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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】除塵装置の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
E02B5/08 102B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017234147
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019100127
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】長井 謙一
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-041625(JP,U)
【文献】特開平11-158850(JP,A)
【文献】実開昭61-071618(JP,U)
【文献】実開昭55-036274(JP,U)
【文献】特開平07-229130(JP,A)
【文献】特開2016-148235(JP,A)
【文献】特開昭63-040008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除塵装置のスクリーンフレームを水路の側壁の平面視で凹形状の溝部に取り付ける除塵装置の支持構造において、
前記スクリーンフレームのフレーム張出板と、前記溝部の下流側壁面の間に弾性体を設け
前記弾性体の取り付け面には、前記溝部の下流側壁面にアンカーを介して平板、又は下流側壁面及び水流方向に沿った壁面にアンカーを介して平面視でL字型の補強板を設けたことを特徴とする除塵装置の支持構造。
【請求項2】
前記弾性体は、ゴム、熱可塑性エラストマー、プラスチック樹脂のいずれか1つ、又は2つ以上の組み合わせを用いて形成したことを特徴とする請求項1に記載の除塵装置の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水、河川水などの流体から塵芥を捕集する回転式網枠を備えた除塵装置を水路の側壁に取り付ける支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所などのプラント設備には、海水、河川水を導いて冷却水を確保するための取水設備が配備されることがある。この取水設備には流体中に混入する塵芥などの異物を除去回収するための除塵装置も配備されている。
【0003】
図4は従来の除塵装置の斜視図である。図示のように除塵装置1は、水路を横切るように設けた左右(幅方向ともいう)一対のリンクチェーン2と、リンクチェーン2を回動させる上部及び下部スプロケットホイール3(上部スプロケットホイールは不図示)と、リンクチェーン2のリンク毎に水流方向に対して垂直又は所定角度に傾斜させたスクリーン4を備えている。
【0004】
図5は従来の除塵装置の支持構造の平面図1である。
除塵装置1は、流水圧力に耐えうるように水路に取り付けなければならないため、水路の幅方向の対向する水壁7に平面視で凹形状の溝部8を設け、この溝部8にスクリーンフレーム5に接続する支持金物を固定、支持させた構造を採用している。
溝部8は、水路をコンクリートで形成する土木工事の施工時に、水路の対向する側壁7に、地面から水路底面まで垂直方向に十数メートル連続して設けている。
この溝部8は、土木工事のコンクリート内部の基礎鉄筋の一部(スクリーンガイド6)を溝全体に渡って表面に露出させている。さらに溝の断面方向のサイズは仕上がり寸法に対して大きめに形成している。これは水路全面に大量のコンクリートを打設するため、コンクリート固化時の収縮によって機械設備を設置する寸法精度を確保することが困難なためである。
一般に大規模のコンクリート工事の精度はセンチメートル単位であるのに対し、除塵装置に要求される機械器具の設置精度はミリメートル単位といわれている。
従って、除塵装置の設置精度を確保するために、予め大きく形成された溝部8に除塵装置と接する支持金物を、前記基礎鉄筋と溶接し固定している。又は両側壁の溝部にケミカルアンカー、ドリルアンカーを施して除塵装置と接する支持金物を固定している(例えば、特許文献1に開示)。
【0005】
次に、予め大きめに形成された溝部8と除塵装置の支持金物の隙間にコンクリートを、仕上げにモルタルを充填する。このときモルタルと予め形成したコンクリート製の溝部の密着性を高めるために溝部の内面をはつり作業によって面あらしを行っている。このはつり作業は、コンプレッサーの圧縮空気を使用して対象となるコンクリートを破壊する工法や、チッピングハンマーと呼ばれるはつり装置などでコンクリート表面に小さな凹凸を形成している。
このような従来の支持構造の場合、以下のような課題が挙げられる。
A.はつり作業は人手により行われ、振動や粉塵が発生し、かつ高所作業の劣悪な作業環境となっていた。
B.はつり作業によって生じるコンクリート小片などの廃棄物の搬出や運搬作業も新たに必要となる。
C.溝部の完成精度が低い場合、除塵装置の位置ズレが生じて正常な運転に支障を来すことがあるため、位置ズレが生じないように微調整に時間を掛ける必要があった。しかも、水路の深さは約15メートルもの壁面に対して、このような作業を繰り返し行うため、かなりの手間が必要となり、除塵装置の据付金物の埋設工事に要する作業時間は設置工期の約30%を占める長時間を要していた。
【0006】
図6は従来の除塵装置の支持構造の平面図2である。前述の除塵装置の設置工期の長期化、及びはつり作業の困難性を回避するため、図示のように溝部8にジャッキ機構9を形成した除塵装置の支持構造がある。このジャッキ機構9は、除塵装置1の仮設置後、ジャッキ機構9の高さ調整によって仮設置の位置ズレを調整することができる。これにより、側壁7の溝部8の形成に高い精度を要することがなく、かつモルタル施工、はつり作業を省くことができ、さらに設置工期の短期化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-189020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ジャッキ機構を採用する支持構造は、一基の除塵装置に対して複数のジャッキ機構を取り付けて夫々のジャッキ機構に対して位置調整を行わなければならず、人手による煩雑な高所作業となっていた。
【0009】
そこで上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、除塵装置の設置作業が容易で、かつ流水圧力による装置全体の負荷を軽減できる除塵装置の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、除塵装置のスクリーンフレームを水路の側壁の平面視で凹形状の溝部に取り付ける除塵装置の支持構造において、
前記スクリーンフレームのフレーム張出板と、前記溝部の下流側壁面の間に弾性体を設け
前記弾性体の取り付け面には、前記溝部の下流側壁面にアンカーを介して平板、又は下流側壁面及び水流方向に沿った壁面にアンカーを介して平面視でL字型の補強板を設けたことを特徴とする除塵装置の支持構造を提供することにある。
上記第1の手段によれば、弾性体により溝部の完成精度に係わらず壁面の凹凸による位置ズレを解消して除塵装置のスクリーンフレームを垂直配置させることができる。また弾性体の弾性力によりスクリーンガイドや補強板に掛かる流水圧力による集中荷重を分散して、コンクリート構造物には好ましくない集中荷重を回避できる。
【0011】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、第1の手段において、前記弾性体は、水流方向と対向する前記溝部の下流側壁面に設けたことを特徴とする除塵装置の支持構造を提供することにある。
上記第2の手段によれば、流水圧力に対する剛性を高めることができ、かつスクリーンフレームの取り付け作業が容易となる。
【0012】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、第1又は第2の手段において、前記溝部は、前記弾性体の取り付け面に補強板を設けたことを特徴とする除塵装置の支持構造を提供することにある。
上記第3の手段によれば、フレーム張出板を固定する溝部の壁面を、流水圧力に耐えうる強度に高めることができる。
【0013】
上記課題を解決するための第4の手段として、本発明は、第3の手段において、前記補強板は、前記下流側壁面及び水流方向に沿った壁面に平面視でL字型に形成したことを特徴とする除塵装置の支持構造を提供することにある。
上記第4の手段によれば、流水圧力に耐えうる強度を、フレーム張出板を固定する溝部の壁面と水流方向に沿った壁面を利用して高めることができる。
【0014】
上記課題を解決するための第5の手段として、本発明は、第1ないし第4のいずれか1の手段において、前記弾性体は、ゴム、熱可塑性エラストマー、プラスチック樹脂のいずれか1つ、又は2つ以上の組み合わせを用いて形成したことを特徴とする除塵装置の支持構造を提供することにある。
上記第5の手段によれば、スクリーンガイドや補強板に掛かる流水圧力による集中荷重を分散できる弾性力、耐摩耗性、耐腐食性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溝部の完成精度に係わらず位置ズレすることなく容易に取り付けることができ、かつ従来工法よりも工程数を少なくして除塵装置の設置工期の短期化を図ることができる。
また流水圧力によるスクリーンフレーム又は溝部の集中荷重を分散して溝部又は除塵装置に掛かる負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の除塵装置の支持構造の平面図である。
図2】本発明の除塵装置の支持構造の変形例1の平面図である。
図3】本発明の除塵装置の支持構造の変形例2の平面図である。
図4】従来の除塵装置の斜視図である。
図5】従来の除塵装置の支持構造の平面図1である。
図6】従来の除塵装置の支持構造の平面図2である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の除塵装置の支持構造を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[除塵装置の支持構造10]
図1は除塵装置の支持構造の平面図である。図示のように本発明の除塵装置の支持構造10は、スクリーンフレーム5のフレーム張出板52と、側壁7の溝部8の間に弾性体20を設けている。
ここでフレーム張出板52は、スクリーンフレーム5の水流方向に沿った主面の端部を直角に折り曲げて水路の側壁7に向けて延出した箇所である。
【0018】
[弾性体20]
弾性体20は、除塵装置1のスクリーンフレーム5を側壁7の溝部8に取り付ける際に、スクリーンフレーム5のフレーム張出板52と、フレーム張出板52を取り付ける溝部8の下流側壁面82の間に挟むように配置している。弾性体20は、フレーム張出板52の主面(下流側壁面82と対向する面)に渡って連続的に、又は所定間隔(後述する所定間隔の補強板30と対向する箇所)を開けて取り付けている。また弾性体20は、溝部8の完成精度と、スクリーンフレーム5の垂直配置を考慮して、弾性体20の厚みがある場合には切削し、隙間が生じた場合にはライナー(スペーサーともいう)を挟むなどして任意に厚みを変えるようにしている。
【0019】
弾性体20は、流水圧力を受け止められる所定の弾力性、耐摩耗性、耐腐食性を備えた部材であり、材質に例えば天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム(FKM)、シリコンゴム(SR)、ウレタンゴム(PUR)、エチレンプロピレンゴム(EP)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレン酢酸ビニルゴム(EVA)、クロロプレンゴムに四フッ化エチレン樹脂をコーティングしたもの、熱可塑性エラストマー、プラスチック樹脂のうちいずれか1つ、又は2つ以上の組み合わせを適用することができる。
【0020】
[補強板30]
溝部8の内面には補強板30を設けている。補強板30は、所定強度、耐腐食性を備えたステンレス鋼などの金属製のインサートプレートである。補強板30は所定厚みの平板であって、溝部8と接する主面にアンカー32を設けている。図1に示す補強板30は、溝部8と接する主面に水流方向に沿ってアンカー32を設け、溝部8の下流側壁面82に地面から水路底面に渡って連続的に、又は所定間隔(一例として数百ミリメートル)を開けて取り付けている。この補強板30は、予め壁面のコンクリート工事施工の際に溝部8へ取り付けている。
このような補強板30により、フレーム張出板52を固定する溝部8の壁面を、流水圧力に耐えうる強度に高めることができる。
【0021】
図2は本発明の除塵装置の支持構造の変形例1の平面図である。同図に示す補強板30Aは、図1に示す補強板30と同様の機能、材質であり、溝部8の下流側壁面82及び下流側壁面82に直交する(水流方向に沿った)壁面84に沿って平面視でL字型に形成している。補強板30Aは、水流方向に沿った溝部8の壁面84と接する主面に水流方向と直交する方向に延出するアンカー32Aを設けている。この補強板30Aは、予め壁面のコンクリート工事施工の際に溝部8へ取り付けている。
このような変形例1の補強板30Aにより、流水圧力に耐えうる強度を、フレーム張出板52を固定する溝部8の下流側壁面82と水流方向に沿った壁面84を利用して高めることができる。またフレーム張出板52を固定した補強板30Aと溝部8の接触面積を大きくして、流水圧力に耐えうる強度を高めることができる。
【0022】
図3は本発明の除塵装置の支持構造の変形例2の平面図である。同図に示す支持構造は、図1,2に示す補強板を利用しないで、下流側壁面82に直接弾性体20を取り付ける構成を採用している。
このような変形例2の構成により、コンクリート工事施工の際に補強板を取り付ける作業を省いて溝部8を形成する工期の短期化を図ることができる。
【0023】
上記構成による本発明の除塵装置の支持構造の作用について以下説明する。
除塵装置1を取り付ける水路の側壁7に設ける溝部8は、従来工法と同様に形成できる。そして補強板30を採用する場合には、溝部8のコンクリート工事施工時に予め補強板30を溝部8に取り付けている。なお補強板30を採用しない溝部であっても良い。
除塵装置1を水路に設置する際は、予め弾性体20をフレーム張出板52に仮止め(接着など)しておく。そして地上でスクリーンフレーム5のフレーム張出板52を溝部8に収まるように位置合わせを行う。次に除塵装置1を地面から水路の底面に向けて下降させる。除塵装置1が底面に接した後、溝部8内のフレーム張出板52の表面側からアンカーボルトなどの締結手段を用いてフレーム張出板52を溝部8の下流側壁面82に固定する。このとき水平レベルを用いてスクリーンフレーム5を垂直に配置できるように弾性体20の厚みを微調整、弾性体20が厚い場合には切削し、あるいは弾性体20が薄く隙間が生じた場合にはライナーを咬ませて微調整しながら行う。
【0024】
このような本発明の除塵装置の支持構造によれば、従来のモルタル施工及びはつり作業を省くことができ、弾性体を介してフレーム張出板を溝部に取り付ける作業により、設置工期の短期化を図ることができる。
また溝部とフレーム張出板の間に設けた弾性体により、流水圧力による集中荷重を分散でき、溝部又は除塵装置に掛かる負荷を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、プラントなどの取水設備における塵芥を捕集する回転式網枠を備えた除塵装置の支持構造として特に有用である。
【符号の説明】
【0026】
1………除塵装置、2………リンクチェーン、3………スプロケットホイール、4………スクリーン、5………スクリーンフレーム、52………フレーム張出板、6………スクリーンガイド、7………側壁、8………溝部、82………下流側壁面、84………壁面、9………ジャッキ機構、10………除塵装置の支持構造、20………弾性体、30,30A………補強板、32,32A………アンカー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6