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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】白色光源
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220308BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220308BHJP
   C09K 11/73 20060101ALI20220308BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/08 J
C09K11/73
C09K11/64
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021007450
(22)【出願日】2021-01-20
(62)【分割の表示】P 2018518392の分割
【原出願日】2017-05-19
(65)【公開番号】P2021068918
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2016101548
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507194969
【氏名又は名称】ソウル セミコンダクター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL SEMICONDUCTOR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】97-11, Sandan-ro 163 beon-gil, Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 達規
(72)【発明者】
【氏名】津田 亮二
(72)【発明者】
【氏名】松田 直寿
(72)【発明者】
【氏名】舩山 欣能
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138809(JP,A)
【文献】特開2002-171000(JP,A)
【文献】特開2014-157752(JP,A)
【文献】特開2015-115494(JP,A)
【文献】特開2011-071333(JP,A)
【文献】特開2005-159311(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108065(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/077740(WO,A1)
【文献】特開2013-175548(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064930(WO,A1)
【文献】特表2013-521617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0220920(US,A1)
【文献】米国特許第06504179(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286304(US,A1)
【文献】中国実用新案第204167359(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
C09K 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(以下LEDと称す)と蛍光体の組合せからなる白色光源であり、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルの、400nmから500nmの波長範囲に存在する少なくとも1以上の極大値のうち、最大値を示す極大値と、前記最大の極大値の長波長側に隣接する極小値において、極小値に対する極大値の比率(極大値を示す波長における発光スペクトル強度/極小値を示す波長における発光スペクトル強度)が1.9以上となる発光スペクトルピークが存在せず、前記LEDが350nm以上420nm以下に発光ピークを有する紫外乃至紫色光を出射すると共に、前記蛍光体が青色蛍光体を含有する混合蛍光体であり、前記混合蛍光体から出射される白色光が、400nmから780nmの波長範囲に亘って連続スペクトルを有し、
前記混合蛍光体は、波長範囲510nmから570nmに発光ピークを有するセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系緑色乃至黄色蛍光体と、前記青色蛍光体とを含み、
前記青色蛍光体が、発光ピーク波長が430nmから470nmの範囲内にある第一の青色蛍光体と、発光ピーク波長が470nmを超え、485nmまでの範囲内にある第二の青色蛍光体の混合蛍光体を含み、前記第一の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体およびユーロピウム付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体のうち少なくとも1種であり、前記第二の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であって、
前記白色光源から出射される白色光の平均演色評価数Raが96以上である、白色光源。
【請求項2】
請求項1記載の白色光源において、前記白色光源から出射される白色光の演色評価数R1からR15の全てが85以上である白色光源。
【請求項3】
請求項2記載の白色光源において、前記白色光源から出射される白色光の色温度が2500K乃至6500Kである白色光源。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の白色光源において、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の重量比率が、29重量部:71重量部乃至10重量部:90重量部の範囲にある白色光源。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色光源において、前記第二の青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.44、0≦y≦0.1を満足する数値である)の化学組成を有する白色光源。
【請求項6】
請求項5に記載の白色光源において、前記第一の青色蛍光体のうち少なくとも1種が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.35、0≦y≦0.1を満足する数値である。)の化学組成を有する白色光源。
【請求項7】
請求項5乃至6のいずれか1項に記載の白色光源において、前記混合蛍光体は、前記第一の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以上、前記第二の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以下である白色光源。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の白色光源において、前記緑色乃至黄色蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体を更に含む白色光源。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の白色光源において、前記蛍光体が赤色蛍光体を更に含み、前記赤色蛍光体が、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミニノシリケート蛍光体、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種である白色光源。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の白色光源において、前記蛍光体の平均粒子径が10μm以上50μm以下である白色光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭やオフィスのみならず、例えば美術館や病院等の特殊用途にも使用可能な照明用白色光源で、明るく高演色であると同時に、人体の健康面等にも配慮された光を提供することのできる白色LEDに関する。
【背景技術】
【0002】
白色LEDが開発されて約20年が経過し、そのコンパクト性、長寿命、低電圧駆動、水銀フリー等の特徴が市場に認められる様になって、従来の蛍光灯(FL)や白熱電球さらにはハロゲン電球等に代わり、今や照明製品市場の最有力商品として、普及されるに至っている。
【0003】
白色LED製品の部材構成としては、近紫外乃至紫色光(350~420nm)を発する発光ダイオード、もしくは青色光(430~480nm)を発する発光ダイオードのうち何れか1種と、前記発光ダイオードからの一次光を吸収して、二次光を発する蛍光体とを組合せた、主として2つのタイプが代表的なものである。
【0004】
2種類の白色LEDのうち、近紫外乃至紫色光(350~420nm)を発光する発光ダイオード(以下、紫外乃至紫色LEDと呼ぶ)を用いるものは、蛍光体として、青色、緑色乃至黄色、および赤色の3乃至4色の蛍光体を用いることで白色光を得ている。一方、青色光(430~480nm)の発光ダイオード(以下、青色LEDと呼ぶ)を用いるものは、蛍光体として、緑色乃至黄色と赤色との2乃至3色の蛍光体、または主に黄色の蛍光体を用いることにより白色光を得ている。
【0005】
青色LEDを用いるタイプのうち、緑色乃至黄色と赤色の少なくとも2色の蛍光体を用いるものについては、色ムラが大きく、発光色度のばらつきも大きいという問題があり、主に黄色の蛍光体を用いるものについては、演色性が悪く、暖かみに欠ける白色光しか得られないとの問題がある。また、いずれの蛍光体を使用する場合でも、青色LEDの発光強度が強すぎる為、市場においてブルーライトハザード等の問題点も指摘される様になっている。人体が強い青色光に晒される事により、眼精疲労を起こしたり、人体の持つ概日リズムに乱れが生ずるなどの、健康被害の問題である。
【0006】
一方、紫外乃至紫色LEDを用いるタイプについては、青色LEDを用いるものに比べて、使用する蛍光体の種類が多いことから、色再現性が広く、所定の色度の白色光を自在に得ることのできる利点を有している。しかも、LEDの発するシャープな光は、ほぼ全量が蛍光体に吸収され、蛍光体により可視光に変換されるから、従来の蛍光灯や白熱電球等に近い自然な白色光を得ることができる。従い、ブルーライトハザード等の問題に対しても、十分に対策された光源とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3700502号公報
【文献】特許第3503139号公報
【文献】特許第4989936号公報
【文献】特許第5330263号公報
【文献】特許第5390390号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】照明学会誌 第94巻 第4号、2010年4月
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、以下の白色光源が提供される。
【0010】
[1] 発光ダイオード(以下LEDと称す)と蛍光体の組合せからなる白色光源であり、蛍光体の1種が少なくともセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体であって、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルの、400nmから500nmの波長範囲に存在する少なくとも1以上の極大値のうち、最大値を示す極大値と、前記最大の極大値の長波長側に隣接する極小値において、極小値に対する極大値の比率(極大値を示す波長における発光スペクトル強度/極小値を示す波長における発光スペクトル強度)が1.9以上となる発光スペクトルピークが存在しないことを特徴とする白色光源。
【0011】
[2] [1]記載の白色光源において、LEDが350nm以上420nm以下に発光ピークを有する紫外乃至紫色光を出射すると共に、前記蛍光体が青色蛍光体を更に含有する混合蛍光体であり、前記混合蛍光体から出射される白色光が、400nmから780nmの波長範囲に亘って連続スペクトルを有することを特徴とする白色光源。
【0012】
[3] [1]または[2]記載の白色光源において、セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体が、波長範囲510nmから570nmに発光ピークを有する緑色乃至黄色蛍光体であり、前記青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体もしくはユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体の少なくとも1種であり、発光ピークが430nmから480nmの波長範囲にあることを特徴とする白色光源。
【0013】
[4] [3]記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu
(式中、x、yは0≦x≦0.44、0≦y≦0.01を満足する数値である)
の化学組成を有することを特徴とする白色光源。
【0014】
[5] [4]記載の白色光源において、前記青色発光蛍光体の発光ピーク波長が440nmから470nmの波長範囲にあることを特徴とする白色光源。
【0015】
[6] [4]乃至[5]記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu
(式中、x、yは0≦x≦0.35、0≦y≦0.01を満足する数値である。)
の化学組成を有することを特徴とする白色光源。
【0016】
[7] [1]乃至[6]記載の白色光源において、前記蛍光体の平均粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする白色光源。
【0017】
[8] [1]乃至[7]記載の白色光源において、前記蛍光体が赤色蛍光体を更に含み、前記赤色蛍光体が、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミニノシリケート蛍光体、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源。
【0018】
[9] [4]乃至[8]記載の白色光源において、前記蛍光体にはセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体とユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の2種類の蛍光体が含まれており、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の重量比率が、29重量部:71重量部乃至10重量部:90重量部の範囲にあることを特徴とする白色光源。
【0019】
[10] [1]乃至[9]記載の白色光源において、前記白色光源から出射される白色光の平均演色評価数Raが96以上であり、演色評価数R1からR15の全てが85以上であることを特徴とする白色光源。
【0020】
[11] [3]記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.44、0≦y≦0.1を満足する数値である)の化学組成を有することを特徴とする白色光源。
【0021】
[12] [11]記載の白色光源において、前記青色発光蛍光体の発光ピーク波長が440nmから470nmの波長範囲にあることを特徴とする白色光源。
【0022】
[13] [11]乃至[12]記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.35、0≦y≦0.1を満足する数値である。)の化学組成を有することを特徴とする白色光源。
【0023】
[14] [11]乃至[13]記載の白色光源において、前記蛍光体にはセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体とユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の2種類の蛍光体が含まれており、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の重量比率が、29重量部:71重量部乃至10重量部:90重量部の範囲にあることを特徴とする白色光源。
【0024】
[15] [2]記載の白色光源において、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体が、波長範囲510nmから570nmに発光ピークを有する緑色乃至黄色蛍光体であり、前記青色蛍光体は発光ピーク波長が430nmから470nmの範囲内にある第一の青色蛍光体の少なくとも1種と、発光ピーク波長が470nmを超え、485nmまでの範囲内にある第二の青色蛍光体の少なくとも1種の混合蛍光体であり、前記第一の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体およびユーロピウム付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体のうち少なくとも1種であり、前記第二の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であることを特徴とする白色光源。
【0025】
[16] [15]記載の白色光源において、前記混合蛍光体は、前記第一の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以上、前記第二の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以下であることを特徴とする白色光源。
【0026】
[17] [3]乃至[16]記載の白色光源において、前記緑色乃至黄色蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体を更に含むことを特徴とする白色光源。
【0027】
[18] [1]乃至[17]記載の白色光源において、前記蛍光体が赤色蛍光体を更に含み、前記赤色蛍光体が、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミニノシリケート蛍光体、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源。
【0028】
[19] [1]乃至[18]記載の白色光源において、前記蛍光体の平均粒子径が10μm以上50μm以下であることを特徴とする白色光源。
【0029】
[20] [1]乃至[19]記載の白色光源において、前記白色光源から出射される白色光の平均演色評価数Raが96以上であり、演色評価数R1からR15の全てが85以上であることを特徴とする白色光源。
【0030】
上記白色光源は、以下の知見に基づいてなされたものである。
【0031】
紫外乃至紫色LEDを用いた白色LEDは、高演色で人体に優しい白色光を得ることができるとの利点を有しているが、得られる白色発光の強度が、青色LEDを用いた白色LEDより劣るとの問題がある。特に、長時間連続点灯させた場合の発光強度において、両者間の差異が拡がる傾向にある。
【0032】
紫外乃至紫色LEDを用いた白色LEDにおいて、このような問題が見られるのは、使用する蛍光体の特性の違いに起因するものである。問題となるのは、緑色乃至黄色発光の蛍光体の種類で、青色LEDと組み合わせる場合、通常はセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(以下YAG蛍光体と呼ぶ)が一般的に使用されるが、紫外乃至紫色LEDと組み合わせる場合には、いくつかの候補はあるが、例えばユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体が代表的な蛍光体である。
【0033】
前記2種類の蛍光体は、緑色乃至黄色に発光する蛍光体として有力な材料であり、両者の発光強度は略同等のレベルである。ただしYAG蛍光体は、単に発光強度が優れるだけでなく、高硬度、高強度、高耐熱性、高耐食性等の特性を同時に備えており、安定かつ強固な材料でもある。従って、前記2種類の蛍光体の発光特性を総合的に比較すると、点灯初期の発光強度は略同等であっても、長時間連続点灯させた場合では、YAG蛍光体に比べてユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体の方が、動作環境の影響を強く受けて、発光強度がより大きく低下する傾向にある。特に空気中の水分等の影響を受け易く、長時間連続点灯させると、両者間で大きな特性差が生じることになる。
【0034】
紫外乃至紫色LEDを用いた白色LEDの上記問題が、緑色乃至黄色蛍光体の違いにより生ずるものであれば、紫外乃至紫色LEDとYAG蛍光体を組み合わせた白色LEDであれば、上記の問題は解決されるはずである。しかしながら、YAG蛍光体は、青色LEDと組み合わせて、緑色乃至黄色に明るく発光するものの、紫外乃至紫色LEDと組合せた場合には、黄色等に発光するどころか、殆ど発光しなくなるとの課題があった。この様な新たな課題は、YAG蛍光体の励起スペクトルが、青色波長域には存在するが、紫外乃至紫色域には存在しないためである。従い、紫外乃至紫色LEDを用いた従来の白色LEDにおいては、蛍光体としてYAGを使用するとの発想が無く、ユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体が、YAG蛍光体の代替品として、長年使用されてきたものである。
【0035】
本発明の白色LEDは、紫外乃至紫色LEDと、青色蛍光体、及びYAG蛍光体からなる少なくとも3種類の部材を含む。ここで青色蛍光体には、LEDから出射される紫外光および紫色光を吸収して、青色光に変換する材料が使用される。そしてYAG蛍光体は、青色蛍光体から出射される青色光を吸収して、緑色光乃至黄色光に変換された光を出射することになる。この時、青色蛍光体から出射された青色光は、一部が青色光のまま装置の外部に取出され、他の一部がYAG蛍光体により緑乃至黄色光に変換された後、装置の外部に取出されるため、発光装置からは青色光と緑色乃至黄色光の混合された混合白色光が取出されることになる。
【0036】
上記の白色LEDでは、本発明において必須となる構成部材のみを説明したが、使用する蛍光体の種類等を更に増やしても良い。白色光を得るためには、三原色(赤、青、緑)に相当する蛍光体を全て含むことが望ましく、赤色蛍光体を追加使用することが望ましい。また、本発明の白色LEDは高演色性を示すことを特長としており、更に青緑蛍光体や深赤色蛍光体を加えても良い。この様な発光装置では、白色光を構成するあらゆる波長の可視光成分を過不足無く含むことになり、あたかも太陽光である様な、自然な白色光を再現することができる。
【0037】
本発明の白色LEDでは、紫外乃至紫色LEDを用いた発光装置の特長である、様々な色温度の白色光を高演色に再現できるとの利点を活かしたまま、従来からの欠点とされていた発光強度の問題、特に長時間に亘る連続点灯時の強度低下問題を改善し、信頼性に優れた白色照明を提供することができる。
【0038】
そして本発明の白色LEDでは、YAG蛍光体の使用による上記利点を活かしながら、ブルーライトハザード等の懸念が無く、健康面に配慮された白色光を提供することもできる。YAG蛍光体は紫外光や紫色光励起で発光しないことから、従来は青色LEDとのみ組合せ使用されてきた。青色LEDを用いた白色光源から出射される白色光のスペクトル分布において、青色成分はLEDからの直接光が利用されるため、青色光の特定波長に強い発光ピークが生じるのを、防ぐことができないものであった。ところが、人間の眼球中の細胞の中で、概日リズムに関係する細胞は、前記青色光に高い感度を有しているため、青色波長域に強い発光ピークが存在すると、過剰な青色光が人体内に吸収され、人体に様々な影響を与えると言われている。
【0039】
一方、本発明の白色LEDの場合、白色発光の青色成分は、LEDからの直接光を利用するのでは無く、LEDから出射される紫外乃至紫色光を蛍光体が吸収し、蛍光体により変換された二次光を利用している。青色光を発する蛍光体には様々な材料がある為、材料を選択することにより、発光波長やスペクトル形状、発光強度等を自由に調整することが可能である。従い、人体に有害とされる過剰な青色発光成分を大きく低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】緑色乃至黄色発光蛍光体(YAG)の発光スペクトルを示す図。
図2】緑色乃至黄色発光蛍光体(YAG)の励起スペクトルを示す図。
図3】青色蛍光体(アルカリ土類ハロリン酸塩)の発光スペクトルを示す図。
図4】本発明の白色光源から出射される5000Kの白色光の発光スペクトル。
図5】本発明の白色光源から出射される2500Kの白色光の発光スペクトル。
図6】緑色乃至黄色蛍光体の光束維持率曲線。
図7】実施形態の白色光源の一例を示す概略図。
図8】白色光源に用いられるLEDモジュールの第一例を示す断面図。
図9】白色光源に用いられるLEDモジュールの第二例を示す断面図。
図10】白色光源に用いられるLEDモジュールの第三例を示す断面図。
図11】白色光源に用いられるLEDモジュールの第四例を示す断面図。
図12】白色光源に用いられるLEDモジュールの第五例を示す断面図。
図13】実施例1,11及び比較例7の白色光源から出射される白色光の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(紫外乃至紫色LED)
LEDは発光ピーク波長が紫外乃至紫色領域にあるものを使用することが望ましく、具体的には350nmから420nmの範囲とする。発光ピーク波長が420nmより長波長にある場合、蛍光体と組み合わせた場合に、いわゆる青色励起蛍光体しか使用することができず、使用可能な蛍光体の種類が著しく制限されるため、あらゆる色温度の白色光で高い演色性を示す出力光を得ることが難しくなる。またLEDの放つ強い青色光がブルーライトハザード等の原因になるとの問題もある。一方、ピーク波長が350nmより短波長にある場合、励起波長域が拡大して、使用可能となる蛍光体の種類の幅を拡張できるとの一面もあるが、現状では十分な出力強度を有する紫外LEDが開発されておらず、実用的な明るさを得るとの観点では、350nmが下限値である。従い、将来において、出力強度の改善されたLEDが開発されれば、発光ピークの下限値はこの限りではない。また、LEDの種類については、発光ピーク波長以外では特に制限される条件は無く、レーザー発光のLEDであっても、またLED材料がどの様なものであっても構わない。
(緑色乃至黄色発光蛍光体)
本発明では、緑色乃至黄色発光蛍光体として、少なくともYAG蛍光体を使用することが望ましい。YAG蛍光体とは、セリウム(Ce)を賦活材とし、基本組成がYAl12であるガーネット構造の材料を母体とする蛍光体(YAl12:Ce)である。この蛍光体は緑色乃至黄色に明るく発光すると同時に、ガーネット構造を有する無機材料の特徴として、高硬度、高強度、高耐熱性、高耐食性等の優れた特徴も合わせて有している。従い、様々な使用環境において、安定な発光特性を発揮することのできる材料として重宝されており、白色LED用以外にも過去においては水銀灯やCRT等、様々な発光装置に使用されてきた。
【0042】
図1図2において、YAG蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルを示す。それぞれの発光スペクトルは浜松ホトニクス株式会社製C9920-02G絶対PL量子収率測定装置を用い、シャーレに詰めた蛍光体粉末を450nmの青色光で励起し、測定したものである。
【0043】
本発明の白色LEDにおいて、YAG蛍光体の最も望ましい発光スペクトルは、図1の1に示される曲線で、550nmに発光ピークを有し、470nmから780nmまで連続スペクトルを有する黄色発光を示すものである。また、白色発光の緑色成分または黄色発光成分として利用可能なピーク波長の範囲としては、下限値が図1の曲線2のピーク波長に相当する510nm、上限値が図1の曲線3のピーク波長に相当する570nmであることが望ましい。
【0044】
一方、図2は、図1に示されるピーク波長が550nmであるYAG蛍光体の発光スペクトルに対応する、励起スペクトルを示したものである。図2から判る様に、YAG蛍光体の励起スペクトルは、青色波長域より短波長側にある光を殆ど吸収せず、紫外乃至紫色LEDとYAG蛍光体を組合せても、蛍光体は殆ど発光しない。YAG蛍光体が実用レベルの明るさに発光するには、励起源となるLEDの発光ピーク波長が、青色波長域に存在することが求められる。図2を参照し、励起光源の発光スペクトルに求められる望ましいピーク波長の範囲を確認すると、YAG蛍光体の励起光の吸収量が最大値から最大値の99%までとなる範囲で、440nmから470nm、最大値および最大値の95%までとなる範囲で430nmから480nmの波長範囲となる。
【0045】
YAG蛍光体は発光ピーク波長が510nmから570nmまでの、緑色乃至黄色発光である、幅広い発光波長域を示す蛍光体であるが、YAG蛍光体の発光色を調整するには、付活材であるCeの濃度、もしくは母体材料の組成を変化することで可能である。
【0046】
例えば付活材のCe濃度を変えることによって、蛍光体の発光ピーク波長を緑色領域から黄色領域まで変化することができる。図1に示したYAG蛍光体の発光スペクトルにおいて、各組成式は、曲線1が(Lu0.993Ce0.007Al12、曲線2が(Y0.983Ce0.017Al12、曲線3が(Y0.933Ce0.067)AlO1に、夫々相当する。なお曲線1の蛍光体では、Ce濃度の低減に合わせて、母体材料の組成変更も含めて調整した蛍光体である。
【0047】
母体材料YAl12におけるY元素をLa等の他の希土類元素で置換することも可能である。中でも、Y元素をLu元素に置換した略称LuAG蛍光体や、Y元素をTb元素で置換した略称TAG蛍光体等が業界では有名である。
【0048】
また、母体となる材料の化学組成YAl12を微調整することによっても、発光色の調整が可能である。具体的には、母体材料のガーネット結晶構造を保持したまま、YとAlの組成比を微調整することによって、発光色を変化させることができる。ただし、YとAlの組成比のみでは、発光色の変化量は十分ではなく、通常はYやAl原子の一部を他の原子と置換させた固溶体を合成する方法が用いられる。
【0049】
例えば、Yの一部をGdで、Alの一部をGaで置換させた下記組成の蛍光体が使用される場合がある。(Y1-AGd(Al1-BGa12:Ce上記組成において、A=0、B=0である場合は、黄色発光を示す蛍光体である。そしてA=0の時、Bを徐々に増加させると発光ピーク波長は短波長側にシフトし、発光色全体が緑色側に移動してゆく。一方B=0とし、Aを徐々に増加させると、発光ピーク波長は長波長側にシフトし、発光色全体を黄色側に移動させることができる。
【0050】
また、YやAlの一部を様々な種類の元素と置換することもできる。例えば下記組成の蛍光体である。
【0051】
γULn3-U-VωVαXAl5-X-YβY12:Ce
上記組成式において、LnはY、Gd、Luからなる元素のうち、いずれかの元素であり、蛍光体母体の基本組成はYAl12である。ただし、Yの変わりにLuや(γ、ω)のペアとなる微量元素、Alの変わりに(α、β)のペアとなる微量元素を置換することにより、発光色を変化させることが可能である。例えば、ピーク波長を長波長側にシフトさせる場合には、(α、β)として(Mg,Si)の元素のペア、(γ、ω)として(Sr、Zr)の元素のペアで置換すれば良い。また短波長側にシフトさせる場合は、Yの一部をLuで置換すれば良い。そして、置換するペア元素は前記元素に限られることなく、(α、β)として例えば(B,Sc)、(γ、ω)として例えば(Sr,Hf)等で置換しても良い。これらの蛍光体において、置換量の望ましい範囲は、変数x、yはx<2、y<2、0.9≦x/y≦1.1の各関係式を満たすこと、変数u,vはu≦0.5、v≦0.5、0.9≦u/v≦1.1の各関係式を満たすことが求められる。
【0052】
以上の通り、本発明に使用可能なYAG蛍光体として、ガーネット構造を有するYAl12を基本組成とする、様々な変形組成の蛍光体を列挙することができる。本発明において、前記した様々な組成のYAG蛍光体を総称して、YAG系蛍光体もしくはイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と呼称する。本発明においては、発光特性に大きな違いが無ければ、YAG系蛍光体のうち、どの組成の蛍光体を使用しても構わない。
(緑色乃至黄色発光蛍光体混合物)
本発明の白色LEDにおいて、緑色乃至黄色成分の発光を示す蛍光体には、すくなくとも前記YAG系蛍光体を使用する必要はあるが、YAG系蛍光体のみに限定することはない。YAG系蛍光体を単独で使用する方が、YAG系蛍光体の特長を、より有効に活かすことは可能であるが、YAG系蛍光体に加えて、既存の有力蛍光体を混合使用して、既存蛍光体の長所も加味したハイブリッド型蛍光体とすることも可能である。混合使用の可能な既存蛍光体としては、例えばユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu)、或いはユーロピウム付活サイアロン蛍光体((Si,Al)(O,N):Eu)等が使用可能である。
【0053】
前記の混合蛍光体において、YAG系蛍光体と組み合わせる蛍光体として、ユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体を選択した場合、YAG系蛍光体を単独使用した場合に比べて演色特性を改善することができる。これは、ユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体の発光スペクトルの方が、YAG系蛍光体の発光スペクトルに比べて、緑乃至黄色波長域の発光面積が大きい事による。なお、ユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体の混合割合が多いほど、ハイブリッド蛍光膜の演色特性改善効果は大きくなるが、本発明の本来の目的は緑色乃至黄色蛍光膜の光束維持率向上であり、緑色乃至黄色蛍光体のトータル重量に占めるYAG系蛍光体の割合は、少なくとも40重量%とすることが好ましい。
(青色発光蛍光体)
本発明の白色LEDにおいて、YAG系蛍光体とLEDの組み合わせのみでは白色光を得ることができない、何故なら本発明の白色LEDは、LEDとして紫外乃至紫色LEDを使用しており、このLEDからの光を受けて、YAG系蛍光体が緑色乃至黄色光を発することができないためである、本発明においては、LEDからの紫外乃至紫色光を受けて、青色に発光する蛍光体を必ず使用することが必要となる。
【0054】
本発明の白色LEDに使用する青色蛍光体としては、350nm乃至420nmの紫外乃至紫色光を吸収して、青色に発光する蛍光体であれば、どのような蛍光体材料を用いても構わない。青色蛍光体から照射される青色光、そして前記青色光の一部を吸収して緑色乃至黄色光に変換するYAG系蛍光体の使用により、発光装置から混合白色光を出射することができる。青色蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体((Sr,Ba,Ca)(POCl:Eu)、或はユーロピウム付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体(BaMgAl1627:Eu)等を使用することができる。
【0055】
前記した青色蛍光体のうち、白色LEDの発光強度を考慮した場合、本発明の青色蛍光体には、紫外乃至紫色光に励起されて成るべく明るく発光し、かつ、YAG系蛍光体励起スペクトルとのマッチングが成るべく良好な青色蛍光体を使用することが望ましい。この様な観点からは、下記組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体を使用することが望ましい。
【0056】
(Sr1-XBa,Ca(POCl:Eu
この組成の蛍光体のうち、YAG蛍光体の励起スペクトルにおいて、吸収率が最大値もしくは最大値の95%以上の吸収率を示す青色光の波長範囲が430nm乃至480nmであり、この波長範囲を満たす組成は0≦x≦0.44、0≦y≦0.1である。また、yは、0≦y≦0.01の範囲を取り得る。
また、YAG蛍光体の励起スペクトルにおいて、吸収率が最大値もしくは最大値の99%以上の吸収率を示す青色光の波長範囲が440nm乃至470nmであり、この青色光を放射することのできる前記組成式の範囲は、0≦x≦0.35、0≦y≦0.1の組成に相当する。また、yは、0≦y≦0.01の範囲を取り得る。
【0057】
前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の組成式において、Caの組成比を0≦y≦0.1とした時に、Sr元素に対するBa元素の比率を増加させるにつれて、発光ピーク波長は長波長にシフトする。x=0の時、発光ピーク波長は430nmであり、x=0.35の組成において発光ピーク波長は470nm、そしてx=0.44となる組成で発光ピーク波長は480nmまで移動する。xが0.44を超えた場合は、発光ピーク波長が480nmより長波長側に移動するが、xが0.5に達した時、発光ピーク波長は485nmとなり、それ以上xを大きくしても、ピーク波長は485nmのままで変化しない。なおxが0.44を超えた場合、発光スペクトル中の青色光成分の含有量が少なくなり、YAG蛍光体に対する励起エネルギー量が不十分となるため好ましくない。
【0058】
前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体蛍光体の、発光ピーク波長が夫々440nm、455nm、そして485nmである場合の発光スペクトルを図3の曲線5から曲線7にしめす。図3において各曲線の発光スペクトルに対応する各蛍光体の化学組成は、曲線5が(Sr0.86Ba0.14(POCl:Eu、曲線6が(Sr0.70Ba0.30(POCl:Eu、曲線7が(Sr0.45Ba0.55(POCl:Euである。
【0059】
(青色発光蛍光体混合物)
青色蛍光膜には、発光ピーク波長の異なる2種類以上の蛍光体を混合使用しても良い。複数種の蛍光体を混合使用することにより、発光スペクトルの形状がよりブロードなものとなり、単独使用の場合に対して、演色性を改善できる効果がある。この場合、平均演色評価数(Ra)に与える効果は僅かだが、特殊演色評価数(R~R15)を改善することが可能となる。
【0060】
本発明の混合青色蛍光膜においては、発光ピーク波長が430nmから470nmの間にある蛍光体(第一の青色蛍光体)と、発光ピーク波長が470nm超から485nmの間にある蛍光体(第二の青色蛍光体)の2種類を混合使用することができる。具体的に使用可能な蛍光体として、発光ピーク波長が約450nmであるユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体がある。ただしこの蛍光体は、発光ピーク波長が470nm超から485nmの間には存在しないため、長波長成分の青色蛍光体には、他の組成の蛍光体を使用する必要がある。一方、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩を使用する場合では、この蛍光体の発光ピーク波長は430nmから485nmの範囲内の任意の値を得ることができるため、混合条件に合わせて同種の蛍光体を複数種選択使用することもできる。また単一種類のユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体を青色蛍光体に用いる場合では、使用可能なピーク波長の範囲は、430nmから480nm迄であったが、2種類以上の混合蛍光体として使用する場合、430nmから485nm迄の範囲となり、上限値を拡張することができる。上限値が大きいほど、演色性の改善効果が大きくなるためである。しかしながら、図3のスペクトル変化を見ればわかる通り、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体では、ピーク波長が長波長にシフトするに従い、スペクトル曲線がブロードになると共に、発光強度が低下する傾向がある。このため、長波長側に発光ピークを有する成分の混合割合は、全体の発光強度を維持する観点から、一定値以下に抑える必要がある。具体的な混合割合は、430nmから470nmの間に発光ピークを有する第一の青色蛍光体が、青色発光蛍光体全体の50重量部以上であり、470nm超から485nmの間に発光ピークを有する第二の青色蛍光体が、青色発光蛍光体全体の50重量%以下であることが望ましい。
(その他蛍光体)
本発明の白色LEDには、青色蛍光体および、緑色乃至黄色蛍光体に加えて、様々な発光色の蛍光体を混合使用しても良い。特に、赤色発光蛍光体は、白色光を構成する青、緑、赤3原色成分の1つであり、特に色温度の低い白色光を得る為には、必須となる蛍光体である。赤色蛍光体としては、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体(SrSiAlON13:Eu)、ユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミニノシリケート蛍光体((Sr、Ca)AlSiN:Eu)等の蛍光体を使用することが望ましい。また、演色性を更に向上させる目的で、深赤色に発光するマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(αMgO・βMgF・(Ge、Mn)O)を加えても良い。
(LEDモジュール)
本発明の白色LEDにおいて、蛍光体は樹脂材料と混ぜ合わされ、蛍光膜の形で使用される。LEDチップの周囲を直接または間接的に蛍光膜で被覆することにより、LEDから出射された一次光が、蛍光膜で二次光(白色光)に変換され、装置の外部に出射されることになる。使用する樹脂材料としては、透明な材料であれば特に制限されることは無いが、LEDとして紫外LEDを用いる場合には、紫外線に対する耐劣化特性の良好な、シリコーン樹脂等を用いることが望ましい。
【0061】
蛍光膜の膜厚は厚くすることが望ましい。本発明ではLEDとして、紫外乃至紫色LEDを使用しており、人体等への影響を考慮して、LEDの直接光が発光装置の外部に漏出することを防止する必要がある。これについては、蛍光膜を十分な厚さにして、紫外線等が蛍光膜を透過しない様に、防ぐ必要がある。この様な観点から、蛍光膜に求められる膜厚は、100μm乃至1000μmであることが望ましい。そして蛍光膜の輝度には、輝度が最大となる最適膜厚が存在し、最適膜厚は構成する蛍光体の平均粒子径に比例することが知られている。従い前記の膜厚範囲に対応する蛍光体の平均粒子径としては、10μm乃至50μmが最適である。
【0062】
蛍光膜は3乃至4種類の蛍光体から構成され得るが、このうち緑色乃至黄色蛍光体としてのYAG系蛍光体と、青色蛍光体の2種類は必須の材料である。特に本発明における青色蛍光体は、白色発光の一成分として使用されるばかりでなく、YAG系蛍光体の励起光としても使用されるので、青色蛍光体の使用量が最も多くなる。黄色乃至緑色蛍光体として、本発明のYAG蛍光体(YAl12:Ce)を使用した場合と、従来例としてのユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu)を使用した場合に対して、青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体((Sr,Ba,Ca)(POCl:Eu)の使用量がどのように変化するかを示したのが下記の表1である。
【0063】
白色光としての実用的な色温度の範囲を2500Kから6500Kとした場合に、各色温度に対応して、青色蛍光体がどの程度の重量割合で使用されるかを比較したものである。この場合、色温度の最も高い6500Kの白色光では、青色蛍光体の使用割合が最も高く、色温度の最も低い2500Kの白色光では、青色蛍光体の使用割合が最も低くなる。なお、白色光を構成するには、赤色蛍光体等を混合使用する場合もあるが、表1は青色蛍光体と緑色乃至黄色蛍光体の重量比率のみに着目して纏めたものである。
【0064】
【表1】
【0065】
表1からわかる様に、青色蛍光体と、緑色乃至黄色蛍光体の重量混合比は、従来の白色光源が概ね6:4から8:2の範囲であるのに対し、本発明では概ね7:3から9:1の範囲で変化し、本発明の白色光源では、従来の白色光源よりも、青色蛍光体の混合重量比率が約10%多く必要とされることがわかる。
(発光特性)
図4の曲線8は、本発明の白色LEDで得られる白色光の発光スペクトルの一例である。この白色光は、405nmに発光ピークを持つLEDと、青色蛍光体((Sr,Ba,Ca)(POCl:Eu)と黄色蛍光体(YAl12:Ce)及び赤色蛍光体(CaAlSiN:Eu)を所定割合で混合して、5000Kの色温度の白色光を示す様に、調整したものである。図からも判る様に、本発明の白色光源の発光スペクトルは400nmから780nmまでの全可視光域において、途切れることのない連続スペクトルを有することが特徴である。
【0066】
本発明により得られる白色光は、全可視光域で連続スペクトルが得られることから、自然な白色光に求められる発光成分を過不足無く保有しており、照明光として利用すると、高い演色性を示すことができる。本発明の白色光の平均演色評価数Raは全て96以上である。また、演色評価数R1からR8、そして特殊演色評価数R9からR15の全てを、85以上とすることもできる。
【0067】
また、本発明の白色光は、400nmから500nmの波長域において、極端にシャープな発光ピークを示さないことも特徴である。図4の曲線8では、前記波長域において、多少の凹凸部分は観察されるものの、従来の白色光源の発光スペクトル(図4の曲線9)と比較すると、両者の違いは顕著である。従来の白色光源でYAG系蛍光体を用いたものは、YAG系蛍光体を励起するために、青色LEDをペアとして使用するのが通例であった。このため従来の白色光源の発光スペクトルでは、570nm近辺の黄色波長域にピークを持つYAG系蛍光体の発光と、450nm近辺の青色波長域にピークを持つLEDのシャープな発光の、少なくとも2つの発光ピークからなる、極端な凹凸部分が存在していた。
【0068】
本発明と従来例の白色光の違いを定量的に比較すると、以下の様な相違点が存在する。違いを明確にするために、(極大値/極小値)を求め、具体的に比較する。なお(極大値/極小値)とは400nmから500nm間の最大発光ピークに注目し、発光ピークの極大値と、極大値の長波長側に位置する極小値の比率を求めたものである。従来例の発光スペクトル曲線9では、400nmから500nmの波長範囲で、最も強い発光ピークは450nm近辺の青色LEDによる発光である。この発光ピークの極大値と、前記極大値の長波長側に存在する極小値の比率を確認すると、(極大値/極小値)は10.5(=0.021/0.002)となった。一方、本発明の曲線8では、前記比率は1.57(=0.011/0.007)となり、従来光の約1/6との低い数値であった。従い従来の白色光源と、本発明の白色光源において、青色波長域の発光ピーク形状には大きな差異のあることがわかる。なお本発明の光源の前記比率は以下の様にして計算した。曲線8において、400nmから500nmの波長範囲で、最大の発光ピークは450nm弱に存在する。この発光ピークの極大値と、前記極大値の長波長側に隣接する極小値の比率を計算したものが、前記の1.57との値である。また、曲線8には405nm近辺にも発光ピークが存在するが、450nm弱の発光ピークと比較すると、発光強度は無視できるほど弱く、計算対象から除外した。ここで、極小値は、極大値を示すピークに隣接する凹部での値であれば良く、極小値を示す波長は、400nmから500nmの波長範囲内の値であっても、500nmを超える範囲にあっても良い。
【0069】
青色LEDを用いた従来の白色LEDでは、LEDからの青色光を、蛍光体の励起に利用するのみでなく、自身の直接光を白色光の青色成分としても利用している。ところが、LEDから出射される青色光は、特定波長に集中して高い発光強度を示す為、LEDの直接光を利用しようとすると、青色波長域に突出した発光ピークを持つスペクトル形状の白色スペクトルしか得ることが出来なかった。つまり従来の白色LEDで、YAG系蛍光体を使用した光源は、前記した様な極端な凹凸を持つ発光ピークの存在を無くすことは出来ないものである。
【0070】
白色発光スペクトルに含まれる青色光成分は、白色光の色温度によっても左右される。色温度の低い白色光では、相対的に青色光の成分量が少なく、色温度の高い白色光では、相対的に青色光の成分量が多くなる。青色成分の量が多くなると、突出ピークの発光強度も強くなるため、前記した発光ピークの凹凸は、白色光の色温度が高くなると、(極大値/極小値)が大きくなる。従って、実用的な色温度の範囲を2500Kから6500Kとすると、2500Kの白色光で(極大値/極小値)が最小となり、6500Kの白色光で、(極大値/極小値)は最大となる。
【0071】
2500Kの白色光において、(極大値/極小値)の最小値を確認すると、従来例の白色光の発光スペクトルが図5の曲線11に示されている。曲線11において、400nmから500nmの波長範囲における最大発光ピークは、450nm近辺の青色LEDによる発光である。この発光ピークの極大値と、前記極大値の長波長側に隣接する極小値の比率(極大値/極小値)は1.93(=0.0054/0.0028)となる。従って従来の白色光による(極大値/極小値)の最小値は1.93である。同様に本発明における前記比率を求めると、曲線10を元に計算して、1.17(=0.0035/0.0030)となった。
【0072】
以上の通り、2500Kと5000Kの色温度の白色光について(極大値/極小値)の比率を求めた所、従来の白色光では1.9から10.5まで大きく変化するのに対し、本発明の白色光では、1.2から1.6まで、僅かに変化したに過ぎない。この様に、本発明の白色光における(極大値/極小値)の比率の変化は非常に僅かであることから、色温度が実用上の最大となる6500Kにおいても、極端に大きな値を示す事はなく、従来例の白色光における最小値1.9を上回る事はなかった。従って、本発明の白色光には、青色波長域における極端な凹凸がなく、従来の白色光で観察される様な、(極大値/極小値)が1.9以上となる様な発光ピークが、400nmから500nmの波長範囲においては存在しない。言い換えれば、400nmから500nmの波長範囲において、(極大値/極小値)が1.9未満となる発光スペクトルピークが存在するか、あるいはこのような発光スペクトルピークを持たない白色光源を実現することができる。なお、極大値をA、極小値をBとすると、極小値に対する極大値の比率Xは、下記(I)で表される。
【0073】
X=A/B (I)
本発明の白色光における前記特徴は、青色成分の光を蛍光体発光により得ている為に生ずるものである。青色蛍光体の中には、LED同様にシャープな発光を示すものもあるが、発光スペクトルの形状には多様な種類があり、例えばユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の様に、平坦な曲線形状の発光スペクトルを持つ蛍光体を選択すれば、青色波長域における突出した発光ピークの出現を防止することができる。なお、本発明の白色光源においても、蛍光体の励起光源としてLED発光を利用している。本発明で使用する紫外乃至紫色LEDもまた、青色LED同様に、特定波長域に鋭い発光ピークを有している。しかしながら、本発明の白色光源において、LED発光の殆どが蛍光体に吸収され、白色光中に含まれるLED直接光は僅かであり、無視することが可能である。しかも本発明のLED発光は紫外乃至紫色であり、青色光に比べて視感度が低く、人体には殆ど感知されない。
【0074】
ところで、青色光は白色光を構成する上では欠くことの出来ない発光成分である。色温度の高い白色光では相対的に強い発光強度が要求され、色温度の低い白色光では相対的に弱い発光強度が要求される、従い、白色光中の青色成分量は色温度により大きく変化するが、本発明の白色光源では、対応する色温度毎に要求される適正強度の青色光しか含まれていない。ところが従来の白色光源では、青色波長域に突出した強度の発光ピークが存在するため、突出部分では、適正強度を超えた過剰な強度を示すことになる。人体の概日リズムに関係する眼球中の細胞は、青色波長域に高い感度を持つため、青色波長域に過度に強い発光が存在すると、細胞は過度な刺激を受けることになる。
【0075】
また青色光は、白色光に含まれる種々の可視光成分のうち、最も高いエネルギーを持っている。青色光は電磁波の1種であり、電磁波のエネルギーは振動数の二乗に比例して増加する。この様な青色光が眼球に入射されると、眼球を覆っている角膜まで光が到達するため、長時間眺めていると眼精疲労を引き起こす原因となる。また、400nmから500nmの波長範囲に相当する青色光が網膜に損傷与えるとの研究結果も為されている。
この様に人体に様々な悪影響を与える青色光は、白色発光成分として極力低減されることが望ましい。しかし、青色LEDを使用した従来の白色光では、LEDの放つ強い青色光を、人体に影響を与えないレベルまで除外することは難しく、眼鏡やフィルター等、光源以外の追加的な手段で対策を行っているのが実態である。一方、本発明の白色光源では、青色光成分の強度について、所定の色温度の白色光に要求される必要最小限のレベルまで低減することが可能であり、光源自体に対策のなされた、人体に優しい白色光を提供することが可能である。
【0076】
本発明の白色LEDは、緑色乃至黄色蛍光体として、少なくともYAG系蛍光体を使用することを特徴とする。従来の白色LEDに使用されるユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体は、YAG系蛍光体と同様の発光強度を有する優れた蛍光体である。ところが従来の蛍光体は、熱や水分等の環境変化に弱く、発光強度が劣化し易いとの欠点があった。従い、従来の蛍光体を用いたLEDモジュールを点灯すると、点灯初期は明るく発光するものの、連続点灯中に徐々に発光強度が低下する傾向にあった。LEDを連続点灯させると、LED自身からジュール熱が発生し、LEDモジュールの温度は100℃前後まで上昇する。その上、一定湿度の下に、空気中には水分が存在するため、熱と水分の両者の影響を受けて、蛍光体の発光強度が経時変化したものである。
【0077】
一般に蛍光体材料の発光強度は、長時間連続して発光させると、徐々に低下するのが通常である。上記の様な輝度低下現象は、自然の法則に適うものであり、蛍光体材料にとって、発光強度の低下は避けられない特性である。しかし、材料によっては、輝度低下のレベルが少ないものも存在する。その様な材料にあって、代表的なものがYAGである。YAGはガーネット構造を有し、優れた耐熱性や耐食性を示す材料である。従いYAGを母体とする蛍光体も、その他の緑色乃至黄色蛍光体(例えばユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体)と比較して、点灯中の輝度低下を極力防止できるとの利点を有している。
【0078】
図6は、緑色乃至黄色蛍光体の光束維持率を表す曲線である。図中の曲線12はYAG蛍光体の光束維持率、そして曲線13はユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体の光束維持率を表している。これらの曲線は、LEDの周囲を夫々の単独蛍光膜で被覆し、得られたLEDモジュールの発光強度を全光束測定器で測定し、変化の様子をプロットしたものである。なお両曲線は、光束維持率の違いを比較し易くするために、点灯初期の全光束を100%として規格化したものである。両者を比較すると、YAG蛍光体の光束維持率は、一貫してユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体の光束維持率を上回っており、その差は時間の経過と共に拡大する傾向にあった。YAG蛍光体の光束維持率は、1000時間後が99.8%、5000時間後が96.5%であるのに対し、ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体の光束維持率は、1000時間後が95.2%、5000時間後が88.7%との値であった。
【0079】
以上の通り、YAG蛍光体は優れた光束維持率を有しており、本発明の白色光源では緑色乃至黄色発光成分として、前記YAG蛍光体を必須材料として使用することにより、優れた光束維持率の白色発光を得ることができる。なお本発明の白色光源において、緑色乃至黄色蛍光体として、YAG蛍光体のみを使用すれば優れた特性を発揮することができるのは勿論だが、YAG蛍光体を少量でも使用すれば相応の改善効果が得られることから、従来の緑色乃至黄色蛍光体との混合使用も可能である。また、YAG蛍光体の優れた発光特性は、ガーネット結晶構造に基づくものであり、基本組成であるYAl12の各構成元素に、微量の添加物が含有されていても、同様に効果を発揮できるものである。
【0080】
LEDモジュールの一例を図7図12に示す。
【0081】
LEDモジュール50では、例えば図7に示される様に、多数個のLEDチップ52が、基板51上に線状に配列される。チップ列は、一列以上にすることができる。使用個数に応じて複数のチップ列を配列することができる。例えば図7では、複数のチップ列がマトリックス状に配列されている。LEDチップ52は、出来るだけ高密度に配列されるのが望ましいが、LEDチップ52間の距離が余り近づきすぎると、LEDチップ52同士によるLED発光の相互吸収が生じるため好ましくなく、また連続点灯時にLEDチップ52により発生する熱の放熱を促す為にも、LEDチップ52は適当な間隔を置いて配列するのが望ましい。なお、チップの配列は、線状に限定されることなく、千鳥格子状等に配列しても、同様に高密度な配列とすることができる。
【0082】
図7において、各LEDチップ52はワイヤ53で接続されると共に、電極54と繋がっている。電極54は特定パターンを有し、基板51上の導電部を兼ねている。導電部の材料には、Ag、Pt、Ru、PdおよびAl等から選択される少なくとも一種類の金属を使用することが望ましい。そして金属の表面には、腐食等を防止する目的でAu膜が形成されることが望ましい。Au膜は、印刷法、蒸着法およびメッキ法のいずれを用いて形成してもかまわない。
【0083】
基板51上のLEDチップ52の周囲は、直接または間接的に蛍光体層で被覆される。蛍光体層の配置例を図8図12に示す。図8に示すように、LEDチップ52の表面上に直接蛍光体層55を形成しても良い。図9に示すように、LEDチップ52の周囲を蛍光体層55で被覆した後、蛍光体層の周囲を透明樹脂層56で被覆しても良い。また、図10に示す様に、LEDチップ52の表面を透明樹脂層56で被覆した後、透明樹脂層56のほぼ全面を蛍光体層55で被覆しても良い。さらに図8図10では複数個のLEDチップ52を単一の蛍光体層55もしくは透明樹脂層56で被覆する構造としたが、図11図12の様に単一のLEDチップ52を、単一の蛍光体層55または単一の透明樹脂層56で被覆しても良い。更に応用例の1つとして、単独または複数のLEDチップの周囲を、透明樹脂層で被覆し、その外側に蛍光体層を形成し、更に外側に透明樹脂層を形成する積層構造にしても良い。
(実施例)
以下において、本発明の白色LEDについて、実施例を用いて具体的に説明する。なお、以下の実施例や比較例の白色LEDに使用する蛍光体材料については、下記の10種類の蛍光体の何れかを使用するものとし、以下においては蛍光体の名称や化学組成ではなく、発光色と下記番号で区別して呼称する(例えば、(Sr0.69Ba0.31(POCl:Euのアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体を、青色蛍光体(2)と呼称する)。
【0084】
青色蛍光体
(1)アルカリ土類ハロ燐酸塩((Sr0.86Ba0.14(POCl:Eu),発光ピーク波長が450nm、
(2)アルカリ土類ハロ燐酸塩((Sr0.69Ba0.305Ca0.005)5(POCl:Eu),発光ピーク波長が465nm、
(3)アルカリ土類アルミン酸塩(BaMgAl1627:Eu),発光ピーク波長が450nm。
【0085】
緑色乃至黄色蛍光体
(4)YAG(Y0.98Ce0.02Al12,発光ピーク波長が558nm、
(5)YAG系(Y0.97573Ce0.024Sr0.00017Hf0.0001(Al0.9992Mg0.0004Si0.000412,発光ピーク波長が555nm
(6)アルカリ土類オルソ珪酸塩(Sr,Ba)SiO:Eu,発光ピーク波長が548nm。
【0086】
赤色蛍光体
(7)CaAlSiN:Eu,発光ピーク波長が650nm。
【0087】
青色蛍光体
(8)アルカリ土類ハロ燐酸塩(Sr0.54Ba0.45Ca0.01(POCl:Eu,発光ピーク波長が480nm、
(9)アルカリ土類ハロ燐酸塩(Sr0.64Ba0.35Ca0.01(POCl:Eu,発光ピーク波長が470nm、
(10)アルカリ土類ハロ燐酸塩(Sr0.34Ba0.65Ca0.01(POCl:Eu,発光ピーク波長が485nm。
【0088】
(実施例1)
先ず、青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、赤色蛍光体の3種類の蛍光体とLEDの組み合わせによるLEDモジュールを作成した。405nmに発光ピークを有するInGaN系のLEDチップを30個用意し、15mm×12mmの大きさのアルミナ基板の上に、格子状に配列した。その後、配列されたLEDの全体を蛍光体で被覆した。蛍光体は、表2に記載された通り、所定の材料を所定の割合で混合し、5000Kの色温度に発光する混合白色蛍光体を使用した。各蛍光体は平均粒径が25~35μmの粉末を用い、シリコーン樹脂に分散させたスラリーをLEDチップの周囲に塗布することで、モジュールを形成した。蛍光膜の膜厚は、約700μmとした。以上の様なLEDモジュールに電子回路を接続して実施例の白色LEDとした。
(比較例1)
比較例の白色LEDを作成した。使用する部材の種類は実施例1と全く同じのものを使用したが、緑色乃至黄色蛍光体のみは、実施例が緑色乃至黄色蛍光体(4)を使用しているのに対し、緑色乃至黄色蛍光体(6)に変更し、各蛍光体の混合比率を表2に記載の通りとして、色温度が5000Kの白色光に相当する白色光源を作成した。なお、使用した緑色乃至黄色蛍光体(6)の平均粒子径は30μmであり、蛍光膜の膜厚は約670μmであった。
【0089】
実施例と比較例の白色光源を同一条件で点灯させた後、得られた白色光の発光スペクトルを、分光器(浜松ホトニクス株式会社製LE3400)を用いて測定した。次に、発光スペクトルの380nmから780nmの波長範囲に亘って、5nm間隔で各スペクトル強度のデータを求めた後、JIS-8726に記載の方法に従って、平均演色評価数(Ra)を計算した。紫外乃至紫色LEDを用いた白色光源では、高い演色特性が得られることが特徴だが、実施例および比較例の様に、黄色蛍光体の種類を変更した場合でも、両者の平均演色評価数(Ra)は98以上であり、良好な結果が得られた。具体的な数値は以下の表2に示す通りである。
【0090】
【表2】
【0091】
続いて、実施例1と比較例1の2種類の白色LEDについて連続点灯試験を行った。各白色LEDをオーブン(ヤマト科学株式会社製DKN402)に入れ、内部温度を85±5℃に保持した上で、各光源に210mAの電流を累計5000時間通電した。2種類の光源について、点灯初期と1000hrs及び5000hrs点灯後の発光強度を測定し、光束維持率を求めた。光源の発光強度については、初期及び所定時間点灯後の光源をオーブンから取り出し、印加電流210mA、基板温度25±1℃の条件下で点灯後、光源の全光束を、浜松ホトニクス株式会社製LE3400分光器を用いて測定した。測定結果を下記の表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
実施例の白色LEDの初期全光束は550lm(ルーメン)で、比較例の560lmに比較して約2%低い値であった(98.2%)。この強度差は、比較例の黄色蛍光体(6)がLEDからの直接光を受けて発光するのに対し、実施例の黄色蛍光体(4)の場合は、LEDからの直接光を受けて先ず青色蛍光体(1)が発光し、その青色蛍光体(1)からの光を受けて黄色に発光するとの、発光プロセスの相違により生じたものと推定される。つまり、実施例の白色光源の黄色成分は、紫外光から青色光、そして青色光から黄色光との2段階の励起過程を経ており、比較例の場合よりも、励起プロセスが1過程追加される結果、トータルのエネルギー損失が増加したものである。しかしながら、実施例で使用した黄色蛍光体(4)は、比較例で使用した黄色蛍光体(6)より、連続使用時の輝度劣化特性に優れており、1000時間点灯後の全光束で強度差が逆転し、5000時間後には、強度差が5%近くとなるまで拡大する結果となった。
以上の通り、実施例1と比較例1では、LEDとして両者共に紫外乃至紫色LEDを使用し、緑色乃至黄色蛍光体の種類のみ変えた白色LEDを作成した結果、両者共に高い演色特性を示す白色光を得ることができた。その上で実施例1の白色光源では、比較例1の光源の様に、長時間連続点灯しても、過大な輝度劣化を起こすことなく、高い光束維持率を示すことができ、総合的に優れた発光特性を示す白色光を得ることができた。
(実施例2~4、比較例2~4)
緑色乃至黄色蛍光体としてYAG系蛍光体の緑色乃至黄色蛍光体(4)を使用し、前記蛍光体に組み合わせるLEDとして、青色LEDを使用した場合と、紫外乃至紫色LEDを使用した場合の2種類を使用した光源の、発光特性の比較を行った。なお蛍光体とLED以外については、使用した部材の種類および構成は、実施例1と全く同じである。
【0094】
実施例2~4では、405nmに発光ピークを有するInGaN系の紫外乃至紫色LEDと、青色蛍光体(1)、緑色乃至黄色蛍光体(4)、赤色蛍光体(7)を組み合わせた白色LEDを作成した。表4に示す通り、蛍光体の混合比率を種々変更し、色温度がそれぞれ2500K、4000K、6500Kの3種類の白色LEDを作成した。蛍光体の平均粒子径は35~45μmの粉末材料を使用し、蛍光膜の膜厚は700~900μmに調整した。なお、緑色乃至黄色蛍光体と青色蛍光体の混合比率(緑色乃至黄色蛍光体の混合量:青色蛍光体の混合量)は、下記の表5記載の数値より、実施例2が26:74、実施例3が20:80、実施例4が10:90であった。
【0095】
比較例2~4として、450nmに発光ピークを有するInGaN系の青色LEDと、緑色乃至黄色蛍光体(4)、赤色蛍光体(7)を組み合わせた白色LEDを作成した。白色光の色温度は実施例と同様の3種類だが、蛍光体の混合比率は表4に示す通りである。なお、緑色乃至黄色蛍光体と赤色蛍光体は実施例と全く同じ材料を使用し、平均粒子径は実施例と同一で、膜厚も実施例1と略同等となる条件で作成した。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例と比較例の白色光源について、種々の発光特性を測定した。結果を下記の表6に示す。なお下表には、実施例1と比較例1の白色光源の発光特性も、比較のために同時記載した。なお下表の極大値/極小値とは、白色発光スペクトルの400nmから500nm間の最大発光ピークに注目し、発光ピークの極大値と、極大値の長波長側に位置する極小値の比率を求めたものである。また、光束維持率は、初期点灯時の全光束を、連続点灯後の全光束で除した数値を%で示したものである。
【0098】
【表5】
【0099】
表5に示した発光特性から判る様に、3つの特性全て(Ra,極大値/極小値、光束維持率)で、満足できる特性を示すことができるのは、実施例1~実施例4の白色光源のみであった。すなわち、比較例1の白色光源は、Ra、(極大値/極小値)は良好なものの、発光強度維持率が悪く、一方比較例2~4の白色光源は、光束維持率には優れるものの、その他2特性については、不満足な結果しか得られなかった。以上をまとめると、実施例の白色光源は、演色特性に優れるだけでなく、光束維持率の改善された発光特性を有することができる。そして(極大値/極小値)がいずれも1.9より小さいことから、青色波長域に突出した発光ピークが無く、ブルーライトハザード等の問題を大幅に低減できる、人体に優しい光源とすることができた。
【0100】
また、実施例1~4の白色光源は、平均演色評価数Raに優れるだけでなく、演色評価数R1~R8、及び特殊演色評価数R9~R15の全てにおいて、優れた特性を示すことができる。実施例1~4の具体的な特性を、比較例4の特性と共に示す。下表からわかる通り、実施例1~4の白色光源ではR1~R15の全てにおいて85以上との優れた演色性を示すのに対し、比較例4の白色光源は各演色評価数毎のバラツキが大きく、R1やR15の様に90を超える指数もあったが、R10やR12の様に極端に低い指数も混在していた。
【0101】
【表6】
【0102】
(実施例5~9、比較例5~6)
使用するLEDの種類、蛍光体の組成、種類および混合比率を種々変更した白色LEDを作成した。ただし、白色光の色温度は全て約5000Kとなる様に調整し、発光強度や演色特性を、より厳密に比較できる様にした。また、使用した蛍光体の平均粒径は、全て15乃至25μmの範囲にあり、蛍光膜の膜厚は250μmから450μmの範囲に収まる様に調整した。なお、実施例8は、緑色乃至黄色蛍光体を複数種使用した例であり、緑色乃至黄色蛍光体中のYAG系蛍光体の混合割合は54重量%であった。
【0103】
【表7】
【0104】
表7に記載した白色光源のうち、比較例5と比較例6は、実施例と同じ種類の蛍光体を使用したが、蛍光体の混合比率が異なる光源である。両者の光源では、使用する青色蛍光体の混合比率が適正範囲より外れているため、得られる白色光の色温度が黒体輻射の軌跡上から外れ、適正な白色光を得ることができなかった。具体的には、比較例5の光源は青色蛍光体の混合量が多すぎるため、青味の強い白色光となり、比較例6の光源では青色蛍光体の混合量が少なすぎるため、黄色味の強い白色光となり、いずれの場合も実質的に白色光と呼べる特性ではなかった。
【0105】
表7の条件で作成した各白色LEDの発光特性を評価した。結果を下記の表8に示す。
【0106】
【表8】
【0107】
いずれの光源も、紫外乃至紫色LEDを使用しているため、(極大値/極小値)が極端に高い値を示す光源はなかった。しかし比較例5の光源では、青色蛍光体の混合比率が適正量を超えたため、(極大値/極小値)が1.9を超え、青色波長域に突出ピークを持つ問題のある光源であった。また緑色乃至黄色蛍光体に関し、種々の組成の蛍光体を使用したが、全てYAG系蛍光体を基本材料としているため、光束維持率はいずれの光源も問題の無いレベルであった。
【0108】
白色光源のRaは、実施例の光源は何れも96以上であり、優れた演色特性を示すものであった。一方、比較例の光源については、蛍光体の混合比率に偏りがあるため、いずれも不十分な演色性レベルしか得られなかった。なお実施例8の光源では、緑色乃至黄色蛍光体として、蛍光体(4)と蛍光体(6)の混合物を使用している。この光源は、蛍光体(4)の使用による光束維持率の改善と、蛍光体(6)の使用による演色性改善の、2つの効果を同時に期待して作成したものである。光束維持率については、蛍光体(4)や蛍光体(5)のYAG系蛍光体を単独使用した光源と略同等レベルの特性を示した。そして、演色性に関しては、実施例7の光源と比較して、下表の通り改善効果を示すものであった。
【0109】
【表9】
【0110】
両光源共に平均演色評価数Raは98で変わらないが、R1からR15に関し、実施例7の光源では全てが85以上との結果であったが、実施例8は全てが90以上となり、更に改善された特性を得ることができた。両者間では、特にR9やR12の数値に大きな差異があるが、これは、緑色乃至黄色蛍光体として使用した蛍光体(6)が、R9やR12に対応する発光スペクトル成分を好適に含有していることから生じたものである。
【0111】
(実施例10~16)
先ず、青色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体の3種類の蛍光体とLEDの組み合わせによるLEDモジュールを作成した。白色光の色温度は、表10に示す値にして約5000Kとなる様に調整し、発光強度や演色特性を、より厳密に比較できる様にした。表10の青色、黄色、赤色の欄の左欄に蛍光体の種類を示す番号を、右欄に青色、黄色及び赤色の蛍光体のトータル重量に対する比率(重量%)を示す。実施例10~16では、2種類の青色蛍光体を使用した。2種類の青色蛍光体のトータル重量に対する各青色蛍光体の比率を、右欄のかっこ内に示す。また、実施例16のLEDモジュール中の黄色蛍光体の種類は2種類であった。2種類の黄色蛍光体のトータル重量に対するYAG系蛍光体の割合は55重量%であった。
【0112】
各蛍光体粒子の平均粒径は、10μm以上25μm以下の範囲にあった。また、LEDには、405nmに発光ピークを有するInGaN系のLEDチップを使用した。
【0113】
表10に示す比率で混合された蛍光体粒子及びLEDチップを用いて実施例1と同様にしてLEDモジュールを作成した。蛍光膜の膜厚は200μm以上450μm以下の範囲に収まる様に調整した。以上の様なLEDモジュールに電子回路を接続して実施例の白色LEDとした。
【0114】
なお、セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体とユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の混合比率(セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体の混合量G1:ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の混合量G2)は、下記の表10記載の数値より、実施例10が13重量部:87重量部、実施例11が10重量部:90重量部、実施例12が8重量部:92重量部、実施例13が13重量部:87重量部、実施例14が13重量部:87重量部であった。
【0115】
【表10】
【0116】
得られた白色LEDの諸特性(平均演色評価数、極大値/極小値、光束維持率、特殊演色評価数等を実施例1と同様な条件で測定し、表11、表12まとめた。なお表中には、特性比較の参考として、実施例7および比較例4で作成した白色LEDの特性も合わせて記載した。
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
【0119】
表11、12からわかる通り、比較例の白色LEDが、極大値/極小値や演色特性の面で不満足な特性しか示さなかったのに対し、実施例の白色LEDは全ての特性面で満足の得られる結果を得ることができた。
【0120】
また、実施例10~16と実施例7の白色LEDの演色特性を比較すると、平均演色評価数では両者間に大きな差異は無いものの、特殊演色評価数(R9~R15)では実施例10~16の白色LEDの方が総合的に優れていることが確認された。従い、青色蛍光膜に混合蛍光体を採用する方が、演色特性の面でより優れた効果を発揮できることが明確となった。よって、実施例10~16の白色光源は、黒体輻射により得られ、かつ各実施例の白色光と同じ色温度を有する白色光の発光スペクトル分布の形状により近いものである。
【0121】
実施例10~16の比較により、青色蛍光体にユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体のみを含む実施例10~14,16の白色光源は、特殊演色評価数の値が全体的に高く、実施例15に比して演色特性に優れていることがわかる。
【0122】
実施例10~12の比較により、青色蛍光体として発光ピーク波長が異なる複数の青色蛍光体を使用する場合、短波長の発光ピーク波長を有する青色蛍光体の混合比率が高い実施例10,11の白色光源は、特殊演色評価数のR11が実施例12に比して高く、実施例12に比して演色特性に優れていることがわかる。
(比較例7)
450nmに発光ピークを有するInGaN系の青色LEDと、緑色乃至黄色蛍光体(4)、赤色蛍光体(7)を組み合わせた白色LEDを作成した。白色光の色温度は5000Kであった。蛍光体の混合比率は、緑色乃至黄色蛍光体(4)を85重量%、赤色蛍光体(7)を15重量%とした。なお、各蛍光体の平均粒子径及び蛍光体の膜厚は、比較例4と同様に設定した。
【0123】
実施例1、11及び比較例7の発光スペクトルを図13に示す。図13において、実施例1の発光スペクトルを14で、実施例11の発光スペクトルを16で、比較例7の発光スペクトルを15で示す。
【0124】
図13から明らかな通り、比較例7の白色光源は、450nmの波長において、極小値に対する極大値の比率(A/B)が1.9以上となる発光スペクトルピークが存在している。一方、実施例1,11の白色光源の発光スペクトルには、400nmから500nmの波長範囲に極大値が二つ存在する。長波長側に位置する極大値が、実施例1,11についての最大値であり、Aで表す。最大値Aを示すピークに隣接する凹部の極小値をBで表す。表5及び表11に示す通り、実施例1,11の白色光源の発光スペクトルには、極小値に対する極大値の比率(A/B)が1.9未満となる発光スペクトルピークが存在している。また、実施例1,11の白色光源から出射される白色光は、400nmから780nmの波長範囲に亘って連続スペクトルを有している。発光強度が450nmから500nmの波長範囲における発光強度の変化を、実施例1の発光スペクトル14と実施例11の発光スペクトル16とで比較すると、発光強度の低下が実施例11の方が小さい。よって、実施例11の方が黒体輻射により得られ、かつ実施例11の白色光と同じ色温度を有する白色光の発光スペクトル分布の形状により近いものである。これは、実施例11の白色光源が、発光ピーク波長が430nmから470nmの範囲内にある第一の青色蛍光体と、発光ピーク波長が470nmを超え、485nmまでの範囲内にある第二の青色蛍光体とを含むため、400~500nmの可視波長域における発光波長域を実施例1よりも広くできることが一因である。
【0125】
以下に、当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0126】
[1] 発光ダイオード(以下LEDと称す)と蛍光体の組合せからなる白色光源であり、蛍光体の1種が少なくともセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体であって、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルの、400nmから500nmの波長範囲に存在する少なくとも1以上の極大値のうち、最大値を示す極大値と、前記最大の極大値の長波長側に隣接する極小値において、極小値に対する極大値の比率(極大値を示す波長における発光スペクトル強度/極小値を示す波長における発光スペクトル強度)が1.9以上となる発光スペクトルピークが存在しない白色光源。
【0127】
[2] [1]記載の白色光源において、LEDが350nm以上420nm以下に発光ピークを有する紫外乃至紫色光を出射すると共に、前記蛍光体が青色蛍光体を更に含有する混合蛍光体であり、前記混合蛍光体から出射される白色光が、400nmから780nmの波長範囲に亘って連続スペクトルを有する白色光源。
【0128】
[3] [2]に記載の白色光源において、セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体が、波長範囲510nmから570nmに発光ピークを有する緑色乃至黄色蛍光体であり、前記青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体もしくはユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体の少なくとも1種であり、発光ピークが430nmから480nmの波長範囲にある白色光源。
【0129】
[4] [3]記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.44、0≦y≦0.1を満足する数値である)の化学組成を有する白色光源。
【0130】
[5] [4]記載の白色光源において、前記青色蛍光体の発光ピーク波長が440nmから470nmの波長範囲にある白色光源。
【0131】
[6] [4]乃至[5]のいずれか1項に記載の白色光源において、前記青色蛍光体が、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩であり、
一般式:(Sr1-x-yBaCa(POCl:Eu(式中、x、yは0≦x≦0.35、0≦y≦0.1を満足する数値である。)の化学組成を有する白色光源。
【0132】
[7] [4]乃至[6]のいずれか1項に記載の白色光源において、前記蛍光体にはセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体とユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の2種類の蛍光体が含まれており、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と前記ユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体の重量比率が、29重量部:71重量部乃至10重量部:90重量部の範囲にある白色光源。
【0133】
[8] [2]記載の白色光源において、前記セリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体が、波長範囲510nmから570nmに発光ピークを有する緑色乃至黄色蛍光体であり、前記青色蛍光体は発光ピーク波長が430nmから470nmの範囲内にある第一の青色蛍光体の少なくとも1種と、発光ピーク波長が470nmを超え、485nmまでの範囲内にある第二の青色蛍光体の少なくとも1種の混合蛍光体であり、前記第一の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体およびユーロピウム付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体のうち少なくとも1種であり、前記第二の青色蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体である白色光源。
【0134】
[9] [8]記載の白色光源において、前記混合蛍光体は、前記第一の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以上、前記第二の青色蛍光体が前記青色蛍光体全体の50重量%以下である白色光源。
【0135】
[10] [3]乃至[9]のいずれかに記載の白色光源において、前記緑色乃至黄色蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類オルソ珪酸塩蛍光体を更に含む白色光源。
【0136】
[11] [1]乃至[10]のいずれかに記載の白色光源において、前記蛍光体が赤色蛍光体を更に含み、前記赤色蛍光体が、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、ユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミニノシリケート蛍光体、マンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種である白色光源。
【0137】
[12] [1]乃至[11]のいずれかに記載の白色光源において、前記蛍光体の平均粒子径が10μm以上50μm以下である白色光源。
【0138】
[13] [1]乃至[12]のいずれかに記載の白色光源において、前記白色光源から出射される白色光の平均演色評価数Raが96以上であり、演色評価数R1からR15の全てが85以上である白色光源。
【符号の説明】
【0139】
1…YAG蛍光体の発光スペクトル曲線、2…YAG蛍光体の発光スペクトル曲線、3…YAG蛍光体の発光スペクトル曲線、4…YAG蛍光体の励起スペクトル曲線、5…青色蛍光体の発光スペクトル曲線、6…青色蛍光体の発光スペクトル曲線、7…青色蛍光体の発光スペクトル曲線、8…本発明の光源による白色光の発光スペクトル曲線(色温度5000K)、9…従来例の光源による白色光の発光スペクトル曲線(色温度5000K)、10…本発明の光源による白色光の発光スペクトル曲線(色温度2500K)、11…従来例の光源による白色光の発光スペクトル曲線(色温度2500K)、12…YAG蛍光体の光束維持率を示す曲線、13…オルソ珪酸塩蛍光体の光束維持率を示す曲線。
図1
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