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  • 特許-建物の階間構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】建物の階間構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220309BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220309BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04B9/00 A
E04B5/43 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018002882
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019123988
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀年
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-159043(JP,A)
【文献】特開2014-231716(JP,A)
【文献】特開2004-169429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 9/00
E04B 5/43
E04B 1/86
E04B 1/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に隣接する下階部及び上階部を備え
前記下階部及び前記上階部がそれぞれ建物ユニットにより構成されているユニット式の建物に適用され、
前記上階部の前記建物ユニットは、横並びに設けられた複数の床小梁と、それら床小梁によって下方から支持された床面材とを含んでおり、
前記下階部の前記建物ユニットは、横並びに設けられた複数の天井小梁と、前記各天井小梁の下方に取り付けられ前記天井小梁に沿って延びる複数の野縁と、それら野縁の下面に取り付けられた天井面材とを含んでおり、
前記天井面材と前記床面材との間には階間空間が形成され、
前記天井面材の前記階間空間側には吸音シートが貼り付けられており、
前記吸音シートは、前記天井面材の上面全域に貼り付けられており、前記天井面材と前記野縁との間に介在されていることを特徴とする建物の階間構造。
【請求項2】
前記上階部の床部には、前記床面材に加えられた軽量床衝撃音を遮る遮音構造と、前記床面材に加えられた重量床衝撃音を低減する制振ダンパとが設けられていることを特徴とする請求項に記載の建物の階間構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の階間構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下階部と上階部とを有する多層階建てのユニット式建物では、下階部の天井面材と上階部の床面材との間に階間空間が形成されている。かかる建物では、上階部の床部に物が落下する等して衝撃音(床衝撃音)が発生した場合に、その床衝撃音が階間空間を介して下階部に伝わることが想定される。
【0003】
そこで、そのような下階部への音の伝播に対する対策として、特許文献1には、上階部の床部に遮音部材や制振ダンパが設けられた構成が開示されている。かかる構成によれば、上階部の床上で発生した衝撃音を遮音部材で遮ったり制振ダンパで低減したりすることができるため、結果として床衝撃音が下階部へ伝わるのを抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-231716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した引用文献1の構成では、上階部の床で発生した床衝撃音が、上階部の床部に設けられた遮音部材等により十分に低減できなかった場合、低減しきれなかった音が下階部へ伝わるおそれがある。このため、上記特許文献1の構成は、下階部への音の伝わりを抑制する上で未だ改善の余地があると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、下階部と上階部とを備える多層階建ての建物において、上階部で発生した床衝撃音が下階部に伝わるのをより確実に抑制することができる建物の階間構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の階間構造は、上下に隣接する下階部及び上階部を備える建物に適用され、前記下階部の天井面材と前記上階部の床面材との間には階間空間が形成され、前記天井面材の前記階間空間側には吸音シートが貼り付けられていることを特徴とする。
【0008】
上述したように、上階部の床部で発生した衝撃音(床衝撃音)が、上階部の床部に設けられた遮音部材等により十分に低減できなかった場合、低減しきれなかった衝撃音が階間空間を介して下階部の側に伝わることが想定される。そこで本発明では、この点に鑑み、下階部の天井面材においてその階間空間側に吸音シートを貼り付けている。この場合、上階部の遮音部材等により低減しきれなかった音が下階部の側に伝播しても、その音を吸音シートにより吸収することができる。また、この場合、天井面材の振動を吸音シートで吸収(抑制)するといったことも可能となるため、下階部(詳しくは下階部における天井面材下の居住空間)への音の出口となる天井面材において好適に音の低減を図ることが可能となる。よって、この場合、上階部で発生した床衝撃音が下階部へ伝わるのをより確実に抑制することが可能となる。
【0009】
第2の発明の建物の階間構造は、第1の発明において、前記下階部及び前記上階部がそれぞれ建物ユニットにより構成されているユニット式の建物に適用され、前記上階部の前記建物ユニットは、横並びに設けられた複数の床小梁と、それら床小梁によって下方から支持された前記床面材とを含んでおり、前記下階部の前記建物ユニットは、横並びに設けられた複数の天井小梁と、それら天井小梁によって上方から支持された前記天井面材と、その天井面材の上面に貼り付けられた前記吸音シートとを含んでいることを特徴とする。
【0010】
本発明では、ユニット式建物に上記第1の発明を適用している。ユニット式建物では、建物ユニットが予め製造工場において製造され、その製造された建物ユニットが現場へ搬送され設置されることで建物が構築されるようになっている。製造工場では、天井面材や床面材を含んで建物ユニットが製造される。そのため、本発明では、製造工場において建物ユニットの天井面材にあらかじめ吸音シートを貼り付けることができ、しかもその貼付作業も比較的簡単に行うことができる。この場合、現場において吸音シートの貼付作業を行わなくて済むため、現場での工数増大を招くことなく、上記第1の発明の効果を得ることができる。
【0011】
第3の発明の建物の階間構造は、第2の発明において、前記下階部の前記建物ユニットには、前記各天井小梁の下方に前記天井小梁に沿って延びる野縁が取り付けられており、それら野縁の下面に前記天井面材が取り付けられており、前記吸音シートは、前記天井面材の上面において前記各野縁の間ごとに配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、吸音シートが天井面材の上面において各野縁の間ごとに配置されているため、吸音シートが天井面材と野縁との間に介在することがない。そのため、野縁に対する天井面材の取付状態が不安定になるのを回避しながら、上述した各効果を得ることができる。
【0013】
第4の発明の建物の階間構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記上階部の床部には、前記床面材に加えられた軽量床衝撃音を遮る遮音構造と、前記床面材に加えられた重量床衝撃音を低減する制振ダンパとが設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、上階部の床部に遮音構造と制振ダンパとが設けられているため、上階部の床部で軽量床衝撃音及び重量床衝撃音のいずれが発生した場合にも、衝撃音を低減することが可能となる。そして、遮音構造及び制振ダンパによっても低減しきれなかった音については、吸音シートにより吸収することができるため、下階部への音の伝わりをより一層確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】階間部分の構成を示す縦断面図。
図2】天井面材に対する吸音シートの貼付状態を示す平面図。
図3】ユニット式建物の概要を示す斜視図。
図4】建物ユニットの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てのユニット式建物において本発明を具体化している。ユニット式建物は、複数の建物ユニットが互いに組み合わせられることで構築される建物である。図3はユニット式建物の概要を示す斜視図であり、図4は建物ユニットの構成を示す斜視図である。
【0017】
図3に示すように、住宅等の建物10は、基礎11上に設けられた建物本体12と、その上方に設けられた屋根部13とを備える。建物本体12は、下階部としての一階部分14と、上階部としての二階部分15とを有する二階建てとなっている、一階部分14及び二階部分15はそれぞれ複数の建物ユニット20により構成されている。これら建物ユニット20は製造工場においてあらかじめ製造され、その後施工現場にトラック等により運搬されるものとなっている。なお、一階部分14を構成する建物ユニット20を下階ユニットということもでき、二階部分15を構成する建物ユニット20を上階ユニットということもできる。
【0018】
図4に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
【0019】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔(詳しくは等間隔)で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔(詳しくは等間隔)で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に設けられている。天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。また、天井小梁25によって天井面材27が上方から支持され、床小梁26によって床面材28が下方から支持されている。
【0020】
次に、一階部分14と二階部分15との境界部である階間部分の構成について説明する。図1は、階間部分の構成を示す縦断面図である。
【0021】
図1に示すように、一階部分14には、その天井面材27の下方に一階空間31が形成されている。二階部分15には、その床面材28の上方に二階空間32が形成されている。一階空間31及び二階空間32はいずれもリビングやダイニング、寝室といった居住空間となっている。
【0022】
一階部分14の天井面材27と二階部分15の床面材28との間には階間空間33が形成されている。階間空間33は、一階部分14の天井面材27により一階空間31と上下に仕切られ、また、二階部分15の床面材28により二階空間32と上下に仕切られている。
【0023】
二階部分15の床部には、複数の床小梁26が横並びで設けられている。これら床小梁26の上には床面材28が設けられている。床面材28は、各床小梁26の上面に跨がる状態で設けられた床下地面材35と、その床下地面材35の上に重ねられた制振シート36と、その制振シート36の上に重ねられた床下地面材37と、その床下地面材37の上に重ねられた床仕上面材38とを有する。
【0024】
床下地面材35はパーティクルボードよりなる。制振シート36は、アスファルト系の制振シートよりなり、例えばアスファルトに酸化鉄粉を含ませてシート状に形成されている。制振シート36は、遮音性能を有しており、床面材28上に加えられた床衝撃音が一階部分14へ伝わるのを遮るものとなっている。そのため、制振シート36を遮音シートということもできる。制振シート36は、軽量床衝撃音及び重量床衝撃音のうち、特に軽量床衝撃音を遮る効果が高いものとなっている。
【0025】
床下地面材37は合板よりなる。床仕上面材38は遮音性能を有する遮音フローリングからなる。床仕上面材38は、制振シート36と同様、床面材28上に加えられた床衝撃音が一階部分14へ伝わるのを遮るものとなっており、特に軽量床衝撃音を遮る効果が高いものとなっている。なお、この場合、制振シート36及び床仕上面材38により軽量床衝撃音を遮る遮音構造が構成されている。
【0026】
ちなみに、重量床衝撃音は、子供が二階部分15の床面材28上で飛び跳ねたり走り回ったりした場合などに生じる比較的低い音であり、軽量床衝撃音は、スプーンなどの物品を床面材28上に落とした場合などに生じる比較的高い音である。
【0027】
床小梁26には、その床小梁26に加えられた振動エネルギを吸収する制振ダンパ41が取り付けられている。制振ダンパ41は、二階部分15の床面材28で発生した床衝撃音を低減するものである。制振ダンパ41は、軽量床衝撃音及び重量床衝撃音のうち、特に重量床衝撃音を低減する効果が高いものとなっている。制振ダンパ41は、各床小梁26にそれぞれ取り付けられ、例えば各床小梁26の長手方向の中央位置に取り付けられている。
【0028】
制振ダンパ41は、床小梁26に固定されたブラケット42と、そのブラケット42に固定された弾性部材43と、弾性部材43を介してブラケット42に取り付けられた重り部材44とを有している。ブラケット42は、床小梁26の下面に溶接等により固定された金属製の板材であり、床小梁26の幅方向(短手方向)においてその床小梁26よりも側方に突出している。弾性部材43は、弾性変形可能なゴム等の材料により形成されており、重り部材44は、金属材料により形成されている。重り部材44は、床小梁26を挟んで両側方に配置されており、各重り部材44は、いずれもブラケット42の上に弾性部材43を介して載せられている。
【0029】
制振ダンパ41においては、床小梁26に対する重り部材44の相対的な移動が弾性部材43により可能になっている。このため、二階部分15の床面材28上で生じた音が伝わる等して床小梁26が揺れた場合に、弾性部材43が弾性変形することで重り部材44が床小梁26とは反対向きに移動する。この場合、床小梁26に加えられた振動エネルギが制振ダンパ41に吸収されることで、重量床衝撃音が制振ダンパ41により低減されるようになっている。
【0030】
続いて、一階部分14の天井部の構成について説明する。一階部分14の天井部には、複数の天井小梁25が横並びで設けられている。各天井小梁25の下面にはそれぞれ野縁51が取り付けられている。これら野縁51は木製の長尺材よりなり、天井小梁25の長手方向に沿って延びている。また、図示は省略するが、天井大梁22のうち、天井小梁25と平行に配置された短辺側の天井大梁22にも、その下面に野縁51が取り付けられ、その野縁51が天井大梁22の長手方向に沿って延びている。
【0031】
各野縁51の下面には天井面材27がビス等で取り付けられている。天井面材27は、2枚重ねの石膏ボードよりなる。天井面材27の上面には吸音シート52が貼り付けられている。吸音シート52は、ブチルゴムとアルミ箔とが積層されてなる複合シートからなる。吸音シート52は、入力した音エネルギーを熱エネルギーに変換することで吸音するものとなっている。
【0032】
二階部分15の床部で発生した床衝撃音が階間空間33を介して一階部分14側に伝播した場合には、その音が吸音シート52により吸収されるようになっている。吸音シート52は、軽量床衝撃音及び重量床衝撃音のいずれに対しても吸音効果を有しており、特に重量床衝撃音に対する吸音効果が高いものとなっている。また、吸音シート52は、天井面材27に生じる振動(音)を低減させる効果も有している。
【0033】
なお、吸音シート52としては、必ずしもブチルゴムとアルミ箔との複合シートを用いる必要はなく、その他の吸音シートを用いてもよい。
【0034】
図2は、天井面材27に対する吸音シート52の貼付状態を示す平面図である。図2に示すように、吸音シート52は、天井面材27の上面において隣り合う野縁51の間の領域(以下、野縁間領域54という)に貼り付けられている。吸音シート52は、野縁間領域54においてその全域に亘るよう配置されている。詳しくは、吸音シート52は、各野縁51の並ぶ並び方向における長さが隣り合う野縁51の間の間隔よりも小さく(若干小さく)なっており、野縁間領域54において当該領域54を挟んだ両側の各野縁51からそれぞれ離間した状態で配置されている。このため、吸音シート52と野縁51との間には若干の隙間が存在している。但し、吸音シート52について野縁51の並び方向の長さを隣り合う野縁51の間の間隔と同じにし、吸音シート52と野縁51との間に隙間が生じないようにしてもよい。
【0035】
吸音シート52は、野縁間領域54において野縁51の長手方向全域に亘るよう配置されている。本実施形態では、吸音シート52が野縁51の長手方向に複数(具体的には2つ)に分割され、それら分割された複数の吸音シート52が野縁51の長手方向全域に亘るよう配置されている。なお、吸音シート52は、必ずしも野縁51の長手方向に分割する必要はなく、一の吸音シート52を野縁51の長手方向全域に亘って配置してもよい。
【0036】
吸音シート52が貼り付けられた天井面材27の上方にはグラスウール56が設けられている。グラスウール56は、階間空間33において天井面材27全域に亘るよう配設されている。グラスウール56は、各床小梁26の上に跨がる状態で配置されている。グラスウール56は、各床小梁26の間にそれぞれ入り込んでおり、その入り込んだ部分がそれぞれ吸音シート52の上に重ねて配置されている。グラスウール56は、吸音性能を有しており、二階部分15の床部で発生した床衝撃音を階間空間33にて吸収するものとなっている。また、グラスウール56は、特に軽量床衝撃音に対する吸音効果が高いものとなっている。
【0037】
次に、上述した建物10を構築する際の作業の流れについて説明する。
【0038】
まず製造工場において、建物10を構成する各建物ユニット20を製造する。建物ユニット20の製造に際しては、建物ユニット20の天井部に天井面材27を取り付け、床部に床面材28を取り付ける。
【0039】
その後、一階部分14の建物ユニット20については、天井面材27の上面に吸音シート52を貼り付ける。そして、吸音シート52を貼り付けた天井面材27の上方にグラスウール56を敷き詰める。また、二階部分15の建物ユニット20については、各床小梁26に制振ダンパ41を取り付ける。
【0040】
各建物ユニット20の製造後、それら建物ユニット20をトラックにより施工現場へ搬送する。施工現場では、各建物ユニット20を所定位置に設置するとともに互いに連結する。これにより、建物10が構築される。
【0041】
このように、本ユニット式建物10では、一階部分14と二階部分15との間の階間部分における音の伝達を抑制するための構成(詳しくは、床面材28(36,38)の遮音構造、制振ダンパ41、吸音シート52、グラスウール56)がすべて製造工場にて建物ユニット20に組み付けられるようになっている。
【0042】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0043】
二階部分15の床部で発生した床衝撃音が、二階部分15の床部に設けられた遮音構造(制振シート36や床仕上面材38)や制振ダンパ41により十分に低減できなかった場合、低減しきれなかった衝撃音が階間空間33を介して一階部分14の側に伝わることが想定される。その点、上記の実施形態では、一階部分14の天井面材27の上(階間空間33側)に吸音シート52が貼り付けられているため、低減しきれかった音が一階部分14の側に伝播しても、その音を吸音シート52により吸収することができる。また、この場合、天井面材27の振動を吸音シート52で吸収(抑制)するといったことも可能となるため、一階空間31への音の出口となる天井面材27において好適に音の低減を図ることが可能となる。よって、この場合、二階部分15で発生した床衝撃音が一階部分14へ伝わるのをより確実に抑制することが可能となる。
【0044】
ユニット式建物では、製造工場において、天井面材27や床面材28を含んで建物ユニット20が製造される。そのため、製造工場において建物ユニット20の天井面材27にあらかじめ吸音シート52を貼り付けることができ、その貼付作業も比較的簡単に行うことができる。このような構成では、現場において吸音シート52の貼付作業を行わなくて済むため、現場での工数増大を招くことなく、上述した効果を得ることが可能となる。
【0045】
吸音シート52が天井面材27の上面において各野縁51の間ごとに配置されているため、吸音シート52が天井面材27と野縁51との間に介在することがない。そのため、野縁51に対する天井面材27の取付状態が不安定になるのを回避しながら、上述した各効果を得ることができる。
【0046】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、二階部分15の床部に遮音構造(詳しくは、制振シート36や遮音フローリングよりなる床仕上面材38)が設けられているとともに制振ダンパ41が設けられていることで、二階部分15の床部にて床衝撃音の低減が図られていたが、二階部分15の床側の構成は必ずしもかかる構成とする必要はない。例えば、二階部分15の床部に制振ダンパ41を設けることに代え、他の制振構造を設けてもよい。また、制振ダンパ41等の制振構造を設けず、遮音構造だけ設けてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、吸音シート52を天井面材27の上面において隣り合う野縁51の間の領域(野縁間領域54)に貼り付けたが、吸音シート52の天井面材27への貼付態様(貼付範囲)は任意であってよい。例えば、吸音シート52を天井面材27の上面全域に貼り付けてもよい。但し、その場合、吸音シート52が天井面材27と野縁51との間に介在されることになり、野縁51に対する天井面材27の取付状態が不安定になるおそれがある。そのため、その点を鑑みると、上記実施形態のように、吸音シート52を各野縁51の間の領域にのみ配置するのが望ましい。
【0049】
・上記実施形態では、ユニット式建物に本発明を適用したが、鉄骨軸組工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。
【0050】
上記実施形態では、二階建ての建物に本発明を適用したが、例えば三階建て以上の建物に本発明を適用してもよい。例えば三階建ての建物において、二階部分と三階部分との階間部分に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…建物、14…下階部としての一階部分、15…上階部としての二階部分、20…建物ユニット、25…天井小梁、26…床小梁、27…天井面材、28…床面材、33…階間空間、41…制振ダンパ、51…野縁、52…吸音シート。
図1
図2
図3
図4