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特許7037332接合用の導電性ペーストを用いた電子デバイスの製造方法
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  • 特許-接合用の導電性ペーストを用いた電子デバイスの製造方法 図1
  • 特許-接合用の導電性ペーストを用いた電子デバイスの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】接合用の導電性ペーストを用いた電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20220309BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01B1/22 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017212139
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019087553
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発/高熱伝導性高耐熱接合材の開発(インキュベーション研究開発+実用化開発)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】316013596
【氏名又は名称】デュポンエレクトロニクスマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 有美
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069074(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/122467(WO,A1)
【文献】特開2012-052198(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52 - 21/58
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を含む基板を準備する工程と、
導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、導電性ペーストが、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.07~3重量部の分岐高級脂肪酸を含む、接合用の導電性ペーストであり、
塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
導電性ペーストを加熱して、導電層と電子部品とを接合する工程とを含み、
導電層と電子部品とを接合する工程における加熱温度は、200~400℃であり、加熱時間は0.1~30分であり、
塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載した後、接合のための加熱の前に、導電性ペーストの層を予備過熱し、予備過熱の温度が80~180℃であり、予備過熱時間が1秒以上60秒以下である、電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
分岐高級脂肪酸が、n-ブチルオクタン酸(C12)、n-メチルトリデカン酸(C14)、n-メチルテトラデカン酸(C15)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、n-メチルノナデカン酸(C19)、イソアラキン酸(C20)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
分岐高級脂肪酸が、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、イソアラキン酸(C20)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
分岐高級脂肪酸が、一般式(1)で表され、
【化1】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数4~10(ただし式(1)中の炭素数の合計は12以上)の炭化水素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
金属粉の粒径(D50)が、0.01~2μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
導電性ペーストが、さらに0.01~4重量部のポリマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
電子部品が、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
電子部品が、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用の導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは半導体チップのような電子部品を有し、その電子部品は基板の導電層に導電性ペーストで接合されている。電子部品は、導電層の上に塗布された導電性ペーストの上にマウントされた後、導電性ペーストを加熱することで、基板の導電層と物理的にも電気的にも接合する。加熱後の電子部品および基板の導電層の接合が良好な電子デバイスが求められている。また、接合前、製造プロセス中に、マウントされた電子部品と導電性ペースト層との接着が不十分だと、電子部品が剥離して、電子デバイスに欠陥を与える原因になる問題もあった。
【0003】
特許文献1は、塗布直後や塗布から所定時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止し、予備乾燥膜にクラックが生じて接合力が低下するのを防止することができる、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法を開示している。銀微粒子と溶剤と(分散剤としての)2-ブトキシエトキシ酢酸(BEA)と(反応抑止剤としての)ベンゾトリアゾール(BTA)を含む銀ペーストからなる接合材を銅基板上に塗布し、その接合材上に電子部品を配置した後、この電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-235942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、加熱後に、電子部品と十分に接合する導電性ペースト、およびこれを用いた電子デバイスの製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、接合前、製造プロセス中に、電子部品と十分に接着する導電性ペースト、およびこれを用いた電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段の一例は、
導電層を含む基板を準備する工程と、
導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、導電性ペーストが、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.07~3重量部の分岐高級脂肪酸を含む、接合用の導電性ペーストであり、
塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
導電性ペーストを加熱して、導電層と電子部品とを接合する工程とを含む、電子デバイスの製造方法、である。
【0007】
本発明の課題を解決するための手段の別の例は、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.07~3重量部の分岐高級脂肪酸を含む、接合用の導電性ペーストである。
【0008】
ここで、ある実施態様において、分岐高級脂肪酸が、n-ブチルオクタン酸(C12)、n-メチルトリデカン酸(C14)、n-メチルテトラデカン酸(C15)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、n-メチルノナデカン酸(C19)、イソアラキン酸(C20)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0009】
また、ある実施態様において、分岐高級脂肪酸が、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、イソアラキン酸(C20)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0010】
また、ある実施態様において、分岐高級脂肪酸が、一般式(1)で表され、
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数4~10(ただし式(1)中の炭素数の合計は12以上)の炭化水素である。
【0013】
また、ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)が、0.01~2μmである。
【0014】
また、ある実施態様において、導電性ペーストが、さらに0.01~4重量部のポリマーを含む。
【0015】
また、ある実施態様において、導電層と電子部品とを接合する工程における加熱温度は、160~400℃である。
【0016】
また、ある実施態様において、電子部品が、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0017】
また、ある実施態様において、電子部品が、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接合用の導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法によれば、加熱後に、電子部品を導電層に十分に接合させることができる。あるいは、本発明の接合用の導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法によれば、接合前、製造プロセス中に、電子部品を導電層に十分に接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電子デバイスの断面の一例を示す概念図である。
図2】導電性ペースト中の分岐高級脂肪酸と金属粉粒子との関係の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
電子デバイスは、少なくとも導電層を含む基板と電子部品とを含んでいる。基板の導電層と電子部品は、導電性ペーストによって接合される。以下、図1を参照して、電子デバイス100の製造方法の一例を説明する。なお、ある実施態様における数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ別の実施態様における数値範囲の上限値および下限値と組み合わせることができる。
【0021】
まず、導電層103を含む基板101を準備する。導電層103は、良導体および半導体を含む概念である。ある実施態様において、導電層103は、電子回路、電極、または電子パットである。ある実施態様において、導電層103は、金属層である。別の実施態様において、金属層は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金を含む。別の実施態様において、導電層103は、銅層または銀層である。
【0022】
導電性ペースト105は、接合用の導電性ペーストである。導電性ペースト105は、良導体と良導体、良導体と半導体、または半導体と半導体を接合することができる。導電性ペースト105は、導電層103の上に塗布される。塗布された導電性ペースト105は、ある実施態様において50~500μmの厚さ、別の実施態様において80~300μmの厚さ、別の実施態様において100~200μmの厚さ、を有する。ある実施態様において、導電性ペースト105は、スクリーン印刷で塗布される。別の実施態様において、スクリーン印刷のためにメタルマスクが用いられる。
【0023】
導電性ペースト105の層の上に電子部品107を搭載する。電子部品107は、電気的に機能するものであれば、特に限定されない。ある実施態様において、電子部品107は、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される。別の実施態様において、電子部品107は、半導体チップである。別の実施態様において、半導体チップは、LEDチップである。別の実施態様において、半導体チップは、SiチップまたはSiCチップである。
【0024】
ある実施態様において、電子部品107は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含んでいる。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金および/またはニッケルを含んでいる。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金層およびニッケル層の積層構造を含んでいる。ある実施態様において、電子部品107がメタライゼーション層を有する場合、メタライゼーション層は、導電性ペースト105の層と接する。別の実施態様において、メタライゼーション層は、メッキである。
【0025】
導電性ペースト105の層は加熱され、金属粉の焼結によって、導電層103と電子部品107とを接合する。ある実施態様では、導電性ペースト105は、金属と金属とを接合する。加熱の温度は、ある実施態様において160~400℃、別の実施態様において180~310℃、別の実施態様において200~300℃、別の実施態様において220~290℃である。加熱時間は、ある実施態様において0.1~30分、別の実施態様において0.5~20分、別の実施態様において0.6~5分、別の実施態様において3~15分、別の実施態様において5~10分、別の実施態様において0.1~5分、別の実施態様において0.5~3分、別の実施態様において5~20分、別の実施態様において10~20分である。導電性ペースト105は、比較的低温で接合させることができるため、電子部品107の熱によるダメージを抑えられる。
【0026】
ある実施態様において、加熱雰囲気は、不活性雰囲気またはエアー雰囲気である。別の実施態様において、不活性雰囲気は、N2雰囲気である。別の実施態様において、加熱雰囲気は、エアー雰囲気である。
【0027】
任意で、加熱中に電子部品107を加圧する。加圧により電子部品107は、導電層103により強く接合し得る。加圧は、ある実施態様において0.1MPa以上、別の実施態様において1MPa以上、別の実施態様において5MPa以上、別の実施態様において7MPa以上、別の実施態様において15MPa以上、別の実施態様において25MPa以上、である。加圧は、ある実施態様において45MPa以下、別の実施態様において40MPa、別の実施態様において36MPa以下、別の実施態様において25MPa以下、別の実施態様において15MPa以下、である。別の実施態様において、電子部品107は、加圧することなく接合される。加熱には、オーブンまたはダイボンダーを用いることが出来る。
【0028】
任意で、塗布された導電性ペースト105の上に電子部品107を搭載した後、上記加熱前に、塗布された導電性ペースト105の層を乾燥する。乾燥温度は、ある実施態様において40~150℃、別の実施態様において50~120℃、別の実施態様において60~100℃である。乾燥時間は、ある実施態様において10~150分、別の実施態様において15~80分、別の実施態様において17~60分、別の実施態様において20~40分である。
【0029】
任意で、塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載した後、および好ましくは上記乾燥の後、上記接合のための加熱(以下、本加熱とも言う)の前に、導電性ペースト105の層を予備加熱する。予備加熱の温度は、ある実施態様において80~180℃、別の実施態様において100~170℃、別の実施態様において120~160℃である。予備加熱時間は、ある実施態様において1秒以上、別の実施態様において3秒以上である。予備加熱時間は、ある実施態様において60秒以下、別の実施態様において30秒以下、別の実施態様において15秒以下、別の実施態様において10秒以下である。予備加熱をすることで、電子部品107が導電性ペースト105の層の表面により良好に接着し得る。特定の理論には拘束されないものの、本願発明の本加熱において導電性ペースト中の金属粉が焼結し電子部品107と導電層103とを結合する一方、予備加熱によって電子部品107と接触する導電性ペースト105の層の表面が粘着質となるため、製造プロセス中に、本加熱まで、電子部品107を比較的固く接着し、剥離することなく導電性ペースト層105上に保持し得ると考えられる。
【0030】
ある実施態様において、予備加熱は、N2雰囲気またはエアー雰囲気である。別の実施態様において、予備加熱は、エアー雰囲気である。
【0031】
任意で、予備加熱中に電子部品107を予備加圧する。予備加圧により電子部品107は、導電性ペースト105の層により強く接着し得る。予備加圧は、ある実施態様において0.1MPa以上、別の実施態様において0.5MPa以上、別の実施態様において1MPa以上、別の実施態様において2MPa以上、別の実施態様において3MPa以上である。予備加圧は、ある実施態様において10MPa以下、別の実施態様において8MPa以下、別の実施態様において6MPa以下である。別の実施態様において、電子部品107は、予備加熱中、予備加圧することなく接着される。予備加熱および予備加圧には、オーブンまたはダイボンダーを用いることが出来る。
【0032】
以下、導電性ペースト105の組成について説明する。導電性ペースト105は、金属粉、溶媒、および分岐高級脂肪酸を含む。
【0033】
金属粉
ある実施態様において、金属粉は、銀、銅、金、パラジウム、プラチナ、ロジウム、ニッケル、アルミニウム、それらの合金、および、それらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀、銅、ニッケル、それらの合金、および、それらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀である。
【0034】
ある実施態様において、金属粉の形状は、フレーク状、球形、不定形、あるいはそれらの混合粉である。別の実施態様において、球形である。
【0035】
ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は0.01μm以上、別の実施態様において0.05μm以上、別の実施態様において0.07μm以上、別の実施態様において0.1μm以上、別の実施態様において0.15μm以上、別の実施態様において0.2μm以上である。ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は2μm以下、別の実施態様において1.5μm以下、別の実施態様において1μm以下、別の実施態様において0.8μm以下、別の実施態様において0.5μm以下である。このような粒径であると溶媒に良好に分散する。また、このような粒径であると、比較的低温で良好な接合強度が得られる。またこのような粒径であると分岐高級脂肪酸が付着することで、金属粉粒子間の距離が適当に保たれるため、導電性ペーストに適当な粘度およびレオロジーを与えうるという効果がある。なお、本願における粒径(D50)は、マイクロトラックX-100型を用いてレーザー回折法で測定する体積平均粒子径(D50)である。
【0036】
金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において60重量%以上、別の実施態様において72重量%以上、別の実施態様において80重量%以上、別の実施態様において85重量%以上である。金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において97重量%以下、別の実施態様において95重量%以下、別の実施態様において93重量%以下である。
【0037】
溶媒
金属粉は、溶媒に分散して導電性ペースト105を構成する。溶媒は、導電性ペースト105を基板101あるいは導電層103の上に塗布しやすいように粘度を調節するためにも使用し得る。溶媒の全てもしくは多くは、加熱工程もしくは任意の乾燥工程において、導電性ペースト105から蒸発する。
【0038】
溶媒の分子量は、ある実施態様において600以下、別の実施態様において520以下、別の実施態様において480以下、別の実施態様において440以下である。溶媒の分子量は、ある実施態様において10以上、別の実施態様において100以上、別の実施態様において150以上、別の実施態様において180以上である。
【0039】
溶媒の沸点は、ある実施態様において100~450℃、別の実施態様において150~320℃、別の実施態様において200~290℃である。溶媒は、ある実施態様において有機溶媒である。
【0040】
溶媒は、あるの実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール(登録商標))、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート(カルビトール(登録商標))、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、および、これらの組合せからなる群から選択される。溶媒は、別の実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール)、ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、ソルベントナフサ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。溶媒は、別の実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール)、ターピネオール、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0041】
導電性ペースト105の粘度は、チタン製コーンプレートC20/1°を用いたレオメータ(HAAKETM MARSTMIII、Thermo Fisher Scientific Inc.)で測定したとき、シアレート10s-1において、ある実施態様において5~300Pa・s、別の実施態様において9~200Pa・s、別の実施態様において12~100Pa・sである。
【0042】
溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、5~20重量部である。ある実施態様において6.5重量部以上、別の実施態様において7.8重量部以上、別の実施態様において8.8重量部以上である。溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において20重量部以下、別の実施態様において18重量部以下、別の実施態様において15重量部以下である。溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において2重量%以上、別の実施態様において4重量%以上、別の実施態様において6重量%以上、別の実施態様において7.5重量%以上である。溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において25重量%以下、別の実施態様において20重量%以下、別の実施態様において15重量%以下である。
【0043】
分岐高級脂肪酸
分岐高級脂肪酸は、炭素数12以上である1価のカルボン酸であって、長鎖炭化水素に炭素数1以上の側鎖(分岐鎖)を含むものである。別の実施態様では側鎖の炭素数は2以上、別の実施態様では3以上、別の実施態様では4以上である。分岐高級脂肪酸の炭素数は、ある実施態様において14以上、別の実施態様において16以上である。分岐高級脂肪酸の炭素数は、ある実施態様において24以下、別の実施態様において20以下、別の実施態様において18以下である。
【0044】
ある実施態様において、分岐高級脂肪酸は、n-ブチルオクタン酸(C12)、n-メチルトリデカン酸(C14)、n-メチルテトラデカン酸(C15)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、n-メチルノナデカン酸(C19)、イソアラキン酸(C20)およびその混合物からなる群から選ばれる。
【0045】
別の実施態様において、分岐高級脂肪酸は、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(C18)、イソアラキン酸(C20)およびその混合物からなる群から選ばれる。具体的には、イソパルミチン酸K、イソステアリン酸、イソステアリン酸N、イソステアリン酸T、イソアラキン酸(日産化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
ある実施態様において、分岐高級脂肪酸は、一般式(1)で表され、
【0047】
【化2】
【0048】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数4~10(ただし式(1)中の炭素数の合計は12以上)の炭化水素である。
【0049】
例えば、R1およびR2の例は次のとおりである。ただし以下の例は各分岐高級脂肪酸の代表例である。
R1=n-C7H15, R2=n-C9H19 :イソステアリン酸(CAS:22890-21-7)
R1=C(CH3)3-CH2-CH(CH3)-(CH2)2, R2=C(CH3)3-CH2-CH(CH3) :イソステアリン酸(CAS:54680-48-7)
R1=CH3-CH2-CH(CH3)-(CH2)5, R2=CH3-CH2-CH(CH3)-(CH2)3:イソステアリン酸N
R1=n-C8H17, R2=n-C8H17またはR1=n-C6H13, R2=n-C10H21:イソステアリン酸T
R1=CH3-(CH2)7, R2=CH3-(CH2)5:イソパルミチン酸K
R1=CH3-CH(CH3)-(CH2)3-CH(CH3)-(CH2)2, R2=CH3-CH(CH3)-(CH2)3-CH(CH3) :イソアラキン酸(イソステアリン酸N、イソステアリン酸T、イソパルミチン酸K、イソアラキン酸は、いずれも日産化学工業株式会社製)
【0050】
分岐高級脂肪酸は、金属粉を100重量部としたとき、0.07~3重量部である。ある実施態様において0.08重量部以上、別の実施態様において0.09重量部以上、別の実施態様において0.1重量部以上、別の実施態様において0.15重量部以上、である。分岐高級脂肪酸は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において2.8重量部以下、別の実施態様において2.2重量部以下、別の実施態様において1.5重量部以下、別の実施態様において1.0重量部以下、別の実施態様において0.7重量部以下、別の実施態様において0.5重量部以下、である。
【0051】
分岐高級脂肪酸は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において0.01重量%以上、別の実施態様において0.05重量%以上、別の実施態様において0.1重量%以上、別の実施態様において0.13重量%以上、である。分岐高級脂肪酸は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において3重量%以下、別の実施態様において2.8重量%以下、別の実施態様において2.2重量%以下、別の実施態様において1.5重量%以下、別の実施態様において1.0重量%以下、別の実施態様において0.7重量%以下、別の実施態様において0.5重量%以下、である。
【0052】
ポリマー
任意で、導電性ペースト105は、ポリマーを含む。ポリマーは、少量添加することで、導電性ペーストの粘度を調整し得る。ポリマーは、溶媒に可溶性である。ポリマーは、1,000以上の分子量(Mw)をもつ。ポリマーの分子量は、ある実施態様において5,000~900,000、別の実施態様において8,000~780,000、別の実施態様において10,000~610,000、別の実施態様において18,000~480,000、別の実施態様において25,000~350,000、別の実施態様において32,000~200,000、である。なお、本願における分子量(Mw)は、重量平均分子量を意味する。分子量は、高速液体クロマトグラフィー(Alliance 2695、日本ウォーターズ株式会社)等で測定され得る。
【0053】
ポリマーは、ある実施態様において、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、および、それらの混合物からなる群から選択される。ポリマーは、別の実施態様において、熱可塑性樹脂である。ポリマーは、別の実施態様において、エチルセルロースである。
【0054】
ポリマーのガラス転移点は、ある実施態様において-30~250℃、別の実施態様において10~180℃、別の実施態様において80~150℃、である。
【0055】
ポリマーは、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において0.02重量部以上、別の実施態様において0.1重量部以上、別の実施態様において0.2重量部以上、である。ポリマーは、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において4重量部以下、別の実施態様において2.8重量部以下、別の実施態様において1.8重量部以下、別の実施態様において1.0重量部以下、別の実施態様において0.7重量部以下、である。ポリマーは、上記のように少量の添加であると、接合層の十分な導電性を保ちつつ、導電性ペーストに適度な粘度を与えることが出来うる。
【0056】
ポリマーは、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において0.01重量%以上、別の実施態様において0.05重量%以上、別の実施態様において0.1重量%以上、別の実施態様において0.15重量%以上である。ポリマーは、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において2重量%以下、別の実施態様において1重量%以下、別の実施態様において0.5重量%以下、別の実施態様において0.3重量%以下、別の実施態様において0.2重量%以下、である。
【0057】
特定の理論に限定されないが、本発明においては、接合用の導電性ペーストが特に分岐高級脂肪酸を含むことで、分岐高級脂肪酸203のカルボン酸が金属粉粒子201に付着し、分岐鎖側が金属粉粒子の外側に来ることで、金属粉粒子同士が適当な距離を保ちうる(図2)。よって、導電性ペーストが良好な粘度およびレオロジーを持つ導電性ペーストが得られるため、導電層上に塗布しても表面が窪むことなく平滑な表面もつ導電性ペースト層が形成できる。結果として、平滑な表面を持つ導電性ペースト層に電子部品を搭載すると、導電性ペースト層105および電子部品107との間に間隙がなく接触面積が増えるため、より接合強度が向上するという効果が得られたと考えられる。
【0058】
添加剤
導電性ペースト105の所望する特性に合わせて、界面活性剤、分散剤、乳化剤、安定剤、可塑剤などの添加剤をさらに含めることができる。ある実施態様において、導電性ペースト105は、ガラスフリットを含まない。ある実施態様において、導電性ペースト105は、硬化剤または架橋材を含まない。ある実施態様において、導電性ペースト105は、熱硬化性樹脂を含まない。
【実施例
【0059】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それらに限定されない。
【0060】
導電性ペーストを以下の手順によって調製した。
【0061】
銀粉を、あらかじめ脂肪酸を添加したテキサノール溶液に分散させて導電性ペーストとした。銀粉は、粒径(D50)が0.3μmである球形銀粉および粒径(D50)が0.2μmである球形銀粉の混合粉であった。テキサノール溶液は、13.1重量部の有機溶媒、0.3重量部のエチルセルロースを含んでいた。分散は、ミキサーで各材料を混ぜた後、三本ロールミルにかけて行った。脂肪酸は、オレイン酸、イソステアリン酸(日産化学工業株式会社製)またはイソステアリン酸T(日産化学工業株式会社製)のいずれかを用いた。また、比較例として脂肪酸を含まない導電性ペーストも準備した。
【0062】
導電性ペーストの粘度は、シアレート10s-1において、15~70Pa・sであった。粘度の測定には、レオメータ(HAAKETM MARSTM III、チタン製コーンプレート:C20/1°、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いた。
【0063】
次に、導電性ペーストを銅基板に塗布して、導電性ペースト層を得た。銅プレート(25mm幅、34mm長さ、1mm厚)に、10mm幅の間隔を空けて スコッチテープ(登録商標)(MagicTM、MP-18、3M Corporation)を貼った。スコッチテープの間にスクレーパーを用いて導電性ペーストを塗布した後、スコッチテープを剥がして、角型パターン(10mm幅、10mm長さ、150μm厚)の導電性ペースト層を形成した。導電性ペーストの層をオーブンにて80℃30分エアー雰囲気で乾燥させた。
【0064】
導電性ペーストを塗布して形成した角型パターンの表面を評価した。目視で確認し、平滑な角型パターン表面が得られた場合をOKとし、角型パターン表面に凹凸があり平滑でない場合をNGとした。角型パターン表面が平滑であれば、搭載される電子部品との接合面に間隙ができにくく、より剥がれにくくなる。
【0065】
さらに、角型パターンの導電性ペーストを乾燥させた後、導電性ペースト層の接着性を調べた。乾燥後の角型パターンの上面に、銅チップ(3mm幅、3mm長さ、1mm厚)を載せた。ダイボンダー(T-3002M、Tresky社製)を用いて、5MPa加圧/150℃5秒間加熱の条件の下、エアー雰囲気で予備加熱して、銅チップを導電性ペースト上に接着させた。銅チップが、手で持ったピンセットで触れただけで剥がれてしまった場合はNGとした。触れても剥がれない場合はOKとした。
【0066】
次に、導電性ペーストの層の上面に載せた銅チップ(3mm幅、3mm長さ、1mm厚)をダイボンダー(T-3002M、Tresky社製)を用いて、10MPa加圧/280℃1分間加熱の条件の下、エアー雰囲気で銅プレート上に接合した。接合後、銅チップと銅プレートの間の接合強度を、ボンドテスター(4000Plus、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社)を用いたダイシェアテスト(MIL STD-883)にて測定した。ボンドテスターによって、銅チップが剥離したときの強度を接合強度とした。
【0067】
結果を表1に示す。脂肪酸を添加した導電性ペーストを用いた比較例2、実施例1、2は、接着性が得られたが、脂肪酸を添加しない導電性ペーストを用いた比較例1では、接着性が低く銅チップは接合のための本加熱前に容易に剥がれてしまった。なお、脂肪酸を添加しない導電性ペーストを用いた場合、平滑なパターン表面が得られず、接合強度が37MPaと低かった(比較例1)。オレイン酸を添加した場合は、平滑なパターン表面が得られず、接合強度が47MPaと低かった(比較例2)。他方、イソステアリン酸またはイソステアリン酸Tを添加した導電性ペーストを用いた場合は、平滑なパターン表面が得られたため50MPa以上の十分な接合強度が得られた(実施例1、2)。
【0068】
【表1】
【0069】
次に、分岐高級脂肪酸の添加量を調べた。分岐高級脂肪酸の代表例として、イソステアリン酸Tの添加量を調べた。イソステアリン酸Tの添加量を変えたこと以外は、実施例2と同様に導電性ペーストを準備し、接着性およびパターン表面について評価した。イソステアリン酸Tを添加することで、平滑なパターン表面得られたため、少なくとも十分な接合強度は得られると考えられる。しかしながら、イソステアリン酸Tの添加量が0.06重量部と少ないときは、銅チップが接合用の本加熱前に容易に剥がれてしまい、接着性が不十分であった(比較例3)。他方、イソステアリン酸Tの添加量が0.1重量部のときは、銅チップは接合用の本加熱前に容易に剥がれることはなく、接着性は十分であった(実施例3)。
【0070】
【表2】
【0071】
次に、脂肪酸としてデカン酸とイソパルミチン酸を調べた。脂肪酸の種類を変えたこと以外は、実施例1と同様に導電性ペーストを準備し、接着性およびパターン表面について評価した。デカン酸を添加した場合、銅チップは導電性ペースト表面に接着したものの、平滑なパターン表面が得られなかったため(比較例4)、十分な接合は得られないと考えられる。一方、イソパルミチン酸を添加した場合は、十分な接着性が得られ、なおかつ、平滑なパターン表面が得られたため(実施例4)、十分な接合も得られると考えられる。
【0072】
【表3】
【0073】
上記実施例により、本発明の導電性ペーストを用いれば、電子部品を導電層に十分に接合させることができることが確認された。また、上記実施例により、本発明の導電性ペーストを用いれば、製造プロセス中、特に接合のための本加熱前に、マウントされた電子部品と導電性ペースト層とを十分に接着させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
100 電子デバイス
101 基板
103 導電層
105 導電性ペースト
107 電子部品
201 金属粉粒子
203 分岐高級脂肪酸
図1
図2