(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/58 20060101AFI20220309BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220309BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
H01L23/56 D
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2018032842
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】大久保 禎一
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-259753(JP,A)
【文献】特開2011-023569(JP,A)
【文献】特開2005-328018(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169693(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/58
H01L 25/07、25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度センサと、
がパッケージ内に収容されたパワーモジュールであって、
前記温度センサは、
複数のPN接合ダイオードを有し、
前記パワー半導体素子上に、前記複数のPN接合ダイオードが上下交互に横方向に配列されて直列に接続されている、
ことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記複数のPN接合ダイオードは、基板の表面に所定間隔隔てて形成された複数の配線パターン上にそれぞれ固着され、
前記複数のPN接合ダイオードにおいて互いに隣接する前記PN接合ダイオード間が導電部材により直列に接続され、
前記直列の一端電極と他端電極に相当する2つの前記配線パターンには、第1外部端子及び第2外部端子がそれぞれ接続されて、前記パッケージから引き出されている、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項3】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の温度を検出する温度センサと、
がパッケージ内に収容されたパワーモジュールであって、
前記温度センサは、
複数のPN接合ダイオードを有し、
前記パワー半導体素子上に、前記複数のPN接合ダイオードが順方向に積層されて直列に接続されている、
ことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項4】
前記複数のPN接合ダイオードは、基板の表面に形成された第1配線パターン上に積層されて直列に接続され、
上端の前記PN接合ダイオードには、導電部材と、前記基板の表面に形成された第2配線パターンと、を介して第1外部端子が接続され、
前記第1配線パターンには、第2外部端子が接続され、
前記第1外部端子及び前記第2外部端子が、前記パッケージから引き出されている、
ことを特徴とする請求項3記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記第1外部端子及び前記第2外部端子間の電圧の変化から、前記パワー半導体素子の温度を検出する、
ことを特徴とする請求項2又は4記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサとしてPN接合ダイオードを内蔵したパワーモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、複数のパワー半導体素子(例えば、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等)を組み合わせて1パッケージ化した製品である。
【0003】
従来のパワーモジュールでは、内蔵されたパワー半導体素子の温度を検出するための温度センサとして、サーミスタを使用している。しかし、サーミスタの場合、部品ばらつきや温度ばらつきが大きく、正確な温度検出が困難である。そこで、特許文献1、2等において、温度センサとしてダイオードを使用し、このダイオードの順方向降下電圧Vfを検出して、内蔵されたパワー半導体素子の温度を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-171169号公報
【文献】特開2010-219243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパワーモジュールにおいて、ダイオードを使用してパワー半導体素子の温度を検出する技術では、ダイオードの順方向降下電圧Vfが低いため、ダイナミックレンジが小さく、又、ノイズの影響を受けやすいという欠点がある。
【0006】
この欠点を解決するために、ダイオードの直列数を増やして順方向降下電圧Vfを高くし、温度検出精度を向上させることも考えられる。しかし、ダイオードの直列数を増やすと、広い設置スペースが必要になり、限られた容積のパッケージ内においてその設置スペースを確保できない、といったスペース上の課題がある。このように、従来の技術では、温度センサを設置する場所が省スペースで、且つ、正確な温度検出が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうちの第1発明は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子の温度を検出する温度センサと、がパッケージ内に収容されたパワーモジュールであって、前記温度センサは、複数のPN接合ダイオードを有し、前記パワー半導体素子上に、前記複数のPN接合ダイオードが上下交互に横方向に配列されて直列に接続されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のうちの第2発明は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子の温度を検出する温度センサと、がパッケージ内に収容されたパワーモジュールであって、前記温度センサは、複数のPN接合ダイオードを有し、前記パワー半導体素子上に、前記複数のPN接合ダイオードが順方向に積層されて直列に接続されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパワーモジュールによれば、パワー半導体素子上に、複数のPN接合ダイオードが上下交互に横方向に配列された設置構成、あるいは、その複数のPN接合ダイオードが順方向に積層された設置構成になっているので、省スペースで正確な温度検出が可能なパワーモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1のパワーモジュール1Aを示す構成図
【
図3】本発明の実施例2のパワーモジュール1Bを示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の参考例)
図4(a)、(b)は、本発明の実施例1における参考例のパワーモジュール1を示す構成図であり、同図(a)はパワーモジュール1の概略の縦断断面、及び同図(b)はパワーモジュール1中の温度センサ10の回路図である。
【0013】
この参考例のパワーモジュール1は、パッケージ2の内部に、パワー半導体3を収容して1パッケージ化した製品である。パワー半導体3内には、パワーMOSFET、IGBT等の複数(例えば、2つ)のパワー半導体素子3a,3bが形成されている。パワー半導体3上には、絶縁性の基板4が配置されている。基板4の表面には、銅箔等でできた複数(例えば、3つ)の配線パターン5-1,5-2,5-3が所定間隔隔てて形成されている。配線パターン5-1~5-3の内、例えば、2つの配線パターン5-2,5-3上に、温度センサ10が固着され、更に、2つの配線パターン5-1,5-3上に、棒状の第1、第2外部端子15-1,15-2がそれぞれ突設されている。
【0014】
温度センサ10は、パワー半導体3の温度を検出するものであり、複数(例えば、2つ)のPN接合ダイオード(以下単に「ダイオード」という。)11-1,11-2を有している。各ダイオード11-1,11-2は、P型半導体からなるアノード側のP層と、N型半導体からなるカソード側のN層と、が接合されて形成されている。ダイオード11-1,11-2は、例えば、P層とN層が上下に積層されたメサ型構造、あるいは、P層とN層が拡散されて形成されたプレーナ型構造になっている。
【0015】
2つのダイオード11-1,11-2は、2つの配線パターン5-2,5-3上において、P層とN層が同一方向になるように配置されて横方向に配列されている。例えば、ダイオード11-1のN層は、導電性接着剤等によって配線パターン5-2上に固着され、更に、ダイオード11-2のN層も、導電性接着剤等によって配線パターン5-3上に固着されている。ダイオード11-1のP層は、細い板状の導電部材14-1によって配線パターン5-1に接続され、その配線パターン5-1が、第1外部端子15-1に接続されている。ダイオード11-1のN層が固着された配線パターン5-2は、細い板状の導電部材14-2により、ダイオード11-2のP層に接続され、そのダイオード11-2のN層が、配線パターン5-3を介して第2外部端子15-2に接続されている。このようにして、第1外部端子15-1と第2外部端子15-2との間に、2つのダイオード11-1,11-2が順方向に直列に接続されている。
温度センサ10が搭載されたパワー半導体3は、合成樹脂等の封止材16によって封止されている。
【0016】
各ダイオード11-1,11-2は、温度上昇によって順方向降下電圧Vfが小さくなるという温度特性を有している。この温度特性を利用し、例えば、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間に一定電流を流し、その第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間の電圧変化を検出する。この検出電圧に基づき、直列接続された2つのダイオード11-1,11-2におけるダイオード順方向降下電圧2×Vfの温度変化率を利用してパワー半導体3付近の温度を検出することができる。
【0017】
しかしながら、参考例のパワーモジュール1では、2つのダイオード11-1,11-2のP層とN層が同一方向になるように配置されて横方向に配列されているので、そのダイオード11-1,11-2を2本の導電部材14-1,14-2を用いて直列に接続しなければならない。そのため、2つのダイオード11-1,11-2の横方向の設置スペースが大きくなり、省スペースを図る上で課題が残る。
そこで、本実施例1では、以下のようにしてその課題を解決している。
【0018】
(実施例1の構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1のパワーモジュール1Aを示す構成図であり、同図(a)はパワーモジュール1Aの概略の縦断面図、及び同図(b)はパワーモジュール1A中の温度センサ10Aの回路図である。この
図1において、参考例を示す
図4中の要素と共通の要素には、共通の符号が付されている。
【0019】
本実施例1のパワーモジュール1Aでは、基板4の表面に所定間隔隔てて形成された複数(例えば、2つ)の配線パターン5-2,5-3上に、温度センサ10Aを構成している複数(例えば、2つ)のダイオード11-1,11-2がそれぞれ固着されている。2つのダイオード11-1,11-2は、2つの配線パターン5-2,5-3上において、P層とN層が上下交互に逆方向になるように配置されて横方向に配列されている。例えば、ダイオード11-1のP層は、導電性接着剤等によって配線パターン5-2上に固着され、更に、ダイオード11-2のN層が、導電性接着剤等によって配線パターン5-3上に固着されている。
【0020】
ダイオード11-1のN層とダイオード11-2のP層とは、細い板状の導電部材14-2によって相互に接続されている。配線パターン5-1上には、第1外部端子15-1が突設されている。第1外部端子15-1は、配線パターン5-2を通して、ダイオード11-1のP層に接続されている。更に、配線パターン5-3上には、第2外部端子15-2が突設されている。第2外部端子15-2は、配線パターン5-3を通して、ダイオード11-2のN層に接続されている。このようにして、第1外部端子15-1と第2外部端子15-2との間に、2つのダイオード11-1,11-2が順方向に直列に接続されている。
【0021】
図4の参考例と同様に、温度センサ10Aが搭載されたパワー半導体3は、封止材16によって封止されている。その他の構成は、
図4の参考例の構成と同様である。
【0022】
図2は、
図1の温度測定回路20の構成例を示す回路図である。
温度測定回路20は、例えば、電流源21、電圧検出部22、及び温度検出部23を有している。パワーモジュール1Aの外部において、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間には、一定電流を供給する電流源21が接続される。更に、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間には、電圧計等の電圧検出部22が接続される。電圧検出部22には、温度検出部23が接続されている。
【0023】
(実施例1の動作)
パワーモジュール1Aにおいて、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間に電源電圧が印加され、図示しない外部端子から、スイッチング駆動信号が入力されると、パワー半導体3中のパワー半導体素子3a,3bがオン/オフ動作する。そのため、パワー半導体3の温度が上昇する。
パワーモジュール1Aの外部には、
図2の温度測定回路20が設けられ、この温度測定回路20中の電流源21及び電圧検出部22が、第1、第2外部端子15-1,15-2に接続されている。
【0024】
各ダイオード11-1,11-2は、温度上昇によって順方向降下電圧Vfが小さくなるという温度特性を有している。そのため、電流源21により、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間に一定電流を流し、その第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間の電圧変化を電圧検出部22で検出し、この検出電圧を温度検出部23へ出力する。温度検出部23では、入力された検出電圧に基づき、直列接続された2つのダイオード11-1,11-2におけるダイオード順方向降下電圧2×Vfの温度変化率を利用してパワー半導体3付近の温度を検出する。そのため、温度検出部23によって正確に、パワー半導体3付近の温度を検出することができる。
【0025】
(実施例1の効果)
本実施例1のパワーモジュール1Aによれば、2つのダイオード11-1,11-2が、2つの配線パターン5-2,5-3上において、P層とN層が上下交互に逆方向になるように配置されて横方向に配列されている。そのため、ダイオー11-1のN層とダイオード11-2のP層とを、導電部材14-2を用いて相互に接続することにより、その2つのダイオード11-1,11-2を順方向に直列接続できる。これにより、2つのダイオード11-1,11-2の設置間隔を縮小でき、省スペースで正確な温度検出が可能なパワーモジュール1Aを提供できる。
【実施例2】
【0026】
(実施例2の構成)
図3(a)、(b)は、本発明の実施例2のパワーモジュール1Bを示す構成図であり、同図(a)はパワーモジュール1Bの概略の縦断面図、及び同図(b)はパワーモジュール1B中の温度センサ10Bの回路図である。この
図3において、参考例を示す
図4と実施例1を示す
図1及び
図2中の要素と共通の要素には、共通の符号が付されている。
【0027】
本実施例2のパワーモジュール1Bでは、基板4の表面に所定間隔隔てて形成された複数(例えば、2つ)の配線パターン5-1,5-3の内の1つの配線パターン5-3上に、温度センサ10Bを構成している複数(例えば、2つ)のダイオード11-1,11-2が固着されている。例えば、2つのダイオード11-1,11-2は、1つの配線パターン5-3上において、P層とN層が同一方向(即ち、順方向)になるように積層されて直列に接続されている。ダイオード11-2のN層は、導電性接着剤等によって配線パターン5-3上に固着されている。ダイオード11-2のP層上には、導電性接着剤11aによってダイオード11-1のN層が固着されている。
【0028】
配線パターン5-3上には、棒状の第2外部端子15-2が突設されている。配線パターン5-1上には、棒状の第1外部端子15-1と、太い柱状の導電部材14-3と、が突設されている。導電部材14-3の上端と、ダイオード11-1のP層と、は板状の導電部材14-4によって相互に接続されている。このようにして、2つのダイオード11-1,11-2は、第1、第2外部端子15-1,15-2間において、配線パターン5-1、導電部材14-3,14-4、及び配線パターン5-3を介して、順方向に直列に接続されている。
【0029】
図1の実施例1と同様に、温度センサ10Bが搭載されたパワー半導体3は、封止材16によって封止されている。その他の構成は、
図1の実施例1と同様である。
【0030】
(実施例2の動作)
実施例1と同様に、パワーモジュール1Bにおいて、第1外部端子15-1及び第2外部端子15-2間に電源電圧が印加され、図示しない外部端子から、スイッチング駆動信号が入力されると、パワー半導体3中のパワー半導体素子3a,3bがオン/オフ動作する。そのため、パワー半導体3の温度が上昇する。
【0031】
パワーモジュール1Bの外部には、
図1の実施例1と同様に、
図2の温度測定回路20が設けられ、この温度測定回路20中の電流源21及び電圧検出部22が、第1、第2外部端子15-1,15-2に接続されている。そのため、実施例1と同様に、温度測定回路20中の温度検出部23によって正確にパワー半導体3付近の温度を検出することができる。
【0032】
(実施例2の効果)
本実施例2のパワーモジュール1Bによれば、2つのダイオード11-1,11-2が、1つの配線パターン5-3上において、P層とN層が同一方向(順方向)になるように積層されて直列に接続されている。そのため、2つのダイオード11-1,11-2の横方向の設置スペースを、実施例1よりも更に縮小でき、より省スペースで、正確な温度検出が可能なパワーモジュール1Bを提供できる。
【0033】
(実施例1、2の変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)、(b)のようなものがある。
【0034】
(a)
図1及び
図3において、温度センサ10A,10Bは2つのダイオード11-1,11-2により構成されているが、そのダイオードは3つ以上であっても良い。パッケージ2内に収容可能な設置スペースの範囲内で、ダイオードの数を増やすことにより、温度検出感度を向上できる。
(b)
図1及び
図3のパワーモジュール1A,1Bにおいて、ダイオード11-1,11-2の配置形態、構成材料等、更に、パッケージ2の構造、形状等は、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B パワーモジュール
2 パッケージ
3 パワー半導体
3a,3b パワー半導体素子
4 基板
5-1,5-2,5-3 配線パターン
10,10A,10B 温度センサ
11-1,11-2,11-3 PN接合ダイオード
14-1,14-2,14-3 導電部材
15-1,15-2 第1、第2外部端子