IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社関ヶ原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-移動枕木加工機 図1
  • 特許-移動枕木加工機 図2
  • 特許-移動枕木加工機 図3
  • 特許-移動枕木加工機 図4
  • 特許-移動枕木加工機 図5
  • 特許-移動枕木加工機 図6
  • 特許-移動枕木加工機 図7
  • 特許-移動枕木加工機 図8
  • 特許-移動枕木加工機 図9
  • 特許-移動枕木加工機 図10
  • 特許-移動枕木加工機 図11
  • 特許-移動枕木加工機 図12
  • 特許-移動枕木加工機 図13
  • 特許-移動枕木加工機 図14
  • 特許-移動枕木加工機 図15
  • 特許-移動枕木加工機 図16
  • 特許-移動枕木加工機 図17
  • 特許-移動枕木加工機 図18
  • 特許-移動枕木加工機 図19
  • 特許-移動枕木加工機 図20
  • 特許-移動枕木加工機 図21
  • 特許-移動枕木加工機 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】移動枕木加工機
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/24 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
E01B31/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018056645
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167743
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593206986
【氏名又は名称】株式会社関ヶ原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 太治
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 智也
(72)【発明者】
【氏名】二反田龍治
(72)【発明者】
【氏名】安田 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】今岡 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】吉野 太加志
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297886(JP,A)
【文献】特開2008-291430(JP,A)
【文献】特開2017-203258(JP,A)
【文献】特開2007-146366(JP,A)
【文献】特開2006-045832(JP,A)
【文献】米国特許第02825372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕木に支持された一対のレール上を走行可能な台車と、
前記台車における、前記一対のレール間の部位において、仮想水平面に沿って旋回可能に支持された旋回ユニットとを備え、
前記旋回ユニットは、
前記台車に旋回可能に支持された支持体と、
前記支持体に対して上下動自在に支持された加工機保持体と、
前記加工機保持体に保持されていて、下方に位置する枕木を加工する加工機とを備え、
加工対象の枕木が、前記レールに対して直交した状態を基準にして、直角ずれがあった際には、その直角ずれに応じて前記旋回ユニットを旋回して、前記加工対象の枕木に対して、前記加工機保持体を下方へ移動させて前記加工機により加工可能とした移動枕木加工機。
【請求項2】
前記加工対象の枕木は、前記台車の走行方向及び反走行方向にそれぞれ面する一対の側面を有しており、
前記支持体には、可動操作体を上下動自在に支持し、
前記可動操作体には、位置決め体が設けられており、
前記位置決め体には、前記可動操作体により下降した際に、前記加工対象の枕木の前記一対の側面を挟む挟み部を有している請求項1に記載の移動枕木加工機。
【請求項3】
前記位置決め体は、前記可動操作体に対して着脱自在に連結されているとともに、
前記挟み部は、前記一対の側面の傾斜角度に合わせた当接面を備えている請求項2に記載の移動枕木加工機。
【請求項4】
前記台車には、複数の反力受け部材を前記一対のレールに対してそれぞれ当接及び離間させる反力受け装置を備え、
前記反力受け部材が、前記一対のレールに対して当接した時には、前記加工機による前記加工対象の枕木の加工時の反力を受ける請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の移動枕木加工機。
【請求項5】
前記反力受け装置は、前記一対のレールが相互に相対する部位に対して、前記反力受け部材を当接離間可能に移動可能としている請求項4に記載の移動枕木加工機。
【請求項6】
前記台車には、前記旋回ユニットの旋回を規制する旋回規制部を備えた請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の移動枕木加工機。
【請求項7】
前記加工機はドリルである請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の移動枕木加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を移動可能であって、レール下方に位置する枕木を穿孔する移動枕木加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
レール上を移動可能であって、レール上方からレール下方に位置する枕木を穿孔するドリルを備えた移動枕木加工機は、例えば、特許文献1で公知である。
特許文献1では、車輪を有する台車がレール上を移動可能とし、前記台車に一対の支柱が立設されるとともに、各支柱には、旋回可能に支柱支持部が設けられている。前記支柱支持部は、支柱に対して旋回自在に連結されたスライドガイドと、該スライドガイドに対して摺動自在に設けられたスライドバーを有している。前記スライドバーには、ドリルを上下右方向に移動自在に支持するドリル支持部材が設けられている。
【0003】
特許文献1の移動枕木加工機では、枕木の穿孔部位にドリルが相対するようにスライドガイドを旋回させて前記スライドバーを摺動させた後、前記ドリルを下降させて前記穿孔部位を穿孔する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-203258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、枕木は、レールが延びる方向に対して直交する方向に配置されるのが通常である。しかし、場合によっては、枕木がレールが延びる方向とは直交した状態とならず、枕木がレールに対し直交した状態を基準にして直角ずれが生ずることがある。
【0006】
特許文献1では、この直角ずれが生じた枕木を穿孔する場合、直角ずれに合わせて、スライドガイドを旋回したり、スライドバーを摺動して行うことになるが、ドリルを直角ずれした枕木に相対させるための作業が多くて面倒である。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、枕木に直角ずれがあった場合、加工機を直角ずれした枕木に相対させるための作業を容易に行うことができる移動枕木加工機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明の移動枕木加工機は、枕木に支持された一対のレール上を走行可能な台車と、前記台車における、前記一対のレール間の部位において、仮想水平面に沿って旋回可能に支持された旋回ユニットとを備え、前記旋回ユニットは、前記台車に旋回可能に支持された支持体と、前記支持体に対して上下動自在に支持された加工機保持体と、前記加工機保持体に保持されていて、下方に位置する枕木を加工する加工機とを備え、加工対象の枕木が、前記レールに対して直交した状態を基準にして、直角ずれがあった際には、その直角ずれに応じて前記旋回ユニットを旋回して、前記加工対象の枕木に対して、前記加工機保持体を下方へ移動させて前記加工機により加工可能としたものである。
【0009】
上記構成によれば、加工対象の枕木が前記レールに対して直交した状態を基準にして、直角ずれがあった際には、その直角ずれに応じて旋回ユニットを旋回する。そして、加工対象の枕木に対して、加工機保持体を下方へ移動させて加工機により加工する。
【0010】
また、前記加工対象の枕木は、前記台車の走行方向及び反走行方向にそれぞれ面する一対の側面を有しており、前記支持体には、可動操作体を上下動自在に支持し、前記可動操作体には、位置決め体が設けられており、前記位置決め体には、前記可動操作体により下降した際に、前記加工対象の枕木の前記一対の側面を挟む挟み部を有していてもよい。
【0011】
上記構成によれば、加工対象の枕木を穿孔する前に、可動操作体を下方へ移動させて、位置決め体の当接面で前記加工対象の枕木を挟み込みする。この枕木に対する位置決め体の挟み込みにより、旋回ユニットの旋回位置が保持されて位置決めされる。
【0012】
また、前記位置決め体は、前記可動操作体に対して着脱自在に連結されているとともに、前記挟み部は、前記一対の側面の傾斜角度に合わせた当接面を備えていてもよい。
上記構成によれば、加工対象である枕木の挟み部にて挟まれる面の傾斜角度は、異なるものもあるため、枕木の位置決め体にて挟まれる面の傾斜角度に合わせた当接面を有する挟み部を備えた位置決め体が可動操作体に取付けられる。この枕木の側面の傾斜角度に合わせた当接面を有する挟み部にて、加工対象の枕木を挟み込みすることにより、旋回ユニットの旋回位置が保持されて良好な位置決めが行われる。
【0013】
また、前記台車には、複数の反力受け部材を前記一対のレールに対してそれぞれ当接及び離間させる反力受け装置を備え、前記反力受け部材が、前記一対のレールに対して当接した時には、前記加工機による前記加工対象の枕木の加工時の反力を受けるようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、反力受け部材が、一対のレールに対して当接させた状態で、加工機により枕木に加工が行われたとき、レールに対して当接した反力受け部材が加工機の加工時の反力を受ける。
【0015】
また、前記反力受け装置は、前記一対のレールが相互に相対する部位に対して、前記反力受け部材を当接離間可能に移動可能としてもよい。
上記構成によれば、一対のレールが相互に相対する面に対して、反力受け部材を当接させた状態とすると、加工機にて枕木に加工が行われた際、反力受け部材が加工機の加工時の反力を受ける。
【0016】
また、前記台車には、前記旋回ユニットの旋回を規制する旋回規制部を備えていてもよい。上記構成によれば、直角ずれに応じて、旋回ユニットを旋回する場合、旋回規制部により、前記直角ずれ以上の旋回ユニットの旋回を規制する。
【0017】
また、前記加工機はドリルとしてもよい。
上記構成によれば、加工機をドリルとすることにより、枕木を穿孔する場合においても、上記の作用を容易に実務源することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、枕木に直角ずれがあった場合、加工機を直角ずれした枕木に相対させるための作業を容易に行うことができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の移動枕木加工機の斜視図。
図2】一実施形態の移動枕木加工機の正面図。
図3】一実施形態の移動枕木加工機の側面図。
図4】一実施形態の移動枕木加工機の平面図。
図5】台車の平面図。
図6】台車と旋回ユニットの連結構造の側面図。
図7図6の7-7線断面図。
図8】(a)及び(b)は保持体固定ピンの作用を示す説明図。
図9】位置決め部の退避状態の側面図。
図10】位置決め部の退避状態の正面図。
図11】位置決め部の位置決め状態の側面図。
図12】位置決め部の位置決め状態の正面図。
図13】反力受け部の側面図。
図14】(a)は反力受け部の要部拡大図、(b)は反力受け部材の側面図。
図15】反力受け部の操作部材の反力受け解除位置の説明図。
図16】反力受け部の反力受け作動位置の説明図。
図17】ベース体の平面図。
図18】加工機保持体の平面図。
図19】(a)は、加工対象の枕木が直角ずれしていない状態のときの移動枕木加工機の概略説明図、(b)及び(c)は加工対象の枕木が直角ずれした状態のときの移動枕木加工機の概略説明図。
図20】(a)は旋回規制部の平面図、(b)は旋回規制部の側面図。
図21】枕木を穿孔している状態の移動枕木加工機の側面図。
図22】枕木を穿孔している状態の移動枕木加工機の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態の移動枕木加工機を図1図22を参照して説明する。
図1に示すように、移動枕木加工機10は、平行に多数整列された枕木19に支持された一対の平行なレール13上に載置され、レール13上を移動する。なお、本実施形態では、レール13を枕木19に対して固定する締結装置は省略して図示されている。
【0021】
図1図3に示すように枕木19は、例えばPC(プレストレスコンクリート)枕木、或いはRC(鉄筋コンクリート)枕木である。PC枕木や、RC枕木は、内部には長手方向に複数の鋼材、ピアノ線等が平行に配置されている。
【0022】
枕木19は、図9に示すように上辺が可変よりも長い等脚台形状の断面を有していて前後の側面19a、19bを含む仮想平面が相互に交差したときに、交差角θを有する斜面となっている。側面19a、19bは、後述する台車20の走行方向及び反走行方向にそれぞれ面する側面に相当する。交差角θの1/2が、枕木19の長手方向に沿って延びる中心を含む鉛直面Hに対する側面19a、19bの傾斜角度となる。
【0023】
移動枕木加工機10は、走行方向(以下、走行方向及びそれと反対の反走行方向を「前後方向」という。)にレール13上を走行自在とした台車20と、台車20に対して旋回自在に配置した旋回ユニット70とを備えている。なお、前後方向及び上下方向に対してそれぞれ直交する方向を左右方向という。
【0024】
(台車20)
図1図5に示すように、台車20は、左右一対の走行体12と、両走行体12間を連結する四角形状をなす連結枠体14とを備えている。
【0025】
走行体12は、前後方向に延びる左右一対の外側板12a、内側板12b、両側板12a、12bを連結する天板12c、両側板12a、12bの前端間及び後端間を連結する前部端板12d、後部端板12eとにより、有蓋四角箱状をなしている。
【0026】
左右に配置された各走行体12の前部及び後部の両側板12a、12b間には、車輪11が回動自在に支持されて、レール13上を走行可能としている。
車輪11は、鉄道の軌道に準拠した車輪であり、素材は、絶縁性が高く、強度の高い、例えばエンジニアプラスチックなどポリアミド(PA)や、ポリアセタール(POM)などの樹脂製で、レール13に流れる駆動用の電流や通信・信号用の電流を遮断する。また、図5に示すように、本実施形態では、左方に配置した走行体12の前端には、ブレーキ装置15が付設されており、このブレーキ装置15の操作ハンドル15aを手動操作することにより、該走行体12の前部側の車輪11の走行停止保持及び走行停止の解除が可能である。
【0027】
図5に示すように、連結枠体14は、一対の走行体12の内側板12b間を連結する一対の枠部材14a、14bと、枠部材14a、14bの左右両端間を連結する一対の枠部材14c、14dとにより構成されている。
【0028】
また、図6に示すように、枠部材14a、14bの左右方向の中央部間には、支持板16が水平となるように架設されている。支持板16において、左右方向及び前後方向の中央部には軸受17が設けられている。軸受17には、支持板16の上方に位置する旋回ユニット取付板18が仮想水平面に沿って旋回自在に軸支されている。なお、軸受17の中心線O(すなわち、旋回ユニット取付板18の旋回中心線、図5参照)と両レール13迄のそれぞれの離間距離は両レール13の軌間の1/2の距離としている。旋回ユニット取付板18の上面には、旋回ユニット70がボルト等により着脱自在に取付けられている。
【0029】
(反力受け装置30A、30B)
図5図13図15に示すように、枠部材14aの前面、及び枠部材14bの後面には、取付板31a、31bが固定され、各取付板31a、31bには反力受け装置30A、30Bがそれぞれ設けられている。なお、両反力受け装置30A、30Bは、同一構成であるため、反力受け装置30Aについて説明をすることとし、反力受け装置30Bにおいて、反力受け装置30Aの構成部材と同一の部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図13及び図15に示すように、反力受け装置30Aは、回転部材32、ラチェット歯車34、ラチェット解除レバー35、ラチェット爪36、連結リンク37、直動ロッド38、可動部材45、及び反力受け部材55等を備えている。
【0031】
回転部材32は、取付板31aの前面の左右方向の中央部に対して回転自在に軸支されていて、上方へ延出された操作レバー33を有している。操作レバー33は、反力受け操作方向(図15において、時計回り方向)及び反力受け解除方向(図15において、反時計回り方向)に操作可能である。図5に示すようにラチェット歯車34は、回転部材32と同軸となるように取付板31a、31bに固定されている。
【0032】
図15に示すようにラチェット解除レバー35は、回転部材32の取付板31a、31b側の側面に対して、回転自在に軸支され、その軸支点よりも下端には、ラチェット歯車34に噛合可能なラチェット爪36が上下方向に揺動自在に軸支されている。ラチェット爪36の側面には、ラチェット解除レバー35の下端側面に形成された上下方向に延びる長孔(図示しない)に挿入されたピン(図示しない)が突設されている。ラチェット爪36は、前記ピンが前記長孔の許容する範囲で上下方向に揺動自在である。
【0033】
ラチェット解除レバー35の操作端と、操作レバー33の基端近傍の部位間には、引張バネ41が掛け渡されている。引張バネ41は、ラチェット解除レバー35を、図13において、反時計回り方向へ付勢している。この結果、ラチェット爪36は、ラチェット解除レバー35の前記長孔(図示しない)の上端が前記ピンを介してラチェット歯車34に対して噛合する方向(以下、反時計回り方向という)へ前記引張バネ41によって付勢されている。
【0034】
ラチェット解除レバー35の操作端は、操作レバー33の操作端の延出方向とは、30~40度程度離間する方向(操作レバー33の反時計回り方向へ寄った方向)へ延出されている。なお、このラチェット解除レバー35の操作端と操作レバー33の操作端の延出方向とのなす角度は前記数値に限定するものではない。
【0035】
図13図15図16に示すように、直動ロッド38は、回転部材32をはさんで、左右一対設けられていて、互いに同一の長さを有するとともに取付板31a、31bに固定されたガイド部材42に対して左右方向に摺動自在に支持されている。
【0036】
各直動ロッド38の基端は、相互に同一長さを有する連結リンク37を介して回転部材32にそれぞれ連結されている。すなわち、各連結リンク37は、回転部材32に対して回転部材32の軸支点を挟んで互いに180度反対の部位に軸支されている。
【0037】
図15に示すように、操作レバー33は、各連結リンク37の操作レバー33との軸支点が、回転部材32の軸支点を挟んでそれぞれ鉛直方向において、上下に位置するところまで反時計回り方向へ操作可能となっている。このときの操作レバー33の位置を、反力受け解除位置という。また、このときの直動ロッド38の位置を最後退位置という。
【0038】
操作レバー33は、図15に示す反力受け解除位置から図16に示すように、取付板31aに設けられたストッパ39に係止される反力受け作動位置まで、時計回り方向へ操作された際には、連結リンク37を介して、直動ロッド38を、最後退位置から最進出位置まで移動可能になっている。
【0039】
なお、操作レバー33を操作する際は、ラチェット解除レバー35を引張バネ41の付勢力に抗して、反ラチェット噛合方向(時計回り方向)に予め操作する。この反ラチェット噛合方向(時計回り方向)の操作により、前記長孔(図示しない)の下端が前記ピンを介してラチェット爪36は、噛合解除方向(時計回り方向)へと揺動されて、ラチェット歯車34との噛合が解除される。このようにラチェット歯車34に対するラチェット爪36の係合が解除された後、操作レバー33の操作を行う。
【0040】
なお、操作レバー33の上記操作後、ラチェット解除レバー35の人による操作力が解除されると、ラチェット解除レバー35は、引張バネ41の付勢力により、噛合方向(反時計回り方向)に回転され、ラチェット歯車34に対してラチェット爪36が係合されることにより、操作レバー33の現状の位置が保持される。
【0041】
図14(a)に示すように各直動ロッド38の先端面にはガイド部43が突出されている。また、直動ロッド38の先端外周面には、雄ネジ部38aが形成されてガイド部43を覆うガイド筒44が螺着されている。ガイド筒44には、可動部材45の基端部46が左右に摺動自在に挿入されている。
【0042】
可動部材45は、基端側から順に大径の基端部46、中径の中間部47及び小径の取付部48を備えている。基端部46の端面には、ガイド部43を左右方向へ摺動自在に挿入するガイド孔45aを備えている。中間部47は、ガイド筒44の先端面を貫通した貫通孔44aに対して左右方向に摺動自在に貫通配置されている。
【0043】
可動部材45の取付部48は先端側へ突出した雄ネジ部49が形成されている。取付部48には、中間部47と取付部48間の段に係止されたリング状のバネ座金51、一対の挟着部材52及び反力受け部材55が取付部48にそれぞれ挿通されている。そして、反力受け部材55は雄ネジ部49に螺合されたナット50が雄ネジ部49に締め付けられることより、一対の挟着部材52を介して挟着固定されている。
【0044】
図14(a)に示すように、直動ロッド38の雄ネジ部38aの基端近傍には、フランジ38bが形成され、フランジ38bとガイド筒44の基端部間は、リング状のバネ座金61が挟着されている。バネ座金51、61間には、ガイド筒44を覆う圧縮バネ62が配置されていて、圧縮バネ62により、可動部材45は先端側へ常時付勢されている。
【0045】
圧縮バネ62は、直動ロッド38が最進出位置に位置して反力受け部材55が例えば、1063~1092mmの範囲の軌間のレール13の上部に当接した状態で蓄力され、このときの付勢力により、枕木19を穿孔する時の反力を受けても、移動枕木加工機10が浮き上がらない抗力を発生するように設定されている。
【0046】
可動部材45は、基端部46と中間部47間の段部により、貫通孔44aを有するガイド筒44の内底面に係止されて、可動部材45の先端部側への摺動が規制されるようにされている。この規制により、ガイド部43がガイド孔45aから抜け出ないようにされている。
【0047】
また、可動部材45の基端部側(フランジ38b側)への移動は、バネ座金51がガイド筒44の先端面に係止されるまで可能となっている。なお、可動部材45の基端部側(フランジ38b側)への移動は、ガイド部43の先端に、ガイド孔45aの内底面が係止されるまでとしてもよい。
【0048】
また、可動部材45は、操作レバー33が図15に示す反力受け解除位置に位置して直動ロッド38が最後退位置に位置した際、圧縮バネ62の付勢により、基端部46と中間部47間の段部がガイド筒44の内底面に係止された状態に維持されて、反力受け部材55がレール13の上部から離間した状態になるように配置されている。
【0049】
図14(a)、図14(b)に示す反力受け部材55は、剛性を有する金属製からなり、形状は限定しないが、本実施形態では、四角板状をなしていて可動部材45の取付部48を貫通する貫通孔56を有する基端部57と、基端部57から下方へ延出された先端部58とを有している。なお、貫通孔56の内周には、取付部48と絶縁するための絶縁材からなるリング部材59が内嵌されていて、リング部材59に取付部48が挿通されている。また、挟着部材52も、絶縁材からなる。上記のようにして反力受け部材55と可動部材45間が電気的に絶縁されている。
【0050】
反力受け部材55の先端部58はレール13の上部に相対するように下方へ延出されている。該先端部58のレール13と対向する部位には、絶縁材からなる当接部材60が取付固定されている。当接部材60のレール対向面は、セレーション加工等により粗面が形成されている。
【0051】
(旋回規制部65)
図4図5図20(a)及び図20(b)に示すように、台車20の枠部材14a上において、軸受17から一方のレール13に寄った位置と、該一方のレール13と平行な他方のレール13に寄った位置に旋回規制部65がそれぞれ設けられている。旋回規制部65は、後述する旋回ユニット70を平面視した場合において、旋回ユニット70の時計回り方向及び反時計回り方向の旋回をそれぞれ規制する。具体的には、図20(a)、及び図20(b)に示すように、旋回規制部65は、枠部材14a上に固定されたアングル状の固定部材66と、固定部材66の上部に固定されたナット部材67に対して旋回ユニット70の枠材88側面に対して接近離間可能に螺合されたボルト部材68を備えている。ボルト部材68は、旋回ユニット70が旋回した際に旋回ユニット70の枠材88側面に当接してその旋回を規制する。なお、枠材88において、ボルト部材68の先端が当たる部位にはボルト当て座88aが設けられている。
【0052】
(旋回ユニット70)
図1図4図6図8に示すように、旋回ユニット70は、支持体80、前記支持体80に設けられた加工機保持体100、加工機保持体100に保持された加工機としてのドリル120A、120Bを備えるとともに、図2に示すように、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bを備えている。なお、図1には、説明の便宜上、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの図示は省略されている。ドリル120A、120Bは、本実施形態では、電動ドリルである。
【0053】
(支持体80)
図1図2に示すように支持体80は、旋回ユニット取付板18に取付け固定されたベース体81と、ベース体81から上方へ立設されるとともに左右方向に並んだ第1支柱82、第2支柱83、及び第3支柱84と、各支柱の上端間を連結するように架設された上部枠85とを備えている。
【0054】
図17に示すように、ベース体81は、旋回ユニット取付板18に対して着脱自在にボルト86aにて固定されたベース板86と、ベース板86に対して固定された枠体87とを備えている。
【0055】
枠体87は、ベース板86の前後両端部の上面に対して固定されて左右方向に延出され、かつ、相互に平行に配置された一対の枠材88と、枠材88の左右両端部間を連結する一対の枠材89、90とを有していて、四角枠状に形成されている。枠材88は、断面四角形状となっている。図6に示すように、一対の枠材88は、軸受17を間にして、前後に配置されている。
【0056】
図1及び図17に示すように、第1支柱82は、枠材89の前後方向(枠材89の長手方向)の略中央部に対して取付固定されている。図6図7及び図17に示すように、第2支柱83は、ベース板86に対し取付部材91を介して固定されている。
【0057】
図17に示すように、第1支柱82及び第2支柱83は、その中心線O1、O2が、軸受17の中心線Oと平行となるように、かつ、軸受17の中心線Oとともに、仮想水平面に対して直交し、かつ、前記仮想水平面に含まれる共通の直線L(図17参照)を通過するように配置されている。図17に示すように第1支柱82及び第2支柱83は、それぞれ四角筒状をなしていて、図2図21に示すようにその右側面には上下方向に延出したラック92が固定されている。一対のラック92の歯のピッチは相互に同じに設定されている。図1図2及び図17に示すように第3支柱84は、枠材90の前後方向(枠材90の長手方向)の略中央部に対して取付固定されている。
【0058】
(加工機保持体100及びドリル120A、120B)
図18に示すように加工機保持体100は、前後に配置された一対の側板101、102を複数の連結材103にて前後の間隔を開けて略四角箱状に形成された支持ケース104と、支持ケース104に固定されて、第1支柱82及び第2支柱83に上下方向に移動自在に外嵌された第1箱体105及び第2箱体106とを有する。
【0059】
第1箱体105は、支持ケース104の左側部に配置された連結材103に対して一体に固定されている。第2箱体106は、支持ケース104の内の連結材103に対して一体に固定されている。
【0060】
図18に示すように第1箱体105及び第2箱体106には、前後方向に延出されて、回動自在に支持された回動軸107、108を有している。回動軸107、108には、ラック92に噛合する図示しない相互に同じ歯数のピニオンがそれぞれ一体に固定されている。
【0061】
回動軸107、108において、第1箱体105、第2箱体106からそれぞれ前方へ貫通した前端には、相互に同一径を有する第1プーリ109、第2プーリ110が固定されている。第1プーリ109、第2プーリ110との間には、ベルト112が巻回されている。また、第1プーリ109と第2プーリ110間にはベルト112をガイドする中間プーリ111が設けられている。
【0062】
第1プーリ109及び第2プーリ110は、ベルト112を介して同じ速度(回転数)で回転し、すなわち、各ラック92に噛合するピニオンがそれぞれ同速度で回転し、第1箱体105及び第2箱体106の昇降速度を同じとしている。ベルト112は、本実施形態では、例えば、タイミングベルトとしているが、タイミングベルトに限定するものではなく、他の種類のベルトとしてもよい。
【0063】
また、回動軸108の前端は、さらに側板101を貫通して、側板101の外部に突出した部位には、昇降操作ハンドル113が固定されている。昇降操作ハンドル113が回動操作されることにより、回動軸108、及びベルト112を介して回動軸107が同期回転される。
【0064】
加工機保持体100において、支持ケース104の内側面には、一対のドリル120A、120Bが固定されている。図18に示すように、ドリル120A、120Bは、平面視した場合、軸受17(軸受17の中心O)を中心に左右対称の位置に位置するように相互に離間して配置されるとともに、ドリル120A、120Bのチャックに取着されたドリルビット122、123が、下方へ指向するように配置されている。
【0065】
図18に示すように、ドリル120A、120Bの回転中心O3、O4(すなわち、ドリルビット122、123の回転中心)は、前記直線Lと直交する。
なお、直線Lは、図19(a)~図19(c)では、旋回ユニット70の旋回状態を示す指標として使用する。
【0066】
図1図2図3図8(a)及び図8(b)に示すように加工機保持体100の側板101には、保持体固定ピン93が前後方向に移動自在に貫通支持されて第2支柱83の前側面に相対して配置されている。具体的には、図8(a)、図8(b)に示すように側板101の内側面には、ピン支持部材94が固定され、ピン支持部材94と側板101の貫通孔94a、101aに保持体固定ピン93が前後方向に摺動自在に貫通した状態で支持されている。
【0067】
また、保持体固定ピン93は、第2支柱83の前側面に対して相対するように配置されている。保持体固定ピン93には、バネ座95が固定され、バネ座95と、側板101間には、保持体固定ピン93を保持体固定ピン93側に付勢する付勢バネとしての圧縮コイルバネ96が巻装されている。保持体固定ピン93の側板101から前方の部位には、側板101の前側面に係止可能なフランジ97が一体に設けられている。このフランジ97が許容する範囲で、保持体固定ピン93は、第2支柱83の前側面において、保持体固定ピン93が相対する部位に設けられた嵌合孔83aに対して係脱可能に嵌合となっている。
【0068】
図8(a)に示すように、保持体固定ピン93が嵌合孔83aに嵌合した場合、図1図2に示すように、加工機保持体100が最上昇位置に保持可能となっている。加工機保持体100の最上昇位置は、図1図3に示すように、ドリル120A、120Bのドリルビット122、123が、レール13よりも上方に配置される位置である。
【0069】
また、保持体固定ピン93が、第2支柱83の嵌合孔83aから外された場合、昇降操作ハンドル113の操作により、図21及び図22に示すように、加工機保持体100が最下降位置まで下方へ移動することが可能となっている。加工機保持体100の最下降位置は、図21及び図22に示すように、ドリル120A、120Bのドリルビット122、123が、レール13よりも下方に位置する枕木19に対して貫通可能な位置である。
【0070】
図1に示すように、側板101の前側面上部において、左端側よりには、操作ボックス160が設けられていて、操作ボックス160にはドリル120A、120Bのオンオフするスイッチが設けられている。
【0071】
(位置決め)
図2図9図10及び図17に示すようにベース体81の両枠材88において、左端下部間、及び右端下部間には、それぞれ一対のブラケット131を介して、支持板132が水平に架設されている。左右に配置された各支持板132には、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bが設けられている。
【0072】
第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの両枠材88に対する配置は、直角ずれが生じた穿孔対象の枕木19に対して位置決め可能な位置としている。なお、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bは、同一構成であるため、第1位置決め部130Aについて説明をすることとし、第2位置決め部130Bにおいて、第1位置決め部130Aの構成部材と同一の部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図9図12に示すように第1位置決め部130Aは、可動操作体135と、可動操作体135に取付けられた位置決め体136を備えている。
可動操作体135は、長方形状をなす枠体138を備えている。枠体138は、上下に延びる一対の縦枠139と、両縦枠139の上下両端を連結する横枠140から構成されている。一対の縦枠139は、左右に配置されて平行に設けられており、支持板132上面に固定された一対の支持筒141及び支持板132の挿通孔(図示しない)に対して上下方向に摺動自在に挿通されている。枠体138の上部の横枠140には、把手142が設けられている。
【0074】
図9図12に示すように枠体138の下部の横枠140の下面には、略直方体をなす位置決め体取付部材143が固定されている。
図9及び図11に示すように位置決め体取付部材143の下面には、位置決め体136を取付けする取付凹部144が設けられている。
【0075】
また、位置決め体取付部材143の前後側面には、取付凹部144にそれぞれ開口する貫通孔が形成され、トグルピン等の取付ピン145が着脱自在に貫通されている。図9図11に示すように取付ピン145の基端は、横枠140に連結されたチェーン146と連結されており、取付ピン145が位置決め体取付部材143から取外されたときの紛失が防止されている。
【0076】
取付凹部144には、位置決め体136に設けられた取付突部150が嵌入された状態で、前記取付ピン145が取付突部150の貫通孔に挿通されることにより、位置決め体136が位置決め体取付部材143に取付支持されている。
【0077】
このため、位置決め体136は、取付ピン145を位置決め体取付部材143から取外すことにより、側面19a、19bの交差角θが異なる種類の枕木に合わせた、交差角を有する後述の当接部材149を有する位置決め体136と取り替え可能となっている。
【0078】
図9図11に示すように位置決め体136は、前後方向に延出した支持バー147と、支持バー147の前後両端に対して固定されて下方へ延出された一対のアーム148と、一対のアーム148において、相互に対向する対向面に対してボルト等により着脱自在に取付けられた当接部材149を備えている。
【0079】
支持バー147の上面において、前後方向の中央部には、上方へ延びる取付突部150を有した吊下げ部材151が固定されている。
前後に位置する一対のアーム148及び一対の当接部材149は、支持バー147の前後方向の中心を含む鉛直面に対して面対称となるように配置されている。当接部材149は、ゴム、合成樹脂等からなる。また、一対の当接部材149の相対する面は、枕木19の側面19a、19bに対して当接可能な当接面としていて、側面19a、19bを含むそれぞれの仮想平面が相互に交差した場合に交差角θとなる斜面となっている。すなわち、両当接部材149の当接面の交差角は、枕木19の前後の側面19a、19bの交差角θと同一とされていて、すなわち、一対の側面の傾斜角に合わせたものとなっている。アーム148及び当接部材149により、挟み部が構成されている。
【0080】
図9及び図11に示すように、両縦枠139において、支持板132の下方に位置する部位間には、連結板154が架設され、その上部からは、上方へ延びる突出片155が形成されている。突出片155は、支持板132に形成された透孔156(図9図17参照)を介して、支持板132から上方へ突出可能に配置されている。
【0081】
支持板132の上面において、透孔156の近傍には、上方へ延びる保持部材157が固定されており、透孔156を上方へ通過した突出片155が相対可能となっている。また、保持部材157には、固定ピン158が、左右方向へ移動自在に支持されている。固定ピン158は、左右方向に移動することにより、突出片155に設けられた保持孔159(図11参照)に対して係脱可能となっている。
【0082】
図9図10に示すように固定ピン158が、突出片155の保持孔159に係入され状態では、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bは、位置決め体136が待機位置に位置することが可能である。
【0083】
第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bが待機位置に位置していると図10に示すように位置決め体136は、レール13よりも上方に位置する。
また、固定ピン158が保持孔159から脱したときは、第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの位置決め体136は、レール13よりも下方に位置する枕木19の側面19a、19bの上部に当接可能としている。
【0084】
具体的には、横枠140が支持筒141に係止された状態の第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの位置が最下降位置とされており、位置決め体136が枕木19の側面19a、19bの上部に当接するときの位置は、最下降位置との間となるように縦枠139の長さが設定されている。
【0085】
(実施形態の作用)
上記のように構成された移動枕木加工機10の作用を説明する。
説明の便宜上、旋回ユニット70は、レール13に対して直交している(すなわち、図19(a)に示すように、直線Lが、レール13に対して直交している)状態であって、台車20に対して非旋回状態となっている。また、加工機保持体100が保持体固定ピン93により、最上昇位置に保持されているとともに、反力受け装置30A、30Bの操作レバー33は、反力受け解除位置にあるものとする。また、旋回ユニット70(直線L)をレール13に対して直交するよう配置して、旋回規制部65のボルト部材68により、予めその旋回を規制しておくものとする。
【0086】
なお、図19(a)~図19(c)では、レール全体は図示せず、その代わりにレールを示す符号「13」をレールの中心線に付し、また、穿孔対象の枕木には符号「19A」を付すとともに台車20の代表として走行体12を示している。また、レール13に直交したときの枕木19Aの中心線の位置をM1で示す。
【0087】
<1.走行ステップ>
まず、旋回ユニット70(直線L)が枕木19Aの長手方向(左右方向)の中心と旋回ユニット70(軸受17)の中心線Oと一致するまで、移動枕木加工機10を走行(移動)させる。
【0088】
<2.ブレーキ操作ステップ>
そして、枕木19Aの長手方向(左右方向)の中心と旋回ユニット70(軸受17)の中心線Oと一致した状態で、ブレーキ装置15を手動操作して、走行停止保持する。
【0089】
<3.けがきステップ>
次に、作業者は、枕木19Aの穿孔位置を図示しないけがき用工具でけがく。
<4.けがき位置の確認ステップ>
作業者は、保持体固定ピン93を、第2支柱83の嵌合孔83aから外した後、昇降操作ハンドル113の操作により、図21及び図22に示すように、加工機保持体100を下方へ移動させて、ドリルビット122、123を穿孔位置と合わせる。
【0090】
ここで、図19(a)に示すように、枕木19Aが、レール13と直交している場合、すなわち、旋回ユニット70(直線L)と枕木19Aの中心線M1が同一仮想平面上にあることになる。
【0091】
この場合、旋回規制部65のボルト部材68を操作して図20(b)に示すように旋回ユニット70の旋回を規制した後、後述する<6.位置決め及び反力受け準備ステップ>以下を実行する。
【0092】
また、図19(b)に示す状態、または図19(c)に示す状態の場合は、<5.旋回ユニット70の旋回ステップ>を行う。図19(b)に示す状態は、枕木19Aがレール13に直交しているときの中心線M1の位置から時計回り方向に直角ずれしている場合であり、このときの枕木19Aの中心線をM2で示している。図19(c)に示す状態は、枕木19Aがレール13に直交しているときの中心線M1の位置から反時計回り方向に直角ずれしている場合であり、このときの枕木19Aの中心線をM3で示している。
【0093】
<5.旋回ユニット70の旋回ステップ>
ここでは、図20(a)及び図20(b)に示す旋回規制部65のボルト部材68を操作して、旋回ユニット70の旋回規制を解除した後、旋回ユニット70(直線L)を直角ずれした枕木19Aの中心線M2、または中心線M3に合わせるように、旋回させる。
【0094】
旋回ユニット70(直線L)を直角ずれした枕木19Aの中心線M2、または中心線M3に合致した後は、旋回規制部65のボルト部材68を操作して図20(b)に示すように旋回ユニット70の旋回を規制する。
【0095】
<6.位置決め及び反力受け準備ステップ>
<6-1.位置決めステップ>
図11に示すように、待機位置にあった第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの各固定ピン158を突出片155の保持孔159から抜いて、位置決め体136をそれぞれ下降させて、枕木19A(19)の側面19a、19bに位置決め体136の両当接部材149を当接させる(図11図12図21図22参照)。
【0096】
<6-2.反力受け準備ステップ>
次に、図13図15に示す第1位置決め部130A及び第2位置決め部130Bの操作レバー33を反力受け解除位置から、図16に示すように、反力受け作動位置まで移動させる。これにより、図13に示すようにレール13から離間していた反力受け部材55は、当接部材60を介して図16に示すようにレール13の上部に当接する。
【0097】
このとき、反力受け部材55は当接した状態となって、圧縮バネ62が蓄力され、このときの付勢力により、枕木19を穿孔する時の反力を受けても、移動枕木加工機10が浮き上がらない抗力を発生可能となる。
【0098】
<7.加工ステップ>
上記のステップの終了した後、ドリルビット122が、けがき位置が合っていることを確認した後、操作ボックス160のスイッチをオン操作するとともに、昇降操作ハンドル113を下降操作することにより、ドリル120A、120Bにより、枕木19A(19)を穿孔する。
【0099】
以後、図21図22に示すように、ドリルビット122、123が穿孔を完了した場合は、作業者は、操作ボックス160のスイッチをオフ操作して、ドリル120A、120Bの作動を停止させる。そして、作業者は昇降操作ハンドル113を昇降操作して、加工機保持体100を最上昇位置に位置させると、加工機保持体100は、保持体固定ピン93が圧縮コイルバネ96により第2支柱83の嵌合孔83aに対して嵌合されてその位置が保持される。
【0100】
この後、反力受け装置30A、30Bの操作レバー33を反力受け解除位置へ位置させると、レール13から、反力受け部材55が離間した状態となる。また、作業者は、第1位置決め部130A、及び第2位置決め部130Bの把手142を持って待機位置まで上方へ移動させた後、固定ピン158を突出片155の保持孔159に係合させて、その位置を保持する。
【0101】
なお、枕木19A(19)に対してドリル120A、120Bによる加工終了後に行われる各種操作の順番は、上記した順に限定するものではなく、適宜の順で行ってもよい。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
【0102】
(1)本実施形態の移動枕木加工機10は、枕木19A(19)に支持された一対のレール13上を走行可能な台車20と、台車20における、一対のレール13間の部位において、仮想水平面に沿って旋回可能に支持された旋回ユニット70とを備えている。旋回ユニット70は、台車20に旋回可能に支持された支持体80と、支持体80に対して上下動自在に支持された加工機保持体100と、加工機保持体100に保持されていて、下方に位置する枕木19A(19)を加工するドリル120A、120B(加工機)とを備えている。加工対象の枕木19A(19)が、レール13に対して直交した状態を基準にして、直角ずれがあった際には、その直角ずれに応じて旋回ユニット70を旋回して、加工対象の枕木19A(19)に対して、加工機保持体100を下方へ移動させてドリル(加工機)120A、120Bにより加工可能としている。
【0103】
上記構成によれば、加工対象の枕木がレールに対して直交した状態を基準にして、直角ずれがあった際には、その直角ずれに応じて旋回ユニットを旋回することができる。その結果、加工対象の枕木に直角ずれがあった場合にも、加工機保持体を下方へ移動させて加工機により加工することができる。
【0104】
特に、枕木19A(19)がPC枕木、RC枕木等の場合には、内部には長手方向に複数の鋼材、ピアノ線等が平行に配置されている。このため、これらの鋼材、ピアノ線等を切断しないように加工する必要がある。例えば、直角ずれの枕木に対して、旋回ユニットを直角ずれに合わせて旋回しない状態で、ドリルで穿孔すると枕木中の鋼材、ピアノ線等を切断する可能性が大となり、好ましくない。
【0105】
(2)本実施形態では、加工対象の枕木19A(19)は、台車20の走行方向及び反走行方向にそれぞれ面する一対の側面19a、19bを有している。
これに対して本実施形態の移動枕木加工機10では、支持体80には、可動操作体135を上下動自在に支持し、可動操作体135には、位置決め体136が設けられている。そして、位置決め体136には、可動操作体135により下降した際に、加工対象の枕木19A(19)の一対の側面19a、19bを挟む挟み部を有している。
【0106】
上記構成によれば、加工対象の枕木を穿孔する前に、可動操作体を下方へ移動させて、位置決め体の当接面で前記加工対象の枕木を挟み込みする。この枕木に対する位置決め体の挟み込みにより、旋回ユニットの旋回位置が保持されて位置決めできる。
【0107】
(3)本実施形態の移動枕木加工機10では、位置決め体136は、可動操作体135に対して着脱自在に連結されているとともに、前記挟み部は、枕木19A(19)の一対の側面19a、19bの傾斜角度に合わせた当接面を有している。
【0108】
上記構成によれば、加工対象である枕木では、挟み部にて挟まれる面の傾斜角度は、一定ではなく、異なる物もあるため、枕木の位置決め体にて挟まれる面の傾斜角度に合わせた位置決め体136を可動操作体135に対して、取付けられる。この枕木の側面の傾斜角度に合わせた当接面を有する挟み部により、加工対象の枕木を挟み込みすることにより、旋回ユニットの旋回位置が保持されて良好な位置決めを行うことができる。
【0109】
(4)本実施形態の移動枕木加工機10では、台車20には、複数の反力受け部材55を一対のレール13に対してそれぞれ当接及び離間させる反力受け装置30A、30Bを備えている。そして、反力受け部材55が、一対のレール13に対して当接した時には、ドリル120A、120B(加工機)による加工対象の枕木19A(19)の加工時の反力を受けることができる。この結果、移動枕木加工機10が、枕木19A(19)を加工する際に浮き上がることはない。
【0110】
(5)本実施形態では、反力受け装置30A、30Bは、一対のレール13が相互に相対する部位に対して、反力受け部材55を当接離間可能に移動可能としている。上記構成によれば、反力受け装置30A、30Bにより、一対のレール13が相互に相対する面に対して、反力受け部材55を当接させた状態とすると、ドリル120A、120B(加工機)にて枕木19A(19)に加工が行われた際、反力受け部材55が加工機の加工時の反力を受けることができる。
【0111】
(6)本実施形態では、台車20には、旋回ユニット70の旋回を規制する旋回規制部65を備えている。この結果、直角ずれに応じて、旋回ユニット70を旋回する場合、旋回規制部65により、前記直角ずれ以上の旋回を規制することができる。
【0112】
(7)本実施形態では、加工機はドリルとしている。この結果、本実施形態では、上記(1)~(6)の作用効果を加工機としてドリルに実現した場合にも容易に享受できる。
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
【0113】
・前記実施形態では、旋回ユニット70(直線L)をレール13に対して直交するよう配置して、旋回規制部65のボルト部材68により、予めその旋回を規制するようにした。しかし、この方法は、一例であって、「1.走行ステップ」、「2.ブレーキステップ」及び「3.けがきステップ」においては、旋回ユニット70(直線L)をレール13に対して直交していなくてもよい。すなわち、旋回ユニット70を任意の旋回位置で保持するように旋回規制部65により規制していてもよい。
【0114】
・反力受け部材55の先端部58を、基端部57から下方に延出する代わりに、基端部57から上方へ延出し、反力受け装置30A、30Bを前記実施形態よりも下方へ配置してもよい。
【0115】
このように構成した場合、反力受け装置30A、30Bは、反力受け作動位置へ操作レバー33を位置させて、直動ロッド38が最進出位置へ移動すると、先端部58は、当接部材60を介して、レール13の上部に当接することができる。なお、この場合、可動部材45の雄ネジ部49の長さは、直動ロッド38が最進出位置へ移動した場合、レール13に干渉しないように短くするものとする。
【0116】
・前記実施形態では、ドリル120A、120Bは、平面視した場合、軸受17を中心に左右対称の位置に位置するように相互に離間して配置したが、枕木19に対する穿孔位置に合わせて、ドリル120A、120Bの取付位置を変更してもよい。
【0117】
・ドリル120A、120Bは、ドリルビット122、123に替えて、サンダーやリーマ、ドライバビットなどを装着してもよい。さらに、加工機保持体100は、ドリル120A、120Bに替えて、電動ハンマ、ハンマドリル、振動ドリル、インパクトドライバなどを取付してもよい。
【0118】
・移動枕木加工機10に、駆動装置を備えて、自走式の構成としてもよい。
・車輪11は、4輪に限らず、6輪など適宜変更してもよい。
・加工機としてのドリルは、2個としたが、1個でもよく、或いは3個以上としてもよい。
【0119】
・ドリル120A、120Bは電動ドリルに限定されず、蓄電式のドリルでもよく、さらにエンジン式のドリルなどでもよい。また、加工対象を照らす照明や、穿孔屑を除去したり、切削油を供給したり、穿孔位置を特定するガイドなど付加的な構成を採用してもよい。
【0120】
・反力受け装置30A、30Bを省略し、代わりに、台車20(例えば走行体12)上に重りを載せて、反力受け装置30A、30Bの反力受けを代替してもよい。また、反力受け装置30A、30Bを省略しないで、さらに、台車に重りを載せてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10…移動枕木加工機、11…車輪、12…走行体、12a…外側板、
12b…内側板、12c…天板、12d…前部端板、12e…後部端板、
13…レール、14…連結枠体、14a、14a、14b、14c、14d…枠部材、
15…ブレーキ装置、15a…操作ハンドル、16…支持板、17…軸受、
18…旋回ユニット取付板、19、19A…枕木、19a、19b…側面、
20…台車、30A、30B…反力受け装置、
31a、31b…取付板、32…回転部材、33…操作レバー、
34…ラチェット歯車、35…ラチェット解除レバー、36…ラチェット爪、 37…連結リンク、38…直動ロッド、38a…雄ネジ部、
38b…フランジ、39…ストッパ、41…引張バネ、42…ガイド部材、
43…ガイド部、44…ガイド筒、44a…貫通孔、45…可動部材、
45a…ガイド孔、46…基端部、47…中間部、48…取付部、
49…雄ネジ部、50…ナット、51…バネ座金、52…挟着部材、
55…反力受け部材、56…貫通孔、57…基端部、58…先端部、
59…リング部材、60…当接部材、61…バネ座金、62…圧縮バネ、
65…旋回規制部、66…固定部材、67…ナット部材、68…ボルト部材、 70…旋回ユニット、80…支持体、81…ベース体、82…第1支柱、
83…第2支柱、84…第3支柱、85…上部枠、86…ベース板、
87…枠体、88…枠材、89…枠材、90…枠材、91…取付部材、
92…ラック、93…保持体固定ピン、94…ピン支持部材、
94a…貫通孔、95…バネ座、96…圧縮コイルバネ、97…フランジ、
100…加工機保持体、101、102…側板、103…連結材、
104…支持ケース、105…第1箱体、106…第2箱体、
107、108…回動軸、109…第1プーリ、110…第2プーリ、
111…中間プーリ、112…ベルト、113…昇降操作ハンドル、
120A、120B…ドリル(加工機)、122、123…ドリルビット、
130A…第1位置決め部、130B…第2位置決め部、
131…ブラケット、132…支持板、135…可動操作体、
136…位置決め体、138…枠体、138…枠体、139…縦枠、
140…横枠、141…支持筒、142…把手、
143…位置決め取付部材、144…取付凹部、145…取付ピン、
146…チェーン、147…支持バー、147a…取付突部、
148…アーム、149…当接部材、150…取付突部、
151……吊下げ部材、154…連結板、155…突出片、156…透孔、
157…保持部材、158…固定ピン、159…保持孔、
160…操作ボックス、L…直線(旋回ユニットの旋回状態を示す指標)、
M1…レールに直交したときの枕木の中心線の位置、
M2、M3…レールに直交した状態から直角ずれが生じたときの枕木の中心線の位置、O…軸受17の中心線、O1…第1支柱82の中心線、
O2…第2支柱83の中心線、O3…ドリル120Aの回転中心、
O4…ドリル120Bの回転中心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22