(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】空調機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/84 20180101AFI20220309BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20220309BHJP
F24F 11/81 20180101ALI20220309BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20220309BHJP
F24F 11/523 20180101ALI20220309BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20220309BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20220309BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20220309BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20220309BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20220309BHJP
F24F 140/12 20180101ALN20220309BHJP
【FI】
F24F11/84
F24F11/46
F24F11/81
F24F11/63
F24F11/523
F24F11/89
F24F110:10
F24F110:20
F24F140:20
F24F140:00
F24F140:12
(21)【出願番号】P 2020171735
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020012180
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】木野村 肇
(72)【発明者】
【氏名】所谷 雅史
(72)【発明者】
【氏名】池田 義昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆志
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003201(JP,A)
【文献】特開2005-351587(JP,A)
【文献】特開2013-053836(JP,A)
【文献】特開平06-257840(JP,A)
【文献】特開2004-053127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/84
F24F 11/46
F24F 11/81
F24F 11/63
F24F 11/523
F24F 11/89
F24F 110/10
F24F 110/20
F24F 140/20
F24F 140/00
F24F 140/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流通する開口部を有する筐体と、熱媒が流通する熱媒管及び該熱媒の流通を制御するバルブを有し、該筐体内を流通する空気と熱媒とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器で熱交換された空気を前記筐体外に送出する送風機と、を少なくとも備えた空調機であって、
前記筐体内には、該筐体内を流通する空気との熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度とをそれぞれ計測する第1センサと、熱媒との熱交換後の空気の温度を計測する第2センサと、が配設されており、
前記空調機は、熱交換後の空気の目標温度値を設定可能な記憶部と、前記第1センサと前記第2センサとが計測した計測情報が入力される入力部と、前記記憶部が備える前記目標温度値と前記第1及び第2センサからの計測情報に基づき前記バルブの開度を導出する演算部と、前記演算部が導出した値を出力する出力部と、からなる制御ユニット
と、前記送風機の出力を制御するインバータと、を備え、
前記演算部は、前記記憶部が備える前記目標温度値と前記第1及び第2センサからの計測情報に基づき前記バルブの開度と前記インバータの出力とを導出し、
前記制御ユニットは、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差に基づき、前記バルブを開方向へ開度調整する
とともに、前記インバータの出力を上げる通常運転制御を行うことを特徴とする空調機。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差が一定温度以上と判定された場合、前記通常運転制御を行い、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差が一定温度未満と判定された場合、前記通常運転制御に優先して、前記バルブの閉方向への開度調整と前記インバータの出力を抑える低速運転制御を行うことを特徴とする請求項
1に記載の空調機。
【請求項3】
前記筐体内の空気を加湿する加湿器と、空調前の空気の湿度を検出する湿度センサが配設されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の空調機。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記目標温度値や前記第1及び第2センサが検知した温度を表示するモニタを有する表示部と、前記目標温度値を変更可能な操作部と、を備えることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の空調機。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記熱交換器の上流側の圧力と、前記熱交換器の下流側の圧力との差圧に基づき前記空調機から送出される風量を導出することを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空間を調和する空調機に関するものであり、特に、空調機から送出する風量及び、熱交換器内の熱媒の流量を可変に調整することができる空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にビルや集合住宅、工場等には、これらの屋内空間に温度調整された空気を供給するための空調機が設置されている。このような空調機は主に、熱交換器や、駆動源により駆動するファンを有した送風機、加湿器等の機器が筐体内に配設されており、近年、吹出口やダクト等に設けられたセンサから得た温度・湿度・圧力等の情報や、基盤が搭載された制御部に設定しておいた目標値を基に、制御部が筐体内の各機器バルブの開度調整や送風ファンの回転数制御が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される空調機は、制御部としてのCPUに管理者が入力機器としてのキーボードと表示部としてのCRTを用い、シーケンスリレー盤及びインターフェースを介して空調機の起動時刻を記憶させることで、空調機の起動時刻前において熱媒を通過させる熱媒管に設けたバルブの開度が調整され、起動前に空調機を予熱させるようになっている。このことから、設定した起動時刻には空調済みの空気が空調機から供給されるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-179524号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されている空調機は、空調済みの快適な空気を供給させるために予め予熱の必要があるため、急な起動の際には、空調機内が予熱されておらず、また風速も通常運転制御で比較的高速なことから、初動時に熱交換が不十分な空気を供給してしまい良好な空調効率を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、常時、空調効率の良い空調機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の空調機は、
空気が流通する開口部を有する筐体と、熱媒が流通する熱媒管及び該熱媒の流通を制御するバルブを有し、該筐体内を流通する空気と熱媒とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器で熱交換された空気を前記筐体外に送出する送風機と、を少なくとも備えた空調機であって、
前記筐体内には、該筐体内を流通する空気との熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度とをそれぞれ計測する第1センサと、熱媒との熱交換後の空気の温度を計測する第2センサと、が配設されており、
前記空調機は、熱交換後の空気の目標温度値を設定可能な記憶部と、前記第1センサと前記第2センサとが計測した計測情報が入力される入力部と、前記記憶部が備える前記目標温度値と前記第1及び第2センサからの計測情報に基づき前記バルブの開度を導出する演算部と、前記演算部が導出した値を出力する出力部と、からなる制御ユニットを備え、
前記制御ユニットは、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差に基づき、前記バルブを開方向へ開度調整する通常運転制御を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、制御ユニットの第1センサから得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差に基づいて、通常運転制御として、出力部がバルブの開方向への開度調整を行い熱媒管内の熱媒を十分に循環させるので、熱交換が十分に行われた空調済みの空気が強い力で送出されることから、予熱の必要がなく、いつ起動しても快適な空気を送出する空調機を提供することができる。
【0008】
前記空調機は、前記送風機の出力を制御するインバータを更に備え、
前記演算部は、前記記憶部が備える前記目標温度値と前記第1及び第2センサからの計測情報に基づき前記バルブの開度と前記インバータの出力とを導出し、
前記制御ユニットは、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差に基づき、前記バルブを開方向へ開度調整するとともに、前記インバータの出力を上げる通常運転制御を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、制御ユニットの第1センサから得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差に基づいて、通常運転制御として、出力部がバルブの開方向への開度調整を行い熱媒管内の熱媒を十分に循環させ、かつインバータの出力を向上させるので、熱交換が十分に行われた空調済みの空気が強い力で送出されることから、予熱の必要がなく、いつ起動しても快適な空気を送出する空調機を提供することができる。
【0009】
前記制御ユニットは、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差が一定温度以上と判定された場合、前記通常運転制御を行い、前記第1センサが計測した前記熱媒の温度差が一定温度未満と判定された場合、前記通常運転制御に優先して、前記バルブの閉方向への開度調整と前記インバータの出力を抑える低速運転制御を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、第1センサから得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差が一定温度未満と計測情報が判定された場合、低速運転制御として、出力部がバルブの閉方向への開度調整を行い熱媒の温度生成を促進させかつ、送風機が低速運転となるように制御されるので、熱交換の不十分な空気を送出することを抑えることができる。
【0010】
前記筐体内の空気を加湿する加湿器と、空調前の空気の湿度を検出する湿度センサが配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、空調前の空気の湿度に応じて、筐体内の空気を適宜加湿させることができる。
【0011】
前記制御ユニットは、前記目標温度値や前記第1及び第2センサが検知した温度を表示するモニタを有する表示部と、前記目標温度値を変更可能な操作部と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、外部から接続する入力機器や表示機器が不要で、空調機の温度状態を視認でき、また設定変更が簡便に行える。
【0012】
前記制御ユニットは、前記熱交換器の上流側の圧力と、前記熱交換器の下流側の圧力との差圧に基づき前記空調機から送出される風量を導出することを特徴としている。
この特徴によれば、筐体内の空気が熱交換器を通過する際に生じる圧力差を利用して、筐体から送出される空調済み空気の正確な流量を導出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1,2における空調機を示す斜視図である。
【
図2】(a)は空調機の一部側断面図を示し、(b)は上面図を示す。
【
図4】実施例1における制御盤の制御体系を示す模式図である。
【
図5】実施例1における空調機の制御フローを示すブロック図である。
【
図6】実施例2における制御盤の制御体系を示す模式図である。
【
図7】実施例2における空調機の制御フローを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る空調機を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る空調機につき、
図1から
図5を参照して説明する。先ず
図1の符号1は、本発明の適用された空調機であり、後述するように温度及び湿度を調整した空気(空調済み空気)を生成し、送出するものである。
【0016】
図1に示されるように、空調機1は、空調前の外気を取り込む開口部5及び空調済みの空気を送出する開口部6(
図2,3参照)を有し略直方体を成す筐体2を備えている。筐体2は、天板2A、側面板2B,2B、背面板2C、正面板2D、底板2Eとから構成され、これ等の板材の内部に空間を有しており、底板2Eを除く各板は、ウレタン等の断熱材を2枚の薄板で挟持させたサンドイッチパネルから成っている。また、筐体2には、筐体内の内部空間と連通し、開閉可能な扉が複数配設されている。
【0017】
図2(a),(b)に示されるように、筐体2には、その内部に配設され熱媒と空気とを熱交換する熱交換器7と、熱交換器7で熱交換された空気を適宜加湿する加湿器9と、筐体2内にて熱交換及び加湿された空気を筐体2外に送出するモータ18を備えた送風機8と、後述する制御ユニットとしての制御盤3と、が主に配設されている。また、筐体2内には、熱交換前と熱交換後の空気の圧力をそれぞれ計測する圧力計Pと、筐体2内に流入された空気の湿度を計測する湿度計Hと、熱交換前の熱媒の温度を計測する温度計T1と、熱交換後の熱媒の温度を計測する温度計T2と、熱交換後の空気の温度を計測する温度計T3とが設置されている。
【0018】
すなわち空調機1は、筐体2内に上記した熱交換器7、加湿器9及び送風機8等の機器一式が配設されたユニットとして構成されており、このユニットを運搬し所望の個所に設置するとともに、付帯工事として後述する配管工事、及び配線工事等を行うことで使用に供される。
【0019】
以下、空調機1の構造について詳細に説明する。尚、
図2に参照されるように、空気が流入する開口部5側を左側または上流側とし、熱交換後の空気が送出される開口部6側を右側または下流側として、上流側から順に説明する。また、実施例1における流通路とは、空気が流入する開口部5から空気が送出される開口部6間に形成される空気の主たる移動通路を指す。
【0020】
図2(a),(b)に示されるように、空気を導入する開口部としての開口部5は、筐体2の図示左側に開口形成されており、その開口面の略全面に配されたフィルタ5aを介し筐体2の内外を連通している。開口部5には図示しないダクトが外方側から連結され、外気等の空調前の空気を筐体内に取り込むようになっている。
【0021】
図2(b)に示されるように、開口部5に連通する筐体2の内部には、筐体2の内面と制御盤3の背面板3aと後述するエアフィルタ12の前面とから構成される空間S1が形成されている。開口部5から筐体2内に流入した空気は、まず空間S1に流入される。空間S1の上流側には、湿度センサHが配設されており、空間S1に流入された空気の湿度を測定し図示しないケーブルを介して測定結果を制御盤3の入力部3Aに送信するようになっている。
【0022】
空間S1の下流側には、エアフィルタ12が、断面視略矩形状で図示左右方向に延設された短管状の枠体21に、全周に亘り固定されて配設されている。この枠体21は、筐体2の内面から上下左右に離間して設置されている。また、エアフィルタ12は、開口部5から流入した空気中の塵埃等のパーティクルを除去するために配設されており、枠体21に組み付けられた略矩形状のアルミフレーム12bに、合成繊維不織布またはガラス繊維の濾材12aが張設されて形成されている。なお、ここでの断面方向は、筐体2内の空気が流通する紙面左右方向に直交する方向を指す。よって、空間S1の空気は、エアフィルタ12を通過するとともに空気中のパーティクルが除去され、更に枠体21内を通過するようになっている。
【0023】
図2(a),(b)に示されるように、エアフィルタ12が配設されている枠体21の下流側には、この枠体21よりも上下左右方向に大形に開口するとともに上流側から下流側へ延びる短管状の膨出ダクト22が配設されている。これにより、エアフィルタ12の下流側から枠体21の内方側と膨出ダクト22の内方側には、空間S2が形成されるようになっている。また、空間S2内には、圧力計Pが配設されており、膨出ダクト22が形成する熱交換前の空間S2内の圧力と、後述する空間S3の圧力を計測し、図示しないケーブルを介して測定結果を制御盤3の入力部3Aに送信するようになっている。
【0024】
図2(a)に示されるように膨出ダクト22の下流側には、開口部6方向へ延びる短管状のダクト23が溶接され接続されている。ダクト23の内部には、熱交換器7が配設されている。
図3に示されるように熱交換器7は、流通路方向に空気が流通する隙間を設け複数の薄板状の金属板を平行に並べて配列されたフィン群Fと、このフィン群Fを貫通し内部に熱媒が流通する熱媒管としての伝熱管17と、から主に構成されている。また、伝熱管17は筐体2に形成された孔部を貫通し、その両端部7a,7bが筐体2の外部に配設され、図示しない熱媒管と連通している。更に筐体2の外部に配設されている図示しない加熱・冷却手段により、加熱若しくは冷却された熱媒が前記した熱媒管を介し端部7aから熱交換器7へ供給され、熱交換器7で空気と熱交換された熱媒が端部7bから前記した加熱・冷却手段へ排出されることで、熱媒が循環するようになっている。尚、本実施例では熱媒の一種として水が適用されているが、R410Aや他の代替フロン、アンモニアや炭酸ガス等の熱媒のみならず、ブラインなど全ての熱媒に適用可能である。更に尚、熱媒として冷媒を適用し、当該冷媒を図示しない圧縮機や膨張弁が構成された冷凍サイクルによって循環冷却させてもよい。
【0025】
また、端部7aとフィン群Fの間には、制御盤3の出力部3Dにより開度調整される電磁弁V1が配設されており、伝熱管17内を流通する熱媒の流量が制御されるようになっている。電磁弁V1は、図示しない制御用ケーブルにより制御盤3と接続されている。また、電磁弁V1とフィン群Fの間には管内を流通する熱交換前の熱媒の温度を計測する温度計T1(第1センサ)が配設され、端部7bと筐体2内におけるフィン群Fの間には熱交換後の熱媒の温度を計測する温度計T2(第1センサ)が配設されている。温度計T1及びT2は、図示しない信号ケーブルを介して計測データを制御盤3の入力部3Cへ送信するようになっている。
【0026】
また、
図3に示されるように、膨出ダクト22には、下流側に向けて開口された貫通孔22aが形成されており、圧力計Pから延出されたケーブルC1が挿通され、後述する空間S3の圧力を検出させるようになっている。
【0027】
図2(a),(b)に示されるように、熱交換器7が配設されているダクト23の下流側には、このダクト23よりも上下左右方向に大形に開口するとともに断面視略コ字状に形成され、空気の流通路側が開放された膨出ダクト24が配設されている。これにより熱交換器7の下流側から後述する加湿器9の間にかけて空間S3が形成され、膨出ダクト24が区画する空間S3には、熱交換後の空気が通過するようになっている。
【0028】
図2(a),(b)に示されるように、膨出ダクト24の下流側には、加湿器9が断面視略矩形状で短管状の枠体25内に固定されて配設されている。加湿器9は、熱交換器7にて熱交換された空気を加湿するために配設されており、筐体2の内外を連通する給水管9aから供給される水を図示しない噴霧口から熱交換器7側へ噴霧させることで空気を加湿するようになっている。また、給水管9aには、制御盤3の出力部3Dにより開度調整され噴霧口から噴霧される水量が制御される電磁弁V2が配設されている。電磁弁V2は、図示しない制御用ケーブルにより制御盤3と接続されている。
【0029】
加湿器9の下流側には、筐体2の上面2A、側面板2B,2B、正面板2D,底面2Eと、膨出ダクト22の下流側側部から構成される空間S3’が形成されている。加湿器9で加湿された空気は、空間S3’内に流出されるようになっている。空間3’には、熱媒との熱交換後の空気の温度を計測する第2センサとしての温度計T3が配設されており、図示しない信号ケーブルを介して計測データを制御盤3の入力部3Cへ送信するようになっている。
【0030】
筐体2の空間S2の最下部に設けられた底板2Eの一部は、ドレンパン10A,10Bとして構成されている。ドレンパン10A,10Bは、図示左右方向の中央部が最も低い底部である凹形状のテーパ面が形成されており、開口部5から空間S1に取り込まれる取り込み空気に伴い、筐体2内に流入する雨水や結露水や、熱交換器7において熱交換時に生じる結露による水分、及び加湿器9から噴霧される水分をドレン水として受水可能とされている。
【0031】
また筐体2の正面の下部に、ドレンパン10A,10Bの最も低い底部と筐体2外部とを連通するドレン口10a,10bがそれぞれ形成されており、空調機1の設置の際には付帯工事として、ドレン口10aに順次ドレン配管や、排水トラップを接続するとともに、この排水トラップを下水管等の排水管に接続する配管工事を要する。
【0032】
図2(a),(b)に示されるように、下流側の空間S3’には、底板2E上にモータ18が配設されており、該モータ18はモータ18の上方に配設されている送風機8に接続されている。本実施例の送風機8は、縦長の細長い板状の羽根が筒状に取り付けられているシロッコファンであり、モータ18を駆動させることで送風機8の図示しない羽根車が回転することで、空間S3’内の空気を筐体2の内外に連通し正面板2Dに形成されている開口部6に送出するようになっている。尚、モータ18には、図示しないインバータが接続されており、該インバータは制御盤3の出力部3Dと図示しない制御用ケーブルにより接続されている。送風機8のファンは、出力部3Dからの出力によりインバータが周波数制御されることで、モータ18の回転速度に追従して可変に制御されるようになっている。
【0033】
すなわち筐体2の内部には、筐体2の内面と膨出ダクト22の上流側側壁とで形成される空間S1と、エアフィルタ12の下流側から枠体21の内方側と膨出ダクト22の内方側および熱交換器7の上流側端部よりも上流側に形成される空間S2と、熱交換器7の下流側から膨出ダクト24の内方側および加湿器9の上流側端部よりも上流側に形成される空間S3と、筐体2の内面と加湿器9の下流側から形成される空間S3’とに便宜的に分類され、それぞれの空間は連通状態となっている。これにより、開口部5を介し筐体2の空間S1に流入した空気は、エアフィルタ12を通過して空間S2へ流入され、空間S2の空気が下流側へ向けて移動することで熱交換器7において熱交換されたのち空間S3へ流入され、更に空間S3の空気が下流側へ向けて移動することで加湿器9を通過するに伴い加湿されて空間S3’に流入されるようになっている。
【0034】
次に、
図4を用いて制御盤3について詳しく説明する。
図4に示されるように制御盤3は、熱交換後の空気の目標温度値を記憶する記憶部3Aと、上述した温度計T1,T2及び温度計T3,圧力計P,湿度計Hが計測した温度情報、圧力情報及び湿度情報等の計測情報が入力される入力部3Cと、記憶部3Aが記憶した目標温度値と温度計T1,T2、温度計T3、圧力計P及び湿度計Hが計測した計測情報に基づき熱交換器7に配設される電磁弁V1の開度と加湿器9に配設される電磁弁V2の開度とモータ18に接続されたインバータの出力値とを導出する演算部3Bと、演算部3Bが導出した値を電磁弁V1と電磁弁V2に出力する出力部3Dと、目標温度値や温度計T1,T2と温度計T3,圧力計P,湿度計Hが検知した値を表示するモニタを有する表示部3Eと、目標温度値を変更可能な操作部3Fと、から主に構成されている。
【0035】
制御盤3の操作について説明すると、表示部3Eとしてのモニタにタッチパネルによる入力機能が搭載された操作部3Fを操作することにより、目標温度値が変更可能に記憶部3Aに記憶されるようになっている。ここで本実施例の目標温度値とは、熱交換後の空気の温度を意味し、実際の熱交換後の空気の温度は、空間S3’において下流側の開口部6近傍に配設された温度計T3によって計測される。
【0036】
図5及び
図2(a),(b)を用いて、本発明の空調機1が行う空調制御について説明する。まず本発明の空調制御には、空調機1から吹き出される空調済み空気の温度を制御する吹出温度制御と、空調機1に還流される空気の温度を制御する還気温度制御とに分類されるが、本実施例では吹出温度制御について説明する。吹出温度制御とは、熱交換後の空気の温度を計測する温度計T3の目標温度値を設定し、この目標温度値若しくはその近傍温度に空調された空気を、インバータ制御を介して送風機8で送出する制御を指す。尚、還気温度制御は、吹出温度制御に代えて、空調機1から送出される空調済みの空気を供給する供給先から空調機1に還流させる場合に設定される制御であり、再度空調機1の上流側の開口部5から空間S1内に還気させ空間S1内にて還気温度を計測し、該還気温度を目標温度値として設定するものである。還気温度制御は、目標温度値として設定される温度が吹出温度制御と異なり、当該目標温度値を除いて吹出温度制御と略同じ制御のため、本実施例においては、吹出温度制御について説明し、還気温度制御の説明は省略する。
【0037】
まず、空調機1の利用者もしくは管理者(以下、操作者と称する)は、操作部3Fとしてのタッチパネルを利用して、表示部3Eに表示された吹出温度制御アイコン及び還気温度制御アイコン(図示略)のうち、吹出温度制御アイコンを選択する(ステップ1)。
【0038】
次に、操作者は、タッチパネルを利用して同様の操作で熱媒温度差制御を有効にするか無効にするかを選択する(ステップ2)。この熱媒温度差制御とは、熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が所定の設定値以上の場合に行われる通常運転制御と、上記した温度差が設定値未満の場合に通常運転制御に優先して行われる低速運転制御とが切替え可能な制御である。尚、熱媒温度差制御が有効な場合に演算部3Bが参照する熱媒の温度差の参照値は、記憶部3Aに予め記憶されており、夏場(冷房季)・冬場(暖房季)等の季節や空調機1の配設環境にも応じて変動可能になっており、更に操作部3Fを介して設定変更も可能となっている。
【0039】
ステップ2で操作者が熱媒温度差制御を有効にする操作をした場合、表示部3Eとしてのモニタに運転開始アイコン及び選択した制御内容,目標温度値等を設定入力・変更可能に表示させ、操作者が操作部3Fとしてのタッチパネルを押圧操作することで運転が開始する(ステップ3)。
【0040】
熱媒温度差制御を有効とした空調運転が開始されると、出力部3Dからの出力信号に基づき所定の周波数に制御されたインバータを介し、送風機8のモータ18が出力を上げ、開口部5から筐体2内の空間S1に空気が流入するようになっている。この空気流入に伴い、空間S1に配設されている湿度計Hにより空気の湿度が計測され、この湿度情報が入力部3Cに入力されるようになっている。次に、空間S1の空気はエアフィルタ12を通過して空間S2に流入され、空間S2内に配設されている圧力計Pにより熱交換前の圧力が計測され、この圧力情報が入力部3Cに入力されるようになっている。
【0041】
次に、空間S2から空間S3の間に配設されている熱交換器7により、フィン群Fを通過する空気と熱媒との熱交換が開始される。熱交換器7は、出力部3Dにより伝熱管17に配設された電磁弁V1が開方向に開度調整され、筐体2内の空気と伝熱管17内を流通する熱媒との熱交換が開始される。また、このとき、温度計T1が熱交換前の熱媒の温度を計測し、また、温度計T2が熱交換後の熱媒の温度を計測し、それぞれの温度情報が入力部3Cに入力される(ステップ4)。
【0042】
次に、演算部3Bは、温度計T1が計測した熱交換前の熱媒の温度と温度計T2が計測した熱交換後の熱媒の温度との温度差を算出するとともに、記憶部3Aに記憶されている熱媒の温度差の参照値に基づき、これら計測された熱媒の温度差が所定の設定値以上であるか否かを判定する(ステップ5)。
【0043】
熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が、設定値以上の場合は、熱交換が効率的に行われていると演算部3Bから判定され、空調機1の通常状態として熱交換後の空気を、インバータ制御を介して適切な風量で供給先へ送出する通常運転制御に移行する(ステップ6)。また、通常運転制御中においても、演算部3Bは、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値以上であるか否かを、定期的に判定するようになっている(ステップ5)。
【0044】
またステップ5において、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値未満と演算部3Bにより判定された場合は、熱媒と空気との熱交換が効率的に行われていないものとして、通常運転制御に優先して、低速運転制御に移行する(ステップ7)。低速運転制御は、熱媒の温度差が小さい場合に通常運転制御よりも優先して行われるものであり、電磁弁V1を閉方向へ開度調整することで熱交換器7内の熱媒の流通を少なくし、筐体2外に配設されている図示しない熱媒循環路において熱媒の熱交換を促進させるとともに、インバータの出力を抑えることで送風機8の図示しないファンを低速に運転させる制御である。この低速運転制御中はファンが低速で運転していることから、熱交換が不十分な空気を供給先に大量に供給することを一時的に抑えている。また、この低速運転制御中においても、演算部3Bは、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値以上であるか否かを定期的に判定し(ステップ5)、設定値以上と判定された場合は、再度通常運転制御に移行するようになっている(ステップ6)。
【0045】
また、圧力計Pから空間S3へ延出されたチューブC1の先端開口は圧力検知部として配設されており空間S3の圧力を計測するようになっている。圧力計Pは、熱交換前の空間S1における圧力の空気を取り入れるとともに、熱交換後の空間S3における圧力の空気を取り入れ、これらの圧力の差圧のデータを電気信号として、制御盤3内の入力部3Cに送信するようになっている。また制御盤3内の演算部3Bは、空間S1で検出された圧力と、空間S3で検出された圧力の差圧に基づき、空調機1から送出される風量(単位時間あたりの空気量)を導出するようになっており、導出した風量を表示部3Eに表示させるようになっている。
【0046】
ステップ2に戻り、操作者が熱媒温度差制御を無効とする操作をした場合、表示部3Eとしてのモニタに運転開始アイコン及び選択した制御内容,目標温度値等を設定入力・変更可能に表示させ、操作者が操作部3Fとしてのタッチパネルを押圧操作することで運転が開始する(ステップ8)。
【0047】
次に、空間S2から空間S3の間に配設されている熱交換器7により、フィン群Fを通過する空気と熱媒との熱交換が開始される。熱交換器7は、出力部3Dにより伝熱管17に配設された電磁弁V1の開度が一定に維持され、筐体2内の空気と熱媒との熱交換が開始される。
【0048】
次に、熱交換後の空気をインバータ制御を介して供給先へ送出する通常運転制御に移行する(ステップ9)。このように、熱媒温度差制御を無効とした空調運転の場合、上記した熱媒の温度差を判定することなく、すなわち低速運転制御に移行することなく常に通常運転制御が行われる。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、制御盤3(制御ユニット)の温度計T1,T2(第1センサ)から得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差に基づいて、通常運転制御として、出力部3Dが電磁弁V1(バルブ)の開方向への開度調整を行い伝熱管17(熱媒管)内の熱媒を十分に循環させかつ、インバータの出力を向上させるので、熱交換が十分に行われた空調済みの空気が強い力で送出されることから、予熱の必要がなく、いつ起動しても快適な空気を送出する空調機1を提供することができる。
【0050】
また、制御盤3の入力部3Cに温度計T1,T2から得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差が一定温度未満と判定された場合、低速運転制御として、出力部3Dが電磁弁V1の閉方向への開度調整を行い熱媒の温度生成を促進させかつ、送風機8が低速運転となるように制御されるので、熱交換の不十分な空気を送出することを抑えることができる。
【0051】
また、空調機1には、筐体2内の空気を加湿する加湿器9と、空調前の空気の湿度を検出する湿度計H(湿度センサ)が配設されており、制御盤3によって制御されていることで、空調前の空気の湿度に応じて、筐体2内の空気を適宜加湿させることができる。
【0052】
また、制御盤3は、目標温度値や温度計T1,T2及び温度計T3(第2センサ)が検知した温度を表示するモニタを有する表示部3Eと、目標温度値を変更可能な操作部3Fとを備えることで、外部から接続する入力機器としてのキーボードや表示機器としてのCRT等が不要で、空調機の温度状態を視認でき、また設定変更が簡便に行える。
【0053】
また、制御盤3は、熱交換器7の上流側の圧力と、熱交換器7の下流側の圧力との差圧に基づき、空調機1から送出される風量を導出することで、筐体2内の空気が熱交換器7を通過する際に生じる圧力差を利用して、筐体2から送出される空調済み空気の正確な流量を導出させることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る空調機11につき、
図1~3、
図6及び
図7を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0055】
本実施例2の空調機11は、実施例1の空調機1と同様の筐体2を備え、その内部に配設され熱媒と空気とを熱交換する熱交換器7と、熱交換器7で熱交換された空気を適宜加湿する加湿器9と、筐体2内にて熱交換及び加湿された空気を筐体2外に送出するモータ18を備えた送風機8と、後述する制御ユニットとしての制御盤3と、が主に配設されている。また、筐体2内には、熱交換前と熱交換後の空気の圧力をそれぞれ計測する圧力計Pと、筐体2内に流入された空気の湿度を計測する湿度計Hと、熱交換前の熱媒の温度を計測する温度計T1と、熱交換後の熱媒の温度を計測する温度計T2と、熱交換後の空気の温度を計測する温度計T3とが設置されている。 本実施例2の空調機11は、上述した実施例1の空調機1と比べ、制御盤13にインバータを備えていない点で異なり、その他の点で実施例2の空調機11は、実施例1の空調機1と同じ構造を有している。
【0056】
次に、
図6を用いて制御盤13について詳しく説明する。
図6に示されるように制御盤13は、熱交換後の空気の目標温度値を記憶する記憶部13Aと、上述した温度計T1,T2及び温度計T3,圧力計P,湿度計Hが計測した温度情報、圧力情報及び湿度情報等の計測情報が入力される入力部13Cと、記憶部13Aが記憶した目標温度値と温度計T1,T2、温度計T3、圧力計P及び湿度計Hが計測した計測情報に基づき熱交換器7に配設される電磁弁V1の開度と加湿器9に配設される電磁弁V2の開度を導出する演算部13Bと、演算部13Bが導出した値を電磁弁V1と電磁弁V2に出力する出力部13Dと、目標温度値や温度計T1,T2と温度計T3,圧力計P,湿度計Hが検知した値を表示するモニタを有する表示部13Eと、目標温度値を変更可能な操作部13Fと、から主に構成されている。
【0057】
制御盤13の操作について説明すると、表示部13Eとしてのモニタにタッチパネルによる入力機能が搭載された操作部13Fを操作することにより、目標温度値が変更可能に記憶部13Aに記憶されるようになっている。ここで本実施例の目標温度値とは、熱交換後の空気の温度を意味し、実際の熱交換後の空気の温度は、空間S3’において下流側の開口部6近傍に配設された温度計T3によって計測される。
【0058】
図7及び
図2(a),(b)を用いて、本発明の空調機11が行う空調制御について説明する。まず本発明の空調制御には、空調機11から吹き出される空調済み空気の温度を制御する吹出温度制御と、空調機11に還流される空気の温度を制御する還気温度制御とに分類されるが、本実施例では吹出温度制御について説明する。吹出温度制御とは、熱交換後の空気の温度を計測する温度計T3の目標温度値を設定し、この目標温度値若しくはその近傍温度に空調された空気を、送風機8で送出する制御を指す。尚、還気温度制御は、吹出温度制御に代えて、空調機11から送出される空調済みの空気を供給する供給先から空調機11に還流させる場合に設定される制御であり、再度空調機11の上流側の開口部5から空間S1内に還気させ空間S1内にて還気温度を計測し、該還気温度を目標温度値として設定するものである。還気温度制御は、目標温度値として設定される温度が吹出温度制御と異なり、当該目標温度値を除いて吹出温度制御と略同じ制御のため、本実施例においては、吹出温度制御について説明し、還気温度制御の説明は省略する。
【0059】
まず、空調機11の利用者もしくは管理者(以下、操作者と称する)は、操作部13Fとしてのタッチパネルを利用して、表示部13Eに表示された吹出温度制御アイコン及び還気温度制御アイコン(図示略)のうち、吹出温度制御アイコンを選択する(ステップ11)。
【0060】
次に、操作者は、タッチパネルを利用して同様の操作で熱媒温度差制御を有効にするか無効にするかを選択する(ステップ12)。この熱媒温度差制御とは、熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が所定の設定値以上の場合に行われる通常運転制御と、上記した温度差が設定値未満の場合に通常運転制御に優先して行われる低速運転制御とが切替え可能な制御である。尚、熱媒温度差制御が有効な場合に演算部13Bが参照する熱媒の温度差の参照値は、記憶部13Aに予め記憶されており、夏場(冷房季)・冬場(暖房季)等の季節や空調機11の配設環境にも応じて変動可能になっており、更に操作部13Fを介して設定変更も可能となっている。
【0061】
ステップ12で操作者が熱媒温度差制御を有効にする操作をした場合、表示部13Eとしてのモニタに運転開始アイコン及び選択した制御内容,目標温度値等を設定入力・変更可能に表示させ、操作者が操作部13Fとしてのタッチパネルを押圧操作することで運転が開始する(ステップ13)。
【0062】
熱媒温度差制御を有効とした空調運転が開始されると、出力部13Dからの出力信号に基づき、送風機8のモータ18が出力を上げ、開口部5から筐体2内の空間S1に空気が流入するようになっている。この空気流入に伴い、空間S1に配設されている湿度計Hにより空気の湿度が計測され、この湿度情報が入力部13Cに入力されるようになっている。次に、空間S1の空気はエアフィルタ12を通過して空間S2に流入され、空間S2内に配設されている圧力計Pにより熱交換前の圧力が計測され、この圧力情報が入力部13Cに入力されるようになっている。
【0063】
次に、空間S2から空間S3の間に配設されている熱交換器7により、フィン群Fを通過する空気と熱媒との熱交換が開始される。熱交換器7は、出力部13Dにより伝熱管17に配設された電磁弁V1が開方向に開度調整され、筐体2内の空気と伝熱管17内を流通する熱媒との熱交換が開始される。また、このとき、温度計T1が熱交換前の熱媒の温度を計測し、また、温度計T2が熱交換後の熱媒の温度を計測し、それぞれの温度情報が入力部13Cに入力される(ステップ14)。
【0064】
次に、演算部13Bは、温度計T1が計測した熱交換前の熱媒の温度と温度計T2が計測した熱交換後の熱媒の温度との温度差を算出するとともに、記憶部13Aに記憶されている熱媒の温度差の参照値に基づき、これら計測された熱媒の温度差が所定の設定値以上であるか否かを判定する(ステップ15)。
【0065】
熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が、設定値以上の場合は、熱交換が効率的に行われていると演算部13Bから判定され、空調機11の通常状態として熱交換後の空気を、適切な風量で供給先へ送出する通常運転制御に移行する(ステップ16)。また、通常運転制御中においても、演算部13Bは、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値以上であるか否かを、定期的に判定するようになっている(ステップ15)。
【0066】
またステップ15において、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値未満と演算部13Bにより判定された場合は、熱媒と空気との熱交換が効率的に行われていないものとして、バルブ開度が調整されて風量が制御され、熱交換が不十分な空気を供給先に大量に供給することを一時的に抑えている。また、このバルブ開度の調整後においても、演算部13Bは、計測された熱交換前の熱媒の温度と熱交換後の熱媒の温度との温度差が設定値以上であるか否かを定期的に判定し(ステップ15)、設定値以上と判定された場合は、再度通常運転制御に移行するようになっている(ステップ16)。
【0067】
また、圧力計Pから空間S3へ延出されたチューブC1の先端開口は圧力検知部として配設されており空間S3の圧力を計測するようになっている。圧力計Pは、熱交換前の空間S1における圧力の空気を取り入れるとともに、熱交換後の空間S3における圧力の空気を取り入れ、これらの圧力の差圧のデータを電気信号として、制御盤13内の入力部13Cに送信するようになっている。また制御盤13内の演算部13Bは、空間S1で検出された圧力と、空間S3で検出された圧力の差圧に基づき、空調機11から送出される風量(単位時間あたりの空気量)を導出するようになっており、導出した風量を表示部13Eに表示させるようになっている。
【0068】
ステップ12に戻り、操作者が熱媒温度差制御を無効とする操作をした場合、表示部13Eとしてのモニタに運転開始アイコン及び選択した制御内容,目標温度値等を設定入力・変更可能に表示させ、操作者が操作部13Fとしてのタッチパネルを押圧操作することで運転が開始する(ステップ18)。
【0069】
次に、空間S2から空間S3の間に配設されている熱交換器7により、フィン群Fを通過する空気と熱媒との熱交換が開始される。熱交換器7は、出力部13Dにより伝熱管17に配設された電磁弁V1の開度が一定に維持され、筐体2内の空気と熱媒との熱交換が開始される。
【0070】
次に、熱交換後の空気を供給先へ送出する通常運転制御に移行する(ステップ19)。このように、熱媒温度差制御を無効とした空調運転の場合、上記した熱媒の温度差を判定することなく、常に通常運転制御が行われる。
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、制御盤13(制御ユニット)の温度計T1,T2(第1センサ)から得た熱媒の熱交換前の温度と熱交換後の温度との温度差に基づいて、通常運転制御として、出力部13Dが電磁弁V1(バルブ)の開方向への開度調整を行い伝熱管17(熱媒管)内の熱媒を十分に循環させるので、熱交換が十分に行われた空調済みの空気が強い力で送出されることから、予熱の必要がなく、いつ起動しても快適な空気を送出する空調機11を提供することができる。
【0072】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0073】
例えば、本実施例の空調機1,11は、加湿器9及び湿度計H、すなわち加湿機能を有しているが、これらに加え、加湿用の給水量を可変に調整するバルブを備えてもよいし、あるいは特段に加湿機能を有さずともよい。
【0074】
また例えば、本実施例の空調機1,11は、熱交換器7の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧に基づき、空調機1,11から送出される風量を導出しているが、これに限らず例えば、空調済みの空気が送出される筐体2の開口部6に風量計を設け、空調機1,11から送出される風量を直接に計測してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 空調機
2 筐体
3 制御盤(制御ユニット)
3A 記憶部
3B 演算部
3C 入力部
3D 出力部
3E 表示部
3F 操作部
5 開口部
6 開口部
7 熱交換器
8 送風機
9 加湿器
11 空調機
12 エアフィルタ
13 制御盤(制御ユニット)
13A 記憶部
13B 演算部
13C 入力部
13D 出力部
13E 表示部
13F 操作部
18 モータ
H 湿度計
P 圧力計
T1 温度計(第1センサ)
T2 温度計(第1センサ)
T3 温度計(第2センサ)
V1 電磁弁(バルブ)
V2 電磁弁