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特許7036991煤処理特性を有するアミノ酸グラフトポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】煤処理特性を有するアミノ酸グラフトポリマー
(51)【国際特許分類】
   C10M 149/06 20060101AFI20220308BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220308BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20220308BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C10M149/06
C10N40:25
C10N30:04
C10N30:00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021519109
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019055297
(87)【国際公開番号】W WO2020081309
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】16/160,148
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】チアン、シエン
(72)【発明者】
【氏名】カレンザ、オートロ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522694(JP,A)
【文献】特表2007-532770(JP,A)
【文献】特開2006-206906(JP,A)
【文献】特開2006-161042(JP,A)
【文献】特開昭54-025903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル化オレフィンコポリマーとアミノモノまたはジカルボン酸との反応生成物を含む多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤であって、前記アミノモノまたはジカルボン酸が、以下の式を有し、
2N-R1(R2)-COOH
式中、
1が、C1~C18ヒドロカルビル基であり、
2が、水素、直鎖もしくは分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシフェニル基、複素環式アミノ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール、チオエステル、セレン、またはそれらの組み合わせであり、
ここで、前記アシル化オレフィンコポリマーは、エチレンおよび1つ以上のC3~C18アルファオレフィンのコポリマー、ならびにアクリル酸、メタクリレート酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはその無水物誘導体から選択されるグラフト化エチレン不飽和カルボン酸材料から誘導される、多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項2】
前記反応生成物が、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤とさらに反応し、前記アミン、エステル、またはアルコール官能化剤が、芳香族アミン、多芳香族アミン、第一級アミン、第二級アミン、第一級または第二級アルコール、ナフチルアルキルアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項3】
前記反応生成物が、LもしくはD異性体形態のいずれかで形成され、および/または前記反応生成物が、中性もしくはイオン性のいずれかである、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項4】
前記アシル化オレフィンコポリマーが、オレフィンコポリマーの1000数平均分子量単位あたり0.1~0.8のカルボキシル基がその上にグラフトされたオレフィンコポリマーを含み、および/または、前記オレフィンコポリマーが、参照としてポリスチレンを使用するGPCによって測定される場合、5,000~200,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項5】
1が、メチレン基であり、R2が、インドールアルキル基またはイミダゾールアルキル基から選択される前記複素環式アミノ基である、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項6】
前記アミノモノまたはジカルボン酸が、アミノヘキサン酸、2-アミノ-3-フェニルプロパン酸、2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-5-イル)プロパン酸、2-アミノブタン二酸、2-アミノペンタン二酸、2-アミノ-4-メチルペンタン酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項7】
前記反応生成物が、前記アミン官能化剤とさらに反応し、その第一級または第二級アミンが、オキサゾリンまたはその誘導体でキャップされている、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項8】
前記オキサゾリンまたはその誘導体が、2-フェニル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2,4,5-トリメチル-3-オキサゾリン、2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン、それらの混合物、またはそれらの誘導体である、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項9】
前記反応生成物が、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤とさらに反応し、前記アミン官能化剤が、N-アリールフェニレン-ジアミン、1-(2-アミノ-エチル)-イミダゾリジン-2-オン、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-2ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、アラニンメチルエステル、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、ポリエーテルアミン、フェノキシプロピルアミン、それらの芳香族誘導体、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項10】
前記アミン官能化剤が、下記式のN-アリールフェニレンジアミンであり、
【化1】
式中、R4が、水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、またはアルキル、アルケニル、アルコキシルアラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル、もしくはアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐もしくは直鎖ラジカルであり、R5は、--NH2、CH2--(CH2)n--NH2、またはCH2-アリール-NH2であり、ここでnは1~10の整数であり、R6が、水素、4~24個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、またはアルカリールである、請求項9に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項11】
前記N-アリールフェニレンジアミンが、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤。
【請求項12】
多量の潤滑粘度の基油および請求項1~11のいずれか一項に記載の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤を含む、潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記反応生成物が、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤とさらに反応し、前記アミン、エステル、またはアルコール官能化剤が、芳香族アミン、多芳香族アミン、第一級アミン、第二級アミン、第一級または第二級アルコール、ナフチルアルキルアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
前記反応生成物が、LまたはD異性体形態のいずれかで形成される、または前記反応生成物が、中性またはイオン性のいずれかである、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
前記アシル化オレフィンコポリマーが、オレフィンコポリマーの1000数平均分子量単位あたり0.1~0.8個のカルボキシル基がその上にグラフトされたオレフィンコポリマーを含む、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アシルペプチドグラフトポリマーからなる分散剤および分散剤粘度調整剤などの潤滑剤添加剤、ならびにそのような添加剤を含む潤滑油組成物に関する。本開示はまた、エンジン潤滑組成物の煤またはスラッジ処理特性を改善し、かつエラストマー適合性の劣化を最小限に抑えるための、本明細書の添加剤を含む潤滑組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン潤滑剤は、燃費を改善し、排出物を低減する傾向があるエンジン保護の改善をもたらす。しかしながら、改善された燃費および低減された排出物の利益を達成するためにエンジンの保護および潤滑性を犠牲にすることは一般的に望ましくない。ほとんどの潤滑剤は、そのような特性の背後にあるバランスを見つけることがよくある。例えば、潤滑剤中の摩擦調整剤の量を増加させることは、燃料節約目的のためには有益であり得るが、摩耗応力を処置する潤滑剤の能力の低下につながり得る。同様に、潤滑剤中の摩耗防止剤の量を増加させると、摩耗に対するエンジン保護を向上させることができるが、触媒性能に有害であるなど、様々な機構を介して排出物も低減することができる。
【0003】
潤滑剤の煤およびスラッジ処理成分は、同様のバランスを達成しなければならない。例えば、分散剤または分散剤粘度調整剤(DVM)は、完成油の全体的な粘度性能に依然として寄与しながら、エンジン油、特にヘビーデューティーディーゼル油において優れた煤/スラッジ処理特性を提供することができる。DVMは、抗酸化剤、摩擦/摩耗防止剤、および場合によっては洗浄剤などを含むものを含めて完成した油配合物で複数の役割を果たすように調整できる。この十分な汎用性により、完成した配合物中の特定の成分の処理量を低減または増加させ、そして全体的なエンジンオイル性能を最適化するために配合者により大きな手段が与えられる。DVMは、多くの場合、アリールアミンおよび/または改善された摩耗防止および分散剤特性を提供することができる他のアミン部分を含む。しかしながら、アリールアミンならびに他の第1級および/または第2級アミンは場合によってはエンジンのエラストマー適合性に悪影響を及ぼす。これまで、保護されていないアミンの影響を弱めるために様々なホウ酸塩、無水物、およびカルボン酸が使用されてきた。いくつかの例において、アリールアミンは立体障害アミン部分を有することからの利益を得、そしてそのためフルオロエラストマーシールの寿命に対する悪影響が低減するが、そのようなアミン官能化DVMの処理量に依存してシール品質および寿命に依然として影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0004】
1つのアプローチまたは実施形態において、アシル化オレフィンコポリマーとアミノモノまたはジカルボン酸との反応生成物を含む多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤が、本明細書に記載されている。反応生成物は、任意選択的に、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤とさらに反応させる。アミノモノまたはジカルボン酸は、式HN-R(R)-COOHを有し、RはC1~C18のヒドロカルビル基であり、Rは水素、直鎖または分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシフェニル基、複素環式アミノ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール、チオエステル、セレン、またはそれらの組み合わせである。
【0005】
他のアプローチまたは実施形態において、前段落の多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤は、以下のいずれかまたは任意の組み合わせであり得る追加の特徴と組み合わせることができる:アミン、エステル、または芳香族アミン、多芳香族アミン、第一級アミン、第二級アミン、第一級または第二級アルコール、ナフチルアルキルアミン、およびそれらの混合物から選択されるアルコール官能化剤;および/または反応生成物が、LまたはD異性体のいずれかで形成される;および/または反応生成物が、中性またはイオン性のいずれかである;および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、オレフィンコポリマーの1000数平均分子量単位あたり0.1~0.8のカルボキシル基がその上にグラフトされたオレフィンコポリマーを含む;および/または、オレフィンコポリマーが、参照としてポリスチレンを使用してGPCによって測定されるように、約5000~約200,000の間の数平均分子量を有する;および/またはRがメチレン基であり、Rがインドールアルキル基またはイミダゾールアルキル基から選択される複素環式アミノ基である;および/または、ここでアミノモノ-またはジ-カルボン酸が、アミノヘキサン酸、2-アミノ-3-フェニルプロパン酸、2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-5-イル)プロパン酸、2-アミノブタン二酸、2-アミノペンタン二酸、2-アミノ-4-メチルペンタン酸、およびそれらの混合物から選択される;および/または反応生成物が、アミン官能化剤とさらに反応し、その第一級または第二級アミンがオキサゾリンまたはその誘導体でキャップされている;および/またはオキサゾリンまたはその誘導体が、2-フェニル-2-オキサゾリン;2-エチル-2オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,5-トリメチル-3-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、またはその誘導体である;および/または反応生成物がアミン官能化剤とさらに反応し、アミン官能化剤がN-アリールフェニレンジアミン、1-(2-アミノ-エチル)-イミダゾリジン-2-オン、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-2ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、アラニンメチルエステル、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、ポリエーテルアミン、フェノキシプロピルアミン、それらの芳香族誘導体、およびそれらの組み合わせから選択される;および/またはアミン官能化剤が式のN-アリールフェニレンジアミンであり、
【化1】
式中、Rが、水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、またはアルキル、アルケニル、アルコキシルアラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル、およびアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖もしくは直鎖のラジカルであり;Rは、--NH、CH--(CH--NH、またはCH-アリール-NHであり、ここで、nは、1~10の整数であり、Rは、水素、4~24個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、またはアルカリールであり;および/またはN-アリールフェニレンジアミンが、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、およびそれらの混合物から選択され;および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、エチレンおよび1つ以上のC3~C18アルファ-オレフィンのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合および少なくとも1つのカルボン酸基またはその無水物基またはオレフィンコポリマーと反応したカルボキシル基に変換可能な極性を有するグラフト化エチレン不飽和カルボン酸材料から誘導され、および/またはエチレン性不飽和カルボン酸材料が、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはそれらの無水物誘導体から選択される。
【0006】
別のアプローチまたは実施形態において、潤滑組成物が本明細書に記載されている。潤滑組成物は、潤滑粘度の基油および多官能性オレフィンコポリマー粘度調整剤を多量に含む。多官能性オレフィンコポリマー粘度調整剤は、アシル化オレフィンコポリマーおよびアミノモノまたはジカルボン酸との反応生成物を含む。反応生成物は、任意選択的に、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤とさらに反応させる。アミノモノまたはジカルボン酸は、式HN-R(R)-COOHを有し、RはC1~C18のヒドロカルビル基であり、Rは水素、直鎖または分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシフェニル基、複素環式アミノ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール、チオエステル、セレン、またはそれらの組み合わせである。
【0007】
さらなるアプローチまたは実施形態において、前段落の潤滑組成物は、以下のいずれかまたは任意の組み合わせであり得る追加の特徴と組み合わせることができる:アミン、エステル、またはアルコール官能化剤芳香族アミン、多芳香族アミン、第一級アミン、第二級アミン、第一級または第二級アルコール、ナフチルアルキルアミン、およびそれらの混合物;および/または反応生成物が、LまたはD異性体のいずれかで形成される;および/または反応生成物が、中性またはイオン性のいずれかである;および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、オレフィンコポリマーの1000数平均分子量単位あたり0.1~0.8のカルボキシル基がその上にグラフトされたオレフィンコポリマーを含む;および/または、オレフィンコポリマーが、参照としてポリスチレンを使用してGPCによって測定されるように、約5000~約200,000の間の数平均分子量を有する;および/またはRがメチレン基であり、Rがインドールアルキル基またはイミダゾールアルキル基から選択される複素環式アミノ基である。および/またはアミノモノ-またはジ-カルボン酸が、アミノヘキサン酸、2-アミノ-3-フェニルプロパン酸、2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸、2-から選択される場合。アミノ-3-(1H-イミダゾール-5-イル)プロパン酸、2-アミノブタン二酸、2-アミノペンタン二酸、2-アミノ-4-メチルペンタン酸、およびそれらの混合物から選択される;および/または反応生成物が、アミン官能化剤とさらに反応し、その第一級または第二級アミンがオキサゾリンまたはその誘導体でキャップされている;および/またはオキサゾリンまたはその誘導体が、2-フェニル-2-オキサゾリン;2-エチル-2オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,5-トリメチル-3-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、またはその誘導体である;および/または反応生成物がアミン官能化剤とさらに反応し、アミン官能化剤がN-アリールフェニレンジアミン、1-(2-アミノ-エチル)-イミダゾリジン-2-オン、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-2ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、アラニンメチルエステル、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、ポリエーテルアミン、フェノキシプロピルアミン、それらの芳香族誘導体、およびそれらの組み合わせから選択される;および/またはアミン官能化剤が式のN-アリールフェニレンジアミンであり、
【化2】
式中、Rが、水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、またはアルキル、アルケニル、アルコキシルアラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル、およびアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖もしくは直鎖のラジカルであり;Rは、--NH、CH--(CH--NH、またはCH-アリール-NHであり、ここで、nは、1~10の整数であり、Rは、水素、4~24個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、またはアルカリールであり;および/またはN-アリールフェニレンジアミンが、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、およびそれらの混合物から選択され;および/またはアシル化オレフィンコポリマーが、エチレンとおよび1つ以上のC3~C18アルファ-オレフィンのコポリマー、ならびに少なくとも1つのエチレン結合および少なくとも1つのカルボン酸基またはその無水物基またはオレフィンコポリマーと反応したカルボキシル基に変換可能な極性を有するグラフト化エチレン不飽和カルボン酸材料から誘導され、および/またはエチレン性不飽和カルボン酸材料が、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはそれらの無水物誘導体から選択される。
【0008】
さらなるアプローチまたは実施形態において、本開示は、機械部品を潤滑するため、またはエンジンシールの劣化を最小限とするためにエンジン潤滑を提供するための多官能性オレフィンコポリマー潤滑剤添加剤または前段落の潤滑組成物の使用をさらに説明する。上記の添加剤および組成物を使用して機械部品またはエンジンを潤滑する方法もまた、本明細書で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
エンジンまたはクランクケース潤滑剤組成物は、火花点火および圧縮点火エンジンを含む車両に使用されている。そのようなエンジンは、ほんの数例を示唆すると、自動車、トラック、および/または列車の用途に使用することができ、ガソリン、ディーゼル、アルコール、圧縮天然ガスなどを含むがこれらに限定されない燃料で作動させることができる。本明細書の潤滑剤または潤滑剤組成物は、状況によってはILSAC GF-5および/またはAPI CJ-4潤滑剤基準を満たすかまたはそれを超える、自動車のクランクケース潤滑剤などのエンジンまたはクランクケース潤滑剤としての使用に好適であり得る。
【0010】
背景技術で述べたように、エンジン油は、一般に多くの添加剤を含む。分散剤および分散剤粘度調整剤は、スラッジ、炭素、煤、酸化生成物、および他の堆積物前駆体を分散させるのを助けるためのエンジンオイル中の一般的な添加剤である。そのような添加剤は、エンジン部品を清潔に保ち、エンジン寿命を延ばし、そして適切な排出物および良好な燃費を維持するのを助けるのを支援する。結果は、例えば、堆積物形成の低減、油の酸化の減少、および/または粘度の増加の減少であり得る。いくつかの手法では、分散剤または分散剤粘度調整剤は、粒子間凝集を抑制することによってこれを達成する。したがって、潤滑剤組成物中の分散剤または分散剤粘度調整剤の量が増加するにつれて、潤滑剤の煤およびスラッジ処理特性は一般に改善されるが、これらの添加剤の量の増加はエラストマーの適合性に悪影響を及ぼす場合がある。一方、本明細書では、分散剤特性を有する潤滑剤添加剤、ならびに良好な煤処理特性および/または粘度調整特性を有し、同時に従来の潤滑剤添加剤と比較してフルオロエラストマーと相溶性のある添加剤を含む潤滑油が記載される。
【0011】
本明細書では、分散剤または分散剤粘度調整剤などの潤滑剤添加剤への新規なアプローチが提供され、アミノモノまたはジカルボン酸を介して、1つ以上のアシルペプチド結合(-R-CO-NH-)を分散剤部分および/またはリンカーとしてアシル化オレフィンコポリマー(OCP)粘度調整剤に導入し、アミン、アルコール、オキサゾリン、オキサゾリジノン、無水イサト酸、ラクトン、ラクタムおよび他の反応性部分を介して直接または間接的にOCP骨格に官能化する。(アミノモノまたはジカルボン酸に加えて)さらなる官能化反応性部分の性質を使用して、添加剤の分散剤および粘度測定特性の両方を微調整することができる。これらのさらなる反応性部分は、例えば、N-フェニル-フェニレンジアミン(NPPDA)、1-(2-アミノ-エチル)-イミダゾリジン-2オン、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、N-フェニル-p-フェニルジアミン、N-(3-アミノプロピル)-2ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β-アラニンメチルエステル、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、分岐β-アルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルアミン、フェノキシプロピルアミン、それらの芳香族誘導体またはそれらの組み合わせを含む、分散剤または他の特性を提供する分子を含み得る。通常、第一級アミンは、(アミノモノまたはジカルボン酸に加えて)このさらなる官能化のために、それらのかなり高い生成物収率および比較的より速い重合速度論のために好ましい。
【0012】
効果的な処理量でエンジンオイル配合物に使用される場合、アシルペプチド結合ポリマーを有する本明細書の官能化添加剤および任意のさらなる官能化(上記のように)は、優れた煤分散剤活性およびより良い低温性能およびより低い摩擦、シール適合性等の他の利点を提供し得る。
【0013】
1つのアプローチにおいて、本明細書に開示されるのは、追加のフルオロエラストマーシール保護および官能化分散剤オレフィンコポリマー粘度調整剤などの予想外に改善された分散剤性能を与える傾向がある潤滑剤添加剤への化学修飾としての、ポリアミンおよび/またはオキサゾリンを任意選択的に組み合わせたアミノ酸の使用である。本開示は、アミノ酸結合部分をアシル化OCPに導入する方法、追加のアミン官能基を導入する方法、ならびに任意選択的に立体障害および/または露出した第一級および/または第二級アミンをオキサゾリンでキャップする方法を提供する。
【0014】
アシル化オレフィンコポリマー:
上記のように、本明細書の潤滑剤添加剤は、1つのアプローチにおいて、アシル化オレフィンコポリマー粘度調整剤、粘度指数向上剤、または分散剤を含み得る。そのような手法において、オレフィンコポリマーは、エチレンと3~18個の炭素原子の、例えば3~5個の、3~10個の、3~15個の、5~10個の、8~12個の、10~15個のまたは10~18個の、炭素原子を有するアルキレンとのコポリマー骨格を有することができる。いくつかの手法では、アルキレンは、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、および/またはネオペンチレン、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0015】
他の手法では、ポリマーは、エチレンと1つ以上のC18~Cのアルファ-オレフィンのコポリマーである。エチレンおよびプロピレンのコポリマーが最も好ましい。コポリマーを形成するために、またはエチレンおよびプロピレンと組み合わせて使用してターポリマーを形成するためにプロピレンの代わりに使用するのに好適な他のアルファ-オレフィンには、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびスチレン、αω-ジオレフィン例えば1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン例えば4-メチルブテン-1,5-メチルペンテン-1および6-メチルべプテン-1、およびこれらの混合物が含まれる。
【0016】
しばしばインターポリマーと呼ばれる、より複雑なポリマー基材は、第3の成分を用いて調製することができる。インターポリマー基材を調製するために一般的に使用される第3の成分は、非共役ジエンおよびトリエンから選択されるポリエンモノマーである。非共役ジエン成分は、鎖中に5~14個の炭素原子を有するものである。好ましくは、ジエンモノマーは、その構造内のビニル基の存在を特徴とし、環状およびビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンには、1,4-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、1,5-ヘプタジエン、および1,6-オクタジエンが含まれる。インターポリマーの調製には、2つ以上のジエンの混合物を使用することができる。ターポリマーまたはインターポリマー基質を調製するための好ましい非共役ジエンは、1,4-ヘキサジエンである。
【0017】
トリエン成分は、少なくとも2つの非共役二重結合を有し、鎖中に約30個までの炭素原子を有する。本開示のインターポリマーを調製するのに有用な典型的なトリエンは、1-イソプロピリデン-3a、4,7,7a-テトラヒドロインデン、1-イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ-イソジシクロペンタジエン、および2-(2-メチレン-4-メチル-3-ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ-5-ヘプテンである。
【0018】
エチレン-プロピレンまたはより高級なアルファ-オレフィンコポリマーは、約15~80モル%のエチレンおよび約85~20モル%のC~C18アルファ-オレフィンからなってもよく、好ましいモル比は、約35~75モル%のエチレンおよび約65~25モル%のC~C18アルファ-オレフィンであり、より好ましい割合は、50~70モル%のエチレンおよび50~30モル%のC~C18アルファ-オレフィンであり、最も好ましい割合は、55~65モル%のエチレンおよび45~35モル%のC~C18アルファ-オレフィンである。
【0019】
アシル化オレフィンコポリマーの調製の特定の例は、米国特許第6,107,257号に提供されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。前述のポリマーのターポリマーの変形は、約0.1~10モルパーセントの非共役ジエンまたはトリエンを含有することができる。ポリマーおよびコポリマーという用語は、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーを包含するために一般的に使用される。これらの材料は、エチレンコポリマー類の基本特性が実質的に変化しない限り、少量の他のオレフィンモノマー類を含有してもよい。
【0020】
いくつかのアプローチでは、エチレン-オレフィンコポリマー基材を形成するために使用される重合反応は、一般に、従来のZiegler-Nattaまたはメタロセン触媒システムの存在下で行われ得る。重合媒体は特有のものではなく、当業者に知られているように、溶液、スラリー、または気相プロセスを含むことができる。溶液重合が使用される場合、溶媒は、アルファ-オレフィンの重合のための反応条件下で液体である任意の好適な不活性炭化水素溶媒であってもよく、満足のいく炭化水素溶媒の例には、5~8個の炭素原子を有する直鎖パラフィンが含まれ、ヘキサンが好ましい。芳香族炭化水素、好ましくは単一のベンゼン核を有する芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンなど、および上記の直鎖パラフィン系炭化水素および芳香族炭化水素の沸点範囲に近い沸点範囲を有する飽和環状炭化水素が、特に好適である。選択される溶媒は、上記炭化水素の1つ以上の混合物であり得る。スラリー重合が使用される場合、重合の液相は、液体プロピレンであることが好ましい。重合媒体は、触媒成分を妨害する物質を含まないことが望ましい。
【0021】
一実施形態において、オレフィンコポリマー基材は、約5,000~約200,000、例えば約5,000~約150,000、約5,000~約100,000、約20,000~約200,000、約20,000~約150,000、約50,000~約150,000、または約50,000~約100,000の数平均分子量を有する油溶性直鎖または分岐ポリマーのようなエチレンコポリマーまたはターポリマーである。本明細書で論じられるように、数平均分子量は、較正基準としてポリスチレンを使用するGPCによって測定される。
【0022】
本明細書の任意の実施形態の数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器などの機器、およびWaters Empower Softwareなどのソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器は、Waters Separations ModuleおよびWaters屈折率検出器(または同様の任意選択的な機器)を装備してもよい。GPCの運転条件には、カラム温度が約40℃のガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、孔径100~10000Å)を含み得る。安定化されていないHPLCグレードのテトラヒドロフラン(THF)を、1.0mL/分の流速で溶媒として使用してもよい。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(PS)基準物質を用いて較正してもよい。500g/モル未満の質量を有する試料の較正曲線を、外挿してもよい。試料およびPS基準物質を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定はまた、参照により本明細書に組み込まれるUS5,266,223に記載されている。付加的に、GPC方法は、分子量分布情報を提供し、例えばまた、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau、J.J.Kirkland and D.D.Bly、“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”、John Wiley and Sons、New York、1979も参照のこと。
【0023】
オレフィンコポリマー上にグラフトされたアシル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、さらに少なくとも1つのカルボン酸および/またはジカルボン酸または無水物基を含むエチレン性不飽和カルボン酸または無水物反応物から得られる。一手法では、オレフィンコポリマーにグラフト化されたアシル基を形成する反応物アクリル酸、メタクリル酸ケイ皮酸、フェルラ酸、オルトクマル酸、メタクマル酸、パラクマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸フマル酸、イタコン酸および無水イタコン酸またはそれらの組み合わせで選択される。別の手法では、オレフィンコポリマーにグラフト化されたアシル基を形成する反応物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、またはそれらの組み合わせから選択される。なおさらなる手法では、オレフィンコポリマーにグラフト化されたアシル基を形成する反応物は、無水マレイン酸部分を含む。
【0024】
一実施形態では、オレフィンコポリマーはオレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.1~約0.8個のマレイン酸基をその上にグラフトしており、例えばオレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.2~約0.75、約0.5~約0.75、約0.4~約0.5または約0.4~約0.8、または約0.1~約0.4個のアシル基をグラフトしている。いくつかのさらなる実施形態では、オレフィンコポリマーは、オレフィンコポリマーの数平均分子量単位1000当たり約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6または約0.75個の無水マレイン酸基をその上にグラフトしている。本明細書の実施例は、グラフト値がどのように計算されるかに関するさらなる考察を提供する。
【0025】
カルボキシル反応物は、ポリマー骨格の数平均分子量単位1000当たり約0.1~約0.8個のカルボキシル基を提供する量で、好ましくは数平均分子量単位1000当たり約0.3~約0.75個のカルボキシル基を提供する量で所定のポリマー骨格上にグラフトされる。例えば、そして一手法では、20,000のMnを有するコポリマー基材は、ポリマー鎖当たり6~15のカルボキシル基またはポリマー1モル当たり3~7.5モルの無水マレイン酸でグラフト化される。別の実施例において、100,000のMnを有するコポリマーは、ポリマー鎖当たり30~75個のカルボキシル基またはポリマー鎖当たり15~37.5モルの無水マレイン酸でグラフトされる。最低レベルの官能基は、最低限の満足のいく分散性能を達成するのに必要なレベルである。最大官能性レベルをわずかに超えると、もしあれば、追加の分散剤性能が認められ、添加剤の他の特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0026】
アシル化オレフィンコポリマーを形成するためのグラフト反応は、一般に、溶液またはバルクのいずれか内のフリーラジカル開始剤の助けを借りて、押出機または強力混合装置のように実施される。重合がヘキサン溶液中で行われる場合、US4,340,689、US4,670,515およびUS4,948,842に記載されているようにヘキサン中でグラフト化反応を行うことが経済的に便利であり、参照により本明細書に組み込まれる。得られたポリマー中間体の特徴は、その構造内にランダムに分布したカルボン酸アシル化官能基を有することである。
【0027】
アシル化オレフィンコポリマーを形成するためのバルクプロセスでは、150℃~400℃の温度に加熱された押出機、強力ミキサまたはマスチケータのようなゴムまたはプラスチック処理機器にオレフィンコポリマーが供給され、エチレン性不飽和カルボン酸試薬およびフリーラジカル開始剤を、別々に溶融ポリマーに同時供給してグラフト化させる。参照により本明細書に組み込まれるUS5,075,383に従ってエチレンコポリマーの剪断およびグラフト化を達成するために、反応は任意選択的に混合条件で行われる。処理機器は、一般に、ポリマーの酸化を防止し、未反応の試薬およびグラフト化反応の副生成物を排気するのを助けるために、窒素でパージされる。処理機器における滞留時間は、所望の程度のアシル化を提供し、排気によるアシル化コポリマーの精製を可能にするのに十分である。鉱化性または合成の潤滑油を、任意選択的に通気段階の後に処理機器に添加してアシル化コポリマーを溶解することができる。
【0028】
エチレン性不飽和カルボン酸材料をポリマー主鎖にグラフトするのに用いることができるフリーラジカル開始剤としては、過酸化物、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、およびアゾ化合物、好ましくは約100℃より高い沸点を有しかつフリーラジカルを供給するためのグラフト化温度範囲内で熱分解するものが挙げられる。これらのフリーラジカル開始剤の代表は、アゾブチロニトリル、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ビス-tertブチルペルオキシドおよび2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ビス-tert-ブチルペルオキシドである。開始剤は、反応混合物の重量に基づいて約0.005重量%~約1重量%の間の量で使用される。
【0029】
遊離基グラフト化法の代わりに、エチレン-オレフィンコポリマーとエチレン性不飽和カルボン酸試薬との反応を行うための当該技術分野において既知の他の方法、例えばハロゲン化反応、熱もしくは「エン(ene)」反応またはそれらの混合物を使用することができる。このような反応は、フリーラジカルおよび酸化副生成物の発生を回避するために不活性雰囲気下で約250~約400℃の温度で反応物を加熱することにより鉱油または塊状で都合よく行われる。エチレンーオレフィンコポリマーが不飽和を含む場合、「エン」反応が好ましいグラフト化方法である。本開示によって望まれる、1000Mnあたり0.3から0.5個のカルボキシル基の高グラフトレベルを達成するために、フリーラジカルグラフト反応による「エン」または熱グラフト反応を続けるまたは進行させることが必要であり得る。
【0030】
アミノ酸の官能化:
本開示の潤滑剤添加剤はまた、1つ以上のアミノ酸結合基および/または分散剤部分で官能化されている。1つのアプローチにおいて、潤滑剤添加剤は、アシル化オレフィンコポリマーのアシル基がアミノ酸でさらに官能化される(そして、本明細書でも論じられるように、任意選択的に、さらに官能化される)分散剤粘度調整剤であり得る。アミノ酸の官能化は、上記のアプローチまたは実施形態で論じたアシル化オレフィンコポリマーをアミノモノまたはジカルボン酸と反応させることによって達成することができ、アミノモノまたはジカルボン酸は次の式を有する。
N-R(R)-COOH(式I)
ここで、Rが二価のC~C18ヒドロカルビルであり、Rが水素、直鎖または分岐アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヒドロキシフェニル基、複素環式アミノ基、カルボキシル基、アミド基であり、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール、チオエステル、セレン、またはそれらの組み合わせである。R基は、Rの置換基である。
【0031】
他のアプローチにおいて、Rは、直鎖または分岐C~Cアルキル基、フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、複素環式基、-N(R、-C(O)OR、C(O)R、-C(O)N(R、-SR、-S(O)、-S(O)N(R、OR、SeRであってよく、直鎖または分岐C~Cアルキル基、フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、または複素環基は、任意選択的に、フェニル、ナフチル、5~10員ヘテロアリール、5~6員複素環、-N(R、-C(O)OR、-C(O)R、-C(O)N(R、-SR、-S(O)、-S(O)N(R、OR、またはSeR、またはそれらの組み合わせで置換されていて、Rは水素またはC~Cアルキルである。
【0032】
いくつかの実施形態において、Rは、直鎖である二価のC~C18のアルキル基である。さらなる実施形態において、Rは、直鎖である二価のC~C6のアルキル基である。またさらなる実施形態において、Rはn-ペンチレンである。別の実施形態において、Rはメチレンである。いくつかのアプローチにおいて、Rはメチレン基であり、Rはインドールアルキル基またはイミダゾールアルキル基から選択される複素環式アミノ基である。
【0033】
いくつかのアプローチにおいて、アミノモノまたはジカルボン酸は、アミノヘキサン酸;2-アミノ-3-フェニルプロパン酸;2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸;2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-5-イル)プロパン酸;2-アミノブタン二酸;2-アミノペンタン二酸;2-アミノ-4-メチルペンタン酸;およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、アミノ酸官能化は、ペプチド結合、すなわち、ジペプチド、トリペプチドなどによって直列に結合された1つのアミノ酸または2つ以上のアミノ酸を含み得る。
【0034】
他の実施形態において、アミノ酸官能化は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、セレノシステイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンからなる群から選択されるものなどの天然アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態には、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、およびトリプトファンが含まれる。他の実施形態において、アミノ酸はdアミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸はlアミノ酸である。さらに別の実施形態において、アミノ酸は、dおよびlアミノ酸の混合物である。
【0035】
他のアプローチにおいて、アミノ酸官能化は、6-アミノヘキサン酸、β-アラニン、γ-アミノ酪酸σ-アミノレブリン酸、アラニン、アミノイソ酪酸、デヒドロアラニン、ノルバリン、ノルロイシン、α-アミノ-n-ヘプタン酸、アロイソロイシン、ピペコール酸、ホモシステイン、サルコシン、N-プロピルグリシン、N-プロピルグリシン、N-メチルアラニン、およびN-エチルアラニン、またはそれらの混合物などの非タンパク産生アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、非タンパク産生アミノ酸は、R基が結合しているRアルキル基の炭素における立体化学に関して異性体的に純粋であり、すなわち、炭素は、サンプルの大部分についてRまたはSのいずれかの立体化学を有する。いくつかの実施形態において、非タンパク産生アミノ酸は、R基が結合しているRアルキル基の炭素における立体化学に関する異性体の混合物である。
【0036】
OCPポリマーへのアミノ酸の付加は、いくつかのアプローチにおいて、添加剤に少なくとも2つの機能を提供する。アミノ酸は、粘度測定を改善する可能性のあるさらなるアミンまたはアルコール官能化の配向を変更することができるスペーサーとして機能し得る。加えて、アミノ酸は、さらなるアミン、エステル、またはアルコール官能化剤と組み合わされた追加のアミノ酸官能基に基づいて、ポリマー骨格に二官能性を導入し得る。アミノ酸はまた、アミノ酸のR基に応じて新しい程度の極性を導入する場合があり、これはまた、分散性および/またはトライボロジー特性の両方を助けることができる。
【0037】
オレフィンコポリマー(OCP)の官能化:
本開示の潤滑剤添加剤は、任意選択的に、アミノ酸またはペプチドのカルボキシル部分でさらに官能化される。1つのアプローチにおいて、そのようなOCP補足の官能化は、アミン、エステル、またはアルコール官能化剤と、上記のアミノ酸官能化OCPポリマーとの反応生成物である。さらなるまたは補足の官能化剤は、芳香族アミン、多芳香族アミン、第一級アミン、第二級アミン、第一級または第二級アルコール、ナフチルアルキルアミン、およびそれらの混合物から選択し得る。いくつかのアプローチにおいて、さらなるまたは補足の官能化剤はアミンを含み、1つ以上の第一級および/または第二級アリールアミン、および任意選択的に、1つ以上の第一級および/または第二級アルキルアミンを含み得る。他のアプローチにおいて、さらなるまたは補足の官能化剤は、例えば、分散剤特性または他の特性を提供する分子を含んでよく、これには、N-フェニル-フェニレンジアミン(NPPDA)、1-(2-アミノ-エチル)-イミダゾリジン-2オン、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン、N-フェニル-p-フェニルジアミン、N-(3-アミノプロピル)-2ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β-アラニンメチルエステル、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、分岐β-アルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルアミン、フェノキシプロピルアミン、それらの芳香族誘導体またはそれらの組み合わせ、が含まれる。いくつかのアプローチにおいて、第一級アミンは、(アミノモノまたはジカルボン酸に加えて)このさらなる官能化のために、それらのかなり高い生成物収率および比較的より速い速度論のために好ましい。
【0038】
このアプローチの1つの例示的な態様では、本開示の潤滑剤添加剤のアミノ酸のカルボキシル部分は、式IIのアミン含有部分でさらに官能化される。
【化3】
式中、Aは、4個以下のC1~6アルキル置換基で任意選択的に置換されていてもよい2価のフェニル基であり、R’は、水素、C1~6アルキル、またはフェニルであり、ここで、アルキルおよびフェニル基は、ハロ、ニトロ、シアノ、-C(O)(C1~4アルキル)、ベンジル、ベンゾイルおよびC1~4アルキルからなる群から独立して選択される化学部分の3個以下の事例でそれぞれ任意選択的にかつ独立に置換され、mは1~10の整数である。
【0039】
上記態様の一実施形態では、Aは、下記から選択される部分であってよく、
【化4】
これらの各々は、4個以下のC1~6アルキル置換基で任意選択的に置換されている。さらなる実施態様において、Aは、4個以下のC1~6アルキル置換基で任意選択的に置換されたA3である。なおさらなる実施形態では、Aは非置換である。
【0040】
別の実施形態では、R’はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはtert-ブチルである。別の実施形態では、R’はフェニルであり、これはハロ、ニトロ、シアノ、-C(O)(C1~4アルキル)、ベンジル、ベンゾイル、およびC1~4アルキルからなる群から独立して選択される化学部分の3個以下の事例で任意選択的に置換される。さらなる実施形態では、R’は、ハロ、C1~4アルキル、またはフェニルで任意選択的に置換されているフェニルである。なおさらなる実施形態では、R’は非置換フェニルである。いくつかの実施形態では、mは1~5の整数である。いくつかの他の実施形態では、mは1~3の整数である。さらなる実施形態では、mは1である。一実施形態では、mは1であり、AはA3であり、R’は非置換フェニルである。
【0041】
さらに他のアプローチまたは実施形態において、本明細書の潤滑剤添加剤のいずれか、特にアミノ酸のカルボキシル部分は、式IIIのN-アリールフェニレンジアミンから得られるさらなるアミン官能化を含む。
【化5】
式中、Rは、水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、またはアルキル、アルケニル、アルコキシルアラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル、もしくはアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖もしくは直鎖ラジカルであり、Rは、--NH、CH--(CH--NH、CH-アリール-NHであり、ここで、nは、1~10の整数であり、Rは、水素、4~24個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである。他の手法では、本明細書の多官能性粘度調整剤は、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、およびこれらの混合物から選択されるN-アリールフェニレンジアミンから提供されるアミン官能化を含む。
【0042】
他の手法では、本開示の添加剤は、官能化分散剤粘度調整剤または分散剤を調製する際に任意の多数のポリアミンで官能化される。例えば、いくつかのアプローチにおいて、非限定的な例示的ポリアミンは、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン(NPPDA)、アミノグアニジン重炭酸塩(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)および重質ポリアミン(heavy polyamine)を含み得る。好ましい実施形態において、ポリアミンはNPPDAである。重質ポリアミンは、TEPAおよびPEHAのような少量の低級ポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2つ以上の第一級アミン、および従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得るさらなる非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の一実施形態では、ポリアミンは、テトラエチレンペンタミン(TEPA)から選択することができる。
【0043】
オキサゾリンキャッピング剤:
本開示のいくつかのアプローチにおいて、本明細書の潤滑剤添加剤は、任意選択的に、オキサゾリンまたは式IVのその誘導体などのオキサゾリン由来のキャッピング剤を含み得る。
【化6】
式中、R13およびR15は、それぞれ独立して、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、C~C32脂肪族基、フェニル、ナフチル、3~7員の複素環基、5~6員のヘテロアリール基からなる群から選択され、かつ、ここで該C~C32脂肪族基の5個以下の炭素原子は、独立して、任意選択的に-O-、-NH-、-N(C1-4アルキル)、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)NH-、-C(O)N(C14アルキル)-から選択される2価の基で置換されており、かつ、ここで各R13およびR15は、独立して、任意選択的に、C~Cアルキル、フェニル、ナフチル、3~7員複素環基、5~6員のヘテロアリール基、ハロ、ニトロ、およびシアノから選択される3個以下の置換基で置換されており、Rは、水素、ハロ、またはC1-4アルキルである。
【0044】
別の実施形態において、R13は、ハロ、ニトロ、シアノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、2-エチルヘキシル、フェニル、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジルおよび1,3,5-トリアジルからなる群から選択され、任意選択的にC~Cアルキル、フェニル、ハロ、ニトロおよびシアノから選択される3個以下の置換基で置換されている。
【0045】
いくつかのアプローチでは、R13はエチルまたはフェニルであり、またはR13は水素であってよい。いくつかのアプローチでは、R14は水素である。いくつかの他の実施形態において、R15は水素である。いくつかのさらなる実施形態において、R15およびR14は両方とも水素である。さらなる一実施形態において、R13はエチルまたはフェニルであり、R15およびR14は両方とも水素である。
【0046】
他のアプローチでは、本明細書のキャッピング剤に適したオキサゾリンまたはその誘導体は、2-フェニル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2,4,5-トリメチル-3-オキサゾリン、2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン、これらの混合物、およびこれらの誘導体から選択し得る。さらに他の手法では、オキサゾリンまたはその誘導体は、2、4、および5位またはこれらの組み合わせにペンダント基を含み、ここでペンダント基は複素環式、芳香族、C~C32のヒドロカルビル基、およびそれらの混合物から選択される。
【0047】
いくつかの手法では、本明細書の潤滑添加剤は、約5~約70パーセントの第1級アミンおよび/または第2級アミン(アルキルおよび/またはアリール)のキャッピング比を有することができ、他の手法では約5~約50パーセントの、さらなる手法では、約7から約35パーセントのキャッピングを有することができる。本明細書で使用されるとき、キャッピング比は、少なくともオキサゾリンまたはその誘導体でキャッピングまたは反応されている第1級または第2級アミン(アルキルおよび/またはアリール)のパーセントである。いくつかのアプローチでは、オキサゾリンまたはその誘導体と活性アミン(すなわち、第1級および/または第2級アルキルまたはアリールアミン)とのモル比は、約5:1~約3:1であり、他のアプローチでは、約2:1~約1.5:1であり、およびさらに別のアプローチでは、約1:2~約1:4である。さらなる手法では、オキサゾリンと活性アミンとのモル比は約1:1である。キャッピングパーセントは、既知の窒素測定技術を使用してキャッピング反応の前後にポリマーの窒素濃度を測定することによって決定される。いくつかの手法では、アミンを無水マレイン酸などの他の化合物でキャッピングすることもできる。
【0048】
定義
本明細書で使用されるとき、「有効濃度」という用語は、基油中の煤粒子が十分に分散されていることを示すニュートン挙動を示すために煤化基油に必要な粘度調整剤の濃度を指す。有効濃度は、実施例に記載されている方法によって決定される。さらに、煤の分散性にアクセスするための有効な濃度または試験は、US8,927,469およびUS2017/0335278にも記載されており、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「オレフィンコポリマー」という用語は、すべてのモノマーが少なくとも1つのオレフィン(炭素-炭素二重結合)を含む、2つ以上の異なる種類のモノマーからなるランダムおよび/またはブロックポリマーを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、カルボキシル(-COOH)基およびアミノ(-NH)基の両方を含む単純な有機化合物を指す。特に明記しない限り、アミノ酸は、追加のカルボキシル基および/またはアミノ基を含む他の置換基を含むことができる。
【0051】
本開示の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に準拠して同定される。さらに、有機化学の一般原理は、”Organic Chemistry”、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausolito:1999、および”March’s Advanced Organic Chemistry”、5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載され、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で一般的に例示されるように、または特定のクラス、サブクラス、および本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択的に置換されてもよい。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビルまたはヒドロカルビル基」という用語は、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有する基であり、各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基、およびハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホキシ基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、硫黄、酸素および窒素の1つ以上を含む置換された炭化水素置換基であって、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下の非炭化水素置換基が存在するもの、から独立して選択される。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択的に置換されている。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、または1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、または2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、複素脂環式(heterocycloaliphatic)[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(複素脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、または複素脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファルモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、複素脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシなどの置換基の1つ以上で置換され得る(すなわち、任意選択的に置換される)。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、またはハロアルキルが挙げられる。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、または2~4個)の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、および2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、複素脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(複素脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、または複素環式脂肪族アミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO-、脂環式-SO-、アリール-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファルモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、複素環式脂肪族脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシなどの置換基の1つ以上で任意選択的に置換され得る。限定されないが、置換アルケニルのいくつかの例には、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、またはハロアルケニルが含まれる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」基は、を含む脂肪族炭素基を指す。
2-8(例えば、2-12、2-6、または2-4)個の炭素原子を含み、少なくとも1つの三重結合を有する。アルキニル基は直鎖または分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、これらに限定されないプロパルギルおよびブチニルが挙げられる。アルキニル基は、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルまたは脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルまたは脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-、脂肪族アミノ-SO-、または脂環式-SO-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、複素脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば(脂環式)カルボニルまたは(複素脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(複素脂環式)オキシ、または(ヘテロアリール)アルコキシなどの置換基の1つ以上で任意選択的に置換され得る。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRを指し、式中、RおよびRの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択的に置換される。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それはーNRーによって表される。R は、上記で定義されたものと同義である。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式または二環式(融合または架橋)環を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式または二環式(融合または架橋)(例えば、5~10員の単環式または二環式)飽和環構造を指し、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0061】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式または4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)、単環式環系は、香族であるか、または二環式または三環式環系中の環の少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ融合基は、1または2つの4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、またはイソキノリニル)と融合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、1,8-ナフチリジルである。
【0062】
限定されないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0063】
限定するものではないが、二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、またはプテリジルが含まれる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0064】
使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、分子の残余物に直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(アルキルまたはアルケニルなど)、脂環式(シクロアルキル、シクロアルケニルなど)置換基、ならびに芳香族-、脂肪族-および脂環式-置換芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分によって完成する(2種の置換基が共に脂環式ラジカルを形成するなど)環状置換基、(2)置換炭化水素置換基、すなわち本明細書の説明の文脈において、主に炭化水素置換基(ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシなど)を変更しない非炭化水素基を含有する置換基、(3)ヘテロ置換基、すなわち本明細書の文脈において、主に炭化水素の特性を有するが、そうでなければ炭素原子で構成される環または鎖中に炭素以外を含有する置換基が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素および窒素を含み、そしてピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般的に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基が存在し、典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しない。「ヒドロカルビル基」は、分子の残余物の部分に直接結合した炭素原子を有する基を指してもよく、各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、そして置換された炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホキシ基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、硫黄、酸素および窒素の1種以上を含み、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに存在する。
【0065】
本明細書に記載の新規な分散剤粘度調整剤または潤滑剤分散剤などの新規な潤滑添加剤は、潤滑油組成物の一部として使用することができる。したがって、該潤滑油組成物は、以下に記載される基油をさらに含む。いくつかのアプローチにおいて、潤滑油は、固体ベースで前の段落のいずれかに記載された官能化OCPポリマーの約0.1~約5重量パーセントを含み得る。
基油
【0066】
本開示の分散剤粘度調整剤および/または分散剤は、大部分の基油とブレンドしてもよい。エンジン潤滑油組成物および/または金属加工組成物(または他の潤滑組成物)の配合に使用するのに好適な基油は、任意の好適な合成油、動物油、植物油、鉱油またはそれらの混合物から選択できる。動物油および植物油(例えばラード油、ヒマシ油)、ならびに液体石油および溶媒処理または酸処理されたパラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン-ナフテン型の鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油を使用することができる。石炭またはシェール由来の油もまた好適であり得る。基油は、典型的には、100℃で約2~約15cSt、またはさらなる例として、約2~約10cStの粘度を有し得る。さらに、ガスツーリキッド(gas-to-liquid)プロセスから誘導される油もまた好適である。
【0067】
好適な合成基油としては、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテンを含むポリ-アルファ-オレフィン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ならびにポリシリコーン油が挙げられる。合成油としては、重合オレフィンおよび共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマーなど)、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ-(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)など、およびそれらの混合物、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ-ノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)ベンゼンなど)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニルなど)、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにこれらの誘導体、類似体および同族体、などの炭化水素油が挙げられる。
【0068】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されているアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにそれらの誘導体は、使用され得る別の種類の既知の合成油を構成する。このような油としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって製造された油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル、約500~1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、約1000~1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはそのモノ-およびポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合C~C脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルが例示される。
【0069】
使用され得る他の種類の合成油には、ジカルボン酸のエステル(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と種々のアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)との混合物を含む。これらのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジニコシルセバケート、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸などを反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。
【0070】
合成油として有用なエステルには、C~C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどから製造されるものも含まれる。
【0071】
したがって、本明細書に記載のエンジンおよび/または金属加工潤滑組成物を製造するために使用され得る基油は、American Petroleum Institute(API:アメリカ石油協会)のBase Oil Interchangeability Guidelinesに明記されているグループI~Vの基油のいずれかから選択することができる。そのような基油の群は、以下の通りである。
【0072】
【表1】
【0073】
基油は、少量または多量のポリ-アルファ-オレフィン(PAO)を含有してもよい。典型的には、ポリーアルファ-オレフィン類は、約4約30、または約4~約20、または約6~約16の炭素原子を有するモノマー類から誘導される。有用なPAOの例には、オクテン、デセン、それらの混合物などに由来するものが含まれる。PAOは、100℃で約2~約15、または約3~約12、または約4~約8cStの粘度を有することができる。PAOの例は、100℃で4cStのポリ-アルファ-オレフィン、100℃で6cStのポリ-アルファ-オレフィン、およびそれらの混合物が含まれる。鉱油と前述のポリ-アルファ-オレフィンとの混合物を使用することができる。
【0074】
基油は、Fischer-Tropsch合成炭化水素から誘導された油であり得る。Fischer-Tropsch合成炭化水素は、Fischer-Tropsch触媒を使用して、HおよびCOを含有する合成ガスから作製される。そのような炭化水素は、典型的には基油として有用であるためにさらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号または第6,180,575号に開示されている方法を使用して水素化異性化することができ、米国特許第4,943,672号または第6,096,940号に開示されている方法を使用して水素化分解および水素化異性化することができ、米国特許第5,882,505号に開示されている方法を使用して脱ロウすることができ、米国特許第6,013,171号、第6,080,301号、または第6,165,949号に開示されている方法を使用して水素化異性化および脱ロウすることができる。
【0075】
上に開示した種類の天然または合成のいずれかの、未精製油、精製油、および再精製油(ならびにこれらのいずれかのうちの2つ以上の混合物)を基油に使用することができる。未精製油は、さらなる精製処理なしに天然または合成供給源から直接得られるものである。例えば、レトルト処理操作から直接得られたシェール油、一次蒸留から直接得られた石油、またはエステル化プロセスから直接得られそしてさらに処理することなく使用されたエステル油は未精製油であろう。精製油は、それらが1つ以上の性質を改善するために1つ以上の精製工程でさらに処理されていることを除いて、未精製油と同様である。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどの多くのそのような精製技術が当業者に知られている。再精製油は、既に現場で使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと同様のプロセスによって得られる。そのような再精製油は再生油または再処理油としても知られており、使用済み添加剤、汚染物質、および油分解生成物の除去を目的とした技術によってさらに加工されることが多い。
【0076】
基油は、本明細書に記載の乳化剤と任意の添加剤と組み合わせてエンジン潤滑組成物を提供することができる。したがって、基油は、潤滑油組成物の全重量に基づいて約50重量%~約95重量%の範囲の主要量でエンジン潤滑油組成物中に存在し得る。
【0077】
潤滑油の他の任意の添加剤を以下に記載する。
【0078】
金属含有洗浄剤
上記の分散剤反応生成物と共に使用することができる金属清浄剤は、一般に、極性頭部が酸性有機化合物の金属塩を含む、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含む。塩は、実質的に化学量論量の金属を含有していてもよく、その場合それらは通常は通常のまたは中性の塩として記載され、典型的には約0~約150未満の全塩基価またはTBN(ASTM D2896により測定)を有する。酸化物または水酸化物のような過剰の金属化合物を、二酸化炭素のような酸性ガスと反応させることによって大量の金属塩基を含ませることができる。得られる過塩基性洗浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)のコアを取り囲む中和された洗浄剤のミセルを含む。そのような過塩基性洗浄剤は、約150以上、例えば約150~約450以上のTBNを有することができる。
【0079】
本実施形態での使用に適し得る洗浄剤としては、油溶性過塩基性の、低塩基性および中性の、金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムのスルホネート、フェネート、硫化フェネート、およびサリチレートが挙げられる。1つより多い金属、例えばカルシウムとマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた好適であり得る。好適な金属洗浄剤は、150~450TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホネート、150~300TBNのTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムフェネートまたは硫化フェネート、および130~350のTBNを有する過塩基性カルシウムまたはマグネシウムサリチレートであり得る。そのような塩の混合物も使用することができる。
【0080】
金属含有洗浄剤は、潤滑組成物中に約0.5重量%~約5重量%の量で存在し得る。さらなる例として、金属含有洗浄剤は、約1.0重量%~約3.0重量%の量で存在してもよい。金属含有洗浄剤は、潤滑組成物中に、潤滑組成物の総重量に基づいて約500~約5000ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を潤滑組成物に供給するのに十分な量で存在してもよい。さらなる例として、金属含有清浄剤は、約1000~約3000ppmのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。
【0081】
リン系耐摩耗剤
リン系摩耗防止剤を使用することができ、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物などこれに限定されない金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物を含むことができる。好適な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含むことができ、ここで金属はアルカリもしくはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅もしくは亜鉛であり得る。
【0082】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、通常1つ以上のアルコールまたはフェノールとPとの反応により、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)をまず形成し、次いで形成されたDDPAを金属化合物で中和することによる、既知の技術に従って調製され得る。例えば、ジチオリン酸は、一級アルコールと二級アルコールの混合物を反応させることによって作製することができる。代替的に、一方のヒドロカルビル基が完全に二級の性質であり、他方のヒドロカルビル基が完全に一級の性質である複数のジチオリン酸を調製することができる。金属塩を作製するために、任意の塩基性または中性金属化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は中和反応において過剰の塩基性金属化合物を使用するためにしばしば過剰の金属を含有する。
【0083】
亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式によって表すことができ、
【化7】
式中、RおよびR’は、1~18個、例えば2~12個の炭素を含有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール、脂環式遊離基などの基を含む同一または異なるヒドロカルビル遊離基であり得る。RおよびR’は、2~8個の炭素原子のアルキル基であり得る。したがって、遊離基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであり得る。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の総炭素原子数(すなわち、RおよびR’)は、一般に約5以上であろう。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み得る。
【0084】
リン系摩耗防止剤として利用され得る他の好適な成分としては、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、ホスファイト、およびそれらの塩、ならびにホスホネートなどのいずれかの好適な有機リン化合物が含まれる。好適な例は、トリクレジルホスフェート(TCP)、ジ-アルキルホスファイト(例えば、ジブチル水素ホスファイト)、およびアミルホスフェートである。
【0085】
別の好適な成分は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、無機または有機リン酸またはエステルなどのリン源と組み合わせたポリアミンとの間の反応からの完成反応生成物などのリン酸化スクシンイミドである。さらに、それは、生成物が第1級アミノ基と無水物部分との反応から生じるタイプのイミド結合に加えてアミド、アミジン、および/または塩結合を有し得る化合物を含み得る。
【0086】
リン系摩耗防止剤は、約200~約2000ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。さらなる例として、リン系摩耗防止剤は、約500~約800ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。
【0087】
リン系摩耗防止剤は、約1.6~約3.0(ppm/ppm)の潤滑組成物中のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の総量に基づくアルカリおよび/またはアルカリ土類金属含有量(ppm)と、潤滑組成物中の全リン量に基づく、リン含有量(ppm)との比を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在し得る。
【0088】
摩擦調整剤
本開示の実施形態は、1つ以上の摩擦調整剤を含み得る。好適な摩擦調整剤は、金属含有および金属を含まない摩擦調整剤を含み得、これらには、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン(guanadine)、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0089】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、または芳香族ヒドロカルビル基またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含んでよく、かつ飽和または不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得、かつ飽和または不飽和であり得る。
【0090】
アミン系摩擦調整剤は、ポリアミンのアミドを含み得る。そのような化合物は、飽和もしくは不飽和、またはその混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。
【0091】
好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはこれらの混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができる。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0092】
アミンおよびアミドは、それ自体として、あるいは酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはモノ-、ジ-もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、US6,300,291に記載され、参照により本明細書に組み入れられる。
【0093】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属を含まない)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含んでもよい。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸類および無水物をアルカノール類と反応させることによって形成されたエステル類を含み得る。他の有用な摩擦調整剤は一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。カルボン酸類および無水物類とアルカノール類とのエステル類は、米国特許第4,702,850号に記載されている。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の他の例は、一般にグリセリンモノオレエート(GMO)として知られており、これはオレイン酸のモノ-およびジエステル類を含み得る。他の好適な摩擦調整剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。無灰摩擦調整剤は、潤滑剤組成物の全重量に基づいて約0.1~約0.4重量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在してもよい。
【0094】
好適な摩擦調整剤はまた、1種以上のモリブデン化合物を含み得る。モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、モリブデンスルフィド、トリ核有機モリブデン化合物、モリブデン/アミン錯体、およびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0095】
また、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のモリブデン酸アルカリ金属および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン、または類似した酸性モリブデン化合物が含まれる。あるいは、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載される、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンが提供されてもよい。
【0096】
好適なモリブデンジチオカルバメートは、下式によって表すことができ、
【化8】
式中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、C~C20アルキル基、C~C20シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアラルキル基、またはエステル、エーテル、アルコール、またはカルボキシル基を含むC~C20ヒドロカルビル基を表しX、X、YおよびYは、各々独立に、硫黄原子または酸素原子を表す。
【0097】
、R、RおよびRのそれぞれに適した基の例としては、2-エチルヘキシル、ノニルフェニル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ラウリル、オレイル、リノレイル、シクロヘキシルおよびフェニルメチルが挙げられる。R~Rは、各々C~C18のアルキル基を有していてもよい。XとXは同じでもよく、YとYは同じでもよい。XおよびXは両方とも硫黄原子を含み、YおよびYは両方とも酸素原子を含み得る。
【0098】
モリブデンジチオカルバメートのさらなる例としては、C~C18ジアルキルもしくはジアリールジチオカルバメート、またはアルキルアリールジチオカルバメート例えば、ジブチル-、ジアミル-ジ-(2-エチル-ヘキシル)-、ジラウリル-、ジオレイル-、およびジシクロヘキシル-ジチオカルバメートが挙げられる。
【0099】
他のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Moのもののような三核モリブデン化合物およびそれらの混合物であり、Lは、化合物を油に可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立に選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7まで変化し、Qは、水、アミン類、アルコール類、ホスフィン類、およびエーテル類などの中性電子供与化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、および非化学量論的値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在してもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、US6,723,685に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
モリブデン化合物は、重量で約5ppm~500ppmのモリブデンを提供する量で、完全配合エンジン潤滑剤中に存在してもよい。さらなる例として、モリブデン化合物は、約50~300重量ppmのモリブデンを提供する量で存在してもよい。モリブデン化合物の特に好適な量は、約60~約250重量ppmのモリブデンを潤滑剤組成物に供給するのに十分な量であってよい。
【0101】
消泡剤
いくつかの実施形態において、消泡剤は、組成物中での使用に適した別の成分を形成し得る。泡抑制剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択することができる。本明細書に記載のエンジン潤滑剤配合物中の消泡剤の量は、配合物の総重量に基づいて約0.001重量%~約0.1重量%の範囲であり得る。さらなる例として、消泡剤は、約0.004重量%~約0.008重量%の量で存在してもよい。
【0102】
酸化抑制剤成分
酸化防止剤または抗酸化剤は、使用中にベースストックが劣化する傾向を低減し、その劣化は、金属表面に堆積するスラッジおよびワニス状堆積物などの酸化生成物および完成した潤滑剤の粘度増大によって証明され得る。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、ヒンダード硫化フェノール、C~C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化または非硫化アルキルフェノールのいずれかの金属塩、例えばカルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化または硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載されているような、油溶性銅化合物が挙げられる。
【0103】
使用し得る他の抗酸化剤には、立体障害フェノールおよびそのエステル、ジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、および無灰ジアルキルジチオカルバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的な例としては、米国特許公開第2004/0266630号に記載されているように、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルメチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ペンチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ヘキシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ヘプチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-(2-エチルヘキシル)-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-オクチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ノニル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-デシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ウンデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、例えば4,4-メチレンビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、4,4-メチレンビス(2-tert-アミル-o-クレゾール)、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4-メチレン-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)を含むがこれらに限定されないメチレン架橋立体障害フェノール、およびそれらの混合物、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
ジアリールアミン酸化防止剤には、以下の式を有するジアリールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【化9】
式中、R’およびR’‘は、各々独立して、6~30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を表す。アリール基の置換基の例には、1~30個の炭素原子を有するアルキル、ヒドロキシ基、ハロゲン基、カルボン酸もしくはエステル基、またはニトロ基のような脂肪族炭化水素基が含まれる。
【0105】
アリール基は、好ましくは置換または非置換のフェニルまたはナフチル、特に一方または両方のアリール基が4~30個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルキルで置換されているものである。一方または両方のアリール基、例えばモノ-アルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、またはモノ-およびジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物が置換されていることが好ましい。
【0106】
ジアリールアミンは、分子中に2個以上の窒素原子を含有する構造のものであり得る。したがって、ジアリールアミンは少なくとも2個の窒素原子を含み得、ここで例えば第2級窒素原子ならびに窒素原子の1個に2個のアリールを有する種々のジアミンの場合のように、少なくとも1個の窒素原子はそれに結合した2個のアリール基を有する。
【0107】
使用され得るジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン、各種アルキル化ジフェニルアミン、3-ヒドロキシジフェニルアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、モノブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、モノオクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル-ジフェニルアミン、p-配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジフェニルアミンおよび混合オクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
硫黄含有抗酸化剤としては、それらの製造に使用されるオレフィンの種類および抗酸化剤の最終硫黄含有量によって特徴付けられる硫化オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち168~351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用可能なオレフィンの例には、アルファ-オレフィン、異性化アルファ-オレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0109】
アルファ-オレフィンとしては、任意のC~C25アルファ-オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファオレ-フィン類は、硫化反応の前または硫化反応の間に異性化され得る。内部二重結合および/または分岐を含有するアルファオレフィンの構造異性体および/または配座異性体もまた使用され得る。例えば、イソブチレンは、アルファ-オレフィン1-ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0110】
オレフィンの硫化反応に使用できる硫黄源には、元素状硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、ならびに一緒にまたは硫化プロセスの異なる段階で添加されるそれらの混合物が含まれる。
【0111】
不飽和油は、それらの不飽和性のために、硫化されそして抗酸化剤として使用されてもよい。使用できる油脂の例には、コーン油、キャノーラ油、綿実油、グレープシード油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種子油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ種子油、獣脂、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0112】
完成潤滑剤に供給される硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄含有量および完成潤滑剤に供給されるべき硫黄の所望のレベルに基づく。例えば、20重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンを1.0重量%の処理レベルで完成潤滑剤に添加すると、2000ppmの硫黄が完成潤滑剤に送達される。10重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成潤滑剤に添加されると、1000ppmの硫黄を完成潤滑剤に送達する。硫化オレフィンまたは硫化脂肪油は、完成潤滑剤に200ppm~2000ppmの硫黄を供給することが望ましい。
【0113】
好適なエンジン潤滑剤は、広い範囲および狭い範囲を有する表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。基油は潤滑油の残余を補う。
【0114】
【表2】
【0115】
本明細書に記載の潤滑剤組成物に含まれてもよいさらなる任意の添加剤としては、これらに限定されない防錆剤が、乳化剤、抗乳化剤、および油溶性チタン含有添加剤が挙げられる。
【0116】
本明細書に記載された組成物を配合する際に使用される添加剤は、個別にまたは様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態であるときに成分の組み合わせによってもたらされる相互適合性を利用することができる。また、濃縮物の使用は混合時間を短縮し、混合エラーの可能性を低減できる。
【0117】
本開示は、自動車エンジン潤滑剤としての使用のために特に配合された、新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、以下の特質:酸化防止、摩耗防止性能、錆抑制、燃料経済性、耐水性、空気混入、シール保護、および泡低減特性のうちの1つ以上の改善を提供する、エンジン用途に好適な潤滑油を提供できる。
【0118】
本開示およびその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例示的なものであり、範囲または趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、および装置の変形形態を使用できることを容易に理解するであろう。別段の記載がない限り、または考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載のすべての百分率、比率、および割合は重量によるものである。
【実施例
【0119】
材料および方法
議論の内容から特に明らかでない限り、本明細書に記載の反応は、一般に、加熱マントル、傾斜3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口および凝縮器を備えた500mLの4ネック樹脂ケトル内で実施された。
【0120】
出発物質:「マレイン化OCP-1」は、米国特許第6,107,257号(Mn=75,000g/mol、Mw=150,000g/mol)に記載されているような既知の方法を使用して無水マレイン酸(マレイン化レベルは約2.0重量%)でグラフト化されたエチレン-プロピレンコポリマーである。「マレイン化OCP-2」は、米国特許第6,107,257号(Mn=40,000g/mol、Mw=80,000g/mol)に記載されているような既知の方法を使用して無水マレイン酸(マレイン化レベルは約2.0重量%)でグラフト化されたエチレン-プロピレンコポリマーである。US6,107,257は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
アミノ酸官能化アシル化オレフィンコポリマーの一般的な合成戦略
本開示の分散剤オレフィンコポリマー粘度調整剤は、以下の例示的なスキーム1に記載される手順によって調製することができる。具体的には、オレフィンコポリマーにアシル化剤(例えば、無水マレイン酸(Sigma Aldrich))をグラフトする。アシルグラフト化は、当技術分野で知られている好適な技術、例えば、米国特許第6,107,257号に記載されている好適な技術を用いて達成することができる。次に、グラフトされた酸または無水物は、本明細書に記載され、例示的なスキーム1に示されるアミノ酸とのカップリング化学(酸の場合)または脱水反応(無水物の場合)を受けることができ、ここで、Rはメチレンであり、Rは、本明細書で定義される。アミノ酸官能化反応は、基油などの溶媒の存在下で達成することができる。
【0122】
上記で形成されたアミノ酸グラフト化コポリマーのさらなるまたは補足の官能化は、アミノ酸のカルボキシル基をポリアミンまたは他の官能化剤とカップリングすることによって達成することができる。(ポリアミンは、以下のスキーム1の例としてのみ示されている。)明確にするために、そしていかなる方法でも開示を制限することなく、スキーム1は、N-フェニル-p-フェニレンジアミン(NPPDA)で、さらなる官能化を達成できることを示す。当業者によって容易に想像され得るように、多種多様なポリアミンまたは他の薬剤を、アミノ酸グラフト化コポリマーのさらなる官能化のために使用することができる。コポリマーをさらに官能化するためのポリアミンは、本明細書に記載されており、この目的に使用できるすべての可能なポリアミンを表すわけではなく、したがって、開示を制限することを意味するものではない。ポリアミン官能化反応はまた、基油などの溶媒の存在下でも達成できる。次に、官能化ポリアミンは、式IVのオキサゾリン(Sigma Aldrichから入手可能)で任意選択的にキャップすることができ、ここで、R13、R14、およびR15は、本明細書で定義され、一般に以下のスキーム1に示される。コポリマーのポリアミンをさらに官能化するためのオキサゾリンは、本明細書に記載されており、この目的に使用できるすべての可能なオキサゾリンを表すわけではなく、したがって、開示を制限することも意味しない。
【0123】
【化10】
【0124】
実施例1
この実施例は、アシル化オレフィンコポリマーへのフェニルアラニンの付加を説明する。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mLの4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36.0g)、およびPhillips 66 110N基油(253.54g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、ポリマーを完全に溶解させた。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、フェニルアラニン(1.46g、8.84mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を上げ、165℃でさらに3時間保持した。反応物を約130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)のフィルターを通してろ過した。次に、生成物を室温まで冷却した。
【0125】
実施例2:
この例では、フェニルアラニンとNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングについて説明する。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mLの4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36.0g)、およびPhillips 66 110N基油(251.92g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、フェニルアラニン(1.46g、8.83mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0126】
実施例3
この例では、トリプトファンとNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングについて説明する。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(251.58g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、トリプトファン(1.8g、8.81mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0127】
実施例4
この例では、グルタミン酸とNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングについて説明する。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(250.85g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、グルタミン酸(1.17g、7.95mmol)およびサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(2.97g、16.12mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0128】
実施例5
この例では、トリプトファンとNPPDAをアシル化オレフィンコポリマーにキャッピングし、オキサゾリンで後処理する方法について説明する。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(250.27g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、トリプトファン(1.8g、8.81ミリモル)およびサーフォニックL24-2(9.0g)。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。この後、2-フェニル-2-オキサゾリン(1.3g、8.83mmol)を添加し、反応を165℃でさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0129】
実施例6
この実施例は、ヒスチジンとNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングを示す。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(252.37g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、ヒスチジン(1.01g、5.97mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0130】
実施例7
この実施例は、グルタミン酸およびNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピング、およびオキサゾリンによる後処理について説明した。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(250.38g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、グルタミン酸(1.29g、8.77mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。この後、2-フェニル-2-オキサゾリン(1.3g、8.83mmol)を添加し、反応を165℃でさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0131】
実施例8
この実施例は、アスパラギン酸およびNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングを示す。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-1(36g)、およびPhillips 66 110N基油(250.85g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、アスパラギン酸(1.17g、7.95mmol)とサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(2.97g、16.12mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0132】
実施例9
この実施例は、6-アミノカプロン酸とNPPDAのアシル化オレフィンコポリマーへのキャッピングを示す。加熱マントル、ピッチド3ブレードオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口、窒素出口、およびコンデンサーを備えた500mL、4ネック樹脂ケトルに、マレイン化OCP-2(36g)、およびPhillips 66 110N基油(250.85g)を添加した。反応物を300rpmの一定の攪拌速度、かつ活性窒素流下で9時間150℃に加熱して、完全なポリマー溶解を可能にした。次に、混合物を120℃に維持し、一定の窒素流下で120rpmで一晩撹拌した。翌日、温度を130℃に上げ、6-アミノカプロン酸(1.17g、8.76mmol)およびサーフォニックL24-2(9.0g)を添加した。3時間後、反応物の温度を165℃に上げ、次にNPPDA(1.62g、8.79mmol)を添加し、反応物をさらに3時間保持した。反応物を130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)フィルターで濾過し、次に室温に冷却した。
【0133】
比較例1
HiTEC(登録商標)5748A(比較ポリマー1は、市販のオレフィンコポリマー粘度指数向上剤であり、特に優れたせん断安定性が必要な場合に、工業用、ガソリン、ディーゼルクランクケース潤滑剤での使用が推奨される。
【0134】
比較例2
高分子量の多官能オレフィンコポリマー(比較ポリマー2)は、以前に文献に記載されたのと同じ一般的な方法によって調製された。
【0135】
無水マレイン酸をエチレン-プロピレンコポリマーにグラフトすることにより、平均分子量約56,000Mnを有するアシル化エチレン-プロピレンコポリマーを得た。反応化学量論および反応条件は、11.4分子の無水マレイン酸をオレフィンコポリマー主鎖に、またはポリマー主鎖1,000Mn当たり約0.41カルボキシル基でグラフトさせることができるようにした(すなわち、2x11.4=22.8カルボキシル基/56,000Mn=0.41カルボキシル基/1000Mn)。アシル化エチレン-プロピレンコポリマーを、界面活性剤の存在下で(約160℃で約6時間)、グラフト化アシル基に対してモル過剰のN-フェニル-1.4-フェニレンジアミン(NPPDA)と反応させた。色安定化のために、イミン生成物を含有する反応混合物をアルデヒドと4時間合わせた。最終ポリマーを110N油で希釈して12重量%のポリマー含有量を得た。反応物を約130℃に冷却し、100メッシュ(140μm)のフィルターを通してろ過した。生成物を室温に冷却し、そして粘度および分散剤特性について試験した。
【0136】
薄膜摩擦(TFF)はミニトラクションマシン(MTM)で測定した。TFF試験は、PCS InstrumentsからのMini-Traction Machine(MTM)を用いて薄膜潤滑状態での牽引係数を測定する。これらの牽引係数は、ANSI 52100スチールディスクとANSI 52100スチールボールの間に50Nの負荷をかけ、オイルが500mm/sのエントレインメント速度で接触ゾーンを通過して引っ張られているときに、130℃で測定した。測定中、ボールとディスクとの間のスライド対ロール比は50%に維持した。
【0137】
粘度調整剤ごとに、スチールボールがディスクの面にロードされ、ボールとディスクが独立して駆動されて、転がり接触と滑り接触が混在する。ボールとディスクの間の摩擦力(つまり摩擦係数)は、力変換器によって測定される。摩擦係数が低いほど、パフォーマンスが向上し、燃料節約にもつながる。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例1~9の各粘度調整剤は、煤入り油を分散させるそれらの能力についてさらに試験された。煤入り油中のポリマーの濃度を変化させることにより、ポリマーが煤を完全に分散させるための最小重量パーセント濃度である有効濃度(E.C.)が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,927,469号に記載の方法に従って決定された。
【0140】
本開示に従って潤滑剤配合物を評価するために、本発明のポリマーを、それらが煤を分散させる能力について試験した。分散剤なしでは、煤粒子を含む油は剪断減粘(非ニュートン)挙動を示し、ここで、低剪断速度では煤粒子の凝集のために高粘度になり、剪断速度の増加につれて粘度が低下し、一方高剪断速度では煤粒子の凝集は破壊されその結果低粘度になった。分散剤としての能力を有する添加剤が煤入り油に添加される場合、煤粒子は凝集することなく分散剤によって保護され、したがって、油は理想的には粘性またはニュートン流体挙動を示し、粘度は剪断速度と無関係である。(例えば、Thomas G.Mezger,The Rheology Handbook,3rd Revised Edition,2011を参照、その一部は参照により本明細書に組み込まれる。)。これに基づいて、US8,927,469(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものと一致する分散性試験を、Physica MCR 301レオメーター(Anton Parr)を使用して、煤粒子を分散させる本発明のポリマーの有効性をテストするように設計した。この試験では、煤入り油は、分散剤を含まない流体を用いて燃焼ディーゼルエンジンから発生した約4.6重量%の煤を有する。次に、煤入り油を一定量のポリマーで上面処理し、次いでPeltier温度制御を備えた40cmプレートを備えたレオメーターでせん断速度掃引して、ニュートン/非ニュートン挙動を試験した。試験温度は約100℃であり、試験トッププレートはCP50-1(Anton Parr)である。
【0141】
この試験では、粘度調整剤を含むまたは含まない煤入り油の粘度を使用して、有効濃度レベルを達成した。具体的には、各サンプルについて、有効濃度(E.C.)は、上記のようにせん断速度が増加しても変化しない煤入り油の粘度を達成するために必要な最小ポリマー濃度だった。有効濃度が低いほど、ポリマーの処理量が遅くなり、試験対象の官能化ポリマーの分散剤の性能が向上する(以下の表4を参照)。
【0142】
【表4】
【0143】
ほとんどの発明の実施例では、約1重量パーセントの有効濃度(EC)を達成することができた。発明の実施例4、6、7、および8は、比較例2と性能が匹敵する最高の全体的な有効濃度を有していた。
【0144】
シール性能試験は、エンジンのフルオロエラストマーシールの寿命に関するさまざまな潤滑剤成分の影響を評価するために使用されるスクリーニング手順である。フルオロエラストマー性能試験は、ASTM D471 12a、ASTM 412 06a、ASTM D2240 05、およびASTM D5662 14に基づき、これらは参照により本明細書に組み込まれる。添加剤またはポリマー成分の化学的性質および大きさに応じて、これらはエラストマー中に拡散および/またはエラストマーと相互作用し、それによってそれらの寿命を短くする可能性がある。処理量を下げると、より高い処理量に関連するいくつかの利点が失われることがある。
【0145】
下記の表5は、6Star Motiva基油中のヘビーデューティーディーゼルDIパック処理(8.0重量%)を用いて、様々な処理量(2~10重量%)での官能性ポリマー性能を要約している。機械的試験の2つの主な特徴は、平均破断点伸び(平均ER)および平均引張強度(平均TS)である。値は、平均ERでは55%超、平均TSでは50%超でなければならない。試験したすべての処理量で、比較ポリマー2(比較例2)は、平均伸びと引張強度の両方に不合格だった。実施例1および6のポリマーは、すべての濃度で両方の試験に合格し、実施例2のポリマーは、2および5重量パーセントの処理量で両方の試験に合格し、残りのポリマーは、シールへの影響を最小限にする傾向があった。
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
実施例13
本明細書のポリマーは、様々な低温および高温性能についてさらに評価された。各サンプル中のポリマー処理量は、目標KV100に到達するために必要なポリマーの量に応じて変化させた。一般に、ポリマーの量は、完成した油組成物の総重量に基づいて、0.49~1.01重量%の範囲であった。
【0149】
各配合物は、寒冷時の性能(CCS)、100℃および40℃での動粘度、低温ポンピング粘度(MRV-35)、高温高せん断粘度(TBS)、および低温高せん断粘度(ASTM-D6616(TBS))について試験した。ASTM-D6616は100℃で実施される高せん断粘度試験であり、TBSは150℃で実施される高せん断粘度試験である。コールドクランクシミュレーター(CCS)試験は、寒冷時の性能の尺度であり、この試験は、ASTM D5293の方法に従って-30℃で実施された。結果を以下の表7に示す。
【0150】
【表7】
【0151】
一般に、比較例1および2で使用されたポリマーと比較した場合、コールドクランキング温度性能は改善された。コールドクランキング温度性能の改善は、1.5%~13.5%の範囲だった。特に、実施例3および5は、最高の全体的なパフォーマンスを示した。つまり、SAE J300基準を満たす低CCSと良好なTBSである。本発明のポリマーを使用すると、粘度調整剤を変更するだけで、不合格だった5W30配合物を合格した5W30配合物に効果的に作ることができることを示す。
【0152】
本開示の添加剤および潤滑剤は、その詳細な説明および本明細書における要約と共に記載されているが、前述の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を説明することが意図され、これを限定するものではないと理解するべきである。他の態様、利点、および修正は特許請求の範囲内にある。本明細書および実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。