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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220309BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H05K3/00 G
H05K3/00 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017229429
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019101114
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-051212(JP,A)
【文献】特開2005-316409(JP,A)
【文献】特開2013-191901(JP,A)
【文献】特開2014-165266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光変調素子をマトリクス状に配列させた光変調素子アレイを設けた露光ヘッドと
基板を搭載するステージを、前記露光ヘッドに対して相対移動させる走査部と、
少なくとも1つの透過部が設けられ、前記ステージと連動して前記光変調素子アレイの露光エリアに対し相対移動する遮光部とを備え、
前記光変調素子アレイが、前記走査部によって前記ステージが一定速度で主走査方向に沿って移動する間の前記透過部の相対位置に応じて、測定パターン光を形成する光変調素子を切り替え、
前記透過部を通る光を受光する測光部によって検出される光量に基づいて露光位置を測定することを特徴する露光装置。
【請求項2】
前記露光エリアが前記透過部を通過する間、所定の露光ピッチに従って多重露光動作が実行されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記光変調素子アレイが、前記透過部の一部領域を照明するように、前記測定パターン光を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記光変調素子アレイが、副走査方向に沿ったエッジラインをもつ測定パターン光を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項5】
前記光変調素子アレイが、主走査方向に沿ったエッジラインをもつ測定パターン光を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記透過部が、矩形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
記測光部から出力される一連の光量に応じた信号に基づいて、主走査方向と副走査方向の少なくとも主走査方向に沿った露光位置を算出する演算部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項8】
測定された露光位置と、基準となる露光位置との差に基づいて、描画データを補正することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
複数の露光ヘッドが設けられ、
前記遮光部が、各露光ヘッドの光変調素子アレイの露光エリアが前記ステージに対して相対移動するときの走査バンドの幅に合わせて配置されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の露光装置。
【請求項10】
複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイを設けた露光ヘッドと、
基板を搭載するステージを、前記露光ヘッドに対して相対移動させる走査部と、
少なくとも1つの透過部を有し、前記ステージと連動する遮光部と、
前記透過部を通る光を受光する測光部とを備え、
前記光変調素子アレイが、前記走査部によって前記ステージが一定速度で主走査方向に沿って移動する間に前記透過部が前記露光ヘッド下方を通過するとき、前記透過部に向けて測定パターン光を投影し続けるように、測定パターン光を形成する光変調素子を切り替え、
前記測光部により検出された光量から露光位置を求めることを特徴とする露光装置。
【請求項11】
基板を搭載するステージを、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイを設けた露光ヘッドに対して相対移動させ、
前記ステージと連動する遮光部に設けられた少なくとも1つの透過部を通る光の光量を検出し、
検出された光量から露光位置を求める露光位置測定方法であって、
前記走査部によって前記ステージが一定速度で主走査方向に沿って移動する間に前記透過部が前記露光ヘッド下方を通過するとき、前記複数の光変調素子を切り替え駆動することによって、前記透過部に向けて測定パターン光を投影し続けることを特徴とする露光位置測定方法。
【請求項12】
前記遮光部に設けられたスリットを前記露光ヘッドに対して相対移動させ、
前記スリットが前記露光ヘッド下方を通過するとき、あらかじめ定められた光変調素子を駆動することによって測定パターン光を投影し続け、
検出された光量から算出される暫定的露光位置に基づいて露光位置を暫定的に補正した後、前記複数の光変調素子を切り替え駆動することによって、前記透過部に向け測定パターン光を投影し続けることを特徴とする請求項11に記載の露光位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子アレイを用いてパターンを形成するマスクレス露光装置に関し、特に、基板等に投影されるパターンの位置検出に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクレス露光装置では、微細パターンを形成するため、パターン光を定められた場所へ正確に投影する必要がある。しかしながら、DMDの温度変化などに起因して、パターン光の投影位置にずれが生じる。そのため、フォトダイオードなどの光センサによってパターン光の投影位置を測定し、露光位置を補正する(特許文献1参照)。
【0003】
そこでは、複数のスリットが形成された露光ステージを投影エリアに対して相対移動させながら、位置測定用のパターン光を投影する。そして、測定された露光位置と設計値との差に基づき、描画データの補正、あるいは露光ヘッドの取り付け位置調整などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-142036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の露光位置測定では、露光ステージを相対移動させる間、同じマイクロミラーを使って、位置測定用のパターン光を同じ場所に投影し続ける。しかしながら、実際の露光時には、多重露光動作が実行され、露光位置に応じたパターン光を投影するために、駆動するマイクロミラーは時々刻々変化する。
【0006】
露光位置測定時のパターン光の投影が実際の露光動作時のパターン光投影と相違するため、露光動作時に現れる位置ずれを正確に検出することができない。したがって、露光位置測定時に算出された露光位置ずれに基づいて補正し、多重露光動作を行っても、位置ずれが解消されない。
【0007】
したがって、マスクレス露光装置において、より高精度に露光位置を測定できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、複数の光変調素子をマトリクス状に配列させた光変調素子アレイと、少なくとも1つの透過部が設けられ、光変調素子アレイの投影エリア(ここでは、露光エリアという)に対し相対移動する遮光部とを備える。遮光部は、基板を搭載するステージと連動するように構成することが可能であり、例えば、ステージの端などに一体的に設けられる。露光装置は、ステージを露光エリアに対して相対移動させる走査部を備えるようにすればよい。
【0009】
本発明では、光変調素子アレイが、透過部の相対位置に応じて、露光位置を測定するためのパターン光(ここでは、測定パターン光という)を形成する光変調素子を切り替える。すなわち、光変調素子アレイの複数の光変調素子の中で測定パターン光を形成する光変調素子が、露光エリアにおける透過部の相対移動に合わせて切り替えられていく。そして露光装置は、透過部を通る光の光量に基づいて露光位置を測定する。例えば露光装置は、測定パターン光などのパターン光を形成する光変調素子の切り替えタイミングを制御する露光制御部を備える。露光装置は、測定された露光位置と、基準となる露光位置との差に基づいて、描画データを補正することが可能である。
【0010】
例えば露光装置は、透過部を通る光を受光し、光量を測定(検出)する測光部と、測光部から出力される一連の光量に応じた信号に基づいて、主走査方向と副走査方向の少なくともいずれか一方に沿った露光位置を算出する演算部とを備える。測光部は、例えばフォトセンサなどで構成することが可能であり、透過部下方に設けることができる。あるいは、光学系などによって測定パターン光を測光部へ導くようにすることも可能である。
【0011】
透過部のサイズについては、任意に設定することが可能であり、露光エリアのサイズより小さいサイズに定めればよい。また、2つ以上の光変調素子によって測定パターン光を形成するように、透過部サイズを定めることも可能である。測定パターン光の投影エリアサイズ、形状も、透過部のサイズ、形状に合わせて定めることができる。例えば、透過部が露光エリアを相対移動する間、同じ投影エリアサイズ、形状の測定パターン光を投影するように、光変調素子を切り替えていくことが可能である。
【0012】
透過部の形状については、主走査方向、副走査の露光位置測定、光量から露光位置を測定することを考慮すると、矩形状(正方形状など)に定めることが可能である。この場合、測定パターン光の投影エリア形状も矩形状にすることが可能であり、測定パターン光を形成する光変調素子は、縦横方向それぞれに2以上並ぶ光変調素子から構成することができる。透過部は、主走査方向に沿った走査バンドそれぞれに設けることが可能であり、測光部を各走査バンドに設ければよい。また、複数の透過部を1つの走査バンドに設けることも可能である。
【0013】
露光位置を測定する場合、実際の露光動作に合わせるため、露光エリアが透過部を通過する間、所定の露光ピッチに従って多重露光動作を実行するようにしてもよい。すなわち、オーバラップ露光動作を行うことが可能である。
【0014】
露光位置を測定するとき、測定パターン光のエッジラインを基準にすることが可能である。この場合、光変調素子アレイが、透過部の透過領域を部分的に照明するように、測定パターン光を形成することが可能である。例えば、およそ透過領域の半分を照明することができる。露光装置に規定された座標系を考慮すれば、光変調素子アレイが、副走査方向に沿ったエッジラインをもつ測定パターン光を形成するのがよい。また、光変調素子アレイが、主走査方向に沿ったエッジラインをもつ測定パターン光を形成するようにすることもできる。
【0015】
本発明の他の態様による露光装置は、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイを設けた露光ヘッドと、基板を搭載するステージを、露光ヘッドに対して相対移動させる走査部と、少なくとも1つの透過部を有し、ステージと連動する遮光部と、透過部を通る光を受光する測光部とを備え、光変調素子アレイが、透過部が露光ヘッド下方を通過するとき、透過部に向けて位置測定用パターンの光を投影し続ける。
【0016】
本発明の露光位置測定方法は、基板を搭載するステージを、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイを設けた露光ヘッドに対して相対移動させ、ステージと連動する遮光部に設けられた少なくとも1つの透過部を通る光の光量を検出し、透過部が露光ヘッド下方を通過するとき、複数の光変調素子を切り替え駆動することによって、透過部に向けて位置測定用パターンの光を投影し続け、検出された光量から露光位置を求める。
【0017】
例えば、第1の補正処理として、遮光部に設けられたスリットを露光ヘッドに対して相対移動させ、スリットが露光ヘッド下方を通過するとき、あらかじめ定められた光変調素子を駆動することによって位置測定用パターンの光を投影し続ける。そして、検出された光量から算出される暫定的露光位置に基づいて露光位置を暫定的に補正した後、第2の補正処理として、上述したように複数の光変調素子を切り替え駆動することによって、透過部に向けて位置測定パターン光を投影し続けることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マスクレス露光装置において、正確に露光位置を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態である露光装置のブロック図である。
図2】遮光部の一部を示した平面図である。
図3】多重露光動作による位置測定用パターンを示した図である。
図4】位置測定用パターンの光を形成するマイクロミラーを示した図である。
図5】位置測定用パターンの光を形成するマイクロミラーを示した図である。
図6】多重露光動作における位置測定用パターンTPのエッジラインELとのずれを示した図である。
図7】多重露光動作時における光量検出タイミングを示した図である。
図8】一連の検出光量を示した図である。
図9】主走査方向位置測定用パターンと窓の位置関係を示した図である。
図10】副走査方向位置測定用パターンと窓の位置関係を示した図である。
図11】検出される一連の光量を示した図である。
図12】補正処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態である露光装置のブロック図である。
【0022】
露光装置(描画装置)10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Bへ光を照射することによってパターンを形成するマスクレス露光装置であり、基板Bを搭載するステージ(テーブルともいう)12が主走査方向、副走査方向に沿って移動可能に設置されている。ステージ駆動機構15は、ステージ12を駆動する。
【0023】
露光装置10は、パターン光を投影する複数の露光ヘッドを備えており(ここでは1つの露光ヘッド18のみ図示)、露光ヘッド18は、DMD22、照明光学系23、投影光学系25を備える。光源20は、例えば放電ランプによって構成され、光源駆動部21によって駆動される。
【0024】
ベクタデータなどで構成されるCAD/CAMデータが露光装置10へ入力されると、ベクタデータがラスタ変換回路26に送られ、ベクタデータがラスタデータに変換される。生成されたラスタデータは、描画データとしてバッファメモリ(図示せず)に一時的に格納された後、DMD駆動回路24へ送られる。
【0025】
DMD22は、微小マイクロミラーを2次元配列させた光変調素子アレイであり、各マイクロミラーの姿勢を変えることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路24は、各ミラーの姿勢を制御し、パターンに応じた光が投影光学系25を介して基板Bの表面に投影される。
【0026】
ステージ駆動機構15は、コントローラ30からの制御信号に従い、ステージ12を移動させる。ステージ駆動機構15には不図示のリニアエンコーダが備わっており、ステージ12の位置を測定し、コントローラ30にフィードバックする。
【0027】
ステージ12の端部付近には、位置測定部28が設けられている。位置測定部28は、複数のフォトセンサ(測光部)PDと、遮光部40を備え、ステージ12に搭載された支持機構41によって支持されている。遮光部40は、後述するように、部分的に光を透過する透過部を複数備え、その形成位置に合わせてフォトセンサPDが配置されている。位置算出部27は、位置測定部28から出力される光量信号に基づいて、露光位置、すなわち露光ヘッド18に対するステージ12(基板B)の相対的位置を算出する。
【0028】
露光動作中、ステージ12は、主走査方向Xに沿って一定速度で移動する。DMD22全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Wの移動に伴って基板W上を相対的に移動する。露光動作としては、多重露光動作が所定の露光ピッチに応じて行なわれる。すなわち、露光エリアの相対位置に応じたパターン光を形成するマイクロミラーが所定期間ON状態となり、露光ピッチの距離だけ露光エリアが相対移動する度にパターン光を形成するマイクロミラーが切り替えられていく。
【0029】
ステージ12の移動方向は、主走査方向Xに対して僅かに傾斜するように調整されている。これによって、多重露光動作のとき、ショット領域(複数のマイクロミラーがそれぞれ露光した基板上の領域)は主走査方向X、副走査方向Y方向にずれてオーバラップし、1つのマイクロミラーの投影エリア(以下、微小露光エリアという)に相当する所定領域内に投影される複数のショット領域の中心位置は、X、Y方向に関して分散し、散在することになる。これによって、マイクロミラーの投影エリアサイズよりも小さい解像度でパターンを形成することが可能になる。
【0030】
コントローラ30は、DMD22のマイクロミラーの駆動タイミングを制御し、露光エリアの相対位置に従ってパターン光を形成するマイクロミラーをON状態にさせる。これにより、基板に描くべきパターンの光が順次投影される。そして、露光ヘッド18を含めた複数の露光ヘッドにより基板W全体を描画することによって、基板W全体にパターンが形成される。なお、一定速度で走査しながら多重露光動作を行う代わりに、ステップ&リピート方式によって多重露光動作を行ってもよい。
【0031】
多重露光動作によって描画処理を行う前には、露光開始位置に関する補正処理が行われる。ステージ12を一定速度で移動させながら露光位置測定用のパターン光を投影するとともに、コントローラ30は、位置算出部27から送られてくる露光位置情報に基づき、露光開始位置を補正する。本実施形態では、仮補正値を求める補正処理(以下では、第1の補正処理という)を始めに行い、その後、より厳密な補正値を求める補正処理(以下では、第2の補正処理という)を行う。
【0032】
以下、図2~7を用いて、露光位置の測定および補正処理について説明する。
【0033】
図2は、遮光部の一部を示した平面図である。
【0034】
遮光部40には、第1の補正処理を行うときに使用されるスリットP0が形成されるとともに、第2の補正処理を行うときに使用される透過部P1が設けられている。複数のフォトダイオードPDは、透過部P1と対向するように、透過部P1の下方に副走査方向Yに千鳥配列されている。遮光部40は、ここではガラスプレートによって構成されている。また、遮光部40の下方に設置された複数のフォトダイオードPDは、バンド幅BWに合わせて配置されている。ただし、バンド幅BWは、露光エリアEAが主走査方向Xに沿って相対移動するときの走査バンドの幅を表す。
【0035】
各走査バンドの透過部P1は、複数の窓Wによって構成されている。図2の例では、複数の窓Wは、副走査方向Yに沿って所定間隔を設けて形成され、同一ライン上に並んでいる。
【0036】
ここでは、透過部P1が5つの窓Wによって構成される。5つの窓Wは、フォトダイオードPDのサイズに応じたエリアDA内であってバンド幅BWに収まるように形成されている。窓Wは矩形状に形成され、ここでは正方形状に定められている。窓Wのサイズは、DMD22の1つのマイクロミラーの微小露光エリアよりも大きく、例えば窓Wの一辺の長さLは、0.04~0.1mmの範囲に定められる。
【0037】
図3は、多重露光動作による位置測定用パターンを示した図である。図4は、位置測定用パターンの光を形成するマイクロミラーを示した図である。
【0038】
ステージ12を露光ヘッド18に対して相対移動させる、すなわち露光エリアEAに対して相対移動させる間、窓Wの一部領域AHを照射するように多重露光動作が行われる。ここでは、窓Wのおよそ半分の領域を照射するように、矩形状パターン(以下では、位置測定用パターンという)TPを形成する。この光は、DMD22においてまとまった所定数のマイクロミラーをON状態にすることによって形成される。位置測定用パターンTPは、窓Wの副走査方向Yに沿った一辺に平行なエッジラインELを有し、副走査方向Yに関して一部領域AHの両端を超えるサイズを有する。
【0039】
図3では、m-1回目(mは整数)の露光動作とm回目の露光動作における窓Wの位置および位置測定用パターンPTの位置を示している。ステージ12は露光エリアEAに対して相対移動していくため、m-1回目と同じマイクロミラーによって位置測定用パターンの光を投影した場合、その投影位置は、移動距離の分だけ窓Wから離れた位置となる(符号TP’参照)。
【0040】
そのため、位置測定用パターンTPの光を形成する(ON状態にする)マイクロミラーを露光動作の度に変更し、露光エリアEA内における窓Wの相対位置に合わせて位置測定用パターンTPの光の投影箇所を移動させていく。位置測定用パターンTPの光の投影箇所を窓Wの移動に追従させることで、窓Wが露光エリアEAを通過する間、位置測定用パターンTPの光は窓Wの一部領域AHを照明し続ける。
【0041】
図4では、m-1回目の露光動作とm回目の露光動作時にON状態にするマイクロミラーを示している。DMD22では、位置測定用パターンTPの光を形成するマイクロミラーが次々と切り替わっていく。m-1回目の露光動作でエリアDEのマイクロミラー22MがON状態になると、m回目の露光動作では、エリアDE’のマイクロミラー22Mによって位置測定用パターンTPの光が形成される。
【0042】
図5は、位置測定用パターンTPの位置と光量との関係を示した図である。窓Wの副走査方向Yに沿った幅Aは一定である。したがって、フォトダイオードPDによって検出される光量PMは、窓Wの端からのエッジラインELまでの距離dに比例する。逆に光量PMを検出すれば、位置測定用パターンTPのエッジラインELの位置を求めることができる。
【0043】
ところで、多重露光動作時の露光ピッチは、マイクロミラー22Mの微小露光エリアのサイズの整数倍と一致しない。微小露光エリアの主走査方向長さをPとすると、露光ピッチは、kP+p(kは整数、0<p<P)に定められる。そのため、多重露光動作を行うとき、位置測定用パターンTPの投影箇所を常に同一エリアに定めることができず、設計上定められた光の透過領域である窓Wの一部領域AHのサイズが、一定とならない。
【0044】
図6は、多重露光動作における位置測定用パターンTPのエッジラインELとのずれを示した図である。エッジラインELの位置を定める微小露光エリアFAの投影位置は、多重露光動作の間、窓Wに対して周期的にずれる。そのずれは、微小露光エリアFAの±1/2サイズの範囲内で生じる。したがって、図4に示すようなマイクロミラー22Mの切り替え制御をDMD22全体に対して行い、一連のエッジラインELの位置の平均値を求めれば、その変動範囲の中心位置をエッジラインELとみなすことができる。
【0045】
図7は、多重露光動作時における光量検出タイミングを示した図である。図8は、一連の検出光量を示した図である。
【0046】
露光ピッチに従って多重露光動作が行われる場合、位置測定用パターンTPを形成するマイクロミラーを所定時間ON状態にする。この間に遮光部40が連続的に移動するため、位置測定用パターンPTのエッジラインELの位置は主走査方向Xに移動していく。
【0047】
一方、フォトダイオードPDでは、閾値以上の光量を得た時点でトリガーを掛け、そこから一定時間経過した時点で光量を検出する。したがって、トリガータイミングから一定時間経過後の光量検出タイミングまでの間、光量が減少する。フォトダイオードPDは、位置測定用パターンTPを形成するマイクロミラー22Mの切り替えに合わせて、一連の光量(図8では、P1、P2、・・・Pnと表す)を検出する。そして、その平均光量を、エッジラインELがdにあるときの光量として定める。
【0048】
図9は、主走査方向位置測定用パターンと窓の位置関係を示した図である。
【0049】
位置測定用パターンPTが窓W全体を覆う場合の光量をQとすると、エッジラインELまでの距離dは、以下の式で求められる。ただし、Lは窓Wの長さ、PEはエッジラインELがdにあるときの(平均)光量を表す。また、Qはあらかじめ測定されている。

d=L×PE/Q ・・・(1)
【0050】
位置測定用パターンPTの幅をD、窓WのY方向に沿った辺からパターン中心位置Pxまでの距離をdpとすると、dpは以下の式によって求められる。

dp=D/2-d ・・・(2)

窓Wの主走査方向Xに沿った中心位置Xwはあらかじめ測定されている。よって、位置測定用パターンPTの中心位置Pxは、以下の式によって求められる。

Px=Xw+L/2+dp ・・・(3)
【0051】
図10は、副走査方向位置測定用パターンと窓の位置関係を示した図である。図11は、検出される一連の光量を示した図である。
【0052】
副走査方向Yに沿った位置測定用パターンの中心位置を求める場合、図10に示すように、エッジラインELが主走査方向Xに沿った位置測定用パターンTPを、窓Wの一部領域AHを光が透過するように投影する。そして、主走査方向Xに対して多重露光動作を行い、エッジラインELの(平均)光量を算出する。主走査方向Xに関して光量が一定であるため、図11に示すように、トリガー時点から検出タイミングまでの間、光量は一定となる。一方、主走査方向Xに対して露光エリア(DMD22)が傾斜しているため、検出される光量P1、P2、・・・は、距離dが長くなるのにつれて漸近的に増加していく。
【0053】
副走査方向Yに関する測定用パターンPTの中心位置Pyは、主走査方向Xと同様、以下の式によって求められる。ただし、Pwは窓Wの副走査方向Yに沿った中心位置を表す。

Py=Pw+L/2+dp ・・・(4)
【0054】
図12は、補正処理を示したフローチャートである。
【0055】
ステップS101では、図2に示したスリットP0を利用した従来の第1の補正処理が実行され、暫定的露光位置が測定されるとともに、暫定的露光位置と基準となる露光位置との差に従って暫定的な補正処理が行われる。第1の補正処理によって、窓Wに対する位置測定用パターンTPの投影を確実に行うことが可能となる。第1の補正処理が行われると、走査バンドそれぞれに対し、第2の補正処理が実行される。すなわち、主走査方向X、主走査方向Yに関する位置測定用パターンを投影する多重露光動作を行い(S102)、パターン中心位置を露光位置として算出する(S103)。1つの走査バンドに複数の窓Wが形成されているため、それぞれ求められたパターン中心位置の平均値を算出する。
【0056】
そして、あらかじめ定められた基準となるパターン中心位置と、算出されたパターン中心位置との差を、露光位置誤差として算出する(S104)。露光位置誤差が許容範囲を超える場合、露光開始位置に関し、描画データに対する補正処理を行う(S105、S106)。また、主走査方向X、副走査方向Yいずれか一方に関してパターン中心位置を補正してもよい。多重露光動作のとき、露光ピッチを実際の露光動作時とは異なる露光ピッチにしてもよい。
【0057】
このように本実施形態によれば、ステージ12に形成された遮光部40に対して窓Wを形成した透過部P1を設け、透過部P1の下方にフォトダイオードPDが配置される。描画前の補正処理において、所定の露光ピッチによって多重露光動作を行い、パターン形成のマイクロミラー22を切り替えながら、位置測定用パターンPTの光を窓Wに対して投影し続ける。そして、算出された位置測定用パターン中心位置と基準となる位置測定パターン位置の差に基づき、補正処理を行う。
【0058】
従来のように定められたマイクロミラーを常時ON状態にするのではなく、描画時と同じ多重露光動作によって位置測定用パターンの光を投影する。そのため、補正処理で得られた位置誤差をフィードバックすることが可能となり、パターン光を精度よく定められた位置に投影することができる。
【0059】
窓Wを正方形状にすることで、パターン中心位置を主走査方向、副走査方向両方とも簡易に算出することができる。また、複数の窓Wを1つの走査バンド内に形成することによって、より正確な露光位置を測定することが可能となる。あるいは、複数の窓Wの測定値を個別に参照することで、バンド内の歪みを知ることができる。さらに、走査バンドごとに透過部P1を設けることによって、各走査バンドにおける露光開始位置を補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
10 露光装置
22 DMD(光変調素子アレイ)
22M マイクロミラー(光変調素子)
24 DMD駆動回路(露光制御部)
27 位置算出部(演算部)
28 位置測定部(測光部)
30 コントローラ(露光制御部)
40 遮光部
PD フォトダイオード
P1 透過部
W 窓(透過部)


図1
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図12