(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】熱物性測定装置の針状プローブ
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
G01N25/18 G
(21)【出願番号】P 2017124325
(22)【出願日】2017-06-26
【審査請求日】2020-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000161932
【氏名又は名称】京都電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】仲間 栄元
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊英
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-310604(JP,A)
【文献】特開平05-119002(JP,A)
【文献】特開昭55-134346(JP,A)
【文献】特開昭57-029941(JP,A)
【文献】実開昭55-036319(JP,U)
【文献】米国特許第09182364(US,B1)
【文献】特開平02-249961(JP,A)
【文献】特公昭47-000978(JP,B1)
【文献】特開昭63-120245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状管にヒータと熱電対を挿入した熱物性測定装置のプローブにおいて、
前記ヒータと熱電対以外の占める空間に
高熱伝導率物質を充填し、前記ヒータに、先端に切欠を設けた複数本の絶縁管を数珠繋ぎに挿通した
ことを特徴とする熱物性測定装置の針状プローブ。
【請求項2】
前記高熱伝導率物質がアルミナの10~200μmの粒子である請求項1に記載の熱物性測定装置の針状プローブ。
【請求項3】
前記ヒータの一方の端を針状管の内面先端に接続し、当該針状管と前記ヒータの他方の端との間で、給電する請求項1に記載の熱物性測定装置の針状プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率測定装置のプローブに関し、特に、針状プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱線法による熱伝導率の測定は、均質な試料の中に張られたヒータ線に所定の値の電流を印加し、その印加開始後から所定の時刻t1 におけるヒータ線の近傍の試料の温度T1 と、これよりも更に一定時間経過した時刻t2 における上記試料の温度T2 を熱電対によって測定し、該2つの温度T1 ,T2 とに基づいて式(1)に従って熱伝導率λを計測する方法である。
【0003】
【数1】
ここで、qはヒータ線の単位時間、単位長さ当たりの発熱量である。
【0004】
この細線加熱法によれば、これらq,t1 ,t2 ,T1 ,T2 から直接に熱伝導率λを求めることができ、又、ヒータ線に電流を印加してから数秒~200秒の短い時間で測定でき、その間の試料の温度上昇も20℃程度に止まるので、熱伝導率の温度依存性が大きい試料に対して非常に有効な測定法である。更に、測定時間が短く、試料の比較的狭い部分だけが加熱されるので、求められる熱伝導率としては試料表面近くの組成、構造に対応した値が得られる。
【0005】
当該熱線法を実現するプローブとして、特開平09-210933号公報に開示するように、平面にヒータを張り、その近傍に熱電対よりなる温度計を配置する平面型と、特開2000-310604号公報に開示するように、細い管体内に前記ヒータと熱電対を仕込んだ針状型がある。
【0006】
針状型は、被検体に突き刺して簡単に測定できるところから、比較的柔らかい試料、例えば発泡性の断熱材、溶融プラスチック等の液状試料、粉末試料、土壌のような比較的柔らかい試料の熱伝導率を測定するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-310604号公報
【文献】特開平09-210933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
針状型のプローブは、上記のように柔らかい試料に差し込んで使用するには便利である。しかしながら、ヒータや熱電対が装填された管の内部は、空洞部分が多くこの部分が熱伝導を妨げる要因になるので、比較的熱伝導率の小さい物質が試料であるときの使用には耐えることができるが、金属、流体等比較的熱伝導率が高い物質が試料であるときには、誤差が大きくなる、あるいは測定不能となる場合がある。すなわち、従来のこの種のプローブを用いての測定可能な熱伝導率の上限は0.1W/(m・K)であった。
【0009】
さらに、液体のように流動性のある試料では、ヒータで加熱している間に対流が発生すると、熱電対で測定している位置が相対的に変化することになるので、対流が発生しない間の迅速な測定が必要となる。ところが、前記したように管体内に空洞があると、プローブ内での迅速な熱伝導が得られないので、精度の高い測定ができなくなる。
【0010】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、熱伝導率が比較的高い物質、あるいは液体のように加熱によって対流の発生する物質の熱伝導率でも精度よく測定できる針状プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、針状管にヒータと熱電対を挿入した熱伝導率測定装置のプローブにおいて、前記ヒータと熱電対以外の占める空間に高熱伝導率物質を充填した構成とした。
【0012】
前記高熱伝導率物質はアルミナの10~200μmの粒子が最適である。前記ヒータには、先端に切欠を設けた複数本の絶縁管を数珠繋ぎ挿通する。これによって、前記アルミナの粒子が、前記切欠を介して絶縁管内にも充填されることになる。また、前記ヒータの一方の端を針状管の先端に接続し、当該針状管と前記ヒータの他方の端との間で、給電する。これによって、ヒータを針状管内で折り返す必要がなくなる。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によって、針状管の内部の空気層が熱伝導率の高いアルミナに置き換わり、針状管自体の熱伝導率をあげることになる。その結果、合成樹脂等、比較的熱伝導率の小さい物質ばかりでなく、金属やセラミックス等の熱伝導率の高い物質の熱伝導率も精度よく測定することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の全体図を示すものであり、
図2は
図1の先端半分の拡大図であり、更に、
図3は、絶縁材の拡大図である。
【0016】
針状管(例えば外径1.6mm、内径1.4mmのSUS管)10内に、ヒータ20と熱電対(温度センサ)30が挿入される点は従来の構成と全く同じである。
【0017】
前記ヒータ20と熱電対30以外の空間にはアルミナ50の微粒子が充填される。当該微粒子は前記ヒータ20と熱電対30が針状管10に挿入された後に、針状管10の開口端から充填されるので、粒径に関する課題をクリアする必要がある。
【0018】
すなわち、粒径が小さいほど、共存する空気層が少なくなり熱伝導率は大きくなり、本願の目的に沿うことになるが、逆に流動性が小さくなる。粒子径が10μm以下では流動性が極めて悪いので、針状管10に充填しようとしても針状管10の開口端付近で詰まってしまって、内奥にまでの充填ができない。粒子径が200μmを超えると、粒子の流動性は十分であるが、共存する空気の体積が大きくなり充填率が下がり、それに伴って熱伝導率が下がることになる。より好ましくは30~120μmである。
【0019】
前記ヒータ20は一方の端が針状管10の内部先端に固着されており、他方の端と前記針状管10との間で電力を供給する構成になっている。針状管10の内部では針状管10とヒータ20の接触を避ける必要上、ヒータに絶縁がなされる。このときに使用される絶縁材21は石英等の管であるが、内径が1.6mmの針状管10に入れる管であるので、外径は1.0mm以下に限定される。前記アルミナの粒子は、絶縁材21としての管の内部も充填される必要がある。ところが、絶縁材21として、1本の長い管材を使用したのでは、アルミナの粒子は当該管材の入り口付近に詰まって、内部まで十分に充填されないことになる。そこで、複数の短い管材21a、21b・・を数珠繋ぎにヒータ20に貫挿する。加えて各管材21a、21b・・の端部に切欠22a、22b・・を設けておく。
【0020】
これによって、針状管10を振動させながら、前記したようにアルミナの粒子を充填させていくと、アルミナの粒子は針状管10の内部に落下して内部に充填されるとともに、前記切欠22a、22b・・を介してヒータ20と短い管材21a、21b・・の間の空間にも充填されることになる。
【0021】
尚、上記のように針状管10にアルミナが充填された後は、当該針状管10の開口端付近に接着剤が充填され、封止するようになっている。
【0022】
図3は、本発明を用いた熱伝導率測定装置の概要を示すものである。針状プローブの針状管10を被検体に装着する。この状態で、電流制御部41は演算手段40からの指示に基づいて、適正な電流をヒータ20に流す。これによって、被検体の温度は上昇することになるが、このときの時間t
1、t
2における温度T
1、T
2を、温度変換部42で得る。演算手段40は、その結果に基づいて前記式(1)を演算する。
【0023】
演算結果は表示部43で表示できるようになっている。
【0024】
上記アルミナ微粉の粒径を75μm(充填率92%)としたときの、各種被検体についての測定結果を表1に示す。これにより従来、針状管プローブでは困難であった熱伝導率が0.1 W/(m・K)以上の石英ガラス、セラミックス(ジルコニア、ムライト)でも、精度よく測定することができる。
【0025】
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように本発明は、高い熱伝導率の被検体であっても簡単に精度よく測定することができるので金属やセラミックス等の熱伝導率を測定するのに最適である。
【符号の説明】
【0027】
10・・針状管
20・・ヒータ
21a、21b・・絶縁材
22a、22b・・切欠
30・・熱電対
40・・演算手段
41・・電流制御部
42・・温度変換部
43・・表示部