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特許7037235産業機械システム、産業機械、管制装置、産業機械システムの制御方法、および、産業機械システムの制御プログラム
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  • 特許-産業機械システム、産業機械、管制装置、産業機械システムの制御方法、および、産業機械システムの制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】産業機械システム、産業機械、管制装置、産業機械システムの制御方法、および、産業機械システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20220309BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20220309BHJP
   A01C 21/00 20060101ALI20220309BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220309BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220309BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01M7/00 H
A01C21/00 Z
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64C27/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021522266
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020019925
(87)【国際公開番号】W WO2020241411
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019097459
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】村雲 泰
【審査官】田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105591(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017984(WO,A1)
【文献】特開2018-179631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01M 7/00
A01C 21/00
B64C 39/02
B64C 13/18
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
を含む産業機械システムであって、
前記管制装置は、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、
を備え
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、
前記記憶部に記憶された前記登録エリアの情報には、前記登録エリアの位置座標が含まれており、
前記判定部は、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較することで、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に前記産業機械の作業を禁止する、
産業機械システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記記憶部に記憶された前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定できない場合に、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業を禁止する、
請求項1記載の産業機械システム。
【請求項3】
前記産業機械を操作する操作器をさらに備え、
前記操作器は、前記判定部が前記記憶部に記憶された前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定できないと判定した場合に、当該判定結果に関する情報を報知する、
請求項1又は2記載の産業機械システム。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された前記登録エリアは、複数のエリア情報を含み、
前記判定部は、前記登録エリアとして記憶された複数のエリア情報から、前記作業エリアに対応するエリアを特定する、
請求項1乃至のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項5】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
を含む産業機械システムであって、
前記管制装置は、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、
を備え、
前記記憶部には、前記登録エリアの識別情報と、前記登録エリアを代表する代表点とが互いに対応付けられて記憶され、
前記判定部は、前記作業エリアの情報に基づいて定められる所定の点を1点規定し、前記所定の点と前記代表点との距離が最短となる登録エリアを、前記作業エリアに対応するエリアに選定する、
産業機械システム。
【請求項6】
前記所定の点は、前記作業エリアの頂点をつなぎ合わせて画定される多角形の心である、
請求項記載の産業機械システム。
【請求項7】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
を含む産業機械システムであって、
前記管制装置は、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記作業エリアと当該作業エリアに対応する前記登録エリアとの重複率が所定以上であるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可する、
産業機械システム。
【請求項8】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
を含む産業機械システムであって、
前記管制装置は、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記作業エリアの面積と、当該作業エリアに対応する前記登録エリアの面積との差異が所定以内であるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可する、
産業機械システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記作業エリアと当該作業エリアに対応する前記登録エリアとの重複率に基づく作業可否の閾値を、前記作業エリアに対応する前記登録エリアの面積に応じて異ならせる、
請求項記載の産業機械システム。
【請求項10】
前記判定部は、前記作業エリアを区画する前記作業エリアの外周において、前記外周が有する複数の頂点の位置座標が、前記作業エリアに対応するエリアの外周が有する頂点の位置座標から所定の範囲内にあるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可する、
請求項1乃至のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項11】
前記判定部は、前記作業エリアを区画する前記作業エリアの外周において、前記外周が有する複数の端辺の数、それぞれの位置座標、隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかが、前記作業エリアに対応するエリアの外周が有する端辺の数、位置座標、隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかから所定の範囲内にあるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可する、
請求項1乃至10のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項12】
前記管制装置は、
前記産業機械の作業目的を受信する受信部をさらに備え、
前記記憶部には、
前記登録エリアの識別情報と、当該登録エリアの識別情報と対応付けられた作業可能な作業種別と、が記憶されており、
前記判定部は、前記受信部で受信した前記産業機械の作業種別と、前記作業エリアに対応する前記登録エリアで作業可能な作業種別とが対応している場合に、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可する、
請求項1乃至11のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項13】
前記管制装置は、前記産業機械の識別情報を受信する受信部をさらに備え、
前記記憶部には、前記エリアの識別情報と、当該登録エリアの識別情報と対応付けられた作業可能とする前記産業機械の識別情報と、が記憶されていて、
前記判定部は、前記受信部で受信した前記産業機械の識別情報と、前記作業エリアに対応する前記登録エリアで作業可能とする産業機械の識別情報とが対応している場合に、前記作業エリアにおける産業機械の作業を許可する、
請求項1乃至12のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項14】
前記記憶部は、
外部サーバから受信するデータに基づいて前記登録エリアを更新可能であり、
前記外部サーバのデータと前記記憶部に記憶される前記登録エリアとを比較し、更新履歴があるか否かを判定し、前記更新履歴がある場合は、前記登録エリアの更新が完了するまで前記産業機械の作業を禁止する、又は、前記登録エリアを更新する、又は判定結果を産業機械の操作器へ報知する、
請求項1乃至13のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項15】
前記記憶部には、前記作業エリアに対応するエリアの情報の取得日時が記憶されていて、
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記作業エリアの情報の取得日時が前記産業機械の作業開始日時と所定以上の乖離がある場合、前記産業機械の作業を許可しない、
請求項1乃至14のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項16】
前記記憶部には、前記作業エリアの情報の取得日時が記憶されていて、
前記判定部は、前記作業エリアの取得日時が前記産業機械の飛行日時と所定以上の乖離がある場合、前記産業機械の作業を許可しない、又は、ユーザへ報知する、
請求項1乃至15のいずれかに記載の産業機械システム。
【請求項17】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
を含む産業機械システムの制御方法であって、
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、
前記記憶部に記憶された前記登録エリアの情報には、前記登録エリアの位置座標が含まれており、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶されている前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定ステップ、を含み、
前記判定ステップでは、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較することで、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に前記産業機械の作業を禁止する、
産業機械システムの制御方法。
【請求項18】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、
を含む産業機械システムの制御プログラムであって、
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、
前記記憶部に記憶された前記登録エリアの情報には、前記登録エリアの位置座標が含まれており、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部において記憶されている前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定命令と、
をコンピュータに実行させ、
前記判定命令は、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較することで、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に前記産業機械の作業を禁止する命令を含む、
産業機械システムの制御プログラム。
【請求項19】
産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、
送受信可能に接続可能な産業機械であって、
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、
前記作業エリアに対応するエリアを、あらかじめ取得されている登録エリアの位置座標情報に基づいて、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較して、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に、前記産業機械の作業を禁止する情報を前記管制装置から受信する、
産業機械。
【請求項20】
産業機械と、
前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、
送受信可能に接続可能な管制装置であって、
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、
あらかじめ取得されている登録エリアの位置座標が含まれる情報を記憶する記憶部と、
前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、備え、
前記判定部は、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較することで、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に前記産業機械の作業を禁止する、
管制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、産業機械システム、産業機械、管制装置、産業機械システムの制御方法、および、産業機械システム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1および2)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
操作者の所有圃場以外の領域や飛行禁止エリアが飛行エリアとして指定されると、ドローンが散布すべき圃場以外に薬剤を散布してしまい危険である。また、非正規の操作者が、ドローンの悪用を意図して、圃場以外の領域を指定して飛行させてしまう恐れがある。さらに、指定される飛行エリアに樹木や電柱等の障害物が配置されているにも関わらず飛行を開始してしまうものとすると、衝突および墜落の恐れがある。
【0004】
そこで、作業前に農機の作業可否を判定し、安全な作業を担保する産業機械システムが必要とされている。
【0005】
特許文献3には、飛行認証サーバにはデジタル化した地図上に飛行安全区域を格子状に画定した飛行安全区域データベースが備えられており、申請された飛行ルートが飛行安全区域から外れている場合には、その飛行を許可しない自律制御無人飛行体の飛行管理方法が開示されている。飛行申請に含まれる飛行プランは、飛行通過点や飛行到達点を含む飛行ポイントを、緯度、経度、高度、方位等のデータを入力することにより設定される。
【0006】
特許文献4には、飛行条件の制限が異なる空域を管理するとともに、飛行体が飛行不許可空域や飛行禁止空域に進入しないように、飛行体を制御する飛行体制御装置が記載されている。この飛行体制御装置は、飛行体の出発地と目的地を取得し、飛行禁止空域を避ける飛行経路を設定する。飛行計画は、緯度および経度の範囲により指定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許公開公報 特開2008-105591
【文献】国際公開公報 WO2017/115807
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
作業前に産業機械の安全な作業を担保する産業機械システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る産業機械システムは、産業機械と、前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、を含む産業機械システムであって、前記管制装置は、あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、を備える。
【0010】
前記判定部は、前記記憶部に記憶された前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定できない場合に、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業を禁止するものとしてもよい。
【0011】
前記産業機械を操作する操作器をさらに備え、前記操作器は、前記判定部が前記記憶部に記憶された前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定できないと判定した場合に、当該判定結果に関する情報を報知するものとしてもよい。
【0012】
前記エリア情報取得装置は、前記作業エリアの情報として前記作業エリアの位置座標を取得する測量装置、もしくは前記産業機械又は前記産業機械の操作器に搭載されて前記作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であり、前記記憶部に記憶された前記登録エリアの情報には、前記登録エリアの位置座標が含まれており、前記判定部は、前記作業エリアの位置座標と前記登録エリアの位置座標とを比較することで、前記登録エリアから前記作業エリアに対応するエリアを特定し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが有ると判定した場合に前記産業機械の作業を許可し、前記登録エリアに前記作業エリアに対応するエリアが無いと判定した場合に前記産業機械の作業を禁止するものとしてもよい。
【0013】
前記記憶部に記憶された前記登録エリアは、複数のエリア情報を含み、前記判定部は、前記登録エリアとして記憶された複数のエリア情報から、前記作業エリアに対応するエリアを特定するものとしてもよい。
【0014】
前記記憶部には、前記登録エリアの識別情報と、前記登録エリアを代表する代表点とが互いに対応付けられて記憶され、前記判定部は、前記作業エリアの情報に基づいて定められる所定の点を1点規定し、前記所定の点と前記代表点との距離が最短となる登録エリアを、前記作業エリアに対応するエリアに選定するものとしてもよい。
【0015】
前記所定の点は、前記作業エリアの頂点をつなぎ合わせて画定される多角形の心であるものとしてもよい。
【0016】
前記判定部は、前記作業エリアと当該作業エリアに対応する前記登録エリアとの重複率が所定以上であるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0017】
前記判定部は、前記作業エリアの面積と、当該作業エリアに対応する前記登録エリアの面積との差異が所定以内であるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0018】
前記判定部は、前記作業エリアと当該作業エリアに対応する前記登録エリアとの重複率に基づく作業可否の閾値を、前記作業エリアに対応する前記登録エリアの面積に応じて異ならせるものとしてもよい。
【0019】
前記判定部は、前記作業エリアを区画する前記作業エリアの外周において、前記外周が有する複数の頂点の位置座標が、前記作業エリアに対応するエリアの外周が有する頂点の位置座標から所定の範囲内にあるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0020】
前記判定部は、前記作業エリアを区画する前記作業エリアの外周において、前記外周が有する複数の端辺の数、それぞれの位置座標、隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかが、前記作業エリアに対応するエリアの外周が有する端辺の数、位置座標、隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかから所定の範囲内にあるとき、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0021】
前記管制装置は、前記産業機械の作業目的を受信する受信部をさらに備え、前記記憶部には、前記圃場の識別情報と、当該登録エリアの識別情報と対応付けられた作業可能な作業種別と、が記憶されており、前記判定部は、前記受信部で受信した前記産業機械の作業種別と、前記作業エリアに対応する前記登録エリアで作業可能な作業種別とが対応している場合に、前記作業エリアでの前記産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0022】
前記管制装置は、前記産業機械の識別情報を受信する受信部をさらに備え、前記記憶部には、前記圃場の識別情報と、当該登録エリアの識別情報と対応付けられた作業可能とする前記産業機械の識別情報と、が記憶されていて、前記判定部は、前記受信部で受信した前記産業機械の識別情報と、前記作業エリアに対応する前記登録エリアで作業可能とする産業機械の識別情報とが対応している場合に、前記作業エリアにおける産業機械の作業を許可するものとしてもよい。
【0023】
前記記憶部は、外部サーバから受信するデータに基づいて前記登録エリアを更新可能であり、前記外部サーバのデータと前記記憶部に記憶される前記登録エリアとを比較し、更新履歴があるか否かを判定し、前記更新履歴がある場合は、前記登録エリアの更新が完了するまで前記産業機械の作業を禁止する、又は、前記登録エリアを更新する、又は判定結果を産業機械の操作器へ報知するものとしてもよい。
【0024】
前記記憶部には、前記作業エリアに対応するエリアの情報の取得日時が記憶されていて、前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記圃場の情報の取得日時が前記産業機械の作業開始日時と所定以上の乖離がある場合、前記産業機械の作業を許可しないものとしてもよい。
【0025】
前記記憶部には、前記作業エリアの情報の取得日時が記憶されていて、前記判定部は、前記作業エリアの取得日時が前記産業機械の飛行日時と所定以上の乖離がある場合、前記産業機械の作業を許可しない、又は、ユーザへ報知するものとしてもよい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る産業機械システムは、所定の作業エリア内で作業を行う産業機械と、前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、を含む産業機械システムであって、前記管制装置は、あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、前記産業機械又は別の産業機械が前記作業とは異なる態様で移動する予備移動を行うことにより取得した前記作業エリアの情報と、前記記憶部に記憶された前記登録エリアの情報とを比較して、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、を備える。
【0027】
前記産業機械は、前記予備移動において、前記作業エリアの境界を移動し、前記作業エリアにおける前記作業の可否を確認するものとしてもよい。
【0028】
前記産業機械は、前記予備移動において、前記作業エリアにおける障害物の有無を確認するものとしてもよい。
【0029】
前記産業機械の前記予備移動によって前記作業エリアの周辺の情報を取得し、前記判定部は、前記予備移動により得られる情報に基づいて、障害物の有無を確認するものとしてもよい。
【0030】
前記産業機械は、前記予備移動において、前記作業よりも低速度で移動するものとしてもよい。
【0031】
前記産業機械は、ドローンであるものとしてもよい。
【0032】
前記産業機械は、農機であるものとしてもよい。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る産業機械システムの制御方法は、産業機械と、前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、を含む産業機械システムの制御方法であって、あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶ステップと、前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定ステップと、を含む。
【0034】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る産業機械システムの制御プログラムは、産業機械と、前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、を含む産業機械システムの制御プログラムであって、あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶命令と、前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定命令と、をコンピュータに実行させる。
【0035】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る産業機械は、産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、前記作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する管制装置と、送受信可能に接続可能な産業機械であって、前記作業エリアに対応するエリアを、あらかじめ取得されている登録エリアの情報から特定できるか否かに応じて求められる、前記産業機械の作業可否の情報を前記管制装置から受信する。
【0036】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る管制装置は、産業機械と、前記産業機械に作業を行わせる作業エリアの情報を取得するエリア情報取得装置と、送受信可能に接続可能な管制装置であって、あらかじめ取得されている登録エリアの情報を記憶する記憶部と、前記作業エリアに対応するエリアを前記記憶部に記憶された前記登録エリアから特定できるか否かに応じて、当該作業エリアにおける前記産業機械の作業可否を判定する判定部と、を備える。
【0037】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0038】
作業前に産業機械の安全な作業を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本願発明に係る産業機械システムの一例である、ドローンシステムが有するドローンの平面図である。
図2】上記ドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンシステムの全体概念図である。
図7】上記ドローンシステムの第2実施形態を示す全体概念図である。
図8】上記ドローンシステムの第3実施形態を示す全体概念図である。
図9】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
図10】上記ドローンおよび本願発明にかかる管制装置が有する、複数の上記ドローンの移動を管制する機能に関する機能ブロック図である。
図11】作業計画が有する情報を示すテーブルの例である。
図12】上記管制装置が有する記憶部に記憶されているテーブルの例であって、(a)ホワイトリストに記憶されている圃場に関する情報を示すテーブル、(b)作業計画に関する情報を示すテーブルである。
図13】上記ドローンシステムが、作業計画を取得するフローチャートである。
図14】上記ドローンシステムが、作業計画に基づく作業の可否を判定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0041】
まず、本発明にかかる産業機械システムが有する、ドローンの構成について説明する。産業機械は、例えば農機であり、ドローンは、農機の例である。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0042】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0043】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。図2、および、図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0044】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0045】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0046】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404は、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0047】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0048】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。圃場は、エリアの例である。
【0049】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。
【0050】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。また、営農クラウド405は、ドローン100とネットワークを介して接続されているサーバ装置等のハードウェアで構成されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0051】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。小型携帯端末401aは、ドローン100から情報を受信可能である。
【0052】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0053】
なお、図7に示す第2実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0054】
また、図8に示す第3実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0055】
図9に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0056】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0057】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0058】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0059】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513は障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、障害物接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0060】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0061】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0062】
図10に示すように、操作器401、エリア情報取得装置2、管制装置3、基地局404およびドローン100は、互いに直接又は間接的に、もしくはネットワークNWを介して互いに接続されている。
【0063】
操作器401は、送受信部4011、入力部4012および表示部4013を備える。送受信部4011は、ドローンシステム500上の各構成と情報を送受信する機能部であり、受信部の例である。入力部4012は、ドローン100の作業計画に関する情報を入力する機能部である。使用者は、入力部4012を介して、使用者の識別情報、作業するドローンの識別情報、ドローンの飛行目的、およびドローンが薬剤散布をする場合における薬剤の種類等を入力する。表示部4013は、液晶画面など使用者に情報を伝達するための適宜の構成である。
【0064】
エリア情報取得装置2は、ドローンに作業を行わせる作業エリアの情報を取得する機能部である。例えば、エリア情報取得装置2は、作業エリアの情報として作業エリアの位置座標を取得する測量装置である。この場合、エリア情報取得装置2は、RTK-GPSの移動局の機能を有する装置であり、圃場の座標情報を測量することができる。エリア情報取得装置2は、使用者により保持して歩行することが可能な小型の装置であり、例えば棒状の装置である。エリア情報取得装置2は、下端を地面についた状態で、使用者が直立して上端部を保持できる程度の長さの、杖のような装置であってもよい。エリア情報取得装置2は、ドローン100に作業を行わせる圃場の位置座標を取得する。
【0065】
ある圃場の座標情報を読み取るために使用可能なエリア情報取得装置2の個数は、1個であっても複数であってもよい。複数のエリア情報取得装置2により1か所の圃場に関する座標情報を測量可能な構成によれば、複数の使用者がそれぞれエリア情報取得装置2を保持して圃場を歩行することができるため、測量作業を短時間で完了することができる。
【0066】
また、エリア情報取得装置2は、圃場における障害物の情報を測量することができる。障害物は、ドローン100が衝突する危険のある壁や法面、電柱、電線などや、薬剤散布又は監視を要さない各種物体を含む。
【0067】
エリア情報取得装置2は、入力部201、座標検出部202および送信部203を備える。
【0068】
入力部201は、エリア情報取得装置2の上端部に設けられる構成であり、例えば使用者の押下を受け付けるボタンである。使用者は、エリア情報取得装置2の下端の座標を測量する際に、入力部201のボタンを押下する。
【0069】
また、入力部201は、入力される情報が圃場の外周に関する座標であるか、障害物の外周の座標であるかを区別して入力可能に構成されている。さらに、入力部201は、障害物の外周の座標を、障害物の種類と関連付けて入力可能である。
【0070】
座標検出部202は、基地局404と適宜通信を行ってエリア情報取得装置2の下端の3次元座標を検出可能な機能部である。
【0071】
送信部203は、入力部201への入力に基づいて、当該入力時のエリア情報取得装置2下端の3次元座標を、ネットワークNWを介して操作器401又は運転経路生成装置1に送信する機能部である。送信部203は、当該3次元座標を、ポインティングされた順番とともに送信する。
【0072】
圃場の座標情報を読み取る工程において、使用者は、エリア情報取得装置2を持って圃場を移動する。まず、当該圃場の3次元座標を取得する。使用者は、圃場の端点又は端辺上において入力部201によるポインティングを行う。次いで、使用者は、障害物の端点又は端辺上において入力部201によるポインティングを行う。
【0073】
ポインティングされて送信される圃場の端点又は端辺上の3次元座標は、圃場外周の3次元座標および障害物の3次元座標を区別して、運転経路生成装置1により受信される。また、ポインティングされる3次元座標は、操作器401の送受信部4011により受信され、表示部4013により表示されてもよい。また、操作器401は、受信される3次元座標が圃場外周又は障害物の3次元座標として適しているかを判定し、再測量が必要と判定される場合は、表示部4013を通じて使用者に再測量を促してもよい。
【0074】
なお、エリア情報取得装置2は、上述の構成に代えて、又は加えて、ドローン100又は操作器401に搭載され、作業エリア近傍の位置座標を取得する位置座標取得装置であってもよい。
【0075】
●ドローン
ドローン100は、飛行制御部21、散布制御部22および障害物情報取得部23を備える。ドローン100は、ドローンシステム500内に複数含まれていてもよい。
【0076】
飛行制御部21は、ドローン100が有するモーター102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部21は、例えばフライトコントローラー501の機能によって実現される。
【0077】
散布制御部22は、薬剤タンク104から薬剤を散布する機能部である。散布制御部22は、薬剤ノズル103やポンプ106を制御して、ドローン100下方に向かって薬剤を散布する。
【0078】
障害物情報取得部23は、圃場、圃場の境界付近および圃場周辺における情報を取得する機能部である。当該情報は、障害物の有無に関する情報を含む。障害物情報取得部23は、例えば図10に示すレーザーセンサー508、ソナー509、障害物検知カメラ513および障害物接触センサー515の一部又は全部により実現される。
【0079】
●管制装置
管制装置3は、その機能が基地局404にあってもよし、営農クラウド405すなわちサーバ上にあってもよいし、別途の装置であってもよい。また、管制装置3は、ドローン100が有する構成であってもよい。管制装置3は、受信部31、記憶部310、判定部32および飛行指示部33を備える。
【0080】
受信部31は、操作器401から、作業計画を受信する機能部である。図11に示すように、作業計画は、例えば、作業を予定する作業エリアの各頂点の三次元座標、作業種別、作業指示を行った管理者情報および作業予定のドローン100の識別情報を含む。作業エリアの座標は、エリア情報取得装置2から受信してもよい。作業種別は、ドローン100の飛行目的が薬剤散布か生育監視かの別や、散布薬剤の種類を含んでいてもよい。
【0081】
記憶部310は、ドローン100が飛行可能な圃場の情報がホワイトリストとして記憶されている機能部である。ホワイトリストとして記憶されているエリア、すなわち登録エリアは、複数のエリア情報を含む。ホワイトリストによるエリアのフィルタリング方式によれば、安全が確認されているエリアのみが確実に管理されるため、危険なエリアへのドローン100の侵入をほぼ完全に遮断することができる。
【0082】
図12(a)に示すように、記憶部310は、ドローン100が飛行可能な圃場の情報と、当該圃場のエリア種別と、管理者情報と、飛行可能とするドローン100の識別情報とが、ホワイトリストとして互いに対応付けられて記憶されている。また、ホワイトリストには、概略の住所や、所有者の情報が合わせて記憶されていてもよい。
【0083】
記憶部310に記憶されるホワイトリストは、外部サーバから受信するデータに基づいて構成されている。また、記憶部310は、外部サーバから受信するデータに基づいて、ホワイトリストを更新可能である。外部サーバは、例えば都道府県ごとに設置される農地中間管理機構、いわゆる農地バンクの情報を記憶部310に提供する。記憶部310は、農地バンクの情報から、圃場の座標や管理者情報を抽出し、ホワイトリストに反映する。
【0084】
ホワイトリストに登録されている圃場の情報は、例えば圃場の外周における位置座標であり、例えば3次元座標である。当該圃場の情報は、エリア情報取得装置2のある実施形態である測量装置同様の測量手法により、同等の精度を有するRTK-GPSの移動局で取得されることにより形成されている。すなわち、ホワイトリストは、各頂点の3次元座標の集合として取得され、管理されている。小規模農家においても使用される農業用ドローンは、特に薬剤散布において、飛行するエリアを数cm単位で精密に管理する必要がある。エリア情報取得装置2により作業エリアを各頂点の3次元座標の集合として取得し、ホワイトリストを規定する情報と同等の精度で作業エリアを定義する構成によれば、圃場に対する精密な作業管理が可能である。
【0085】
また、ホワイトリストは、登録されている圃場の識別情報と、当該圃場を代表する1個の代表点とが互いに対応付けられて記憶されている。代表点は、ホワイトリストの登録作業者が当該圃場内に適宜定める点である。代表点は、作業エリアに対応する圃場を特定するために用いられる。代表点を用いた対応圃場の特定手順については、後述する。
【0086】
エリア種別は、圃場が田圃であるか畑であるかの別や、および農薬の使用可否に関する情報を含む。管理者情報は、当該圃場の所有者や、圃場での作業を行う管理者の識別情報である。1個の圃場に、複数の管理者情報が紐づけられていてもよい。また、1個の管理者情報に、複数のドローンが紐づけられていてもよい。管理者情報およびドローン100の識別情報を対応づけるテーブルは、圃場の座標とエリア種別とを紐付けるテーブルとは別に管理されていてもよい。
【0087】
記憶部310は、ホワイトリストを更新した時刻を格納している。また、記憶部310は、ホワイトリストを圃場ごとに更新してもよく、更新された項目ごとに更新時刻を格納可能であってもよい。なお、記憶部310はホワイトリストを更新した日時を格納していてもよい。日時は、日付、ならびに日付および時刻の両方の概念を含む。記憶部310は、判定部32に参照される時に、又は定期的に、外部サーバに格納されているデータの更新日時を参照し、記憶部310に記憶されるホワイトリストの更新日時と相違する場合は、ホワイトリストを更新してもよい。
【0088】
図12(b)に示すように、記憶部310は、エリア情報取得装置2又は操作器401から受信した1又は複数の作業計画が記憶されていてもよい。また、記憶部310は、作業計画が格納された時点を、作業エリアごとに格納している。
【0089】
判定部32は、記憶部310に記憶されるホワイトリストに基づいて、作業エリアにおけるドローン100の飛行可否を判定する機能部である。判定部32は、ホワイトリストに登録エリアとして登録されている複数のエリア情報から、作業エリアに対応するエリアを特定できるか否かに応じて、ドローン10の作業可否を判定する。
【0090】
判定部32は、エリア情報取得装置2により取得される作業エリアの位置座標と、ホワイトリストに登録されている圃場との位置座標とを比較する。作業エリアの位置座標は、使用者により実際の圃場において取得される座標であるため、ホワイトリストに登録されている圃場を指定するとしても、座標の数値にずれが生じる。そこで、判定部32は、作業エリアとして指定されたエリアが、実質的にホワイトリストに登録されている圃場に対応するか否かを判定する。
【0091】
判定部32は、ホワイトリストに記憶されている圃場のうち当該作業エリアに最も近接する圃場(以下、「対応圃場」ともいう。)を特定する。判定部32は、作業エリアの情報に基づいて定められる所定の点を1点規定し、当該所定の点と、ホワイトリストに記憶されている代表点との距離が所定以内であるとき、当該圃場を対応圃場に選定する。距離が所定以内の代表点が複数ある場合は、最も近接する代表点が属する圃場を対応圃場としてもよい。
【0092】
判定部32は、例えば、作業エリアの頂点をつなぎ合わせて画定される多角形の心を、作業エリアに規定される所定の点としてもよい。多角形の心は、五心のいずれかであってよく、例えば図心である。
【0093】
代表点と所定の点との距離の閾値は、当該代表点が属する圃場に応じて異ならせる構成であってもよい。例えば、当該代表点が属する圃場の最も長い辺の長さに応じて閾値を決定してもよい。
【0094】
判定部32は、エリア情報取得装置2により取得される作業エリアの座標から、作業エリアの外周を確定し、作業エリアの面積を求める。また、判定部32は、当該対応圃場の面積を特定する。ホワイトリストに記憶されている圃場それぞれの面積は、あらかじめ計算されて記憶部310に格納されていてもよい。判定部32は、作業エリアと対応圃場との重複率が所定以上であるとき、作業エリアに対応するエリアを登録エリアから特定できるとして、作業エリアでのドローン100の飛行を許可する。
【0095】
また、判定部32は、前記作業エリアと前記対応圃場との重複率に基づく作業可否の閾値を、前記対応圃場の面積に応じて異ならせてもよい。判定部32は、対応圃場の面積が小さいとき、対応圃場の面積が大きい場合に比べて高い閾値を採用する。対応圃場の面積が小さい場合、作業エリアに対応圃場の厳密な形状が表現されていなくても重複率が高く算出されてしまう。対応圃場の外郭が凹凸の多い変形圃場においては、さらに顕著である。対応圃場の面積に応じて閾値を異ならせることにより、対応圃場の妥当性をより正確に判定することができる。
【0096】
判定部32は、作業エリアの面積と、対応圃場の面積との差異が所定以内であるとき、作業エリアに対応するエリアを登録エリアから特定できるとして、作業エリアでのドローン100の作業を許可する。本構成によれば、対応圃場の妥当性をより正確に判定することができる。
【0097】
判定部32は、作業エリアを区画する作業エリアの外周において、外周が有する複数の頂点の位置座標が、対応圃場の外周が有する頂点の位置座標から所定の範囲内にあるとき、作業エリアに対応するエリアを登録エリアから特定できるとして、作業エリアでのドローンの飛行を許可する。例えば、作業エリアが多角形状であるとき、判定部32は、対応圃場の頂点から、作業エリアの各頂点に近接する頂点を特定する。作業エリアの頂点ごとに、それぞれの距離を算出し、作業エリアが対応圃場に概ね包含されているものとして、作業エリアの位置座標という観点では、作業エリアでのドローン100の飛行を許可する。エリア情報取得装置2により取得される座標は、圃場の端点又は端辺上の座標であるので、作業エリアと対応圃場の端点座標を比較することで、原データに近い数値を用いた正確なエリアの比較を行うことができる。
【0098】
なお、作業エリアの外周が有する頂点の個数と、対応圃場の外周が有する頂点の個数とが異なっていても、作業エリアの各頂点に近接する対応圃場の頂点を特定し、各頂点の位置座標が対応圃場の外周が有する頂点のそれぞれの位置座標から所定の範囲内にあるとき、作業エリアに対応するエリアを登録エリアから特定できるとして、作業エリアにおけるドローン100の作業を許可する。
【0099】
判定部32は、作業エリアを区画する作業エリアの外周において、外周が有する複数の端辺の数、それぞれの位置座標、隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかが、対応圃場の外周が有する端辺の数、位置座標、および隣接する辺間の角度、および頂点の数のいずれかから所定の範囲内にあるとき、作業エリアの位置座標という観点では、作業エリアに対応するエリアを登録エリアから特定できるとして、作業エリアでのドローンの飛行を許可するものとしてもよい。
【0100】
判定部32は、記憶部310に記憶されたホワイトリストに登録されている圃場から作業エリアに対応するエリアを特定できない場合に、当該作業エリアにおけるドローン100の作業を禁止する。また、判定部32が記憶部310に記憶されたホワイトリストに登録されている圃場から作業エリアに対応するエリアを特定できない場合に、操作器401は当該判定結果に関する情報を報知してもよい。
【0101】
判定部32は、記憶部310に記憶されている作業計画の取得時刻がドローンの飛行予定時刻と所定以上の乖離がある場合、ドローン100の飛行を許可しない。作業計画の取得時刻が過去のものであると、圃場の形状や、障害物の有無等の情報が飛行予定時点と相違する恐れがあるためである。この場合、判定部32は、操作器401を通じて使用者に作業計画の再設定を促してもよい。また、判定部32は、記憶部310に記憶されている圃場の取得日時がドローン100の作業開始日時と所定以上の乖離がある場合、ドローン100の作業を許可しない。
【0102】
判定部32は、記憶部310を参照する時点で、外部サーバのデータと記憶部310とのデータを比較し、更新履歴があるか否かを判定する。判定部32は、更新履歴がある場合、すなわち記憶部310のホワイトリストに外部サーバの最新のデータが反映されていない場合、ドローン100の飛行を許可しない。また、判定部32は、飛行を不許可とした上で、操作器401を介して、ホワイトリストの更新を促す表示を行う。このとき、判定部32は、当該判定結果を、操作器401に報知する。判定部32は、ホワイトリストに登録されている登録エリアの更新が完了するまでドローン100の飛行を禁止する。また、判定部32は、ホワイトリストに登録されている登録エリアを更新する。判定部32は、登録エリアの更新後に作業エリアと登録エリアの比較を行い、作業可否の判定を行う。
【0103】
判定部32は、記憶部310に記憶されているホワイトリストの取得時刻がドローンの飛行予定時刻と所定以上の乖離がある場合、ドローン100の飛行を不許可としてもよい。また、判定部32は、飛行を不許可とした上で、操作器401を介して、ホワイトリストの更新を促す表示を行う。
【0104】
外部サーバにおける情報は、恒久的なものではなく、例えば家屋の増設や、公道の舗装に伴う圃場の境界の変更等、更新を要する。ホワイトリストを更新しないまま飛行可否を判定可能としてしまうと、増設された家屋に衝突したり、意図した圃場外で作業をしてしまう恐れがある。また、樹木が伸びたり増えたりする懸念もある。さらに、電柱が増設される場合もある。最新の情報を反映したホワイトリストにより飛行可否を判定することで、より安全かつ精確な作業が可能である。
【0105】
判定部32は、予定される作業計画と、対応圃場のエリア種別とに基づいて、圃場におけるドローン100の飛行可否を判定する。判定部32は、対応圃場のエリア種別を特定し、ドローンの作業種別と作業エリアの種別とが対応している場合に作業エリアでのドローンの飛行を許可する。薬剤散布用ドローンにおいては、圃場ごとに適切な薬剤を散布する必要がある。障害物との衝突の観点では飛行可能なエリアであっても、不適切な圃場に薬剤を散布すると、生育する作物が枯れてしまったり、例えば無農薬野菜等の意図した品質が損なわれる恐れがある。対応圃場のエリア種別に基づいて飛行可否を判定する構成によれば、薬剤の適切な散布を担保することができる。
【0106】
判定部32は、作業が予定されるドローン100の識別情報又は作業指示を送信した使用者情報と、圃場の管理者情報と、に基づいて、圃場におけるドローン100の飛行可否を判定する。ドローンが盗難や不正に取引された場合に、不正な利益を生じさせたり、本来の用途外の使用がなされる恐れがある。本構成によれば、ドローン100の盗難や不正取引を抑制し、ドローン100を適切に使用させることができる。
【0107】
また、判定部32は、後述するドローン100の予備飛行により得られる情報に基づいて、作業とともに行う飛行(以下、「本飛行」ともいう。)の可否を判定してもよい。
【0108】
飛行指示部33は、ドローン100に対する飛行指示を送信する機能部である。飛行指示部33は、判定部32によりホワイトリストの最終更新時点が飛行予定時点と所定以上の乖離がある場合、ドローン100に、作業時の飛行とは異なる態様で飛行する予備飛行を行わせる。
【0109】
予備飛行は、作業エリアでの飛行の前に、作業エリアにおける作業の可否を確認する飛行である。予備飛行は、予備移動の例である。予備飛行は、例えば作業エリアの境界を飛行する飛行である。特に、予備飛行は、作業エリアの境界に沿って飛行する飛行でもよい。作業エリアの境界は、作業エリアの中央部分に比べて、家屋の増設、圃場境界の変更等の変化がある可能性が高い。したがって、この構成によれば効率良く作業の可否を確認することができる。
【0110】
予備飛行は、障害物情報取得部23により、作業エリアの境界付近の飛行可否を確認しながら飛行する。予備飛行は、作業可否が未確認の経路を飛行するため、安全性の観点で作業時より低速度で飛行してもよい。
【0111】
予備飛行は、作業エリアの周辺の情報を取得する飛行であってもよい。特に、予備飛行において、作業エリアの周辺全体をカメラで撮影し、本飛行の可否を判定可能な情報を取得してもよい。このとき、判定部32は、保存されているホワイトリストと、取得される情報とを比較し、ホワイトリストとは異なる箇所について、飛行可否を判定してもよい。
【0112】
なお、予備飛行又は予備移動は、作業を行うドローン100とは別のドローン又はトラクター等の別の農機により行ってもよい。別のドローンは、予備飛行を行えれば足り、作業を行う必要がないので、作業を行うドローン100より小型であってもよい。
【0113】
●作業計画を管制装置に送信するフローチャート
図13に示すように、まず、エリア情報取得装置2が、作業エリアの座標を取得し、操作器401に送信する(S1)。次いで、操作器401に作業種別、管理者情報およびドローンの識別情報が入力され、作業エリアの座標と対応づけられて、作業計画として管制装置3に送信される(S2)。作業計画は、取得日時と共に記憶部310に記憶される(S3)。
【0114】
●管制装置が作業エリアの作業可否を判定するフローチャート
図14に示すように、まず、操作器401の入力部4012から作業計画が選択されると(S11)、当該作業計画が管制装置3に送信される。次いで、作業計画の取得時刻と飛行予定時刻との差が所定範囲内であるかを判定する(S12)。作業計画の取得時刻が飛行予定時刻と所定以上乖離している場合、判定部32は、操作器401を通じて使用者に作業計画の再取得を要請し(S21)、図14に示すステップS1に進む。
【0115】
作業計画の取得時刻と飛行予定時刻との差が所定範囲内であるとき、判定部32は、記憶部310に格納されているホワイトリストが外部サーバデータと一致しているか否かを判定する(S13)。具体的には、ホワイトリストのデータ以降に、外部サーバに更新履歴があるか否かを確認する。ホワイトリストが外部サーバデータと一致しておらず、更新履歴がある場合、飛行指示部33は、ドローン100に予備飛行を行わせる(S22)。
【0116】
判定部32は、予備飛行により得られた情報に基づいて、本飛行の可否を判定する(S23)。飛行可能と判断される場合、飛行指示部33は、ドローン100に飛行許可の指令を送信する(S24)。飛行不能と判断される場合、管制装置3は、操作器401を通じて飛行が不許可の旨を使用者に伝達する(S25)。また、このとき、操作器401を通じて、作業エリアの座標や障害物座標の確認を使用者に要請してもよい。
【0117】
ホワイトリストが外部サーバデータと一致しているとき、判定部32は、作業エリアの位置座標をホワイトリストの圃場の情報と比較する(S14)。判定部32は、作業エリアがホワイトリストの圃場と実質的に一致し、対応圃場が規定できるかを判定する(S15)。作業エリアがホワイトリストの圃場と実質的に一致しないとき、判定部32は、操作器401を通じて使用者に作業計画の再取得を要請し(S21)、図14に示すステップS1に進む。
【0118】
作業エリアに対応圃場が規定できるとき、判定部32は、作業計画に含まれるドローン100の識別情報が適正か判定する(S16)。具体的には、判定部32は、作業計画に含まれるドローン100の識別情報と、対応圃場に紐付けられているドローン100の識別情報とが合致しているかを判定する。ドローン100の識別情報が適正でないとき、管制装置3は、操作器401を通じて飛行が不許可の旨を使用者に伝達する(S25)。
【0119】
ドローン100の識別情報が適正であるとき、判定部32は、作業種別が適正であるか判定する(S17)。具体的には、作業計画に含まれる作業種別が、対応圃場に紐付けられているエリア種別において作業可能かを判定する。作業種別が適正でないとき、管制装置3は、操作器401を通じて飛行が不許可の旨を使用者に伝達する(S25)。
【0120】
作業種別が適正であるとき、飛行指示部33は、ドローン100に飛行許可の指令を送信する(S18)。
【0121】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途の自動運転機械全般の作業可否を判定するシステムに適用可能である。
【0122】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかる産業機械システムにおいては、産業機械の安全な作業を担保することができる。

図1
図2
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