され得、より高いばね定数値に対して、反極性で互いに向かい合うように置かれて拘束された磁石の反発作用が分離ノードとして用いられ得る。
【0093】
上記の説明及び添付の図面は、本発明を実施及び使用するための発明者らの知る最良の手法を教示することのみを意図されることを理解されたい。本発明の概念は様々な手法において実現され得ることは、当業者には明らかであろう。故に、上記の教示に鑑みて当業者に理解されるように、本発明の上述の実施例は、本発明から逸脱することなく修正され得、又は変更され得る。従って、本発明及びその実施例は、上述の実例に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲において変更され得るものであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図18A
図18B
図18C