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  • 特許-予混合ガスバーナ 図1
  • 特許-予混合ガスバーナ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】予混合ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/62 20060101AFI20220309BHJP
   F23D 14/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F23D14/62
F23D14/02 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018060981
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174016
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】菊池 太希
(72)【発明者】
【氏名】高島 博史
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 優希
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特許第2950196(JP,B2)
【文献】特開2002-188801(JP,A)
【文献】特開平08-128609(JP,A)
【文献】特開平08-296812(JP,A)
【文献】特開2000-346317(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02116768(EP,A1)
【文献】特開2010-190483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/62
F23D 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機からの燃焼用空気をバーナヘッドへ送るバーナダクトには、燃料ガスを供給する燃料ガス配管を接続しておき、バーナダクト内を通して送る燃焼用空気に燃料ガス配管を通して送る燃料ガスを混合することで予混合ガスとして、予混合ガスをバーナヘッドから噴射して燃焼するようにしている予混合ガスバーナにおいて、バーナダクト内にはバーナダクト内を流れる燃焼用空気の流路断面積を縮小する絞り内板と、絞り内板の外側には燃料ガスを流すためのすき間である噴射ガス流路を開けて重ねるように配置した絞り外板を設置し、燃料ガス配管は前記噴射ガス流路に燃料ガスを供給することができるように接続しておき、前記の噴射ガス流路はバーナダクト内での燃焼用空気流の中心軸方向に向いたものであって、噴射ガス流路の先端に設けている噴射ノズルから噴射ガス流路の延長線上に燃料ガスを噴射するようにしており、絞り外板より下流側にバーナダクト内の流路断面積を縮小した状態に維持する円筒状部材を設置し、円筒状部材のさらに下流側にはバーナダクト内の流路面積を拡大する末広がり部材を設置することにより、バーナダクト内の円筒状部材外側に環状空間を形成しておき、該環状空間に燃料ガスを供給するため燃料ガス配管を接続していることを特徴とする予混合ガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼用空気と燃料ガスを予め混合してバーナヘッドに供給し、予混合ガスを噴射しながら燃焼を行うようにしている予混合ガスバーナに関するものであり、より詳しくは予混合ガスバーナにおける燃焼用空気と燃料ガスの混合性を向上させた予混合ガスバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第2950196号公報に記載があるように、燃焼用空気と燃料ガスを予め混合しておき、予混合ガスを噴射しながら燃焼を行う予混合ガスバーナが知られている。ここで記載の予混合ガスバーナでは、燃焼用空気をバーナヘッドへ向けて流すバーナダクト内に2枚の絞り部材を対面するように配置して、中央部に略ベンチュリ形状のガスミキサ部を形成している。この絞り部材は、絞った先で折り曲げることでバーナダクトと平行な部分を持ち、その下流側にはゆるやかな拡がり角(約5度~10度)を持ったディフューザを設けている。そして絞り部材とバーナダクト壁面で囲まれた部分をガス室とし、前記絞り部材の平行面には、ガス噴出部として複数の小穴を開口している。前記構成の予混合ガスバーナでは、バーナダクトの上流端から供給される燃焼用空気は、絞り部材を配置している部分で流速が高まり、圧力が低下するためのガス噴出部から供給される燃料ガスは、平行面から効果的に剥離されて、燃焼用空気と効率よく予混合されるというものである。
【0003】
燃焼用空気と燃料ガスを予め混合しておき、バーナヘッドでは予混合ガスを噴射して燃焼する予混合ガスバーナでは、バーナヘッドより手前で燃焼用空気と燃料ガスを十分に混合しておく必要がある。燃焼用空気と燃料ガスの混合部から燃焼部までの距離が長いと、予混合ガス内では燃料ガスが均一に分散することになるが、混合促進部の長さを長くした場合には、燃焼装置が大型化する。前記の予混合ガスバーナでは、燃焼用空気の流路を絞って燃焼用空気の流速を高めることで、ガス噴射部から噴射している燃料ガスを吸引する作用を得ることで、燃焼用空気と燃料ガスの混合性を向上させている。このことによって燃焼用空気と燃料ガスを混合する混合促進部の長さを短くすることができるが、それでも燃焼用空気流の中心部分には燃料ガスの割合が少ない部分ができることがあった。装置の小型省スペース化のためには燃焼用空気と燃料ガスの混合をさらに促進させることが望まれており、より混合性を向上させることのできる構造の検討が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許2950196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、バーナダクトで燃焼用空気と燃料ガスを混合しておいた予混合ガスをバーナヘッドに供給して燃焼する予混合ガスバーナにおいて、燃焼用空気と燃料ガスの混合性をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、送風機からの燃焼用空気をバーナヘッドへ送るバーナダクトには、燃料ガスを供給する燃料ガス配管を接続しておき、バーナダクト内を通して送る燃焼用空気に燃料ガス配管を通して送る燃料ガスを混合することで予混合ガスとして、予混合ガスをバーナヘッドから噴射して燃焼するようにしている予混合ガスバーナにおいて、バーナダクト内にはバーナダクト内を流れる燃焼用空気の流路断面積を縮小する絞り内板と、絞り内板の外側には燃料ガスを流すためのすき間である噴射ガス流路を開けて重ねるように配置した絞り外板を設置し、絞り外板より下流側にバーナダクト内の流路断面積を縮小した状態に維持する円筒状部材を設置し、円筒状部材のさらに下流側にはバーナダクト内の流路面積を拡大する末広がり部材を設置することにより、バーナダクト内の円筒状部材外側に環状空間を形成しておき、燃料ガス配管は該環状空間に燃料ガスを供給することができるように接続しておき、噴射ガス流路はバーナダクト内での燃焼用空気流の中心軸方向に向いたものであって、噴射ガス流路の先端に設けている噴射ノズルから噴射ガス流路の延長線上に燃料ガスを噴射するようにしていることを特徴とする。
【0009】
燃焼用空気流は、絞り内板の内側に沿って流れながら流路面積の縮小によって流速は増加し、絞り内板先端を超えると流路面積が拡大する。この部分では燃焼用空気流に負圧が発生し、周縁の気体を吸引する作用が発生する。また、絞り内板と絞り外板によって挟まれている噴射ガス流路内を流れている燃料ガス流は、噴射ノズルから噴射する際には噴射ガス流路の延長線上に噴射するため、燃焼用空気流の中心軸方向に向けて噴射することになり、バーナダクトの中心部分を流れている燃焼用空気流と混合する方向に流れる。
【0010】
そして噴射ガス流路5でも、噴射ガス流路では絞り内板と絞り外板が同じ間隔であっても、絞り内板と絞り外板は先細りとなっているため、噴射ガス流路での流路断面積は縮小することになり、噴射ノズルから噴射する燃料ガスの流速は速くなっていく。流速を高めた燃料ガスを燃焼用空気流に衝突させるものであるため、燃焼用空気と燃料ガスは激しくぶつかり合うことになり、混合部では両者の混合がより促進される。
【0011】
また、燃料ガスはバーナダクト内周縁の環状空間内を流れた後に噴射ノズルから噴射され、噴射ノズルでの流路面積はバーナダクト内周縁環状空間より小さくなるものであるため、バーナダクト内周縁環状空間内で燃料ガスの流れは均一化され、環状の噴射ノズルからは濃淡のない燃料ガスが噴射されるため、予混合ガス流内での燃料ガス分布がより均一化される。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施することで、燃焼用空気と燃料ガスの混合性が向上し、燃焼用空気と燃料ガスの混合部から燃焼部までの距離を短くすることができるため、燃焼装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を実施している予混合ガスバーナの燃焼用空気と燃料ガス混合部における断面図
図2】本発明を実施している予混合ガスバーナ全体のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している予混合ガスバーナの燃焼用空気と燃料ガス混合部における断面図、図2は本発明を実施している予混合ガスバーナ全体のフロー図である。
【0015】
本発明の予混合ガスバーナは、燃焼用空気を流すバーナダクト1内に燃料ガスを噴射し、燃焼用空気と燃料ガスを混合した予混合ガスをバーナヘッド2へ送る。バーナダクト1は、送風機9から送られてきた燃焼用空気を流す径の大きなパイプであり、バーナダクト1の途中には、入口面と出口面を開口した同心の円錐台形状である絞り内板3と絞り外板4を、僅かの間をあけて重ねるようにして設置している。絞り内板3と絞り外板4は、同じ絞り角を持つものであり、縦方向の長さは絞り内板3の方が長いものとしており、絞り外板とバーナダクト内壁の間には隙間が空いている。
【0016】
絞り内板3と絞り外板4は、先端側で位置を揃えており、絞り外板4の先側付近に円筒状部材10を設置する。円筒状部材10は、バーナダクト1と同心であってバーナダクト1より径の小さなものとしており、円筒状部材10のさらに先側には、流路面積を拡大する先広がりとなる円錐台形部材を設置する。先側の円錐台形部材は円筒状部材10とバーナダクト内面のそれぞれと接続しており、円筒状部材10とバーナダクト1の間には環状の空間ができる。燃料ガスはこの環状空間内に導入されるように、燃料ガスの供給を行う燃料ガス配管8を接続する。
【0017】
絞り内板3と絞り外板4で挟まれた空間を噴射ガス流路5とし、絞り内板3の先端と絞り外板4の先端の間を噴射ノズル7としておき、燃料ガスは噴射ガス流路5内を通り、噴射ノズル7から噴射するようにしておく。絞り内板3と絞り外板4の絞りによる傾斜面が平行になるようにしていると、絞り内板3と絞り外板4の間隔は噴射ガス流路5内では変わらないが、噴射ガス流路5内の下流側ほど噴射ガス流路5の断面積は小さくなるため、燃料ガスの流速は増加する。噴射ガス流路5内を流れてきた燃料ガスは、バーナダクト内の環状空間内に入ると、バーナダクトの中心軸側を流れる燃焼用空気とは逆の方向に流れた後で噴射ガス流路5内を流れ、噴射ガス流路5の延長線上に噴射される。噴射ガス流路5はバーナダクト1の中心軸方向へ向いているため、燃料ガスはバーナダクト1の中心方向へ噴射される。
【0018】
この場合、噴射ノズル7で流路が狭まって圧力が上昇することになり、燃料ガス流の上流側となる環状流路内での燃料ガスの流れは均一化される。環状流路での燃料ガス流を均一化しておくことで、噴射ノズル7から噴射する燃料ガスには片寄りが無くなり、燃焼用空気との混合状態は良好となる。
【0019】
送風機からバーナダクト1内を通して送ってきた燃焼用空気は、絞り内板3の内側面に沿って流れ、絞り内板3によって燃焼用空気が流れる流路断面積は減少していくために燃焼用空気の流速は増加する。燃焼用空気の流路断面積は、絞り内板3によって一端縮小し、円筒状部材10の部分では縮小した状態が維持された後、流路が広がっていく。
【0020】
絞り内板3によって流速が増加した燃焼用空気流は、絞り内板3の先側に負圧域を発生し、その周囲に流れてくる燃料ガス流を吸引して混合する。また、噴射ノズル7から噴射する燃料ガス流の流れ方向は、燃焼用空気流の中心軸方向へ向いているため、噴射ノズル7から噴射した燃料ガス流は燃焼用空気流内へ入り、燃焼用空気と混合する。
【0021】
燃焼用空気と燃料ガスが混ざり合った予混合ガスは、バーナダクト1の先にあるバーナヘッド2へ送られる。バーナダクト1の下流に設置しているバーナヘッド2は、パンチングメタルを円筒形に加工し、その周囲をメタルニットで覆ったものとしている。メタルニットは耐熱性の高い金属繊維を編んだものであり、パンチングメタルに溶接することでメタルニットが浮き上がらないようにしておく。パンチングメタルは金属板に多数の穴を開けたものであり、パンチングメタルの外側にメタルニットを被せたことにより、予混合ガスはパンチングメタルの穴を通り、メタルニットの繊維の隙間を通して噴出する。
【0022】
予混合ガスバーナのヘッド部分2には、バーナヘッド2の外側表面にパイロット火炎を発生させるパイロットバーナ6を設置している。パイロットバーナ6にてパイロット火炎を燃焼させている状態でバーナヘッド2のメタルニット面から予混合ガスを噴射すると、メタルニットの表面で火炎の燃焼が行われる。
【0023】
バーナダクト1内の燃焼用空気に燃料ガスを噴射して燃焼用空気と燃料ガスを混合していく場合、バーナダクト1内のみで十分な混合を行うためには、バーナダクトでの流路を長くする必要があった。しかし、バーナダクト1での流路を長くすると、燃焼装置が大きくなってしまうため、省スペース化のためにはバーナダクト1での流路の長さを抑えながら、予混合ガスの混合性を高くすることが望まれていた。
【0024】
本実施例では、燃焼用空気流は、バーナダクト1の途中に設けている絞り内板3部分を通過する際に流路面積が縮小するために流速が増加し、燃料ガス流も絞り内板3と絞り外板4の間に形成した噴射ガス流路5を通す際には流路面積が縮小するために、噴射ガス流路の先端の噴射ノズル7を通して噴射する燃料ガス流の流速も増加する。そしてバーナダクト1では絞り内板3の先端で狭まった後に流路が広がっているため、流路の拡がりによって燃焼用空気流は末広がりに広がる流れとなる。噴射ノズル7の先側では燃焼用空気流に負圧域が発生し、燃焼用空気流の周囲から燃焼用空気流内へ周囲の気体を吸引する流れが発生する。そして、噴射ガス流路5はバーナダクト1の中心に向かっているために、噴射ノズル7の先側ではバーナダクトの中心を流れている燃焼用空気流の中に向かう流れとなる。そのため、燃料ガス流は燃焼用空気流の内側へ入り込み、燃焼用空気流と燃料ガス流の交差部では乱流が発生して燃焼用空気と燃料ガスは混合される。以上のようにしたことで、火炎の燃焼性は保ちながら混合促進部の長さを抑えることができるため、燃焼装置の省スペースを達成することができる。
【0025】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。例えば実施例では、バーナダクト1は円筒形状としているが、これを断面四角形の四角柱形状にし、絞り内板及び絞り外板も四角錐台形状にするなどしても同様の作用を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 バーナダクト
2 バーナヘッド
3 絞り内板
4 絞り外板
5 噴射ガス流路
6 パイロットバーナ
7 噴射ノズル
8 燃料ガス配管
9 送風機
10 円筒状部材
図1
図2