(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
H05K 3/32 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
H05K3/32 B
(21)【出願番号】P 2022506844
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026413
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020130313
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春名 裕介
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298954(JP,A)
【文献】特開2009-218443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32
C09J 9/02
C09J 11/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー成分と、170℃環境下での20%圧縮強度が
1~25MPaである金属粒子とを含む導電性接着剤。
【請求項2】
前記金属粒子は融点280℃以下の金属を含む請求項
1に記載の導電性接着剤。
【請求項3】
前記金属粒子中の前記融点280℃以下の金属の含有割合は80質量%以上である請求項
2に記載の導電性接着剤。
【請求項4】
前記金属粒子の含有割合は10~70質量%である請求項1~
3のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項5】
前記金属粒子は、構成金属として錫および錫よりも融点が高い金属を含む請求項1~
4のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項6】
前記錫よりも融点が高い金属は、ビスマス、インジウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、またはアンチモンを含む、請求項
5に記載の導電性接着剤。
【請求項7】
前記金属粒子は球状である請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項8】
前記金属粒子のメディアン径は1~50μmである請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項9】
前記金属粒子は錫含有合金粒子を含む請求項1~
8のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項10】
プリント配線板用である請求項1~
9のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項11】
前記金属粒子は一部が接着剤から突出しており、前記接着剤の厚さは前記金属粒子のメディアン径に対して10~30%である請求項1~1
0のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項12】
前記導電性接着剤は厚膜部および薄膜部を有し、
前記厚膜部における接着剤の厚さは当該厚膜部における前記金属粒子の接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して50%以上であり、
前記薄膜部における接着剤の厚さは当該薄膜部における前記金属粒子の接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して50%以上である、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項13】
プリント配線板と、前記プリント配線板上に設けられた請求項1
2に記載の導電性接着剤と、前記導電性接着剤上に設けられた、導電性を有する補強部材と、を備え、
前記プリント配線板は、ベース部材と、前記ベース部材の表面に部分的に設けられた回路パターンと、前記回路パターンを覆い絶縁保護する絶縁保護層と、前記回路パターンを覆い且つ前記回路パターンおよび前記ベース部材と前記絶縁保護層とを接着するための接着剤と、を有し、
前記回路パターンは、複数の信号回路およびグランド回路を含み、
前記グランド回路上の前記接着剤および前記絶縁保護層には、前記接着剤および前記絶縁保護層を厚さ方向に貫通する開口部が形成されており、
前記導電性接着剤は前記プリント配線板の前記絶縁保護層表面に、前記開口部を覆い塞ぐように接着されており、前記導電性接着剤の厚膜部は前記開口部を充填している、補強部材付きプリント配線板。
【請求項14】
前記厚膜部において、前記金属粒子は前記補強部材および前記グランド回路と接触しており、前記薄膜部において、前記金属粒子は前記補強部材および前記絶縁保護層と接触している、請求項1
3に記載の補強部材付きプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、機構の中に回路を組み込むために多用されている。また、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板が用いられている。
【0003】
上記シールドプリント配線板としては、例えば、プリント回路を含む基体フィルム上に、接着剤(接着剤層)、金属薄膜、および絶縁層がこの順に積層した電磁波シールドフィルムの接着剤面が密着するように上記電磁波シールドフィルムを載置し、その後加熱・加圧(熱圧着)により上記接着剤が上記基体フィルムに接着した構造を有する。
【0004】
上記プリント配線板は電子部品を実装して使用される。プリント配線板には、屈曲可能なフレキシブルプリント配線板(FPC)が知られている。FPCに使用されるプリント配線板は、電子部品を実装した部位が折れ曲がることで電子部品が脱落しやすくなるため、これを防止する目的でプリント配線板上に補強部材が設けられることがある。上記補強部材には、プリント配線板内に侵入あるいは生じた電磁波を外部に逃がすことを目的として、外部電位と接地可能な導電性を備える補強部材が用いられることがある。例えば、特許文献1には、導電性を有する補強部材と導電性接着剤を備える補強部材付きプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の補強部材付きプリント配線板に用いられる導電性接着剤(導電性接着シート)としては、グランド回路と接地側の補強部材との導電性に優れる等方導電性接着剤が多用されている。等方導電性接着剤は導電性粒子を多量含むものであるが、経済的な観点から導電性接着剤に用いられる導電性粒子の量は少ない方が好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたプリント配線板のように、プリント配線板表面の絶縁層に設けられた開口部を覆うように導電性接着剤を熱圧着により貼り合わせて使用する場合、導電性接着剤中の導電性粒子が少量である異方導電性接着剤では、開口部内に充填される導電性粒子の量が不足し、グランド回路と接地側の補強部材との導電性が低下し、接続安定性が劣る傾向となる。また、初期の接続安定性が良好である場合であっても、リフロー工程等において高温に付された際、導電性が低下する場合があった。
【0008】
また、導電性を向上させる目的で、導電性粒子として粒子径の大きい粒子や樹枝状粒子を用いることが考えられる。しかしながら、従来の導電性接着剤においてこれらの粒子を用いた場合、上記熱圧着により粒子が押し込まれてグランド回路が形成されたベース部材の裏側に隆起してベース部材の平滑性が損なわれるため、その後にベース部材上に部品実装する際に密着性の妨げになる場合がある。
【0009】
従って、本開示の目的は、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持され、且つ被着体の裏側への隆起が起こりにくい導電性接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、バインダー成分と、170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa以下である金属粒子とを含む、導電性接着剤を提供する。
【0011】
上記金属粒子の170℃環境下での20%圧縮強度は1MPa以上であってもよい。
【0012】
上記金属粒子は融点300℃以下の金属を含むことが好ましい。
【0013】
上記金属粒子中の上記融点300℃以下の金属の含有割合は80質量%以上であることが好ましい。
【0014】
上記金属粒子の含有割合は10~70質量%であることが好ましい。
【0015】
上記金属粒子は、構成金属として錫および錫よりも融点が高い金属を含むことが好ましい。
【0016】
上記錫よりも融点が高い金属は、ビスマス、インジウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、またはアンチモンを含んでいてもよい。
【0017】
上記金属粒子は球状であることが好ましい。
【0018】
上記金属粒子のメディアン径は1~50μmであることが好ましい。
【0019】
上記金属粒子は錫含有合金粒子を含むことが好ましい。
【0020】
上記導電性接着剤はプリント配線板用であることが好ましい。
【0021】
上記金属粒子は一部が接着剤から突出しており、上記接着剤の厚さは上記金属粒子のメディアン径に対して10~30%であることが好ましい。
【0022】
上記導電性接着剤は厚膜部および薄膜部を有し、
上記厚膜部における接着剤の厚さは当該厚膜部における上記金属粒子の接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して50%以上であり、
上記薄膜部における接着剤の厚さは当該薄膜部における上記金属粒子の接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して50%以上であるものであってもよい。
【0023】
また、本開示は、プリント配線板と、上記プリント配線板上に設けられた上記導電性接着剤と、上記導電性接着剤上に設けられた、導電性を有する補強部材と、を備え、
上記プリント配線板は、ベース部材と、上記ベース部材の表面に部分的に設けられた回路パターンと、上記回路パターンを覆い絶縁保護する絶縁保護層と、上記回路パターンを覆い且つ上記回路パターンおよび上記ベース部材と上記絶縁保護層とを接着するための接着剤と、を有し、
上記回路パターンは、複数の信号回路およびグランド回路を含み、
上記グランド回路上の上記接着剤および上記絶縁保護層には、上記接着剤および上記絶縁保護層を厚さ方向に貫通する開口部が形成されており、
上記導電性接着剤は上記プリント配線板の上記絶縁保護層表面に、上記開口部を覆い塞ぐように接着されており、上記導電性接着剤の厚膜部は上記開口部を充填している、補強部材付きプリント配線板を提供する。
【0024】
上記厚膜部において、上記金属粒子は上記補強部材および上記グランド回路と接触しており、上記薄膜部において、上記金属粒子は上記補強部材および上記絶縁保護層と接触していることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本開示の導電性接着剤は、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持され、且つ被着体の裏側への隆起が起こりにくい。このため、例えば、グランド回路と接地側の補強部材との接着に使用した際、グランド回路と接地側の補強部材との接続安定性に優れ、且つグランド回路が形成されたベース部材の裏側への隆起が起こりにくい。また、このような効果は、金属粒子等の導電性粒子の配合量が多い場合はもちろん、少ない場合であっても上記効果を奏し、経済的にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の導電性接着剤の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本開示の導電性接着剤を適用した補強部材付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[導電性接着剤]
本開示の導電性接着剤は、バインダー成分と、170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa以下である金属粒子とを少なくとも含む。上記バインダー成分および上記金属粒子は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、本明細書において、上記170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa以下である金属粒子を「金属粒子(A)」と称する場合がある。上記導電性接着剤は、金属粒子(A)以外のその他の導電性粒子を含んでいてもよい。
【0028】
上記導電性接着剤は、異方導電性接着剤であってもよく、等方導電性接着剤であってもよい。例えば、金属粒子(A)が導電性接着剤において主に導電性を担う場合は異方導電性接着剤となり、金属粒子(A)とその他の導電性粒子(例えば後述の金属粒子(B))とをバランス良く配合する場合は等方導電性接着剤となる。
【0029】
図1に、本開示の導電性接着剤(接着剤層)の一実施形態を示す。導電性接着剤1は、層状(シート状)であり、バインダー成分12と、金属粒子(A)11とを含む。金属粒子(A)11は、バインダー成分12から構成される接着剤の表面から突出している。
【0030】
(金属粒子(A))
上記金属粒子(A)は導電性を有する。これにより、上記導電性接着剤は導電性を備えることとなる。上記金属粒子(A)の170℃環境下での20%圧縮強度は、25MPa以下であり、好ましくは23MPa以下、より好ましくは22MPa以下である。上記20%圧縮強度が25MPa以下であることにより、170℃環境下において高圧力を付された際、金属粒子(A)は圧縮変形しやすく、金属粒子(A)が押し込まれても被着体の裏側に隆起しにくい。上記金属粒子(A)の20%圧縮強度は、JIS Z 8844:2019に準拠して測定される。
【0031】
上記金属粒子(A)の170℃環境下での20%圧縮強度は、1.0MPa以上であってもよく、5.0MPa以上、11MPa以上であってもよい。上記20%圧縮強度が1.0MPa以上であると、170℃環境下において高圧力を付された際に金属粒子(A)が圧縮されすぎず、粒子形状を維持することができ、被着体同士の接続安定性により優れる。このような効果は、上記導電性接着剤が異方導電性接着剤である場合において特に発揮される。
【0032】
上記金属粒子(A)は、構成金属として、融点が280℃以下の金属を少なくとも含むことが好ましい。上記融点が280℃以下の金属としては、例えば、錫、ビスマス、インジウム、およびこれらの合金などが挙げられる。中でも、構成金属として錫を含むことが好ましい。上記融点が280℃以下の金属は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。また、上記金属粒子(A)は上述した金属の合金であってもよい。なお、本明細書において、上記融点が280℃以下の金属を「低融点金属」と称する場合がある。
【0033】
上記金属粒子(A)中の上記低融点金属の含有割合は、上記金属粒子(A)の総量100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは94質量%以上である。上記金属粒子(A)中の低融点金属は、熱圧着時に導電性を有する被着体(グランド回路や接地側の補強部材など)とで界面に合金を形成するものと推測される。このため、上記金属粒子(A)低融点金属を80質量%以上(特に、90質量%以上)含むと、リフロー工程等において高温に付された際も良好な導電性が維持される。上記含有割合は、100質量%であってもよく、99.9質量%以下、99.6質量%以下であってもよい。上記含有割合が99.9質量%以下であると、金属粒子(A)がある程度の硬さを有し、170℃環境下において高圧力を付された際に金属粒子(A)が圧縮されすぎず、被着体同士の導通を確保することが容易となる。このような効果は、上記導電性接着剤が異方導電性接着剤である場合に特に発揮される。
【0034】
上記金属粒子(A)は、上記低融点金属として錫を含むことが好ましい。上記金属粒子(A)中の錫の含有割合は、上記金属粒子(A)の総量100質量%に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。上記金属粒子(A)中の錫の含有割合は、80質量%以上、90質量%以上、94質量%以上であってもよい。上記金属粒子(A)が錫を30質量%以上含むと、リフロー工程等において高温に付された際も良好な導電性が維持される。また、上記導電性接着剤層が異方導電性接着剤である場合、上記金属粒子(A)が錫を80質量%以上(特に、90質量%以上)含むと、このような効果がより優れる。上記含有割合は、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99.6質量%以下である。上記含有割合が99.9質量%以下であると、金属粒子(A)がある程度の硬さを有し、170℃環境下において高圧力を付された際に金属粒子(A)が圧縮されすぎず、被着体同士の導通を確保することが容易となる。
【0035】
上記金属粒子(A)は、接続安定性により優れる観点から、構成金属として、上記低融点金属以外の金属(すなわち、融点が300℃超の金属)を含んでいてもよい。このような金属としては、金、銀、銅、白金、ニッケル、亜鉛、鉛、パラジウム、アンチモン、およびこれらの合金などが挙げられる。中でも、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムが好ましい。上記金属はそれぞれ一種のみを含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。また、上記金属粒子(A)は上述した金属の合金であってもよい。
【0036】
上記金属粒子(A)は、構成金属として錫を含む場合、さらに錫以外のその他の金属を含んでいてもよい。上記その他の金属としては、金、銀、銅、白金、ニッケル、亜鉛、鉛、パラジウム、ビスマス、アンチモン、インジウム、およびこれらの合金などが挙げられる。上記金属粒子(A)は、接続安定性により優れる観点から、上記その他の金属として、ビスマス、インジウム、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、アンチモン等の、錫よりも融点が高い(または硬い)金属を含むことが好ましい。上記その他の金属はそれぞれ一種のみを含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。また、上記金属粒子(A)は上述した金属の合金であってもよい。
【0037】
上記金属粒子(A)としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、インジウム粒子、錫粒子、鉛粒子、ビスマス粒子、錫含有合金粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、インジウム被覆銅粒子、錫被覆銅粒子、鉛被覆銅粒子、錫被覆ニッケル粒子、錫被覆合金粒子、金被覆錫粒子、銀被覆錫粒子、ビスマス被覆銅粒子、インジウム被覆ニッケル粒子、ビスマス被覆ニッケル粒子、錫ビスマス合金粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子(A)は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0038】
上記金属粒子(A)の形状としては、球状(真球状、楕球状など)、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、金属粒子(A)が押し込まれても被着体の裏側に、より隆起しにくい観点から、球状が好ましい。
【0039】
上記金属粒子(A)のメディアン径(D50)は、1~50μmであることが好ましく、より好ましくは10~45μmである。上記メディアン径が1μm以上であると、導電性がより良好となる。また、金属粒子(A)の分散性が良好で凝集が抑制できる。上記平均粒径が50μm以下であると、金属粒子(A)が押し込まれても被着体の裏側に、より隆起しにくい。
【0040】
上記導電性接着剤における金属粒子(A)の含有割合は、導電性接着剤の総量100質量%に対して、10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。上記含有割合が10質量%以上であると、導電性がより良好となる。上記含有割合が70質量%以下であると、経済的に優れ、また、金属粒子(A)が押し込まれても被着体の裏側に隆起しにくい。
【0041】
(その他の導電性粒子)
上記その他の導電性粒子としては、金属粒子(A)以外の公知乃至慣用の導電性粒子を用いることができる。上記その他の導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、金属繊維、カーボンフィラー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。中でも、金属粒子(すなわち、170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa超である金属粒子)が好ましい。上記金属粒子を金属粒子(A)と組み合わせて用いると、金属粒子(A)の170℃における圧縮強度が1MPa未満と低い場合であっても、170℃環境下において高圧力を付された際に金属粒子(A)が圧縮されすぎず、粒子形状を維持することができ、被着体同士の接続安定性により優れる。上記その他の導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、本明細書において、上記170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa超である金属粒子を「金属粒子(B)」と称する場合がある。
【0042】
上記金属粒子(B)を構成する金属としては、上述の金属粒子(A)を構成する金属として例示および説明されたものが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0043】
上記金属粒子(B)としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、インジウム粒子、錫粒子、鉛粒子、ビスマス粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、インジウム被覆銅粒子、錫被覆銅粒子、鉛被覆銅粒子、ビスマス被覆銅粒子、インジウム被覆ニッケル粒子、錫被覆ニッケル粒子、ビスマス被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。金属粒子(B)としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、導電性粒子の酸化および凝集を抑制し、且つ導電性粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0044】
金属粒子(B)の形状としては、球状(真球状、楕球状など)、フレーク状(鱗片状、扁平状)、樹枝状(デンドライト状)、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、フレーク状、樹枝状が好ましい。この理由は、次のためである。金属粒子(B)の形状を、フレーク状、樹枝状にすることで、金属粒子(B)同士が重なり合った姿勢をとりやすく、これによって、金属粒子(B)同士の接触が増え、平面方向の導電性が向上する。この平面方向の導電性の向上と、金属粒子(A)による厚さ方向の導電性が相まって、導電性接着剤全体の導電性が向上(電気的に安定)し、被着体同士の接続安定性をより向上させることができる。
【0045】
金属粒子(B)のメディアン径(D50)は、0.5~25μmであることが好ましく、より好ましくは3~10μmである。上記メディアン径が0.5μm以上であると、被着体同士の接続安定性がより優れる。また、金属粒子(B)の分散性が良好で凝集が抑制できる。上記メディアン径が25μm以下であると、導電性接着剤の被着体への密着強度により優れる。
【0046】
上記導電性接着剤中の金属粒子(B)の含有割合は、導電性接着剤の総量100質量%に対して、10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。上記含有割合が10質量%以上であると、導電性接着剤の平面方向の導電性がより発揮され、被着体同士の接続安定性により優れる。上記含有割合が70質量%以下であると、導電性接着剤層の柔軟性に優れる。
【0047】
(バインダー成分)
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0048】
上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化型樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0049】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0050】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化型化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0052】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、導電性接着剤をプリント配線板や、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板などの被着体上に配置した後、加圧および加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、貼り付け部の接着性が良好となる。例えば、バインダー成分を熱硬化性樹脂とした場合、熱圧着後におけるバインダー成分は、上記熱硬化性樹脂が硬化した熱硬化型樹脂となる。
【0053】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0054】
上記導電性接着剤におけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、接着剤の総量100質量%に対して、15~95質量%が好ましく、より好ましくは20~90質量%、さらに好ましくは30~80質量%である。上記含有割合が15質量%以上であると、被着体に対する密着性がより良好となる。上記含有割合が95質量%以下であると、金属粒子(A)を充分に配合することができ、導電性により優れる。
【0055】
上記導電性接着剤は、本開示が目的とする効果を損なわない範囲内において、上記の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0056】
上記導電性接着剤の厚さは、2~20μmであることが好ましく、より好ましくは3~17μmである。上記厚さが2μm以上であると、被着体に対する接着力がより良好となる。上記厚さが20μm以下であると、コストを抑えることができ、また上記導電性接着剤を備えた製品を薄く設計することができる。なお、上記金属粒子(A)の一部が上記導電性接着剤から突出している場合の導電性接着剤の厚さは、金属粒子(A)が突出していない領域における厚さである。また、加熱等により導電性接着剤を構成する接着剤成分(バインダー成分)が流動して被着体に形成された開口部内に侵入した場合などにおける導電性接着剤の厚さは、上記開口部内に侵入していない領域における接着剤の厚さである。
【0057】
上記金属粒子(A)は一部が上記導電性接着剤から突出していてもよい。例えば、流動前あるいは硬化前における上記導電性接着剤においては、上記金属粒子(A)は一部が上記導電性接着剤から突出していることが好ましい。この場合、上記導電性接着剤(金属粒子(A)が突出していない領域)の厚さは上記金属粒子(A)のメディアン径に対して、10~30%であることが好ましく、より好ましくは12~25%である。上記厚さが10%以上であると、被着体に対する接着性がより優れる。上記厚さが30%以下であると、上記金属粒子(A)が上記導電性接着剤から突出する割合が大きく、流動後あるいは硬化後において厚膜部が形成された際、厚膜部において接着される被着体同士の導通を確保することが容易となる。
【0058】
上記導電性接着剤について、下記導電性試験により求められる抵抗値(初期抵抗値)は、特に限定されないが、150mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは130mΩ以下、さらに好ましくは100mΩ以下、特に好ましくは80mΩ以下である。上記初期抵抗値が150mΩ以下であると、上記導電性接着剤を介した被着体同士の導通が良好となる。
[導電性試験]
導電性接着剤を、SUS板(厚さ:200μm)に、温度:120℃、圧力:0.5MPaの条件で5秒間加熱加圧して貼り合わせ、導電性接着剤側の面を評価用のプリント配線板上に貼り合わせ、プレス機を用いて、60秒間真空引きした後、温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で30分間加熱加圧して、評価用基板を準備する。プリント配線板として、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランド回路を疑似した2本の銅箔パターン(厚さ:18μm、線幅:3mm)が形成され、その上に絶縁性の接着剤(厚さ:13μm)および厚さ25μmのポリイミドフィルムからなるカバーレイが形成されたプリント配線板を用いる。カバーレイには、直径1mmのグランド接続部を模擬した円形開口部が形成されている。上記評価用基板について、銅箔パターンとSUS板の間の電気抵抗値を抵抗計で測定して抵抗値とする。
【0059】
上記導電性接着剤について、265℃の熱風に5秒間曝されるような温度プロファイルに設定したリフロー工程を5サイクル通過させた後の、導電性試験により求められる抵抗値(リフロー後抵抗値)は、特に限定されないが、150mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは50mΩ以下、さらに好ましくは30mΩ以下である。上記抵抗値が150mΩ以下であると、上記導電性接着剤を介した被着体同士の導通が良好となる。なお、上記リフロー後抵抗値は、上記リフロー工程を5サイクル通過させた後の上記評価用基板について、上記初期抵抗値の導電性試験と同様にして測定される。
【0060】
上記導電性接着剤について、抵抗値変化率[(リフロー後抵抗値-初期抵抗値)/初期抵抗値×100]は、特に限定されないが、80%以下が好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは0%以下、特に好ましくは-20%以下である。上記抵抗値変化率が80%以下であると、高温に付された場合であっても接続抵抗値の上昇が起こりにくく、導電部材である被着体同士の接続安定性がより優れたものとなる。
【0061】
上記導電性接着剤について、円形度測定により求められる円形度は、特に限定されないが、0.7以上が好ましく、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.8以上である。上記円形度が0.7以上であると、被着体の裏側への隆起が小さく、評価用基板を適用したプリント配線板を部品実装する際に密着性の妨げになりにくい。上記円形度は、上記導電性評価にて作製された上記評価用基板の開口部(直径1mm)の裏面の形状に基づき、以下の式より求められる。
円形度=4π×(面積)/(周囲長)2
【0062】
上記導電性接着剤は、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。上記導電性接着剤は、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持され、且つ被着体の裏側への隆起が起こりにくい。また、このような効果は、金属粒子等の導電性粒子の配合量が多い場合はもちろん、少ない場合であっても上記効果を奏し、経済的にも優れる。従って、上記導電性接着剤は、プリント配線板用(特に、FPC用)の電磁波シールドフィルム、導電性ボンディングフィルムとして好ましく使用することができる。上記導電性ボンディングフィルムは、プリント配線板への導電性(金属)補強板の取付けを目的としたものであり、プリント配線板内に侵入あるいは生じた電磁波を外部に逃がすことを目的としたグランド接続引き出しフィルムも挙げられる。
【0063】
上記導電性接着剤は、少なくとも一方の面にセパレートフィルムが積層されていてもよい。すなわち、上記導電性接着剤は、セパレートフィルムと、当該セパレートフィルムの離型面に形成された上記導電性接着剤とを備える積層体として提供されてもよい。上記セパレートフィルムは使用時に剥離される。
【0064】
上記導電性接着剤は、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。例えば、セパレートフィルムなどの仮基材または基材上に、導電性接着剤を形成する接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することが挙げられる。
【0065】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0066】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0067】
[補強部材付きプリント配線板]
図2に、上記導電性接着剤を補強部材付きプリント配線板に適用した例を示す。
図2に示すように、補強部材付きプリント配線板の一実施形態である補強部材付きプリント配線板Xは、プリント配線板3と、プリント配線板3上に設けられた導電性接着剤1’と、導電性接着剤1’上に設けられた、導電性を有する補強部材2と、を備える。
【0068】
プリント配線板3は、ベース部材31と、ベース部材31の表面に部分的に設けられた回路パターン32と、回路パターン32を覆い絶縁保護する絶縁保護層33と、回路パターン32を覆い且つ回路パターン32およびベース部材31と絶縁保護層33とを接着するための接着剤34と、を有する。回路パターン32は、複数の信号回路32aおよびグランド回路32bを含む。グランド回路32b上の接着剤34および絶縁保護層33には、接着剤34および絶縁保護層33を厚さ方向に貫通する開口部(スルーホール)3aが形成されている。
【0069】
導電性接着剤1’はプリント配線板3の絶縁保護層33表面に、開口部3aを覆い塞ぐように接着されており、バインダー成分(接着剤成分)12’は開口部3aを充填している。導電性接着剤1’は金属粒子(A)11a、11bとバインダー成分(接着剤成分)12’とから形成されている。導電性接着剤1’は、接着剤の厚さが比較的厚い厚膜部と、接着剤の厚さが比較的薄い薄膜部とを有する。厚膜部は開口部3aを充填している部分と一致し、薄膜部は絶縁保護層33と補強部材2との間に位置する部分と一致する。厚膜部における金属粒子(A)11aは、補強部材2とグランド回路32bの間に位置し、補強部材2とグランド回路32bとを好ましくは接触して導通する。厚膜部における接着剤の厚さは当該厚膜部における金属粒子(A)11aの接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して例えば50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上)である。薄膜部における金属粒子(A)11bは、補強部材2と絶縁保護層33の間に位置し、圧力によって圧縮変形しており、好ましくは補強部材2と絶縁保護層33とに接触している。薄膜部における接着剤の厚さは当該薄膜部における金属粒子(A)11bの接着剤厚さ方向の最大粒子径に対して例えば50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上)である。このような構造を有することにより、金属粒子(A)11aを介してグランド部材32bと補強部材2とが導通し、補強部材2は外部接続導電層として機能し、補強部材2表面は外部の接地部材と電気的に接続される。また、導電性接着剤1’を形成するために熱圧着を行った際、金属粒子(A)11が圧縮変形するため、グランド回路32bが形成されたベース部材31の裏側に隆起しにくい。その結果、電子部品4を実装する際にプリント配線板3と電子部品4の密着性の妨げになりにくい。さらに、金属粒子(A)11aが低融点金属を含む場合、熱圧着時にグランド回路32bや補強部材2とで、これらの界面に合金を形成するものと推測され、接続安定性がより良好なものとなる。
【0070】
導電性接着剤1’は、例えば、導電性接着剤1’を形成する流動前あるいは硬化前の導電性接着剤1を、必要に応じて補強部材2の表面に貼り合わせた後、プリント配線板3における絶縁保護層33上に貼り合わせ、その後に加熱によりバインダー成分12を流動あるいは硬化して熱圧着することにより、金属粒子(A)11が補強部材2と絶縁保護層33との間に挟まれて圧縮変形して金属粒子(A)11bとなるとともに、バインダー成分(接着剤成分)12を絶縁保護層33に接着させつつ、バインダー成分12を流動させて開口部3a内を充填し、必要に応じて硬化してバインダー成分12’を形成して得ることができる。導電性接着剤1’およびこれを形成する流動前あるいは硬化前の導電性接着剤1のいずれもが本開示の導電性接着剤に該当する。
【0071】
プリント配線板3の補強部材2に対する反対面に設けられた実装部位には電子部品4が接続されるようになっている。補強部材2は、電子部品4が接続される実装部位に対向配置されている。これにより、補強部材2は、電子部品4の実装部位を補強している。導電性を有する補強部材2は、プリント配線板3におけるグランド回路32bと、導電性接着剤1’を介して電気的に接続されている。これにより、補強部材2がグランド回路32と同電位に保たれるため、電子部品4の実装部位に対する外部からの電磁波などのノイズを遮蔽している。
【0072】
導電性接着剤1’は、導電部材である被着体同士(すなわち補強部材2とグランド回路32b)の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持され、且つ被着体であるグランド回路32bおよびベース部材31の裏側(即ち、電子部品4が実装される面)への隆起を起こしにくい。このため、導電性接着剤1’を形成するために熱圧着を行った際、金属粒子(A)11が押し込まれても、グランド回路32bが形成されたベース部材31の裏側に隆起しにくい。その結果、電子部品4を実装する際にプリント配線板3と電子部品4の密着性の妨げになりにくい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例に基づいて本開示の導電性接着剤の一実施形態についてより詳細に説明するが、本開示の導電性接着剤はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0074】
実施例1
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(商品名「jER1256」、三菱ケミカル株式会社製)を65質量部、硬化剤(商品名「ST14」、三菱ケミカル株式会社製)を0.05質量部、および金属粒子を35質量部配合し、撹拌混合して接着剤組成物を調製した。なお、上記金属粒子の性質は表1に示す通りである。得られた接着剤組成物を、表面を離型処理したPETフィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、異方導電性接着剤を形成した。
【0075】
実施例2~8および比較例1~3
導電性接着剤における金属粒子の種類および導電性接着剤の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして異方導電性接着剤を作製した。なお、各例において使用した上記金属粒子の性質は表1に示す通りであり、組成における比は質量比を示す。
【0076】
実施例9
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(商品名「jER1256」、三菱ケミカル株式会社製)を35.75質量部、硬化剤(商品名「ST14」、三菱ケミカル株式会社製)を0.05質量部、銀コート銅粉(メディアン径:5μm)を29.25質量部、および金属粒子を35質量部配合し、撹拌混合して接着剤組成物を調製した。なお、上記金属粒子の性質は表2に示す通りである。得られた接着剤組成物を、表面を離型処理したPETフィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、等方導電性接着剤を形成した。
【0077】
実施例10~15および比較例4
導電性接着剤における金属粒子(銀コート銅粉以外の金属粒子)の種類および導電性接着剤の厚さを表2に示すように変更したこと以外は実施例9と同様にして等方導電性接着剤を作製した。なお、各例において使用した上記金属粒子の性質は表2に示す通りであり、組成における比は質量比を示す。
【0078】
(評価)
実施例および比較例で使用した各金属粒子(銀コート銅粉以外の金属粒子)および実施例および比較例で得られた各導電性接着剤について以下の通り評価した。評価結果は表1および表2に記載した。
【0079】
(1)メディアン径
金属粒子のメディアン径について、フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA-3000」、シスメックス株式会社製)を用いて測定した。具体的には、対物レンズ10倍を用い、明視野の光学システムで、LPF測定モードにて4000~20000個/μlの濃度に調整した金属粒子分散液で計測した。上記金属粒子分散液は、0.2質量%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に界面活性剤を0.1~0.5ml加え、測定試料である金属粒子を0.1±0.01g加えて調製した。金属粒子が分散した懸濁液は超音波分散器にて1~3分の分散処理を行い測定に供した。測定により得られた金属粒子のメディアン径を表1および表2に示した。
【0080】
(2)170℃環境下での20%圧縮強度
170℃環境下での20%圧縮強度は、JIS Z 8844:2019に準拠して測定した。具体的には、微小圧縮試験機(型式「MCT-510」、株式会社島津製作所製)を用いて、先端端子をφ50μmとし、170℃環境下において、試験速度4mN/sec~15mN/sec(粒子の硬さにより適宜変更)で測定した。
【0081】
(3)導電性試験
実施例および比較例で作製した導電性接着剤を、補強部材であるSUS板(厚さ:200μm)に、温度:120℃、圧力:0.5MPaの条件で5秒間加熱加圧して貼り合わせ、導電性接着剤上のPETフィルムを剥離し、導電性接着剤側の面を評価用のプリント配線板上に貼り合わせ、プレス機を用いて、60秒間真空引きした後、温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で30分間加熱加圧して、評価用基板を作製した。なお、上記プリント配線板は、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、互いに間隔をおいて平行に延びる2本の銅箔パターン(厚さ:18μm、線幅:3mm)と、上記銅箔パターンを覆うとともに、絶縁性の接着剤(厚さ:13μm)および厚さ25μmのポリイミドからなる絶縁保護層(厚さ:25μm)を有しており、上記絶縁保護層には、各銅箔パターンを露出する円柱形状の開口部(直径:1mm)が設けられている。導電性接着剤とプリント配線板とを重ね合わせる際に、この開口部が導電性接着剤により完全に覆われるようにした。そして、得られた評価用基板の銅箔パターンとSUS板の間の電気抵抗値を、抵抗計を用いて測定し、リフロー前のプリント配線板とSUS板との間の抵抗値(初期抵抗値)とした。
【0082】
次に、リフロー処理を想定した熱処理を行い、リフロー後の電気抵抗値を測定した(リフロー後抵抗値)。この熱処理および電気抵抗値の測定を5回繰り返した。熱処理は鉛フリーハンダの使用を想定し、評価用基板における導電性接着剤が265℃に5秒間曝されるような温度プロファイルを設定した。そして、初期抵抗値、リフロー後抵抗値、および抵抗値変化率[(リフロー後抵抗値-初期抵抗値)/初期抵抗値×100]をそれぞれ表1および表2に示した。
【0083】
(4)円形度
上記(3)導電性試験を評価するために作製した評価用基板の開口部(直径1mm)の裏面の形状を顕微鏡(「VHX-5000」、株式会社キーエンス製)で観察し、当該顕微鏡に付属の画像解析ソフトを用いて開口部の周囲長と面積を計測し、以下の式より円形度を求めた。結果を表1および表2に示した。円形度は、円との近さを示す指標であり、高いほど二次元形状は円に近づき、円形度が1.0であるとその形状は真円であることを示す。従って、円形度が高いほど開口部底面の形状が維持されていることを示し、円形度が小さいほど金属粒子による隆起が起こっており開口部底面の形状が維持されていないことを示す。
円形度=4π×(面積)/(周囲長)2
【0084】
【0085】
【0086】
実施例の導電性接着剤は、初期抵抗値が小さく、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、且つ円形度が大きく、被着体の裏側への隆起が起こりにくいと評価された。また、リフロー後抵抗値および抵抗値変化率も小さく、高温に付された際も良好な導電性が維持されていると評価された。一方、170℃環境下での20%圧縮強度が高い場合(比較例1~4)、被着体の裏側への隆起が起こり、円形度が計測できなかった。具体的には、比較例1および2では、被着体の裏側への隆起により円形度の測定対象であるべき円の形が崩れており測定不可能であり、比較例3および4では、被着体の裏側への隆起が多いことにより円形度の測定対象である円を認識することができず測定不可能であった。また、実施例1と実施例2の対比より、金属粒子(A)中の錫の含有割合が高い場合、抵抗値変化率がより低かった。
【符号の説明】
【0087】
X 補強部材付きプリント配線板
1,1’ 導電性接着剤
11,11a,11b 金属粒子(A)
12,12’ バインダー成分(接着剤成分)
2 補強部材
3 プリント配線板
31 ベース部材
32 回路パターン
32a 信号回路
32b グランド回路
33 絶縁保護層
34 接着剤
4 電子部品
【要約】
導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持され、且つ被着体の裏側への隆起が起こりにくい導電性接着剤を提供する。
導電性接着剤1は、バインダー成分12と、170℃環境下での20%圧縮強度が25MPa以下である金属粒子(A)11とを含む。金属粒子11は融点280℃以下の金属を含むことが好ましい。金属粒子(A)11中の融点280℃以下の金属の含有割合は80質量%以上であることが好ましい。