(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】接合ツール内で材料を変形させるためのダイ、接合ツール及びダイの状態を識別及び/又は検知するための方法
(51)【国際特許分類】
B21J 15/00 20060101AFI20220309BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220309BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20220309BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220309BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B21J15/00 Z
G06K19/077 304
G06K19/077 260
H04B5/02
G06K7/10 244
B23Q11/00 F
(21)【出願番号】P 2018023850
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-01-04
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト ヒッセリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス トリップ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ブレーハー
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-097813(JP,A)
【文献】特表2016-540648(JP,A)
【文献】特開2008-080405(JP,A)
【文献】特開2003-076966(JP,A)
【文献】国際公開第2012/175356(WO,A1)
【文献】米国特許第05864323(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/00
G06K 19/077
H04B 5/02
G06K 7/10
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.材料が変形されるキャビティ(22)を定める上面(16)、前記上面(16)の反対側の底面(18)、及び前記上面(16)と前記底面(18)との間に配置された側面(20)を含むヘッド(12)と、
b.前記ヘッド(12)の前記底面(18)から長手方向軸(x)に沿って延びるステム(14)と
を有する、接合ツール内の材料を変形させるためのダイ(10)であって、
前記ダイ(10)は、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナ(30)と、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグ(28)を含み、前記アンテナ(30)は前記ヘッド(12)に巻き付けられ、前記アンテナは前記ヘッド(12)を完全に囲むことを特徴とする、ダイ。
【請求項2】
前記ダイ(10)は、前記上面(16)と前記底面(18)との間の前記側面(20)上を前記ヘッド(12)の周りに延びる溝(34)を含み、前記アンテナ(30)は、前記溝(34)内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のダイ(10)。
【請求項3】
前記ダイ(10)は、凹部(35)をさらに含み、前記格納要素は、前記凹部(35)内に配置されることを特徴とする、請求項1~請求項2のいずれかに記載のダイ(10)。
【請求項4】
前記凹部(35)は、前記ヘッド(12)の前記側面(20)上に設けられることを特徴とする、請求項3に記載のダイ(10)。
【請求項5】
前記アンテナ(30)と前記上面(16)との間の距離は、前記格納要素(32)と前記上面(16)との間の距離より小さいことを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のダイ(10)。
【請求項6】
前記識別タグ(28)は、無線周波数識別(RFID)タグであることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載のダイ(10)。
【請求項7】
前記識別タグ(28)は、材料(HM)により覆われることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載のダイ(10)。
【請求項8】
a.材料が変形されるダイキャビティを定める上面、前記上面の反対側の底面、及び前記上面と前記底面との間に配置された側面を含むヘッドと、前記ヘッドの前記底面から長手方向に沿って延びるステムとを有する、接合ツール内の材料を変形させるためのダイ(10)であって、前記ダイ(10)は、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナ(30)と、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグを含み、前記アンテナは前記ヘッドに巻き付けられ、前記アンテナは前記ヘッド(12)を完全に囲む、ダイ(10)と、
b.前記ダイ(10)が動作可能なように前記ダイ(10)を支持し、前記ダイ(10)のキャビティは、材料を受けるように露出されている、ダイ(10)ホルダと、
c.前記ダイ(10)の前記上面の上に一方のアーム(42、48)により支持される取り付けツール(40)と、
d.前記識別タグ(28)からデータを非接触式に通信及び受信する読取装置(36)と、
を含み、前記識別タグ(28)はセンサの一部として働くことを特徴とする、接合ツール・システム(38)。
【請求項9】
前記取り付けツールは、C形フレーム(44)の第1のアーム(42)により支持され、前記ダイ(10)は、前記C形フレームの第2のアーム(46)により支持されることを特徴とする、請求項8に記載の接合ツール・システム。
【請求項10】
前記読取装置(36)は、前記C形フレーム上に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の接合ツール・システム。
【請求項11】
接合ツール内の材料を変形させるためのダイ(10)の状態を識別及び/又は検知するための方法であって、前記ダイ(10)は、材料が変形されるダイキャビティを定める上面、前記上面の反対側の底面、及び前記上面と前記底面との間に配置された側面を含むヘッドと、前記ヘッドの前記底面から長手方向に沿って延びるステムとを有し、前記ダイ(10)は、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナ(30)と、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグを含み、前記アンテナは前記ヘッドに巻き付けられ、前記アンテナは前記ヘッド(12)を完全に囲む、方法において、前記方法は、
a.前記識別タグ(28)からデータを非接触式に通信及び受信する読取装置(36)を準備するステップと、
b.前記ダイ(10)上に配置された前記識別タグと前記読取装置との間に定期的な通信を確立するステップと、
c.前記識別タグと前記読取装置との間の通信の変化を検知して、前記ダイ(10)の状態の変化を検知するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記識別タグ(28)と前記読取装置(36)との間の前記検知される通信の変化は、通信の途絶であり、これにより前記ダイ(10)の前記上面(16)を形成する表面における破損が検出されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記格納要素(32)は、識別、生産データ、及び耐用寿命データを格納し、前記方法は、前記識別タグ(28)を用いて耐用寿命の終わり又は保守要件を検出するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項
11又は請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記識別タグ(28)を用いて前記ダイ(10)の不完全な取り付けを検知するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11~請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記識別タグ(28)との定期的な通信を確立するための前記読取装置(36)の位置は、前記ダイ(10)の配向又は配置とは無関係であることを特徴とする、請求項11~請求項14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料が変形されるダイキャビティを定める上面と、上面の反対側の底面と、上面と底面との間に配置された側面とを含むヘッドを有する、接合ツール内で材料を変形させるためのダイに関する。ダイは、ヘッドの底面から長手方向に沿って延びるステムをさらに含む。
さらに、本出願は、ダイと、ダイを支持し、ダイキャビティが材料を受けるようになった状態でダイが動作可能であるようにダイを支持するダイホルダと、ダイの上面の上に一方のアームにより支持される取り付けツールとを含む接合ツール・システムに関する。
最後に、本発明は、とりわけ、ダイの損傷、又はダイホルダにダイが完全にないことなど、ダイの状態を識別及び/又は検出するための方法に関する。
より特定的には、これに限定されないが、本発明は、締結処理に用いられるダイに関する。ダイは、特に、自己穿孔リベット締結、パンチリベット締結、又はクリンチのために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
自己穿孔リベット構成のような、ダイを用いる締結構成は、特に、これに限定されるものではないが、自動車産業において車体を製造するために用いられる。
【0003】
自己穿孔リベット締結又はパンチリベット締結は、特に異なる材料を接続するのに適しているため、近年、1つの製造方法として定着している。自己穿孔リベット締結において、特定の構成のリベットが、完全に貫通することなく、例えば、より多くの材料シートの1つのような加工物に挿入されるので、変形したリベットの端部は、材料の潰れ環によりカプセル封入されたままとなる。リベットは一般的に、ヘッドと、環状の穿孔縁で終端する部分的に中空の円筒形シャンクとを含む。リベットは、取り付けツールのパンチにより加工物構成内に打ち込まれる。ダイは、加工物構成の裏面に作用する。リベットのシャンクは、表面シートを穿孔し、次にダイ内に外方に広がり、シート材料はシャンクをカプセル封入するダイキャビティ内に環を形成する。
【0004】
パンチ及び自己穿孔方法に加えて、クリンチも用いられる。クリンチは、補助接合要素を用いて又は用いずに実行することができる。ダイ及びパンチを用いて組み立てを実行し、接合の相手(例えば、2又はそれより多い材料シート)の間に連結部を可塑的に形成する。ダイは、材料が半径方向外方に流れ、アンダーカットが形成されることを保証する。
【0005】
多くの処理において、上述の接合方法の間に加工物に印加される力は、大きいものであり、従って、ダイは、非常に高い荷重及び摩耗を受ける。ダイは、ひびが入ること及び/又は粉々に割れることがある。従って、必要とされる接合部の強度が達成されることを保証するために、ダイは、定期点検及び交換を必要とする。
【0006】
ダイの推定耐用寿命は、例えば、ダイが受けるサイクル数、取り付け力、使用される加工物の材料、ダイと加工物及びパンチとの位置合わせ、ダイの材料特性(特に、低延性を有する比較的硬い材料が使用される場合、推定耐用寿命が短くなることがある)、ダイを支持する表面の品質、ダイホルダの保持の程度、及び取り付けツールがダイに直接影響を与える(誤った又は試験目的の)動作の例を含む、多くの要因によって決まる。
【0007】
欠陥のあるダイは、体裁の悪いシート材料の歪みを生じさせることがあり、結果として、接合部の強度が損なわれることがある。
【0008】
従って、ダイの欠陥のチェックに対する必要性がある。
【0009】
ダイの欠陥のチェックのために流体媒体を用いることが知られている。特許文献1は、チャネルを介して接合ツール・システムの領域においてキャビティに供給される流体媒体を用いる方法を開示する。この媒体の圧力又は流量を測定する。圧力又は流量の実際の値は意図した値と比較され、比較の結果は、チェック・プロセスに基づく。この方法は、機械への高価な投資を必要とするだけではなく、リベット締結のサイクルタイムを遅らせる。
【0010】
特許文献2は、パンチ及びダイを有するリベット・ユニットを有する装置を開示する。この装置は、ダイにおける結果として生じる損傷を判断するためのセンサを備えた試験要素をさらに含む。損傷をチェックするために、ダイへの各々のリベット締結動作の後にセンサを移動する。センサは、超音波センサ、イメージセンサ、誘導センサ、又は熱センサであり、ダイの周りで駆動される。この方法は、リベット締結のサイクルタイムを遅らせる。製造業者は、それにかかる時間に対して一定の間隔でチェック・プロセスを実行することにより与えられる品質管理の利益がもたらされるようにする必要がある。チェック・プロセスによりダイの故障又は紛失が明らかになった場合、前回のチェックのときから実施された全ての接合部に欠陥がある可能性があり、それらをチェック又は破棄しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許第102004002593号明細書
【文献】独国特許第102012207391号明細書
【文献】国際公開第2015090965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、とりわけ、上述の不利点の少なくとも1つを取り除き又は緩和し、結果として生じる損傷を容易に判断できるようにする改善された又は代替的なダイを提供することである。本発明の目的はまた、接合ツール・システムと、機械への高価な投資なしに、かつ、接合のサイクルタイムを遅らせることなく、ダイの状態の直接識別及び検知することを可能にするダイの状態を識別及び/又は検知する方法とを提供することである。本出願において、「ダイの状態」という用語は、とりわけ、ダイの損傷、ダイホルダからのダイの完全な欠如、ダイの耐用年数、又はダイの技術的特性を含むように意図される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明によると、
-材料が変形されるキャビティを定める上面、上面の反対側の底面、及び上面と底面との間に配置された側面を含むヘッドと、
-ヘッドの底面から長手方向に沿って延びるステムと、
を有する、接合ツール内の材料を変形させるためのダイであって、
ダイは、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナと、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグを含み、アンテナはヘッドに巻き付けられ、アンテナはヘッドを完全に囲む、ダイが提供される。
【0014】
本発明のダイは、識別タグを通じた迅速かつ容易な識別を可能にする。信号を受信及び/又は送信するためのアンテナの位置は、ダイに何らかの損傷が生じるとアンテナも損傷するものであり、アンテナが情報を受信又は送信することを可能にする。従って、アンテナは、センサとして働くことができる。格納要素及びアンテナの位置は、ダイに構造的又は機能的に影響を与えない。このダイは、容易に製造することができ、機械への高価な投資を伴わない。さらに、アンテナの位置(ヘッドの全周にわたる)は、360度の読み取り能力を可能にする。読取装置は、ダイの向き又は構成とは関係なく、アンテナと通信することができる。
【0015】
1つの態様によると、上面と底面との間の側面上をヘッドの周りに延びる溝を含み、アンテナは、溝内に配置される。アンテナは、ダイのヘッドから突出せず、そのことは、ダイの操作中にアンテナを損なうリスクを減らす。
【0016】
1つの態様によると、ダイは凹部をさらに含み、格納要素は凹部内に配置される。格納要素はダイから突出せず、そのことは、ダイの操作中にアンテナを損なうリスクを減らす。凹部は、必ずしもアンテナの近くに配置する必要はなく、いずれの場所に配置してもよい。位置決めにより、識別タグの汚染も低減される。
【0017】
従って、識別タグは、ダイに組み込まれ、その位置決めにより、あらゆる早期の又はむらのある摩耗が回避される。
【0018】
1つの態様によると、凹部がヘッドの側面上に設けられる。従って、凹部は、容易に製造することができ、ダイの全体的形状又はダイの機能表面の変更を伴わない。
【0019】
1つの態様によると、アンテナと上面の間の距離は、格納要素と上面の間の距離より小さい。より特定的には、アンテナは上面の近くに(可能な限り近接して)配置されるので、ダイの上面の損傷は、アンテナの損傷をもたらす。アンテナが溝内に設けられ、格納要素が凹部内に設けられるようにすると、溝は、凹部と比べて上面から最も近い位置になる。
【0020】
1つの態様によると、ヘッド及びステムは、略円筒形である。ステムは、ヘッドに比べて直径が低減している。ダイは、ダイホルダにより容易に支持することができ、ダイ交換器を使用してダイを別のものに交換することができる。
【0021】
1つの態様によると、識別タグは、無線周波数識別(RFID)タグである。RFIDタグは、使用及び管理が容易である。その実装により、ダイの良好な追跡可能性が可能になる。識別タグはまた、近距離無線通信(NFC)タグとすることもできる。
【0022】
1つの態様によると、識別タグは、材料で覆われる。これは、ダイの外面上にいずれの望ましくない凹凸もないことを可能にする。
【0023】
本発明の別の目的は、
a.材料が変形されるダイキャビティを定める上面、上面の反対側の底面、及び上面と底面との間に配置された側面を含むヘッドと、ヘッドの底面から長手方向に沿って延びるステムとを有する、接合ツール内の材料を変形させるためのダイであって、ダイは、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナと、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグを含み、アンテナはヘッドに巻き付けられ、アンテナはヘッドを完全に囲む、ダイと、
b.ダイが動作可能なようにダイを支持し、ダイのキャビティは、材料を受けるように露出される、ダイホルダと、
c.ダイの上面の上に一方のアームにより支持される取り付けツールと、
d.識別タグからデータを非接触式に通信及び受信する読取装置と、
を含み、識別タグはセンサの一部として働く、接合ツール・システムである。
【0024】
識別タグの位置により、識別タグがセンサとして働き、ダイの変更状態を示すことが可能になる。ダイの損傷によりアンテナが損傷し、そのことは、読取装置との通信を妨げる。1つの一意の識別タグを、幾つかの用途のため、すなわち、センサとして、標識付けのため、識別のため等に用いることができる。
【0025】
1つの態様によると、取り付けツールは、C形フレームの第1のアームにより支持され、ダイは、C形フレームの第2のアームにより支持される。
1つの態様によると、読取装置は、C形フレーム上に配置される。これにより、進行中の通信によりダイの状態の変化を即時に「その場」で検知することが可能になる。別の実施形態において、読取装置は、C形フレームから特定の距離で配置することができる。操作者は、障害物、必要性等に応じて、読取装置を好ましい位置に自由に配置することができる。
【0026】
本発明の別の目的は、接合ツール内の材料を変形させるためのダイの状態を識別及び/又は検知するための方法であって、ダイは、材料が変形されるダイキャビティを定める上面、上面の反対側の底面、及び上面と底面との間に配置された側面を含むヘッドと、ヘッドの底面から長手方向に沿って延びるステムとを有し、ダイは、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナと、情報を格納するための格納要素とを有する識別タグを含み、アンテナはヘッドに巻き付けられ、アンテナはヘッドを完全に囲む方法であり、この方法は、
a.識別タグからデータを非接触式に通信及び受信する読取装置を準備するステップと、
b.ダイ上に配置された識別タグと読取装置との間に定期的な通信を確立するステップと、
c.識別タグと読取装置との間の通信の変化を検知して、ダイの状態の変化を検知するステップと、
を含む。
【0027】
方法は、ダイを識別するためだけではなく、ダイの状態を検知するためのセンサとしても識別タグを使用するのを可能にする。
【0028】
1つの態様によると、識別タグと読取装置との間の検知された通信の変化は、通信の途絶であり、これによりダイの上面を形成する表面における破損が検知される。
1つの態様において、格納要素は、識別及び耐用寿命データを格納し、方法は、識別タグを用いて耐用寿命の終わり又は保守要件を検知するステップをさらに含む。
【0029】
1つの態様によると、方法は、識別タグを用いてダイの不完全な取り付けを検知するステップをさらに含む。
1つの態様によると、識別タグとの定期的な通信を確立するための読取装置の位置は、ダイの配向又は配置とは無関係である。
【0030】
本発明の別の目的は、コンピュータ・システムで実行されたとき、コンピュータ・システムに、上述のダイの状態を識別及び/又は検知するための方法のステップの少なくとも一部を実行させるコンピュータ可読命令が格納された非一時コンピュータ可読ストレージ媒体である。コンピュータ可読ストレージ媒体の例は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、フラッシュ・メモリ、ハードディスク・メモリ、及び命令又は他のデータを格納するために磁気、光学及び他の技術を用いることができ、マシンによりアクセスすることができる他のメモリ・デバイスを含む。
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、限定的ではない例として与えられる本発明の次の説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による、ステム、ヘッド及び識別タグを有するダイの概略側面図を示す。
【
図2】本発明による、ステム、ヘッド及び識別タグを有するダイの斜視図を示す。
【
図3】
図1又は
図2のダイの識別タグを有するヘッドの概略斜視図である。
【
図4】本発明による、ダイの識別タグを有するヘッドの代替的な実施形態を示す。
【
図5】識別タグを覆う材料(又はホットメルト)を有するダイの斜視図を示す。
【
図6】本発明による、ダイ、ダイホルダ、取り付けツール、及び読取装置を有する接合ツール・システムの概略斜視図を示す。
【
図7】本発明による、ダイの状態を識別及び/又は検知するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
種々の図において、同じ参照符号は同一又は類似の要素を示す。
最初に
図1及び
図2を参照すると、接合ツール内の材料を変形させるためのダイ10が示される。ダイ10は、ヘッド12及びステム14を含む。ダイは、長手方向軸Xに沿って延びる。示されるように、ヘッド12及びステム14の断面は円形である。ステム14は、ヘッド12と比べると直径が低減している。他の実施形態において、ヘッド12及び/又はステム14は、正方形又は楕円形の断面を有することができる。
【0034】
ヘッド12は、上面16と、底面18と、上面16と底面18との間に配置される側面20とを含む。側面20は、ヘッド12の外周を形成する。上面16は、上部表面を形成する。上面16は、材料が変形されるキャビティ(すなわち、ダイキャビティ)22を定める。ヘッド12は、長手方向軸を中心とする。示されるように、キャビティ22は、長手方向軸Xに沿って側面20を中心とすることができる。ステム14は、ヘッド12に比べて直径が減少しており、長手方向軸Xに対して半径方向に延びる環状表面24がヘッド12の底面上に定められる。
【0035】
ヘッド12には、回転同伴輪郭を設けることができる。回転同伴輪郭は、ヘッド12の側面上の1つ又は2つの半径方向スロットにより形成することができる。
【0036】
ステム14は、ヘッド12の底面18から長手方向軸Xに沿って延びる。ステム14は、ヘッド12から垂下する。言い換えれば、ヘッド12及びステム14は、一体部品を形成する。ステム14は、アダプタ又はC形フレームの部分のいずれかであるダイホルダ26(
図6参照)内のボア又は凹部に挿入されるようになっている。ステム14は、ダイホルダ26内のステム14のロック位置を可能にするロック輪郭を含むことができる。
【0037】
ダイ10は、識別タグ28を含む。識別タグ28は、信号を受信及び/又は送信するためのアンテナ30と、情報を格納するための格納要素32とを有する。格納要素32内に格納される情報は、ダイの種類、耐用寿命、機能などダイ10に関連することができ、かつ、特定の組み立て(又は接合処理)を実施するのに正しいダイ10を選択するために、又は取り付けられたダイ10が組み立て(又は接合処理)を実施するのに必要な要件の充足を管理するために、使用することができる。
【0038】
アンテナ30は、ヘッド12に巻き付けられる。言い換えれば、アンテナ30は、ヘッド12を完全に囲む。アンテナ30の位置は、360度の読み取り位置を可能にし得る。言い換えれば、アンテナ30は、その全周囲におけるデータ(又は情報)を伝送することができる。
【0039】
図1、
図2、
図3及び
図4に示されるように、アンテナ30は、ヘッド12の周りに延びる溝34又はスロット内に配置することができる。溝34は、側面20上をヘッド12の周りに延びる。例えば、溝34は、上面16の近くに延びるので、アンテナ30は、ダイ10の上面16に近接して配置される。アンテナ30は、格納要素32との間で情報を非接触式に送信又は受信するために用いられる。
【0040】
溝34の寸法は、アンテナ30の寸法に対応する。従って、溝は、特に、最小のすなわち小さいものであり、それによりダイ10の耐用寿命に対する溝34の影響が低減する。
格納要素32は、凹部又はキャビティ内に配置することができる。凹部35は、ヘッド12又はステム14上に設けることができる。
図1、
図2、
図3及び
図4に示されるように、凹部35は、ヘッド12の側面20上に設けられる。溝34は、凹部35と比べて上面16から最も近い。
【0041】
格納要素32は、アンテナ30から空間的に分離される。この分離により、格納要素32の損傷のリスクが低減される。アンテナが損傷しても、格納要素は依然として動作することができ、プロセスを後で実施して格納要素32内に収集されたデータを読み取ることができる。特に、格納要素32は、応力及び他の機械的歪みがダイの上面より低い場所に配置することができる。
【0042】
凹部35は、ダイの耐用寿命にあまり影響を与えない場所に配置される。より具体的には、凹部35は、上面16又は他の動作領域から少し離れた場所に配置される。
格納要素32及び/又はアンテナ30は、ダイ10内に組み込まれる。格納要素32及び/又はアンテナ30は、ダイ10の外面から突出しない。
【0043】
図4に示されるように、識別タグ28は、ヘッド12とスナップ嵌めすることができる。このスナップ式結合は、識別タグ28を容易に取り外すことを可能にする。
【0044】
図1、
図2及び
図3に示されるように、識別タグ28、及びより特定的には、アンテナ30及び格納要素32は、それぞれ凹部35及び溝内に固定され、取り外すことはできない。
【0045】
格納要素32は、凹部35内に嵌合すること又はのり付けすることができる。アンテナ30もまた溝内に嵌合すること又はのり付けすることができる。格納要素及び/又はアンテナをダイ内に埋め込むことができる。例えば、アンテナは溝内に配置され、格納要素は凹部内に配置される。
図5に示されるように、溝及び凹部の両方が材料HMで覆われるので、ダイの外側形状は最新式のダイに類似したままであり、早期の摩耗は生じない。特に、この材料は、ダイの外面のあらゆる望ましくない凹凸を除去することを可能にする。さらに、ダイホルダ内に更に別の構成を必要としない。溝及び凹部(従って、アンテナ及び格納要素)を覆っている材料HMは、任意の被覆材料とすることができる。より特定的には、ホットメルトを使用することができる。ホットメルトは、熱可塑性ポリアミド接着剤である。これは、ダイ内への識別タグの固定を可能にする。従って、識別タグは、ダイ内に完全に埋め込まれる。
【0046】
識別タグ28は、アンテナ30を通じて読取装置36と非接触式に通信する。識別タグ28は、遠隔測定を通じて通信することができる。例えば、識別タグ28は、示されるように、無線周波数識別(RFID)タグ28である。RFIDタグ28は、ダイ10と読取装置36との間のデータの非接触式伝送を可能にする。RFIDタグのアンテナ30は、無線信号を増幅し、それをダイ10から読取装置36へ伝送する。ヘッド12の全周にわたるアンテナ30の位置により、読取装置36又はダイ10の送信/受信位置の固定を防ぐことができる。アンテナ30は、いずれの特定の構成も用いずに、いつでも読取装置36と通信することができる。
【0047】
ここで図面の
図6を参照すると、接合ツール・システム38が示される。示されるような接合ツール・システム38は、リベット締結ツール・システム38である。しかしながら、本明細書に説明される特定の実施形態は、リベットの挿入に関連するが、例えばクリンチ動作など、ダイを用いて加工物に挿入される他のファスナを用いた、接合部を含む他の接合部の形成にも適用されることを理解されたい。
【0048】
図6に示されるように、取り付けツール40が、ダイ10の上の本体44の第1のアーム42上に取り付けられる。本体44は、従来のC形フレームである。ダイ10は、ダイホルダ26内に挿入される。ダイ10は、ダイホルダ26内に軸方向に(矢印Aで示されるように)挿入される。例えば、ダイ10は、長手方向軸Xに沿って挿入される。他の実施形態においては、他の挿入方向が実施され得る。ステム14は、ダイホルダ26のアパーチャ46に挿入され、アパーチャ46内に嵌合される。ダイホルダ26内へのダイ10の固定は、例えば、特許文献3に説明されており、本出願ではさらに説明しない。特許文献3に説明されるように、ダイ10は交換可能であり、接合ツール・システム38には、ダイ交換器(図示せず)を設けることができる。ダイ交換器は、例えば、特許文献3に説明されており、本出願ではさらに説明しない。
【0049】
前述のように、ダイホルダ26は、アダプタとすることができ、又は、C形フレームに直接統合することができる。ダイ10は、本体の第2のアーム48内にダイホルダ26を通して支持される。
【0050】
例えば、取り付けツール40はC形フレームの上部アーム42内に取り付けられ、一方、ダイはC形フレームの下部アーム48により支持される。リベット(図示せず)は、取り付けツール40により加工物(図示せず)に挿入される。加工物は、より多くの材料シートの1つを含むことができる。加工物は、ダイ10の上に支持される、接合処理を実行するために、取り付けツール40は、保持要素(図示せず)が加工物に係合し、パンチが延長されてリベットを挿入するように打ち込まれる。当技術分野において周知のように、本体44は、ロボット(図示せず)上に取り付けられ、必要に応じて加工物に向けて及び加工物から離れるように移動可能である。
【0051】
接合ツール・システム38には、読取装置36を設けることができる。読取装置36は、識別タグ28からデータを非接触式に通信及び受信することができる。読取装置36は、定期的に、連続的に又は非連続的に、識別タグ28からデータを非接触式に通信及び受信することができる。
【0052】
読取装置36は、ダイ10及びダイホルダ26に近接し得る任意の便利な場所に配置することができ、又はそこから遠く離れていてもよい。例えば、
図6に示されるように、読取装置36は、ダイホルダ26に近接して本体(又はC形フレーム)上に設けられる。より特定的には、読取装置36は、C形フレーム(又は本体44)の第2のアーム48上に配置される。従って、読取装置36は、ダイ10と連続的に通信することができる。
【0053】
別の実施形態において(図示せず)、読取装置36は、接合処理が実施される領域から遠く離れていてもよい。こうした場合、伝送は、遠隔伝送を可能にするのに十分に強力なものであるか、又は、ダイ10は、例えば、2つの接合処理の際若しくはサイクルの終わりに読取装置36に打ちこまれ、データを収集及び/又は送信する。
【0054】
格納要素32は、ダイの識別、ダイの性質、生産データ、ダイの機能、生成データ、サイクル数、強度曲線に関する情報(又はデータ)を格納し、通信することができる。データは、書き込み装置により、識別タグ28に書き込むことができる。
【0055】
受信したデータを処理するため及び/又はダイ10の状態を診断するために、プロセッサを提供することができる。プロセッサ、コンピュータ、又はコンピュータ・システムは、処理能力を有し、命令を実行することができる、いずれかの種類の装置、マシン、又は専用回路、又はその集合若しくは部分とすることができる。プロセッサは、CPU、GPU、System14-on-chip、状態機械、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理アレイ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のような、いずれかの種類の汎用又は専用プロセッサとすることができる。コンピュータ又はコンピュータ・システム14は、1つ又はそれ以上のプロセッサを含むことができる。
【0056】
プロセッサを用いて、読取装置36が受信した情報を収集し、既に取り付けられた若しくは使用される予定のダイ10が現在の用途に使用するのに適切なダイであるかどうか、又は既に取り付けられた若しくは使用される予定のダイ10が依然として良い状態にあるかどうか、又は既に取り付けられた若しくは使用される予定のダイ10がその耐用寿命を超えていないかどうかを判断することができる。プロセッサはまた、読取装置36が受信した情報を用いて、ダイホルダ26内にダイ10が存在するかどうかを判断し、あらゆる誤操作を防止することができる。
【0057】
プロセッサは、コンピュータ・プログラム製品を実行し、ダイの状態を診断するために、収集したデータの使用を可能にすることができる。診断は、収集したデータのみに基づくことができ、又は収集したデータ及び経験的若しくは予め入れられたデータに基づくことができる。
【0058】
ダイ10内のアンテナ30の位置のため、ダイの又はより一般的にはダイ10の上面16への損傷がアンテナ30も損傷することになる。アンテナ30が損傷した場合、読取装置36と格納要素32との間の通信も途絶する。従って、通信の途絶は、ダイ10の欠如及び損傷の可能性として、プロセッサにより分析することができる。プロセッサは、アクチュエータにその動作を停止するよう命令することができ、接合プロセスは中断する。
【0059】
従って、識別タグ28は、(少なくとも)3つの機能(ダイの識別、測定データの格納、故障の検知)を有する。
識別タグ28は、ダイの状態及びダイに発生した何らかの損傷を検知するためのセンサとして働く。ダイの破損は、アンテナとダイの外部との間の伝送の途絶により即座に検知することができる。
【0060】
識別タグ28は、例えば、ダイの源をチェックし、ダイの誤用又は選択エラーを検知するための標識付け要素として働く。
識別タグ28は、例えば、ダイの使用に関するデータ、又はいずれか他の生産データを受け取ることができる。
【0061】
図7は、ダイの状態を識別及び/又は検知するための方法の実施形態のフローチャートを示す。
最初に、接合プロセスが開始する(ステップS)。所定の接合プロセスを選択することにより、例えば、必要とされるダイ10のタイプ、加工物の材料、又はリベットのタイプのようなデータを提供することができる。
【0062】
第1のステップ(ステップS1)において、ダイ10は、ダイホルダ26内に挿入される。
その後及び/又は同時に、ダイ10とダイの外部(例えば、読取装置36及び/又はプロセッサ)との間の通信(又は伝送)が設定される(ステップS2)。
【0063】
通信をチェックするため、及び/又は、実行される所定の接合プロセスに関して伝送されるデータが正しいことをチェックするために、試験(ステップS3)が行われる。
【0064】
通信が途絶する又は不完全である(NOK)場合、プロセスを中断することができる(ステップE)。1つの実施形態において、通信が途絶する又は不完全である(NOK)場合、プロセッサは、ダイ10の欠如(例えば、ダイ10が損傷したこと)を示すことができ、例えば、ダイ交換器により、ダイ10を交換することができる。
【0065】
伝送した及び/又は受信したデータが所定の接合プロセスに適合する(OK)場合、接合処理が実行される(ステップS4)。
その後及び/又は同時に、ダイ10とダイの外部(例えば、読取装置及び/又はプロセッサ)との間の通信(又は伝送)が設定される(ステップS5)。
【0066】
試験(ステップS6)を行って、ダイとダイの外部(例えば、読取装置及び/又はプロセッサ)との間の通信を再びチェックする。
【0067】
通信が途絶する又は不完全である(NOK)場合、プロセスを中断することができる(ステップE)。1つの実施形態において、通信が途絶する又は不完全である(NOK)場合、プロセッサは、ダイの欠如(例えば、ダイ10が損傷したこと)を示すことができ、ダイ10を、例えば、ダイ交換器により交換することができる。
【0068】
伝送した及び/又は受信したデータが所定の接合プロセスに適合する(OK)場合、更に別の接合処理が実行される(ステップS4)。別の実施形態において、第1の処理とは異なる接合処理を実行することができる。ダイは、交換されることも又は交換されないこともある。
【0069】
書き込み装置を提供することができる。書き込み装置は識別タグ28と通信することができ、既に実行された接合処理に関するデータを識別タグ28に伝送し、格納要素32内に格納することができる。格納された新しいデータを後でプロセッサにより使用して、例えば、耐用寿命の終わりを判断することができる。
【0070】
一般に、上述の機能、方法、技術、又は構成部品の全ては、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)、又はそれらのいずれかの組み合わせの形で実装することができる。本明細書で説明される方法は、プロセッサに方法を実行させるコードを実行する1又はそれ以上のプロセッサにより実行することができる。
【符号の説明】
【0071】
10:ダイ
12:ヘッド
14:ステム
16:上面
18:底面
20:側面
22:ダイキャビティ
24:環状表面
26:ダイホルダ
28:識別タグ
30:アンテナ
32:格納要素
34:溝
35:凹部
36:読取装置
38:接合ツール・システム
40:取り付けツール
42:第1の(上部)アーム
44:本体
46:ダイホルダのアパーチャ
48:第2の(下部)アーム