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特許7037377車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
B60N3/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018015445
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131061
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 敬右
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康仁
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069697(JP,A)
【文献】特開平08-255604(JP,A)
【文献】実開平01-105324(JP,U)
【文献】特開2014-024468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0152439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に形成された開口部を覆う蓋部を備える車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材であって、
前記蓋部に隣接して配置されており、移動可能な操作部と、
前記蓋部と前記操作部とに接続されている支持部と、
前記支持部に形成された係合部と、
を備え、
前記係合部は、前記車両側に設けられた被係合部に係合可能であり、
前記操作部は、操作される可動本体部と、前記可動本体部との間に前記蓋部の一部を挟持する凹部を形成する挟持部と、を有し、
前記操作部は、被挟持部に沿って移動可能であることを特徴とする、
開閉係止部材。
【請求項2】
車両の内装部材に形成された開口部を覆う蓋部を備える車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材であって、
前記蓋部に隣接して配置されており、移動可能な操作部と、
前記蓋部と前記操作部とに接続されている支持部と、
前記支持部に形成された係合部と、
を備え、
前記係合部は、前記車両側に設けられた被係合部に係合可能であり、
前記操作部は、前記蓋部の上方に位置し、前記蓋部に形成された凸部に上方から当接し、
前記操作部の表面と前記蓋部の表面が平行であることを特徴とする、
開閉係止部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の開閉係止部材において、
前記支持部は、前記蓋部との接続部分と前記操作部との接続部分との間に、屈曲したヒンジ部を有し、かつ、前記係合部を前記被係合部に向けて付勢する付勢力を生じさせる、
開閉係止部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された開閉係止部材において、
前記支持部の、前記蓋部との接続部分から前記ヒンジ部の屈曲部分までの部分と、前記ヒンジ部の前記屈曲部分から前記操作部との接続部分までの部分の少なくとも一方に、他方に対して当接する当接部が設けられている、
開閉係止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内のフロアには、車内の汚れ防止や装飾を目的として内装部材(フロアカーペット)が敷かれている。内装部材には様々な貫通穴が形成されており、例えば車両のフロアに刻印された車両識別番号を視認するための窓として用いられる貫通穴が形成されている。車両識別番号を視認しないときには、この貫通穴は蓋部材で塞がれる。このように車両識別番号の視認用に設けられた貫通穴を塞ぐための蓋部材は、VIN(Vehicle Identification Number)カバーと呼ばれる。
特許文献1には、シート状部材(内装部材)に形成された開口を起倒動可能なカバー(VINカバー)で覆う構成のカバーユニットが開示されている。このカバーの基端部に形成されている薄肉部は、シート状部材に取付けられた取付け板部に繋がっている。薄肉部を湾曲させてカバーを倒伏させることにより、シート状部材に形成された開口(貫通穴)を閉じることができ、かつ、薄肉部を湾曲状態から復帰させることにより開口を開放させることができる。このように、特許文献1のカバーは、薄肉部の可撓性によって開閉可能な構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-69697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたカバーユニットのカバーにおいては、ユーザによる車両識別番号の視認が完了するまでカバーを開いた状態に保持する必要がある。しかし、特許文献1に記載されたカバーは、可撓性を有する薄肉部の曲げ伸ばしによって起倒動可能な構成であるため、カバーを開いた状態にしていても、薄肉部の復元力によってカバーが閉じてしまうおそれがある。車両識別番号を視認する際に、ユーザが手でカバーを保持していないとカバーの開放状態を維持できない場合には、車両識別番号を確認する作業が容易ではなく作業効率が悪い。仮に、薄肉部の形状や寸法を工夫して、カバーが開いた状態に保持されやすい構成にすると、カバーを閉じて開口を塞いだ状態にしていても、振動や衝撃を受けると容易にカバーが開いてしまう可能性がある。その場合には、意図せずに開いたカバーから開口を通って内装部材の下方に、ごみや埃や落下した物品等が入り込んでしまうおそれがある。このように、薄肉部の可撓性に依存してカバーが開閉可能な構成では、閉じた状態でも開いた状態でも、外部からの振動や衝撃を受けても安定的に長時間その状態を保持できるようにすることは困難である。
そこで、上記の課題に鑑み、本発明は、内装部材の貫通穴を塞ぐために閉じた状態でも、貫通穴を開放させるために開いた状態でも、安定的にその状態を保持することができる車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る開閉係止部材は、車両の内装部材に形成された開口部を覆う蓋部を備える車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材であって、前記蓋部に隣接して配置されており、移動可能な操作部と、前記蓋部と前記操作部とに接続されている支持部と、前記支持部に形成された係合部と、を備え、前記係合部は、前記車両側に設けられた被係合部に係合可能であり、前記操作部は、操作される可動本体部と、前記可動本体部との間に前記蓋部の一部を挟持する凹部を形成する挟持部と、を有し、前記操作部は、被挟持部に沿って移動可能であることを特徴とする。
または、本発明に係る開閉係止部材は、車両の内装部材に形成された開口部を覆う蓋部を備える車両の内装部材用の蓋部材の開閉係止部材であって、前記蓋部に隣接して配置されており、移動可能な操作部と、前記蓋部と前記操作部とに接続されている支持部と、
前記支持部に形成された係合部と、を備え、前記係合部は、前記車両側に設けられた被係合部に係合可能であり、前記操作部は、前記蓋部の上方に位置し、前記蓋部に形成された凸部に上方から当接し、前記操作部の表面と前記蓋部の表面が平行であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内装部材の貫通穴を塞ぐために閉じた状態でも、貫通穴を開放させるために開いた状態でも、安定的にその状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両の内装部材用の蓋部材を備えた車両の室内の要部を示す斜視図である。
図2図1に示した蓋部材を示す斜視図である。
図3図2に示した蓋部材の開閉係止部材とその周辺の構造を拡大した拡大斜視図である。
図4】(a)は、図2~3に示す蓋部材を構成する樹脂成形品の成形直後の状態を示す斜視図であり、(b)は、その側面図である。
図5】(a)は、図2に示した蓋部材を上方(操作部側)から見た平面図であり、(b)は、その側面図であり、(c)は、(a)のA-A線断面図であり、(d)は、(a)のB-B線断面図である。(e)は、(d)のC-C線断面図である。
図6図2に示した蓋部材が内装部材に取り付けられて貫通穴を覆っている状態を示す構造図である。
図7図6に示した蓋部材の係止が解除された状態を示す構造図である。
図8図2に示した蓋部材が内装部材の開口部を塞ぐ内蓋部を覆っている例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
<構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両の内装部材用の蓋部材10を備えた車両の室内の要部を示す斜視図である。図2は、図1に示した蓋部材10を示す斜視図である。本実施形態の車両の内装部材用の蓋部材10は、樹脂成形部材であり、車室のフロアに敷かれた内装部材91(例えばフロアカーペット)に取付けられて、内装部材91の貫通穴93の全体を塞いでいる。蓋部材10は、蓋部20および開閉係止部材30を備えている。蓋部20は貫通穴93を覆う形状および寸法を有し、一部に切り欠き24が形成されており、切り欠き24の内側に凸部23を有している。この蓋部20に一体的に形成されている開閉係止部材30は、切り欠き24に係合しており、蓋部20が貫通穴93を覆っている状態に保持する係止状態と、蓋部20を取り外し可能な係止解除状態とをとることができる。本実施形態では、蓋部材10によって塞がれる内装部材91の貫通穴93の下方において、車室のフロアすなわちフロアパネル97(図6参照)に車両識別番号が刻印されている。すなわち、蓋部材10はVINカバーである。
【0009】
図3は、蓋部材10の開閉係止部材30とその周辺の構造を拡大した拡大斜視図である。図3を参照すると、開閉係止部材30は、支持部31、操作部32および係合部33を有する。支持部31は、中間部分で屈曲したV字形状であり、その両端部にそれぞれ操作部32と蓋部20が設けられている。ここで、図4(a)は、図2~3に示す蓋部材10を構成する樹脂成形品の成形直後の状態を示す斜視図であり、図4(b)は、その側面図である。図4(a)および図4(b)を参照すると、蓋部20の切り欠き24の一部から延びる支持部31は、蓋部20の下面側に向かって蓋部20に対してほぼ垂直に延びる第一支持部311と、第一支持部311からほぼ垂直な方向に蓋部20の側方に向かって外向きに延びる第二支持部312と、第一支持部311と第二支持部312との間に位置する屈曲部であるヒンジ部313と、を有する。図4(a),4(b)に示す樹脂成形品のヒンジ部313をより大きく折り曲げて、第二支持部312の端部を切り欠き24と実質的に同じ高さに配置し、その端部に設けられている操作部32を切り欠き24の上方に配置して凸部23によって支持される。こうして、図4(a),4(b)に示す樹脂成形品から、図3に示す開閉係止部材30を構成している。ヒンジ部313は第一支持部311および第二支持部312に比べて薄肉であって可撓性を有しており、図3に示すように大きく曲げられることによって弾性を有するインテグラルヒンジを構成している。
【0010】
蓋部材10の詳細な構成についてさらに説明する。図5(a)は、蓋部材10を上方(操作部32側)から見た平面図である。図5(b)は、その側面図である。図5(c)は図5(a)のA-A線断面図である。図5(d)は、図5(a)のB-B線断面図である。図5(e)は、図5(d)のC-C線断面図である。
蓋部20は、蓋部材10が内装部材91に取り付けられた時に内装部材91の貫通穴93を塞ぐような形状および寸法を有している。そして、蓋部20は切り欠き24と、切り欠き24の内側に突出する凸部23とを有している。支持部31は、蓋部20の切り欠き24の部分から延びる帯状の部材であり、第一支持部311とヒンジ部313と第二支持部312を備えている。第一支持部311が切り欠き24の内縁から下方(内装部材91側)へ一旦延びた後に、ヒンジ部313において約180度折り返して、第二支持部312は蓋部20の上方(内装部材91と反対側)まで延びている。第二支持部312の端部に設けられている操作部32が蓋部20の上方に位置して凸部23と係合している。支持部31はインテグラルヒンジを構成しており、第二支持部312および操作部32はヒンジ部313を中心として回動可能である。第二支持部312は、第一支持部311に向かって突出する当接部314を有している。当接部314は、ヒンジ部313を中心として第二支持部312が第一支持部311に向かって変位した時に第一支持部311に最初に当接する部分である。当接部314は第二支持部312から突出する部分であるので、当接部314が第一支持部311に当接している状態で、第一支持部311と第二支持部312との間に空間315が形成される。また、第二支持部312の、第一支持部311に対向するのと反対側の面に爪状の係合部33が形成されている(図5(c)参照)。この係合部33は、蓋部材10を内装部材91に取付けた状態で、内装部材91の下部に位置するフロアパネル97に設けられた被係合部92(図6参照)と係合する部分である。
【0011】
操作部32は、蓋部材10を内装部材91から取り外し可能にするために、フロアパネル97に設けられた被係合部92と係合部33との係合を解除するために操作される部材である。操作部32は、蓋部20の切り欠き24の上方にスライド可能に配置され、可動本体部321と、可動本体部321の幅方向の両側部から下方(車両のフロア側)に突出する2つの脚部322(図5(d)参照)を有する。
可動本体部321は、ユーザが手を触れて操作する部分である。このため、可動本体部321は、ユーザが操作しやすい形状および大きさをした薄板状の部材である。可動本体部321は、ユーザが操作することで、ヒンジ部313の回転軸と直交する方向であって、かつ、隣接する蓋部20に沿う方向(図5(c)の矢印方向)にスライドできる。
可動本体部321から下方に延びる脚部322の先端には、爪状の挟持部322aが形成されている(図5(d)参照)。挟持部322aは可動本体部321との間に凹部322bを形成している。従って、蓋部20の幅方向の両側方に部分的に設けられてスライド方向に延びる被挟持部21が、挟持部322aと可動本体部321との間の凹部322b内に、蓋部20の長手方向に沿ってスライド可能に緩く挟持されている。可動本体部321は、この凹部322bに案内されて、被挟持部21に沿って平行移動(スライド)できる。
【0012】
さらに、脚部322には、図5(a)に示す蓋部20の長手方向の中心側において、挟持部322aと可動本体部321との間の凹部322bを塞ぐようにストッパ323が設けられている(図5(e)および図4(b)参照)。このストッパ323は、前述したように挟持部322aと可動本体部321との間に形成された凹部322b内に配置されている被挟持部21と当接して、操作部32の、蓋部20に対する相対的な移動(スライド)を規制する。具体的には、蓋部20に設けられた切り欠き24の、蓋部20の長手方向の中心側の端部から被挟持部21の端部(係止部)22までの空間内に、可動本体部321から延びる脚部322が収容されている。従って、内側の空間に収容された脚部322は、ストッパ323が被挟持部21の端部(係止部)22に当接した時点で、それ以上、蓋部20の長手方向外側に向かって移動することはできず、切り欠き24から脱出することはできない。すなわち、操作部32は、脚部322が切り欠き24内のストッパ323よりも内側に位置する範囲内でのみスライド可能である。
【0013】
このように、本実施形態では、可動本体部321から下方に突出する脚部322を形成し、この脚部322に爪状の挟持部322aを形成して挟持部322aと可動本体部321との間に凹部322bを形成するとともに、この凹部322bを塞ぐようなストッパ323を形成している。それにより、可動本体部321が被挟持部21に案内されて円滑かつ精度良くスライド可能であるとともに、操作部32の移動(スライド)量がストッパ323により制限されて、操作部32が切り欠き24の外側に脱出してしまうことが防げる。なお、挟持部322aとストッパ323は、可動本体部321から下方に突出する脚部322の一部に部分的に凹部322bを形成することによって、凹部322bの下方に爪状の挟持部322aが位置し、この凹部322bの一部をストッパ323が塞ぐ構成を容易に形成することができる。
【0014】
図4(a)に示すように、蓋部20の切り欠き24には、操作部32のスライドをガイドする凸部23が設けられている。凸部23は、蓋部20の操作部32と接触する位置に形成され、蓋部20と操作部32の可動本部との間の隙間に位置している。これにより、凸部23は、操作部32の表面と蓋部20の表面との平行を保っている。このように、凸部23が操作部32の表面の平行を保つことで、操作部32が円滑にスライドしやすくなる。すなわち、凸部23は、操作部32の操作性を向上させている。また、凸部23が操作部32の表面の平行を保つことで、凸部23は、操作部32がヒンジ部313を中心として下向きに回動して貫通穴93の内部に入り込むことが防止でき、車両の内装部材91に取り付けられる蓋部20の見映えの低下を防ぐことができる。
【0015】
<車両の内装部材用の蓋部材の係止方法および取外し方法>
蓋部材10の係止方法について説明する。図6は、前述した構成の蓋部材10が内装部材91に取り付けられて貫通穴93を覆っている状態を示す構造図である。図6を参照すると、開閉係止部材30の支持部31の第二支持部312の係合部33は、内装部材91の下部に位置するフロアパネル97に設けられた被係合部92に係合している。そして、開閉係止部材30の支持部31は、ヒンジ部313が約180度折り曲げられたV字形状である。このように大きく屈曲されたヒンジ部313の復元力が、第二支持部312の係合部33を内装部材91の下部に位置するフロアパネル97に設けられた被係合部92に向かって付勢している。また、このとき、第二支持部312の係合部33と反対側に突出する当接部314は、第一支持部311に押し当てられている。これにより、当接部314は、第一支持部311からの反力を受ける。したがって、上述した復元力と同様に、この反力は、係合部33を被係合部92に向かって付勢している。これらの復元力および反力により、図6に示したように、係合部33はフロアパネル97の被係合部92に押し付けられて、容易には係合解除されない。これにより、蓋部材10は閉じて貫通穴93を塞いだ状態で安定的に保持される。
【0016】
次に蓋部材10の取外し方法について説明する。図7は、車両用の蓋部材10の係止が解除された状態を示す構造図である。図7に示すように、ユーザが操作部32に矢印方向の力を加えると、操作部32は矢印方向へスライドする。この操作部32のスライドに合わせて、第二支持部312がヒンジ部313を中心として、第一支持部311の方向へ回転する。これにより、被係合部92と係合している係合部33が被係合部92から離れる方向へと移動する。つまり、被係合部92と係合部33との係合は解除される。こうして、被係合部92と係合部33との係合が解除されると、蓋部材10を自由に取り外すことができ、貫通穴93を開放させることができる。
【0017】
<効果>
本実施形態に係る蓋部材10の効果について、以下に説明する。
図1に示したように、本発明の蓋部材10を内装部材91に取付けて、開閉係止部材30の係合部33を被係合部92に係合させることで、蓋部20が貫通穴93を塞いだ状態で安定的に保持することができる。被係合部92に係合する係合部33は、インテグラルヒンジを構成している支持部31の一部に形成されており、この支持部31(特にヒンジ部313)の付勢力によって、被係合部92に向けて押しつけられている。従って、係合の信頼性が高く、振動や衝撃等で意図せずに係合が解除されて蓋部20が開いてしまうことが抑えられる。
【0018】
また、操作部32をスライド可能に配置するために蓋部20に設けられている切り欠き24は、操作部32によってほぼ覆われている。すなわち、蓋部材10を内装部材91に取付けた場合、蓋部20と操作部32が貫通穴93の全体を覆っている。そして、蓋部20に設けられた切り欠き24も操作部32によってほぼ覆われている。これにより、蓋部材10は、貫通穴93を介して車室内へ振動や騒音が伝わることを抑制している。特に、一般的に車両識別番号は運転席の下部の運転者に近い位置に刻印されているため、本発明の蓋部材10をVINカバーとして用いることによって、貫通穴93全体を覆って振動や騒音を遮断することが、運転者にとって顕著な効果として享受される。
また、ユーザが貫通穴93の内部に表示された車両識別番号を視認する際には、操作部32をスライドさせることによって、開閉係止部材30の係合部33とフロアパネル97に設けられた被係合部92との係合を容易に解除でき、蓋部材10の取外しが容易に可能である。蓋部材10を取り外してしまえば、車両識別番号の視認時に、蓋部20が閉じるおそれがない。すなわち、本発明の蓋部材10は、蓋部20が意図せずに閉じることを心配することなく、簡便に作業を行うことができる。そして、係合解除は、操作部32をスライドさせることで容易に行うことができる。特に、操作部32が蓋部20の上方に位置することで、操作部32の操作が容易に行える。また、係合部33と被係合部92の係合は、主にインテグラルヒンジを構成している支持部31の付勢力で維持されており、ねじ等の特別な係止機構を用いていないので、ユーザが多少の力を操作部32に加えることで容易に係合解除でき、ねじを回して緩めるなどの特別な作業を行う必要はない。そして操作部32の操作(スライド)は、開閉係止部材30の挟持部322aと凹部322bとストッパ323とを有する脚部322と、蓋部20の被挟持部21とによって、円滑かつ容易に行えるとともに、過剰な移動を抑えて、例えば操作部32の脱落を防ぐこともできる。また、操作部32は支持部31を介して蓋部20に繋がっているので、小さい操作部32が落下して紛失するようなおそれはない。
【0019】
なお、開閉係止部材30を有さず、係合用の爪が蓋部材に直接形成されている蓋部材を内装部材から取外す場合には、係合している爪に力を加えて、爪を弾性変形させることで、蓋部材を内装部材から取外す必要がある。したがって、蓋部材10を繰り返し取外す場合に、爪が削れて、係合力が低下するおそれがある。これに対し、本発明の蓋部材10は、ヒンジ部313を有する開閉係止部材30に係合部33が設けられている。これにより、蓋部材10を内装部材91から取外す場合に加わる力は、ヒンジ部313の弾性力によって緩衝され、係合部33には過剰な力が加わらない。そして、係合部33の被係合部92との係合が解除された状態で、蓋部材10は取外される。すなわち、蓋部材10を繰り返し取外したとしても、係合部33の爪が削れて係合力が低下するおそれが小さい。
また、本発明の蓋部材10は、樹脂の一体成形品である。したがって、複数の部材から形成される蓋部材と比較して、製造が容易でかつ安価である。
【0020】
<変形例>
本実施形態の蓋部材10は、VINカバーに限られず、車両に設けられた内装部材のあらゆる貫通穴を塞ぐために使用してもよい。
また、前述した構成では、係合部33と被係合部92はいずれも、爪状の部材であるが、これに限定されない。係合部33と被係合部92とは、互いに係合できればよく、爪状以外の形状を有していてもよい。例えば、係合部33と被係合部92とのうちいずれか一方が爪状部材であって、他方が孔状部を有する部材であってもよい。
前述した例では、車両の内装部材91に貫通穴93が設けられており、本発明に係る開閉係止部材30を備えた蓋部材10が貫通穴93を塞いでいる。ただし、本発明はこのような例に限定されるわけではない。
図8に示す例では、内装部材91に設けられている開口部96が、内装部材91の一部である内蓋部94によって塞がれ、さらにその内蓋部94の外側を、前述した開閉係止部材30を備えた蓋部材10(図2~5参照)が覆っている。言い換えると、内装部材91の一部にコの字状のスリット95が形成されることにより、一端部が内装部材91の本体部に繋がっている固定端であって他端部が自由端である柔軟な舌片状の内蓋部94が形成されている。内蓋部94はこの固定端を支点として変位することによって開閉可能である。内蓋部94を閉じた状態では開口部96が塞がれており、内蓋部94を開くと開口部96が開放される。このような構成において、開口部96を塞ぐ内蓋部94の外側から蓋部材10が覆っている。例えば内装部材91の下方に位置する車体に記載されている車両識別番号(図示せず)を視認する際には、前述したように蓋部材10を取り外し、さらに、柔軟な舌片状の内蓋部94を屈曲させて開き、開口部96を開放させる。そこで使用者が開口部96内を覗き込むと、開口部96の下方の車体に記載された車両識別番号を読むことができる。この構成によると、開口部96を内蓋部94と蓋部材10とによって二重に覆うため、車室内への騒音や振動の伝達を抑制する効果が大きい。
このように、本発明の開閉係止部材30を備えた蓋部材10は、内装部材91に設けられた貫通穴状の開口部(貫通穴93)を塞ぐ用途に限られず、内装部材91に設けられた開口部96を塞ぐ内蓋部94を覆う用途に用いられることもできる。
また、蓋部材10の係合部33が係合する被係合部92は、上述した例のように、フロアパネル97に設けられてもよいが、フロアパネル97の上部に敷かれる内装部材92自体や他の部材などに設けられてもよい。すなわち、係合部33が係合可能であれば、被係合部92は、車両側のいかなる場所に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0021】
10:蓋部材、20:蓋部、21:被挟持部、22:端部、23:凸部、
24:切り欠き30:開閉係止部材、31:支持部、311:第一支持部、
312:第二支持部、313:ヒンジ部、314:当接部、315:空間、
32:操作部、321:可動本体部、322:脚部、322a:挟持部、
322b:凹部、323:ストッパ、33:係合部、91:内装部材、92:被係合部、
93:貫通穴、94:内蓋、95:スリット、96:開口部、97:フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8