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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/023 20060101AFI20220309BHJP
   A47C 1/12 20060101ALI20220309BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A47C1/023
A47C1/12
A47C7/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017213354
(22)【出願日】2017-11-04
(65)【公開番号】P2019083951
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(73)【特許権者】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】大澤 塁
(72)【発明者】
【氏名】甘利 知冬
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成規
(72)【発明者】
【氏名】宮前 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓太
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-135817(JP,A)
【文献】特開2002-233427(JP,A)
【文献】特開2017-153823(JP,A)
【文献】特開2009-189598(JP,A)
【文献】特開2014-004324(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/023
A47C 1/12
A47C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が床面に固定されて上端部が上方に延出された脚柱と、前記脚柱の上端部に設けられたガイド機構と、前記ガイド機構の上面に支持された座体と、前記座体の下側で前記ガイド機構を被覆するカバー部材と、を備える椅子であって、
前記ガイド機構は、前記脚柱の上端部に固定される支持部材と、前記座体の下面に固定されて前記支持部材に対して前後方向に相対変位可能に組付けられるスライド部材と、を備え、
前記支持部材には、雌ねじ部が形成された支持部が設けられ、
前記雌ねじ部には、雄ねじ部材が螺入され、
前記雄ねじ部材は、前記雌ねじ部への螺入量を調節することによって、前記支持部に対する前後方向の相対位置が変更可能とされ、
前記スライド部材が前記支持部材に対して前後方向に相対変位されることにより、前記座体が前記脚柱に対して前後方向に相対変位され
前記スライド部材には、前記支持部材の後方で前記支持部材に対向する当接板が設けられ、
前記支持部材と前記スライド部材とは、前記支持部材と前記当接板とが互いに近接する方向に付勢部材によって付勢され、
前記当接板が前記雄ねじ部材に当接することにより、前記支持部材と前記当接板とが最も近接した際の前記支持部材に対する前記スライド部材の前後位置が規定され、
前記当接板には、前記当接板を貫通する孔部が開口され、
前記カバー部材における前記当接板と対向する部分には、前記孔部に対応する位置にカバー孔が開口され、
前記カバー孔と前記孔部とに調節冶具を挿入して、前記雄ねじ部材を回転させることにより、前記支持部に対する前記雄ねじ部材の前後方向の相対位置を調節し、前記支持部材と前記当接板とが最も近接した際の前記支持部材に対する前記スライド部材の前後位置が調節可能とされる、椅子。
【請求項2】
前記カバー部材には、前記カバー孔を閉塞可能とする閉塞板が設けられる、請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記支持部材に対して、側面視で曲線軌道を描いて前後方向に相対変位可能に組付けられ、
前記座体が前記脚柱に対して前端位置と後端位置との間で変位する途中において、前記孔部と前記カバー孔とが前記雄ねじ部材の軸線上に位置する、請求項1又は請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記カバー部材に位置決め用の目印が形成され、
前記目印は、前記孔部と前記カバー孔とが前記雄ねじ部材の軸線上に位置する際に、前記脚柱の所定箇所と前後位置が一致する、請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記孔部及び前記カバー孔は上下方向に長い長孔として形成される、請求項3又は請求項4に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椅子に関し、詳細には学校の講堂等において机と組み合わせて講義用システムを構成する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、学校の講堂等において机と複数の椅子とを組み合わせて講義用システムを構成する際に、椅子における脚柱と座体とをガイド機構を介して連結することにより、座体を前後方向にスライド移動させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、椅子を使用しないときは弾性部材により座体を前方にスライドさせて、机と椅子との間に通路スペースを確保することを可能とする椅子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-189598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如く講義用システムを構成する場合、椅子の座体が前方にスライドして停止した際に、隣接する椅子同士で座体の前後位置を揃えるために、ガイド機構を操作する必要がある。このような椅子において、外部へのグリスの露出やガイド機構への異物の混入を防ぐため、及び、デザイン性を向上させるために、ガイド機構をカバー部材で被覆する場合がある。しかし、上記の如くガイド機構をカバー部材で被覆した場合、ガイド機構を操作して座体の前後位置を調節する度ごとにカバー部材を取り外す必要があるため、作業者による作業負担が大きくなっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡易な作業でガイド機構を操作することにより、座体の前後位置を調節することを可能とする椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する椅子を提供する。
【0007】
(1)
下端部が床面に固定されて上端部が上方に延出された脚柱と、前記脚柱の上端部に設けられたガイド機構と、前記ガイド機構の上面に支持された座体と、前記座体の下側で前記ガイド機構を被覆するカバー部材と、を備える椅子であって、前記ガイド機構は、前記脚柱の上端部に固定される支持部材と、前記座体の下面に固定されて前記支持部材に対して前後方向に相対変位可能に組付けられるスライド部材と、を備え、前記支持部材には、雌ねじ部が形成された支持部が設けられ、前記雌ねじ部には、雄ねじ部材が螺入され、前記雄ねじ部材は、前記雌ねじ部への螺入量を調節することによって、前記支持部に対する前後方向の相対位置が変更可能とされ、前記スライド部材が前記支持部材に対して前後方向に相対変位されることにより、前記座体が前記脚柱に対して前後方向に相対変位され、前記スライド部材には、前記支持部材の後方で前記支持部材に対向する当接板が設けられ、前記支持部材と前記スライド部材とは、前記支持部材と前記当接板とが互いに近接する方向に付勢部材によって付勢され、前記当接板が前記雄ねじ部材に当接することにより、前記支持部材と前記当接板とが最も近接した際の前記支持部材に対する前記スライド部材の前後位置が規定され、前記当接板には、前記当接板を貫通する孔部が開口され、前記カバー部材における前記当接板と対向する部分には、前記孔部に対応する位置にカバー孔が開口され、前記カバー孔と前記孔部とに調節冶具を挿入して、前記雄ねじ部材を回転させることにより、前記支持部に対する前記雄ねじ部材の前後方向の相対位置を調節し、前記支持部材と前記当接板とが最も近接した際の前記支持部材に対する前記スライド部材の前後位置が調節可能とされる、椅子。
【0008】
(2)
前記カバー部材には、前記カバー孔を閉塞可能とする閉塞板が設けられる、(1)記載の椅子。
【0009】
(3)
前記スライド部材は、前記支持部材に対して、側面視で曲線軌道を描いて前後方向に相対変位可能に組付けられ、前記座体が前記脚柱に対して前端位置と後端位置との間で変位する途中において、前記孔部と前記カバー孔とが前記雄ねじ部材の軸線上に位置する、(1)又は(2)記載の椅子。
【0010】
(4)
前記カバー部材に位置決め用の目印が形成され、前記目印は、前記孔部と前記カバー孔とが前記雄ねじ部材の軸線上に位置する際に、前記脚柱の所定箇所と前後位置が一致する、(3)記載の椅子。
【0011】
(5)
前記孔部及び前記カバー孔は上下方向に長い長孔として形成される、(3)又は(4)記載の椅子。
【発明の効果】
【0012】
以上における本発明に係る椅子は、以下に示す効果を奏する。
【0013】
(1)の構成によれば、簡易な作業でガイド機構を操作することにより、座体の前端位置を調節することができる。
【0014】
(2)の構成によれば、カバー孔を通じて外部からカバー部材の内部が視認されないようにできる。
【0015】
(3)の構成によれば、カバー孔と孔部とに調節冶具を挿入して雄ねじ部材を回転させる際に、当接板を雄ねじ部材の頭部から離間させておくことができる。
【0016】
(4)の構成によれば、作業者によるガイド機構における前後位置の調節をより簡易にすることができる。
【0017】
(5)の構成によれば、作業者によるガイド機構における前後位置の調節をより簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る椅子を示す後方斜視図。
図2】椅子を備える講義用システムを示す側面図。
図3】同じく椅子を示す下方斜視図。
図4】前後位置調整前の椅子を示す側面断面図。
図5】前後位置調整時の椅子を示す拡大断面図。
図6】前後位置調整後の椅子を示す拡大断面図。
図7】前後位置調整後の椅子を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では図1から図7を用いて、本発明の一実施形態に係る椅子1について説明する。図1中に示す矢印は椅子1の方向を示している。図4から図7はガイド機構5、座体6、及び、カバー部材8を図1におけるX-X線で切断した断面図である。図2に示す如く、椅子1は学校の講堂等において机2と組み合わされて講義用システムを構成する。この際、一台の机2に対して複数脚(例えば3~4脚)の椅子1を組み合わせることにより、一組の講義用システムが構成される。
【0020】
本実施形態に係る椅子1は、脚柱4と、ガイド機構5と、座体6と、カバー部材8と、を主な構成要素として備える。本実施形態に係る椅子1において、脚柱4及びガイド機構5は鉄又はアルミニウム等の金属製部材を中心に構成される。また、座体6は木材、カバー部材8は樹脂製素材を中心に構成される。ただし、各構成部材の素材については限定されるものではない。
【0021】
脚柱4は、その下端部4bが板状のベース体3を介して床面Fに固定された角筒状部材である。具体的には脚柱4の下端部4bにベース体3が溶接等により固着され、このベース体3が固定具であるボルトBによって床面Fに固定されるのである。脚柱4の上端部4tは少し後方に傾いた上方に向かって延出される。ガイド機構5は脚柱4の上端部4tに設けられる。
【0022】
ガイド機構5の上面には座体6が支持される。座体6は略水平方向に広がる曲面部である座部6aと、座部6aの後端から上方に向かって広がる曲面部である背もたれ部6bと、で一体的に構成されている。
【0023】
図3から図5に示す如く、ガイド機構5は、脚柱4の上端部4tにねじにより固定される支持部材51と、支持部材51に対して前後方向に相対変位可能に組付けられるスライド部材52と、を備える。スライド部材52には左右の側方に延出されるフランジ部52bが形成される。フランジ部52bは座部6aの下面6cにねじにより固定される。
【0024】
支持部材51は回動可能な複数のローラ53を備え、これらのローラ53はスライド部材52に設けられた複数のレール部54の内部で回動可能とされる。なお、本実施形態において、ローラ53及びレール部54は四個ずつ設けられている。また、支持部材51における脚柱4の直上には支持ギヤ55が回動可能に支持され、スライド部材52には支持ギヤ55と噛み合うレールギヤ56が固定されている。図4から図7に示す如く、レール部54及びレールギヤ56は側面視で上側が膨らんだ曲線状に(円弧状に)形成されている。
【0025】
上記構成において、スライド部52に対して支持部材51と前後方向に相対変位する方向に力が加わると、支持ギヤ55の上側においてレールギヤ56が支持ギヤ55を回動させながらスライドする。また、レール部54の内部でローラ53を回動させながらレール部54がスライドする。これにより、支持部材51に対してスライド部材52が前後方向に相対変位するのである。この際、レール部54及びレールギヤ56が側面視で曲線状に形成されているため、スライド部材52は支持部材51に対して、側面視で曲線軌道を描くように変位する。支持部材51に対するスライド部材52の変位により、座体6は脚柱4に対して前後方向に相対変位される。
【0026】
ガイド機構5は下側からカバー部材8によって被覆される。詳細には、カバー部材8の左右両側面で外側に膨出して形成された固定部8bが、スライド部材52のフランジ部52bにねじにより固定される。本実施形態において、カバー部材8は有底筒状に形成され、第一カバー部材である前部カバー81と、第二カバー部材である後部カバー82と、に分割可能に構成されている。後部カバー82の底部には、前側に開口する切り欠き部82aが形成されている。前部カバー81と後部カバー82とを組付けた際には、前部カバー81により後部カバー82の切り欠き部82aが閉塞される。これにより、カバー部材8の底部に挿通孔8aが形成される。挿通孔8aには、カバー部材8をスライド部材52に組付けた際に脚柱4が挿通される。
【0027】
支持部材51の後部には、支持部51aが立設されている。支持部51aには内周面に雌ねじ部が形成されたナット51bが固定されている。ナット51bには後方より雄ねじ部材であるボルト51cが螺入されている。ナット51bへの螺入量を調節することによって、支持部51aに対するボルト51cの前後方向の相対位置が変更可能とされている。なお、本実施形態においては支持部51aにナット51bを固定する構成としたが、支持部51aに開口した孔に雌ねじ部を形成しても差し支えない。
【0028】
スライド部材52の後部には、支持部51aの後方で支持部51aに対向する当接板52aが垂下されている。また、支持部材51とスライド部材52とは付勢部材である引張ばね57によって、支持部51aと当接板52aとが互いに近接する方向に付勢されている。具体的には、支持部材51の前部に係合板51eが立設され、この係合板51eと当接板52aとに引張ばね57の両端が係合されるのである。
【0029】
上記構成において、引張ばね57が支持部材51とスライド部材52とを付勢することにより、スライド部材52の当接板52aはボルト51cの後端部である頭部51dに当接する。これにより、支持部51aと当接板52aとが最も接近した際の支持部材51に対するスライド部材52の前後位置が規定されるのである。本実施形態において、当接板52aにおいて頭部51dの当接部分の上側には、当接板52aを貫通する孔部52cが開口されている。
【0030】
なお、本実施形態においては当接板52aがボルト51cの頭部51dに当接することにより、支持部材51に対するスライド部材52の前後位置が規定される構成としているが、スライド部材52の位置を規定する方法はこれに限定されるものではない。例えば、ボルト51cの途中に規制部を固設し、当接板52aをボルト51cの頭部51dと規制部との間に配置する。そして、当接板52aを規制部に当接させることにより、支持部材51に対するスライド部材52の前後位置を規定する構成とすることも可能である。
【0031】
また、ガイド機構5を、引張ばね57の付勢力を用いず、当接板52aをボルト51cに当接しない構成とすることもできる。即ち、ボルト51cの前後位置を調節することだけで、支持部材51とスライド部材52との前後位置を調節する構成とすることも可能である。
【0032】
このように、平常時(未使用時)において、椅子1のスライド部材52は引張ばね57によって前方に付勢されている。このため、図4に示す如く座体6は脚柱4に対して最も前側(前端位置)に変位して停止する。このように、使用者が椅子1を使用していない場合は、椅子1は座体6が前端位置にスライドして机2に接近することにより、背もたれ部6bと後方の机2の前端との間に十分な通路が確保できるようになっている。なお、本実施形態に係る椅子1は、座体6が脚柱4に対して最も後側に位置する後端位置まで変位できるように構成されている(図2における二点鎖線を参照)。
【0033】
使用者が椅子1を使用する場合は、使用者が引張ばね57の付勢力に反して座体6に力を加え、座体6を脚柱4に対して後側に変位させる。これにより、使用者は座体6の座部6aに座ることが可能となる。使用者が椅子1から離席すると、座体6は再び引張ばね57の付勢力によって前端位置に変位する。
【0034】
本実施形態において、後部カバー82における当接板52aと対向する部分には、孔部52cに対応する位置にカバー孔82bが開口されている。後部カバー82には、カバー孔82bを閉塞可能とする閉塞板82cが設けられている。これにより、外部から後部カバー82の内部が視認できないようにしている。閉塞板82cには、製品の名称やメーカーの名称等を記載することができる。
【0035】
そして、使用者が引張ばね57の付勢力に反して座体6に力を加え、座体6を脚柱4に対して後方における所定位置(座体6が前端位置と後端位置との間で変位する途中の位置)まで変位させると、側面視における孔部52cの変位軌跡とボルト51cの軸線とが交差する。即ち、孔部52cとカバー孔82bとがボルト51cの軸線上に位置する(図5を参照)。
【0036】
使用者が支持部51aと当接板52aとが最も近接した際の支持部材51に対するスライド部材52の前後位置を調節する場合は、まず、カバー孔82bから閉塞板82cを取り外す。そして、上記の如く孔部52cとカバー孔82bとがボルト51cの軸線上に位置した状態で、カバー孔82bと孔部52cとに調節冶具であるドライバーDを挿入し、図5中の一点鎖線矢印に示す如くボルト51cを回転させる。これにより、ボルト51cのナット51bに対する螺入量を調節することができる。
【0037】
本実施形態に係る椅子1によれば上記の如く、カバー孔82bと孔部52cとにドライバーDを挿入して操作するだけで、座体6が前方にスライドして停止した際の前後位置を調節することが可能となる。具体的には図6に示す如く、ナット51bに対してボルト51cの螺入量を小さくして、ボルト51cを後方に変位させた場合、スライド部材52の当接板52aがボルト51cの後端部である頭部51dに当接する位置が後方に変位する。これにより、支持部51aと当接板52aとが最も接近した際の支持部材51に対するスライド部材52の前後位置が後方に変位する。このため、図7に示す如く、脚柱4に対する座体6の前後位置を、図4の調節前の前後位置と比較して後方に変位させることができるのである。
【0038】
上記の如く、本実施形態に係る椅子1によれば、カバー部材8を取り外すことなく、簡易な作業でガイド機構5を操作することができ、座体6の前後位置を調節することができるのである。このため、講義用システムにおいて隣接する椅子1同士で座体6の前後位置の調節時など、脚柱4に対する座体6の前後位置を調節する際に、ガイド機構5を調節するためにカバー部材8を取り外す必要がないため、作業者の作業負担を低減させることが可能となる。特に、椅子1が講義用システムを構成する場合、椅子1の座体6が引張ばね57の付勢力により前方にスライドして前端位置で停止した際の、隣接する椅子1同士における座体6の前端位置を容易に揃えることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係る椅子1においては、座体6が脚柱4に対して前端位置と後端位置との間で変位する途中において、孔部52cとカバー孔82bとがボルト51cの軸線上に位置するように構成されている。これにより、カバー孔82bと孔部52cとに調節冶具であるドライバーDを挿入してボルト51cを回転させる際に、当接板52aをボルト51cの頭部51dから離間させておくことができる。つまり、ドライバーDでボルト51cを回転させる際に、ボルト51cには当接板52aからの力が付与されていないため、作業者がドライバーDを用いてボルト51cを容易に回転させることができるのである。
【0040】
また、本実施形態に係る椅子1においては図3及び図5に示す如く、カバー部材8の底面に位置決め用の突起部である目印8cが形成されている。目印8cは図5に示す如く、孔部52cとカバー孔82bとがボルト51cの軸線上に位置する際に、脚柱4の後面と前後位置がほぼ一致する位置に形成されている。これにより、作業者は目印8cと脚柱4との位置関係に基づいて(目印8cと脚柱4の後面との前後位置を一致させて)孔部52c及びカバー孔82bとボルト51cとの位置合わせを行うことができる。即ち、作業者によるガイド機構5における前後位置の調節をより簡易にすることができるのである。なお、目印8cと前後位置を一致させる部分は脚柱4の後面に限定されず、脚柱4の前面、又は、脚柱4に形成した他の目印等とすることも可能である。また、目印8cを形成する箇所はカバー部材8の底面に限定されず、カバー部材8の側面等に形成することもできる。
【0041】
なお、本実施形態に係る椅子1において、当接板52aの孔部52cとカバー部材8のカバー孔82bとは真円に近い形状で開口されているが、孔部52c及びカバー孔82bを上下方向に長い長孔として形成することも可能である。これにより、孔部52c及びカバー孔82bにおいてボルト51cの軸線と重なる領域を増やすことができる。即ち、ドライバーDでボルト51cを回転させる際に、作業者が孔部52cとカバー孔82bとをボルト51cの軸線上に配置することが容易となる。このため、作業者によるガイド機構5における前後位置の調節をより簡易にすることができるのである。なお、本構成の場合、孔部52cとカバー孔82bとがボルト51cの軸線上に配置される領域を示すように、前記の目印8cを二か所に形成したり、挿通孔8aの長手方向に沿って長く形成された突起部として形成したりすることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 椅子 2 机
3 ベース体 4 脚柱
4b 下端部 4t 上端部
5 ガイド機構 6 座体
6a 座部 6b 背もたれ部
6c 下面 8 カバー部材
8a 挿通孔 8b 固定部
8c 目印 51 支持部材
51a 支持部 51b ナット(雌ねじ部)
51c ボルト(雄ねじ部材)
51d 頭部 51e 係合板
52 スライド部材 52a 当接板
52b フランジ部 52c 孔部
53 ローラ 54 レール部
55 支持ギヤ 56 レールギヤ
57 引張ばね 81 前部カバー
82 後部カバー 82a 切り欠き部
82b カバー孔 82c 閉塞板
B ボルト D ドライバー(調節冶具)
F 床面


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7