(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ジッパーテープ付袋体
(51)【国際特許分類】
B65D 33/25 20060101AFI20220309BHJP
A44B 19/16 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B65D33/25 A
A44B19/16
(21)【出願番号】P 2015188951
(22)【出願日】2015-09-25
【審査請求日】2018-05-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 匠
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/041647(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161374(US,A1)
【文献】特開2014-161552(JP,A)
【文献】特開平4-339768(JP,A)
【文献】特開昭54-85882(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D33/25
A44B19/16
B65D77/30
B65D75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収納可能な収納空間を有する袋本体と、
前記袋本体の内面に接合されたジッパーテープと、を具備し、
前記ジッパーテープは、
一対の雄側鉤部および雌側鉤部が互いに係合可能な係合部と、前記係合部にそれぞれ連設する一対の帯状基部とを備え、
前記雄側鉤部を有する帯状基部にのみ、前記帯状基部の幅方向における前記収納空間とは反対側の前記係合部の基端に位置して、屈曲部が設けられ、
前記一対の帯状基部は、それぞれ前記袋本体に接合され、
前記雄側鉤部は、前記収納空間側に突出する第一雄側爪を有し、
前記雌側鉤部は、前記第一雄側爪が係合可能な第一雌側爪を有し、
前記屈曲部は、前記雄側鉤部を有する帯状基部の両面から厚さ方向で段差状となるように前記係合部に沿って凹溝状に設けられ
、
前記雄側鉤部は、前記第一雄側爪とは反対側に突出する第二雄側爪を有し、
前記雌側鉤部は、前記第二雄側爪が係合可能な第二雌側爪を有し、
前記第一雄側爪は、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部に対向する斜面を有し、前記斜面の接線と、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部の垂線とのなす角αが90°より小さい角度に形成され、
前記第二雄側爪は、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部に対向する斜面を有し、前記斜面の接線と、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部の垂線とのなす角βが90°より大きい角度に形成されている
ことを特徴とするジッパーテープ付袋体。
【請求項2】
請求項1に記載のジッパーテープ付袋体において、
前記屈曲部が設けられた帯状基部は、幅方向における前記係合部が設けられた位置よりも、前記収納空間側がさらに前記袋本体に接合されている
ことを特徴とするジッパーテープ付袋体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のジッパーテープ付袋体において、
前記屈曲部は、破線状に連なる複数の凹部である
ことを特徴とするジッパーテープ付袋体。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のジッパーテープ付袋体において、
前記ジッパーテープは、前記係合部を複数対有している
ことを特徴とするジッパーテープ付袋体。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載のジッパーテープ付袋体において、
前記袋本体の外面には、前記一対の帯状基部のうち前記屈曲部が設けられていない帯状基部が前記袋本体に取り付けられた位置に対して、前記収納空間側に位置して把持部が設けられている
ことを特徴とするジッパーテープ付袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパーテープ付袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被包装物を収納する袋体を開封した後、再封止可能としたジッパーテープ付袋体が広く利用されている。このようなジッパーテープ付袋体として、開封を補助する摘みを有した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のジッパーテープ付袋体は、被包装物を収納する収納空間を内部に有した袋本体を備え、この袋本体の開封された開口縁の内側に、係脱可能で開口を再封止するジッパーテープが設けられている。そして、袋本体の外面には、開口縁近傍に位置して舌片状に設けられた開封補助摘みが設けられている。そして、この開封補助摘みを持って開口縁を引っ張ることで、ジッパーテープの係合が解除され、袋本体が開封される構成が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被包装物の内容によっては、幼児や子供の手の届かない場所に保管することが好ましい。しかしながら、誤って幼児や子供の手が触れることがある。従来の開封を容易とする開封補助摘みを備えた構成では、幼児や子供でも容易に開封できてしまう不都合がある。
本発明は、不用意な開封を防止するジッパーテープ付袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のジッパーテープ付袋体は、被包装物を収納可能な収納空間を有する袋本体と、前記袋本体の内面に接合されたジッパーテープと、を具備し、前記ジッパーテープは、一対の雄側鉤部および雌側鉤部が互いに係合可能な係合部と、前記係合部にそれぞれ連設する一対の帯状基部とを備え、前記雄側鉤部または前記雌側鉤部を有する帯状基部の一方には、前記帯状基部の幅方向における前記収納空間とは反対側の前記係合部の基端に位置して、屈曲部が設けられ、前記一対の帯状基部は、それぞれ前記袋本体に接合されていることを特徴とする。
【0006】
この発明では、袋本体の開口部の縁を摘んで開口部を広げるように開封する通常の開封方法では、屈曲部の位置で帯状基部が屈曲するので、一対の帯状基部に沿って一対の帯状基部を剪断させる方向に開封力が作用することとなり、雄側鉤部および雌側鉤部が強く係合して、開封が抑制される。
一方、例えば、屈曲部が設けられていない帯状基部が設けた袋本体の外面(帯状基部より収納空間側)と、屈曲部が設けられた帯状基部が設けた袋本体の開口部の縁とを摘んで袋本体を広げるように引っ張ると、あるいは、袋本体の外面における帯状基部より収納空間側と帯状基部より開口部側とを互いに離間する方向に、指でスライドさせると、一対の帯状基部が離間して雄側鉤部および雌側鉤部の係合を解除するように開封力が作用し、容易に開封できる。
したがって、開封するためには特別な開封作業が必要となり、誤開封を防止できる。
【0007】
ここで、袋本体としては、例えば、一枚のフィルムを折り曲げて製造される構成、二枚のフィルムを重ね合わせて製造される構成、もしくは二枚以上のフィルムを用いて側面にマチを設けたガゼット袋やスタンディング袋など、種々形態のものが適用できる。
そして、帯状基部の袋本体との接合としては、ヒートシールの他、超音波による溶着、接着剤などを用いた接着など、帯状基部を袋本体に取り付ける各種方法を利用できる。
また、屈曲部としては、例えば他の部分に比べて薄肉、欠落、破線状に孔を連ねたいわゆるミシン目である目打ち、破線状に凹部を連ねたものなどの他、他の部分より柔らかい部材にて形成したり、蛇腹形状など、その部分で帯状基部が屈曲しやすい構成である。
【0008】
そして、本発明では、前記屈曲部が設けられた帯状基部は、幅方向における前記係合部が設けられた位置よりも、前記収納空間側がさらに前記袋本体に接合されている構成とすることもできる。
この発明では、例えば、開口され縁を摘んで無理に開封しようと大きな開封力を作用させると、屈曲部に大きな開封力が作用することとなる。このため、大きな開封力により屈曲部が切断されることで、開封された形跡を容易に判明できる。
【0009】
また、本発明では、前記屈曲部は、当該屈曲部が設けられた帯状基部の厚さより薄肉に形成されている構成とすることもできる。
この発明では、屈曲部を薄肉とする簡単な構造で、屈曲部の位置で屈曲する構成が得られる。
【0010】
さらに、本発明では、前記屈曲部は、前記袋本体の内面から離間されている構成とすることもできる。
この発明では、袋本体の内面から屈曲部を離間する構成とすることで、袋本体の内面に沿ってジッパーテープが融着されていない空隙部分が存在するため、この空隙部分に接する袋本体が屈曲しやすくなり、それに伴って、屈曲部も同時に屈曲する。したがって、屈曲部の位置でより小さい力で袋本体とともに屈曲することが可能となる。
【0011】
また、本発明では、前記屈曲部は、破線状に連なる複数の孔または凹部である構成とすることもできる。
この発明では、屈曲部を破線状に連なる複数の孔または凹部とする簡単な構造で、屈曲部の位置で屈曲する構成が得られる。
【0012】
そして、本発明では、前記屈曲部は、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部に設けられている構成とすることもできる。
ここで、雌側鉤部が設けられた帯状基部に屈曲部を設けた場合、雄側鉤部が設けられた帯状基部に設けた場合と逆側にせん断力が働く。このため、開封できるようにするためには、第一雄側爪の掛かりを少なくする必要がある。そうすると内圧に対して弱くなるため、屈曲部は雄側に設けることが好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記雄側鉤部は、前記収納空間側に突出する第一雄側爪と、前記第一雄側爪とは反対側に突出する第二雄側爪と、を有し、前記雌側鉤部は、前記第一雄側爪が係合可能な第一雌側爪と、前記第二雄側爪が係合可能な第二雌側爪と、を有し、前記第一雄側爪は、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部に対向する斜面を有し、前記斜面の接線と、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部の垂線とのなす角αが90°より小さい角度に形成され、前記第二雄側爪は、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部に対向する斜面を有し、前記斜面の接線と、前記雄側鉤部が設けられた帯状基部の垂線とのなす角βが90°より大きい角度に形成されている構成とすることもできる。
この発明では、収納空間側に突出する第一雄側爪は断面鉤形状に突出し、第一雄側爪とは反対側に突出する第二雄側爪は断面山形状に突出する形状とすることができる。このため、開封された袋本体の縁を開く通常の開封する方法には、一対の帯状基部を剪断させる方向に開封力が作用し、第一雄側爪と第一雌側爪とが強く係合し、誤開封を防止できる。一方、屈曲部が設けられていない帯状基部が設けた袋本体の外面(帯状基部より収納空間側)と、屈曲部が設けられた帯状基部が設けた袋本体の開口部の縁とを摘んで袋本体を広げるように引っ張ると、第二雄側爪および第二雌側爪は互いに離れて係合が外れる状態となり、容易に係合解除ができる。
【0014】
さらに、本発明では、前記ジッパーテープは、前記係合部を複数対有している構成とすることもできる。
この発明では、係合部を複数対設けることもできる。このことにより、係合力が増大し、より誤開封を防止できるとともに、封止性を向上できる。
ここで、複数対の係合部は、同一形状に限られるものではない。
【0015】
また、本発明では、前記袋本体の外面には、前記一対の帯状基部のうち前記屈曲部が設けられていない帯状基部が前記袋本体に取り付けられた位置に対して、前記収納空間側に位置して把持部が設けられている構成とすることもできる。
この発明では、屈曲部が設けられた帯状基部が接合された袋本体の開口された縁と、把持部とを持って袋本体を引っ張ることで、雄側鉤部および雌側鉤部の係合を解除するように開封力が作用する。このため、把持部を持って引っ張る簡単な作業で、容易に開封できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るジッパーテープ付袋体の正面図。
【
図4】前記ジッパーテープ付袋を製造する製造装置の概略構成図。
【
図5】前記ジッパーテープ付袋の開封を防止する状態を説明する要部断面図。
【
図6】前記ジッパーテープ付袋を開封する動作を説明する要部断面図で、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は開封された状態。
【
図7】本発明の第二実施形態に係るジッパーテープ付袋体を示す開封後の要部断面図。
【
図8】前記ジッパーテープ付袋の開封を防止する状態を説明する要部断面図。
【
図9】前記ジッパーテープ付袋を開封する動作を説明する要部断面図で、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は開封された状態。
【
図10】本発明の第三実施形態に係るジッパーテープ付袋体を示す平面図。
【
図12】前記ジッパーテープ付袋を製造する製造装置におけるジッパーテープ付袋体の把持部を形成する状況を示す説明図。
【
図13】前記ジッパーテープ付袋を開封する動作を説明する要部断面図で、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は開封された状態。
【
図14】本発明のさらに他の実施形態に係る前記ジッパーテープ付袋体の要部断面図。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態に係る前記ジッパーテープ付袋体の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
ここで、各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。なお、本発明のジッパーテープおよびジッパーテープ付袋体は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[第一実施形態]
図1~3には、第一実施形態のジッパーテープ付袋体が示されている。
第一実施形態では、ジッパーテープ付袋体として、食品、薬品、医療品、文具、雑貨などの各種物品を包装する袋体を例示するが、用途はこれらに限定されるものではない。
【0019】
{ジッパーテープ付袋体の構成}
図1には、ジッパーテープ付袋体1の正面が示されている。
図2には、ジッパーテープ付袋体1の断面が示されている。
図3には、ジッパーテープ付袋体1のジッパーテープ近傍の要部断面が示されている。なお、
図1~3は、説明の都合上、ジッパーテープを誇張して記載する。
図1において、ジッパーテープ付袋体1は、平面視で矩形状とされ被包装物を収納可能な袋本体10と、袋本体10の内面に、接合である取り付け例えばヒートシールされたジッパーテープ20と、を備えている。
【0020】
(袋本体の構成)
袋本体10は、フィルムである基材フィルム11A,11B(
図1では、11Aのみ示す)が重ね合わされ、重なり合う両縁に、折り線により内方に織り込まれたガゼットとしての一対の側面部10Aを有している。さらに、袋本体10は、重なり合う底部に、折り線により内方に織り込まれた底面部10Bを有している。
袋本体10は、基材フィルム11A,11Bと側面部10Aとの重なり合う両縁に、それぞれ対をなすサイドシール部12が形成されている。基材フィルム11A,11Bと底面部10Bとの重なり合う両縁に、それぞれボトムシール部13が形成されている。重ね合わされた基材フィルム11A,11Bのサイドシール部12とは直交する端縁部で、ボトムシール部13とは反対側の端縁に、トップシール部14が形成されている。
そして、袋本体10は、サイドシール部12、ボトムシール部13およびトップシール部14により、内部に被包装物P(
図2参照)が収納される収納空間10Cが区画形成される。
【0021】
この袋本体10の対向する基材フィルム11A,11Bに、ジッパーテープ20が取り付けられている。
なお、袋本体10のサイドシール部12のうち、ジッパーテープ20の長手方向の両端は、平坦化された図示しないポイントシール部とされている。
【0022】
トップシール部14には、孔状の持ち手14Aが2つ設けられている。
持ち手14Aは、基材フィルム11A,11Bに形成された平面長円状の孔部である。なお、孔部の形状は平面長円状に限定されるものではなく、平面円形、平面矩形状、平面三角形状などであってもよく、孔の数も1以上で好適に把持することができる。また、持ち手14Aとしては、紐状の別部材を取り付けて把持可能とした構成など、各種形状のものを適用できる。なお、持ち手を設けない構成としてもよい。
【0023】
また、袋本体10には、ジッパーテープ20の長手方向の両端と、袋本体10のサイドシール部12の周縁とが交差する位置と、トップシール部14とサイドシール部12の周縁とが交差する位置との間に、ノッチ17が切り込み形成されている。
【0024】
基材フィルム11A,11Bとしては、例えば、(直鎖状)低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene:LLDPE)、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)などの熱可塑性樹脂にて形成された単層または多層のフィルムを利用できる。多層のフィルムとしては、表基材に、二軸延伸したポリプロピレン(Oriented Polypropylene:OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、二軸延伸ナイロン(ONy)、キャストポリプロピレン(Cast Polypropylene:CPP)などを用いることができる。なお、多層フィルムとして、いわゆるガスバリアーや遮光などの目的で、アルミニウム蒸着やアルミニウム箔の積層など、無機系の層を備えた構成としてもよい。
また、基材フィルム11A,11Bは、包装袋用材料であれば特に限定されないが、例えば厚み寸法が10μm以上200μm以下であることが好ましい。厚み寸法が10μm未満であると、シール強度、袋強度が弱くなる場合がある。一方、厚み寸法が200μmを超えると、屈曲部が屈曲しないため、袋の開封がしにくくなる場合がある。
【0025】
(ジッパーテープの構成)
ジッパーテープ20の要部断面が
図2,3に示されている。
図2および
図3に示される通り、ジッパーテープ20は、互いに係脱可能とされた雄部材21と、雌部材22とを備えている。
雄部材21と雌部材22とは、基材フィルム11A、11Bの対向する内面にそれぞれヒートシールや接着などの適宜な方法で接合されている。
【0026】
雄部材21は、袋本体10の内面に接合、例えばヒートシールされる帯状基部である雄側帯状基部21Aと、雄側帯状基部21Aに連続する雄側鉤部としての雄部21Bと、を有する。雄部21Bは、雄側帯状基部21Aの長手方向(
図2の紙面貫通方向)に沿って形成されている。なお、
図2において、雄側帯状基部21Aが袋本体10にヒートシールされた位置を、太線で示す。
また、雄側帯状基部21Aには、係合部23の基端となる雄部21Bの基端で、当該雄側帯状基部21Aの幅方向における収納空間10Cとは反対側に位置して、屈曲部21Cが設けられている。この屈曲部21Cは、雄側帯状基部21Aの両面から厚さ方向で段差状となるように、係合部23に沿って凹溝状に設けられている。
なお、屈曲部21Cは、凹溝状に一連に形成される場合に限らず、破線状に孔や凹部が連なるように設けられていてもよい。さらには、例えば、断面V溝状に欠落した形状としたり、他の部分より柔らかい部材にて形成したり、蛇腹形状に形成したりするなど、その部分で雄側帯状基部21Aが屈曲しやすい構成であればよい。
【0027】
そして、雄部21Bは、収納空間10C側に突出する第一雄側爪21B1と、この第一雄側爪21B1とは反対側に突出する第二雄側爪21B2と、を有している。
第一雄側爪21B1は、雄側帯状基部21Aに対向する収納側斜面21B3を有し、この収納側斜面21B3の接線21B4と、雄側帯状基部21Aの垂線21B5とのなす角αが、90°より小さい角度の断面鉤形状に形成されている。
一方、第二雄側爪21B2は、雄側帯状基部21Aに対向する開口側斜面21B6を有し、開口側斜面21B6の接線21B7と、雄側帯状基部21Aの垂線21B5とのなす角βが、90°より大きい角度の断面山形状に形成されている。
ここで、接線21B4は、収納側斜面21B3が平面であればその平面の接線であり、湾曲する面であれば、変曲点Sを通る接線である。接線21B7についても同様である。
【0028】
雌部材22は、袋本体10の内面に接合、例えばヒートシールされる帯状基部である雌側帯状基部22Aと、雌側帯状基部22Aから突出して設けられ、雄部21Bと係脱可能な雌側鉤部としての雌部22Bと、を有する。雌部22Bは、雌側帯状基部22Aの長手方向(
図2の紙面貫通方向)に沿って形成されている。なお、
図2において、雌側帯状基部22Aが袋本体10にヒートシールされた位置も同様に、太線で示す。
雌部22Bは、第一雄側爪21B1が係合可能な第一雌側爪22B1と、第二雄側爪21B2が係合可能な第二雌側爪22B2と、が対向するように形成されている。
そして、ジッパーテープ20は、雄部21Bと雌部22Bとにより、本発明の係合部23が構成される。
【0029】
このようなジッパーテープ20は、例えばポリオレフィン系樹脂を用いて形成されている。なお、ジッパーテープ20は、長手方向に対して折り曲げることで、その状態を保持する形状保形性を有するように形成してもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(H-PP)、ブロックポリプロピレン(B-PP)、ランダムポリプロピレン(R-PP)、プロピレン-エチレン-ブテン1ランダム三元共重合体などが利用できる。
【0030】
そして、ジッパーテープ付袋体1は、ボトムシール部13が設けられたジッパーテープ付袋1A(
図4参照)が製造され、このジッパーテープ付袋1Aの開口する図示しない投入口から被包装物Pが投入される。この後、投入口が封止されることで、被包装物Pを収納したジッパーテープ付袋体1が得られる。
【0031】
{ジッパーテープ付袋体の製造}
次に、第一実施形態のジッパーテープ付袋体1を製造する動作として、被包装物Pを収納する前のジッパーテープ付袋を製造する動作について、図面を参照して説明する。なお、ジッパーテープ付袋を製造するには、種々の方法を採用することができる。
図4には、ジッパーテープ付袋を製造する製造装置の概略構成図が示されている。
【0032】
(製造装置)
図4に示す製造装置5は、いわゆる三方製袋機を基本構成とするもので、雄部材21および雌部材22を、基材フィルム11A、11Bにそれぞれ接合し、ジッパーテープ付袋1Aを製袋するものである。
製造装置5は、基材フィルム11A、11Bを送り出すフィルム供給部51と、雄部21Bおよび雌部22Bが係合されたジッパーテープ20を送り出すテープ部材供給機構である一対のテープ供給部52と、雄部材21および雌部材22を基材フィルム11A,11Bにそれぞれヒートシールし、袋本体10を製袋してジッパーテープ付袋1Aを形成させる製袋部54と、などを備えている。
【0033】
フィルム供給部51は、フィルム11を巻回したフィルム巻取ロール111が着脱可能に装着され、フィルム11を図示しない切断刃などにて基材フィルム11A,11Bに切断し、得られた基材フィルム11A,11Bを送り出す。
なお、基材フィルム11A,11Bの送り出しは、例えば連続的に一定速度で送り出す構成に限らず、間欠的に送り出す構成とするなど、いずれの送出方法を適用できる。
【0034】
テープ供給部52は、ジッパーテープ20を巻回したテープ巻取ロール521を着脱可能に装着し、ジッパーテープ20を送り出す。送り出されたジッパーテープ20は、基材フィルム11A,11Bが送り出される方向に対して側方からそれぞれ供給させ、ローラなどを用いて、所定位置で基材フィルム11A,11Bが送り出される方向に曲げられ、基材フィルム11A,11Bの間に送り出される。
ジッパーテープ20の送り出しは、例えば連続的に一定速度で送り出す構成に限らず、間欠的に送り出す構成とするなど、いずれの送出方法を適用できる。
【0035】
製袋部54は、テープ供給部52から送り出されたジッパーテープ20の雄部材21および雌部材22を、基材フィルム11A,11Bにそれぞれヒートシールする一対のシールバー541と、重なり合う基材フィルム11A,11Bに底面部10Bを設ける図示しないボトム形成部と、重なり合う基材フィルム11A,11Bに側面部10Aを設ける図示しない側面形成部と、ジッパーテープ付袋1Aを切り出す第一切断部545および第二切断部546と、などを備えている。
【0036】
ボトム形成部は、基材フィルム11A,11Bに底面部10Bをヒートシールしてボトムシール部13を形成するボトムシールバー543を備えている。
側面形成部は、基材フィルム11A,11Bに側面部10Aをヒートシールし、サイドシール部12を形成するサイドシールバー544を備えている。
【0037】
なお、基材フィルム11A,11Bと、雄部材21および雌部材22との接合は、ヒートシールに限らず、超音波による溶着、接着剤などを用いた接着など、各種方法を利用できる。
そして、製造装置5の次工程として、形成されたジッパーテープ付袋1Aに被包装物Pを充填する充填装置(図示せず)が備えられている。
【0038】
(ジッパーテープ付袋体の製造方法)
次に、ジッパーテープ付袋体1の被包装物Pを収納する前のジッパーテープ付袋1Aを、上記製造装置5を用いて製造する製造方法について、図面を参照して説明する。
【0039】
ジッパーテープ付袋1Aの製造方法は、例えば
図4に示す三方製袋する製造装置5を用いて製造され、フィルム11を供給するフィルム供給工程と、ジッパーテープ20を供給するテープ供給工程と、雄部材21と雌部材22とを、基材フィルム11A,11Bにそれぞれヒートシールする取付工程と、基材フィルム11A,11Bからジッパーテープ付袋1Aを形成させる製袋工程と、などを実施する。
【0040】
まず、フィルム11を巻回したフィルム巻取ロール111をフィルム供給部51に装着しておく。
また、雌部材22と、雄部材21とを、それぞれ押出成形などによって成形しておく。そして、雌部材22の雌部22Bと、雄部材21の雄部21Bとが係合され、一体のジッパーテープ20としてテープ巻取ロール521に巻回し、テープ巻取ロール521をテープ供給部52に装着しておく。
【0041】
そして、フィルム供給工程では、フィルム巻取ロール111から供給されるフィルム11を、切断刃などにより、フィルム11の送り出し方向に対して、交差する方向で二等分するようにフィルム11を切断する。この切断により、基材フィルム11A,11Bが切り出され、下流側に送り出される。
【0042】
また、テープ供給工程では、フィルム供給工程で二枚に重ね合わされて送り出された基材フィルム11A,11B間に、テープ巻取ロール521から引き出されたジッパーテープ20を送り出す。
取付工程では、雄部材21および雌部材22の幅方向の両端部分を、シールバー541により、一方の基材フィルム11A,11Bにそれぞれ接合、すなわちヒートシールする。
製袋工程では、取付工程で雄部材21および雌部材22が取り付けられた基材フィルム11A,11Bに、ボトムシールバー543によりボトムシール部13を形成して底面部10Bを設けた後、サイドシールバー544によりサイドシール部12を形成して一対の側面部10Aをそれぞれ設け、ジッパーテープ20が取り付けられたガゼット形状の袋本体10を製袋し、ジッパーテープ付袋1Aが製造される。
そして、得られたジッパーテープ付袋1Aは、次工程の充填工程により、開口する図示しない投入口から被包装物Pが投入された後、投入口の縁に、トップシール部14および持ち手14Aが設けられて投入口が封止される。この充填工程により、被包装物Pを収納したジッパーテープ付袋体1が得られる。
【0043】
{ジッパーテープ付袋体の使用}
次に、上記ジッパーテープ付袋体1の使用状況を説明する。
図5には、開口された縁を持って開封する際の誤開封防止の状況を示す要部断面が示されている。
図6には、開口された縁と袋本体の外面とを持って開封する際の開封状況を示す要部断面が示され、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は係合部の係合が解除された状態である。
【0044】
まず、使用者がジッパーテープ付袋体1から被包装物を最初に取り出すにあっては、
図5に示すように、ノッチ17から基材フィルム11A,11Bを引き裂いて、トップシール部14側を切除することで開口部18が形成されて開封される。
ここで、子供が興味本位で開封したり、改竄目的などで開封したりする場合など、通常の開口部18の対向する縁を持って、開口部18を広げて係合部23の係合を解除しようとした場合、誤開封が防止される。具体的には、
図5に示すように、雄側帯状基部21Aに設けられた屈曲部21Cが折れ曲がるように開口部18が広げられ、
図5中の矢印で示す方向に引っ張り力が作用する。このため、開封のための引っ張り力は、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとの平面に沿って、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとを剪断させる方向に力が作用する。したがって、断面鉤形状の第一雄側爪21B1と第一雌側爪22B1とが互いに噛み合う状態となり、第一雄側爪21B1と第一雌側爪22B1とが強く係合し、誤開封や改竄のための開封が防止される。
このように、化粧品や薬品など、あるいは細かい部品など、幼児や子供から遠ざけておきたい物などが誤開封されて取り出されてしまったり、改竄を目的として開封されてしまったりすること防止できる。
【0045】
一方、袋本体10に予め収納された被包装物Pの利用者が被包装物Pを取り出すため、あるいは、袋本体10に被包装物Pを新たに収納するため、係合部23の係合を解除する場合には、特異な開封方法が実施される。すなわち、屈曲部21Cを有しない雌側帯状基部22Aがヒートシールされた袋本体10の外面、具体的には雌側帯状基部22Aより収納空間10C側の外面と、屈曲部21Cを有する雄側帯状基部21Aがヒートシールされた袋本体10の開口部18の縁とを摘んで、袋本体10を広げるように引っ張る。なお、摘む位置としては、例えば袋本体10に印刷などにより示されていると、利用者は開封作業が容易となる。
この袋本体10を広げる引っ張り力は、
図6(A)中の矢印に示すように作用し、第二雄側爪21B2と第二雌側爪22B2とが引っ掛かり合う状態となる。この
図6(A)に示す状態では、第二雄側爪21B2が断面山形状のため、引っ張り力は第二雄側爪21B2が第二雌側爪22B2を乗り越えるように作用し、比較的に小さい力で係合部23の係合を解除できる。
なお、袋本体10の外面、すなわち、雌側帯状基部22Aより収納空間10C側の外面と、雄側帯状基部21Aより開口部18側の外面とを、互いに離間する方向に、指でスライドさせても、同様に開封できる。
そして、被包装物Pを取り出しあるいは収納した後は、再び雄部21Bおよび雌部22Bを係合させることで、袋本体10は再封止される。
【0046】
{第一実施形態の効果}
上述したように、上記第一実施形態では、雄側帯状基部21Aの幅方向における係合部23の基端の開口部18側に、屈曲部21Cを設ける。そして、雄側帯状基部21Aおよび雌側帯状基部22Aの幅方向の開口部18側を、袋本体10の内面にヒートシールしている。
この構成により、袋本体10の開口部18の対向する縁を摘んで、開口部18を広げるように開封する通常の開封方法では、屈曲部21Cの位置で雄側帯状基部21Aが屈曲するので、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとを剪断させる方向に引っ張り力が作用する。このため、第一雄側爪21B1および第一雌側爪22B1が強く噛合して、係合部23の係合が解除されることを防止できる。
したがって、開封するためには特別な開封作業が必要となり、誤開封を防止できる。
【0047】
そして、上記第一実施形態では、屈曲部21Cを有する雄側帯状基部21Aは、幅方向における係合部23の位置よりも収納空間10C側が、さらに袋本体10の内面にヒートシールされている。すなわち、雄側帯状基部21Aおよび雌側帯状基部22Aは、それぞれ幅方向の両端側がヒートシールされた四点シールとされている。
このため、例えば、開口された開口部18の縁を摘んで無理に開封しようとして、大きな開封力である引っ張り力を作用させた場合、薄肉の屈曲部21Cに大きな引っ張り力が作用し、屈曲部21Cが切断されてしまう。したがって、無理に開封しようとした形跡を容易に判明でき、改竄を防止できる。
【0048】
また、上記第一実施形態では、屈曲部21Cを薄肉としている。
このため、薄肉とする簡単な構造で、屈曲部21Cの位置で雄側帯状基部21Aが屈曲する構成が得られる。
【0049】
さらに、上記第一実施形態では、屈曲部21Cを袋本体10の内面から離間するように設けている。
このため、袋本体10の内面に沿ってジッパーテープ20が融着されていない空隙部分が存在するため、この空隙部分に接する袋本体10が屈曲しやすくなり、それに伴って、屈曲部21Cも同時に屈曲する。したがって、屈曲部21Cの位置でより小さい力で袋本体10とともに屈曲する状態が得られる。したがって、開口部18の縁を持って係合部23の係合を解除しようとした際、この時の引っ張り力が、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとを剪断させる方向に作用しやすくなる。よって、第一雄側爪21B1および第一雌側爪22B1が強く噛合する状態が得られ、より誤開封を防止できる。
【0050】
また、上記第一実施形態では、収納空間10C側に突出する第一雄側爪21B1を断面鉤形状となるように形成し、第一雄側爪21B1とは反対側に突出する第二雄側爪21B2は断面鉤形状となるように形成している。
このため、開封された袋本体10の開口部18の縁を開くように開封する通常の開封方法では、屈曲部21Cで雄側帯状基部21Aが屈曲し、雄側帯状基部21Aおよび雌側帯状基部22Aを剪断させる方向に引っ張り力が作用する。したがって、断面鉤形状の第一雄側爪21B1と第一雌側爪22B1とが強く噛合して、誤開封を防止できる。
一方、開封する場合には特異な開封方法で開封する。すなわち、雌側帯状基部22Aがヒートシールされた袋本体10の雌側帯状基部22Aより収納空間10C側と、屈曲部21Cを有する雄側帯状基部21Aがヒートシールされた袋本体10の開口部18の縁とを摘んで、袋本体10を広げるように引っ張る。すると、断面山形状の第二雄側爪21B2および第二雌側爪22B2は、互いに離れて係合が外れる状態となり、容易に係合を解除できる。このように、開封する場合には容易に開封できるとともに、誤開封をより防止できる。
【0051】
そして、上記第一実施形態では、雄部材21側に屈曲部21Cを設けている。
ここで、雌部22Bが設けられた雌側帯状基部22Aに屈曲部21Cを設けた場合、雄部21Bが設けられた雄側帯状基部21Aに設けた場合と逆側にせん断力が働く。このため、開封できるようにするためには、第一雄側爪21B1の掛かりを少なくする必要がある。そうすると内圧に対して弱くなるため、屈曲部21Cは雄部材21側に設けることが好ましい。
【0052】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。
図7には、第二実施形態におけるジッパーテープ付袋体の開封後の要部断面が示されている。
この第二実施形態では、第一実施形態における係合部の他に、さらに別の係合部としての係合鉤部を設けたものである。
【0053】
{ジッパーテープの構成}
具体的には、雄部材21は、雄側帯状基部21Aと、雄部21Bと、雄側鉤部21Dとを有している。
雄側鉤部21Dは、雄部21Bより収納空間10C側に位置して、雄部21Bと平行に設けられている。なお、雄部21Bと雄側鉤部21Dとは、平行に限らない。例えば、互いに波形状に形成されたものなどでは並列状とされていればよい。
そして、雄側鉤部21Dは、収納空間10C側に突出する第三雄側爪21D1を有している。第三雄側爪21D1は、第一雄側爪21B1と同様に、雄側帯状基部21Aに対向する収納側斜面21D3を有し、この収納側斜面21D3の接線21B8と、雄側帯状基部21Aの垂線21B5とのなす角γが、90°より小さい角度の断面鉤形状に形成されている。
【0054】
雌部材22は、雌側帯状基部22Aと、雌部22Bと、雄側鉤部21Dと係合可能な雌側鉤部22Dとを有している。
雌側鉤部22Dは、第三雄側爪21D1が係合可能に、開口部18側に向けて突出する第三雌側爪22D1を有している。
そして、ジッパーテープ20は、雄側鉤部21Dと雌側鉤部22Dとにより、本発明の係合部としての係合鉤部24が構成される。
【0055】
{ジッパーテープ付袋体の使用}
次に、上記ジッパーテープ付袋体1の使用状況を説明する。
図8には、開口された縁を持って開封する際の誤開封防止の状況を示す要部断面が示されている。
図9には、開口された縁と袋本体の外面とを持って開封する際の開封状況を示す要部断面が示され、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は係合部の係合が解除された状態である。
【0056】
まず、使用者がジッパーテープ付袋体1から被包装物を最初に取り出すにあっては、
図8に示すように、ノッチ17から基材フィルム11A,11Bを引き裂いて、トップシール部14側を切除することで開口部18が形成されて開封される。
ここで、子供が興味本位で開封したり、改竄目的などで開封したりする場合など、通常の開口部18の縁を持って、開口部18を広げて係合部23の係合を解除しようとした場合、誤開封が防止される。具体的には、
図8に示すように、雄側帯状基部21Aに設けられた屈曲部21Cが折れ曲がるように広げられように、
図8中の矢印で示す方向に引っ張り力が作用する。このため、開封のための引っ張り力は、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとの平面に沿って、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとを剪断させる方向に力が作用する。したがって、断面鉤形状の第一雄側爪21B1および第一雌側爪22B1と、第三雄側爪21D1および第三雌側爪22D1とが互いに噛み合う状態となる。このため、第一雄側爪21B1および第一雌側爪22B1と、第三雄側爪21D1および第三雌側爪22D1とが、それぞれ強く係合し合い、誤開封や改竄のための開封が防止される。
このように、化粧品や薬品など、あるいは細かい部品など、幼児や子供から遠ざけておきたい物などが誤開封されて取り出されてしまったり、改竄を目的として開封されてしまったりする誤開封を防止できる。
【0057】
一方、袋本体10に予め収納された被包装物Pの利用者が被包装物Pを取り出すため、あるいは、袋本体10に被包装物Pを新たに収納するため、係合部23の係合を解除する場合には、特異な開封方法が実施される。すなわち、屈曲部21Cを有しない雌側帯状基部22Aがヒートシールされた袋本体10の外面、具体的には雌側帯状基部22Aより収納空間10C側の外面と、屈曲部21Cを有する雄側帯状基部21Aがヒートシールされた袋本体10の開口部18の縁とを摘んで、袋本体10を広げるように引っ張る。なお、摘む位置としては、例えば袋本体10に印刷などにより示されていると、利用者は開封作業が容易となる。
この袋本体10を広げる引っ張り力は、
図9(A)中の矢印に示すように作用し、第二雄側爪21B2と第二雌側爪22B2とが引っ掛かり合う状態となる。さらに、第三雄側爪21D1および第三雌側爪22D1は、引っ張り力が互いに離れる方向に作用する。この
図9(A)に示す状態では、第二雄側爪21B2が断面山形状のため、引っ張り力は、第二雄側爪21B2が第二雌側爪22B2を乗り越えるように作用するとともに、第三雄側爪21D1と第三雌側爪22D1とが離れる状態となる。よって、比較的に小さい力で係合部23の係合を解除できる。
そして、被包装物Pを取り出しあるいは収納した後は、再び雄部21Bおよび雌部22Bと、雄側鉤部21Dおよび雌側鉤部22Dとを、それぞれ係合させることで袋本体10は再封止される。
【0058】
{第二実施形態の効果}
上述したように、上記第二実施形態では、ジッパーテープ20を、係合部23および係合鉤部24にて複数条で係合する構成としている。
このため、第一実施形態の効果に加え、雄部材21および雌部材22の係合力がより高くなり、より誤開封を防止できる。
【0059】
また、上記第二実施形態では、係合鉤部24として、雄側鉤部21Dに収納空間側のみに突出する第三雄側爪21D1を設けている。
このため、開封する際には、第三雄側爪21D1と第三雌側爪22D1とが離れる方向に開封のための引っ張り力が作用することとなる。したがって、誤開封防止のために係合力を増大させた構成でも、開封させる力が大きくなることを抑制しており、容易に開封できる。
【0060】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を図面に基づいて説明する。
図10には、第三実施形態におけるジッパーテープ付袋体の平面が示されている。
図11には、ジッパーテープ付袋体の断面が示されている。
この第三実施形態では、第一実施形態における袋本体10の外面に把持部を設けたものである。
【0061】
{袋本体の構成}
具体的には、袋本体10の外面には、雌部材22が配置される位置より収納空間10C側、すなわちボトム側(
図10の下側)に位置して、基材フィルム11Bがたぐり寄せられて舌片状に形成された把持部16が設けられている。
把持部16が設けられる位置は、基端にジッパーテープ20が位置するような隣接する位置関係とするなど、ジッパーテープ20の近傍が好ましい。
把持部16の長手方向の両端部(
図1の左右方向)は、サイドシール部12でシールされ、把持部16はボトムシール部13側に向けて開放するポケット状に形成されている。
【0062】
{ジッパーテープ付袋体の製造}
次に、上記第三実施形態のジッパーテープ付袋体1を製造する動作として、被包装物Pを収納する前のジッパーテープ付袋を製造する動作について、図面を参照して説明する。なお、第一実施形態と同様の三方製袋の製造装置を用いて説明するが、ジッパーテープ付袋を製造するには、種々の方法を採用することができる。
図12には、把持部の形成状況を説明する説明図が示されている。
なお、
図12については、図面左側が把持部の形成状況の平面図で、図面右側が平面図における各段階での断面図が示されている。具体的には、
図12の(A)はフィルムを送り出した状況、(B)はフィルムをたぐり寄せている状況、(C)は把持部に成形している状況、(D)把持部を形成した状況、(E)は切断刃でフィルムを切断した状況、(F)は把持部を有する一対の基材フィルムが切り出された状況である。
【0063】
製造装置5は、いわゆる三方製袋機を基本構成とするもので、雄部材21および雌部材22を、基材フィルム11A、11Bにそれぞれ接合し、ジッパーテープ付袋1Aを製袋するものである。
製造装置5は、基材フィルム11A、11Bを送り出すフィルム供給部51と、雄部21Bおよび雌部22Bが係合されたジッパーテープ20を送り出すテープ部材供給機構である一対のテープ供給部52と、雄部材21および雌部材22を基材フィルム11A,11Bにそれぞれヒートシールし、袋本体10を製袋してジッパーテープ付袋1Aを形成させる製袋部54と、などを備えている。
【0064】
フィルム供給部51は、フィルム11を巻回したフィルム巻取ロール111が着脱可能に装着され、フィルム11を切断刃51A(
図12参照)で基材フィルム11A,11Bに切断し、得られた基材フィルム11A,11Bを送り出す。
フィルム供給部51には、
図12に示すような把持形成部51Bが設けられている。把持形成部51Bは、フィルム11の長手方向の一側をたぐり寄せる対をなすローラ511と、たぐり寄せたフィルム11を、所定の位置で所定の長さ寸法で折り返すように重ね合わせるガイドプレート512と、ガイドプレート512によりフィルム11が部分的に折り返されて重ね合わされた部分を、例えばヒートシールして舌片状の把持部16を形成するヒートシールバー513と、を備えている。なお、把持部16の形成に際しては、ヒートシールに限らず、超音波による溶着、接着剤などを用いた接着など、各種方法を利用できる。
基材フィルム11A,11Bの送り出しは、例えば連続的に一定速度で送り出す構成に限らず、間欠的に送り出す構成とするなど、いずれの送出方法を適用できる。
【0065】
そして、ジッパーテープ付袋1Aの製造に際しては、例えば三方製袋の製造装置5を用いて製造され、フィルム11を供給するフィルム供給工程と、ジッパーテープ20を供給するテープ供給工程と、雄部材21と雌部材22とを、基材フィルム11A,11Bにそれぞれヒートシールする取付工程と、基材フィルム11A,11Bからジッパーテープ付袋1Aを形成させる製袋工程と、などを実施する。
【0066】
まず、フィルム11を巻回したフィルム巻取ロール111をフィルム供給部51に装着しておく。
また、雌部材22と、雄部材21とを、それぞれ押出成形などによって成形しておく。そして、雌部材22の雌部22Bと、雄部材21の雄部21Bとが係合され、一体のジッパーテープ20としてテープ巻取ロール521に巻回し、テープ巻取ロール521をテープ供給部52に装着しておく。
【0067】
そして、フィルム供給工程では、フィルム巻取ロール111から供給されるフィルム11に、把持形成部51Bにより、把持部16を形成させる把持形成工程を実施する。
具体的には、
図12(A)の段階で供給されたフィルム11は、
図12(B)の段階で把持形成部51Bのローラ511により、所定位置でたぐり寄せて部分的に湾曲するように弛ませる。この後、
図12(C)の段階で、把持形成部51Bのガイドプレート512により、弛ませた部分のフィルム11を、所定の長さで部分的に折り返して重ね合わさるように成形する。そして、
図12(D)の段階で、フィルム11の折り返して重ね合わさる部分を、把持形成部51Bのヒートシールバー513でヒートシールし、舌片状の把持部16を形成する。
この把持形成工程の後、
図12(E)の段階で示すように、切断刃51Aにより、フィルム11の送り出し方向に対して、交差する方向で二等分するようにフィルム11を切断する。この切断により、
図12(F)の段階で示すように、把持部16をそれぞれ有した基材フィルム11A,11Bが切り出され、下流側に送り出される。
この後、第一実施形態と同様に、テープ供給工程、取付工程および製袋工程が実施され、ジッパーテープ付袋1Aが製造される。
【0068】
{ジッパーテープ付袋体の使用}
次に、上記ジッパーテープ付袋体1の使用状況を説明する。
図13には、開口された縁と袋本体の外面とを持って開封する際の開封状況を示す要部断面が示され、(A)は開封力を作用させた状態、(B)は係合部の係合が解除された状態である。
【0069】
まず、使用者がジッパーテープ付袋体1から被包装物を最初に取り出すにあっては、
図8に示すように、ノッチ17から基材フィルム11A,11Bを引き裂いて、トップシール部14側を切除することで開口部18が形成されて開封される。
ここで、子供が興味本位で開封したり、改竄目的などで開封したりする場合など、通常の開口部18の縁を持って、開口部18を広げて係合部23の係合を解除しようとした場合、第一実施形態と同様に、誤開封が防止される。すなわち、開封のための引っ張り力は、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとの平面に沿って、雄側帯状基部21Aと雌側帯状基部22Aとを剪断させる方向に力が作用する。そして、断面鉤形状の第一雄側爪21B1と第一雌側爪22B1とが、互いに噛み合う状態となり、誤開封や改竄のための開封が防止される。
【0070】
一方、袋本体10に予め収納された被包装物Pの利用者が被包装物Pを取り出すため、あるいは、袋本体10に被包装物Pを新たに収納するため、係合部23の係合を解除する場合には、特異な開封方法が実施される。すなわち、袋本体10の外面の把持部16と、屈曲部21Cを有する雄側帯状基部21Aがヒートシールされた袋本体10の開口部18の縁とを摘んで、袋本体10を広げるように引っ張る。なお、摘む位置としては、例えば袋本体10に印刷などにより示されていると、利用者は開封作業が容易となる。
この袋本体10を広げる引っ張り力は、
図13(A)中の矢印に示すように作用し、第二雄側爪21B2と第二雌側爪22B2とが引っ掛かり合う状態となる。この
図13(A)に示す状態では、第二雄側爪21B2が断面山形状のため、引っ張り力は第二雄側爪21B2が第二雌側爪22B2を乗り越えるように作用し、比較的に小さい力で係合部23の係合を解除できる。
そして、被包装物Pを取り出しあるいは収納した後は、再び雄部21Bおよび雌部22Bを係合させることで、袋本体10は再封止される。
【0071】
{第三実施形態の効果}
上述したように、上記第三実施形態では、屈曲部21Cを有しない雌側帯状基部22Aが袋本体10に取り付けられた位置に対して、収納空間10C側に位置して把持部16を設けている。
そして、開封に際しては、屈曲部21Cを有した雄側帯状基部21Aがヒートシールされた袋本体10の開口部18の縁と、把持部16とを持って袋本体10を広げるように引っ張る。このことにより、係合部23の係合を解除するように引っ張り力が作用することとなるので、係合部23の係合が容易に解除できる。したがって、第一実施形態の効果に加え、把持部16を持って引っ張る簡単な作業で、容易に開封できる。
【0072】
[変形例]
なお、本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材質、層構成などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0073】
そして、雄部21Bとして、断面鉤形状の第一雄側爪21B1と断面山形状の第二雄側爪21B2と、異なる爪形状としたが、同一形状とした対称形としてもよい。さらに、係合部23を、係合鉤部24のように片爪形状としてもよい。
さらに、本発明では、側面部10Aおよび底面部10Bを有したガゼット形状に限らず、底面部10Bのみを設けた構成、あるいは底面部10Bを有しないガゼット形状、さらには、側面部10Aおよび底面部10Bを有しない構成にも適用できる。
また、ジッパーテープ付袋体1の製袋方法としては、三方製袋の他、四方製袋、ピロー式、回転ドラム式など、各方法を適用できる。
【0074】
薄肉の屈曲部21Cとしては、例えば
図14に示すように、基材フィルム11A側のみに段差となるように形成したり、
図15に示すように、雄部21Bが設けられた側のみに段差となるように形成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1………ジッパーテープ付袋体
1A……ジッパーテープ付袋体としても機能するジッパーテープ付袋
10………袋本体
10C……収納空間
16………把持部
20………ジッパーテープ
21A……帯状基部である雄側帯状基部
21B……雄側鉤部としての雄部
21B1…第一雄側爪
21B2…第二雄側爪
21B3…斜面である収納側斜面
21B4,21B7…接線
21B5…垂線
21B6…斜面である開口側斜面
21C……屈曲部
22A……帯状基部である雌側帯状基部
22B……雌側鉤部としての雌部
22B1…第一雌側爪
22B2…第二雌側爪
23………係合部
24………係合部としての係合鉤部
P………被包装物