(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】光アイソレータモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/27 20060101AFI20220309BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G02B6/27 301
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2017247167
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野代 卓司
(72)【発明者】
【氏名】今野 良博
(72)【発明者】
【氏名】杉村 彰紀
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206628(JP,A)
【文献】特開平07-287137(JP,A)
【文献】特開2009-198649(JP,A)
【文献】米国特許第05706371(US,A)
【文献】中国実用新案第204496045(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウケイ酸ガラス又は石英製の基板の面上に溝が形成され、
その溝に少なくとも2個以上の偏光子と1個以上のファラデー回転子で構成された光アイソレータ素子が傾斜して配置され、
ファラデー回転子の2つの光学面に対して面対向で少なくとも1個以上の偏光子がそれぞれ配置され、
偏光子と対向して2つのV溝が溝を介して形成され、2つのV溝の長手方向が同軸であると共に深さが同一であり、
外径の異なる第1のグレーデッドインデックス光ファイバと第2のグレーデッドインデックス光ファイバが2つのV溝内にそれぞれ配列されて、第1のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸と第2のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸の間に、V溝の深さ方向に高低差が形成され、
各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面は光軸に対して垂直に形成され、
相対的に太い外径の第1のグレーデッドインデックス光ファイバに光が伝搬され平行光に変換されて出射され、次に光アイソレータ素子に平行光が入射されて光路が変更され、
次に相対的に細い外径の第2のグレーデッドインデックス光ファイバに平行光が入射されて更にシングルモード型光ファイバに伝搬され、
各グレーデッドインデックス光ファイバの長さが、グレーデッドインデックス光ファイバを伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定され、
第2のグレーデッドインデックス光ファイバのクラッドと、シングルモード型光ファイバのクラッドが同一材料であり、
光アイソレータ素子を伝搬する平行光の径が85μm以上100μm以下であ
り、
各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面に対する光アイソレータ素子の傾斜角度が1.5度以上3.5度以下であり、
第1のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が125μmであり、第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が118.5μmであり、
高低差が3.8μm以上8.9μm以下であり、
光アイソレータ素子が2個の偏光子と1個のファラデー回転子で構成され、
2個の偏光子の厚みが共に0.2mmであると共にファラデー回転子の厚みが0.42mmである光アイソレータモジュール。
【請求項2】
前記第1のグレーデッドインデックス光ファイバが、伝搬される光の発光源と直接、光学的に接続されており、発光源と対向する前記第1のグレーデッドインデックス光ファイバの光入射端面と発光源が、前記第1のグレーデッドインデックス光ファイバのコアの屈折率と整合した接着剤によって接合されている請求項1に記載の光アイソレータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンター用のアプリケーションとして、大きなビットレートを扱う高速光トランシーバーが注目されている。更に高速なビットレートが求められると多くの波長を利用する為、より高密度な波長間隔グリッドが必要となる。そのため情報通信産業で用いられている平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)の使用が考えられている。
【0003】
そこで調芯箇所を増やすこと無くPLCに光学的に接続可能であり、高い光アイソレーションを実現できる光アイソレータモジュールとして、特許文献1が出願されている。
【0004】
特許文献1中の
図20~
図22に係る光アイソレータモジュール(光ファイバブロック)は、入力側のグレーデッドインデックス(GI:Graded Index)光ファイバ(以下、GIF)を固定するV溝の幅W1と、出力側のGIFを固定するV溝の幅W2とを変えている。各V溝の幅W1とW2を変える事で、対向するGIFどうしを高さ方向にずらして配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1中の
図20~
図22に係る光アイソレータモジュールでは、2つのV溝の幅を変更する事で、対向するGIFどうしの高さ方向に於ける光軸調節を行っていた。従って、GIFの光軸間の位置決めを、GIFの径寸法に対してより大きなV溝の幅の制御によって行う必要があった。よって、各V溝を所望の幅に形成する加工工程に過大な精密さが要求され、光アイソレータモジュールの製造コストの高騰を招いていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、製造コストを削減する事が出来る光アイソレータモジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち本発明の光アイソレータモジュールは、ホウケイ酸ガラス又は石英製の基板の面上に溝が形成され、その溝に少なくとも2個以上の偏光子と1個以上のファラデー回転子で構成された光アイソレータ素子が傾斜して配置され、ファラデー回転子の2つの光学面に対して面対向で少なくとも1個以上の偏光子がそれぞれ配置され、偏光子と対向して2つのV溝が溝を介して形成され、2つのV溝の長手方向が同軸であると共に深さが同一であり、外径の異なる第1のグレーデッドインデックス光ファイバと第2のグレーデッドインデックス光ファイバが2つのV溝内にそれぞれ配列されて、第1のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸と第2のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸の間に、V溝の深さ方向に高低差が形成され、各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面は光軸に対して垂直に形成され、相対的に太い外径の第1のグレーデッドインデックス光ファイバに光が伝搬され平行光に変換されて出射され、次に光アイソレータ素子に平行光が入射されて光路が変更され、次に相対的に細い外径の第2のグレーデッドインデックス光ファイバに平行光が入射されて更にシングルモード型光ファイバに伝搬され、各グレーデッドインデックス光ファイバの長さが、グレーデッドインデックス光ファイバを伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定され、第2のグレーデッドインデックス光ファイバのクラッドと、シングルモード型光ファイバのクラッドが同一材料であり、光アイソレータ素子を伝搬する平行光の径が85μm以上100μm以下であり、各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面に対する光アイソレータ素子の傾斜角度が1.5度以上3.5度以下であり、第1のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が125μmであり、第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が118.5μmであり、高低差が3.8μm以上8.9μm以下であり、光アイソレータ素子が2個の偏光子と1個のファラデー回転子で構成され、2個の偏光子の厚みが共に0.2mmであると共にファラデー回転子の厚みが0.42mmである事を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光アイソレータモジュールに依れば、製造コストを削減する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態及び実施例に係る光アイソレータモジュールを模式的に示す正面図である。
【
図2】(a)
図1の光アイソレータモジュールの平面図である。(b)
図1の光アイソレータモジュールの左側面図である。(c)
図1の光アイソレータモジュールの右側面図である。
【
図3】
図1の光アイソレータモジュールの斜視図である。
【
図4】(a)
図1の光アイソレータモジュールを構成する基板の平面図である。(b)
図4(a)の基板の正面図である。(c)
図4(a)の基板の左側面図である。
【
図5】
図4の基板の溝に、光アイソレータ素子を配置する状態を示す斜視図である。
【
図6】光アイソレータ素子が配置された
図4の基板のV溝に、グレーデッドインデックス光ファイバ及びシングルモード型光ファイバを配列する状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の光アイソレータモジュールを構成する、第1のグレーデッドインデックス光ファイバとシングルモード型光ファイバ、及び第2のグレーデッドインデックス光ファイバとシングルモード型光ファイバの、各外径を示す側面図である。
【
図8】
図1の光アイソレータモジュールに於ける、2つのグレーデッドインデックス光ファイバ間と光アイソレータ素子での光の伝搬光路を示す説明図である。
【
図9】
図1の光アイソレータモジュールに於ける、2つのグレーデッドインデックス光ファイバ間と光アイソレータ素子での光の伝搬状態を示す説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータモジュールとPLCとの接合状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態の第一の特徴は、ホウケイ酸ガラス又は石英製の基板の面上に溝が形成され、その溝に少なくとも2個以上の偏光子と1個以上のファラデー回転子で構成された光アイソレータ素子が傾斜して配置され、ファラデー回転子の2つの光学面に対して面対向で少なくとも1個以上の偏光子がそれぞれ配置され、偏光子と対向して2つのV溝が溝を介して形成され、2つのV溝の長手方向が同軸であると共に深さが同一であり、外径の異なる第1のグレーデッドインデックス光ファイバと第2のグレーデッドインデックス光ファイバが2つのV溝内にそれぞれ配列されて、第1のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸と第2のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸の間に、V溝の深さ方向に高低差が形成され、各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面は光軸に対して垂直に形成され、相対的に太い外径の第1のグレーデッドインデックス光ファイバに光が伝搬され平行光に変換されて出射され、次に光アイソレータ素子に平行光が入射されて光路が変更され、次に相対的に細い外径の第2のグレーデッドインデックス光ファイバに平行光が入射されて更にシングルモード型光ファイバに伝搬され、各グレーデッドインデックス光ファイバの長さが、グレーデッドインデックス光ファイバを伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定され、第2のグレーデッドインデックス光ファイバのクラッドと、シングルモード型光ファイバのクラッドが同一材料であり、光アイソレータ素子を伝搬する平行光の径が85μm以上100μm以下であり、各グレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面に対する光アイソレータ素子の傾斜角度が1.5度以上3.5度以下であり、第1のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が125μmであり、第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径が118.5μmであり、高低差が3.8μm以上8.9μm以下であり、光アイソレータ素子が2個の偏光子と1個のファラデー回転子で構成され、2個の偏光子の厚みが共に0.2mmであると共にファラデー回転子の厚みが0.42mmである光アイソレータモジュールとした事である。
【0012】
この構成に依れば、2つのV溝を同じ高さに設定し、基板の材料をホウケイ酸ガラス又は石英製とする事により、切削加工に於ける治具の刃を一定の高さのみに設定して、1回の治具の送り加工により2つのV溝の形成を完了させる事が可能となる。よって、光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。
【0013】
更に、1つの平板状の基板に2つのV溝を形成する事で、基板の外形を生かして1回の測定のみで2つのV溝の高さ(即ち、基板の表面からの底部の深さ)を導出する事が可能となる。従ってこの点でも、光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。
【0014】
また、第1又は第2のグレーデッドインデックス光ファイバの各光入出射端面を、光軸に対して垂直に形成する事により、各光入出射端面での光の屈折が防止される。従って、屈折に伴う第1及び第2のグレーデッドインデックス光ファイバ間での光軸調節工程を皆無とする事が可能になる。更に第1及び第2のグレーデッドインデックス光ファイバ間での円周方向における位置決めも不要となって、製造工程数が削減される。よって更に、光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。
【0015】
また、第2のグレーデッドインデックス光ファイバのクラッドと、シングルモード型光ファイバのクラッドを同一材料で形成する事により、更に光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。
【0016】
また、2つのV溝を同じ深さに設定しているので、グレーデッドインデックス光ファイバ間のコア軸どうしの高低差に伴う光軸調節を、V溝幅に比べてより小さな寸法である第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径で調節する事が可能となる。コア軸どうしの光軸調節と云う極めて精密な調節工程を、より細径な光学部品である第2のグレーデッドインデックス光ファイバの細径化で速やかに行う事が出来る為、光アイソレータモジュールの製造時間と製造コストを削減する事が可能となる。
【0017】
なお本発明に於いて「光学面」とは、偏光子及びファラデー回転子間の境界面を指し、光学表面とも云う。
【0019】
更にこの構成に依れば、挿入損失(IL:Insertion Loss)の確実な低減化を実現する事が出来る。更に、光アイソレータ素子を2個の偏光子と1個のファラデー回転子で構成する事により、光アイソレータ素子を構成する光学素子の個数を削減する事が可能となる。従って、この点でも更に光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。
【0021】
更にこの構成に依れば、第1及び第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径と、平行光の径が設定された光アイソレータモジュールであっても、2つのグレーデッドインデックス光ファイバ間のより確実な光学的結合が実現可能となる。
【0022】
本実施の形態の第二の特徴は、第1のグレーデッドインデックス光ファイバが、伝搬される光の発光源と直接、光学的に接続されており、発光源と対向する第1のグレーデッドインデックス光ファイバの光入射端面と発光源が、第1のグレーデッドインデックス光ファイバFのコアの屈折率と整合した接着剤によって接合されている光アイソレータモジュールとした事である。
【0023】
この構成に依れば、第1のグレーデッドインデックス光ファイバと発光源を直接、光学的に接続させる事で、光アイソレータモジュールの製造コストを削減する事が出来る。また、発光源に直接光学的に接続可能となるので、発光源との間での光軸の調節箇所と光軸調節工程の増加が防止された光アイソレータモジュールを実現する事が可能となる。
【0024】
以下、本発明の第1の実施の形態について、
図1~
図9を参照して説明する。なお、各図のX軸、Y軸、Z軸は全ての図に於いて対応しているものとする。第1の実施形態に係る光アイソレータモジュール1は、ホウケイ酸ガラス又は石英製の平板状の基板2を備える。その基板2の面上には、
図4に示す様に断面が凹状の溝2aがY軸方向と平行に形成されていると共に、2つのV溝2b、2cが溝2aを介してX軸方向を長手方向として形成される。2つのV溝2b、2cの長手方向は同軸である。更に2つのV溝2b、2cの深さ(即ち-Z軸方向に於ける各V溝2b、2cの底部2b1、2c1の位置)は同一に設定されている。
【0025】
なお本発明に於けるV溝とは、
図2(b)、
図2(c)、及び
図4(c)に示す様に、X軸方向から見た時に断面がV字形に形成された溝である。また、V溝2b又は2cの各底部2b1、2c1での開口角は、本発明の実施形態では60度に設定している。
【0026】
図1、
図2、及び
図5に示す様に、溝2aには光アイソレータ素子3が傾斜角度θで以て斜めに配置される。光アイソレータ素子3は、少なくとも2個以上の偏光子と1個以上のファラデー回転子で構成される。光アイソレータモジュール1では、光アイソレータ素子3は2個の偏光子3a、3bと1個のファラデー回転子3cで構成される。
【0027】
光アイソレータモジュール1の光アイソレータ素子3は偏光依存型の光学素子であり、2枚の偏光子3a、3bの偏光透過方向の相対角度が約45度になるように対面配置されている。それらの偏光子3a、3bの間には、飽和磁場内で所定の波長に於いてファラデー回転角が約45度となる厚みを有するファラデー回転子3cが1枚配置されている。従ってファラデー回転子3cの2つの光学面に対して面対向で、少なくとも1個以上の偏光子3a又は3bがそれぞれ配置される。光アイソレータ素子3は順方向(+X軸方向)の光を通過させ、一方で逆方向(-X軸方向)の光を遮断させる作用を有する。なお本発明に於いて「光学面」とは、偏光子3a、3b及びファラデー回転子3c間の境界面を指し、光学表面とも云う。
【0028】
光アイソレータ素子3に於ける偏光子3a、3bとファラデー回転子3cは、それぞれ平面形状が正方形に成形されているが、例えばY軸方向がX軸方向に対して長辺となる長方形に成形されても良い。
【0029】
ファラデー回転子3cは強磁性体材料が好適で、希土類鉄ガーネット系の単結晶が使用可能である。この場合、
図1~
図3に示す様に、磁石が無い状態で約45度のファラデー回転角を示す自己飽和型の希土類鉄ガーネット系の単結晶などを用いる事で磁石を廃する事が可能となる。従って、部品点数が削減出来て好ましい。
【0030】
或いは、光アイソレータ素子3の近傍に磁石を配置して、飽和磁場をファラデー回転子に印加しても良い。
【0031】
光アイソレータ素子3は、ファラデー回転子となる磁気光学結晶板の両面に、偏光子となる2枚の偏光板を、互いの偏向方向を調節しながら光学接着剤等で積層体の基板体を作製する。次にその積層体を切断して、複数で任意の個数の光アイソレータ素子3を切り出して製造すれば良い。
【0032】
光アイソレータ素子3が溝2aに配置された状態では、各V溝2b、2cはそれぞれ偏光子3a又は3bと対向して形成される事になる。更に2つのV溝2b、2c内にそれぞれ、第1のグレーデッドインデックス光ファイバ4a(以下、必要に応じてGIF4a又は光ファイバ4aと表記)と第2のグレーデッドインデックス光ファイバ5a(以下、必要に応じてGIF5a又は光ファイバ5aと表記)が配列される。GIF4a又は5aは、中心の屈折率が高く外側に向かって緩やかに低くなるように屈折率分布を調整したコアと、クラッドから構成される。
【0033】
GIF4aと5aの外径は
図7に示す様に互いに異なっており、GIF4aの外径d4aが、GIF5aの外径d5aに比べてより大きく形成されている。従って、これらGIF4aと5aが各V溝2b又は2cの2つの斜面に2点接触で配列されると
図8に示す様に、相対的に細いGIF5a側のコア軸ca2が、GIF4a側のコア軸ca1の軸位置と比較して-Z軸方向に配列され、コア軸ca1とca2間に、V溝2b及び2cの深さ方向に高低差Hが形成される。
【0034】
GIF5aはエッチング液中に浸漬され、エッチングにより細径化される。エッチング液には一例として、フッ化アンモニウム(NH4F)・フッ酸(HF)・純水(H2O)の混合水溶液、又は過酸化水素水(H2O2)を混合したものを用いれば良い。コアを非エッチング箇所としてコア径はそのままに維持しながら、クラッド径のみエッチングしてGIF5aの細径化を行う。GIF4aの外径d4aは125μmに設定されると共に、一方のGIF5aの外径d5aは前記エッチングにより118.5μmに細径化される。
【0035】
また各GIF4a及び5aの各光入出射端面は、
図7に示す様に光軸oaに対して垂直に形成される。また、各GIF4a及び5aの各光入出射端面と、光アイソレータ素子3との間は、図示しない光学接着剤で封止される。光学接着剤としては、各GIF4a及び5aのコア部分の屈折率と整合する屈折率を有する接着剤を用いる事とし、例えば紫外光(波長200nm~400nm)により硬化する樹脂製の光学接着剤が好適である。
【0036】
図7より、各GIF4a又は5aの長さX軸方向(即ち、光軸oa方向)に於ける長手方向の長さL4a又はL5aは、各GIF4a又は5aを伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定される。
【0037】
更に、偏光子3a、3bと対向しない各GIF4a又は5aの端部には、シングルモード(SM:Single Mode)型の光ファイバ4b又は5bが接合されている(以下、必要に応じて単に、光ファイバ4b又は光ファイバ5bと表記)。光ファイバ4aと4bの端部どうし又は光ファイバ5aと5bの端部どうしは、接着剤又は融着により接合されている。接着剤としては、各光ファイバのコアの屈折率と整合する屈折率を有する接着剤を用いれば良い。光ファイバ4b又は5bには、例えば石英系光ファイバを用いる事が出来る。また各光ファイバ4b又は5bの外径は、接合される各GIF4a又は5aと同一外径である、125μm又は118.5μmに設定される。光ファイバ5bの外径も、GIF5aと同様のエッチングにより細径化可能である。
【0038】
更に接着剤又は融着と云った接合方法を問わず、各光ファイバを接合後に、GIF4a又は5aを所望の長さであるL4a又はL5aで切断する。
【0039】
また、GIF5aのクラッドと光ファイバ5bのクラッドとは同一材料であり、GIF4aのクラッドと光ファイバ4bのクラッドも同一材料で形成されている。
【0040】
図6に示す様に各V溝2b又は2cに、互いに接合された光ファイバ4bとGIF4a、又は光ファイバ5bとGIF5aを配列し、その後に接着剤を塗布して各光ファイバを各V溝2b又は2cに固着する。接着剤としては紫外光硬化型接着剤を使用する為、基板2を構成する材料には、ホウケイ酸ガラス又は石英と云った光透過性材料を使用する必要がある。
【0041】
更に、光ファイバ4bのレーザ光入射側端部(
図1の左側)には、図示しない発光源が配置される。その発光源から光(レーザ光)が光ファイバ4bへと入射される。発光源はレーザダイオード(LD:Laser Diode)と云った半導体レーザ素子である。
【0042】
発光源からの光が光ファイバ4bで伝搬され、次に相対的に太い外径のGIF4aに光が伝搬される。GIF4aは前記の通り、長さL4aが伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定されている。従って光ファイバ4bから入射した光は、GIF4aによって平行光に変換されて、その光出射端面4a1から出射される。
【0043】
GIF4aの光出射端面4a1から出射された平行光は、次に
図9に示す様に光アイソレータ素子3に入射される。光アイソレータ素子3に入射された平行光の光路は
図8に示す様に、対向配置されている偏光子3aの光学面上に於いて屈折により変更される。この屈折により-Y方向に前記高低差Hだけずれて、相対的に細い外径のGIF5aの光入射端面5a1に平行光が入射される。前記の通り、GIF5aの長さL5aが伝搬する光の蛇行周期の4分の1又は4分の1の奇数倍に設定されているので、平行光はGIF5aを伝搬することでGIF5aのコアに収束されて出射される。次に収束された光は光ファイバ5bに伝搬される。
【0044】
V溝2bと2c及び溝2aの形成は、切削加工で行う。光アイソレータモジュール1では
図1~
図3に示す様に、1つの基板2に2つのV溝2bと2cを形成している。2つのV溝2bと2cを同じ高さに設定し、基板2の材料をホウケイ酸ガラス又は石英製とする事により、切削加工に於ける治具の刃を一定の高さのみに設定して、1回の治具の送り加工により2つのV溝2bと2cの形成を完了させる事が可能となる。よって、光アイソレータモジュール1の製造コストを削減する事が出来る。
【0045】
更に、光アイソレータモジュール1では
図1~
図3に示す様に、1つの平板状の基板2に2つのV溝2bと2cを形成しているので、基板2の外形を生かして1回の測定のみで2つのV溝2bと2cの高さ(即ち、基板2表面からの底部2b1及び2c1の深さ)を導出する事が可能となる。従ってこの点でも、光アイソレータモジュール1の製造コストを削減する事が出来る。
【0046】
また、各GIF4a又は5aの各光入出射端面4a1又は5a1が、光軸oaに対して垂直に形成される事により、各光入出射端面4a1又は5a1での光の屈折が防止される。従って、屈折に伴う各GIF4a及び5a間での光軸調節工程を皆無とする事が可能になると共に、GIF4a及び5a間での円周方向に於ける位置決めが不要となって、製造工程数が削減される。よって更に、光アイソレータモジュール1の製造コストを削減する事が出来る。
【0047】
また、GIF5aのクラッドと光ファイバ5bのクラッドを同一材料で形成する事により、更に光アイソレータモジュール1の製造コストを削減する事が出来る。
【0048】
なお、光アイソレータ素子3のILが最小となるように、対向するGIF4a及び5aを基板2の厚さ方向(Z軸方向)にずらす必要が有る。ILが最小と成る高低差Hが設定される様に、前記外径d4aとd5a、及びV溝2b及び2cの開口角と幅を調節する。
【0049】
光アイソレータモジュール1に依れば、2つのV溝2bと2cを同じ深さに設定しているので、GIF4a及び5a間のコア軸どうしの高低差Hの光軸調節は、V溝2b及び2cの幅に比べてより小さな寸法であるGIF5aの外径d5aで調節する事が可能となる。コア軸どうしの光軸調節と云う極めて精密な調節工程を、より細径な光学部品であるGIF5aの細径化で速やかに行う事が出来る為、光アイソレータモジュール1の製造時間と製造コストを削減する事が可能となる。
【0050】
なお
図9より光アイソレータ素子3を伝搬する平行光の径dLは、85μm以上100μm以下に設定する。従って、光アイソレータ素子の1辺の大きさは、伝搬する平行光の径dL以上とする。また、各GIF4a又は5aの各光入出射端面4a1又は5a1に対する光アイソレータ素子3の傾斜角度θは1.0度以上4.0度以下とする。
【0051】
以上のθの数値設定により、高低差Hは2.5μm以上10.2μm以下に設定する。また、2個の偏光子3a又は3bの厚みt3a、t3bは共に0.2mmであると共に、ファラデー回転子3cの厚みt3cは0.42mmと設定する。従って、光アイソレータ素子3の合計の厚みは0.82mmとなるが、0.82mmの合計厚みでも平行光の径dLが85μm以上100μm以下ならば、平行光を光アイソレータ素子3に伝搬して透過させられる事を、本出願人は検証により見出した。
【0052】
以上の平行光の径dLとθ、光アイソレータ素子3の合計の厚み、及び高低差Hから、GIF4aの外径d4aは前記の通り125μm、GIF5aの外径d5aは118.5μmに設定される。このような光アイソレータモジュール1の構成に依れば、各部の設計の最適化によりILの確実な低減化を実現する事が出来る。更に、光アイソレータ素子3を2個の偏光子3a及び3bと1個のファラデー回転子3cで構成する事により、光アイソレータ素子3を構成する光学素子の個数を削減する事が可能となる。従って、この点でも更に光アイソレータモジュール1の製造コストを削減する事が出来る。
【0053】
更に好ましくは、光アイソレータ素子3の傾斜角度θを1.5度以上3.5度以下と設定すると共に、高低差Hを3.8μm以上8.9μm以下と設定する。この様な光アイソレータモジュール1の構成に依れば、GIF4a及び5aの外径d4a及びd5aと、平行光の径dLが設定された光アイソレータモジュール1であっても、2つのGIF4a及び5a間のより確実な光学的結合が実現可能となる。
【0054】
次に本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータモジュール8を、
図10を参照しながら説明する。なお、前記光アイソレータモジュール1と同一箇所には同一符号を付し、同一又は重複する説明は省略する。
【0055】
光アイソレータモジュール8が前記光アイソレータモジュール1と異なる点は、GIF4aの光入射側端部(光出射端面4a1の反対側の端面が形成されている端部)が、光ファイバ4bと接合されておらず、発光源6の少なくとも一部と対向して光学的に直接接続されている点である。
【0056】
発光源6としては、例えばシリコンフォトニクス素子やPLCが挙げられる。発光源6がPLCの場合、PLC内の光導波路の光出射端面又は光出射ポートとGIF4aの端部とが光学的に直接接続される。更にGIF4aと発光源6は、GIF4aのコアと整合した接着剤(例えば前記紫外光により硬化する樹脂製光学接着剤)によって封止されて接着される。なお発光源6がPLCの場合、接着剤はPLCの光導波路のコアの屈折率とも整合した物がより望ましい。
【0057】
このような光アイソレータモジュール8の構成に依れば、GIF4aと発光源6を直接、光学的に接続させる事で光ファイバ4bを用いる必要が無くなる。従って、光アイソレータモジュール8の製造コストを削減する事が出来る。また、発光源6に直接光学的に接続可能となるので、発光源6との間での光軸の調節箇所と光軸調節工程の増加が防止された光アイソレータモジュール8を実現する事が可能となる。
【0058】
なお、本発明に係る光アイソレータモジュール1又は8は、その技術的思想により種々変更可能であり、例えば光アイソレータ素子3は偏光無依存型とする事も可能である。光アイソレータ素子が偏光無依存型の場合、一例として光アイソレータ素子を2個の複屈折結晶と1個のファラデー回転子、及び1個の半波長板で形成する事が出来る。但し、光アイソレータ素子を構成する光学素子の個数抑制による光アイソレータモジュールの製造コスト削減の為には、光アイソレータ素子は偏光依存型とする事が望ましい。なお複屈折結晶を用いた場合、光アイソレータ素子に平行光が入射されると、複屈折により異常光がシフトされ、このシフトにより光路が変更される。
【0059】
また溝2aは、凹状の溝に代えて、溝の底部に前記傾斜角度θを形成して光アイソレータ素子3を配置しても良い。また溝全体を、光軸oaに垂直な面に対して前記傾斜角度θで以て斜めに形成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1、8 光アイソレータモジュール
2 基板
2a 溝
2b、2c V溝
2b1、2c1 V溝の底部
3 光アイソレータ素子
3a、3b 偏光子
3c ファラデー回転子
4a 第1のグレーデッドインデックス光ファイバ
4a1 第1のグレーデッドインデックス光ファイバの光出射端面
4b、5b シングルモード型光ファイバ
5a 第2のグレーデッドインデックス光ファイバ
5a1 第2のグレーデッドインデックス光ファイバの光入射端面
6 発光源
7 接着剤
ca1 第1のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸
ca2 第2のグレーデッドインデックス光ファイバのコア軸
d4a 第1のグレーデッドインデックス光ファイバの外径
d5a 第2のグレーデッドインデックス光ファイバの外径
dL 平行光の径
H 高低差
L4a 第1のグレーデッドインデックス光ファイバの長さ
L5a 第2のグレーデッドインデックス光ファイバの長さ
oa 光軸
t3a、t3b 偏光子の厚み
t3c ファラデー回転子の厚み
θ 光アイソレータ素子の傾斜角度