(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】液漏れ検知機構の改良
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20220309BHJP
F15B 15/28 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G01M3/04 N
F15B15/28 Z
(21)【出願番号】P 2017252442
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】五反田 遼祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭一郎
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199607(WO,A1)
【文献】特開平06-026979(JP,A)
【文献】特開2003-021568(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182398(JP,U)
【文献】米国特許第05040579(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ室を有し、前記シリンダ室と外部空間とを接続する連通孔及び
前記連通孔と前記外部空間とを接続し前記連通孔の第1位置にその一端が接続され
ており前記外部空間にその他端が開口している流路が形成されたシリンダと、
前記連通孔を貫くように前記シリンダに設けられたピストンロッドと、
前記連通孔の前記第1位置よりも前記シリンダ室側にある第2位置に設けられたシール部材と、
前記流路の前記他端に接続されたタンクと、
を備える液漏れ検知機構。
【請求項2】
前記タンクは、少なくともその一部が透明または半透明である、
請求項1に記載の液漏れ検知機構。
【請求項3】
前記タンクは、
前記シリンダ室から前記連通孔及び前記流路を介して流入し
た流体の量を計測するための目盛りを有する、
請求項1または請求項2に記載の液漏れ検知機構。
【請求項4】
前記タンクがスパイラル形状に形成される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液漏れ検知機構。
【請求項5】
前記タンクは、前記シリンダ本体とは別部材であり、
前記タンクが前記シリンダ本体の外表面に
取り付けられる、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液漏れ検知機構。
【請求項6】
前記流路に設けられ、前記タンクから前記連通孔への逆流を防止するように構成されたチェック弁をさらに備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液漏れ検知機構。
【請求項7】
前記タンク内に貯留された流体の量を検出するレベル計をさらに備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液漏れ検知機構。
【請求項8】
前記連通孔の前記第1位置よりも前記外部空間側にある第3位置に設けられたスクレイパをさらに備える、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液漏れ検知機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液漏れ検知機構の改良に関する。本開示は、より具体的には、シリンダ機構における液漏れを検知する液漏れ検知機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なシリンダ機構においては、シリンダと当該シリンダに対して摺動するピストンロッドとの間にシール部材が設けられ、このシール部材によりシリンダ内に作動流体が封止されている。かかるシリンダ機構は、流体圧式アクチュエータや流体ポンプに適用される。
【0003】
かかるシール部材は、通常、ゴムなどから成る弾性部材で構成されるため、使用に応じて磨耗する。特開2016-45068号公報には、磨耗したシール部材からの流体の漏洩を検知するように構成された液漏れ検知機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の液漏れ検知機構では、磨耗が進行したシール部材からの液漏れを検知しているため、当該シール部材から漏洩した流体により外部環境が汚染される可能性がある。外部空間への流体の漏洩が起こるほどシール部材が劣化する前にシール部材の磨耗の程度を検知できることが望まれる。
【0006】
本開示は、新規な液漏れ検知機構を提供することを目的とする。本開示の具体的な目的の一つは、外部空間への流体の漏洩が起こる前にシール部材の磨耗の程度を検知できる液漏れ検知機構を提供することである。本開示のこれ以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による液漏れ検知機構は、シリンダ室を有し、前記シリンダ室と外部空間とを接続する連通孔が形成されたシリンダと、前記連通孔を貫くように前記シリンダに設けられたピストンロッドと、を備える。当該シリンダには、前記連通孔の第1位置にその一端が接続された流路が形成される。当該液漏れ検知機構は、前記連通孔の前記第1位置よりも前記シリンダ室側にある第2位置に設けられたシール部材と、前記流路の他端に接続されたタンクと、をさらに備える。
【0008】
上記実施形態において、シリンダ室内の流体の一部は、当該シリンダ室と外部空間との圧力差により、連通孔において外部空間へ向かって浸み出す。このシリンダ室から浸み出した流体は、連通孔の第1位置から、シリンダに形成された流路に侵入し、この流路を経由してタンクに流れ込む。よって、このタンクに貯留されている流体の量に基づいてシール部材の磨耗の程度を判断することができる。上記実施形態においては、シリンダ室と外部空間との気圧差などの原因で、シリンダ室から磨耗前のシール部材を通って浸み出す流体をタンクに貯蔵することができる。よって、流体が外部空間へ漏れ出す程度にまでシール部材が磨耗する前の時点においても、シール部材の磨耗の程度をモニタリングすることができる。これにより、流体が外部空間まで漏出する前に、シール部材を交換することが可能となる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記タンクは、少なくともその一部が透明または半透明である。
【0010】
上記実施形態によれば、タンクが透明または半透明であるため、外部からタンク内の流体を視認することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記タンクは、前記流路を介して流入した前記流体の量を計測するための目盛りを有する。
【0012】
上記実施形態によれば、目盛りを読み取ることにより、タンク内の流体の量を測ることができる。
【0013】
本発明の一実施形態においては、前記タンクがスパイラル形状に形成される。
【0014】
上記実施形態によれば、タンクの小型化を図ることができる。
【0015】
本発明の一実施形態においては、前記タンクが前記シリンダ本体の外表面に沿って形成される。
【0016】
上記実施形態によれば、タンクをシリンダ本体の近くに配置することで、タンクと他の物体との衝突を抑制できる。
【0017】
本発明の一実施形態による液漏れ検知機構は、前記流路に設けられ、前記タンクから前記連通孔への逆流を防止するように構成されたチェック弁をさらに備える。
【0018】
上記実施形態によれば、タンクからの流体の逆流を防止できる。
【0019】
本発明の一実施形態による液漏れ検知機構は、前記タンク内に貯留された流体の量を検出するレベル計をさらに備える。
【0020】
上記実施形態によれば、レベル計により、タンク内に貯留されている流体の量を検出することができる。
【0021】
本発明の一実施形態による液漏れ検知機構は、前記連通孔の前記第1位置よりも前記外部空間側にある第3位置に設けられたスクレイパをさらに備える。
【0022】
上記実施形態によれば、スクレイパにより、連通孔内においてシール部材から外部空間側へ浸み出した流体が外部空間に漏れないようにシールされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によって、新規な液漏れ検知機構が提供される。本発明の実施形態によって、外部空間への流体の漏洩が起こる前にシール部材の磨耗の程度を検知できる液漏れ検知機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータを模式的に示す図である。
【
図2】
図1のアクチュエータの一部を拡大して模式的に示す図である。
【
図3】タンクが取り外されたアクチュエータを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
【0025】
以下、添付の図面を適宜参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。各図面において共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0026】
本発明の一態様による液漏れ検知機構は、シリンダ室を有するシリンダと、当該シリンダに摺動可能に設けられたピストンユニットと、を有するシリンダ機構に適用され得る。当該シリンダには、このシリンダ室と外部空間とを接続する連通孔が形成される。当該ピストンユニットは、シリンダを2つのシリンダ室に区画するピストンと、ピストンから延伸するピストンロッドとを有していてもよい。当該シリンダユニットは、ピストンロッドが連通孔内でその延伸方向に沿って摺動可能となるようにシリンダに設けられてもよい。本発明の一態様による液漏れ検知機構は、シリンダ室から連通孔を通過する経路での液漏れを検知するように構成される。本明細書に開示される液漏れ検知機構が適用されるシリンダ機構には、流体圧式アクチュエータ、流体ポンプ、及びこれら以外の様々な流体圧で動作するシリンダ機構が含まれ得る。
【0027】
まず、
図1を参照して、本発明の一態様による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータ10を模式的に示す図である。このアクチュエータ10は、航空機等の輸送機器、各種産業機械、及びこれら以外の各種機械において、可動部材を駆動するために用いられ得る。アクチュエータ10は、本明細書に開示される液漏れ検知機構が適用されるシリンダ機構の例である。
【0028】
図1には、流体圧式アクチュエータが示されている。図示のように、アクチュエータ10は、シリンダ11と、ピストンユニット12と、シリンダ11に対するピストンユニット12の位置を検出する位置センサ20と、を有している。
【0029】
シリンダ11は、筒状部材11aとグランド部材11bと、を有している。筒状部材11aは、その長手方向(中心軸Aに沿う方向)の一方が開口し、他方が閉塞されている。つまり、筒状部材11aは、有底の筒状に形成されている。筒状部材11aには、流体圧回路17と連通すると連通する第1ポート18a及び第2ポート18bが形成されている。流体圧回路17は、アクチュエータ10に作動流体を供給する作動流体源、アクチュエータ10から排出された作動流体を貯留するリザーバ、及び各種バルブを備えることができる。
【0030】
グランド部材11bは、長手方向の両端が開口した筒状に形成されており、筒状部材11aの開口付近において、筒状部材11aの内側に螺合されている。グランド部材11bは、筒状部材11aの内側に嵌め合わされてもよい。グランド部材11bは両端が開口した筒状に形成されているため、グランド部材11bの内周面により、シリンダ11内のシリンダ室と外部空間100とを接続する連通孔11dが画定される。つまり、シリンダ11には、シリンダ室と外部空間100とを接続する連通孔11dが形成されている。外部空間100は、シリンダ11の外側にある空間を意味する。シリンダ11へ作動流体を給排するための流体圧回路17は、外部空間100には含まれない。
【0031】
グランド部材11bの外周面には、中心軸Aの周方向に延伸するリング状の溝が形成されており、この溝にシール部材11cが設けられている。シール部材11cは、例えば、弾性部材からなるOリングである。
【0032】
本明細書で説明されている筒状部材11a及びグランド部材11bは、シリンダ11の構成部材の例示である。筒状部材11a及びグランド部材11bの形状、配置、及び接合態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。シリンダ11は、筒状部材11a及びグランド部材11b以外の部材を含んでもよい。
【0033】
ピストンユニット12は、ピストン13と、ピストン13に接続されたピストンロッド14と、ピストンロッド14に取り付けられたクレビス15と、を有する。ピストン13及びピストンロッド14は、シリンダ11の内部に配置されている。ピストンロッド14は、その一部がシリンダ11の外部(すなわち、外部空間100)に突出している。
【0034】
ピストン13は、円筒形状に形成されている。ピストン13は、その外周面が筒状部材11aの内周面と当接するように、筒状部材11aの内側に配置されている。ピストン13の外周面と筒状部材11aの内周面との間は、シール部材11eによりシールされている。これにより、ピストン13は、シリンダ11の内部空間を第1シリンダ室19aおよび第2シリンダ室19bに区画する。第1シリンダ室19aへ作動流体の供給及び第1シリンダ室19aからの作動流体の排出は、第1ポート18aを介して行われる。同様に、第2シリンダ室19bへの作動流体の供給及び第2シリンダ室19bからの作動流体の排出は、第2ポート18bを介して行われる。
【0035】
ピストンロッド14は、ピストン13からシリンダ11の開口端に向かって延伸する第1筒状部材14aと、ピストン13から第1筒状部材14aと反対側に向かって延伸する第2筒状部材14bと、を有する。
【0036】
ピストンロッド14は、シリンダ11の連通孔11dを貫くように、シリンダ11に設けられている。具体的には、ピストンロッド14は、第1筒状部材14aの外周面においてグランド部材11bの内周面と当接するように設けられている。
【0037】
クレビス15は、駆動対象の可動部材に回動可能に取り付けられる取付部15aと、この取付部15aから突出する軸部15bとを有する。軸部15bの外表面には雄ねじが形成されており、この雄ねじが第1筒状部材14aの内周面に形成された雌ねじと螺合する。
【0038】
ピストンユニット12は、シリンダ11に対してその中心軸Aに沿って移動可能に設けられている。ピストンユニット12が中心軸Aに沿った第1移動方向W1に移動するとアクチュエータ10は伸長し、ピストンユニット12が中心軸A沿った第2移動方向W2に移動するとアクチュエータ10は収縮する。アクチュエータ10は、第1シリンダ室19a及び第2シリンダ室19bに対して作動流体が給排されることで作動する。本明細書で説明されているピストンユニット12は例示であり、ピストンユニット12の構成部材の形状、配置、及び接合態様は、本明細書で明示的に説明された態様には限定されない。例えば、ピストンユニット12において、ピストンロッド14とクレビス15とは一部材として形成されてもよい。
【0039】
ピストンロッド14の第2筒状部材14bの内部には、ピストンユニット12の位置を検出する位置センサ20が設けられている。位置センサ20は、例えば、線形可変差動変圧器(LVDT)である。
【0040】
次に、上述したアクチュエータ10の動作について説明する。アクチュエータ10を収縮させる場合、不図示のコントローラからの指令に基づいて、流体圧回路17に備えられた制御バルブが切り換えられ、これにより第1シリンダ室19aに作動流体が供給され第2シリンダ室19bから作動流体が排出される。これにより、ピストンユニット12は、中立位置から第2移動方向W2に移動する。一方、アクチュエータ10を伸長させる場合、不図示のコントローラからの指令に基づいて制御バルブが切り換えられ、これにより、第2シリンダ室19bに作動流体が供給され、第1シリンダ室19aから作動流体が排出される。これにより、ピストンユニット12は、第1移動方向W1に移動する。
【0041】
次に、
図2及び
図3を参照して、アクチュエータ10及び当該アクチュエータ10に適用される液漏れ検知機構について説明する。
図2は、アクチュエータ10の一部を拡大して模式的に示す図である。具体的には、
図2には、アクチュエータ10のシリンダ11の開口近辺の断面が模式的に示されている。
図3は、タンク41が取り外されたアクチュエータ10を模式的に示す図である。
【0042】
図示のように、グランド部材11bの内周面には、第1溝31a、第2溝32a、及び第3溝33aがそれぞれ形成されている。第1溝31aは、中心軸A方向における第1位置において、グランド部材11bの内周面に形成されている。第2溝32aは、中心軸A方向における第2位置において、グランド部材11bの内周面に形成されている。第3溝33aは、中心軸A方向における第3位置において、グランド部材11bの内周面に形成されている。中心軸A方向において、第2位置は、第1位置よりもシリンダ11の内部側(第1シリンダ室19aに近い側)に配されており、第3位置は、第1位置よりも外部空間100側(第1シリンダ室19aから遠い側)に配されている。第1溝31a、第2溝32a、及び第3溝33aはいずれも、中心軸Aの周方向に延びるリング状に形成されている。第3溝33aは、外部空間100に開口している。
【0043】
第2溝32aには、シール部材32が設けられている。シール部材32は、例えば、弾性部材からなるOリングである。シール部材32は、第1シリンダ室19a内の流体が外部空間に漏れ出さないように、ピストンロッド14の第1筒状部材14aの外周面とグランド部材11bの内周面との間の隙間を封止する。つまり、シール部材32は、流体を第1シリンダ室19a内に封止するための部材である。シール部材32として、Oリング以外にも、流体を第1シリンダ室19a内に封止できる様々なシール部材を用いることができる。
【0044】
第3溝33aには、スクレイパ33が設けられている。スクレイパ33は、ゴムなどの樹脂材料からなる部材であり、中心軸Aの周方向に沿って延びるリング形状を有している。スクレイパ33は、ピストンロッド14の第1筒状部材14aの外周面に当接するように設けられている。スクレイパ33は、ピストンロッド14が第2移動方向W2へ移動する際に、ピストンロッド14の外周面に付着した異物を掻き取るように構成されている。
【0045】
グランド部材11bには、連通孔11と外部空間100とを接続する流路34が形成されている。流路34は、その一方の端部において、第1溝31aと接続されている。流路34は、
図3に示すように、後述するタンク41がグランド部材11bから取り外されている場合に、その他方の端部がグランド部材11bから外部空間100に向かって開口するように形成される。流路34は、第1溝31aとタンク41の内部空間とを接続する。
【0046】
本明細書で明示的に説明されている流路34の具体的な形状及び配置は例示である。本発明の趣旨に反しない限り、流路34の形状及び配置は適宜変更され得る。例えば、積層造形法(「Additive Manufacturing」、又は、単に「AM」ともいう。)によりシリンダ11を作製することにより、曲線形状となるように流路34を形成することもできる。流路34は、グランド部材11b以外のシリンダの構成部材に形成されてもよい。
【0047】
スクレイパ33は、第1溝31aの流体が連通孔11dを通って外部空間100に漏れ出ないように、グランド部材11bの内周面と第1筒状部材14aの外周面との間の隙間を封止するように構成される。このように、スクレイパ33は、シリンダ11の内部への異物の侵入を防止する機能と、流体が第1溝31aから連通孔11dを通って漏れ出さないようにシールする機能と、を有している。
【0048】
グランド部材11bには、タンク41が取り付けられている。タンク41は、グランド部材11bの外部空間100に面した外面に取り付けられている。図示の実施形態において、タンク41は、基部41aと、この基部41aから中心軸Aに沿ってグランド部材11bの外方に延伸する管状のタンク本体41bと、タンク本体41bの基部41aと反対側の端に設けられた終端部41cと、を備える。
【0049】
基部41aは、円筒形状に形成されており、その外周面には雄ねじが形成されている。タンク41は、基部41aがグランド部材11bに形成された雌ねじと螺合することにより、グランド部材11bに対して取り付けられる。基部41aは、固定リング44により、グランド部材11bに締め付けられる。基部41aの内部には、貫通孔41eが形成されている。貫通孔41eは、その一端が流路34と接続されており、その他端がタンク本体41bに接続されている。
【0050】
タンク本体41bは、中空の管状に形成されており、第1溝31aから流路34及び貫通孔41eを通過して流れ込んでくる流体をその内部空間に貯留できるように構成されている。タンク本体41bの内部空間は、タンク本体41bの内周面41dにより画定されている。図示の実施形態では、タンク本体41bは、中心軸Aに沿って延伸する管状に形成されている。
【0051】
タンク本体41bの内部空間には、フロート43が収容されている。フロート43は、タンク本体41bに流れ込んだ流体の量に応じて、タンク本体41bの内部空間内を移動するように設けられている。例えば、フロート43は、タンク本体41bが空の場合に基準位置に配されており、タンク本体41に流れ込んだ流体の量に応じて、当該基準位置からタンク本体41bの延伸方向に移動するように構成及び配置される。
【0052】
タンク本体41bは、その内部に貯留されている流体及びフロート43を外部から視認することができるように、透明または半透明であってもよい。外部からの視認性を高めるために、フロート43は着色されていてもよい。
【0053】
タンク本体41bには、目盛り42が付されていても良い。フロート43が到達した位置における目盛り42の数値を読み取ることにより、タンク本体41bに貯留されている流体の量を測ることができる。
【0054】
タンク本体41bの先端には、終端部41cが形成されている。終端部41cは、タンク本体41bの延伸方向に対してほぼ直交する方向に延伸している。この終端部41cにより、フロート43の脱落が防止される。また、終端部41cにより、タンク本体41bの内周面41dとフロート43との間から漏れ出した流体がタンク41から外に漏れ出すことを防止できる。
【0055】
流路34には、チェック弁50が設けられている。チェック弁50は、第1溝31a側からタンク41側へ所定の開弁圧より大きな圧力が作用したときに開弁するように構成される。チェック弁50により、タンク41に貯留された流体の第1溝31a及び連通孔11dへの逆流を防止することができる。また、タンク41に貯留される液体の液面を安定させることができる。チェック弁50の開弁圧は、第1溝31aに溜まった流体の流体圧により開弁するように定められる。チェック弁50の開弁圧は、第1溝31aに溜まった流体の流体圧がチェック弁50及びスクレイパ33に作用する際に、スクレイパ33から外部空間100に当該流体が漏洩しないうちにチェック弁50が開弁する程度の圧力に設定される。これにより、第1溝31aに溜まった流体は、スクレイパ33を通過して外部空間100へ漏れ出すのではなく、流路34を通過してタンク41に貯留される。
【0056】
タンク41は、本発明の液漏れ検知機構に適用可能なタンクの例であり、本発明に適用可能なタンクの具体的な形状、配置、及び機能は、タンク41に限定されない。続いて、
図4及び
図5を順次参照して、タンク41の変形例について説明する。
【0057】
図4に示されている実施形態においては、
図1~
図3に示されているタンク41に代えてタンク141が設けられている。
図4のタンク141は、グランド部材11bと螺合される基部141aと、この基部141から延伸するタンク本体141bと、基部141aをグランド部材141に締め付ける固定リング144と、を有する。タンク本体141bは、螺旋形状に形成されている。かかる螺旋形状のタンク本体141bは、積層造形法により作製され得る。
【0058】
タンク本体141bが螺旋形状とされることにより、タンク本体が一方向に延伸する場合よりも、タンク141の寸法を小型化できる。
【0059】
図5に示されている実施形態においては、
図1~
図3に示されているタンク41に代えてタンク241が設けられている。
図5のタンク241は、グランド部材11bに嵌め込まれる基部241aと、この基部241からグランド部材11bの外表面に沿って延伸するタンク本体241bと、を有する。タンク本体241bは、例えば、図示のように、グランド部材11bの外表面に沿って複数回折り曲げられたミランダ形状を有していてもよい。複数回折り曲げられた形状のタンク本体241bは、積層造形法により作製され得る。
【0060】
タンク本体241bがグランド部材11bの外表面に沿って延伸することにより、タンク241を、グランド部材11bの内部及びその外表面付近に配置することができる。これにより、タンク241と他の部材との衝突を抑制することができる。
【0061】
上述したアクチュエータ10においては、第1シリンダ室19aと外部空間100との気圧差により、第1シリンダ室19aの流体は、連通孔11dを通って外部空間100へ向かって浸み出す。この第1シリンダ室19aから浸み出した流体は、連通孔11dの第1溝31aから流路34に侵入し、この流路34を経由してタンク41,141,241に流れ込む。よって、これらのタンクに貯留されている流体の量に基づいてシール部材32の磨耗の程度を判断することができる。上記の各実施形態においては、シリンダ室19a1と外部空間100との気圧差などの原因で、シール部材32の磨耗または劣化の前からシリンダ室19a1よりシール部材32を通って浸み出す流体をタンク41,141,241に貯留することができる。タンク41,141,241に貯留されている流体の量は、所定期間ごと、所定運転サイクルごと、またはこれら以外の任意のタイミングで、目視により確認することが可能である。このようにして、流体が外部空間100へ漏れ出す程度にまでシール部材32が磨耗する前の時点においても、タンク41,141,241に貯蔵された流体の量に基づいて、シール部材32の磨耗の程度をモニタリングすることができる。これにより、流体が外部空間100に漏出する前に、シール部材32を交換することが可能となる。
【0062】
次に、
図6を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
図6は、本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
図6に示されている実施形態においては、
図1~
図3に示されているタンク41に代えてタンク341が設けられており、このタンク341に貯留された流体が所定量に達したことが検出スイッチ343により検出される。
【0063】
図示の実施形態において、タンク341は、両端が開口しており長手方向に延伸する管状のタンク本体341aと、このタンク本体341aの内部に設けられたプランジャ341bと、を有する。タンク本体341aは、その基端においてグランド部材11bに形成された凹部に埋め込まれている。タンク本体341aの内部空間は、タンク本体341aの基端側の開口を介して流路34と接続されている。このように、タンク341は、第1溝31aに溜まった流体が流路34を経由してタンク本体341aに流れ込むように構成及び配置されている。
【0064】
プランジャ341bは、タンク本体341aの内部に、タンク本体341aの長手方向に沿って摺動可能に設けられている。プランジャ341bは、タンク本体341aに流れ込んだ流体の量に応じて、タンク本体341aの長手方向において流路34から離れる方向に移動するように構成されている。
【0065】
プランジャ341bの軌道上には、検出スイッチ343が設けられている。検出スイッチ343は、例えば、グランド部材11bに取り付けられた支持台344に設けられる。検出スイッチ343は、プランジャ341bがタンク本体341aから所定位置まで押し出されたことを検知するように構成される。例えば、検出スイッチ343は、タンク本体341aにその上限値まで流体が溜められたときに、当該上限値に対応する位置まで移動したプランジャ341bの先端341cによってONされるように構成される。検出スイッチ343には、コントローラ345が接続されてもよい。検出スイッチ343は、ONされたときに検出信号をコントローラ345に出力するように構成されてもよい。
【0066】
このコントローラ345は、各種の演算処理を行うCPUと、各種プログラム及び各種データを格納するメモリと、検出スイッチ343及びこれ以外の機器と接続される機器インタフェースと、を備えてもよい。コントローラ345は、例えば、検出スイッチ343からの検出信号に基づいて、タンク本体341aに貯留されている流体がタンク本体341aに関して設定された上限を超えていることを判定することができる。コントローラ345は、その判定結果に応じて、不図示の警報ランプを点灯させるように構成されてもよい。
【0067】
コントローラ345は、その判定結果に応じて、タンク本体341aにおける流体の貯留量が上限に達したことを示す信号を不図示の外部装置に送信するように構成されてもよい。これにより、外部装置を操作することによって、遠隔からでもタンク本体341aにおける流体の貯留量が上限に達したことの確認が可能となる。
【0068】
上記の実施形態によれば、検出スイッチ343によりタンク本体341aに貯留されている流体が上限量に達したことを検出することができる。この検出スイッチ343の検出結果に基づいて、シール部材32の磨耗の程度が判断される。検出スイッチ343は、タンク本体341aにおける流体の貯留量が所定量に達したことを検出するレベルスイッチであってもよい。レベルスイッチは、プランジャ341bが所定のチェックポイントまで移動したときに、検出信号をコントローラ345に出力するように構成されてもよい。レベルスイッチにおいては、複数のチェックポイントが設定されていてもよい。複数のチェックポイントを設定することにより、タンク本体341aに貯留されている流体の量を精度良く検出することができる。
【0069】
次に、
図7を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
図7は、本発明の別の実施形態による液漏れ検知機構が適用されたアクチュエータの一部を模式的に説明する図である。
図7に示されている実施形態においては、
図1~
図3に示されているタンク41に代えてタンク441が設けられている。
【0070】
図示の実施形態において、タンク441は、グランド部材11bに嵌め込まれる基部441aと、この基部441と接続されているタンク本体441bと、を有する。
【0071】
基部441aは、両端が開口した筒状に形成されており、その内部空間の一方の端部が流路34と接続されるように、グランド部材11bに埋め込まれている。基部441aの内部空間の他方の端部は、流路34から基部441aに侵入した流体がタンク本体441bに流れ込むように、タンク本体441bの内部空間と接続されている。
【0072】
タンク本体441bは、その内部空間に流路34から基部441aを経由して流れ込む流体を貯留できるように構成されている。タンク本体441bには、その内部空間と外部空間100とを接続する貫通孔441cが形成されている。貫通孔441cには、第1チェック弁444が設けられている。第1チェック弁444は、タンク本体441bの内部空間の気圧が外部空間100の気圧よりも第1開弁圧だけ大きくなったときに開弁するように構成される。第1チェック弁444は、閉弁時には貫通孔441cを閉塞し、開弁時にはタンク本体441bの内部空間と外部空間100とを連通させるように構成及び配置される。
【0073】
タンク本体441bと基部441aとの接続位置には、第2チェック弁445が設けられている。第2チェック弁445は、タンク本体441bの内部空間の気圧が基部441aの内部空間の気圧よりも第2開弁圧だけ大きくなったときに開弁するように構成される。基部441aの内部空間の気圧は、流路34内の気圧と等しい。第2チェック弁445は、閉弁時に流路34とタンク本体441bの内部空間との連通を遮断し、開弁時には流路34とタンク本体441bの内部空間とを連通させるように構成及び配置される。
【0074】
タンク本体441bには、レベル計442が設けられている。レベル計442は、タンク本体441bに貯留された流体110の貯留量を検出し、検出された貯留量を示す検知信号をコントローラ443に出力するように構成される。タンク本体441bに貯留された流体110の貯留量は、当該流体110の液面110aの位置を検出することにより求められてもよい。
【0075】
コントローラ443は、各種の演算処理を行うCPUと、各種プログラム及び各種データを格納するメモリと、レベル計442及びこれ以外の機器と接続される機器インタフェースと、を備えてもよい。コントローラ443は、例えば、レベル計442からの検出信号に基づいて、タンク本体441aに貯留されている流体がタンク本体441aに関して設定された上限を超えていることを判定することができる。コントローラ443は、コントローラ345と同様に、その判定結果に応じて、不図示の警報ランプを点灯させるように構成されてもよく、外部装置にタンク本体441aにおける流体の貯留量が上限に達したことを示す信号を送信するように構成されてもよい。
【0076】
上述したタンク441の動作について説明する。タンク441に備えられている第1チェック弁444及び第2チェック弁445は、例えば、外部空間100の気圧が大きく変化する環境にて作動する。このような外部空間100の気圧の大きな変化は、アクチュエータ10を例えば航空機に搭載した場合に生じ得る。アクチュエータ10が航空機に搭載された場合、航空機の駐機時には外部空間100の気圧は地表の大気圧となり、航空機の飛行時には外部空間の気圧は上空における気圧となるため、航空機の飛行時には駐機時と比較して外部空間100の気圧が大きく低下することになる。
【0077】
タンク本体441bは、動作開始時には空にされている。航空機の駐機時のように、外部空間100の気圧及びタンク本体441bの内部空間の気圧がいずれも大きい場合には、外部空間100とタンク本体441bの内部空間との気圧差は第1開弁圧よりも小さく、タンク本体441bの内部空間の気圧が流路34の流体圧よりも第2開弁圧以上に大きくなるため、第1チェック弁444は閉弁し、第2チェック弁445は開弁している。
【0078】
次に、航空機が離陸後に一定の高度まで達すると、外部空間100の気圧が低下し、タンク本体441bの内部空間の気圧が外部空間100の気圧よりも第1開弁圧以上に大きくなる。これにより、第1チェック弁444は開弁する。第1チェック弁444が開弁すると、タンク本体441bの内部空間も外部空間100と同じ低気圧となる。このタンク本体441bの内部空間の気圧低下により、タンク本体441bの内部空間の気圧と流路34の流体圧との差が第2開弁圧よりも小さくなる。このため、第2チェック弁445は閉弁される。また、上空では、外部空間100の気圧が低くなるため、流体が、第1シリンダ室19aから第1溝31aに吸い上げられる。この第1溝31a内の流体は、毛管現象により、流路34に吸い上げられる。上空においては、第2チェック弁445が閉弁されているため、流体は、流路34及び基部441aの内部空間に留まり、タンク本体441bには流入しない。
【0079】
次に、航空機が着陸するために所定高度まで降下すると、外部空間100の気圧が上昇するため、第1チェック弁444は再び閉弁して貫通孔441cが閉塞される。このとき、タンク本体441bの内部空間の気圧は、第1チェック弁444が閉弁されたときの高度における外部空間100の気圧と同程度となる。この第1チェック弁444が閉弁されるときの高度において、または、この後地上まで高度を下げる過程で、タンク本体441bの内部空間の気圧が流路34の流体圧よりも第2開弁圧以上に大きくなり、第2チェック弁444は再び開弁する。
【0080】
第2チェック弁444が開弁されるときにタンク本体441bの内部空間の気圧は大気圧よりも低くなっているため、流路34及び基部441aの内部空間にある流体がタンク本体441bに流入する。このタンク本体441bに流入した流体の量を例えばレベル計442を用いて測定することにより、離陸から着陸までの一度のフライトにおいてシール部材32を通過した流体の流量が検出される。この検出された流体の量に基づいて、シール部材32の磨耗の程度を判定することができる。例えば、検出された流体の量が所定の上限値よりも大きい場合に、シール部材32が交換時期にあると判断される。
【0081】
このように、上記の実施形態によれば、タンク本体441aに貯留されている流体の量を検出し、この検出値に基づいてシール部材32の磨耗の程度を判断することができる。
【0082】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0083】
本明細書で明示されるアクチュエータ10の構成部材の具体的な形状及び配置は例示である。本発明の趣旨に反しない限り、アクチュエータ10の各構成部材の形状、配置、及び機能は、適宜変更され得る。アクチュエータ10の変形例の一部を以下で説明する。以下で説明される変形例はあくまで例示に過ぎず、アクチュエータ10の構成部材に対して、本明細書で明示的に説明されない変形を加えることも可能である。
【0084】
コントローラ345,443により行われる制御及び演算は、複数のコントローラによって分散して実行されてもよい。また、コントローラ345,443により行われる制御及び演算の一部又は全部は、コントローラ345,443とは別のコントローラにより実行されてもよい。
【0085】
グランド部材11bには、本明細書で説明した以外にもシール部材を設けることができる。例えば、グランド部材11bの第1溝31aと第3溝33aとの間に、中心軸Aの周方向に伸びる溝を形成し、この溝に追加のシール部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 アクチュエータ
11 シリンダ
11a 筒状部材
11b グランド部材
11c シール部材
11d 連通孔
12 ピストンユニット
13 ピストン
14 ピストンロッド
19a 第1シリンダ室
19b 第2シリンダ室
20 位置センサ
31a 第1溝
32 シール部材
32a 第2溝
33 スクレイパ
33a 第3溝
34 流路
41,141,241,341,441 タンク
42 メモリ
43 フロート
50 チェック弁
100 外部空間
343 スイッチ
345,443 コントローラ
442 レベル計