(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】服薬支援装置用の薬包収納容器
(51)【国際特許分類】
A61J 7/00 20060101AFI20220309BHJP
A61J 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61J7/00 Z
A61J1/00 430
(21)【出願番号】P 2018081013
(22)【出願日】2018-04-19
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】516307932
【氏名又は名称】株式会社メディカルスイッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【氏名又は名称】三田 康成
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直樹
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192455(JP,A)
【文献】特開2004-345837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/00
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
服用時期の同じ薬を一包化して形成された矩形状の薬包を積み重ねるように収納し、前記薬の服用時期に、上端の前記薬包が、上方から前記薬包に突き当たるまで差し込まれた吸着装置の吸引部により吸着されて、水平又は略水平な状態で上方に取り出される服薬支援装置用の薬包収納容器であって、
有底で上端が開放され、かつ、前記薬包とほぼ同じ大きさの矩形筒状に形成され、少なくとも一側壁がわに、前記薬包を出し入れするための操作用開口が設けられた容器本体の内面に、この容器本体内の前記薬包の外周部を支持して、この薬包を水平な状態に保持させるとともに、
この薬包が前記吸着装置の吸引部により吸着されて水平又は略水平な状態で上方に取り出される際にこの薬包を変形させ
る複数の突起部を設けていることを特徴とする服薬支援装置用の薬包収納容器。
【請求項2】
前記容器本体の内面の周方向に設けられた少なくとも3つの前記突起部により、前記薬包を水平状態に支持する突起部のセットが構成され、この突起部のセットが、前記容器本体の内面の上下方向に、一定のピッチで複数セット設けられていることを特徴とする請求項1記載の服薬支援装置用の薬包収納容器。
【請求項3】
前記突起部は、上端面が水平で、前記上端面から下降する側端面が、前記容器本体の内面に達するように、直角三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の服薬支援装置用の薬包収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬の服用支援を行う服薬支援装置において、薬包を収納するために用いられる薬包収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬局等では、服用時期が同じ薬を一包化して、処方箋中の薬を薬包の形で提供することもなされている。PTP包装シートから薬を取り出す手間がなくなり、かつ、同時に複数個の薬が服用できるため、薬の飲み間違いが少なくなるという利点があるからである。
【0003】
一方、高齢者人口が増加した現在、薬の服用者数は飛躍的に増加しているが、各服用者が服用する薬の種類も増加し、かつ、例えば、一日のうちの服用時期も多様化している。したがって、薬の飲み忘れや飲み間違い等も増加し、これらが大きな社会問題となっている。このため、薬の飲み忘れや飲み間違い等を防止する、種々の服薬支援装置(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0004】
特許文献1は、1回分の薬が一包化されている薬包を用いて、服用者に薬の服用支援を行う服薬支援装置に関するものである。この服薬支援装置Aは、服用時期の異なる薬包を別々に積み重ね、薬の服用時期になると、積み重ねた薬包の中から必要なものを選択して、服用者側に差し出す機能を有するものである。具体的には、服薬支援装置Aは、
図12で示されるように、本体ケーシング1内に、4つの収納部2A,2B…(残り2つは、収納部2A,2Bの奥側にあるため、図示されていない)と、吸着装置3と、受け皿4と、吸引部移動機構5と、受け皿移動機構7等とを有している。
【0005】
収納部2には、矩形状の薬包Yを積み重ねるように収納する矩形筒状の収納筒20内の下部に、支持板22aを介して薬包Yを上下動するリフター22が設けられている。このリフター22は、収納筒20内の上端の薬包Yが、収納筒20の上端部に設けられた位置センサー21の位置にくるように、薬包Yの上下位置をコントロールしている。例えば、薬の服用時刻に近づくと、吸着装置3の吸引部30が、吸引部移動機構5を介して必要な薬包Yを有する例えば収納部2Bの上方に移動した後、上端の薬包Yの位置まで下降して、薬包Yを吸着する。つづいて、この吸引部30は、吸引部移動機構5を介して元の上下位置まで上昇後、吸着した薬包Yを受け皿4上方まで移動させ、この薬包Yを受け皿4上に落下させる。そして、薬の服用時刻になると、薬包Yを載せた受け皿4が、受け皿移動機構7により、開口11dを通って本体ケーシング1外方に飛び出し、服用者に薬の服用を知らせる。
【0006】
この服薬支援装置Aは、以上のようにして、薬包Yを所定の時刻に服用者側に差し出すが、収納部2のリフター22の構造が複雑であるため、リフター22等を使用しない収納部、すなわち、収納部として、収納筒20に底部を設けたもの(以下、薬包収納容器という)を使用することも考えられている。この場合、吸着装置3の吸引部35は、薬包収納容器内の上端の薬包Yの位置まで下降して、薬包Yを吸着した後、上昇する。そして、その後の吸引部35の動きは、吸引部30の場合と同じである。なお、この薬包収納容器は、本体ケーシング1の底部に位置決め設置されるが、薬包Yの出し入れ等に際して、本体ケーシング1から容易に取り出せるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この薬包収納容器内には、複数の同一薬包Yを手動で積み重ねるようにして収納する必要がある。この場合、薬包Yの収納袋内の薬は、自由度はある程度制限されるが、自由に移動し得る。また、薬包Yの薬自身も、小粒でなく、安定した高さが5~6mm以上のものもある。このため、例えば、薬が収納袋内の一方に偏って収納されていると、薬包Yは、薬包収納容器内で、水平又は略水平に積み重ねられず、積み重ねられた上端側の薬包Yが大きく傾いてしまう場合も生じる。薬包収納容器内の薬包Yが、ある程度水平に位置決めされていないと、吸着装置3による薬包Yの吸着保持がうまくいかず、薬包収納容器内から薬包Yが取り出せないという問題が生じる。
【0009】
このため、作業者は、薬包Y内の薬の位置を変えたり、薬包Yの向きを交互に変えて積み重ねる等、一定の工夫を加えて、薬包収納容器20内の薬包Yを水平に積み重ねる必要が生じる場合も多く、薬包収納容器内への薬包Yの収納に手間がかかっていた。
【0010】
この発明は、以上の点に鑑み、複数の薬包を簡単に水平又は略水平な状態で積み重ねることができ、内部の薬包を吸着装置により容易に取り出せる、服薬支援装置用の薬包収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1記載の発明は、服用時期の同じ薬を一包化して形成された矩形状の薬包を積み重ねるように収納し、前記薬の服用時期に、上端の前記薬包が、上方から前記薬包に突き当たるまで差し込まれた吸着装置の吸引部により吸着されて、水平又は略水平な状態で上方に取り出される服薬支援装置用の薬包収納容器であって、有底で上端が開放され、かつ、前記薬包とほぼ同じ大きさの矩形筒状に形成され、少なくとも一側壁がわに、前記薬包を出し入れするための操作用開口が設けられた容器本体の内面に、この容器本体内の前記薬包の外周部を支持して、この薬包を水平な状態に保持させるとともに、この薬包が前記吸着装置の吸引部により吸着されて水平又は略水平な状態で上方に取り出される際にこの薬包を変形させる複数の突起部を設けていることを特徴とする。
【0012】
この発明では、例えば、手の指先でつまんだ任意の数枚の薬包を、上端開口から薬包収納容器内へ挿入し、側面の操作用開口を使用しつつ、薬包収納容器の底部上に積み重ねるように収納する。この場合、薬包の端部が薬包収納容器の突起部に当たるが、端部等を少し変形させるように加圧して、薬包を下方に押し下げ、これらの薬包を薬包収納容器に収納する。積み重ねられた薬包の上端側が、吸着装置の吸引部で吸着保持できないほど傾斜していれば、例えば、上端の薬包の向き等を変えるようにして、積み重ねをやり直す。そして、この作業を繰り返すが、薬包収納容器内に積み重ねられた薬包の直ぐ上に、薬包を水平に保持する突起部(複数の突起部)があれば、つぎの薬包をこの突起部(複数の突起部)上に水平に支持させる。そして、水平に保持された薬包の上に、同様にして新たな薬包を積み重ねていく。
【0013】
なお、薬包収納容器の下部側に突起部が設けられていない場合、薬包の積み重ね枚数が多くなり、上端側の薬包の傾斜角度が次第に大きくなる場合も生じ、この場合、積み重ねをやり直す薬包の数も増加していく。
【0014】
この発明では、薬包収納容器内に、薬包を支持して水平に保持する複数の突起部を有しているので、この複数の突起部の位置から再び薬包を水平な状態に位置決めすることができる。すなわち、この発明では、薬包を単に積み上げることによって順次生じてくる薬包の傾斜角度の増大を解除できるだけでなく、この水平な薬包によって、薬包の傾斜角度をリセットでき、この水平な薬包の上に新たな薬包を容易に積み重ねることができる。
【0015】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記容器本体の内面の周方向に設けられた少なくとも3つの前記突起部により、前記薬包を水平状態に支持する突起部のセットが構成され、この突起部のセットが、前記容器本体の内面の上下方向に、一定のピッチで複数セット設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、薬包を水平な状態に支持する突起部のセットが、容器本体の上下方向に、一定のピッチで複数セット設けられているので、1又は複数枚の薬包毎に、突起部のセットにより薬包を水平な状態に保持することができ、吸着装置の吸引部で容易に吸着保持できるように、薬包を薬包収納容器内に容易に収納できる。
【0017】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の場合において、前記突起部は上端面が水平で、前記上端面から下降する側端面が、前記容器本体の内面に達するように、直角三角形状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、薬包収納容器の突起部が上方に向かって漸次突出してくるように形成されているので、薬包収納容器内で薬包を引き上げる場合に、薬包の外周部が突起部の側端面に突き当たっても、吸着装置の吸引部で吸着保持した薬包を少しずつ変形させて、この薬包を上方に移動させることできる。なお、薬包収納容器内で薬包を下降させる場合には、薬包の外周部と突起部の水平な上端面とが突き当たることとなるが、薬包を手の指で加圧できるので、この場合も大きな不都合は生じない。
【発明の効果】
【0019】
この発明の請求項1記載の発明では、薬包を単に積み上げることによって順次生じてくる薬包の傾斜角度の増大を解除できるだけでなく、突起部に支持された水平な薬包によって、薬包の傾斜角度を確実にリセットできる。このため、この水平な薬包の上に、吸着装置の吸引部で薬包を容易に吸着保持できるように、新たな薬包を容易に積み重ねることができる。
【0020】
この発明の請求項2記載の発明では、1又は複数枚の薬包毎に、薬包を水平な状態に保持することができるので、吸着装置の吸引部で薬包を容易に吸着保持できるように、薬包を容器本体内に容易に収納できる。
【0021】
この発明の請求項3記載の発明では、吸着装置の吸引部による薬包の取り出しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】カット厚紙から作られた、薬包収納容器用の有底筒部と接続部との外観斜視図である。
【
図6】有底筒部と接続部を作る前のカット厚紙の状態を示しており、(a)は有底筒部のカット厚紙を示し、(b)は接続部のカット厚紙を示す。
【
図7】薬包収納容器への薬包の積み重ね方の説明図であり、(a)及び(b)は、薬包の積み重ね方を示す図であり、(c)及び(d)は、具体的な積み重ね例を示す図である。また、(e)は積み重ねてはいけない3つずつの薬包を示す図である。
【
図8】突起部が設けられていない薬包収納容器への薬包の積み重ね方を説明する図であり、(a)、(b)、及び(c)は、積み重ねてはいけない薬包の具体例を示しており、(d)は、薬包をできるだけ水平となるように積み重ねた例を示している。。
【
図9】薬包の説明図であり、(a)は薬包帯を示し、(b)は薬包を示す。
【
図10】薬包を薬の位置で3パターンに分けた状態を示し、(a)収納袋の左側の折り目近くに薬が移動した状態を示し、(b)収納袋の右側の折り目近くに薬が移動した状態を示し、(c)薬が収納袋の中央にある状態を示す。
【
図11】3パターンの薬包の重なり具合を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
まず、
図9を用いて薬包Yについて説明する。薬包Yは、処方箋中の服用時期が同じ薬を一包化することにより形成されるものであり、PTP包装シートから薬を取り出す手間をなくし、かつ、同時に複数個の薬を服用できるようにするものである。
【0024】
図9(a)は、複数の薬包Y…が一列につながれている薬包帯Tを示している。薬包帯Tは、引き破り容易な、例えば細長いセロハン紙を2つ折りにしたものの中に、必要な薬Kを一定間隔で入れた後、セロハン紙の折り目部以外の外周部分と薬包Y間の境界部分を熱圧着シールすることにより形成される。薬包帯Tは、その薬包Y間の熱圧着部F1の中央にミシン目カット部T1が設けられているので、これを切り離すことにより、
図9(b)で示されるような、個々の薬包Yに容易に分離できる。すなわち、薬包Yは、折り目部以外の周囲が熱圧着部F1によりシールされた収納袋F内に、薬Kを密閉状態で収納したものであり、縦と横のサイズが70mmの矩形状に形成されている。なお、薬包Yの高さは、薬Kの大きさで定まるが、この実施の形態では、6.5mmとなっていて、通常のものより大きめの薬Kが使用されている。また、薬包Yの上下面には、表面が滑らかで、しわの生じにくいシール用紙Sが貼り付けてある。このため、このシール用紙Sを介して、薬包Yは容易に吸着装置3の吸引部35に吸着される。
【0025】
ここで、薬包Yの薬Kは、収納袋F内を、ある程度自由に移動可能である。また、収納袋F内には、例えばカプセル状の2個の薬K1,K1が収納されている。したがって、各々の薬K1も、ある程度の自由度で収納袋F内を移動可能である。しかしながら、薬包Yの積み重ね収納を考える場合には、薬包Yの積み重ねの状態が変わるように、薬Kの位置を固定して考えても、大きな違いは生じないと考える。そこで、
図10の(a)、(b)、(c)で示されるような、典型的な3つの薬包Y1,Y2,Y3を考えてみる。すなわち、2個の薬K1,K1を一体として考え、かつ、2個の薬K1,K1が、収納袋F内の左部(折り目部)側にある場合(以下これを薬包Y1という)と、右部(折り目部)側にある場合(以下これを薬包Y2という)と、中央部にある場合(以下これを薬包Y3という)の3ケースである。なお、薬包Y1と薬包Y2とは、取り扱い時の向きが異なるのみで、実質同一形状の薬包Yである。
【0026】
説明の都合上、薬包Y1の左上面をa1、中上面をa2、右上面をa3、左下面をa4、中下面をa5、右下面をa6、周面をdの符号で示し、薬包Y2の左上面をb1、中上面をb2、右上面をb3、左下面をb4、中下面をb5、右下面をb6、周面をdの符号で示した。また、薬包Y3の左上面をc1、中上面をc2、右上面をc3、左下面をc4、中下面をc5、右下面をc6、周面をdの符号で示した。なお、周面dは、薬包Yの熱圧着部F1を意味する。
【0027】
ここで、薬包Y1の重心位置Gは、薬Kのやや右側にあり、薬包Y2の重心位置Gは、薬Kのやや左側にあり、薬包Y3の重心位置Gは、薬Kの中間位置にあるので、2つの薬包Yを重ね合わせると、
図11で示されるようになる。すなわち、(a)~(c)で示されるように、薬包Y1が下にある場合は、(a)のように、薬包Y1同士では、右下面a3と右上面a6とで重なり合い、(b)のように、薬包Y1と薬包Y2では、左下面b4と右上面a3とが重なり合い、(c)のように、薬包Y1と薬包Y3では、中下面c5と右正面a3とが重なり合う。また、(d)と(e)で示されるように、薬包Y3が下にある場合は、(d)のように、薬包Y3同士では、中下面c5と中上面c2とが重なり合い、(e)のように、薬包Y3と薬包Y1では、右下面a6と左上面c1とが重なり合う。
【0028】
つぎに、本発明の一実施形態に係る薬包収納容器6について説明する。
図2は、その全体構成を示している。薬包収納容器6は、薬包Yを積み重ねるようにして収納するために使用されるものであり、服薬支援装置Aの主要な構成要素(構成機器)の1つである。なお、薬包収納容器6は、服薬支援装置Aの本体ケーシング1(
図12参照)内に、取り出し容易に設置されている。
【0029】
薬包収納容器6は、
図2で示されるように、有底矩形筒状の容器本体60と、薬包Yの外周部を支持して、容器本体60内で薬包Yを水平な状態で保持する複数の突起部61,…とから構成される。
【0030】
容器本体60は、4つの側壁60a…と底壁60bとからなる有底の矩形筒状に形成され、上端は開放された開口60cとなっている。この容器本体60は、容器本体60の内面60dの左右幅L1と前後幅L2とが、薬包Yより僅かに大きい例えば72mmのに形成されており、底壁60bの上面から側壁60aの上端までの高さHが、例えば、133mmに形成されている。また、容器本体60の正面の側壁60aの中央部には、底壁60b近くから上方に切り欠かれた、操作用開口である切欠開口60eが設けられている。この切欠開口60eは、容器本体60内の薬包Yを観察したり、容器本体60に対して薬包Yを出し入れするために用いられる。
【0031】
容器本体60の角部60fには、
図3で示されるように、各側壁60aの両端側に、容器本体60の内面60dから直角に突出するように板状の突起部61が設けられている。そして、4つの側壁60a…について考えれば、底壁
60bの上面から等しい高さの位置に、容器本体60の内面60dの周方向に向かって、計8つの突起部61…が設けられていることとなる。この8つの突起部61…は、容器本体60内において、薬包Yの外周部を支持して、この薬包Yを水平に保持させるものであり、これらが1組の突起部セット6
2を構成する。なお、突起部
61は、各側壁の内面端部から、例えば、7mmの位置に設けられていて、薬包Yの周面d(熱圧着部F1)を支持できるように設けられている。
【0032】
突起部61は、
図4で示されるように、水平な上端部61aが、例えば、容器本体60の内面60dから3mm突出し、上端部
61aの突出端部から容器本体60の内面60dまで、例えば、内面60dに沿って5mmだけ下るように、斜状の側端部61bが形成されている。したがって、突起部は、3mm×5mmの直角三角形状に形成されている。なお、突起部61の厚さは、特に定めていないが、例えば、0.5mm程度から数mm程度のものであればよい。
【0033】
突起部セット62は、
図4で示されるように、容器本体60の上端近くから底壁60bに向かって、一定のピッチpで設けられている。本実施の形態の場合、ピッチpは、例えば20mmであるので、突起部セット62は、容器本体60の高さ方向に対して、7セットが設けられていることとなる。この場合、最も下位の位置にある突起部61の下端が底壁60bの上面と接している。また、本実施の形態の場合、突起部セット62のピッチpが20mmであり、かつ、薬包Yの厚さが6.5mmであるので、
図1で示されるように、隣り合う突起部セット62に支持された薬包Y間には、2枚の薬包Y,Yを重ね合わせることができる。
【0034】
つぎに、厚紙を用いた薬包収納容器6の作り方について、
図5及び
図6を参照しつつ説明する。この場合の薬包収納容器6は、例えば、0.5mmの厚紙から形成されている。
図6の(a)で示される形状にカットされた1枚のカット厚紙100と、
図6の(b)で示される形状にカットされた4枚のカット厚紙110…とを準備する。カット厚紙100は、底壁60bとなる正方形部101の4
辺に、側壁60aとなる4つの長方形部102…が形成され、かつ、長方形部102の1つに切欠開口60eとなる切欠102aが形成された形状に作られている。カット厚紙110は、カット厚紙100の長方形部102と同一長さの長方形部111の両側端に、突起部61となる複数の3角形部112が形成された形状に作られている。なお、カット厚紙100の長方形部102の両側には、
図5で示されるように、カット厚紙110の3角形部112を差し込むための多数の切り込み102b…を形成しておく。
【0035】
つづいて、カット厚紙100の正方形部101と長方形部102との連結部を90度だけ折り曲げて、
図5で示される有底筒部103を形成する。また、カット厚紙110の長方形部102を中央部で左右に90度だけ折り曲げるとともに、三角形部112…の長方形部102との連結部を90度だけ内側に折り曲げて、
図5で示される4つの接続部113…を形成する(1つは図示せず)。つづいて、有底筒部103の切り込み102b…内に、接続部113の三角形部112…を差し込むようにして、有底筒部103の角部外面に接続部113…を取り付ける。この場合、有底筒部103と接続部113…とが接する部分を糊等の接着剤で接合すれば薬包収納容器6が完成する。この場合、三角形部112…が有底筒部103の内面から直角に突出するように、三角形部112…の折り角度を調整する。なお、有底筒部103と接続部113…の4つの長方形部111…とにより、容器本体60が形成される。
【0036】
以上のように、薬包収納容器6は、厚紙から形成されているので、容易にかつ低コストで製作される。
【0037】
つぎに、薬包収納容器6の作用について説明する。
図1は、薬包収納容器6内の薬包Yを、吸着装置3の吸引部35を用いて取り出している状態を示している。吸着装置3の吸引部35は、
図1中の実線で示された上下位置において、左右方向、前後方向、及び下方向に移動可能であり、その中心線を薬包収納容器6の中心線Mと一致させるようにして、薬包収納容器6内を上下動する。また、吸着装置3の吸引部35は、内部に空気を吸引することにより、下端部に薬包Yを吸着保持するとともに、外部に空気を吐出することにより、吸着した薬包Yを離脱させる。この場合、吸引部35は、その下部に、変形容易なゴム等から形成され、中空なそろばん玉状の伸縮吸盤部35aを有しているので、薬包Yの表面が水平でなくある程度傾斜していても、薬包Yを容易に吸着保持できる。なお、吸引部35による薬包Yの吸着は、吸引気流の停止により感知でき、このことにより、薬包Yを吸着した吸引部35は上方に引き上げられる。
【0038】
薬包収納容器6内には、例えば、最下段の突起部セット62に薬包Y1が支持されて水平に保持され、その上方に、2つの薬包Y3,Y3が積み重ねられ、その上に、突起部セット62により、薬包Y1が支持されて水平に保持されている。このように、この薬包収納容器6では、特別の事情がない限り、隣り合う突起部セット62上の薬包Y間に、2枚の薬包Y,Yが積み重ねられる。すなわち、薬包収納容器6内には、突起部セット62毎に、3つの薬包Y…が収納できることとなる。
【0039】
薬包収納容器6は、内面60dのサイズが薬包Yのサイズより僅かに大きいだけなので、薬包Yを横ずれさせることなく収納できるが、薬包Yの上下動に当たって、突起部61が突き当たって、薬包Yの上下動を妨げる。この場合、突起部61は、薬包Yの周面d等を変形させて、薬包Yを上下動させるが、対向する1対の突起部61,61の側端部61b同士が、(ハ)の字形(
図1で示されるように、突起部61は上方に向かって漸次突出してくるように形成されている)に形成されているので、吸着装置3の吸引部35は、薬包Yを少しずつ変形させて、比較的容易に薬包Yを上方に移動させることができる。なお、薬包Yを薬包収納容器6内に収納する場合は、薬包Yが突起部61の水平な上端部
61aに当たって、薬包Yの下降はより困難となるが、切欠開口60eから差し込んだ手の指で薬包Yを加圧できるので、その困難さも容易に克服できる。
【0040】
つぎに、薬包収納容器6への薬包Yの収納方法について説明する。
まず、比較例として、突起部セット62が設けられていない薬包収納容器600(薬包収納容器6の容器本体60と同一形状のもの)に薬包Yを収納する場合について、
図8を参照しつつ説明する。
【0041】
服薬支援装置A内から取り出した薬包収納容器600を片手で保持しつつ、他方の片手の指先で数枚の薬包Y…をつかんだ後、切欠開口を使用して、これらの薬包Y…を薬包収納容器600内に積み重ねるように収納していく。そして、この作業が繰り返される。この場合、薬包Yは、吸着装置3の吸引部35により充分に吸着できるように、薬包収納容器600内にできるだけ水平な状態で積み重ねられる必要がある。ところが、薬包Yには薬Kの位置の異なる3種類の薬包Y1,Y2,Y3があり、これらの薬包Y…の重ね具合が悪ければ、上部の薬包Yが大きく傾斜し、吸着装置3の吸引部35で充分に吸着できない場合も生じる。したがって、薬包Yの重ね具合が悪ければ、薬包Yの重ね直しを行う場合も生じえる。このことを、もう少し具体的に説明する。
【0042】
図8の(a)で示されるように、薬包Y1(又は薬包Y2)を3つ重ねると上端の◎薬包Y1(薬Kを◎で示した薬包Yで、以下◎薬包Yと称す)は、傾斜角αが大きくなり、吸着装置3の吸引部35による吸着が難しくなるとともに、その上に薬包Y3等を重ねると、◎薬包Y1上を薬包Y3が滑り落ち、ますます吸着できない状態となる。したがって、このような◎薬包Y1の状態は避けるべきである。また、
図8の(b)で示されるように、2つの薬包Y1,Y1の上に薬包Y2を重ねた場合でも、さらに、薬包Y1を2つ重ねると、上端の薬包Y1は◎薬包Y1の状態となり、好ましくない。したがって、この場合、上端の◎薬包Y1は、薬包Y2又は薬包Y3に変える必要がある。さらに、
図8の(c)で示されるように、2つの薬包Y1,Y1上に薬包Y3を重ね、その上に薬包Y2を重ねると、その傾斜角度が大きくなって、これが◎薬包Y2となるので、◎薬包Y2の代わりに、薬包Y1又は薬包Y3を用いる必要が生じる。
【0043】
このように、突起部セット62のない薬包収納容器600では、薬包Y1(又は薬包Y2)を3つ重ねることを避けた場合でも、上端の薬包Yの傾斜によって、更に不都合な場合が生じ得る。このような場合に、薬包Yの重なりをどのように修正すればよいのか分かりにくく、場合によっては、最初から薬包を重ね直すということも生じ得る。すなわち、
図8の(d)で示されるように、薬包Yを1つ1つ吟味して、各薬包Yを確実に水平に重ね合わせることもなされうる。したがって、突起部セット62のない薬包収納容器600では、薬包収納容器600内への薬包Yの収納に手間がかかってしまうという問題が生じる。
【0044】
つぎに、突起部セット62を備えた薬包収納容器6に薬包Yを収納する場合について、
図7を参照しつつ説明する。
【0045】
作業に当たって、薬包収納容器6内の突起部セット62の位置を観察し、その位置に合わせて、薬包Yを突起部セット62に支持させるようにする。すなわち、指先で数枚の薬包Y…をつかんだ後、切欠開口60eを使用して、これらの薬包Y…を薬包収納容器6内に積み重ねるように収納する。この時点で、突起部セット62があれば、収納した薬包Yの一つをこれに支持させるし、無ければ、再び、指先で数枚の薬包Y…を摘み、この薬包Yを薬包収納容器6内に積み重ねる。そして、この時点でも、突起部セット62の位置を確認し、同様の作業を繰り返す。また、何れの時点でも、薬包収納容器6内の上端の薬包Yの傾斜角度を観察し、角度が大きすぎる場合には、重ね直しを行う。しかしながら、この薬包収納容器6では、突起部セット62により薬包Yの傾斜角度が水平にリセットされるため、突起部セット62のない薬包収納容器600に比べて、傾斜角度の大きい薬包Yの出現回数は自ずと減少し、薬包Yの重ね直し回数も減少する。このことを、もう少し具体的に説明する。
【0046】
図7の(e)で示されるように、薬包Y1(又は薬包Y2)を底壁60b上に3つ重ねることと、突起部セット62上に水平に保持された薬包Y1(又は薬包Y2)上に、2つの薬包Y1,Y1(又は2つの薬包Y2,Y2)を重ねることは、上端の薬包Y1(又は薬包Y2)の傾斜角度が大きくなるため避ける。
図7の(a)の下部側に示されるように、例えば、底壁60b上に薬包Y1を2つ重ねた後、つぎの△薬包Y(薬K内を△で示した薬包Y)には、薬包Y2と薬包Y3の何れかを用いる。そして、この△薬包Yの上の、黒丸薬包Y(薬K内を黒丸で示した薬包Y)には、突起部セット62上に、3種の薬包Y1,Y2,Y3の何れを支持させてもよい。
【0047】
また、
図7の(a)の上部側に示されるように、例えば、突起部セット62上に水平に保持された薬包Y1上に薬包Y1を重ねた後、つぎの△薬包Yには、薬包Y2と薬包Y3の何れかを用いる。そして、この△薬包Yの上には、黒丸薬包Y、すなわち、3種の薬包Y1,Y2,Y3の何れを支持させてもよい。さらに、
図7の(b)の中程に示されるように、突起部セット62に支持された薬包Y1上に薬包Y3を重ねる場合は、3段目と4段目の薬包Yは黒丸薬包Yであり、3種の薬包Y1,Y2,Y3の何れを重ねてもよい。このことは、
図7の(c)中に示されている。また、
図7の(b)の下部に示されるように、突起部セット62上に薬包Y3を支持させた場合には、2段目と3段目と4段目の薬包Yは黒丸薬包Yであり、3種の薬包Y1,Y2,Y3の何れを重ねてもよい。このことは、
図7の(d)中に示されている。
【0048】
このように、この薬包収納容器6では、薬包Y1(又は薬包Y2)を3つ連続で重ねることさえしなければ、傾きが大きく吸着が困難な薬包Yを生じさせることなく、薬包Yを積み重ねて収納できる。すなわち、この薬包収納容器6では、一定数(3枚)の薬包Y毎に、薬包Yを突起部セット62に支持させて、この薬包Yを水平な状態に保持し(リセットし)、この水平な薬包Yの上に新たな薬包Yを積み重ねるようにしているので、薬包Yを多数積み重ねることによって生じる、大きく傾斜した薬包Yの出現を自ずと防止でき、薬包収納容器6内に比較的容易に薬包Yを収納できる。なお、例えば、薬包収納容器6内に、1セットしか突起部セット62がなくても、この突起部セット62で支持された水平な薬包Y上に、新たな薬包Yを積み重ねることができるので、この突起部セット62により、薬包Yを多数積み重ねることによって生じる、大きく傾斜した薬包Yの出現を、その分防止できる。
【0049】
ここで、実際に使用される薬包Yの厚さが、この実施形態のものより薄い場合には、突起部セット62上の薬包Y間に、2枚の薬包Yを置くと、上部の突起部セット62上の薬包Yと、その下の薬包Y間に比較的大きな隙間が生じる場合もあり得る。しかし、薬包Yの厚さがある程度薄くなると、突起部セット62上の薬包Y間に、3枚の薬包Yを重ねることができるようになるので、このことは、余り大きな問題とはならないと考える。また、厚さの大きい薬包Yを用いているので、実際は生じにくいと考えられるが、薬包Yの厚さが、この実施形態のものより厚い場合には、突起部セット62上の薬包Y間に、1枚の薬包Yを置くしかない。
【0050】
一方、突起部セット62の上下方向のピッチpを、例えば6.7mmとして、すべての薬包Yを突起部セット62により支持するようにしてもよい。この場合、薬包収納容器6内への薬包Yの収納は容易となるが、薬包収納容器6内に多数の突起部セット62が設けられることとなり、吸着装置3の吸引部35による薬包Yの移動抵抗は増加する。また、この場合、実際に使用される薬包Yの厚さが、この実施形態のものより薄くなると、薬包Y間にその分の隙間ができ、これが突起部セット62の数だけ生じることとなるので、薬包収納容器6内への薬包Yの収納枚数の減少が生じる。この場合でも、薬包Yが1/2の厚さとなり、突起部セット62上の薬包Y間に、1枚の薬包Yが置けるようになれば、薬包Yの収納枚数の問題は解決する。また、実際に使用される薬包Yの厚さが、この実施形態のものより厚くなると、機能する突起部セット62の数が減少するとともに、その分、薬包収納容器6内への薬包Yの収納にも手間がかかることとなる。
【0051】
以上のように、突起部セット62のピッチを小さくして、薬包Yの上昇抵抗が大きくなっても、吸着装置3の吸引部35による吸引力を増加させることにより、これに対処できるので、薬包Yの収納の容易な薬包収納容器6は、薬包収納容器600より使い勝手がよいと言える。
【0052】
ところで、薬包収納容器6,600について、薬包Yを90度だけ向きを回転させた場合については、薬包Yの形状と薬包Y間の重ね合わせが複雑になるので述べていないが、これを考慮した場合でも、薬包収納容器600にとって、薬包Yの重ね合わせがよくない場合は、薬包収納容器6にとってもよくない場合となる。しかし、薬包収納容器6では、突起部セット62により、薬包Yの傾きをリセットできるが、薬包収納容器600では、リセットができないので、薬包Yの90度回転を考慮しても、明らかに、薬包収納容器6の方が薬包収納容器600より大きく傾斜した薬包Yの出現を防止できる。
【0053】
なお、薬包Yの大きさは、70mm×70mmのサイズ以外に、70mm×80mmと70mm×60mmのサイズもあるので、これらのサイズに合わせて、薬包収納容器6も形成される。
【0054】
また、薬包収納容器6の内面サイズは、薬包Yとほぼ同一サイズ、すなわち、薬包Yより僅かに大きいか、薬包Yと同一サイズか、又は、薬包Yより僅かに小さいサイズに形成されておればよい。
【0055】
さらに、この薬包収納容器6では、容器本体60の各角部60fには、2つずつの突起部61,61を設けて一組の突起部セット62を形成しているが、各角部60fに、少なくとも1つの突起部61を設けるようにして、4つの突起部61…で、一組の突起部セット62を構成してもよい。
【0056】
また、薬包Yは、外周部を3箇所支持すれば、水平に保持できるので、突起部セット62には、少なくとも3つの突起部61…があればよい。
【0057】
さらに、この実施の形態では、薬包収納容器6に1つの操作用開口(切欠開口21e)しか設けなかったが、これを他の側壁60aにも設けて、操作用開口を複数設けてもよい。この場合、操作用開口を、薬包収納容器6の一つの側壁60aを取り外せるようにして設けてもよい。
【0058】
また、この実施の形態では、薬包収納容器6を厚紙を用いて製作したが、これを、接着剤や金型等を用いて、合成樹脂(プラスチック)により製作してもよい。さらに、薬包収納容器6を、金属、又は木から形成してもよいし、 プラスチック、金属、紙、及び木の何れかを組み合わせて形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
3 吸着装置
6 薬包収納容器
35 吸引部
60 容器本体
60e 切欠開口(操作用開口)
60f 角部
61 突起部
61a 上端部
61b 側端部
62 突起部セット(突起部のセット)
A 服薬支援装置
K,K1 薬
p ピッチ
Y,Y1,Y2,Y3 薬包