IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリーンケミカル株式会社の特許一覧

特許7037191透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法
<>
  • 特許-透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法 図1
  • 特許-透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法 図2
  • 特許-透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20220309BHJP
   C02F 1/66 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61M1/16 160
C02F1/66 510L
C02F1/66 521X
C02F1/66 530L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019118023
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021003262
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391015111
【氏名又は名称】クリーンケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽滋
(72)【発明者】
【氏名】古川 敬一
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088759(JP,A)
【文献】特開2000-210682(JP,A)
【文献】特開2005-245516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
C02F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所から排出された透析廃液、及び、所定箇所から排出された洗浄・消毒廃液のうち、所定条件に基づき、酸性の廃液と判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段にて判定された前記酸性の廃液を貯留する第1貯留タンクと、
前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、前記第1判定手段にて酸性の廃液と判定されなかった酸性以外の廃液を受ける混合タンクと、
下水へ廃液される所定の廃液を貯留する第2貯留タンクと、
前記所定の廃液がpH5.5以上か否かを判定する第2判定手段と、を備え、
前記第2判定手段にて、前記所定の廃液がpH5.5以上であると判定されると、前記第1貯留タンクより前記混合タンクに前記酸性の廃液が排出され、
前記混合タンクは、前記第1貯留タンクより排出された前記酸性の廃液と、前記酸性以外の廃液とを混合し、前記所定の廃液としたうえで、前記第2貯留タンクに排出し、
前記第2貯留タンクは、前記混合タンクより排出された前記所定の廃液を下水へ廃液してなる透析排液処理システム。
【請求項2】
前記第1判定手段は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、pH5.0以下の場合に、前記酸性の廃液と判定してなる請求項1に記載の透析排液処理システム。
【請求項3】
前記第1判定手段は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、所定箇所に供給される透析液、酸液、薬液の予め設定された供給時間に基づき、該酸液の供給時間の際、前記酸性の廃液と判定してなる請求項1に記載の透析排液処理システム。
【請求項4】
前記第1判定手段は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、酸液を前記所定箇所に供給するタイミングに基づいて、前記酸性の廃液と判定してなる請求項1に記載の透析排液処理システム。
【請求項5】
所定箇所から排出された透析廃液、及び、所定箇所から排出された洗浄・消毒廃液のうち、所定条件に基づき、酸性の廃液と判定する工程と、
前記判定した酸性の廃液を第1貯留タンクに貯留する工程と、
前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、前記酸性の廃液と判定されなかった酸性以外の廃液を混合タンクにて受ける工程と、
下水へ廃液される所定の廃液がpH5.5以上か否かを判定する工程と、
前記所定の廃液がpH5.5以上であると判定されると、前記第1貯留タンクより前記混合タンクに前記酸性の廃液が排出される工程と、
前記第1貯留タンクより排出された前記酸性の廃液と、前記酸性以外の廃液とを前記混合タンクにて混合し、前記所定の廃液としたうえで、第2貯留タンクに排出する工程と、
前記混合タンクより排出された前記所定の廃液を前記第2貯留タンクより下水へ廃液する工程と、を含んでなる透析排液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院にて行われる透析液を用いた人工透析後の透析排液を処理し、下水へ排液する透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析で使用する透析液には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等と共にブドウ糖が含有されている。そして、透析排液には、透析後の透析液の他に透析機器の洗浄剤として使用される酢酸や次亜塩素酸ナトリウムも含まれる。一般的に、透析排液は、法規則に従って、中和槽で中和処理され、下水へ排液されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。特に、透析排液のうち酸性の排液は、下水道管を腐食破損させる可能性があることから、中和槽で中和処理し、下水へ排液する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-38495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような中和槽は、大型であるため、設置に多大な時間と費用を要するという問題があった。特に、貸ビルに診療所を開院している病院では、設置にあたって、外壁工事を伴う増改築等に各種許可が必要となることから、容易に中和槽を設置することができずに、中和処理せずに、下水へ排液するような病院も存在しているという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができる透析排液処理システム、及び、透析排液処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の透析排液処理システムによれば、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された透析廃液、及び、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された洗浄・消毒廃液のうち、所定条件に基づき、酸性の廃液(L2)と判定する第1判定手段(PHセンサ6a、タイムコントローラ6A、液供給装置4からの信号)と、
前記第1判定手段(PHセンサ6a、タイムコントローラ6A、液供給装置4からの信号)にて判定された前記酸性の廃液(L2)を貯留する第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)と、
前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、前記第1判定手段(PHセンサ6a、タイムコントローラ6A、液供給装置4からの信号)にて酸性の廃液と判定されなかった酸性以外の廃液(L1)を受ける混合タンク(ミキシングタンク10)と、
下水へ廃液される所定の廃液(L3)を貯留する第2貯留タンク(二次タンク12)と、
前記所定の廃液(L3)がpH5.5以上か否かを判定する第2判定手段(PHセンサ12a)と、を備え、
前記第2判定手段(PHセンサ12a)にて、前記所定の廃液(L3)がpH5.5以上であると判定されると、前記第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)より前記混合タンク(ミキシングタンク10)に前記酸性の廃液(L2)が排出され、
前記混合タンク(ミキシングタンク10)は、前記第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)より排出された前記酸性の廃液(L2)と、前記酸性以外の廃液(L1)とを混合し、前記所定の廃液(L3)としたうえで、前記第2貯留タンク(二次タンク12)に排出し、
前記第2貯留タンク(二次タンク12)は、前記混合タンク(ミキシングタンク10)より排出された前記所定の廃液(L3)を下水へ廃液してなることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の透析排液処理システムにおいて、前記第1判定手段(PHセンサ6a)は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、pH5.0以下の場合に、前記酸性の廃液(L2)と判定してなることを特徴としている。
【0009】
一方、請求項3の発明によれば、上記請求項1に記載の透析排液処理システムにおいて、前記第1判定手段(タイムコントローラ6A)は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、所定箇所(透析用患者監視装置2)に供給される透析液、酸液、薬液の予め設定された供給時間に基づき、該酸液の供給時間の際、前記酸性の廃液(L2)と判定してなることを特徴としている。
【0010】
また一方、請求項4の発明によれば、上記請求項1に記載の透析排液処理システムにおいて、前記第1判定手段(液供給装置4からの信号)は、前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、酸液を前記所定箇所(透析用患者監視装置2)に供給するタイミングに基づいて、前記酸性の廃液(L2)と判定してなることを特徴としている。
【0011】
他方、請求項5の透析排液処理方法によれば、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された透析廃液、及び、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された洗浄・消毒廃液のうち、所定条件に基づき、酸性の廃液(L2)と判定する工程と、
前記判定した酸性の廃液(L2)を第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)に貯留する工程と、
前記透析廃液、及び、前記洗浄・消毒廃液のうち、前記酸性の廃液と判定されなかった酸性以外の廃液(L1)を混合タンク(ミキシングタンク10)にて受ける工程と、
下水へ廃液される所定の廃液(L3)がpH5.5以上か否かを判定する工程と、
前記所定の廃液(L3)がpH5.5以上であると判定されると、前記第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)より前記混合タンク(ミキシングタンク10)に前記酸性の廃液(L2)が排出される工程と、
前記第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)より排出された前記酸性の廃液(L2)と、前記酸性以外の廃液(L1)とを前記混合タンク(ミキシングタンク10)にて混合し、前記所定の廃液(L3)としたうえで、第2貯留タンク(二次タンク12)に排出する工程と、
前記混合タンク(ミキシングタンク10)より排出された前記所定の廃液(L3)を前記第2貯留タンク(二次タンク12)より下水へ廃液する工程と、を含んでなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1及び請求項5の発明によれば、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された透析廃液、及び、所定箇所(透析用患者監視装置2)から排出された洗浄・消毒廃液のうち、所定条件に基づき、酸性の廃液(L2)と判定した酸性の廃液(L2)を第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)に貯留し、酸性の廃液と判定されなかった酸性以外の廃液(L1)を混合タンク(ミキシングタンク10)にて受ける。そして、下水へ廃液される所定の廃液(L3)がpH5.5以上か否かを判定し、pH5.5以上であると判定されると、第1貯留タンク(酸液貯留タンク8)より混合タンク(ミキシングタンク10)に酸性の廃液(L2)が排出され、これによって、酸性の廃液(L2)と、酸性以外の廃液(L1)とを混合タンク(ミキシングタンク10)にて混合し、所定の廃液(L3)としたうえで、第2貯留タンク(二次タンク12)に排出する。これにより、混合タンク(ミキシングタンク10)より排出された所定の廃液(L3)を第2貯留タンク(二次タンク12)より下水へ廃液することとなる。しかして、このようにすれば、従来のような中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができる。
【0014】
一方、酸性の廃液(L2)と判定する所定条件としては、請求項2の発明のように、pH5.0以下の場合に、酸性の廃液(L2)と判定するのが好ましく、又、請求項3の発明のように、所定箇所(透析用患者監視装置2)に供給される透析液、酸液、薬液の予め設定された供給時間に基づき、該酸液の供給時間の際、酸性の廃液(L2)と判定するのが好ましく、或いは、請求項4の発明のように、酸液を所定箇所(透析用患者監視装置2)に供給するタイミングに基づいて、酸性の廃液(L2)と判定するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る透析排液処理システムを説明する概略構成図である。
図2】他の実施形態に係る透析排液処理システムを説明する概略構成図である。
図3】他の実施形態に係る透析排液処理システムを説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る透析排液処理システムの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0017】
図1に示すように、透析排液処理システム1は、患者のベッドサイドに患者毎に設置された透析用患者監視装置2(図示では、3個)を有している。この透析用患者監視装置2は、透析器(図示せず)が接続されており、透析器に透析液を供給すると共に、透析器の監視を行っているものである。これら透析用患者監視装置2には、図1に示すように、全ての透析用患者監視装置2に同時に液が供給されるように、液供給配管3が接続されている。そして、この液供給配管3には、液供給装置4も接続されている。これにより、液供給配管3を介して、これら透析用患者監視装置2に、液供給装置4より液が供給されることとなる。なお、この液供給装置4は、透析を行う患者に使用する透析液や、洗浄・消毒の際に使用する酸液、薬液等の液を供給するものである。透析液は、重炭素ナトリウムを主成分とする中性~弱アルカリ性(pH7~9)ではあるが、緩衝性の強い液で、酸液は、酢酸又は過酢酸等の酸性の液で、薬液は、次亜塩素酸ナトリウム等のアルカリ性の液である。
【0018】
さらに、透析用患者監視装置2には、図1に示すように、供給された液を排出する液排出配管5が接続されており、この液排出配管5には、一次タンク6も接続されている。これにより、液供給装置4より供給された液が、透析用患者監視装置2にて使用され、もって、その使用された液が廃液L1として液排出配管5を介して、一次タンク6に排出されることとなる。それゆえ、図1に示すように、一次タンク6内には、廃液L1が貯留されることとなる。
【0019】
ところで、この一次タンク6には、図1に示すように、ポンプPが接続され、一次タンク6内には、PHセンサ6aが載置されている。このポンプPには、酸廃液排出管7が接続されており、この酸廃液排出管7には、酸液貯留タンク8も接続されている。
【0020】
PHセンサ6aは、一次タンク6内に貯留されている廃液L1のpHを計測するもので、計測したpHがpH5以下であれば、貯留されている廃液L1が酸性の廃液であると判断し、その旨の信号をポンプPに出力するものである。しかるに、ポンプPは、このような信号を受け取ることによって駆動することとなる。ポンプPが駆動すると、一次タンク6内に貯留されている廃液L1が、ポンプPに接続されている酸廃液排出管7を介して、酸液貯留タンク8に排出されることとなる。これにより、図1に示すように、一次タンク6内に貯留されている廃液L1のうち、酸性の廃液L2が酸液貯留タンク8内に貯留されることとなる。なお、酸液貯留タンク8は、例えば、密閉式であり、図1に示すように、台8a上に載置されている。
【0021】
ところで、本実施形態において、PHセンサ6aにて計測したpHが、pH5以下であれば、貯留されている廃液L1が酸性の廃液であると判断しているのは、現在の法令で、下水への排液基準が、pH5を超え9未満であるためである。それゆえ、PHセンサ6aにて計測したpHが、pH5以下であれば、貯留されている廃液L1が酸性の廃液であると判断している。そのため、本実施形態においては、pH5以下としているが、それに限らず、排液基準が変更になれば、pH5以下でなく、法令で定められた排液基準以下のpHであれば、貯留されている廃液L1が酸性の廃液であると判断することとなる。
【0022】
一方、一次タンク6には、図1に示すように、一次タンク廃液排出管9が接続されており、この一次タンク廃液排出管9には、ミキシングタンク10も接続されている。しかして、上記説明したように、酸性の廃液L2以外は、ポンプPは駆動することがないため、一次タンク6内に貯留されている酸性の廃液L2以外の廃液L1は、一次タンク廃液排出管9を介して、ミキシングタンク10に排出されることとなる。なお、一次タンク6内には、図1に示すように、液面を検出するレベルセンサ6bが載置されている。
【0023】
ミキシングタンク10は、図1に示すように、ミキシングタンク廃液排出管11が接続されており、このミキシングタンク廃液排出管11には、二次タンク12も接続されている。また、ミキシングタンク10には、図1に示すように、ミキシングタンク廃液供給管13が接続されており、このミキシングタンク廃液供給管13には、酸液貯留タンク8も接続されている。そして、このミキシングタンク廃液供給管13には、図1に示すように、バルブBが接続されている。しかるに、バルブBが開放されると、ミキシングタンク廃液供給管13を介して、酸液貯留タンク8内に貯留されている酸性の廃液L2が、ミキシングタンク10内に供給され、バルブBが閉止されると、酸液貯留タンク8内に貯留されている酸性の廃液L2が、ミキシングタンク10内に供給されないこととなる。なお、バルブBの開閉条件は、後述することとする。
【0024】
しかして、上記のような配管が接続されているミキシングタンク10は、バルブBが閉止されていた際、一次タンク6より一次タンク廃液排出管9を介して排出された酸性の廃液L2以外の廃液L1を、ミキシングタンク廃液排出管11を介して、二次タンク12に排出することとなる。一方、バルブBが開放されていた際、ミキシングタンク廃液供給管13を介して、酸液貯留タンク8内に貯留されている酸性の廃液L2が、ミキシングタンク10内に供給されることとなる。そのため、ミキシングタンク10は、一次タンク6より一次タンク廃液排出管9を介して排出された酸性の廃液L2以外の廃液L1と、供給された酸性の廃液L2を混合し、ミキシングタンク廃液排出管11を介して、二次タンク12に排出することとなる。しかして、二次タンク12内には、図1に示すように、酸性の廃液L2以外の廃液L1、又は、酸性の廃液L2以外の廃液L1と酸液貯留タンク8より供給された酸性の廃液L2を混合した廃液の何れかの廃液L3が、貯留されることとなる。
【0025】
二次タンク12は、図1に示すように、下水へ排液する下水排液管14が接続されており、二次タンク12内に貯留された廃液L3は、下水排液管14を介して、下水へ排液されることとなる。
【0026】
ところで、二次タンク12内には、図1に示すように、PHセンサ12aが載置されている。このPHセンサ12aは、二次タンク12内に貯留されている廃液L3のpHを計測するもので、計測したpHがpH5.5以上であれば、バルブBを開放する信号を出力するようになっている。一方、計測したpHがpH5.5未満であれば、バルブBを閉止する信号を出力するようになっている。これにより、ミキシングタンク10内に、酸液貯留タンク8内に貯留されている酸性の廃液L2を供給するか否かの制御ができるようになっている。
【0027】
ところで、PHセンサ12aにて計測したpHが、pH5.5以上であれば、バルブBを開放する信号を出力しているのは、以下の理由によるものである。すなわち、上述したように、PHセンサ6aにて計測したpHが、pH5以下であれば、貯留されている廃液L1が酸性の廃液L2であると判断し、ポンプPを駆動させ、一次タンク6内に貯留されている酸性の廃液L2を、酸廃液排出管7を介して、酸液貯留タンク8に排出するようにしている。これにより、二次タンク12内に、pH5以下の酸性の廃液L2のみが排出されることが無くなる。それゆえ、pH5以下の酸性の廃液L2のみが下水排液管14を介して、下水へ排液されることが無くなり、もって、pH5を超え9未満である下水への排液基準を満たすこととなる。
【0028】
しかしながら、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8に貯留しておくだけでは、酸液貯留タンク8の容量にも限界があるため、劇物である酸性の廃液L2が何れ溢れ出してしまうこととなる。それゆえ、本実施形態においては、ミキシングタンク10内で、酸性の廃液L2以外の廃液L1と酸液貯留タンク8より供給された酸性の廃液L2を混合し中和させて、廃液L3として、下水排液管14を介して、下水へ排液されるようにしている。この際、酸性の廃液L2以外の廃液L1がpH5を超えpH5.5未満であると酸性の廃液L2を混合し中和させた際、廃液L3がpH5以下となる可能性があり、もって、pH5を超え9未満である下水への排液基準を満たさない可能性がある。それゆえ、中和した廃液L3がpH5以下とならないように、PHセンサ12aにて計測したpHが、pH5.5以上の際、バルブBを開放する信号を出力し、pH5.5未満になると、バルブBを閉止する信号を出力するようにしている。
【0029】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、酸液貯留タンク8内に酸性の廃液L2を貯留しておき、排出する酸性の廃液L2以外の廃液L1を用いて、酸液貯留タンク8内に貯留しておいた酸性の廃液L2を中和させて排液しているから、従来のような中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができることとなる。
【0030】
なお、符号12bは、pHデータロガーであって、PHセンサ12aにて計測した二次タンク12内に貯留されている廃液L3のpHを、常時記録しているものである。
【0031】
ところで、本実施形態において示した透析排液処理システム1はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、ポンプPを駆動させることによって、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8内に貯留させるようにしたが、それに限らず、自重落下によって、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8内に貯留させるようにしても良い。この際、ポンプPに代え、バルブを設けるようにすれば良い。すなわち、PHセンサ6aにて計測したpHがpH5以下であれば、バルブを開放し、自重落下によって、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8内に貯留し、PHセンサ6aにて計測したpHがpH5を超えれば、バルブを閉止するようにすれば良い。
【0032】
また、本実施形態においては、PHセンサ6aを用いる例を示したが、それに限らず、図2に示すようなタイムコントローラ6Aを用いても良い。
【0033】
一般的に、透析用患者監視装置2を使用する際、透析液を供給した後、洗浄のために酸液を供給し、その後、消毒のために薬液を供給するという順番が決められている。この透析液、酸液、薬液のうち、酸液が、pH5を超え9未満である下水への排液基準を満たさないものである。それゆえ、タイムコントローラ6Aに、透析液、酸液、薬液の供給時間を設定しておき、酸液の供給時間になれば、ポンプPを駆動、又は、バルブを開放し、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8内に貯留させるようにしても良い。このようにしても、従来のような中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができることとなる。
【0034】
また一方、図3に示すように、液供給装置4からの信号に基づき、ポンプPを駆動、又は、バルブを開放するようにしても良い。すなわち、液供給装置4から酸液が供給される際の信号をポンプP、又は、バルブに出力することによって、ポンプPを駆動、又は、バルブを開放し、酸性の廃液L2を酸液貯留タンク8内に貯留させるようにしても良い。このようにしても、従来のような中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができることとなる。
【0035】
他方、本実施形態においては、PHセンサ12aにて計測したpHが、pH5.5以上の際、バルブBを開放する信号を出力し、pH5.5未満になると、バルブBを閉止する信号を出力するようにしているが、それに限らず、pH6.0以上の際、バルブBを開放する信号を出力し、pH6.0未満になると、バルブBを閉止する信号を出力するようにしても良く、pH6.5以上の際、バルブBを開放する信号を出力し、pH6.5未満になると、バルブBを閉止する信号を出力するようにしても良い。すなわち、PHセンサ12aにて計測するpHが5.5以上であれば、バルブBを開放、閉止する条件として、どのようなpHを基準にしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 透析排液処理システム
2 透析用患者監視装置(所定箇所)
4 液供給装置
一次タンク
6a PHセンサ(第1判定手段)
6A タイムコントローラ(第1判定手段)
8 酸液貯留タンク(第1貯留タンク)
10 ミキシングタンク(混合タンク)
12 二次タンク(第2貯留タンク)
12a PHセンサ(第2判定手段)
L1 酸性の廃液以外の廃液
L2 酸性の廃液
L3 廃液
図1
図2
図3