(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】クリーナ
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20220309BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220309BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220309BHJP
【FI】
B08B5/00 A
B33Y80/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020113741
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】500469109
【氏名又は名称】有限会社タクショー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】添本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宇澤 啓
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195809(JP,A)
【文献】特開2020-075303(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031289(WO,A1)
【文献】実開平05-080573(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111330911(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00~ 5/04
H01L 21/304
B33Y 80/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状、凸状、又は凹凸状の三次元形状である被清浄面(11)を有するワーク(W)の該被清浄面(11)
の各部分に対して
直交方向からエアーを噴出する
多数のエアー噴出孔を有する除塵ヘッド(1)を
備え、該除塵ヘッド(1)は、上記被清浄面(11)の上記三次元形状に対して、小寸法(G)だけ離間させた三次元オフセット形状の凸状、凹状、又は凸凹状のワーク対応面(1a)を、備え
、上記除塵ヘッド(1)の上記ワーク対応面(1a)を、中央領域(C)、中間包囲領域(P)、外側包囲領域(S)の3領域に、仮想区画すれば、上記中央領域(C)に貫設の第1エアー噴出孔(H
1
)の直径をD
1
とし、上記中間包囲領域(P)に貫設の第2エアー噴出孔(H
2
)の直径をD
2
とし、上記外側包囲領域(S)に貫設の第3エアー噴出孔(H
3
)の直径をD
3
としたとき、D
1
>D
2
>D
3
なる不等式が成立するように設定したことを特徴とするクリーナ
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除塵を必要とする製品(ワーク)の表面を除塵するためのクリーナとして、エアー噴射ノズルと吸引ノズルを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の、従来のクリーナは、平面状の枚葉ワークを除塵するものであり、立体的な(三次元の)ワーク、すなわち、ダイビングゴーグルや、光学レンズや、実験用のシャーレ等の、三次元形状の製品には対応できなかった。また、立体的なワークに対応すべく改造した場合でも、ワークの各部分に対して除塵ヘッドとの隙間が大きく変動し、ワークの曲面部分の除塵が不十分になる欠点があった。特に、複雑な凹状、凸状、又は凹凸状の三次元形状のワークになると、除塵が一層困難になるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、立体的なワークに対応して、ワークの各部分に対してエアーを当てることができ、三次元形状のワークの被清浄面から効果的に除塵できるクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクリーナは、凹状、凸状、又は凹凸状の三次元形状である被清浄面を有するワークの該被清浄面の各部分に対して直交方向からエアーを噴出する多数のエアー噴出孔を有する除塵ヘッドを備え、該除塵ヘッドは、上記被清浄面の上記三次元形状に対して、小寸法だけ離間させた三次元オフセット形状の凸状、凹状、又は凸凹状のワーク対応面を、備え、上記除塵ヘッドの上記ワーク対応面を、中央領域、中間包囲領域、外側包囲領域の3領域に、仮想区画すれば、上記中央領域に貫設の第1エアー噴出孔の直径をD1 とし、上記中間包囲領域に貫設の第2エアー噴出孔の直径をD2 とし、上記外側包囲領域に貫設の第3エアー噴出孔の直径をD3 としたとき、D1 >D2 >D3 なる不等式が成立するように設定した。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るクリーナによれば、ワークの凹状、凸状、又は凹凸状の三次元形状の被清浄面の各部分に対して、直交方向からエアーを確実に当てて、一挙に能率良く十分な除塵を行うことができる。特に、被清浄面の各部分に対する直交方向からエアー噴出により、複雑な三次元形状の被清浄面を、迅速かつ確実に、十分な除塵を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態を示す全体断面図である。
【
図2】除塵ヘッドの一例を示す底面側から見た斜視図である。
【
図4】他の実施形態を示した使用状態の要部断面図である。
【
図5】別の実施形態を示した使用状態の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1、
図2、
図3に於て、1は除塵ヘッドであって、凹状の三次元形状の被清浄面11を有するワークWの該被清浄面11に対して、エアーを噴出して、除塵作用をなす。
この除塵ヘッド1は、ワークWの凹状の三次元形状の被清浄面11に対して、小寸法Gだけ離間した三次元オフセット形状の凸状のワーク対応面1aを、備える。
【0010】
そして、
図1~
図3に示す除塵ヘッド1は、金属3Dプリンタにて製作することが望ましい。具体的な形状は、ワークWの被清浄面11の凹状の三次元形状を記録した3Dデータをベースとして、前記小寸法Gだけオフセットした三次元オフセット形状を演算し、その演算結果によって、金属3Dプリンタを制御して、ワーク対応面1aが、やや小型の凸状のワーク対応面1aを、形成して、所定肉厚に除塵ヘッド1を製造する。
【0011】
さらに、
図1~
図3に示した除塵ヘッド1を具体的に説明すれば、楕円形乃至長円形の底壁部13と、略上方拡大状の周壁部14と、周壁部14の上端縁から外周方向へ突出形成された低い鍔部15とをもって一体に構成されている。
【0012】
図1に於て、上述の除塵ヘッド1は、複数個の円弧状のエアー吸込孔8を有する取付リング9を介して、エアー噴出吸入筒状体20の下端に、固着されている。あるいは、この取付リング9を除塵ヘッド1と一体形成するも望ましい。
図2は、そのように一体形成した実施例(一例)を示す。
前記鍔部15を下方から引掛状として、取付リング9は、除塵ヘッド1に外嵌し、かつ、ボルト(ネジ)16によって、エアー噴出吸入筒状体20の下端の底壁板21に、固着される。
【0013】
底壁板21は、中心に吐出孔22を有し、かつ、外周縁に沿って複数の吸入孔23を有し、取付リング9の前記エアー吸込孔8に連通状に、組立てられている。
【0014】
4は、(大径の)エアー吸引筒部であり、その下端面に底壁板21が固着される。しかも、底壁板21の上面には、天井板24A付の吐出エアー集合小箱体24が固着されている。
2は、図外のコンプレッサ等から圧送される高圧エアーを供給するエアー供給パイプであり、種々の継手25,26,27を介して、吐出エアー集合小箱体24の周囲壁部に、連通連結される。
【0015】
矢印F1 ,F2 ,F3 ,F4 は、エアー供給パイプ2からの高圧エアーの流れを順に示す矢印であって、除塵ヘッド1の内部にまで送られる。
他方、取付リング9のエアー吸込孔8から吸込まれたエアーは、矢印F10,F11,F12に示すように、吸入孔23を経て、エアー吸引筒部4内を上昇方向に吸引される。なお、5は吸引圧測定器である。このように、エアー吸込孔8を介して、外周から吸引するので、周辺(装置)を汚染しない。
【0016】
そして、
図2と
図3に於て、除塵ヘッド1のワーク対応面1aを、2点鎖線28をもって示すように、中央領域Cと中間包囲領域Pに底壁部13を仮想区画し、さらに、稜線29をもって、中間包囲領域Pと外側包囲領域Sに、仮想区画すれば、各々の領域C,
P,S毎に、エアー噴出孔の直径を、順次、小さく設定する。
言い換えれば、仮想区画した上記中央領域Cに貫設の第1エアー噴出孔H
1 の直径をD
1 とし、また、中間包囲領域Pに貫設の第2エアー噴出孔H
2 の直径をD
2 とし、外側包囲領域Sに貫設の第3エアー噴出孔H
3 の直径をD
3 としたとき、D
1 >D
2 >D
3 なる不等式が成立する。
【0017】
このように、各領域C,
P,S毎に、順次小さく設定することによって、
図1に於て示した、小寸法Gのギャップを流れるエアーが、中央領域Cからラジアル外方向にスムーズに流出して、エアー吸込孔8から矢印F
10方向へ確実に吸引されて、被清浄面11に付着していた粉塵等が迅速かつ確実に除去できる。
【0018】
次に、
図4は、他の実施形態を示す。ワークWが、凸状の三次元形状の被清浄面11を有する。除塵ヘッド1は、上記凸状の被清浄面11に対して、所定の小寸法Gだけ離間した三次元オフセット形状の凹状のワーク対応面1aを、有する。
この
図4の場合も、除塵ヘッド1は、金属3Dプリンタにて製作するのが、望ましい。
【0019】
上記凸状の被清浄面11及び凹状のワーク対応面1aの三次元形状は、(図示省略したが)平面視が楕円形、長円形、四角形、六角形、八角形等の各種形状である。
そして、
図4に於ても、中央領域Cと中間包囲領域Pと外側包囲領域Sに、仮想区画した場合、エアー噴出孔の直径を、順次、小さく設定する。つまり、前述したD
1 >D
2 >D
3 なる不等式が成立するように、エアー噴出孔の直径を設定し、小寸法Gのギャップを流れるエアーが、中央領域Cからラジアル外方向にスムーズに流出して、引続いて、除塵ヘッド1の外周面に沿って配設のエアー吸込孔8へ吸引できる。このように、確実にスムーズな除塵が実現できる。そして、外周のエアー吸込孔8からの吸引によって、周辺を汚染することがない。
【0020】
次に、
図5は、本発明の別の実施形態である。ワークWが、凹凸状の三次元形状の被清浄面11を有している場合を例示する。除塵ヘッド1は、凹凸状の被清浄面11に対して、所定の小寸法Gだけ離間した三次元オフセット形状の凸凹状ワーク対応面1aを、有する。
この
図5の場合も、除塵ヘッド1は、金属3Dプリンタにて製作するのが望ましい。
【0021】
さらに、
図5に於ては、ワークWは、底壁12の中央に凸隆部10を有する凹凸形状である場合を示したが、これを、
図4に示した既説の凸状被清浄面11に於る中央領域Cに、凹窪部を形成した凹凸形状であっても良い(図示省略)。
図5に於て、中央領域Cと中間包囲領域Pと外側包囲領域Sとに、仮想的に区画した場合、エアー噴出孔の直径を、順次、小さく設定する。つまり、
図1~3に於て述べた如く、D
1 >D
2 >D
3 なる不等式が成立するように、エアー噴出孔の直径を設定し、小寸法Gのギャップを流れるエアーが、中央領域Cからラジアル外方向にスムーズに流出して、複雑な三次元の被清浄面11に対しても、確実に均等かつ十分な除塵を実現できる。また、
図5の場合も、
図4と同様に、外周のエアー吸込孔8を設けて、周辺の汚染を防止している。
ところで、
図1に示すように、吐出エアー集合小箱体24の大き目の空間から小さ目の吐出孔22を介して矢印F
4 のように除塵ヘッド1の大き目の空間へ流入させることにより、超音波を発生させて、除塵効率を、さらに、高めることができる(
図4,
図5も同様である)。
【0022】
ところで、
図1~
図5のいずれに於ても、除塵ヘッド1のワーク対応面1aと、ワークWの被清浄面11との間には、小寸法Gの間隙を略均等に形成しているが、この小寸法Gとしては、1mm以上3mmとするのが望ましい。
G<1mmでは、ワーク対応面1aがワークWに接触する虞れが生ずる。また、G>3mmでは、除塵作用が低下する。
【0023】
図1に示すように、エアー供給パイプ2から矢印F
1 ,F
2 ,F
3 のように送られて、一旦集合小箱体24に集まって後、吐出孔22から矢印F
4 の如く、除塵ヘッド1の上方空間部1c内へ送り込まれた後、エアー噴出孔H
1 ,H
2 ,H
3 から、ワークWの被清浄面11に対して噴射され、微細な塵をも、効率的に、かつ、均等に、除去することができる。
エアー噴出圧力は、0.1MPa~0.3MPaの範囲内で選定(設定)するのが好ましい。
【0024】
顧客より、除塵を希望する製品の被清浄面11の三次元形状を記録した3Dデータを送付してもらい、この3Dデータをベースとして、除塵ヘッド1のワーク対応面1aの三次元オフセット形状を演算し、演算結果によって、金属3Dプリンタを制御して、ワーク対応面1aを形成する。この方法により、除塵ヘッド1のワーク対応面1aが、除塵を希望する製品の被清浄面11の三次元形状に対して、正確に三次元オフセット形状・寸法として形成される。なお、金属3Dプリンタの種類は、レーザー焼結法(SLS)や直接金属レーザー焼結法(DML)等の中から、除塵を希望する製品の被清浄面11の三次元形状・寸法の精度等を考慮して、最適なものを選択できる。
【0025】
既述したように、除塵ヘッド1は、中央領域C,中間包囲領域P,外側包囲領域Sの3つの仮想領域毎にエアー噴出孔Hの直径を、変化させているが、具体例としては、中央領域Cにおける第1エアー噴出孔H1 の直径は、0.95mm~1.05mm、中間包囲領域Pにおける第2エアー噴出孔H2 の直径は、0.75mm~0.85mm、外側包囲領域Sにおける第3エアー噴出孔H3 の直径は、0.55mm~0.65mmとする。この構成により、エアー吸込孔8から遠いほどエアー流量が多くなるため、エアーの流れがワーク対応面1aと被清浄面11との間で滞留せず、粉塵をスムーズにエアー吸込孔8へ送り込むことができる。
【0026】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、樹脂3Dプリンターによりワーク対応面1aを形成することも望ましい場合がある。
【0027】
本発明は、以上詳述したように、凹状、凸状、又は凹凸状の三次元形状である被清浄面11を有するワークWの該被清浄面11に対してエアーを噴出する除塵ヘッド1を有し、該除塵ヘッド1は、上記被清浄面11の上記三次元形状に対して、小寸法Gだけ離間させた三次元オフセット形状の凸状、凹状、又は凸凹状のワーク対応面1aを、備えているので、従来、至難とされていた複雑な三次元形状の(ワークWの)被清浄面11に対し、隅々まで均等にエアーを当てることができ、効果的に十分な除塵を行い得る。
【0028】
また、上記除塵ヘッド1は、金属3Dプリンタにて形成されているので、ワークWの細部の形状が複雑な凹状、凸状、あるいは凹凸状である場合にも、(金属3Dプリンタにより)ワーク対応面1aを高精度に形成することができる。
【0029】
また、上記被清浄面11の上記三次元形状を記録した3Dデータをベースとして、上記除塵ヘッド1の上記ワーク対応面1aの三次元オフセット形状を演算し、演算結果によって、金属3Dプリンタを制御して、上記ワーク対応面1aを形成したので、顧客の要望する被清浄面11の形状についての3Dデータを受け取って、個別の顧客の要望に対応した除塵ヘッド1を短い納期内で高精度に製作できる。
【0030】
また、除塵ヘッド1の上記ワーク対応面1aを、中央領域C、中間包囲領域P、外側包囲領域Sの3領域に、仮想区画すれば、上記中央領域Cに貫設の第1エアー噴出孔H1 の直径をD1 とし、上記中間包囲領域Pに貫設の第2エアー噴出孔H2 の直径をD2 とし、上記外側包囲領域Sに貫設の第3エアー噴出孔H3 の直径をD3 としたとき、D1 >D2 >D3 なる不等式が成立するように設定したので、エアー吸込孔8から離れた中央領域Cに対して十分強く圧縮エアーが噴射され、(中央領域Cにエアー流れの滞留を防止して)粉塵を除去可能となり、ワークWの被清浄面11の全面から均等に十分に除塵を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 除塵ヘッド
1a ワーク対応面
11 被清浄面
G 小寸法
W ワーク
C 中央領域
P 中間包囲領域
S 外側包囲領域
H1 ,H2 ,H3 エアー噴出孔
D1 ,D2 ,D3 (孔の)直径