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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ガスシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/00 20060101AFI20220309BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20220309BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20220309BHJP
【FI】
F16F9/00 A
F16F9/32 U
F16F9/32 Q
F16J15/3204 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018030711
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143767
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000155609
【氏名又は名称】KYB-YS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仙田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】内海 孝映
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-003139(JP,U)
【文献】特開2014-109288(JP,A)
【文献】特開2008-082553(JP,A)
【文献】実開昭55-120843(JP,U)
【文献】特開昭52-013076(JP,A)
【文献】特開平06-050373(JP,A)
【文献】独国実用新案第08906615(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ガスが封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に設けられ、前記シリンダ内に伸側室と圧側室とを区画するピストンと、
前記シリンダに進退自在に挿入されて前記ピストンに連結されたピストンロッドと、
前記シリンダの内外を連通するように前記シリンダに形成される連通孔と、
前記シリンダ内に設けられ前記ピストンとともに前記圧側室を区画する仕切部材と、
前記仕切部材によって区画され前記圧側室の作動ガスを前記連通孔に導くためのガス通路と、
前記ガス通路を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、温度上昇に応じて変形して前記ガス通路を開放し、
前記仕切部材は、その外周面と前記シリンダの内周面との間に環状の前記ガス通路を区画する金属製の部材であり、
前記封止部材は、前記仕切部材の外周面に設けられる樹脂製の部材であることを特徴とする
ガスシリンダ装置。
【請求項2】
複数の前記連通孔が前記シリンダに形成されることを特徴とする請求項1に記載のガスシリンダ装置。
【請求項3】
前記シリンダ内には、前記作動ガスとともに作動液が封入され、
前記封止部材は、前記作動液の沸点以下の温度で変形して前記ガス通路を開放することを特徴とする請求項1または2に記載のガスシリンダ装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドの外周を通じた前記作動液の漏れを防止するシール部材をさらに備え、
前記封止部材は、前記シール部材の融点以下の温度で変形して前記ガス通路を開放することを特徴とする請求項3に記載のガスシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシリンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一端側が閉塞され、他端側が開口するシリンダと、シリンダの開口に設けられる開口閉鎖部材と、シリンダ内に摺動可能に設けられシリンダ内を二つの室に区画するピストンと、一端側がピストンに連結され、他端側が開口閉鎖部材を介して外部に延出されるピストンロッドと、シリンダ内に封入されるガスおよび潤滑液と、を有し、開口閉鎖部材またはシリンダに、通常作動時には変形せず、潤滑液の沸点以下の所定温度で変形してシリンダ内のガスを漏出させる変形部材が設けられる、ガススプリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-109288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温雰囲気下で使用されるガスシリンダ装置では、高温による内圧の上昇などによって、破損するおそれがある。
【0005】
このような破損を防止するための安全機能として、特許文献1のガススプリングでは、所定温度で変形してシリンダ内のガスを漏出させる変形部材が設けられる。これにより、ガススプリングが高温雰囲気に晒された場合であっても、ガスが漏出することで内圧の上昇が抑制されガススプリングの破損が防止される。
【0006】
特許文献1のガススプリングでは、シリンダ内のガスを漏出させる変形部材は、シリンダに形成されるガス通路に直接挿入される。
【0007】
一方、ガスが漏出する通路となるガス通路は、コンタミによってガス通路が塞がれないように、適切な形状とすることが望ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1のガススプリングでは、変形部材がガス通路に直接挿入される構成であるため、例えば製品ごとにガス通路の形状を変更した場合には、ガス通路の形状に応じて変形部材をそれぞれ専用に製造しなければならず、製造コストの増加を招く。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、安全機能を有するガスシリンダ装置の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、ガスシリンダ装置であって、作動ガスが封入されるシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内に伸側室と圧側室とを区画するピストンと、シリンダに進退自在に挿入されてピストンに連結されたピストンロッドと、シリンダの内外を連通するようにシリンダに形成される連通孔と、シリンダ内に設けられピストンとともに圧側室を区画する仕切部材と、仕切部材によって区画され圧側室の作動ガスを連通孔に導くためのガス通路と、ガス通路を封止する封止部材と、を備え、封止部材は、温度上昇に応じて変形してガス通路を開放し、仕切部材が、その外周面とシリンダの内周面との間に環状のガス通路を区画する金属製の部材であり、封止部材は、仕切部材の外周面に設けられる樹脂製の部材であることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、複数の連通孔がシリンダに形成されることを特徴とする。
【0012】
第1及び第2の発明では、封止部材は、圧側室の作動ガスを連通孔に導くためのガス通路を封止する。このように、封止部材は、連通孔を直接塞ぐものではないため、連通孔の形状にかかわらず、共通の封止部材を使用することができる。また、仕切部材と封止部材との融点の差を大きくしやすいため、温度上昇により仕切部材が変形して、意図せずガス通路が封止されることを防止できる。
【0013】
第3の発明は、シリンダ内には、作動ガスとともに作動液が封入され、封止部材は、作動液の沸点以下の温度で変形してガス通路を開放することを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、作動液への引火のおそれをより確実に排除することができる。
【0015】
第4の発明は、ピストンロッドの外周を通じた作動液の漏れを防止するシール部材をさらに備え、封止部材は、シール部材の融点以下の温度で変形してガス通路を開放することを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、シール部材の変形前に封止部材が変形して作動ガスが外部に漏出するため、シリンダの内圧の上昇によりピストンロッドの外周を通じて作動液が漏れ出すことを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安全機能を有するガスシリンダ装置の製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るガスダンパの構成を示す断面図である。
図2図1におけるA部拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係るガスダンパが安全機能を発揮した状態を示す拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係るガスダンパを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
以下では、ガスシリンダ装置としてのガスダンパ100について説明する。ガスダンパ100は、例えば、排煙窓の開閉に使用される。
【0023】
ガスダンパ100は、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に設けられ、シリンダ1内を圧側室4と伸側室5とに区画する環状のピストン2と、シリンダ1に進退自在に挿入されて、ピストン2に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1内の一方の端部(図1中下端部)に設けられピストンロッド3を摺動自在に支持するロッドガイド10と、を備える。
【0024】
シリンダ1は、一端に開口を有する有底筒状の部材である。シリンダ1の開口部にロッドガイド10が設けられる。シリンダ1の底部側である他端側には、ガスダンパ100を取り付けるための取付孔(図示省略)が形成される取付部1aが設けられる。
【0025】
ピストンロッド3には、ガスダンパ100を取り付けるための取付孔(図示省略)が形成される取付部3aがシリンダ1から延出する側の端部に設けられる。ガスダンパ100は、シリンダ1の取付部1aが鉛直方向の上方側に配置され、ピストンロッド3の取付部3aが鉛直方向の下方側に配置される、いわゆる倒立型である。
【0026】
伸側室5は、ピストンロッド3側の作動室であり、圧側室4は、反ピストンロッド3側の作動室である。圧側室4及び伸側室5には、作動ガス(例えば、窒素ガス)が加圧された状態で封入される。また、伸側室5には、作動ガスに加え、作動液としての作動油Lが封入される。作動油Lによって、ピストンロッド3の外周を通じた作動ガスの漏れが防止される。また、伸側室5内の作動油Lの封入量を調整することで、ガスダンパ100の伸長作動時の速度が調整される。
【0027】
伸側室5側におけるピストン2の受圧面積は、ピストンロッド3の断面積分だけ、圧側室4側の受圧面積よりも小さい。よって、ガスダンパ100は、受圧面積差によって伸長方向の付勢力を発揮する。
【0028】
ピストン2には、伸側室5と圧側室4とを連通するオリフィス通路2aが形成される。オリフィス通路2aは、ピストン2の中心軸に沿って延び、通過する作動ガスの流れに抵抗を付与する。ピストンロッド3の移動に伴い作動ガスがオリフィス通路2aを通過することで、減衰力が発揮される。
【0029】
ロッドガイド10は、伸側室5に面してシリンダ1の内周面に取り付けられる金属製(例えば真鍮製)のリテーナ11と、ピストンロッド3を摺動自在に支持する金属製(例えば真鍮製)のベアリング12と、ベアリング12とリテーナ11との間に設けられる樹脂製(例えばNBR製)のシール部材13と、を有する。
【0030】
リテーナ11は、外周部に環状の係止溝11aを有する。リテーナ11は、径方向内側にかしめられたシリンダ1の一部が係止溝11aに係止されることにより、シリンダ1の内周面に係止される。
【0031】
ベアリング12は、外周部に環状の係止溝12aを有する。ベアリング12は、径方向内側にかしめられたシリンダ1の一部が係止溝12aに係止されることにより、シリンダ1の内周面に係止される。ベアリング12は、挿通孔12bを挿通するピストンロッド3を摺動自在に支持する。
【0032】
シール部材13は、筒状に形成され、ピストンロッド3の外周に配置される。シール部材13は、ピストンロッド3の外周面に摺接し、ピストンロッド3の外周を通じた伸側室5からの作動油L及び作動ガスの漏れを防止する。
【0033】
ガスダンパ100は、図2に示すように、シリンダ1の内外を連通するようにシリンダ1に形成される連通孔6と、シリンダ1内に設けられピストン2とともに圧側室4を区画する円板状の仕切部材20と、仕切部材20によって区画され圧側室4の作動ガスを連通孔6に導くためのガス通路25と、ガス通路25を封止する封止部材としてのOリング30と、をさらに備える。
【0034】
連通孔6は、圧側室4側であるシリンダ1の底部側(図1中上側)に形成される。連通孔6は、円形断面を有しシリンダ1を肉厚方向に貫通する。ガスダンパ100では、複数の連通孔6がシリンダ1の周方向に等間隔で配置される。
【0035】
仕切部材20は、金属によって形成される。仕切部材20は、圧側室4に面する端面から圧側室4の圧力を受ける。よって、仕切部材20は、シリンダ1の底部に押し付けられるようにしてシリンダ1内に設けられる。
【0036】
ガス通路25は、仕切部材20の外周面とシリンダ1の内周面との間に区画される環状の隙間である。ガス通路25は、圧側室4に連通すると共に、連通孔6に連通する。ガス通路25の流路面積(シリンダ1の中心軸に垂直な断面積)は、連通孔6の全体としての流路面積(各連通孔6にける中心軸に垂直な断面積の和)より小さくなるように形成される。
【0037】
Oリング30は、円形断面を有し、仕切部材20の外周面に形成される環状溝20aに収容される樹脂製の部材である。Oリング30は、設計上規定されるガスダンパ100の通常の使用温度範囲では、ガス通路25を封止して、圧側室4と連通孔6との連通を遮断する。ガスダンパ100周辺の雰囲気温度が上昇すると、Oリング30は、その温度上昇に応じて変形し、ガス通路25を開放する。具体的には、Oリング30は、その融点が、ロッドガイド10のシール部材13の融点よりも低く、かつ、伸側室5に封入される作動油Lの沸点よりも低い樹脂製の部材である。さらに言えば、Oリング30は、作動油Lを含めたガスダンパ100を構成するすべての部材(構成)の融点や沸点よりも低い融点を有し、ガスダンパ100において最も初期に温度上昇による変形(変態)が生じる材質で形成される。Oリング30は、その温度が融点に達すると変形・溶融して、ガス通路25を開放する。
【0038】
次に、ガスダンパ100の作用について説明する。
【0039】
通常の使用温度範囲では、図2に示すように、ガス通路25を通じた連通孔6と圧側室4との連通がOリング30によって遮断される。通常の使用温度範囲では、ピストンロッド3の移動に伴い、オリフィス通路2aを通過する作動ガスによって生じる抵抗により減衰力が発生する。
【0040】
排煙扉に使用されるガスダンパ100の場合には、火災発生時など高温の雰囲気下にさらされる可能性がある。雰囲気温度が上昇すると、内部の作動ガスの圧力が上昇し、シリンダ1が破損するおそれがある。また、シリンダ1が破損すると、作動ガス及び作動油Lが外部に飛散し、作動油Lに引火するおそれもある。
【0041】
これに対し、ガスダンパ100では、Oリング30の融点が作動油Lの沸点やシール部材13の融点よりも低いため、雰囲気温度が上昇すると、最も初期にOリング30が変形して、ガス通路25が開放される。これにより、図3に示すように、ガス通路25を通じて圧側室4と連通孔6とが連通し、圧側室4の作動ガスは、ガス通路25を通じて連通孔6に導かれて外部に漏出する。よって、シリンダ1の内圧の上昇が防止され、シリンダ1の破損及び外部への作動油Lの飛散が防止される。このように、ガスダンパ100は、雰囲気温度が上昇した際に、内部の作動ガスを外部に漏出させる安全機能を有している。
【0042】
ここで、上述の安全機能を発揮するためには、仕切部材20を設けず、連通孔6に封止部材を直接挿入することも考えられる。しかしながら、この方法では、ガスダンパ100によって異なる形状の連通孔6を設ける場合には、それぞれの形状に対応した封止部材を専用に製造しなければならない。また、連通孔6が複数設けられる場合には、それぞれに封止部材を設ける必要がある。したがって、連通孔6に封止部材を直接挿入する場合には、製造コストが増加する。
【0043】
これに対し、ガスダンパ100では、圧側室4の作動ガスを連通孔6に導くためのガス通路25が、Oリング30(封止部材)によって封止される。つまり、ガスダンパ100は、連通孔6が封止部材によって直接封止される構成ではなく、連通孔6がOリング30(封止部材)によって間接的に封止される構成である。このため、連通孔6の形状にかかわらず、共通のOリング30によって圧側室4と連通孔6との連通を遮断することができる。さらに、連通孔6の数にかかわらず、単一のOリング30によって圧側室4と連通孔6との連通を遮断することができる。したがって、ガスダンパ100の製造コストを低減することができる。
【0044】
また、例えば、単一の連通孔6が設けられる場合や、連通孔6の流路面積(断面積)が小さい場合には、コンタミによって連通孔6が塞がれ、作動ガスが外部に漏出されないおそれがある。これに対し、ガスダンパ100では、共通のOリング30によって連通孔6を封止することができるため、製造コストを増加させずに連通孔6の形状や数を任意とすることができる。したがって、上記実施形態のように、複数の連通孔6を設けることができる。このように、ガスダンパ100では、連通孔6の設計の自由度を向上させることができるため、コンタミにより連通孔6が塞がれることが防止され、より安定して安全機能を発揮することができる。
【0045】
また、ガスダンパ100では、連通孔6は、相対的に鉛直方向上方に位置する圧側室4に連通可能となるように設けられ、温度上昇時には、ガス通路25及び連通孔6を通じて圧側室4の作動ガスが外部に漏出する。相対的に鉛直方向下方に位置する伸側室5には、作動油Lが封入される。このような構成によれば、ガス通路25が開放されても、伸側室5の作動油Lが連通孔6を通じて外部に漏出するおそれが低く、連通孔6から作動油Lが漏れて引火することも防止される。よって、ガスダンパ100では、安全性をより高めることができる。
【0046】
また、ガスダンパ100では、シリンダ1の開口にはロッドガイド10が設けられる。ロッドガイド10では、ピストンロッド10の外周をシールする樹脂製のシール部材13よりも開口端側(鉛直方向下方側)に金属製のベアリング12が設けられる。よって、仮に、シール部材13が熱によって溶融しても、溶融した樹脂が外部に漏出することがベアリング12によって防止される。したがって、シリンダ1の開口端側からの作動ガス及び作動油Lの漏れを防止することができる。
【0047】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0048】
上記実施形態では、ガス通路25は、仕切部材20の外周面とシリンダ1の内周面との間に区画される環状の隙間である。これに対し、ガス通路25は、圧側室4の作動ガスを連通孔6に導くように区画される限り、任意の構成とすることができる。例えば、図4に示す変形例では、仕切部材120がシリンダ1の内周面に取り付けられ、仕切部材120とシリンダ1の底部との間には、連通孔6が開口する底部室7が区画される。ガス通路125は、仕切部材120に形成される内部通路として区画され、底部室7に開口する。ガス通路125には、封止部材としてプラグ130が設けられる。このような変形例であっても、プラグ130が温度上昇によりガス通路125を開放するため、圧側室4の作動ガスは、ガス通路125及び底部室7を通じて連通孔6に導かれる。よって、図4に示すような変形例であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
また、上記実施形態では、連通孔6は、円形断面を有する複数の貫通孔により構成される。これに対し、連通孔6は、コンタミによって塞がれることがなく、高温時にシリンダ1内の作動ガスを漏出させて安全機能を発揮するために、適切な形状や数とすることができる。例えば、単一の連通孔6が設けられる構成でもよい。また、例えば、連通孔6は、シリンダ1の軸方向や周方向に延びる長穴状に形成されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、仕切部材20が金属製であり、Oリング30が樹脂製である。これに対し、仕切部材20及び封止部材の材質は、封止部材の融点が仕切部材20の融点以下である限り、任意とすることができる。なお、封止部材の融点と仕切部材20の融点が同じ(両者の材質が同じ)、又は、融点の差が小さい場合には、仕切部材20が変形・溶融することにより意図せずガス通路25が封止される可能性がある。このため、例えば、上記実施形態のように、仕切部材20及びOリング30を融点の差が大きくなるように異なる材質(金属製と樹脂製)で形成して、意図しないガス通路25の封止を防止することが望ましい。
【0051】
また、上記実施形態では、封止部材は、円形断面を有するOリング30である。これに対し、ガス通路25が環状に形成される場合には、封止部材は、Oリング30に限らず、その他の断面形状を有するもの(例えば、いわゆるUパッキンなど)であってもよい。また、複数の部材の組み合わせにより封止部材を構成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ガス通路25の流路面積は、連通孔6の全体としての流路面積よりも大きく形成される。これに限らず、圧側室4の作動ガスを連通孔6に導いて安全機能が発揮できる限り、ガス通路25の流路面積は、連通孔6の全体としての流路面積以下であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ガスシリンダ装置がガスダンパ100である場合を説明した。これに対し、ガスシリンダ装置は、ガススプリングであってもよい。
【0054】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0055】
ガスダンパ100では、連通孔6と圧側室4とを連通するガス通路25がOリング30によって封止される。Oリング30は、雰囲気温度の上昇により融点に達すると、変形してガス通路25を開放する。これにより、シリンダ1内の作動ガスが外部に漏出し、シリンダ1の内圧の上昇による破損を防止する安全機能が発揮される。ガスダンパ100では、ガス通路25が直接塞がれるものではないため、連通孔6の形状にかかわらず、共通のOリング30を使用することができる。したがって、安全機能を有するガスダンパ100の製造コストを低減することができる。
【0056】
また、連通孔6の形状にかかわらずOリング30を共通に使用することができるため、連通孔6の形状の設計の自由度が向上し、コンタミによって連通孔6が塞がれることを防止することができる。よって、ガスダンパ100は、より安定して安全機能を発揮することができる。
【0057】
また、ガスダンパ100では、Oリング30は、シリンダ1内の作動油Lの沸点よりも低い融点を有し、作動油Lが沸点に達する前にガス通路25が開放されて安全機能が発揮される。これにより、作動油Lに引火するおそれをより確実に排除することができる。
【0058】
また、ガスダンパ100では、Oリング30は、ピストンロッド3の外周面をシールするシール部材13の融点よりも低い融点を有し、シール部材13が融点に達する前にガス通路25が開放されて安全機能が発揮される。これにより、シール部材13の変形前にOリング30が変形して安全機能が発揮されるため、シリンダ1の内圧の上昇によりロッドガイド10とピストンロッド3との間の隙間を通じて作動油Lが漏れ出すことを防止できる。
【0059】
また、ガスダンパ100では、ピストンロッド10の外周をシールする樹脂製のシール部材13よりも開口端側(鉛直方向下方側)に金属製のベアリング12が設けられる。よって、仮に、シール部材13が熱によって溶融しても、溶融した樹脂が外部に漏出することがベアリング12によって防止されため、シリンダ1の開口端側からの作動ガス及び作動油Lの漏れを防止することができる。
【0060】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0061】
ガスダンパ100は、作動ガスが封入されるシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に設けられ、シリンダ1内に伸側室5と圧側室4とを区画するピストン2と、シリンダ1に進退自在に挿入されてピストン2に連結されたピストンロッド3と、シリンダ1の内外を連通するようにシリンダ1に形成される連通孔6と、シリンダ1内に設けられピストン2とともに圧側室4を区画する仕切部材20と、仕切部材20によって区画され圧側室4の作動ガスを連通孔6に導くためのガス通路25と、ガス通路25を封止するOリング30と、を備え、Oリング30は、温度上昇に応じて変形してガス通路25を開放する。
【0062】
また、ガスダンパ100では、複数の連通孔6がシリンダ1に形成される。
【0063】
これらの構成では、Oリング30は、圧側室4の作動ガスを連通孔6に導くためのガス通路25を封止する。このように、Oリング30は、連通孔6を直接塞ぐものではないため、連通孔6の形状にかかわらず、共通のOリング30を使用することができる。したがって、安全機能を有するガスダンパ100の製造コストが低減される。
【0064】
また、ガスダンパ100では、シリンダ1内には、作動ガスとともに作動油Lが封入され、Oリング30は、作動油Lの沸点以下の温度で変形してガス通路25を開放する。
【0065】
この構成では、作動油Lへの引火のおそれをより確実に排除することができる。
【0066】
また、ガスダンパ100は、ピストンロッド3の外周面とシリンダ1の内周面との間を通じた作動油Lの漏れを防止するシール部材13をさらに備え、Oリング30は、シール部材13の融点以下の温度で変形してガス通路25を開放する。
【0067】
この構成では、シール部材13の変形前にOリング30が変形して作動ガスが外部に漏出するため、シリンダ1の内圧の上昇によりピストンロッド3の外周を通じて作動油Lが漏れ出すことを防止できる。
【0068】
また、ガスダンパ100では、仕切部材20は、その外周面とシリンダ1の内周面との間に環状のガス通路25を区画する金属製の部材であり、Oリング30は、仕切部材20の外周面に設けられる樹脂製の部材である。
【0069】
この構成では、仕切部材20とOリング30との融点の差を大きくしやすいため、温度上昇により仕切部材20が変形して、意図せずガス通路25が封止されることを防止できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0071】
1…シリンダ、2…ピストン、3…ピストンロッド、4…圧側室、5…伸側室、6…連通孔、13…シール部材、20,120…仕切部材、25,125…ガス通路、30…Oリング(封止部材)、130…プラグ(封止部材)、100…ガスダンパ
図1
図2
図3
図4