(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の予防および/または治療剤、並びに、ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220309BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220309BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61P37/02
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2019502986
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2018007012
(87)【国際公開番号】W WO2018159549
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017038810
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504156706
【氏名又は名称】株式会社膠原病研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 和子
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 俊一
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 37/02
C07K 16/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗DOCK8抗体を有効成分として含有することを特徴とする、
全身性エリテマトーデス(SLE)の予防および/または治療剤。
【請求項2】
上記抗DOCK8抗体は、配列番号1、2または5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、当該ポリペプチドの部分配列に結合するものであることを特徴とする、請求項
1に記載の
全身性エリテマトーデス(SLE)の予防および/または治療剤。
【請求項3】
上記抗DOCK8抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の
全身性エリテマトーデス(SLE)の予防および/または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の予防および/または治療剤、並びに、自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、本来、外界からの有害な異物の侵入に対する生体の防御機構として存在するものである。しかし、時にはこの免疫系の働きが、結果的に生体に有害であることがある。生体は、外界からの異物に対してのみならず、自己の成分に対しても免疫応答を起こすことが知られており、自己免疫現象と呼ばれている。そして、自己免疫によってある種の病態が生じた疾患は、自己免疫疾患と呼ばれている。
【0003】
自己免疫疾患は、全身性の疾患であるが、臓器特異性のある疾患(臓器特異的自己免疫疾患)と、臓器特異性のない疾患(臓器非特異的自己免疫疾患)との2つに大別される。これら自己免疫疾患の多くは、組織に病変が認められるとともに、組織傷害を伴うものである。
【0004】
臓器非特異的自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)は、抗dsDNA抗体などの自己抗体の産生の増加に起因することが知られているが、SLEを引き起こす過程の分子生物学的な研究、多様な病態との関連の解明、さらには治療法の開発が期待されている。
【0005】
実験動物を同一の抗原で繰り返して免疫し続けると、免疫応答は極期をむかえ、やがて疲弊する。その結果として、組織傷害を伴う種々の自己免疫疾患(病態)が生じることが知られている(例えば、特許文献1参照および非特許文献1参照)。
【0006】
自己免疫疾患による組織傷害に関する研究は現在進みつつあり、組織傷害に、抗原提示細胞による抗原のクロスプレゼンテーションが関わっていることが明らかにされている。具体的には、(1)自己免疫疾患を患うと、樹状細胞における抗原のクロスプレゼンテーションが増強されること、(2)樹状細胞におけるクロスプレゼンテーションが増強されるとCD8+T細胞が活性化し、当該CD8+T細胞によって細胞傷害が誘導されること、が明らかにされている(例えば、特許文献2および非特許文献1参照)。
【0007】
本発明者らは、マウスに対して抗原による免疫操作を繰り返すことによって、自己応答性・自己抗体誘導性CD4 T細胞(autoantibody-inducing CD4 T cells;aiCD4 T細胞)という新たなタイプのT細胞が末梢にて生成され、aiCD4 T細胞が多様な自己抗体を誘導するとともに、細胞傷害性T細胞(CTL)を成熟させて種々の臓器障害を惹起して、SLEを発症させる、ということをこれまでに報告し(非特許文献1)、さらに、aiCD4 T細胞が、PD-1+CD45RBlow122low(PD-1+CD45RBlo122lo)のCD4 T細胞亜集団に存在すること、この細胞亜集団をナイーブなマウスに養子移入すると、移入2週間後のレシピエントマウスの血清中に自己抗体が観察されることを見出している(非特許文献2参照)。
【0008】
更に、本発明者らは、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞をより簡便に特定するためのマーカーを見出し、これに基づいて自己免疫疾患の客観的かつ正確な診断を可能とする技術の開発に成功している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国公開特許公報「特開2006-288382号公報(2006年10月26日公開)」
【文献】日本国公開特許公報「特開2010-004750号公報(2010年 1月14日公開)」
【文献】日本国公開特許公報「特開2017-003329号公報(2017年 1月 5日公開)」
【非特許文献】
【0010】
【文献】Tsumiyama K. et al., PLoS ONE, Vol.4, No.12, e8382, 2009
【文献】Miyazaki Y. et al., The Journal of Immunology vol.192, no.2, supplement 177.7、2014
【文献】Zhang Q et al., N Engl J Med 361(21): 2046-2055, 2009
【文献】Randall KL et al., Nat Immunol 10(12): 1283-1291, 2009
【文献】Randall KL et al. Disease Markers 29: 141-150, (2010)
【文献】Randall KL et al., J Exp Med 208(11): 2305-2320, 2011
【文献】Werner M and Jumaa H, Nat Immunol 13(6): 525-526, 2012
【文献】Jabara HH et al., Nat Immunol 13(6): 612-620, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、自己免疫疾患の予防および/または治療に用いられる薬剤に関しては、いまだ十分とはいえず、新規薬剤の更なる開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、自己免疫疾患の予防および/または治療に用いられる新たな薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討した結果、抗DOCK8抗体を用いることによって、自己免疫疾患の症状を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明者が見出した知見は、DOCK8タンパク質が自己免疫疾患の発症過程に関与していることを示唆する知見であり、当該分野にとって、驚くべき知見であった。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防および/または治療剤は、抗DOCK8抗体を有効成分として含有することを特徴としている。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンは、DOCK8タンパク質、DOCK8タンパク質の部分配列、または、DOCK8タンパク質若しくはDOCK8タンパク質の部分配列の発現ベクターを有効成分として含有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、自己免疫疾患の予防および/または治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例における、タンパク尿の試験結果を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例における、DOCK8タンパク質の局在に関する試験結果を示す像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0019】
〔1.自己免疫疾患の予防および/または治療剤〕
上述のとおり、本発明者らは、これまで、dedicator of cytokinesis protein 8(以下、DOCK8)を発現するCD4 T細胞(DOCK8陽性CD4 T細胞(DOCK8+ CD4 T細胞ともいう。))の増加を指標として、自己免疫疾患の診断を行う技術を報告している(特許文献3)。しかしながら、このDOCK8+ CD4 T細胞がどのような機序にて自己免疫疾患の発症過程に関与しているか否かは、不明であった。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、DOCK8に対する抗体に、自己免疫疾患の予防/治療効果があることが分かった。なお、DOCK8+ CD4 T細胞の存在が自己免疫疾患の診断指標の一つになり得るとしても、そこから治療薬の開発には非常に大きなギャップが存在することを念のため付言しておく。
【0020】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤は、抗DOCK8抗体を有効成分として含有するものである。
【0021】
本明細書において「自己免疫疾患」とは、自己成分(例えば、免疫グロブリンなど)に対する自己抗体(例えば、抗Sm抗体、抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF:rheumatoid factor))が検出され、自己免疫が病態に関与している疾患を意図する。自己免疫疾患としては、臓器特異的自己免疫疾患(例えば、慢性甲状腺炎、原発性粘膜水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交感性脈炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、およびシェーグレン症候群など)、および、臓器非特異的自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、および混合結合組織病など)が挙げられる。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症および混合結合組織病は、膠原病として知られている。すなわち膠原病は、全身性自己免疫疾患に含まれるものである。本発明の一態様における自己免疫疾患は、膠原病であることが好ましく、全身性エリテマトーデスであることが更に好ましい。
【0022】
DOCK8タンパク質は、DOCKファミリータンパク質のメンバーであり、グアニンヌクレオチド交換因子(guanine nucleotide exchange factor:GEF)の機能を有する分子量238kDaのタンパク質である。DOCK8タンパク質は、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質の活性化を介してアクチン細胞骨格の重合を制御することが知られている。アクチン細胞骨格の再構成は、細胞の分化・増殖、遊走、シグナル伝達など様々な細胞機能に関わっている。
【0023】
近年、ヒトDOCK8遺伝子の欠損が重症複合免疫不全症を引き起こすことが発見されたことをきっかけに、DOCK8の免疫学的な研究成果が複数報告されている(非特許文献3~8参照)。
【0024】
なお、本明細書において、「DOCK8」は、特に説明がない場合は、DOCK8タンパク質およびDOCK8タンパク質をコードするDNA(遺伝子)の両方を意図する。
【0025】
抗DOCK8抗体は、DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列に結合するものである。このとき、結合対象であるDOCK8タンパク質の由来は、特に限定されず、例えば哺乳動物を挙げることができる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、サル、ヒトが挙げられ、好ましくは、マウス、ラット、ヒトであり、より好ましくはヒトである。
【0026】
後述する実施例では、細胞膜の表面に存在するDOCK8タンパク質が、SLEの発症メカニズムに関与していることが示唆されている。それ故に、本実施形態に係る抗DOCK8抗体は、DOCK8タンパク質の細胞膜への局在を阻害する抗体であってもよい。例えば、DOCK8タンパク質が細胞膜に局在している細胞A、および、任意の抗体が加えられた当該細胞Bの各々を、抗DOCK8抗体を用いて免疫染色し、細胞Bにおける細胞膜近傍の染色強度が、細胞Aにおける細胞膜近傍の染色強度よりも低下していれば、当該任意の抗体を、DOCK8タンパク質の細胞膜への局在を阻害する抗体であると判定することができる。
【0027】
より具体的に、抗DOCK8抗体は、配列番号1または5で示されるアミノ酸配列からなるヒト由来のポリペプチド、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるマウス由来のポリペプチド、または、これらのポリペプチドの部分配列に結合するものであってもよい。
【0028】
上記部分配列を構成するアミノ酸の数は、特に限定されず、例えば、400個以下、350個以下、300個以下、200個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、または、10個以下であってもよい。また、上記部分配列を構成するアミノ酸の数の下限値は、特に限定されず、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または、10個であってもよい。
【0029】
抗DOCK8抗体は、DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列に特異的に結合する抗体である。なお、本明細書において、抗体がDOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列に「特異的に結合する」とは、その抗体が、他のポリペプチドに対してよりも、DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列に対して、高い親和性で結合することを意図する。ここで「高い親和性」とは、例えば、結合定数(Ka:binding constant)が、107M-1以上、好ましくは108M-1以上、より好ましくは109M-1以上、より好ましくは1010M-1以上、より好ましくは1011M-1以上、より好ましくは1012M-1以上、最も好ましくは1013M-1以上である親和性を意図する。
【0030】
抗DOCK8抗体は、抗DOCK8抗体の全体を含むもの、抗DOCK8抗体の全体からなるもの、抗DOCK8抗体の断片を含むもの、または、抗DOCK8抗体の断片からなるものであってもよい。例えば、DOCK8抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または、これらの断片(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、または、Fv)であってもよい。例えば、抗DOCK8抗体がモノクローナル抗体であれば、抗DOCK8抗体がDOCK8タンパク質以外の対象に非特異的に結合することを低減することができるので、本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤の薬理効果を上げることができるとともに、本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤の副作用の発生を抑えることができる。抗DOCK8抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、または、これらの断片であってもよい。
【0031】
抗DOCK8抗体は、周知の方法(例えば、(1)HarLowら、「Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)」、および、(2)岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)にしたがって作製することができる。勿論、抗DOCK8抗体として、市販の抗体を用いることも可能である。
【0032】
モノクローナル抗体は、当該分野において周知の方法(例えば、(1)ハイブリドーマ法(Kohler,G.およびMilstein,C.,Nature 256,495-497(1975))、(2)トリオーマ法、(3)ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,Immunology Today 4,72(1983))、および、(4)EBV-ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R Liss,Inc.,77-96(1985)))にしたがって作製することができる。
【0033】
モノクローナル抗体は、ファージディスプレイ法にしたがって作製することもできる。ファージディスプレイ法によるモノクローナル抗体の作製方法は、公知の方法を用いればよい。ファージディスプレイ法によるモノクローナル抗体の作製方法の一例を、以下に説明する。まず、DOCK8タンパク質を免疫した動物からmRNAを調製し、当該mRNAを鋳型としてcDNAを調製し、当該cDNAから、抗体の可変領域のみをコードする1本鎖抗体(scFV)遺伝子を作製する。次いで、当該1本鎖抗体遺伝子をファージミドベクターに挿入し、当該ファージミドベクターを大腸菌に導入した後、当該大腸菌にファージを感染させる。これによって、scFV抗体をファージ被膜上に発現させることができる。ファージ被膜上に発現されたscFV抗体の中から、DOCK8タンパク質に結合するものをスクリーニングすることによって、抗DOCK8モノクローナル抗体を作製することができる。なお、mRNAの調製、cDNAの調製、1本鎖抗体遺伝子のファージミドベクターへの挿入、ファージミドベクターの大腸菌への導入、ファージの感染、および、抗体のスクリーニングは、周知の方法にしたがって行えばよい。
【0034】
キメラ抗体とは、定常領域がヒトの抗体の定常領域に置き換えられている抗体を意図する。キメラ抗体は、周知方法にしたがって作製され得る(例えば、欧州特許公開公報EP0125023を参照)。
【0035】
ヒト化抗体とは、H鎖およびL鎖の相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)以外がヒトの抗体の構造に置き換えられている抗体を意図する。
【0036】
ヒト抗体とは、ヒトの抗体生産に関与する遺伝子が導入されたトランスジェニック動物を用いて作製された抗体を意図する(例えば、欧州特許公開公報EP0546073を参照)。
【0037】
F(ab’)2、Fab’、Fab、および、Fvは、抗体の全体をプロテアーゼ(例えば、パパイン、または、ペプシン)によって分解し、必要に応じて、分解物を更に還元することによって得ることができる。また、F(ab’)2、Fab’、Fab、および、Fvは、抗体を生産するハイブリドーマから、これらのcDNAを単離し、当該cDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを宿主に導入することによって得ることができる。この場合には、抗体フラグメントは、抗体フラグメントと別のタンパク質との融合タンパク質として得ることもできる。
【0038】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤に含有されている抗DOCK8抗体の量は、特に限定されず、例えば、予防および/または治療剤を100重量%とした場合に、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0039】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤に含有されている抗DOCK8抗体の量は、特に限定されず、例えば、0.01mg~1000mg、0.1mg~1000mg、1mg~1000mg、1mg~900mg、1mg~800mg、1mg~700mg、1mg~600mg、1mg~500mg、1mg~400mg、1mg~300mg、1mg~200mg、または、1mg~100mgであってもよい。
【0040】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤は、抗DOCK8抗体以外の成分(例えば、薬学的に受容可能なキャリア)を含んでいてもよい。抗DOCK8抗体以外の成分としては、本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤が固形製剤である場合には、賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤を挙げることができ、本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤が液状製剤である場合には、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤を挙げることができる。その他、抗DOCK8抗体以外の成分として、防腐剤、抗酸化剤および安定化剤も挙げることができる。
【0041】
上記「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプンおよび結晶セルロースを挙げることが、これらに限定されない。
【0042】
上記「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルクおよびコロイドシリカを挙げることが、これらに限定されない。
【0043】
上記「結合剤」としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを挙げることが、これらに限定されない。
【0044】
上記「崩壊剤」としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルスターチナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0045】
上記「溶剤」としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油およびトリカプリリンを挙げることが、これらに限定されない。
【0046】
上記「溶解補助剤」としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0047】
上記「懸濁剤」としては、例えば、界面活性剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン)および親水性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を挙げることが、これらに限定されない。
【0048】
上記「等張化剤」としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリンおよびD-マンニトールを挙げることが、これらに限定されない。
【0049】
上記「緩衝剤」としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩を挙げることが、これらに限定されない。
【0050】
上記「無痛化剤」としては、例えば、ベンジルアルコールを挙げることが、これに限定されない。
【0051】
上記「防腐剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸およびソルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0052】
上記「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸塩およびアスコルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0053】
上記「安定化剤」としては、製薬分野において通常用いられるものであればよく、特に限定されない。
【0054】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤に含有されている抗DOCK8抗体以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、予防および/または治療剤を100重量%とした場合に、0重量%~99.999重量%であってもよく、0重量%~99.99重量%であってもよく、0重量%~99.9重量%であってもよく、5重量%~99.9重量%であってもよく、10重量%~99.9重量%であってもよく、20重量%~99.9重量%であってもよく、30重量%~99.9重量%であってもよく、40重量%~99.9重量%であってもよく、50重量%~99.9重量%であってもよく、60重量%~99.9重量%であってもよく、70重量%~99.9重量%であってもよく、80重量%~99.9重量%であってもよく、90重量%~99.9重量%であってもよい。
【0055】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤に含有されている抗DOCK8抗体以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、0.01mg~1000mg、0.1mg~1000mg、1mg~1000mg、1mg~900mg、1mg~800mg、1mg~700mg、1mg~600mg、1mg~500mg、1mg~400mg、1mg~300mg、1mg~200mg、または、1mg~100mgであってもよい。
【0056】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤の投与方法は、特に限定されず、経口的に投与されてもよいし、非経口的に、静脈内、直腸内、腹腔内、筋肉内、鼻内または皮下に投与されてもよい。
【0057】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防および/または治療剤の剤形は、特に限定されず、例えば、注射剤(例えば、腹腔内注射、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、または、点滴注射剤)、点鼻剤、または、坐剤であってもよい。
【0058】
〔2.自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチン〕
後述する実施例に示すように、抗DOCK8抗体によって、自己免疫疾患を予防および/または治療することができる。このことは、生体に投与されて抗DOCK8抗体の生産を誘導することができる物質(例えば、抗原)を含有しているワクチンも、自己免疫疾患を予防および/または治療することができることを示している。
【0059】
それ故に、本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンは、DOCK8タンパク質、DOCK8タンパク質の部分配列、または、DOCK8タンパク質若しくはDOCK8タンパク質の部分配列の発現ベクターを有効成分として含有している。
【0060】
例えば、本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンは、投与対象とは異なる種に由来するDOCK8タンパク質、投与対象とは異なる種に由来するDOCK8タンパク質の部分配列、または、投与対象とは異なる種に由来するDOCK8タンパク質若しくはDOCK8タンパク質の部分配列の発現ベクターを有効成分として含有していてもよい。
【0061】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンと、上述した自己免疫疾患の予防および/または治療剤とは、有効成分として用いる物質のみが異なり、その他の構成は同じであってもよい。本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンに関して、有効成分以外については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0062】
有効成分であるDOCK8タンパク質、および、DOCK8タンパク質の部分配列としては、配列番号1または5で示されるアミノ酸配列からなるヒト由来のポリペプチド、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるマウス由来のポリペプチド、および、これらのポリペプチドの部分配列を挙げることができる。
【0063】
上記部分配列を構成するアミノ酸の数は、特に限定されず、例えば、400個以下、350個以下、300個以下、200個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、または、10個以下であってもよい。また、上記部分配列は、DOCK8タンパク質の中の部分配列であればよく、DOCK8タンパク質中の位置は限定されない。
【0064】
DOCK8タンパク質、および、DOCK8タンパク質の部分配列は、公知の方法によって作製することができる。例えば、(i)公知のペプチド合成装置を用いて作製することも可能であるし、(ii)DOCK8タンパク質、および、DOCK8タンパク質の部分配列をコードするcDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを所望の宿主(例えば、大腸菌、および、酵母など)に導入することによって作製することも可能である。
【0065】
有効成分であるDOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列の発現ベクターは、DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列をコードするcDNAが、ベクターに発現可能に挿入されているものである。
【0066】
ベクターの具体的な例としては、特に限定されず、例えば、プラスミド、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および、レトロウイスルベクター)、または、ウイルス粒子を挙げることができる。当該ベクターに挿入されるプロモーターの具体的な例としては、特に限定されず、上述したベクターに応じて適宜選択すればよい。
【0067】
上記ベクターの中に、DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列をコードするcDNAが、発現可能に挿入される。当該cDNAの具体的な塩基配列は、特に限定されない。DOCK8タンパク質、または、DOCK8タンパク質の部分配列をコードするcDNAとしては、配列番号3で示される塩基配列からなるヒト由来のポリヌクレオチド、配列番号4で示される塩基配列からなるマウス由来のポリヌクレオチド、および、これらのポリヌクレオチドの部分配列を挙げることができる。
【0068】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンに含有されている有効成分の量は、特に限定されず、例えば、予防用および/または治療用のワクチンを100重量%とした場合に、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0069】
本実施の形態の自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンに含有されている抗有効成分の量は、特に限定されず、例えば、0.01mg~1000mg、0.1mg~1000mg、1mg~1000mg、1mg~900mg、1mg~800mg、1mg~700mg、1mg~600mg、1mg~500mg、1mg~400mg、1mg~300mg、1mg~200mg、または、1mg~100mgであってもよい。
【0070】
本発明の一態様は、以下のように構成することもできる。
【0071】
本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防および/または治療剤は、抗DOCK8抗体を有効成分として含有することを特徴としている。
【0072】
本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防および/または治療剤では、上記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)であることが好ましい。
【0073】
本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防および/または治療剤では、上記抗DOCK8抗体は、配列番号1、2または5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、当該ポリペプチドの部分配列に結合するものであることが好ましい。
【0074】
本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防および/または治療剤では、上記抗DOCK8抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0075】
本発明の一態様に係る自己免疫疾患の予防用および/または治療用のワクチンは、DOCK8タンパク質、DOCK8タンパク質の部分配列、または、DOCK8タンパク質若しくはDOCK8タンパク質の部分配列の発現ベクターを有効成分として含有していることを特徴としている。
【実施例】
【0076】
〔試験1〕
BALB/cマウス(Charles River Japan Inc.)に、卵白アルブミン(OVA:grade V; Sigma)0.5mg、または、PBSを、5日毎に繰り返し腹腔内投与した。これによって、自己免疫疾患の症状を呈するマウスを作製した。
【0077】
6回目、9回目および12回目のOVAの投与、並びに、6回目、9回目および12回目のPBSの投与の24時間前に、rabbit由来の抗DOCK8抗体50μg、または、control IgG(rabbit IgG)50μgを、BALB/cマウスの腹腔内へ投与した。
【0078】
なお、当該抗DOCK8抗体としては、市販の抗DOCK8ポリクローナル抗体(proteintech社、DOCK8 Polyclonal Antibody、Catalog No. 11622-1-AP、抗原:配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)を用いた。
【0079】
12回目のOVAの投与後、および、12回目のPBSの投与後に、アルブスティックス(登録商標)(SIEMENS)を用いた呈色反応により、全身性エリテマトーデスでの腎炎発症の指標となるタンパク尿(proteinuria)を検出した。また、周知の方法にしたがってHE(Hematoxylin-Eosin)染色を行い、WHOの分類にしたがって腎臓の病理学的評価を行った。具体的には、「Weening JJ et al., The classification of glomerulonephritis in systemic lupus erythematosus revised. J Am Soc Nephrol 15(2):241-250, 2004」に記載の基準にしたがって、観察した腎臓の症状を、クラスI~II、クラスIII、クラスIV、および、クラスVに分類し、腎臓の病理学的評価を行った。
【0080】
図1に、タンパク尿の試験結果を示し、下記の表1に、WHOの分類にしたがった腎臓の病理学的評価を示す。
【0081】
図1に示すように、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前にcontrol IgGを投与したBALB/cマウス群(
図1の「OVA×12 + control IgG」)では、タンパク尿が検出された。一方、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前に抗DOCK8抗体を投与したBALB/cマウス群(
図1の「OVA×12 + anti-DOCK8 Ab」)では、タンパク尿のレベルが低下した。なお、
図1において「PBS×12 + control IgG」は、6回目、9回目および12回目のPBSの投与前にcontrol IgGを投与したBALB/cマウス群の試験結果である。
【0082】
また、表1に示すように、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前にcontrol IgGを投与したBALB/cマウス群(表1の「OVA×12 + control IgG」)では、WHO分類におけるIV型およびV型など重症の腎炎が検出された。一方、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前に抗DOCK8抗体を投与したBALB/cマウス群(表1の「OVA×12 + anti-DOCK8 Ab」)では、腎炎がほぼ完全に抑制された。なお、表1において「PBS×12 + control IgG」は、6回目、9回目および12回目のPBSの投与前にcontrol IgGを投与したBALB/cマウス群の試験結果である。
【0083】
【表1】
〔試験2〕
BALB/cマウス(Charles River Japan Inc.)に、卵白アルブミン(OVA:grade V; Sigma)0.5mgを、5日毎に繰り返し腹腔内投与した。これによって、自己免疫疾患の症状を呈するマウスを作製した。
【0084】
6回目、9回目および12回目のOVAの投与の24時間前に、rabbit由来の抗DOCK8抗体(〔試験1〕に用いたものと同じ抗体)50μg、または、control IgG(rabbit IgG)50μgを、BALB/cマウスの腹腔内へ投与した。
【0085】
12回目のOVAの投与後に採血を行い、血清中の自己抗体(具体的には、RF(rheumatoid factor)、anti-Sm Ab、および、anti-dsDNA Ab)をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)により検出した。
【0086】
下記の表2にELISAの試験結果を示す。
【0087】
また、表2に示すように、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前にcontrol IgGを投与したBALB/cマウス群(表2の「OVA×12 + control IgG」)と比較して、6回目、9回目および12回目のOVAの投与前に抗DOCK8抗体を投与したBALB/cマウス群(
図3の「OVA×12 + anti-DOCK8 Ab」)では、3種類の自己抗体の全てが、有意に減少した。
【0088】
【表2】
〔試験3〕
BALB/cマウス(Charles River Japan Inc.)に、卵白アルブミン(OVA:grade V; Sigma)0.5mgを、5日毎に繰り返し腹腔内投与した。これによって、自己免疫疾患の症状を呈するマウスを作製した。
【0089】
12回目のOVAの投与の後、T細胞を幾つかの亜集団に分画した。周知の方法にしたがって、各亜集団のT細胞から、細胞質画分と、膜画分とを取得した。
【0090】
1レーンあたり10μgの細胞質画分、および、1レーンあたり10μgの膜画分を電気泳動(10%ポリアクリルアミドゲル)に供し、各画分に含有されるタンパク質を分離した。抗DOCK8抗体を用いたウエスタンブロット法にて、分離されたタンパク質に含まれているDOCK8タンパク質を検出した。その結果を
図2に示す。
【0091】
図2において、レーン1および5は、各々、Whole T細胞に由来する、細胞質画分および膜画分の試験結果である。また、レーン2および6は、各々、CD45RB
high122
high細胞に由来する、細胞質画分および膜画分の試験結果である。また、レーン3および7は、各々、PD-1
-CD45RB
low122
low細胞に由来する、細胞質画分および膜画分の試験結果である。また、レーン4および8は、各々、PD-1
+CD45RB
low122
low細胞に由来する、細胞質画分および膜画分の試験結果である。
【0092】
これらの細胞のうち、PD-1
+CD45RB
low122
low細胞に、自己応答性・自己抗体誘導性CD4 T細胞(autoantibody-inducing CD4 T cells;aiCD4 T細胞)が含まれている。また、
図2において、略230kDaの位置に観察される像が、DOCK8タンパク質に対応する。
【0093】
図2のレーン4および8から明らかなように、PD-1
+CD45RB
low122
low細胞では、細胞質画分のみならず、膜画分に多くのDOCK8タンパク質が含まれていた。このことは、D-1
+CD45RB
low122
low細胞では、細胞膜の表面に多くのDOCK8タンパク質が局在していることを示している。なお、抵DOCK8抗体を用いたフローサイトメトリーによってPD-1
+CD45RB
low122
low細胞を認識できることからも、D-1
+CD45RB
low122
low細胞では、細胞膜の表面に多くのDOCK8タンパク質が局在していると考えられる。
【0094】
これまでの研究から、CD4 T細胞亜集団(具体的には、PD-1+CD45RBlow122low)に含まれるaiCD4 T細胞が、多様な自己抗体を誘導するとともに、細胞傷害性T細胞(CTL)を成熟させて種々の臓器障害を惹起して、SLEを発症させることが知られている。それ故に、本試験結果は、細胞質画分に存在するDOCK8タンパク質のみならず、細胞膜の表面に存在するDOCK8タンパク質が、SLEの発症メカニズムに関与していることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の一態様は、自己免疫疾患の予防および/または治療に用いることができる。
【配列表】