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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】作業車両用旋回制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20220309BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20220309BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220309BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20220309BHJP
   B66C 23/86 20060101ALI20220309BHJP
   B66C 23/94 20060101ALI20220309BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E02F9/22 C
E02F9/24 B
E02F9/26 A
B66C23/88 D
B66C23/86 A
B66C23/94 Z
G08B21/00 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018042258
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019157409
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】片山 三郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 八生
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-221628(JP,A)
【文献】特開平05-112976(JP,A)
【文献】特開2000-113345(JP,A)
【文献】特開2007-023486(JP,A)
【文献】特開2017-155563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00- 9/28
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムであって、
前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、
前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機と、
前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、
前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部と、
前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の前記旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部と、
前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部と、を備え
前記規制領域範囲として前記旋回部の旋回を物理的に妨げることのない範囲が設定されたときに、前記規制領域範囲に対する前記旋回規制制御部の制御形態を、前記旋回用アクチュエータの出力を、旋回動作を停止しない範囲で制限する第1制御形態と、前記旋回用アクチュエータの出力を前記規制領域範囲内に侵入を続ける方向への旋回動作を停止する第2制御形態とのうちから選択可能に構成され、
前記旋回規制制御部は、オペレータによる前記第2制御形態の選択指示が入力されたときに前記旋回禁止の条件が成立したと判定することを特徴とする作業車両用旋回制御システム。
【請求項2】
作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムであって、
前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、
前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機と、
前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、
前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部と、
前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の前記旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部と、
前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部と、
規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、
前記作業車両の実空間座標を検出する座標検出部と、を備え
前記規制領域範囲設定部及び前記出力緩衝範囲設定部は、前記座標検出部で検出した前記作業車両の実空間座標に基づき前記作業車両が予め設定した距離閾値以上の距離を移動したと判定すると、移動先の前記実空間座標と、前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データとに基づき前記規制領域範囲及び前記出力緩衝範囲を再設定することを特徴とする作業車両用旋回制御システム。
【請求項3】
作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムであって、
前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、
前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機と、
前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、
前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部と、
前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の前記旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部と、
前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部と、
規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、
前記作業車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、を備え
前記規制領域範囲設定部及び前記出力緩衝範囲設定部は、前記傾斜検出部で検出した前記傾斜に基づき、前記作業車両の傾斜が変化したと判定すると、検出した傾斜と、前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データとに基づき前記規制領域範囲及び前記出力緩衝範囲を再設定することを特徴とする作業車両用旋回制御システム。
【請求項4】
前記作業車両に配設され外部機器に無線信号を送信する無線送信機を備え、
前記外部警報機は、無線信号を受信する第1の無線受信機を備えると共に前記作業車両から離れた位置に独立して配設されており、
前記警報制御部は、前記外部警報機を作動制御する制御信号を、前記無線送信機を介して前記外部警報機へと無線送信し、
前記外部警報機は、前記警報制御部からの前記制御信号を前記第1の無線受信機を介して受信する請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【請求項5】
前記旋回規制制御部は、前記出力緩衝範囲を複数の範囲に分割し、前記作業車両の旋回位置が、前記複数の範囲のうち前記規制領域範囲に対してより近い範囲内にある程、前記旋回用アクチュエータの出力を小さくする制御を行い、
前記警報制御部は、前記複数の範囲の少なくとも一部の範囲内及び前記規制領域範囲内に前記旋回部があるときに前記作業車両の内外にて警報を出力する制御を行うようになっており、少なくとも前記外部警報機に、前記複数の範囲の少なくとも一部及び前記規制領域範囲の各範囲でそれぞれ異なる内容の警報を出力させるようになっている請求項1から4のいずれか1項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【請求項6】
規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、
前記作業車両の作業具の先端部の実空間座標を検出する作業具座標検出部と、を更に備え、
前記警報制御部は、前記規制対象が前記旋回部の旋回を物理的に妨げることのない領域
であるときに、前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データと前記作業具座標検出部で検出した前記先端部の実空間座標とに基づき、前記先端部が前記規制対象の領域と重なるときのみに前記外部警報機による警報の出力を行う請求項1からのいずれか1項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【請求項7】
前記作業車両が作業を行う作業領域への所定の移動体の接近を見張る見張り員が所持し、前記移動体の接近を通知する接近通知信号を無線送信可能な接近通知信号送信機と、
前記作業車両に配設され、外部機器からの無線信号を受信する第2の無線受信機と、を更に備え、
前記警報制御部は、前記接近通知信号送信機からの前記接近通知信号を前記第2の無線受信機を介して受信したことに応じて、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する請求項1からのいずれか1項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【請求項8】
前記接近通知信号送信機からの前記接近通知信号を前記第2の無線受信機を介して受信したことに応じて、前記旋回部の旋回位置を予め設定した安全な旋回位置へと旋回させる制御を行う旋回制御部を備える請求項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【請求項9】
規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、
前記作業車両の実空間座標を検出する座標検出部と、を備え、
前記規制領域範囲設定部は、前記座標検出部で検出した前記実空間座標と前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データとに基づき、前記作業車両の前記旋回部が前記規制対象を回避不能な旋回位置を含む範囲を前記規制領域範囲として設定する請求項1からのいずれか1項に記載の作業車両用旋回制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両の旋回動作を規制する制御を行う装置として、例えば、特許文献1に記載の旋回重機の非常停止装置、特許文献2に記載のショベル旋回安全装置などが開示されている。特許文献2のショベル旋回安全装置では、オペレータが希望の旋回半径を事前に設定し、その範囲外の状態で旋回動作をしようとした場合に、ブザーによる警告を行ったり旋回動作を中断させたりする。
一方、特許文献3には、作業機械のアームの先端の周囲に多重の円よりなる複数の仮想危険度ポテンシャルゾーンを設定して円の1つに監視対象が入った場合に危険度の低い円から危険度の高い円に対象が移動したことをもって監視対象を検出し、警報を鳴らす構成の建設機械の警報システムの発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-306095号公報
【文献】実開平6-40065号公報
【文献】特開平5-217082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2の従来技術はいずれも、旋回動作中に停止条件を満たした場合は、旋回用油圧アクチュエータに対して圧油の供給を停止して、旋回動作を急停止するものである。そのため、停止時に大きな旋回速度変化が発生して、作業車両の接地バランスを崩す等の不具合が発生する恐れがあった。
また、上記特許文献2の従来技術では、オペレータに対してブザーによる警告を行っているが外部に対しての警告は行っていない。また、上記特許文献3の従来技術では、監視対象を検出するために、作業機械側を主局とし、監視対象側を従局としたトランスポンダ方式を採用している。そのため、主局側の作業機械には、複数の受信センサと複数の超音波ホーンを設ける必要があると共に、従局側の作業員等の監視対象にも携帯型の警報装置を持たせる又は設置する必要がある。従って、様々なシーンに対応可能ではあるが、複数の受信センサと複数の超音波ホーンの設置により作業機械のコストが高くなると共に監視対象の数だけ警報装置の数が必要となるため施工コストが嵩むといった問題が発生する。
【0005】
一方、実際の現場では、作業車両の作業場所にレーザーセンサーによって作業員等を検知して自動で警報を出力する警報機や、オペレータが手動で作動させる警報機を設置している。しかしながら、レーザーセンサーは一度設置してしまうと動かすことが困難であり、常に位置を変えながら作業を行う場合には不向きである。また、レーザーセンサーには付属の制御盤があり、制御盤に回転灯が接続され回転灯による警報がなされるが、作業車両のオペレータが回転灯の作動に気付かないといったことが発生していた。また、検知範囲の設定もPCを接続して行う必要があり非常に手間であった。
【0006】
また、オペレータが手動で作動させる警報機の場合は、設置位置の変更は比較的容易である。しかし、例えば、図42に示すように、工事用桟橋上などでの作業において作業車両101の作業具を、開口部104上を旋回移動させる作業を含む状況において、警報の要否に応じて、その都度オペレータFが作業車両101を降りて、転落防止用の手摺105に設置された警報スイッチボックス192のスイッチをON/OFFする必要があり、非常に手間であった。また、人手により警報出力を行うため警報を忘れるといったことも発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、比較的低コスト且つ人手を要さずに作業車両の内外に対して自動で警報を出力することが可能な作業車両用旋回制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業車両用旋回制御システムは、作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムである。この作業車両用旋回制御システムは、前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機とを備える。加えて、前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部とを備える。更に、前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部を備える。なお更に、前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の前記出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部を備える。更に、前記規制領域範囲として前記旋回部の旋回を物理的に妨げることのない範囲が設定されたときに、前記規制領域範囲に対する前記旋回規制制御部の制御形態を、前記旋回用アクチュエータの出力を、旋回動作を停止しない範囲で制限する第1制御形態と、前記旋回用アクチュエータの出力を前記規制領域範囲内に侵入を続ける方向への旋回動作を停止する第2制御形態とのうちから選択可能に構成され、前記旋回規制制御部は、オペレータによる前記第2制御形態の選択指示が入力されたときに前記旋回禁止の条件が成立したと判定する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業車両用旋回制御システムは、作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムであって、前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機と、前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部と、前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の前記旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部と、前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部と、規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、前記作業車両の実空間座標を検出する座標検出部と、を備え、前記規制領域範囲設定部及び前記出力緩衝範囲設定部は、前記座標検出部で検出した前記作業車両の実空間座標に基づき前記作業車両が予め設定した距離閾値以上の距離を移動したと判定すると、移動先の前記実空間座標と、前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データとに基づき前記規制領域範囲及び前記出力緩衝範囲を再設定する。
また、上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業車両用旋回制御システムは、作業車両の旋回動作を規制する制御を行う作業車両用旋回制御システムであって、前記作業車両の運転室の内部に配設され、警報の出力動作を制御可能な内部警報機と、前記作業車両の外部に配設され、警報の出力動作を制御可能な外部警報機と、前記旋回動作の規制対象を含む旋回範囲である規制領域範囲を設定する規制領域範囲設定部と、前記規制領域範囲の前後に、旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する旋回範囲である出力緩衝範囲を設定する出力緩衝範囲設定部と、前記作業車両の旋回部が前記出力緩衝範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限し、前記旋回部が前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記旋回用アクチュエータの出力を、前記旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに前記規制領域範囲内へと侵入を続ける方向の前記旋回動作を停止するように制御する旋回規制制御部と、前記旋回部が前記出力緩衝範囲内及び前記規制領域範囲内のうち少なくとも前記規制領域範囲内にあると判定したときに、前記内部警報機及び前記外部警報機の警報の出力動作を制御して前記作業車両の内外にて警報を出力する警報制御部と、規制対象の座標情報を含む施工領域の地図データを記憶する地図データ記憶部と、前記作業車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、を備え、前記規制領域範囲設定部及び前記出力緩衝範囲設定部は、前記傾斜検出部で検出した前記傾斜に基づき、前記作業車両の傾斜が変化したと判定すると、検出した傾斜と、前記地図データ記憶部に記憶された前記地図データとに基づき前記規制領域範囲及び前記出力緩衝範囲を再設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業車両用旋回制御システムによれば、規制領域範囲の前後に旋回用アクチュエータの出力変化を緩和する出力緩衝範囲を設けることで、出力緩衝範囲内では旋回動作を停止しない範囲で旋回用アクチュエータの出力を制限することが可能である。また、規制領域範囲内では、旋回動作を停止しない範囲で旋回用アクチュエータの出力を制限すると共に予め設定した旋回禁止の条件が成立したときに規制領域範囲内へと侵入し続ける旋回動作を停止することが可能である。これによって、旋回規制時の規制領域範囲に至るまでの旋回速度変化を緩和することが可能となる。その結果、規制領域範囲における旋回停止や減速時の旋回速度変化による作業車両の接地バランスの崩れ等の不具合の発生を防止することが可能となる。また、本発明に係る作業車両用旋回制御システムによれば、旋回部の旋回位置が設定した規制領域範囲内及び出力緩衝範囲内のいずれにあるかといった簡易な検知構成で自動且つ適切に作業車両の内外に警報を出力することが可能である。これによって、従来と比較して低コスト且つ人手をかけずに作業車両の内外に警報を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るバックホウの構成を示す斜視図である。
図2】バックホウの運転室内の構成を示す模式図である。
図3】機関室の内部構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る第1コントローラの具体的な機能構成を示すブロック図である。
図6】設計平面図の一例を示す図である。
図7】(a)は、第1実施形態に係る旋回範囲の一例を示す図であり、(b)は、第1実施形態に係る移動可能範囲の一例を示す図である。
図8】車両情報算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】旋回範囲設定モード設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】旋回範囲手動設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】(a)は、第1実施形態に係る旋回範囲設定案内画像の一例を示す図であり、(b)は、第1実施形態に係る旋回範囲手動設定画像の初期表示内容の一例を示す図である。
図12】(a)~(c)は、規制領域範囲の手動設定手順の一例を示す図である。
図13】(a)は、手動設定後の規制領域範囲の確認画面を含む旋回範囲手動設定画像の一例を示す図であり、(b)は、設定後の旋回範囲画像及び移動可能範囲画像の確認画面を含む旋回範囲手動設定画像の一例を示す図である。
図14】第1実施形態に係る旋回範囲自動設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15】第1実施形態に係る旋回規制制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態に係る旋回範囲修正処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17】第1実施形態に係る旋回規制警報処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18】第1のガイダンス画像の一例を示す図である。
図19】第1実施形態に係る第2のガイダンス画像の一例を示す図である。
図20】(a)~(c)は、旋回禁止フラグがONに設定されている場合の旋回規制警報処理を説明するための図である。
図21】バックホウ1の傾斜が変化した状態の一例を示す側面図である。
図22】(a)及び(b)は、バックホウ1が移動可能範囲から逸脱した場合の初期位置に戻る動作を説明するための図である。
図23】(a)及び(b)は、バックホウ1が移動可能範囲から逸脱した場合に旋回範囲及び移動可能範囲を再設定する動作を説明するための図である。
図24】第2実施形態に係る作業車両用旋回制御システムの構成を示すブロック図である。
図25】第2実施形態に係る第1コントローラの具体的な機能構成を示すブロック図である。
図26】第2外部警報機の構成を示すブロック図である。
図27】第2実施形態に係る旋回規制警報処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図28】開口部脇にて作業を行う場合の動作例を示す図である。
図29】第2実施形態に係る旋回範囲設定案内画像の一例を示す図である。
図30】第2実施形態に係る旋回範囲の一例を示す図である。
図31】第2実施形態に係る第2のガイダンス画像の一例を示す図である。
図32】(a)~(d)は、旋回禁止フラグがOFFに設定されている場合の旋回規制警報処理を説明するための図である。
図33】第3実施形態に係る作業車両用旋回制御システムの構成を示すブロック図である。
図34】第3実施形態に係る第1コントローラの具体的な機能構成を示すブロック図である。
図35】第3実施形態に係る接近警報処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図36】第3実施形態に係る旋回位置変更処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図37】鉄道近接工事を行う場合の動作例を示す図である。同図では警報出力前の状態を示している。
図38】(a)は、第3実施形態に係る旋回範囲の一例を示す図であり、(b)は、旋回位置変更時の動作を説明する図である。
図39】鉄道近接工事を行う場合の動作例を示す図である。同図では警報出力後で且つ安全な旋回位置へと旋回後の状態を示している。
図40】本発明をタワークレーンに適用した場合の変形例を示す図である。
図41】旋回範囲を作業機の姿勢に対応して設定した場合にカバーされる旋回状況の一例を示す図である。
図42】オペレータが手動で警報を作動する従来例を示す図である。
図43】列車見張り員が手旗で列車の接近を知らせる場合の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1~第3実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、以下に示す第1~第3実施形態では、本発明をバックホウに適用した例を示しているが、本発明は、旋回体を備える作業車両であれば、バックホウ以外にも、例えば、クレーン等の他の作業車両にも適用可能である。
【0013】
(第1実施形態)
(全体構成)
本発明の第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システムを搭載した油圧式のバックホウ1は、図1に示すように、機体2と、機体2上部の右前方側に設けられた作業機3とを備える。機体2は、上部旋回体4と、この上部旋回体4の下部に設けられた走行装置6とを備える。
上部旋回体4は、その後方側に機関室4EGと、作業機3の左側方に設けられた運転室5とを備える。図2に示すように、この運転室5の内部5iには、後述する作業車両用旋回制御システム7を構成するコントロールボックス70が配置されている。具体的に、コントロールボックス70は、内部5iに設けられた運転席に着座したオペレータが視認可能な位置である正面窓の右枠部に取り付けられている。
【0014】
また、機関室4EGの内部には、図3に示すように、例えばディーゼルエンジンや電動モータ等から構成される動力源40と、この動力源40を駆動源とした油圧ポンプ41と、この油圧ポンプ41で発生した圧油を各種油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給する圧油供給装置42とが収容されている。
具体的に、圧油供給装置42は、油圧ポンプ41からの圧油を、各種シリンダ33,34,35(後述)と、各種走行用油圧モータ60L,60R(後述)とに供給する。加えて、第1実施形態では、油圧ポンプ41からの圧油を、比例電磁弁50を介して旋回用油圧モータ51に供給する。
【0015】
上部旋回体4は、オペレータの左作業機操作レバー5rL(図2参照)の操作に応じて旋回作動するように構成されている。具体的に、左作業機操作レバー5rLが操作されると、油圧ポンプ41で発生した圧油が、圧油供給装置42の備える旋回用切替制御弁(不図示)を介して比例電磁弁50に供給される。
ここで、比例電磁弁50は、後述する第2コントローラ20からの駆動電流信号である開度制御信号Octrに基づき、該信号Octrによって供給される電流量に比例した開度となるように作動する。即ち、比例電磁弁50は、供給電流量0で開度0%(遮断状態)となり、供給電流量が0よりも大きいときに供給電流量に比例した開度(~100%)となるように作動する。従って、比例電磁弁50に供給された圧油は、この比例電磁弁50の開度に応じた流量で旋回用油圧モータ51に供給される。これにより、旋回用油圧モータ51は、供給された圧油の流量に応じた速度で回転駆動し、上部旋回体4が旋回作動する。
【0016】
図1に戻って、作業機3は、ブーム30と、アーム31と、バケット32と、ブームシリンダ33と、アームシリンダ34と、バケットシリンダ35とを有する。ブームシリンダ33は、左ブームシリンダ33L及び右ブームシリンダ33Rを有する。
ブーム30の基端部は、不図示のブームピンを介して機体2の一端側に回動可能に取り付けられている。アーム31の基端部は、アームピン36を介してブーム30の先端部に回動可能に取り付けられている。アーム31の先端部には、バケットピン37を介してバケット32が回動可能に取り付けられている。
オペレータが、左作業機操作レバー5rL及び右作業機操作レバー5rRを操作することによって、油圧ポンプ41で発生した圧油が圧油供給装置42の備える各種切替制御弁(不図示)を介して各種シリンダ33,34,35に供給される。これによって、各種シリンダ33,34,35が伸縮する。そして、ブームシリンダ33が伸縮することでブーム30が回動し、アームシリンダ34が伸縮することでアーム31が回動し、バケットシリンダ35が伸縮することでバケット32が回動する。
【0017】
走行装置6は、機体2下部の左右に装着された左クローラ装置6L及び右クローラ装置6Rを有する。そして、これら左クローラ装置6L及び右クローラ装置6Rに個別に対応する二つの走行用油圧モータ60L,60R(図3参照)を備えている。走行用油圧モータ60L,60Rは、何れも圧油供給装置42から走行用切替制御弁(不図示)を介して圧油を個別に供給することによりそれぞれが独立して作動するようになっている。
これにより、不図示の左走行操作レバー及び右走行操作レバーを個別に前進または後退操作することで、対応する左クローラ装置6L及び右クローラ装置6Rを個別に駆動することが可能となっている。
そして、オペレータが、上記各種操作レバーを操作することによって、ブーム30の起伏動作、アーム31の伸長、曲げ動作、バケット32の開閉動作、上部旋回体4の旋回動作及び走行装置6の走行動作を行う。これにより、バケット32を、オペレータの所望の位置へと移動し、その位置でバケット32を開閉動作させることで切土、盛土、掘削等の施工作業を行う。
【0018】
(作業車両用旋回制御システム7の構成)
更に、第1実施形態のバックホウ1は、図4に示すように、作業車両用旋回制御システム7を備える。この作業車両用旋回制御システム7は、図1図4に示すように、コントロールボックス70と、機体2の機関室4EGの上部後端に互いに左右方向に離間して設けられた第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bとを備える。更に、この作業車両用旋回制御システム7は、ブーム30に設けられた第1角度センサ72Aと、アーム31に設けられた第2角度センサ72Bと、バケット32に設けられた第3角度センサ72Cとを備える。なお更に、この作業車両用旋回制御システム7は、上部旋回体4の上部に設けられた無線機73と、上部旋回体4の下部に設けられたジャイロセンサ74と、上部旋回体4の旋回軸(不図示)に設けられた旋回角度センサ75とを備える。更にまた、この作業車両用旋回制御システム7は、機体2及び作業機3の作動を制御するコントローラである第2コントローラ20と、旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を調整するための比例電磁弁50とを備える。
【0019】
更に、この作業車両用旋回制御システム7は、車室内に設けられた内部警報機90と、車室外の機体2の機関室4EGの上部に設けられた第1外部警報機91とを備える。
コントロールボックス70は、図4に示すように、第1コントローラ70aと、メモリリーダ70bと、記憶装置70cと、表示入力装置70dとを備える。
第1コントローラ70aには、例えばCAN(Controller Area Network)等の不図示の車載ネットワークを介して、第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bと、第1~第3角度センサ72A~72Cと、無線機73と、ジャイロセンサ74と、旋回角度センサ75と、内部警報機90と、第1外部警報機91とが接続されている。
【0020】
第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bは、それぞれGNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する複数(例えば5つ以上)の測位衛星からのGNSS電波を受信可能なGNSSアンテナを有する。そして、GNSSアンテナで受信した複数の衛星からのGNSS電波に応じたGNSS信号を、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
以下、第1GNSS受信機71Aの送信するGNSS信号を「第1測位信号GNSS1」、第2GNSS受信機71Bの送信するGNSS信号を「第2測位信号GNSS2」と記載する場合がある。
第1角度センサ72Aは、上部旋回体4の垂直方向に対するブーム30の傾斜角である第1傾斜角θ1を検出する。第1角度センサ72Aは、検出した第1傾斜角θ1を、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
第2角度センサ72Bは、ブーム30に対するアーム31の傾斜角である第2傾斜角θ2を検出する。第2角度センサ72Bは、検出した第2傾斜角θ2を、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
【0021】
第3角度センサ72Cは、アーム31に対するバケット32の傾斜角である第3傾斜角θ3を検出する。第3角度センサ72Cは、検出した第3傾斜角θ3を、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
無線機73は、外部の無線通信機能を有する装置との間で無線通信を行う機器である。第1実施形態では、不図示のGNSS基準局からの補正信号CORの受信や、不図示のTS(Total Station)との通信などに用いる。無線機73は、補正信号CORのデータを含む外部装置から受信したデータを、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
【0022】
ここで、GNSS基準局は、施工現場の基準点(明確な位置)に設置されたGNSS受信機であり、GNSSアンテナと無線機とを有し、複数(例えば5つ以上)の測位衛星からのGNSS電波を受信し、受信した複数の衛星からのGNSS電波に応じたGNSS信号とGNSS基準局の位置情報とを含む補正信号CORを外部装置へと無線送信する。
ジャイロセンサ74は、3軸の加速度センサから構成され、機体2のピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyを検出する。ジャイロセンサ74は、検出したピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyを、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
旋回角度センサ75は、上部旋回体4の旋回角度θtを検出する。旋回角度センサ75は、検出した旋回角度θtを、車載ネットワークを介して第1コントローラ70aに送信する。
【0023】
第1コントローラ70aは、例えばマイクロコントローラから構成されており、図示省略するが、CPU、ROM、RAM、内外バス、I/F回路等を有する。なお、ROM又は後述する記憶装置70cには、作業車両用旋回制御システム7の制御プログラム等の各種プログラムやプログラムで使用するデータが記憶されている。
そして、第1コントローラ70aは、ROM又は記憶装置70cに記憶された制御プログラムをRAMに読み込み、RAMに読み込んだ制御プログラムをCPUで実行することで、作業車両用旋回制御システム7の各機能を実現させる。
具体的に、第1実施形態の作業車両用旋回制御システム7は、マシンガイダンス機能と、旋回規制制御機能とを備えている。
マシンガイダンス機能は、3次元設計データDdの示す目標設計形状(第1実施形態では目標設計面)とバケット32の爪先部32Tとの差分の情報、3次元設計データDdの示す規制対象と爪先部32Tとの差分の情報等の、施工作業の支援情報を表示する機能である。
【0024】
なお、第1実施形態の3次元設計データDdは、予め作成された基本設計データに含まれる平面図(例えば、図6の平面図400を参照)のデータと、基本設計データに含まれる電子基準点、三角点、水準点等の基準点を示す基準点データと、基本設計データに含まれる目標設計形状の縦断図及び横断図の勾配変化点を示す変化点データと、事前調査や過去の工事資料等から得られる規制対象のデータ(3次元座標データや種別等の属性データ)とに基づき作成されるデータである。具体的に、第1実施形態の3次元設計データDdは、目標設計面及び規制対象の3次元データ、規制対象の種別、構成材料、規制レベル等の属性データ等を含むデータとなる。
【0025】
また、規制対象のデータは、施工作業によって破損や損傷してはならない構造物のデータを含むと共に、バックホウ1が侵入してはいけない領域、侵入してもよいが要注意な領域のデータ等も含むものである。即ち、規制対象のデータは、例えば、水道管、共同溝、地下施設等の地下埋設物のデータ、足場などの一時的に設けられる仮設物のデータ、電柱や家屋等の地上構造物のデータ等を含む。他にも、電線等の架空線のデータ、鉄道敷に近接した場所で施工する場合の鉄道線路や踏切等の鉄道構造物のデータ(例えば鉄道境界線のデータ)、例えば道路の工事する側とは反対側の車線等の、侵入してはいけない領域のデータ等を含む。更に、工事用桟橋の開口部や掘削により地上に形成された開口部等の旋回は許可するが付近や内部(例えば開口部下など)に作業員等の人員がいる可能性のある注意を要する領域のデータ等を含む。
【0026】
また、第1実施形態の旋回規制制御機能は、バックホウ1の旋回動作時の操作ミス等による規制対象の構造物(以下、「規制対象物」と記載する)の損傷や破損を防ぐと共に、例えば道路の工事する側とは反対側の車線等の規制対象の領域(以下、「規制対象領域」と記載する)にバックホウ1が侵入するのを防止するための機能を含む。加えて、規制対象領域での旋回は許可するがその領域内にいる作業員等の人員に対して接触事故や落下物等による事故が発生しないように、旋回速度を制限すると共にバックホウ1の車室内外に警報を出力する機能も含む。
【0027】
メモリリーダ70bは、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成されるメモリ媒体(例えば、メモリカード、USBメモリ等)を不図示の挿入部に挿入することで、挿入されたメモリ媒体に対してデータの読み出しを行う装置である。第1実施形態において、このメモリリーダ70bは、外部で作成された3次元設計データDdを記憶装置70cに取り込むために用いられる。
記憶装置70cは、例えばハードディスク等の比較的容量の大きい不揮発性の記憶媒体から構成されており、第1実施形態では、メモリリーダ70bを介してメモリ媒体に記憶された3次元設計データDdを記憶するのに用いられる。他にも、制御プログラムや制御プログラムの実行に必要な各種データを記憶していてもよい。
【0028】
表示入力装置70dは、液晶表示パネルとタッチパネルとを組み合わせた表示パネルを有する。表示入力装置70dは、上記マシンガイダンス機能を実現する処理であるマシンガイダンス処理、上記旋回規制制御機能を実現するための各種処理を実行した際の表示情報等を表示する。また、タッチパネルの機能によって、オペレータが表示画面を指等でタッチすることでタッチ位置に応じた情報を入力することが可能である。
第1実施形態では、表示入力装置70dに、マシンガイダンス処理の開始指示ボタン画像、旋回規制制御設定処理の開始指示ボタン画像等を含む複数のボタン画像を表示し、オペレータがボタン画像上をタッチパネル越しにタッチすることで、タッチしたボタンの種類に応じた情報を第1コントローラ70aに入力する。
【0029】
内部警報機90は、図2に示すように、運転室5の内部5iの左作業機操作レバー5rLの左側の台上に設けられており、回転灯を備えている。そして、第1コントローラ70aから無線送信された警報出力指令信号Wdに基づき回転灯を回転且つ点灯作動させるように構成されている。
ここで、警報出力指令信号Wdは、内部警報機90の点灯スイッチをON/OFFする信号である。即ち、内部警報機90は、点灯スイッチがON状態のときに回転灯に電源を供給し、OFF状態のときに回転灯への電源供給を遮断する。
また、第1実施形態において、第1コントローラ70aと内部警報機90とは車載ネットワークを介して有線接続されており、車載ネットワークを介して警報出力指令信号Wdが内部警報機90に送信される。なお、有線接続に限らず、第1コントローラ70aと内部警報機90とを無線接続する構成としてもよい。この場合は、内部警報機90が無線受信機を備え、第1コントローラ70aからの警報出力指令信号Wdは、例えば、無線機73を介して無線送信される。
【0030】
第1外部警報機91は、図示省略するが、音声データを記憶する記憶部と、アンプと、スピーカとを備えている。そして、第1コントローラ70aからの後述する第1~第5警報信号AS1~AS5に基づき、各警報信号に対応した内容の警告音声メッセージをスピーカから出力するように構成されている。即ち、各警報信号に対応した音声データが予め記憶部に記憶されている。なお、スピーカは1台に限らず、周囲に警報が聞こえやすいように複数台を設置してもよい。
また、第1実施形態において、第1コントローラ70aと第1外部警報機91とは車載ネットワークを介して有線接続されており、車載ネットワークを介して第1~第5警報信号AS1~AS5が第1外部警報機91に送信される。なお、有線接続に限らず、第1コントローラ70aと第1外部警報機91とを無線接続する構成としてもよい。この場合は、第1外部警報機91が無線受信機を備え、第1コントローラ70aからの第1~第5警報信号AS1~AS5は、例えば、無線機73を介して無線送信される。
【0031】
(第1コントローラ70aの機能構成)
次に、図5に基づき、第1コントローラ70aの具体的な機能構成を説明する。
第1コントローラ70aは、その機能構成部として、図5に示すように、測位情報補正部170と、機体座標算出部171と、バケット座標算出部172と、画像表示処理部173と、作業機姿勢算出部174と、旋回範囲設定部175と、旋回規制制御部176とを備える。
測位情報補正部170は、RTK(Real Time Kinematic)測位機能を有している。測位情報補正部170は、第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bから入力された第1及び第2測位信号GNSS1及び2と、無線機73を介して入力されるGNSS基準局からの補正信号CORとに基づき、これらのGNSS信号の位相差と波数(整数値バイアス)とを算出する。そして、算出した位相差と波数とに基づき第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bの3次元座標情報である第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)を算出する。測位情報補正部170は、算出した第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)を、現場座標系(例えば日本測地系2000(JGD2000))に変換してから機体座標算出部171に出力する。
【0032】
機体座標算出部171は、測位情報補正部170からの第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)に基づき、機体2の向く方位の情報である機体方位Dと、機体2の3次元座標情報である機体座標(Xm,Ym,Zm)とを算出する。機体座標算出部171は、算出した機体方位Dと機体座標(Xm,Ym,Zm)とを、バケット座標算出部172と、画像表示処理部173と、作業機姿勢算出部174とにそれぞれ出力する。
バケット座標算出部172は、機体座標算出部171からの機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、第1~第3角度センサ72A~72Cからの第1~第3傾斜角θ1~θ3と、ジャイロセンサ74からのピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyと、予めROM又は記憶装置70cに記憶された機体2及び作業機3の各種パラメータとに基づき、バケット32の爪先部32Tの実空間における3次元座標であるバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を算出する。
なお、機体2及び作業機3の各種パラメータは、機体2の幅、長さ、高さ等のサイズ情報、ブーム30及びアーム31の各長さや両者を合わせた最大長さ等の情報、バケット32のサイズや最大高さなどの情報を含むものである。
バケット座標算出部172は、算出したバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を画像表示処理部173と、作業機姿勢算出部174と、旋回規制制御部176とにそれぞれ出力する。
【0033】
画像表示処理部173は、ガイダンスモードが設定されている場合に、入力されたバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdに含まれる目標設計面の3次元座標(Xf,Yf,Zf)とに基づき、バケット32の爪先部32Tと目標設計面との間の距離である第1距離Lfを算出する。具体的に、3次元座標の2点間距離の公式に従って、「Lf={(Xf-Xt)2+(Yf-Yt)2+(Zf-Zt)2}1/2」で求める。なお、記憶装置70cに取り込んだ3次元設計データDdの座標系は、現場座標系に対応している。
更に、画像表示処理部173は、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と3次元設計データDdに含まれる規制対象の3次元座標(Xp,Yp,Zp)とに基づき、爪先部32Tと規制対象との間の距離である第2距離Lpを算出する。具体的に、上記第1距離Lfと同様に、2点間距離の公式から「Lp={(Xp-Xt)2+(Yp-Yt)2+(Zp-Zt)2}1/2」で求める。
【0034】
そして、画像表示処理部173は、算出した第1距離Lf及び第2距離Lpと、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と、3次元設計データDdと、入力された機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)とに基づき、第1のガイダンス画像データを生成する。更に、生成した第1のガイダンス画像データの画像(以下、「第1のガイダンス画像」と記載する)の画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
ここで、第1のガイダンス画像データは、目標設計面と爪先部32Tとの間の第1距離Lfに基づく両者の差分を示す情報と、規制対象と爪先部32Tとの間の第2距離Lpに基づく両者の差分を示す情報とを、例えば、バックホウ、目標設計面、規制対象を模式的に表す絵や、数値等によって表示するための画像データである。
なお、第1のガイダンス画像データは、これらの情報を表示するための画像データだけに限らず、バケット32の傾き(角度情報)等の施工作業を支援する情報であれば他の情報を表示するための画像データを含んでいてもよい。
【0035】
例えば、規制対象と爪先部32Tとの間の距離(第2距離Lp)の閾値である回避閾値Thを設定し、第2距離Lpが回避閾値Th以下となったときに警告メッセージを表示するための画像データを含んでいてもよい。
ここで、回避閾値Thは、例えば、規制対象の種類や構成材料毎に異なる閾値を設定する。規制対象が規制対象物の場合には、例えば、水道管、共同溝、地上施設、地下施設、電線、鉄道構造物等の様々な種類があり、また構成材料によって衝撃耐性、破壊耐性等の耐性が異なるので、例えば、破損や損傷による危険性が高いものほど回避閾値Thを大きな値に設定する。また、規制対象が回避すべき領域の場合は、バックホウ1がこの領域内へと侵入したときの危険度の大きさに応じて、例えば、危険性が高い領域ほど回避閾値Thを大きな値に設定する。
【0036】
一方、画像表示処理部173は、旋回規制制御がOFFからONに設定(旋回規制制御フラグがONに設定)された場合に、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdと、機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、旋回角度センサ75からの旋回角度θtとに基づき、旋回範囲設定案内画像データを生成する。更に、生成した旋回範囲設定案内画像データの画像(以下、「旋回範囲設定案内画像」と記載する)の画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
【0037】
ここで、第1実施形態の旋回範囲設定案内画像データは、実際の位置関係でバックホウ及び規制対象を模式的に表す絵と、旋回範囲手動設定モード及び旋回範囲自動設定モードのいずれか一方を選択するための情報(ボタン画像等)とを表示するための画像データである。
更に、画像表示処理部173は、旋回範囲手動設定モードが設定された場合に、旋回範囲手動設定画像データを生成する。更に、生成した旋回範囲手動設定画像データの画像(以下、「旋回範囲手動設定画像」と記載する)の画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
【0038】
ここで、第1実施形態の旋回範囲手動設定画像データは、旋回範囲設定案内画像の表示内容を一部変更した画像を表示するための画像データであり、旋回範囲を手動設定するための情報と、設定結果の情報とを表示するための画像データである。具体的に、上部旋回体4の360°の旋回角度範囲において、図7(a)に示す、規制領域範囲80を手動設定するための情報(ボタン画像等)を表示するための画像データである。加えて、設定結果を示す情報と、図7(b)に示す、旋回範囲8の旋回初期位置における旋回中心からの移動可能範囲85の情報とを表示するための画像データである。
【0039】
第1実施形態では、規制領域範囲80を手動で設定することで、予め設定された条件に基づき、図7(a)に示す第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bと、通常旋回範囲83とが自動で設定される。これによって、手動設定された規制領域範囲80と、自動設定された第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81B並びに第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bと、自動設定された通常旋回範囲83とを含む旋回範囲8が設定される。なお、上記設定結果を示す情報は、手動設定された規制領域範囲80を示す情報と、この規制領域範囲80を元に自動設定された旋回範囲8を示す情報とを含む。
以下、規制領域範囲80と、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bとを総じて「旋回規制範囲80~82」と略記する。また、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bとを総じて「油圧緩衝範囲81~82」と略記する。
【0040】
なお、規制領域範囲80は、旋回動作を禁止する制御又は旋回速度を制限する制御を行うと共に警報を出力する旋回角度範囲である。第1実施形態では、作業機3が径方向に最長(旋回半径が最大)となる姿勢(図7に示す姿勢)のときに、旋回動作によって、バックホウ1の旋回部(第1実施形態では作業機3及び上部旋回体4)が規制対象を回避不能な旋回位置を含む範囲である。具体的に、規制対象が規制対象物の場合は、バックホウ1の旋回部が規制対象物に衝突する旋回位置を含む範囲であり、規制対象が回避すべき領域又は注意すべき領域の場合は、バックホウ1の旋回部がその領域内に侵入する旋回位置を含む範囲である。
【0041】
第1実施形態では、規制領域範囲80を、旋回禁止範囲とするか又は、規制対象が注意すべき領域の場合に旋回速度を制限する範囲(以下、「油圧制限範囲」と記載する)とすることが可能となっている。なお、第1実施形態では、手動設定時に旋回禁止範囲とするか油圧制限範囲とするかをオペレータが選択できるようになっている。ここで、油圧制限範囲では、旋回動作を停止しない範囲で旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を制限することで旋回速度を制限するようになっている。
また、油圧緩衝範囲81~82は、規制領域範囲80の前後の所定旋回角度範囲において旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量変化を緩和する制御を行う旋回角度範囲である。
即ち、規制領域範囲80を旋回禁止範囲とした場合は、旋回角度θtが油圧緩衝範囲81~82内にあるときに圧油の流量変化を緩和する制御と、上部旋回体4の旋回角度θtが規制領域範囲80内となったときにバックホウ1の旋回部が侵入を続ける方向への旋回動作を禁止する制御とが第1実施形態の旋回規制制御であり、これらの制御を行う機能が上記旋回規制制御機能である。
【0042】
一方、規制領域範囲80を油圧制限範囲とした場合は、旋回角度θtが油圧緩衝範囲81~82内にあるときに圧油の流量変化を緩和する制御と、上部旋回体4の旋回角度θtが規制領域範囲80内となったときに上部旋回体4の旋回速度を制限する制御とが第1実施形態の旋回規制制御であり、これらの制御を行う機能が上記旋回規制制御機能である。
加えて、旋回禁止範囲及び油圧制限範囲の区別無く、旋回角度θtが、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81B、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82B、並びに規制領域範囲80内のうち少なくとも規制領域範囲80内にあるときにバックホウ1の車室内外に警報を出力する制御を行う機能が上記旋回規制制御機能である。
【0043】
また、通常旋回範囲83は、通常の旋回制御を行う旋回角度範囲である。なお、周辺に規制対象が無い施工場所では、通常旋回範囲83のみから旋回範囲8が構成される。
また、移動可能範囲85は、設定された旋回範囲8に対するバックホウ1の後述する旋回規制制御中に移動可能な範囲であり、例えば、旋回初期位置における旋回中心から半径R[m](図7(b)の例では2[m])の範囲となる。
また、画像表示処理部173は、旋回範囲自動設定モードが設定された場合に、自動設定された結果を示す情報を表示するための旋回範囲自動設定画像データを生成する。更に、生成した旋回範囲自動設定画像データの画像(以下、「旋回範囲自動設定画像」と記載する)の画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
ここで、第1実施形態の旋回範囲自動設定画像データは、旋回範囲設定案内画像の表示内容を一部変更した画像を表示するための画像データであり、自動設定された旋回範囲8及び移動可能範囲85を示す情報を表示するための画像データである。
【0044】
更に、画像表示処理部173は、ガイダンスモードが設定されている場合に、3次元設計データDdと、入力された機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、旋回角度θtと、上記旋回範囲8と、上記移動可能範囲85とに基づき、第2のガイダンス画像データを生成する。更に、生成した第2のガイダンス画像データの画像(以下、「第2のガイダンス画像」と記載する)の画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
ここで、第2のガイダンス画像データは、上部旋回体4の旋回位置を示す情報と、旋回範囲8の情報と、移動可能範囲85の情報とを、例えば、バックホウ、規制対象、警報出力状態、旋回範囲8及び移動可能範囲85を模式的に表す絵や、数値等によって表示するための画像データである。
なお、第1のガイダンス画像データ及び第2のガイダンス画像データは、バックホウ1の掘削動作及び旋回動作を検出して自動的に切り替えて表示してもよいし、オペレータが手動で任意に切り替えて表示してもよいし、いずれかを選択可能としてもよい。
【0045】
作業機姿勢算出部174は、機体方位Dと、機体座標(Xm,Ym,Zm)と、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と、第1~第3傾斜角θ1~θ3と、ピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyと、機体2及び作業機3の各種パラメータとに基づき、バックホウ1の作業機3の姿勢及び機体2の姿勢(傾斜状態)を含む作業機姿勢Pmを算出する。作業機姿勢算出部174は、算出した作業機姿勢Pmを、画像表示処理部173及び旋回範囲設定部175にそれぞれ出力する。
ここで、作業機姿勢Pmは、第1のガイダンス画像を表示するための情報であると共に上記旋回規制範囲80~82を設定且つ再設定するための情報である。即ち、作業機姿勢Pmが解れば、機体2及び作業機3の各種パラメータ等から、機体2の傾斜状態や上部旋回体4が旋回したときの例えば図7に示す姿勢での作業機3の最外端の旋回半径等が解る。これらの情報から、上記旋回規制範囲80~82を適切な範囲に設定することが可能である。
【0046】
旋回範囲設定部175は、旋回範囲手動設定モードが設定されている場合に、表示入力装置70dを介して手動設定された第1及び第2旋回角度θt1及びθt2(後述)をRAM又は記憶装置70cから取得する。そして、取得した第1及び第2旋回角度θt1及びθt2と、旋回角度センサ75からの旋回角度θtと、記憶装置70cに記憶された旋回範囲設定用データとに基づき、旋回範囲8を設定する。旋回範囲設定部175は、設定された旋回範囲8の情報を画像表示処理部173に入力すると共に、RAM又は記憶装置70cに記憶する。
【0047】
一方、旋回範囲設定部175は、旋回範囲自動設定モードが設定されている場合に、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdと、入力された機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、旋回角度センサ75からの旋回角度θtと、作業機姿勢算出部174からの作業機姿勢Pmと、記憶装置70cに記憶された旋回範囲設定用データとに基づき旋回範囲8を自動設定する。旋回範囲設定部175は、自動設定した旋回範囲8の情報を画像表示処理部173に入力すると共に、RAM又は記憶装置70cに記憶する。
ここで、旋回範囲設定用データは、旋回規制範囲80~82を示す旋回角度範囲を100[%]としたときの、規制領域範囲80と、油圧緩衝範囲81~82との割合の情報と、移動許可範囲の情報とを含むものである。
【0048】
また、旋回範囲設定部175は、旋回範囲手動設定モードが設定されている場合に、設定された移動可能範囲85の情報と、入力された機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、記憶装置70cに記憶された旋回初期位置の情報(旋回範囲8の旋回中心位置の情報)とに基づき、旋回規制制御時におけるバックホウ1の旋回初期位置からの移動位置が移動可能範囲を越えたか否かを判定する。そして、越えたと判定した場合に、そのことを画像表示処理部173に通知する。
【0049】
画像表示処理部173は、旋回範囲設定部175からの移動可能範囲を越えたことの通知に応じて、バックホウ1の位置を旋回初期位置に戻すか、旋回範囲8を再設定するように指示する案内メッセージ画像を表示入力装置70dに表示する処理を実行する。
第1実施形態では、例えば、図7(b)に示すように、バックホウ1の旋回初期位置における左クローラ装置6L及び右クローラ装置6Rそれぞれの前後方向の端部位置の真下の地面に第1~第4のマークM1~M4のマーキングを行い、これら第1~第4のマークM1~M4を目印としてオペレータの手動運転によってバックホウ1の位置を修正する。
【0050】
更に、旋回範囲設定部175は、旋回範囲手動設定モードが設定されている場合に、作業機姿勢算出部174からの作業機姿勢Pmに基づき、機体2の初期傾斜からの傾斜変化の有無を判定する。そして、傾斜変化があったと判定すると、そのことを画像表示処理部173に通知する。
画像表示処理部173は、旋回範囲設定部175からの傾斜変化が傾斜閾値を越えたことの通知に応じて、旋回範囲8を再設定するように指示する案内メッセージ画像を表示入力装置70dに表示する処理を実行する。
【0051】
また、旋回範囲設定部175は、旋回範囲自動設定モードが設定されている場合に、上記旋回範囲手動設定モードと同様の方法で、旋回規制制御時におけるバックホウ1の移動位置が移動可能範囲85を越えたか否かを判定する。そして、越えたと判定すると、機体方位D、機体座標(Xm,Ym,Zm)、作業機姿勢Pm、旋回角度θt、旋回範囲設定用データ等に基づき、旋回範囲8及び移動可能範囲85を自動で再設定する処理を実行する。
更に、旋回範囲設定部175は、旋回範囲自動設定モードが設定されている場合に、作業機姿勢算出部174からの作業機姿勢Pmに基づき、機体2の初期傾斜からの傾斜変化が予め設定した傾斜閾値以上となったか否かを判定する。そして、傾斜閾値以上になったと判定すると、機体方位D、機体座標(Xm,Ym,Zm)、作業機姿勢Pm、旋回初期位置の情報、旋回角度θt、旋回範囲設定用データ等に基づき、旋回範囲8及び移動可能範囲85を自動で再設定する制御を行う。
【0052】
旋回規制制御部176は、旋回角度センサ75からの旋回角度θtと、RAM又は記憶装置70cに記憶された、現在設定されている旋回範囲8の情報とに基づき、旋回規制制御を実行する。
ここで、第1実施形態では、図7(a)に示すように、油圧緩衝範囲81~82を、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bとの左右旋回方向にそれぞれ応じた2段階の緩衝範囲としている。そして、第1実施形態では、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの開度をA[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの開度をB[%]とした場合に、「0<B<A<100」の関係となるように開度を設定している。
【0053】
そして、第1実施形態の旋回規制制御は、上部旋回体4の旋回角度θtが通常旋回範囲83内のときに、比例電磁弁50の開度を100[%]にする第1の規制制御信号RC1を第2コントローラ20に送信し、旋回角度θtが第1又は第2の油圧緩衝範囲81A又は81B内のときに比例電磁弁50の開度をA[%]にする第2の規制制御信号RC2を第2コントローラ20に送信する制御となる。加えて、旋回角度θtが第3又は第4の油圧緩衝範囲82A又は82B内のときに比例電磁弁50の開度をB[%]にする第3の規制制御信号RC3を第2コントローラ20に送信し、旋回角度θtが規制領域範囲80内となったときに比例電磁弁50の開度を0[%]にする第4の規制制御信号RC4を第2コントローラ20に送信する制御となる。ここで、第1~第4の規制制御信号RC1~RC4は、制御目標値となる各開度の情報を含む信号である。
即ち、第1実施形態では規制領域範囲80では比例電磁弁50の開度を0[%]として旋回動作を強制的に停止し、油圧緩衝範囲81~82では、開度A及びB(B<A)を0[%]と100[%]の間の開度として、通常旋回範囲83から規制領域範囲80までの間の圧油の流量変化を緩和する制御を行う。また、通常旋回範囲83では、開度100[%](規制なし)として、通常の旋回動作を実行可能とする制御を行う。
【0054】
また、第1実施形態では、図7(a)に示すように、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの旋回角度範囲をそれぞれβ1[°]とし、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの旋回角度範囲をそれぞれβ2[°]として、「β1<β2」の関係となるように角度範囲を設定している。
なお、規制領域範囲80の旋回角度範囲をγ[°]、通常旋回範囲83の旋回角度範囲をα[°]とすると、「α=360-2×(β1+β2)+γ」の関係が成立する。
【0055】
即ち、図7(a)に示すように、上部旋回体4が通常旋回範囲83から左旋回した場合は、「通常旋回範囲83→第1の油圧緩衝範囲81A→第3の油圧緩衝範囲82A→規制領域範囲80」の順番で旋回することになる。一方、右旋回した場合は、「通常旋回範囲83→第2の油圧緩衝範囲81B→第4の油圧緩衝範囲82B→規制領域範囲80」の順番で旋回することになる。従って、上部旋回体4が通常旋回範囲83から規制領域範囲80に向かって旋回すると、油圧緩衝範囲81~82にて、100[%]から0[%]に向かって段階的に開度が減少変化することになる。例えば、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの開度を60[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの開度を30[%]に設定したとする。この場合、開度が100[%]→60[%]→30[%]→0[%]の順で変化することになり、従来の100[%]から0[%]へと急変させる場合と比較して開度の変化が緩やかになる。その結果、圧油の流量変化が緩やかになるため、旋回速度の変化が緩やかとなる。
【0056】
一方、第1実施形態の第2コントローラ20は、規制制御信号RCの受信に応じて、受信した規制制御信号RCで特定される開度となる電流量の開度制御信号Octrを生成し、生成した開度制御信号Octrを比例電磁弁50に送信する。
これによって、比例電磁弁50は、受信した開度制御信号Octrの電流量に比例した開度となるように動作し、旋回用油圧モータ51に供給される圧油の流量が開度に応じた量となる。
【0057】
(バックホウ情報算出処理)
次に、図8に基づき、第1実施形態のバックホウ情報算出処理の処理手順を説明する。ここで、バックホウ情報算出処理は、予め設定された周期で繰り返し実行される処理である。
なお、事前に、メモリリーダ70bを介してメモリ媒体から3次元設計データDdが記憶装置70cに読み込まれているものとする。
この状態で第1コントローラ70aのCPUにおいて、制御プログラムが実行されバックホウ情報算出処理が開始されると、図8に示すように、まずステップS100に移行する。
【0058】
ステップS100では、測位情報補正部170において、第1及び第2GNSS受信機71A及び71Bからの第1及び第2測位信号GNSS1及び2と、GNSS基準局からの補正信号CORとに基づき、第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)を算出する。そして、算出した第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)の座標系を、現場座標系に変換してから機体座標算出部171に出力して、ステップS102に移行する。
ステップS102では、機体座標算出部171において、第1及び第2受信機座標(X1,Y1,Z1)及び(X2,Y2,Z2)に基づき、機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)を算出する。そして、算出した機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)を、バケット座標算出部172及び画像表示処理部173にそれぞれ出力して、ステップS104に移行する。
【0059】
ステップS104では、バケット座標算出部172において、機体座標算出部171からの機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、第1~第3角度センサ72A~72Cからの第1~第3傾斜角θ1~θ3と、ジャイロセンサ74からのピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyと、機体2及び作業機3の各種パラメータとに基づきバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を算出する。そして、算出したバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を、画像表示処理部173に出力して、ステップS106に移行する。
ステップS106では、作業機姿勢算出部174において、機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と、第1~第3傾斜角θ1~θ3と、ピッチ角θp、ロール角θr及びヨー角θyと、予めROMに記憶された機体2及び作業機3の各種パラメータとに基づき作業機姿勢Pmを算出する。そして、算出した作業機姿勢Pmを、画像表示処理部173及び旋回範囲設定部175にそれぞれ出力して、一連の処理を終了する。
【0060】
(旋回範囲設定モード設定処理)
次に、図9に基づき、第1実施形態の旋回範囲設定処理の処理手順を説明する。
ここで、旋回範囲設定処理は、旋回規制制御がONのときに実行される処理である。
第1コントローラ70aのCPUにおいて、制御プログラムが実行され旋回範囲設定処理が開始されると、図9に示すように、まずステップS150に移行する。
ステップS150では、画像表示処理部173において、旋回範囲設定関連情報を取得して、ステップS152に移行する。
ここで、旋回範囲設定関連情報は、旋回範囲設定案内画像を表示するのに必要な情報であって、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDd、入力された機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)、記憶装置70cに記憶されたバックホウの画像情報等のその他の表示に必要な画像情報と、旋回角度センサ75からの旋回角度θtとを含む情報である。
【0061】
ステップS152では、画像表示処理部173において、旋回範囲設定関連情報に基づき旋回範囲設定案内画像データを生成し、生成した旋回範囲設定案内画像データの画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。その後、ステップS154に移行する。
これによって、第1実施形態では、例えば図11(a)に示す旋回範囲設定案内画像700が表示入力装置70dに表示される。この旋回範囲設定案内画像700は、バックホウ画像701、CAD画像702、規制対象画像703、GNSS情報画像704、方位磁針画像705、操作ボタン画像706、情報表示枠画像708、終了ボタン画像709、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710及び旋回範囲自動設定開始ボタン画像711を含む画像である。
なお、バックホウ画像701、CAD画像702、規制対象画像703の表示位置は、実際の位置関係に対応した位置となっている。そのため、バックホウ1が移動をすることで、これらの位置関係は更新される。
【0062】
方位磁針画像705は、バックホウ1の備える実際の方位磁針の指し示す方向を示す画像であり、GNSS情報画像704は、第1実施形態では、機体座標(Xm,Ym,Zm)を含む画像である。
情報表示枠画像708は、その枠内に案内メッセージを表示するものであり、図11(a)に示す例では、「旋回範囲の設定方法を選択してください」というメッセージが表示されている。
終了ボタン画像709は、旋回範囲設定処理の終了を選択するための画像であり、オペレータがこの画像の表示位置をタッチパネル越しにタッチすることで旋回範囲設定処理の終了が選択される。
旋回範囲手動設定開始ボタン画像710は、旋回範囲手動設定処理の開始を選択するための画像であり、オペレータがこの画像の表示位置をタッチパネル越しにタッチすることで旋回範囲手動設定処理の開始が選択される。
旋回範囲自動設定開始ボタン画像711は、旋回範囲自動設定処理の開始を選択するための画像であり、オペレータがこの画像の表示位置をタッチパネル越しにタッチすることで旋回範囲自動設定処理の開始が選択される。
【0063】
ステップS154では、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき旋回範囲手動設定開始ボタン画像710がタッチされたか否かを判定する。そして、タッチされたと判定した場合(Yes)は、ステップS156に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS162に移行する。
ステップS156に移行した場合は、画像表示処理部173において、旋回範囲手動設定モードフラグをONに設定して、ステップS158に移行する。具体的に、RAM等のメモリに記憶された旋回範囲手動設定モードフラグの値を例えば「1」に設定する。
ここで、旋回範囲手動設定モードフラグは、旋回範囲手動設定モードが設定されているか否かを示すフラグであり、ONに設定されている場合は、旋回範囲手動設定モードが設定されている状態を示し、OFFに設定されている場合は、旋回範囲手動設定モードが設定されていない状態を示す。
ステップS158では、画像表示処理部173及び旋回範囲設定部175において、旋回範囲手動設定処理を実行して、ステップS160に移行する。
【0064】
ステップS160では、終了ボタン画像709がタッチされたか否かを判定し、タッチされたと判定した場合(Yes)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS154に移行する。
一方、ステップS154において、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710が押されずにステップS162に移行した場合は、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき旋回範囲自動設定開始ボタン画像711がタッチされたか否かを判定する。そして、タッチされたと判定した場合(Yes)は、ステップS164に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS160に移行する。
ステップS164に移行した場合は、画像表示処理部173において、旋回範囲自動設定モードフラグをONに設定して、ステップS166に移行する。具体的に、RAM等のメモリに記憶された旋回範囲自動設定モードフラグの値を例えば「1」に設定する。
ステップS166では、画像表示処理部173及び旋回範囲設定部175において、旋回範囲自動設定処理を実行して、ステップS160に移行する。
【0065】
(旋回範囲手動設定処理)
次に、図10に基づき、第1実施形態の旋回範囲手動設定処理の処理手順を説明する。
ここで、旋回範囲手動設定処理は、旋回範囲手動設定モードフラグがONのときに実行される処理である。
第1コントローラ70aのCPUにおいて、旋回範囲手動設定モードフラグがONに設定され旋回範囲手動設定処理が開始されると、図10に示すように、まずステップS200に移行する。
ステップS200では、画像表示処理部173において、旋回範囲手動設定画像データを生成し、生成した旋回範囲手動設定画像データの画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。その後、ステップS202に移行する。
【0066】
これによって、第1実施形態では、図11(b)に示す旋回範囲手動設定画像730が表示入力装置70dに表示される。この旋回範囲手動設定画像730は、旋回範囲設定案内画像700の一部を変更して、旋回範囲を手動設定するための情報を表示する画像である。図11(b)に示す例では、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710及び旋回範囲自動設定開始ボタン画像711に代えて、規制領域範囲80を手動設定するための旋回角記憶ボタン画像712を含む画像が表示される画像となっている。加えて、情報表示枠画像708の枠内に、旋回範囲設定案内画像700とは異なる案内メッセージが表示される画像となっている。図11(b)に示す例では、「範囲開始位置に旋回後に旋回角記憶ボタンを押して下さい」という案内メッセージが表示された画像となっている。
【0067】
ステップS202では、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき旋回角記憶ボタン画像712がタッチされたか否かを判定する。そして、タッチされたと判定した場合(Yes)は、ステップS204に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、押されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS204に移行した場合は、画像表示処理部173において、旋回角度センサ75からの現在の旋回角度θtを第1旋回角度θt1としてRAM又は記憶装置70cに記憶する。その後、ステップS206に移行する。
ここで、旋回範囲手動設定処理では、オペレータがバックホウ1を操縦して、規制領域範囲80を手動で設定することになる。即ち、オペレータは、施工作業を行う位置にバックホウ1を移動した後に、例えば、図12(a)に示すように、バックホウ1の旋回部(図12(a)の例ではバケット32)が規制対象ESに接触又は侵入する手前まで上部旋回体4を左旋回させる。その後、この旋回位置において、旋回範囲手動設定画像730中の旋回角記憶ボタン画像712をタッチする。これにより、規制領域範囲80の範囲開始位置を設定する。
【0068】
ステップS206では、画像表示処理部173において、情報表示枠画像708内に表示された案内メッセージを、範囲終了位置の設定を催促する内容に変更して、ステップS208に移行する。
具体的に、情報表示枠画像708の枠内に、例えば「範囲終了位置に旋回後に旋回角記憶ボタンを押して下さい」という案内メッセージを表示する。
ステップS208では、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき旋回角記憶ボタン画像712がタッチされたか否かを判定する。そして、タッチされたと判定した場合(Yes)は、ステップS210に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、押されるまで判定処理を繰り返す。
【0069】
ステップS210に移行した場合は、画像表示処理部173において、旋回角度センサ75からの現在の旋回角度θtを第2旋回角度θt2としてRAM又は記憶装置70cに記憶する。その後、ステップS212に移行する。
即ち、オペレータは、規制領域範囲80の範囲開始位置を設定後に、図12(b)に示すように、バックホウ1の旋回部(図12(b)の例ではバケット32)が規制対象ESに接触又は侵入する手前まで上部旋回体4を右旋回させる。その後、この旋回位置において、旋回範囲手動設定画像730中の旋回角記憶ボタン画像712をタッチする。これにより、規制領域範囲80の範囲終了位置を設定する。
ステップS212では、画像表示処理部173において、規制領域範囲80の設定範囲の是非を確認するためのメッセージ及び設定結果を示す画像を表示して、ステップS214に移行する。
【0070】
第1実施形態では、図13(a)に示すように、旋回範囲手動設定画像730中に手動設定された規制領域範囲80を示す画像である規制領域範囲画像801を表示し、情報表示枠画像708の枠内に「規制領域範囲はこれでよろしいですか?」というメッセージを表示する。
なお、是非を確認するメッセージへの応答をするにあたって、第1実施形態では、旋回角記憶ボタン画像712に代えて、「はい」という文字画像を含む肯定ボタン画像713と、「いいえ」という文字画像を含む否定ボタン画像714とを表示する。そして、オペレータが、肯定ボタン画像713をタッチすることで、「はい」が選択され、否定ボタン画像714をタッチすることで、「いいえ」が選択されるように構成している。
【0071】
ステップS214では、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき「はい」が選択されたか否かを判定する。そして、「はい」が選択されたと判定した場合(Yes)は、その旨を旋回範囲設定部175に通知して、ステップS216に移行し、そうでない(「いいえ」が選択された)と判定した場合(No)は、ステップS200に移行する。
ステップS216に移行した場合は、画像表示処理部173において、規制領域範囲80の設定範囲での規制内容を設定するためのメッセージ画像を表示して、ステップS218に移行する。
第1実施形態では、図示省略するが、「規制領域範囲での旋回を禁止しますか?」というメッセージを表示する。加えて、肯定ボタン画像713と否定ボタン画像714とを表示する。
【0072】
ステップS218では、画像表示処理部173において、表示入力装置70dからの入力情報に基づき「はい」が選択されたか否かを判定する。そして、「はい」が選択されたと判定した場合(Yes)は、その旨を旋回範囲設定部175に通知して、ステップS220に移行し、そうでない(「いいえ」が選択された)と判定した場合(No)は、その旨を旋回範囲設定部175に通知して、ステップS222に移行する。
【0073】
ここで、第1実施形態では、規制領域範囲に含まれる規制対象が、物理的構造物であって旋回を物理的に妨げる物体である場合や、旋回可能な領域であっても3次元設計データDd上で予め旋回禁止に設定されている場合は、否定ボタン画像714を選択できないように構成されている。従って、オペレータは、強制的に「はい」を選択することになる。なお、この場合に、選択肢自体を表示せずに(ステップS218を素通りして)、ステップS220に移行する構成としてもよい。
ステップS220に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、旋回禁止の条件が成立したと判定し、規制領域範囲80を旋回禁止範囲に設定して、ステップS224に移行する。具体的に、第1実施形態では、予め設定された旋回禁止フラグをONに設定する。この設定情報は、RAM又は記憶装置70cに記憶される。
【0074】
一方、ステップS222に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、旋回禁止の条件が成立しなかったと判定し、規制領域範囲80を油圧制限範囲に設定して、ステップS224に移行する。具体的に、第1実施形態では、旋回禁止フラグをOFFに設定する。この設定情報は、RAM又は記憶装置70cに記憶される。
ステップS224では、旋回範囲設定部175において、RAM又は記憶装置70cに記憶された第1及び第2旋回角度θt1及びθt2と、記憶装置70cに記憶された旋回範囲設定用データとに基づき旋回範囲8及び移動可能範囲85を設定する。その後、旋回範囲8及び移動可能範囲85の情報をRAM又は記憶装置70cに記憶すると共に、記憶したことを画像表示処理部173に通知して、ステップS226に移行する。
【0075】
ここで、旋回範囲設定用データでは、規制領域範囲80と、規制領域範囲80に隣接する第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bに隣接する第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bとの割合が設定されている。従って、規制領域範囲80が決まれば、計算によって油圧緩衝範囲81~82も決定することができる。同様に通常旋回範囲83も計算によって決定することが可能である。即ち、360[°]の旋回範囲のうち、旋回規制範囲80~82を除く範囲が通常旋回範囲83となる。これによって、例えば、図12(c)に示すように旋回範囲8が設定される。
【0076】
ステップS226では、旋回範囲設定部175において、旋回初期位置の情報及び初期の作業機姿勢PmをRAM又は記憶装置70cに記憶して、ステップS220に移行する。
ステップS220では、画像表示処理部173において、設定された旋回範囲8及び移動可能範囲85の情報を示す画像を表示して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、図13(b)に示すように、旋回範囲手動設定画像730中に設定された旋回範囲8を示す画像である旋回範囲画像800と、設定された移動可能範囲85を示す画像である移動可能範囲画像850とを表示する。
ここで、旋回範囲画像800は、規制領域範囲画像801と、第1及び第2の油圧緩衝範囲画像802A及び802Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲画像803A及び803Bと、通常旋回範囲画像804とを含む画像である。
【0077】
(旋回範囲自動設定処理)
次に、図14に基づき、第1実施形態の旋回範囲自動設定処理の処理手順を説明する。
ここで、旋回範囲自動設定処理は、旋回範囲自動設定モードフラグがONのときに実行される処理である。
第1コントローラ70aのCPUにおいて、旋回範囲自動設定モードフラグがONに設定され旋回範囲自動設定処理が開始されると、図14に示すように、まずステップS300に移行する。
ステップS300では、旋回範囲設定部175において、旋回範囲自動設定関連情報を取得して、ステップS302に移行する。
ここで、旋回範囲自動設定関連情報は、旋回範囲自動設定処理を実行するのに必要な情報であって、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDd、現在の機体方位D、現在の機体座標(Xm,Ym,Zm)、旋回範囲設定用データ及びバックホウの画像情報等の設定結果の表示に必要な画像情報を含む情報である。加えて、旋回角度センサ75からの旋回角度θtと、作業機姿勢算出部174からの作業機姿勢Pmとを含む情報である。
【0078】
ステップS302では、旋回範囲設定部175において、ステップS300で取得した旋回範囲自動設定関連情報に基づきバックホウ1と規制対象との位置関係を計算して、ステップS304に移行する。
ここでは、バックホウ1の予め設定された姿勢(第1実施形態では図13等に示す姿勢)での旋回動作に対する、規制対象との位置関係を計算によって求める。
ステップS304では、旋回範囲設定部175において、ステップS302で計算した位置関係に基づき、規制領域範囲80を設定してステップS306に移行する。
【0079】
例えば、回避閾値Thを用いて、旋回動作を行った際のバックホウ1の旋回部と規制対象との間の距離が少なくとも回避閾値Thよりも長くなる旋回位置を、規制領域範囲80の範囲開始位置及び範囲終了位置として設定する。
なお、第1実施形態では、自動設定時用に規制対象に対して予め旋回禁止範囲又は油圧制限範囲が設定されており、旋回範囲自動設定処理では、この設定情報に基づき規制領域範囲80を旋回禁止範囲(旋回禁止フラグをON)又は油圧制限範囲(旋回禁止フラグをOFF)のいずれかに設定するように構成されている。この構成に限らず、手動設定時と同様に、規制領域範囲80を旋回禁止範囲に設定するか否かをオペレータが選択可能な構成としてもよい。
【0080】
ステップS306では、旋回範囲設定部175において、ステップS304で設定された規制領域範囲80と旋回範囲設定用データとに基づき、油圧緩衝範囲81~82を設定する。その後、ステップS308に移行する。
油圧緩衝範囲81~82の設定は、旋回範囲手動設定処理のときと同様となる。
ステップS308では、旋回範囲設定部175において、ステップS306の油圧緩衝範囲81~82の設定結果に基づき通常旋回範囲83を設定し、ステップS310に移行する。即ち、旋回範囲360[°]における規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82以外の範囲を通常旋回範囲83として設定する。
【0081】
ステップS310では、旋回範囲設定部175において、現在の機体座標(Xm,Ym,Zm)と旋回範囲設定用データとに基づき、移動可能範囲85を設定する。その後、ステップS312に移行する。
ステップS312では、旋回範囲設定部175において、旋回初期位置の情報及び初期の作業機姿勢PmをRAM又は記憶装置70cに記憶して、ステップS314に移行する。
ステップS314では、画像表示処理部173において、設定された旋回範囲8及び移動可能範囲85の情報を示す画像を表示して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、図13(b)に示す旋回範囲手動設定画像730と同様に、表示入力装置70dに、設定された旋回範囲8を示す画像である旋回範囲画像800と、設定された移動可能範囲85を示す画像である移動可能範囲画像850とを含む旋回範囲自動設定画像(図示略)を表示する。
【0082】
(旋回規制制御処理)
次に、図15に基づき、第1実施形態の旋回規制制御処理の処理手順を説明する。
第1コントローラ70aのCPUにおいて、旋回規制制御処理が開始されると、図15に示すように、まずステップS400に移行する。
ステップS400では、旋回規制制御部176において、旋回規制制御フラグがONに設定されているか否かを判定する。そして、ONに設定されていると判定した場合(Yes)は、ステップS402に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS402に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、旋回範囲修正処理を実行して、ステップS404に移行する。
ステップS404では、旋回規制制御部176において、旋回規制警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
【0083】
(旋回範囲修正処理)
次に、図16に基づき、第1実施形態の旋回範囲修正処理の処理手順を説明する。
上記ステップS402において、旋回範囲修正処理が開始されると、図16に示すように、まずステップS500に移行する。
ステップS500では、旋回範囲設定部175において、RAM又は記憶装置70cから最新の作業機姿勢Pm及び機体座標(Xm,Ym,Zm)を取得して、ステップS502に移行する。
ステップS502では、旋回範囲設定部175において、記憶装置70cに記憶された初期の作業機姿勢Pmと、ステップS500で取得した最新の作業機姿勢とに基づき、機体2の初期傾斜と現在の傾斜との差分である傾斜差を算出する。その後、ステップS504に移行する。
【0084】
ステップS504では、旋回範囲設定部175において、ステップS502で算出した傾斜差と記憶装置70cに予め記憶された傾斜閾値とを比較して、ステップS506に移行する。
ステップS506では、旋回範囲設定部175において、記憶装置70cに記憶された旋回初期位置と、現在のバックホウ1の位置(機体座標(Xm,Ym,Zm))とに基づき両者の直線距離である移動距離を算出する。その後、ステップS508に移行する。
ステップS508では、旋回範囲設定部175において、ステップS506で算出した移動距離と記憶装置70cに予め記憶された移動閾値(半径Rに相当)とを比較して、ステップS510に移行する。
【0085】
ステップS510では、旋回範囲設定部175において、ステップS504及びS508の比較結果に基づき、傾斜差又は移動距離のうち少なくとも一方は閾値以上であるか否かを判定する。そして、閾値以上であると判定した場合(Yes)は、ステップS512に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS512に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、RAMに記憶された旋回範囲手動設定モードフラグに基づき、旋回範囲手動設定モードが設定されているか否かを判定する。そして、設定されていると判定した場合(Yes)は、ステップS514に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS518に移行する。
ステップS514に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、不図示の音響装置に警報の出力指令を送信して、ステップS516に移行する。ここで、音響装置は、警報音や音声メッセージを不図示のスピーカを介して出力することが可能である。
【0086】
ステップS516では、旋回範囲設定部175において、画像表示処理部173に、指示メッセージの表示指示を出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
一方、ステップS512において、旋回範囲手動設定モードが設定されておらずにステップS518に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、RAMに記憶された旋回範囲自動設定モードフラグに基づき、旋回範囲自動設定モードが設定されているか否かを判定する。そして、設定されていると判定した場合(Yes)は、ステップS520に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS520に移行した場合は、旋回範囲設定部175において、旋回範囲8及び移動可能範囲85を再設定する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
【0087】
(旋回規制警報処理)
次に、図17に基づき、第1実施形態の旋回規制警報処理の処理手順を説明する。
上記ステップS404において、旋回規制警報処理が開始されると、図17に示すように、まずステップS600に移行する。
ステップS600では、旋回規制制御部176において、旋回角度センサ75からの旋回角度θtを取得して、ステップS602に移行する。
ステップS602では、旋回規制制御部176において、ステップS600で取得した旋回角度θtが、通常旋回範囲83内か否かを判定する。そして、通常旋回範囲83内であると判定した場合(Yes)は、ステップS604に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS606に移行する。
【0088】
ステップS604に移行した場合は、旋回規制制御部176において、開度100[%]の情報を含む第1の規制制御信号RC1を第2コントローラ20に送信して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。また、警報出力状態である場合は、点灯スイッチをOFFにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、警報停止信号を第1外部警報機91に送信する。これにより、内部警報機90は、点灯スイッチをOFF状態にして回転灯への電源供給を遮断し回転灯の作動を停止する。加えて、第1外部警報機91は、警告メッセージの音声出力を停止する。
【0089】
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの第1の規制制御信号RC1を受信すると、受信した第1の規制制御信号RC1に含まれる開度100[%]の情報に基づき、比例電磁弁50の開度を100[%]とする電流量の開度制御信号Octrを生成する。そして、生成した開度制御信号Octrを比例電磁弁50に出力する。
これにより、比例電磁弁50の開度が100[%]となり、圧油が最大流量で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、旋回用油圧モータ51が、供給された圧油の流量に応じた回転速度で回転し、上部旋回体4が旋回用油圧モータ51の回転速度に応じた旋回速度で旋回する。
【0090】
一方、ステップS602において旋回角度θtが通常旋回範囲83内になくステップS606に移行した場合は、旋回規制制御部176において、ステップS600で取得した旋回角度θtが、第1の油圧緩衝範囲81A又は第2の油圧緩衝範囲81B内か否かを判定する。そして、第1の油圧緩衝範囲81A又は第2の油圧緩衝範囲81B内であると判定した場合(Yes)は、ステップS608に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS614に移行する。
ステップS608に移行した場合は、旋回規制制御部176において、開度A[%]の情報を含む第2の規制制御信号RC2を第2コントローラ20に送信して、ステップS610に移行する。
【0091】
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの第2の規制制御信号RC2を受信すると、受信した第2の規制制御信号RC2に含まれる開度A[%]の情報に基づき、比例電磁弁50の開度をA[%]とする電流量の開度制御信号Octrを生成する。そして、生成した開度制御信号Octrを比例電磁弁50に出力する。
これにより、比例電磁弁50の開度が100[%]からA[%](例えば60[%])となり、圧油が開度A[%]に応じた流量(開度100[%]のときよりも少ない流量)で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、旋回用油圧モータ51が、供給された圧油の流量に応じた回転速度で回転し、上部旋回体4が旋回用油圧モータ51の回転速度に応じた旋回速度(開度100[%]のときよりも遅い旋回速度)で旋回する。
【0092】
ステップS610では、旋回規制制御部176において、旋回禁止フラグがON状態であるか否かを判定し、ON状態であると判定した場合(Yes)は、ステップS612に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS612に移行した場合は、旋回規制制御部176において、第1警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、第1警報処理として、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、第1警報信号AS1を第1外部警報機91に送信する処理を実行する。
【0093】
これによって、内部警報機90は、点灯スイッチをON状態にして回転灯に電源を供給し回転灯を回転且つ点灯作動させる。なお、回転灯の作動に加えて、車室内の音響装置(不図示)にて音声による警告やブザーによる警告音等を出力するようにしてもよい。
また、第1外部警報機91は、第1コントローラ70aからの第1警報信号AS1を受信すると、記憶装置から第1警報信号AS1に対応する第1警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第1警告メッセージを音声メッセージとして出力する。以下、警告メッセージの音声メッセージを「警告音声メッセージ」と称す。
【0094】
一方、ステップS606において旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A又は第2の油圧緩衝範囲81B内になくステップS614に移行した場合は、旋回規制制御部176において、ステップS600で取得した旋回角度θtが、第3の油圧緩衝範囲82A又は第4の油圧緩衝範囲82B内か否かを判定する。そして、第3の油圧緩衝範囲82A又は第4の油圧緩衝範囲82B内であると判定した場合(Yes)は、ステップS616に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS624に移行する。
ステップS616に移行した場合は、旋回規制制御部176において、開度B[%]の情報を含む第3の規制制御信号RC3を第2コントローラ20に送信して、ステップS618に移行する。
【0095】
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの第3の規制制御信号RC3を受信すると、受信した第3の規制制御信号RC3に含まれる開度B[%]の情報に基づき、比例電磁弁50の開度をB[%]とする電流量の開度制御信号Octrを生成する。そして、生成した開度制御信号Octrを比例電磁弁50に出力する。
これにより、比例電磁弁50の開度がA[%]からB[%](例えば30[%])となり、圧油が開度B[%]に応じた流量(開度A[%]のときよりも少ない流量)で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、旋回用油圧モータ51が、供給された圧油の流量に応じた回転速度で回転し、上部旋回体4が旋回用油圧モータ51の回転速度に応じた旋回速度(開度A[%]のときよりも遅い旋回速度)で旋回する。
【0096】
ステップS618では、旋回規制制御部176において、旋回禁止フラグがON状態であるか否かを判定し、ON状態であると判定した場合(Yes)は、ステップS620に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS620に移行した場合は、旋回規制制御部176において、第2警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、第2警報処理として、第2警報信号AS2を外部警報機91に送信する処理を実行する。なお、内部警報機90の回転灯は、点灯スイッチをOFFにする警報出力指令信号Wdを受信するまで作動状態を維持する。
これによって、第1外部警報機91は、第1コントローラ70aからの第2警報信号AS2を受信すると、記憶装置から第2警報信号AS2に対応する第2警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第2警告音声メッセージを出力する。即ち、出力する警告音声メッセージを第1警告音声メッセージから第2警告音声メッセージへと切り替える。
【0097】
また、ステップS618において、旋回禁止フラグがON状態ではなくステップS622に移行した場合は、旋回規制制御部176において、第4警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、第4警報処理として、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、第4警報信号AS4を外部警報機91に送信する処理を実行する。
これによって、内部警報機90は、回転灯に電源を供給して回転灯を回転且つ点灯作動させる。
また、第1外部警報機91は、第4警報信号AS4を受信すると、記憶装置から第4警報信号AS4及び規制対象領域の種類に対応する第4警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第4警告音声メッセージを出力する。
【0098】
また、ステップS614において旋回角度θtが第3の油圧緩衝範囲82A又は第4の油圧緩衝範囲82B内になく規制領域範囲80内にあると判定してステップS624に移行した場合は、旋回規制制御部176において、旋回禁止フラグがON状態であるか否かを判定する。そして、ON状態であると判定した場合(Yes)は、ステップS626に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS630に移行する。
ステップS626に移行した場合は、旋回規制制御部176において、開度0[%]の情報を含む第4の規制制御信号RC4を第2コントローラ20に送信して、ステップS628に移行する。
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの第4の規制制御信号RC4を受信すると、受信した第3の規制制御信号RC3に含まれる開度0[%]の情報に基づき、比例電磁弁50の開度を0[%]にすべく開度制御信号Octrの出力を停止する。
これにより、比例電磁弁50の開度がB[%]から0[%]となり、旋回用油圧モータ51に対する圧油の供給が停止される。その結果、旋回用油圧モータ51が停止し、上部旋回体4の旋回動作も停止する。
【0099】
ステップS628では、旋回規制制御部176において、第3警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、第3警報処理として、第3警報信号AS3を外部警報機91に送信する処理を実行する。
これによって、第1外部警報機91は、第3警報信号AS3を受信すると、記憶装置から第3警報信号AS3に対応する第3警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第3警告音声メッセージを出力する。即ち、出力する警告音声メッセージを第2警告音声メッセージから第3警告音声メッセージへと切り替える。
【0100】
また、ステップS624において旋回禁止フラグがON状態ではなくステップS630に移行した場合は、旋回規制制御部176において、開度C[%](0<C≦B)の情報を含む第4の規制制御信号RC5を第2コントローラ20に送信して、ステップS632に移行する。
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの第5の規制制御信号RC5を受信すると、受信した第5の規制制御信号RC5に含まれる開度C[%]の情報に基づき、比例電磁弁50の開度をC[%]とする電流量の開度制御信号Octrを生成する。そして、生成した開度制御信号Octrを比例電磁弁50に出力する。
これにより、比例電磁弁50の開度がB[%]からC[%](例えば20[%])となり、圧油が開度C[%]に応じた流量(開度B[%]のときよりも少ない流量)で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、旋回用油圧モータ51が、供給された圧油の流量に応じた回転速度で回転し、上部旋回体4が旋回用油圧モータ51の回転速度に応じた旋回速度(開度B[%]のときよりも遅い旋回速度)で旋回する。なお、開度C[%]は開度B[%]と同じとしてもよい。
【0101】
ステップS632では、旋回規制制御部176において、第5警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第1実施形態では、第5警報処理として、第5警報信号AS5を外部警報機91に送信する処理を実行する。
これによって、第1外部警報機91は、第5警報信号AS5を受信すると、記憶装置から第5警報信号AS5及び規制対象領域の種類に対応する第5警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第5警告音声メッセージを出力する。即ち、出力する警告音声メッセージを第4警告音声メッセージから第5警告音声メッセージへと切り替える。
なお、内部警報機90の回転灯は、点灯スイッチをOFFにする警報出力指令信号Wdを受信するまで作動状態を維持する。
【0102】
また、第1実施形態において、第1~第3警告メッセージは規制対象の種類に係わらず共通であるが、第4及び第5警告メッセージは、規制対象領域の種類に応じて複数種類のメッセージが用意されている。なお、この構成に限らず、第1~第3警告メッセージも規制対象の種類に応じて複数種類のメッセージを用意してもよいし、または第4及び第5警告メッセージを共通のメッセージとしてもよい。
また、第1及び第2警告メッセージ並びに第4警告メッセージは、旋回部が規制対象領域に到達する前に出力される予備的且つ補助的なメッセージであり、事前の注意喚起などの役割を有する。
【0103】
(動作)
次に、図1図17を参照しつつ図18図23に基づき、第1実施形態に係るバックホウ1の動作を説明する。
施工作業を行う施工現場において、バックホウ1の動力源40が始動すると、油圧ポンプ41が作動を開始して各油圧アクチュエータが作動待機状態に移行する。一方、動力源40の始動に応じて、コントロールボックス70を含む各種車載電気装置に電力が供給される。これによって、コントロールボックス70の第1コントローラ70aにおいて制御プログラムが実行され、予め設定された周期でバックホウ情報算出処理が繰り返し実行される。これにより、第1コントローラ70aは、予め設定された周期で、機体方位D、機体座標(Xm,Ym,Zm)、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)及び作業機姿勢Pmを取得可能となる。加えて、表示入力装置70dに初期画面を表示する処理が行われる。これにより、表示入力装置70dに初期画面が表示される。
ここで、初期画面には、3次元設計データの取り込み指示を示すメッセージ画像と取り込み指示ボタン画像(図示省略)とが表示されていることとする。
【0104】
バックホウ1を運転して施工作業を行うオペレータは、まず、メッセージ画像の案内に従って、運転室5の内部5iに設置されたコントロールボックス70のメモリリーダ70bの挿入部に3次元設計データの記憶されたメモリ媒体を挿入する。そして、表示入力装置70dを介して取り込み指示ボタン画像をタッチする(画像上をタッチする)。これにより、第1コントローラ70aは、メモリリーダ70bを介してメモリ媒体に記憶された3次元設計データDdを記憶装置70cに取り込む。
なお、3次元設計データDdが既に記憶装置70cに取り込まれている場合は、3次元設計データDdの一覧から目的のデータを選択する処理となる。
ここで、3次元設計データDdは、外部のPCにおいて、予め作成された基本設計データに含まれる、例えば、図6に示すような平面図400のデータ、基準点データ及び変化点データと、事前に用意された規制対象の各種データとに基づき事前に作成されるものである。
【0105】
第1コントローラ70aは、3次元設計データDdを取り込むと、表示入力装置70dに、旋回規制制御の設定ボタン画像と、マシンガイダンス処理の開始指示ボタン画像とが表示される(図示省略)。
そして、オペレータが、表示入力装置70dを介して旋回規制制御の設定ボタン画像をタッチすることで、まず、旋回規制制御のON/OFFを設定するボタン画像が表示される(図示省略)。引き続き、オペレータが、表示入力装置70dを介して旋回規制制御をONに設定する設定ボタン画像をタッチすることで、旋回規制制御フラグがONに設定されると共に旋回範囲設定モード設定処理が開始される。なお、第1実施形態において、旋回規制制御はデフォルトではOFFに設定されていることとする。
これにより、第1コントローラ70aは、表示入力装置70dに、例えば、図11(a)に示すような旋回範囲設定案内画像700を表示する。オペレータは、画面の案内に従って、ここでは、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710をタッチしたとする。
【0106】
旋回範囲手動設定開始ボタン画像710がタッチされたことにより、第1コントローラ70aは、旋回範囲手動設定モードフラグをONに設定すると共に旋回範囲手動設定処理を開始して、表示入力装置70dに、例えば、図11(b)に示すような旋回範囲手動設定画像730を表示する。このとき、旋回範囲手動設定画像730の情報表示枠画像708の枠内には、初期の表示内容として「バックホウを施工開始位置に移動して下さい」等のバックホウ1を施工作業の開始位置まで移動させるメッセージが表示されているとする。
【0107】
オペレータは、画面の案内に従って、バックホウ1の各種操作レバーを操作して、バックホウ1を施工作業の開始位置まで移動する。その後、開始位置が確定すると、第1コントローラ70aは、情報表示枠画像708の枠内に、図11(b)に示すメッセージを表示する。図11(b)の例では、バックホウ1の旋回範囲に、規制対象画像703で示される規制対象の地上構造物が存在するため、オペレータは、バックホウ1の旋回用の操作レバーを操作して、例えば図12(a)に示すように、バックホウ1の上部旋回体4を規制領域範囲80の範囲開始位置まで旋回させる。その後、旋回角記憶ボタン画像712をタッチする。これにより、範囲開始位置を示す第1旋回角度θt1が第1コントローラ70aのRAMに記憶される。
【0108】
引き続き、第1コントローラ70aは、情報表示枠画像708の枠内に、規制領域範囲80の範囲終了位置を設定する案内メッセージを表示する。オペレータは、画面の案内に従って、バックホウ1の旋回用の操作レバーを操作して、例えば図12(b)に示すように、バックホウ1の上部旋回体4を規制領域範囲80の範囲終了位置まで旋回させる。その後、旋回角記憶ボタン画像712をタッチする。これにより、範囲終了位置を示す第2旋回角度θt2が第1コントローラ70aのRAMに記憶される。
第1及び第2旋回角度θt1及びθt2をRAMに記憶すると、第1コントローラ70aは、第1及び第2旋回角度θt1及びθt2に基づき、情報表示枠画像708の枠内に、図13(a)に示すように、「規制領域範囲はこれでよろしいですか?」のメッセージと、肯定ボタン画像713と、否定ボタン画像714とを表示する。ここで、オペレータは、肯定ボタン画像713をタッチしたとする。
【0109】
これにより、第1コントローラ70aは、第1旋回角度θt1~第2旋回角度θt2の範囲を規制領域範囲80として設定する。
引き続き、第1コントローラ70aは、3次元設計データDdから規制対象が規制対象物(例えば地上構造物)であることが解るため、情報表示枠画像708の枠内に、「規制領域範囲での旋回を禁止しますか?」のメッセージと、肯定ボタン画像713と、選択不可を示す表示形態(例えば反転表示)の否定ボタン画像714とを表示する。従って、オペレータは、肯定ボタン画像713をタッチすることになる。
【0110】
第1コントローラ70aは、肯定ボタン画像713がタッチされると、旋回禁止フラグをONに設定する。続いて、設定した規制領域範囲80の情報及び旋回禁止フラグの情報と、記憶装置70cに記憶された旋回範囲設定用データとに基づき、例えば図12(c)に示すように、油圧緩衝範囲81~82と、通常旋回範囲83と、移動可能範囲85とを設定する。
ここで、旋回範囲設定用データによって、旋回規制範囲80~82の全体の旋回角度範囲を100[%]として、規制領域範囲80の割合が50[%]、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの割合が20[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの割合が30[%]にそれぞれ設定されていることとする。
【0111】
加えて、旋回範囲設定用データによって、規制領域範囲80の開度が0[%]、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの開度Aが60[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの開度Bが30[%]、通常旋回範囲83の開度が100[%]にそれぞれ設定されていることとする。
更に、旋回範囲設定用データによって、移動可能範囲85を設定するための半径Rとして2[m]が設定されていることとする。
以上のことから、規制領域範囲80の旋回角度範囲が、例えば80[°]であった場合、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの旋回角度範囲β1はそれぞれ16[°]に、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの旋回角度範囲β2はそれぞれ24[°]に設定される。また、旋回規制範囲80~82が160[°]となるので、通常旋回範囲83の旋回角度範囲αは200[°]に設定される。
【0112】
但し、これらは、旋回角度範囲の割合であって、図12(a)に示す旋回角度の基準位置(0[°]、90[°]、180[°]、270[°])が設定されている場合は、この基準位置に応じた角度範囲となる。即ち、第1及び第2旋回角度θt1及びθt2が310[°]及び230[°]である場合は、例えば、231[°]~310[°]の範囲が規制領域範囲80となり、311[°]~334[°]の範囲が第3の油圧緩衝範囲82Aとなり、335[°]~350[°]の範囲が第1の油圧緩衝範囲81Aとなる。また、例えば、191[°]~206[°]の範囲が第2の油圧緩衝範囲81Bとなり、207[°]~230[°]の範囲が第4の油圧緩衝範囲82Bとなる。
このようにして、旋回範囲8及び移動可能範囲85が設定されると、第1コントローラ70aは、現在の機体座標(Xm,Ym,Zm)を旋回初期位置として記憶装置70cに記憶し、現在の作業機姿勢Pmを初期傾斜として記憶装置70cに記憶する。
【0113】
更に、第1コントローラ70aは、図13(b)に示すように、旋回範囲手動設定画像730内に、設定結果を示す旋回範囲画像800及び移動可能範囲画像850を表示する。加えて、第1コントローラ70aは、旋回範囲手動設定画像730内に、肯定ボタン画像713及び否定ボタン画像714に代えて、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710及び旋回範囲自動設定開始ボタン画像711を表示する。
オペレータは、旋回範囲画像800及び移動可能範囲画像850に問題が無いと判断すると、終了ボタン画像709をタッチする。一方、問題があって再設定したい場合は、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710又は旋回範囲自動設定開始ボタン画像711をタッチする。
ここでは、設定内容に問題が無く終了ボタン画像709がタッチされたこととする。これによって、第1コントローラ70aは、設定された旋回範囲8及び移動可能範囲85に基づき旋回規制制御を実行する。加えて、表示入力装置70dに、旋回規制制御の設定ボタン画像と、マシンガイダンス処理の開始指示ボタン画像とを表示する(図示省略)。
【0114】
引き続き、オペレータが、マシンガイダンス処理の開始指示ボタン画像をタッチしたことに応じて、第1コントローラ70aは、ガイダンスモードへ移行して、マシンガイダンス処理を実行する。
旋回規制制御フラグがONに設定されている場合のガイダンスモードでは、バックホウ1の操作内容に応じて、図18に示す第1のガイダンス画像200と、図19に示す第2のガイダンス画像750とが適宜切り換えて表示される。ここでは、作業機3を操作して切土、盛土、掘削等の作業を行っているときは第1のガイダンス画像200を表示し、バックホウ1を旋回操作して上部旋回体4を旋回動作させているときは第2のガイダンス画像750を表示することとする。
【0115】
第1コントローラ70aは、ガイダンスモードでは、バックホウ情報算出処理によって取得された最新の機体座標(Xm,Ym,Zm)、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)及び作業機姿勢Pm、旋回角度センサ75からの旋回角度θt等に基づき、第1及び第2のガイダンス画像200及び750の表示情報を更新する。
具体的に、第1コントローラ70aは、3次元設計データDdに含まれる目標設計面の3次元座標と、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)とに基づき、目標設計面とバケット32の爪先部32Tとの間の距離である第1距離Lfを算出する。更に、3次元設計データDdに含まれる規制対象の3次元座標と、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)とに基づき、規制対象と爪先部32Tとの間の距離である第2距離Lpを算出する。
【0116】
続いて、第1距離Lf及び第2距離Lpと、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)と、機体方位D及び機体座標(Xm,Ym,Zm)と、3次元設計データDdとに基づき、第1のガイダンス画像データを生成する。そして、生成した第1のガイダンス画像データの画像を表示するための画像表示信号を表示入力装置70dに出力する。
これにより、表示入力装置70dには、例えば、図18に示すような第1のガイダンス画像200が表示される。この第1のガイダンス画像200は、バックホウ1や施工現場を側方から見た2次元のガイダンス画像である。この第1のガイダンス画像200は、バックホウ1を模式的に示したバックホウ画像201と、目標設計面を模式的に示した設計面画像202と、最寄りの規制対象を模式的に示した規制対象画像203とを含んでいる。加えて、第1距離Lfの数値を示す第1距離画像205と、第2距離Lpの数値を示す第2距離画像207とを含んでいる。
上記一連の処理は、所定サンプリング周期毎に繰り返し実行され、オペレータが各種操作レバーを操作して爪先部32Tの座標位置が変わることに応じて第1のガイダンス画像200の内容が変化する。
【0117】
オペレータは、第1のガイダンス画像200を見ることで、爪先部32Tと目標設計面との距離、爪先部32Tと規制対象物(ここでは、地下埋設管とする)との距離を把握して、目標設計面から逸脱しないように、かつ規制対象物を破損しないように各種操作レバーを操作して施工作業を行う。
一方、第1コントローラ70aは、第2距離Lpが地下埋設管に対して設定された回避閾値Th未満であるか否かを判定する。そして、第2距離Lpが回避閾値Th未満になったと判定すると、表示入力装置70dに警告メッセージを表示すると共に、不図示の音響装置に警報音や音声メッセージを不図示のスピーカを介して出力させる。
更に、第1コントローラ70aは、バックホウ情報算出処理によって取得された最新の機体座標(Xm,Ym,Zm)、旋回角度センサ75からの旋回角度θt等に基づき、バックホウ1の機体座標(Xm,Ym,Zm)及び旋回位置を監視し、機体座標(Xm,Ym,Zm)や、旋回位置が変化したことに応じて、第2のガイダンス画像データを更新する。
【0118】
ここで、第2のガイダンス画像750は、図19に示すように、基本構成は、図13(b)に示す、旋回範囲手動設定画像730と同様となる。異なるのは、情報表示枠画像708内の表示内容と、バックホウ画像701の表示内容がバックホウ1の移動や旋回動作に応じて変化する点となる。
即ち、情報表示枠画像708内に、旋回規制制御が実施され且つ警報出力が行われていることを示すメッセージである「旋回規制制御中(警報出力中)!」と、バックホウ1の現在の旋回角度θtの情報(330[°])と、比例電磁弁50の現在の開度の情報(30[%])とが表示される。旋回角度θtの情報と、開度の情報とは、実際のバックホウ1の旋回角度θtと実際の比例電磁弁50の開度とに対応しており、実際の旋回角度θt及び開度が変化することで表示内容も変化するようになっている。バックホウ画像701の表示内容についても、実際の機体座標及び上部旋回体4の旋回位置の変化に応じて表示内容が変化する。また、バックホウ画像701の周囲には、警報出力状態を示す警報出力画像910が表示される。オペレータは、警報出力画像910を見ることで、バックホウ1の周囲で作業する作業員等に対して警報が出力されていることを認識することが可能である。
【0119】
オペレータは、第2のガイダンス画像750を見ることで、上部旋回体4の旋回位置と旋回規制範囲80~82との位置関係を把握して、上部旋回体4の旋回位置が、不用意に旋回規制範囲80~82内とならないように旋回用の操作レバーを操作して旋回動作を行う。
具体的に、オペレータが、旋回用の操作レバーを操作して、例えば、通常旋回範囲83から図20(a)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A内となるため、第1コントローラ70aは、開度60[%]の情報を含む第2の規制制御信号RC2を第2コントローラ20に送信する。加えて、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、旋回禁止フラグがON状態であるため第1警報信号AS1を外部警報機91に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が100[%]から60[%]となり、圧油が開度60[%]に応じた流量で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、上部旋回体4が、開度100[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。なお、旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A内にある間は、比例電磁弁50の開度は60[%]に保持される。
【0120】
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が回転且つ点灯作動し、運転室5の外部では第1外部警報機91のスピーカから第1警報信号AS1に対応する第1警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、外部の作業員などに対して「バックホウの旋回速度を減速中です」といった音声メッセージが出力される。
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図20(b)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第3の油圧緩衝範囲82A内となるため、第1コントローラ70aは、開度30[%]の情報を含む第3の規制制御信号RC3を第2コントローラ20に送信する。加えて、旋回禁止フラグがON状態であるため第2警報信号AS2を外部警報機91に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が60[%]から30[%]となり、圧油が開度30[%]に応じた流量で旋回用油圧モータ51に供給される。その結果、上部旋回体4が、開度60[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。なお、旋回角度θtが第3の油圧緩衝範囲82A内にある間は、比例電磁弁50の開度は30[%]に保持される。
【0121】
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が作動状態を継続し、運転室5の外部では第1外部警報機91のスピーカから第2警報信号AS2に対応する第2警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、外部の作業員などに対して「バックホウの旋回を停止します」といった音声メッセージが出力される。
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図20(c)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが規制領域範囲80内となるため、第1コントローラ70aは、開度0[%]の情報を含む第4の規制制御信号RC4を第2コントローラ20に送信する。加えて、旋回禁止フラグがON状態であるため第3警報信号AS3を外部警報機91に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が30[%]から0[%]となり、旋回用油圧モータ51への圧油の供給が停止される。その結果、上部旋回体4の旋回動作が停止する。
即ち、通常旋回範囲83から規制領域範囲80に向かって旋回動作させた場合に、上部旋回体4の旋回速度は、開度100[%]のときの旋回速度から急に0とならず、段階的に遅くなっていきその後に停止する。
【0122】
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が作動状態を継続し、運転室5の外部では第1外部警報機91のスピーカから第3警報信号AS3に対応する第3警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、外部の作業員などに対して「バックホウの旋回を停止中です」といった音声メッセージが出力される。
なお、規制対象物から離れる方向の旋回動作は常時許可されているため、離れる方向への旋回では、近づく方向とは逆の制御を行う。即ち、比例電磁弁50の開度を0[%]→30[%]→60[%]→100[%]と制御する。その際に、警告音声メッセージの内容も「旋回動作を再開しました」→「規制対象物から離隔中です」→「旋回速度を更に加速します」といった内容へと変更してもよい。
【0123】
一方、施工作業中は、バックホウ1が移動することで、例えば、図21に示すように、バックホウ1の傾斜状態が変化したり、図22(a)に示すように、バックホウ1が移動可能範囲から逸脱したりする。このような場合に、設定されている旋回規制範囲80~82及び移動可能範囲85が用をなさなくなる。
このような場合を想定して、第1実施形態では、旋回規制制御の実行中に旋回範囲修正処理が実行される。
即ち、第1コントローラ70aは、記憶装置70cに記憶された初期傾斜と、最新の作業機姿勢Pmに含まれる機体2の傾斜情報とに基づき傾斜差を算出する。そして、算出した傾斜差と記憶装置70cに記憶された傾斜閾値とを比較する。
【0124】
更に、第1コントローラ70aは、記憶装置70cに記憶された旋回初期位置と、最新の機体座標(Xm,Ym,Zm)とに基づき旋回初期位置からの移動距離を算出する。そして、算出した移動距離と記憶装置70cに記憶された移動閾値とを比較する。
第1コントローラ70aは、上記比較結果に基づき、例えば、傾斜差が傾斜閾値以上であると判定した場合に、運転室5の内部5iに設置された不図示の音響装置に警報の出力指令を送信して、この音響装置に警報音や音声メッセージを不図示のスピーカ(内部5iに設置)を介して出力させる。加えて、表示入力装置70dに、指示メッセージの表示指示を出力して、例えば、「機体の傾斜が変化したので旋回範囲を再設定して下さい」等のメッセージを表示させる。
【0125】
また、第1コントローラ70aは、上記比較結果に基づき、例えば、移動距離が移動閾値以上であると判定した場合に、不図示の音響装置に警報の出力指令を送信して、この音響装置に警報音や音声メッセージを不図示のスピーカを介して出力させる。加えて、表示入力装置70dに、指示メッセージの表示指示を出力して、例えば、「移動可能範囲から逸脱しましたので旋回範囲を再設定するか又はバックホウを旋回初期位置に戻して下さい」等のメッセージを表示させる。
【0126】
第1実施形態では、旋回初期位置において、左クローラ装置6L及び右クローラ装置6Rの4隅の直下の地面に第1~第4のマークM1~M4のマーキングを行う。従って、オペレータがバックホウ1を操作して旋回初期位置に戻す場合は、図22(b)に示すように、第1~第4のマークM1~M4を目印にして簡易に戻すことが可能となっている。
一方、旋回範囲8を再設定する場合は、例えば、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710をタッチすることで、上記同様の手順で旋回範囲8及び移動可能範囲85を再設定する。即ち、図23(b)に示すように、移動前の旋回範囲8及び移動可能範囲85を旋回範囲8A及び移動可能範囲85Aとすると、バックホウ1の移動先に新たな旋回範囲8B及び移動可能範囲85Bを設定する。
【0127】
次に、旋回範囲自動設定モードが選択された場合の動作を説明する。
いま、旋回範囲設定案内画像700内の旋回範囲自動設定開始ボタン画像711がタッチされたとする。これにより、第1コントローラ70aは、旋回範囲自動設定モードフラグをONに設定すると共に旋回範囲自動設定処理を開始する。第1コントローラ70aは、表示入力装置70dに、「バックホウを施工開始位置に移動して下さい」等のバックホウ1を施工作業の開始位置まで移動させるメッセージを表示する。
【0128】
第1コントローラ70aは、バックホウ1が施工作業の開始位置まで移動されたことを確認すると、自動設定関連情報を取得する。そして、取得した自動設定関連情報に基づき旋回範囲8及び移動可能範囲85を設定する。
具体的に、自動設定関連情報は、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDd、旋回範囲設定用データ及びバックホウの画像情報等の設定結果の表示に必要な画像情報と、最新の機体方位D、機体座標(Xm,Ym,Zm)及び作業機姿勢Pmと、旋回角度センサ75からの旋回角度θtとを含む。
【0129】
第1コントローラ70aは、自動設定関連情報を取得すると、取得した旋回範囲自動設定関連情報に基づきバックホウ1と規制対象との位置関係を計算する。そして、この位置関係に基づき、規制領域範囲80を設定する。
例えば、回避閾値Thを用いて、上部旋回体4を右旋回及び左旋回させた際のバックホウ1の旋回部と規制対象との間の距離を計算し、この距離が少なくとも回避閾値Thよりも長くなり且つ最短となる旋回位置を、規制領域範囲80の範囲開始位置及び範囲終了位置として設定する。
【0130】
このようにして、規制領域範囲80が設定されると、旋回範囲手動設定処理と同様の方法で、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bと、通常旋回範囲83と、移動可能範囲85とを設定する。また、自動設定時用の設定情報から、旋回禁止フラグがONに設定される。
そして、表示入力装置70dに、設定された旋回範囲8を示す画像である旋回範囲画像800と、設定された移動可能範囲85を示す画像である移動可能範囲画像850とを含む旋回範囲自動設定画像を表示する。ここでは、図13(b)と同様の画像が表示されることとする。
【0131】
オペレータは、表示された旋回範囲画像800及び移動可能範囲画像850を見て、納得がいかない場合は、旋回範囲手動設定処理と同様に、旋回範囲手動設定開始ボタン画像710又は旋回範囲自動設定開始ボタン画像711をタッチして再設定を行う。
一方、オペレータは、旋回範囲画像800及び移動可能範囲画像850に問題が無いと判断すると、終了ボタン画像709をタッチする。
ここでは、終了ボタン画像709がタッチされると、第1コントローラ70aは、設定された旋回禁止フラグ、旋回範囲8及び移動可能範囲85に基づき旋回規制制御を実行する。加えて、表示入力装置70dに、旋回規制制御の設定ボタン画像と、マシンガイダンス処理の開始指示ボタン画像とを表示する(図示省略)。
以降の、旋回規制制御における旋回規制警報処理の動作については、旋回範囲手動設定モードが設定された場合と同様となるので説明を省略する。
【0132】
一方、旋回規制制御における旋回範囲修正処理において、第1コントローラ70aは、例えば、傾斜差が傾斜閾値以上であると判定した場合に、不図示の音響装置に、例えば「傾斜が変化しました、旋回範囲を再設定します」等の音声メッセージを不図示のスピーカを介して出力させる。加えて、表示入力装置70dに、音声メッセージと同様に「傾斜が変化しました、旋回範囲を再設定します」等のメッセージを表示させる。
そして、第1コントローラ70aは、現在の機体座標(Xm,Ym,Zm)を旋回初期位置とし、現在の作業機姿勢Pmに含まれる機体2の傾斜情報を初期傾斜として上記旋回範囲自動設定処理を実行する。これにより、旋回範囲8及び移動可能範囲85を再設定する。
【0133】
また、第1コントローラ70aは、例えば、移動距離が移動閾値以上であると判定した場合に、不図示の音響装置に、例えば「移動可能範囲から逸脱しました、旋回範囲を再設定します」等の音声メッセージを不図示のスピーカを介して出力させる。加えて、表示入力装置70dに、音声メッセージと同様に「移動可能範囲から逸脱しました、旋回範囲を再設定します」等のメッセージを表示させる。
そして、第1コントローラ70aは、現在の機体座標(Xm,Ym,Zm)を旋回初期位置とし、現在の作業機姿勢Pmに含まれる機体2の傾斜情報を初期傾斜として上記旋回範囲自動設定処理を実行する。これにより、旋回範囲8及び移動可能範囲85を再設定する。
【0134】
次に、規制対象が構造物では無く、例えば、道路の工事する側とは反対側の車線である場合で且つ規制対象領域での旋回を許可する場合の動作を説明する。即ち、規制対象が道路の反対車線の場合、旋回体がその上部を旋回して通過することが可能である。
旋回範囲8の設定は、手動設定及び自動設定共に概ね上記構造物の場合と同様となるが、例えば、手動設定及び自動設定の双方において規制領域範囲80の設定後(手動の場合は肯定ボタン画像713をタッチ後)に、図示省略するが「規制領域範囲での旋回を禁止しますか?」というメッセージと、肯定ボタン画像713と否定ボタン画像714とが表示される。
ここでは、オペレータが否定ボタン画像714をタッチしたとする。この場合は、旋回禁止フラグがOFFに設定される。旋回禁止フラグがOFF状態のときは、ON状態のときと比較して、油圧緩衝範囲81~82での比例電磁弁50の制御は同様となるが、警報の出力タイミングと警告音声メッセージの内容とが異なる。加えて、規制領域範囲80内での低速での旋回を許可する点が異なる。
【0135】
以降の、油圧緩衝範囲81~82と、通常旋回範囲83と、移動可能範囲85との設定動作は、上記構造物(旋回禁止フラグがON状態)のときと同様となる。ここでは、上記構造物を反対車線と想定して、図19に示す旋回範囲8及び移動可能範囲85と同様の範囲が設定されたとする。
具体的に、オペレータが、旋回用の操作レバーを操作して、例えば、通常旋回範囲83から図20(a)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A内となるため、第1コントローラ70aは、第2の規制制御信号RC2を第2コントローラ20に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が100[%]から60[%]となり、上部旋回体4が、開度100[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。一方、第1実施形態では、旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A内のときに警報の出力が行われない。
【0136】
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図20(b)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第3の油圧緩衝範囲82A内となるため、第1コントローラ70aは、第3の規制制御信号RC3を第2コントローラ20に送信する。加えて、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、旋回禁止フラグがOFF状態であるため第4警報信号AS4を外部警報機91に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が60[%]から30[%]となり、上部旋回体4が、開度60[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が回転且つ点灯作動し、運転室5の外部では第1外部警報機91のスピーカから第4警報信号AS4に対応する第4警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、外部の作業員などに対して「反対車線を通過します」又は「反対車線に接近中」などといった警告音声メッセージが出力される。
【0137】
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図20(c)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが規制領域範囲80内となるため、第1コントローラ70aは、第5の規制制御信号RC5を第2コントローラ20に送信する。加えて、旋回禁止フラグがOFF状態であるため第5警報信号AS5を外部警報機91に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が30[%]から20[%]となり、上部旋回体4が、開度30[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が作動状態を継続し、運転室5の外部では第1外部警報機91のスピーカから第5警報信号AS5に対応する第5警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、外部の作業員などに対して「反対車線を通過中です」といった音声メッセージが出力される。
【0138】
ここで、バックホウ1が作業車両に対応し、旋回範囲設定部175が規制領域範囲設定部及び出力緩衝範囲設定部に対応し、規制領域範囲80が規制領域範囲に対応し、油圧緩衝範囲81~82が出力緩衝範囲に対応し、旋回規制制御部176が旋回規制制御部及び警報制御部に対応する。
また、作業車両用旋回制御システム7が作業車両用旋回制御システム及び作業車両用警報制御システムに対応し、第1外部警報機91が外部警報機に対応し、3次元設計データDdが地図データに対応し、記憶装置70cが地図データ記憶部に対応する。
また、機体座標算出部171が座標検出部に対応し、ジャイロセンサ74及び作業機姿勢算出部174が傾斜検出部に対応し、旋回用油圧モータ51が旋回用油圧アクチュエータに対応する。
【0139】
(第1実施形態の作用及び効果)
第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、旋回範囲設定部175が、バックホウ1の旋回動作の規制対象(警報の出力対象でもある)を含む旋回範囲である規制領域範囲80を設定する。加えて、規制領域範囲80の前後に、旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量変化を緩和する旋回範囲である油圧緩衝範囲81~82を設定する。旋回規制制御部176が、バックホウ1の旋回部(実施形態では旋回部の位置に対応した旋回角度θt)が油圧緩衝範囲81~82内にあると判定したときに、旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を、旋回動作を停止しない範囲で制限する制御を行う。加えて、バックホウ1の旋回部が規制領域範囲80内になったと判定したときに、旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を、旋回動作を停止しない範囲で制限すると共に旋回禁止フラグがON状態のときに規制領域範囲80内に進行を続ける方向への旋回動作を停止するように制御する。更に、旋回部が油圧緩衝範囲81~82内及び規制領域範囲80内のうち少なくとも規制領域範囲80内にあると判定したときに、内部警報機90及び第1外部警報機91の出力動作を制御してバックホウ1の内外にて警報を出力する。
【0140】
具体的に、第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、旋回用油圧モータ51に圧油を供給する油圧系に介挿された比例電磁弁50を備える。そして、旋回規制制御部176は、比例電磁弁50の開度を制御することで、旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を、バックホウ1の旋回部が油圧緩衝範囲81~82から規制領域範囲80に向かうに連れて段階的に減少(比例電磁弁50の開度を100[%]→60[%]→30[%])するように制限する制御を行う。加えて、バックホウ1の旋回部が規制領域範囲80内になったと判定したときに、旋回用油圧モータ51への圧油の供給を停止する。
【0141】
この構成であれば、油圧緩衝範囲81~82内では旋回動作を停止しない範囲で旋回用油圧モータ51に供給する圧油の流量を段階的に減少することが可能である。これによって、従来の旋回動作を急停止させる構成と比較して、旋回停止時の旋回速度変化を緩和することが可能となる。その結果、旋回停止時の旋回速度変化によるバックホウ1の接地バランスの崩れ等の不具合の発生を防止することが可能となる。
加えて、油圧緩衝範囲81~82における流量低下による旋回速度の低下によって、オペレータに旋回部が規制領域範囲80に近づいていることを知らせることが可能となる。これによって、オペレータに対して注意喚起することが可能となり、不必要な旋回停止の発生を低減することが可能となる。
【0142】
更に、旋回体の旋回位置(旋回角度θt)に基づき内部警報機90及び第1外部警報機91の警報の出力動作を制御してバックホウ1の内外に自動で警報を出力することが可能である。これによって、旋回部の旋回位置が設定した規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82のいずれにあるかに応じて自動でバックホウ1の内外に警報を出力することが可能となるので、従来と比較して低コスト且つ手間をかけずにバックホウ1の内外に警報を出力することが可能となる。また、規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82の各範囲にて警報の出力内容を異なる内容(各範囲に応じた内容)に設定するようにしたので、周辺の作業員は警報の内容からバックホウ1の旋回状態(旋回位置)を把握することが可能となる。
【0143】
また、第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、規制領域範囲80として旋回部の旋回を物理的に妨げることのない範囲(規制対象領域)が設定されたときに、規制領域範囲80に対する旋回規制制御部176の制御形態を、旋回用油圧モータ51の出力を、旋回動作を停止しない範囲で制限する第1制御形態と、旋回用油圧モータ51の出力を規制領域範囲80に侵入を続ける方向への旋回動作を停止する第2制御形態とのうちから選択可能に構成されている。そして、第1制御形態が選択されたときに旋回禁止フラグをOFFに設定し、第2制御形態が選択されたときに旋回禁止フラグをONに設定する。
この構成であれば、規制対象領域が、例えばこの範囲での旋回を禁止すると作業が大幅に滞ってしまうような領域である場合などに旋回を許可して作業の遅滞を回避し、そうでない場合に旋回を禁止して安全を優先することが可能となる。旋回を許可した場合でも旋回速度を制限すると共に内外に警報を出力する制御が行われるため、許可した場合の事故の発生を低減することが可能である。
【0144】
また、第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、記憶装置70cが規制対象の3次元座標情報を含む施工領域の3次元設計データDdを記憶する。機体座標算出部171がバックホウ1の実空間における3次元座標である機体座標(Xm,Ym,Zm)を検出する。旋回範囲設定部175が、機体座標算出部171で検出された機体座標(Xm,Ym,Zm)と記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdとに基づき、バックホウ1の旋回部が規制対象を回避不能な旋回位置を含む範囲を規制領域範囲80として設定する。
この構成であれば、3次元設計データDdと機体座標(Xm,Ym,Zm)とを利用して、旋回時にバックホウ1の旋回部が規制対象を回避できない旋回位置を含む規制領域範囲80を計算により自動で設定することが可能である。これにより、規制領域範囲80を簡易に設定することが可能となる。
【0145】
また、第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、旋回範囲設定部175が、機体座標算出部171で検出した機体座標(Xm,Ym,Zm)に基づきバックホウ1が移動可能範囲85外に移動したと判定すると、移動先の機体座標(Xm,Ym,Zm)と、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdとに基づき規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82を再設定する。
この構成であれば、バックホウ1の移動(位置変化)によって、先に設定した規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82が使用できなくなった場合に、移動先において適切な規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82を自動的に再設定することが可能である。これによって、移動後に手動で再設定するといった手間を省くことが可能となり、オペレータの負担を軽減することが可能となる。
【0146】
また、第1実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7は、ジャイロセンサ74及び作業機姿勢算出部174がバックホウ1の機体2の傾斜(作業機姿勢Pm)を検出する。旋回範囲設定部175は、作業機姿勢算出部174で検出した傾斜に基づき、バックホウ1の機体2の傾斜(θp,θr,θy)が変化したと判定すると、検出した傾斜と、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdとに基づき規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82を再設定する。
【0147】
具体的に、旋回範囲8を設定時の旋回初期位置における初期の傾斜を記憶しておき、この傾斜と検出した傾斜との傾斜差を算出する。そして、算出した傾斜差が傾斜閾値以上であると判定したときに傾斜が変化したと判定して、規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82を含む旋回範囲8と、移動可能範囲85とを再設定する。
この構成であれば、バックホウ1の傾斜変化によって、先に設定した規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82が使用できなくなった場合に、傾斜変化後において適切な規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82を自動的に再設定することが可能である。これによって、傾斜変化後に手動で再設定するといった手間を省くことが可能となり、オペレータの負担を軽減することが可能となる。
【0148】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、外部警報機がバックホウの外装上ではなく、バックホウから離れた位置に独立して設置されており、この外部警報機との間で無線通信を行って警報出力を行う点が上記第1実施形態と異なる。加えて、旋回角度θtが第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82B内にあるときに、内部警報機90のみを作動させる第6警報処理を実施する点と、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)に基づき、規制領域範囲80内の規制対象領域と重なる位置にバケット32が存在するときのみにバックホウ1の内外にて警報を出力する第5警報処理を実施する点とが上記第1実施形態と異なる。それ以外の構成は、上記第1実施形態と同様となる。
以下、上記第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点を詳細に説明する。
【0149】
(構成)
第2実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Aは、図24に示すように、上記第1実施形態の作業車両用旋回制御システム7において、第1外部警報機91に代えて、バックホウ1の外部にバックホウ1とは独立して設置された第2外部警報機92を備えた構成となっている。なお、第1外部警報機91を残した構成としてもよい。
第2実施形態の第1コントローラ70aは、図25に示すように、旋回規制制御部176が、無線機73を介して第1~第3警報信号AS1~AS3並びに第5警報信号AS5(図25中ではASと略記)を第2外部警報機92に無線送信する。
第2外部警報機92は、図26に示すように、無線受信機92aと、警報機92bと、無線受信機92a及び警報機92bとを接続する信号線92cとを備えている。
無線受信機92aは、外部の無線通信機能を有する装置からの無線信号を受信する機器である。第2実施形態では、無線機73から無線送信される第1~第3警報信号AS1~AS3並びに第5警報信号AS5(以下、区別する必要のない場合に「警報信号AS」と略記する)の受信に用いる。無線受信機92aは、受信した警報信号ASを、信号線92cを介して警報機92bに送信する。
【0150】
警報機92bは、上記第1実施形態の外部警報機91と同様の構成及び機能を有している。即ち、第1~第3警報信号AS1~AS3並びに第5警報信号AS5を受信すると、各受信した警報信号に対応する警告メッセージの音声データを記憶装置から読み出し、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから警告音声メッセージを出力する。
信号線92cは、無線受信機92aと警報機92bとを信号の送受信可能に接続する信号ケーブルから構成されている。
【0151】
また、第2実施形態に係る旋回規制制御部176は、旋回禁止フラグがOFF状態のときに、旋回角度θtが第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82B内にあるときに上記第6警報処理を実行するように構成されている。更に、旋回禁止フラグがOFF状態で且つ旋回角度θtが規制領域範囲80内にあるときに、バケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)に基づきバケット32が規制対象領域内に存在するときのみに上記第5警報処理を実行するように構成されている。即ち、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82B内ではバックホウ1の内部にのみ警報を出力し、旋回角度θtが規制領域範囲80内で且つバケット32が規制対象領域内に存在するときのみにバックホウ1の内外にて警報を出力する。
ここで、バックホウ1の姿勢や旋回位置によっては、バケット32が実際の規制対象領域内を通らずに旋回が可能な場合があり、第2実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Aは、このような場合にバックホウ1の外部にて警報を出力しないように構成されている。
【0152】
(第2実施形態の旋回規制警報処理)
次に、図27に基づき、第2実施形態の旋回規制警報処理の処理手順を説明する。
上記ステップS404において、旋回規制警報処理が開始されると、図27に示すように、まずステップS700に移行する。
ステップS700では、旋回規制制御部176において、旋回角度センサ75からの旋回角度θt及びバケット座標算出部172からのバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を取得して、ステップS702に移行する。
ここで、ステップS702~S720までの処理は、上記第1実施形態のステップS602~S620までの処理と同様の処理となるので説明を省略する。
【0153】
ステップS722では、旋回規制制御部176において、第6警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第2実施形態では、第6警報処理として、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信する。
これによって、内部警報機90は、回転灯に電源を供給して回転灯を回転且つ点灯作動させる。即ち、第6警報処理では、バックホウ1の内部での警報出力のみを行って、第2外部警報機92によるバックホウ1の外部での警報出力を行わない。
ここで、ステップS724~S730までの処理は、上記第1実施形態のステップS624~S630までの処理と同様の処理となるので説明を省略する。
【0154】
ステップS732では、旋回規制制御部176において、3次元設計データDdとバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)とに基づきバケット32が、規制対象領域内に存在するか否かを判定する。そして、存在すると判定した場合(Yes)は、ステップS734に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
ステップS734に移行した場合は、旋回規制制御部176において、第5警報処理を実行して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
これによって、第2外部警報機92の警報機92bは、無線受信機92aを介して第5警報信号AS5を受信すると、記憶装置から第5警報信号AS5及び規制対象領域の種類に対応する第5警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第5警告音声メッセージを出力する。
【0155】
(動作)
次に、図28図32に基づき、第2実施形態に係るバックホウ1の動作を説明する。
ここでは、図28に示すように、掘削作業によって形成された開口部130の脇で作業を行う場合の動作を説明する。開口部130の周囲には転落防止用の手摺140が形成されており、この手摺140に第2外部警報機92が設置されている。具体的に、手摺140の開口部130側とは反対側の上部に無線受信機92aが設置され、手摺140の開口部130側の下部に警報機92bが設置され、無線受信機92a及び警報機92bとが信号線92cにて接続されている。また、開口部130内では作業員Aが作業を行っている。
【0156】
この場合の旋回範囲設定案内画像700は、図29に示すように、上記第1実施形態の旋回範囲設定案内画像700における地上構造物の模式画像である規制対象画像703に代えて、開口部130の模式画像である規制対象領域画像715を含む画像となっている。加えて、図29中に破線で示した開口部130の周囲に設けられた手摺140を模式的に示す手摺画像716と、バックホウ画像701の近傍に設置された第2外部警報機92を模式的に示す警報機画像920とが追加された画像となっている。また、図29のバックホウ画像701に示すように、バックホウ1は、手摺140にギリギリ寄せた状態で停止されており、この停止位置を旋回初期位置としている。
ここでは、旋回範囲自動設定モードが設定されたとして、上記第1実施形態と同様の手順で図30に示す旋回範囲8が設定されたとする。
具体的に、図30に示す例では、規制領域範囲80の旋回角度範囲γが180[°]に設定され、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの旋回角度範囲β1がそれぞれ25[°]に、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの旋回角度範囲β2がそれぞれ20[°]に設定されたとする。また、通常旋回範囲83の旋回角度範囲αが90[°]に設定されたとする。
【0157】
この場合、上記第1実施形態と同様に図12(a)に示す旋回角度の基準位置(0[°]、90[°]、180[°]、270[°])が設定されているとして、例えば、181[°]~360[°]の範囲が規制領域範囲80となり、1[°]~25[°]の範囲が第3の油圧緩衝範囲82Aとなり、26[°]~45[°]の範囲が第1の油圧緩衝範囲81Aとなる。また、例えば、136[°]~160[°]の範囲が第2の油圧緩衝範囲81Bとなり、161[°]~180[°]の範囲が第4の油圧緩衝範囲82Bとなる。
更に、旋回範囲設定用データによって、規制領域範囲80の開度が20[%]、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの開度Aが60[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの開度Bが30[%]、通常旋回範囲83の開度Cが100[%]にそれぞれ設定されたとする。
なお更に、図30では図示省略するが、旋回範囲設定用データによって、移動可能範囲85を設定するための半径Rとして2[m]が設定されたとする。
【0158】
また、ここでは、旋回範囲8及び移動可能範囲85を設定後に、旋回禁止フラグがOFFに設定されたとする。即ち、開口部130を領域内に含む規制領域範囲80での旋回を許可する設定がされたとする。
そして、この設定内容に対する第2のガイダンス画像750は、図31に示すように、基本構成は、図29に示す、旋回範囲設定案内画像700と同様となる。異なるのは、情報表示枠画像708内の表示内容と、バックホウ画像701の表示内容がバックホウ1の移動や旋回動作に応じて変化する点となる。
即ち、情報表示枠画像708内に、旋回規制制御が実施され且つ警報出力が行われていることを示すメッセージである「旋回規制制御中(警報出力中)!」と、バックホウ1の現在の旋回角度θtの情報(330[°])と、比例電磁弁50の現在の開度の情報(20[%])とが表示される。また、警報機画像920の規制対象領域画像715側には、警報出力状態を示す警報出力画像921が表示される。オペレータは、警報出力画像921を見ることで、開口部130内で作業する作業員A等に対して警報が出力されていることを認識することが可能である。
【0159】
具体的に、オペレータが、旋回用の操作レバーを操作して、例えば、通常旋回範囲83から図32(a)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第1の油圧緩衝範囲81A内となるため、第1コントローラ70aは、第2の規制制御信号RC2を第2コントローラ20に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が100[%]から60[%]となり、上部旋回体4が、開度100[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図32(b)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが第3の油圧緩衝範囲82A内となるため、第1コントローラ70aは、第3の規制制御信号RC3を第2コントローラ20に送信する。加えて、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信する。
これにより、比例電磁弁50の開度が60[%]から30[%]となり、上部旋回体4が、開度60[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が回転且つ点灯作動する。
【0160】
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図32(c)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが規制領域範囲80内となるため、第1コントローラ70aは、第5の規制制御信号RC5を第2コントローラ20に送信する。一方、旋回禁止フラグはOFF状態であるが、バケット32が開口部130上に無いため、第5警報信号の送信処理は実施しない。
これにより、比例電磁弁50の開度が30[%]から20[%]となり、上部旋回体4が、開度30[%]のときよりも遅い旋回速度で旋回する。加えて、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が作動状態を継続する。
【0161】
引き続き、オペレータが、旋回用の操作レバーを継続操作して、例えば、図32(d)に示す旋回位置へと上部旋回体4を旋回させたとする。この場合、旋回角度θtが依然、規制領域範囲80内となるため、第1コントローラ70aは、第2コントローラ20への第5の規制制御信号RC5の送信を継続する。加えて、旋回禁止フラグはOFF状態であり且つバケット32が開口部130上にあるため、第5警報信号AS5を、無線機73を介して第2外部警報機92の無線受信機92aに向けて無線送信する。
これにより、上部旋回体4は、開度20[%]の旋回速度で引き続き旋回し続ける。
【0162】
更に、運転室5の内部5iにて内部警報機90の回転灯が作動状態を継続し、運転室5の外部では第2外部警報機92の警報機92bのスピーカから第5警報信号AS5及び規制対象領域の種類に対応する第5警告音声メッセージが出力される。ここでは、例えば、開口部130内の作業員Aなどに向けて「開口部を通過中です」といった音声メッセージが出力される。
なお、旋回禁止フラグがON状態のときの動作は、旋回位置に応じて第1~第3警報信号SA1~SA3を、無線機73を介して第2外部警報機92の無線受信機92aに向けて無線送信する点が異なるだけで上記第1実施形態の第1~第3警報処理と同様の動作となるので説明を省略する。
【0163】
ここで、バックホウ1が作業車両に対応し、旋回範囲設定部175が規制領域範囲設定部及び出力緩衝範囲設定部に対応し、規制領域範囲80が規制領域範囲に対応し、油圧緩衝範囲81~82が出力緩衝範囲に対応し、旋回規制制御部176が旋回規制制御部及び警報制御部に対応する。
また、無線機73が無線送信機に対応し、無線受信機92aが第1の無線受信機に対応し、第2外部警報機92が外部警報機に対応し、3次元設計データDdが地図データに対応し、記憶装置70cが地図データ記憶部に対応する。
また、機体座標算出部171が座標検出部に対応し、ジャイロセンサ74及び作業機姿勢算出部174が傾斜検出部に対応し、旋回用油圧モータ51が旋回用油圧アクチュエータに対応し、バケット座標算出部172が作業具座標検出部に対応する。
【0164】
(第2実施形態の作用及び効果)
第2実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Aは、無線機73が外部機器に無線信号を送信する。第2外部警報機92は、無線受信機92aを備えると共にバックホウ1から離れた位置に独立して配設されている。旋回規制制御部176が、第2外部警報機92の作動制御する警報信号ASを、無線機73を介して第2外部警報機92へと無線送信する。第2外部警報機92は、旋回規制制御部176からの警報信号ASを、無線受信機92aを介して受信する。
この構成であれば、バックホウ1から離れた位置に独立して配設された第2外部警報機92を無線で作動制御することが可能となるので、従来のバックホウ1のオペレータがバックホウ1を降りて手動で警報を作動及び停止する手間を無くすことが可能となる。
【0165】
また、第2実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Aは、バケット座標算出部172が、バケット32の爪先部32Tの座標であるバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)を検出する。旋回規制制御部176が、規制対象が旋回部の旋回を物理的に妨げることのない領域(規制対象領域)であるときに、記憶装置70cに記憶された3次元設計データDdとバケット座標算出部172で検出したバケット爪先座標(Xt,Yt,Zt)とに基づき、バケット32の爪先部32Tが規制対象領域と重なるときのみに第2外部警報機92による警報の出力を行う。
この構成であれば、旋回部の旋回動作によって、バケット32の爪先部32Tが例えば開口部上などの規制対象領域と重なる位置に存在するときは警報を出力し、同じ旋回角度θtでも爪先部32Tが規制対象領域と重ならない位置に存在するときには警報を出力しないようにすることが可能となる。これによって、規制領域範囲80内を旋回するときに、例えば開口部下などで作業をしている作業員に対して開口部上をバケット32が通過しないような旋回状態のときに余計な警報を出力しないようにすることが可能となる。
【0166】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、見張り員がバックホウ1の作業領域への移動体(例えば列車や他の作業車両)の接近を見張っており、見張り員は、移動体の接近を視認したときに所持している接近通知信号送信機94(後述)を操作して接近通知信号を無線送信する。一方、作業車両用旋回制御システム7B(後述)は、無線機73を介して接近通知信号を受信したことに応じて内部警報機90と外部の作業領域に設置された第3外部警報機93(後述)とから警報を出力すると共にバックホウ1の旋回部を安全な旋回位置に旋回させる制御を行う点が上記第2実施形態と異なる。それ以外の構成は、上記第2実施形態と同様となる。
【0167】
ここで、従来、鉄道近接工事などでは、例えば図43に示すように、列車見張り員Gが線路321を走行する列車320の接近を見張り、列車320の接近を視認すると手旗などによって接近を知らせる合図を送ることが行われている。この合図に応じて、バックホウ11のオペレータは、バックホウ11を安全な位置に停止することが義務づけられている。ところが、手旗による合図であるため、列車見張り員の合図にバックホウ11のオペレータが気付かない場合があった。第3実施形態では、このように、見張り員が作業領域への移動体の接近を見張って、接近を視認したときに作業車両のオペレータに合図を送って作業車両を安全な位置で停止するような工事現場での作業を考慮したものである。
以下、上記第2実施形態と同じ構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点を詳細に説明する。
【0168】
(構成)
第3実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Bは、図33に示すように、上記第2実施形態の作業車両用旋回制御システム7Aにおいて、第2外部警報機92に代えて、無線受信機92aと警報機92bとが一体となった構成の第3外部警報機93を備えた構成となっている。なお、第2外部警報機92を残した構成としてもよい。
加えて、バックホウ1の作業領域への例えば列車や反対車線を走行する車などの移動体の接近を見張る見張り員が所持する接近通知信号送信機94が追加された構成となっている。接近通知信号送信機94は、例えば、スマートフォンやタブレット型のPCなどの携帯しやすい機器から構成される。また、見張り員は、作業領域から離れた場所で移動体の作業領域への接近を見張っている。
【0169】
第3実施形態に係る第1コントローラ70aは、図34に示すように、旋回規制制御部176が、無線機73を介して上記第2実施形態の警報信号に加えて第6警報信号AS6(図34中ではASと略記)を第3外部警報機93に無線送信する。
具体的に、第3実施形態に係る旋回規制制御部176は、接近通知信号送信機94から無線送信された接近通知信号APを、無線機73を介して受信すると、第6警報信号AS6を、無線機73を介して第3外部警報機93に向けて無線送信するように構成されている。
加えて、接近通知信号APを受信したときの旋回角度θtに基づき、旋回角度θtが規制領域範囲80内である場合に、旋回角度θtが規制領域範囲80外(即ち、安全な旋回位置)となるように旋回位置を自動で変更する制御を行うように構成されている。
第3外部警報機93は、第1~第3警報信号AS1~AS3並びに第5~第6警報信号AS5~AS6を受信すると、各受信した警報信号に対応する警告メッセージの音声データを記憶装置から読み出し、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから警告音声メッセージを出力する。
【0170】
(接近警報処理)
次に、図35に基づき、第3実施形態の接近警報処理の処理手順を説明する。
ここで、接近警報処理は、第1コントローラ70aの旋回規制制御部176において実行される処理である。
第1コントローラ70aのCPUにおいて、制御プログラムが実行され接近警報処理が開始されると、図35に示すように、まずステップS800に移行する。
ステップS800では、旋回規制制御部176において、接近通知信号APを受信したか否かを判定し、受信したと判定した場合(Yes)は、ステップS802に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了する。
【0171】
ステップS802に移行した場合は、旋回規制制御部176において、第7警報処理を実行してステップS804に移行する。
第3実施形態では、第7警報処理として、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、第6警報信号AS6を第3外部警報機93に送信する処理を実行する。
これによって、内部警報機90は、点灯スイッチをON状態にして回転灯に電源を供給し回転灯を回転且つ点灯作動させる。なお、回転灯の作動に加えて、車室内の音響装置(不図示)にて音声による警告やブザーによる警告音等を出力するようにしてもよい。
【0172】
また、第3外部警報機93は、第1コントローラ70aからの第6警報信号AS6を受信すると、内蔵された記憶装置から第6警報信号AS6に対応する第6警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第6警告音声メッセージ(例えば、移動体の接近を警告するメッセージ)を出力する。
ここで、第3実施形態では、バックホウ1の旋回動作に対して上記第2実施形態と同様の第5及び第6警報処理を実行する。但し、移動体の接近に対する警報を最優先とし、第5及び第6警報処理の実行中でも接近通知信号APを受信した場合には、割り込みで第7警報処理を実行するように構成されている。
ステップS804では、旋回規制制御部176において、旋回位置変更処理を実行して、一連の処理を終了する。
ここで、旋回位置変更処理は、接近してくる移動体の移動経路側にバックホウ1のバケット32が向いているときに、反対側を向くように自動で旋回制御を行う処理である。ここで、第3実施形態では、移動体の移動経路として列車の線路や道路の工事する側とは反対側の車線などを想定しており、基本的に移動経路側に規制領域範囲が設定されることを想定している。
【0173】
(旋回位置変更処理)
次に、図36に基づき、第3実施形態の旋回位置変更処理の処理手順を説明する。
ここで、旋回位置変更処理は、上記ステップS804にて実行される処理である。
即ち、ステップS804において、旋回位置変更処理が開始されると、図36に示すように、まずステップS900に移行する。
ステップS900では、旋回規制制御部176において、旋回角度センサ75からの旋回角度θtを取得して、ステップS902に移行する。
ステップS902では、旋回規制制御部176において、ステップS900で取得した旋回角度θtが、規制領域範囲80内か否かを判定する。そして、規制領域範囲80内であると判定した場合(Yes)は、ステップS904に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
【0174】
ステップS904に移行した場合は、旋回規制制御部176において、旋回位置変更指令信号RAを第2コントローラ20に送信して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの旋回位置変更指令信号RAを受信すると、旋回用油圧モータ51を駆動制御して、旋回角度θtが規制領域範囲80外となるように上部旋回体4を旋回させる。第3実施形態では、旋回角度θtが通常旋回範囲83内となるまで旋回させる。
【0175】
(動作)
次に、図37図39に基づき、第3実施形態に係るバックホウ1の動作を説明する。
ここでは、図37に示すように、鉄道近接工事を行う場合の動作を説明する。
図37に示すように、列車120が線路121上を走行しており、この列車120の接近を列車見張り員Bが見張っている。列車見張り員Bは、片方の手に手旗を持ち、もう一方の手には接近通知信号送信機94を持っている。また、列車見張り員Bから離れた線路沿いではバックホウ1が作業をしており、バックホウ1の周辺では作業員C及びDが作業している。そして、バックホウ1と作業員C及びDの間には、第3外部警報機93が地上に設置されている。
【0176】
バックホウ1は、鉄道境界線にギリギリ寄せた状態で停止されており、図38(a)に示す旋回範囲8が設定されている。ここでは、旋回禁止フラグがOFFに設定されており、規制領域範囲80内での低速での旋回が許可された状態となっている。
いま、図37に示すように、列車120が接近し、列車見張り員Bが列車120の接近を視認したとする。そして、列車見張り員Bが接近通知信号送信機94を操作(例えば送信ボタンをオン)し接近通知信号APが無線送信されたとする。
これにより、第1コントローラ70aは、接近通知信号送信機94から無線送信された接近通知信号APを、無線機73を介して受信する。そして、点灯スイッチをONにする警報出力指令信号Wdを内部警報機90に送信すると共に、第6警報信号AS6を、無線機73を介して第3外部警報機93に向けて無線送信する。加えて、旋回位置変更指令信号RAを第2コントローラ20に送信する。
内部警報機90は、警報出力指令信号Wdを受信すると、点灯スイッチをON状態にして回転灯に電源を供給し回転灯を回転且つ点灯作動させる。
【0177】
一方、第3外部警報機93は、第6警報信号AS6を、無線受信機を介して受信すると、記憶装置から第6警告メッセージの音声データを読み出す。そして、読み出した音声データに基づきアンプを介してスピーカから第6警告音声メッセージを出力する。例えば、「列車が接近中!直ちに安全な場所に退避してください。」などの音声メッセージを出力する。
これにより、作業員C及びDは、図39に示すように、列車見張り員Bの手旗による合図に気付かなくても、第6警告音声メッセージによって列車の接近に気付くことが可能である。その結果、列車の通過前に安全な場所に退避することが可能である。
また、第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの旋回位置変更指令信号RAを受信すると、現在の旋回位置が規制領域範囲80内のときに、安全な旋回位置(ここでは通常旋回範囲83)へと旋回位置を変更する制御を行う。
具体的に、図37及び図38(a)に示す現在の旋回位置から図38(b)に示す方向に旋回させる制御を行う。これにより、バックホウ1は、旋回角度θtが通常旋回範囲83内となって、図39に示すように、バケット32が通常旋回範囲83を向いた姿勢で停止した状態となる。
【0178】
ここで、バックホウ1が作業車両に対応し、旋回範囲設定部175が規制領域範囲設定部及び出力緩衝範囲設定部に対応し、規制領域範囲80が規制領域範囲に対応し、油圧緩衝範囲81~82が出力緩衝範囲に対応し、旋回規制制御部176が旋回規制制御部及び警報制御部に対応する。
また、無線機73が無線送信機及び第2の無線受信機に対応し、第3外部警報機93が外部警報機に対応し、3次元設計データDdが地図データに対応し、記憶装置70cが地図データ記憶部に対応する。
また、機体座標算出部171が座標検出部に対応し、ジャイロセンサ74及び作業機姿勢算出部174が傾斜検出部に対応し、旋回用油圧モータ51が旋回用油圧アクチュエータに対応し、バケット座標算出部172が作業具座標検出部に対応する。
また、旋回規制制御部176が旋回制御部に対応する。
【0179】
(第3実施形態の作用及び効果)
第3実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Bは、バックホウ1が作業を行う作業領域への所定の移動体の接近を見張る見張り員(例えば、列車の接近を見張る列車見張り員)が所持する接近通知信号送信機94が、移動体の接近を通知する接近通知信号を無線送信する。無線機73が、外部機器からの無線信号を受信する。旋回規制制御部176が、接近通知信号送信機94からの接近通知信号APを、無線機73を介して受信したことに応じて、内部警報機90及び第3外部警報機93の警報の出力動作を制御してバックホウ1の内外にて警報を出力する。
【0180】
この構成であれば、見張り員が移動体の接近を視認したときに接近通知信号送信機94を操作して接近通知信号APを無線送信することで、旋回規制制御部176が無線機73を介して接近通知信号APを受信し、バックホウ1の内外にて警報を出力する制御を行うことが可能となる。
これにより、例えば見張り員が手旗のみによって接近の合図を行う従来の方法と比較して、バックホウ1のオペレータが見張り員の手旗による合図を見逃したとしても、バックホウ1の内外での警報の出力によってオペレータのみならず周辺の他の作業員に対しても移動体の接近を通知することが可能となる。その結果、鉄道近接工事や道路工事などにおいて、移動体の接近に対する安全性を向上することが可能となる。
【0181】
また、第3実施形態に係る作業車両用旋回制御システム7Bは、旋回規制制御部176が、接近通知信号送信機94からの接近通知信号APを、無線機73を介して受信したことに応じて、旋回部の旋回位置を予め設定した安全な旋回位置(第3実施形態では通常旋回範囲83)へと旋回させる制御を行う。
具体的に、旋回規制制御部176は、接近通知信号APを受信の旋回角度θtが規制領域範囲80内であるときに、旋回位置変更指令信号RAを第2コントローラ20に送信する。第2コントローラ20は、第1コントローラ70aからの旋回位置変更指令信号RAを受信すると、旋回用油圧モータ51を駆動制御して、旋回角度θtが通常旋回範囲83内となるように上部旋回体4を旋回させる。
この構成であれば、バックホウ1のオペレータが警報に気付かなかった場合や気付くのに遅れた場合などでも、バックホウ1の旋回部を自動で安全な旋回位置へと旋回させることが可能となる。その結果、移動体との接触事故の発生を防止又は低減することが可能となる。
【0182】
(変形例)
上記各実施形態では、バックホウ1の予め設定した姿勢(図7に示す旋回半径が最も大きくなる姿勢)に対して、旋回範囲8を設定する構成としたが、この構成に限らない。ここで、バックホウ1の作業機3のようにアームを曲げたり伸ばしたりできる作業機を有する作業車両は、作業機の姿勢によって旋回半径が変化する。このことに基づき、作業機の異なる複数の姿勢に対して旋回範囲を設定する構成としてもよい。この構成とすることで、例えば、図41に示すように、作業機3を上方に向かって伸ばした姿勢で旋回動作を行うような場合に、高所に存在する規制対象物である電線307等に作業機3がぶつかるのを防ぐことが可能となる。また、作業機3の姿勢が規制対象に接触又は侵入することなく旋回できる姿勢であるにも係わらず旋回を禁止するといったことを防ぐことが可能となる。
また、上記各実施形態では、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bと、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bとにより、上部旋回体4の左右旋回動作に対して、比例電磁弁50の開度を2段階に制限する構成としたが、この構成に限らない。例えば、1段階又は3段階以上に制限する構成としてもよい。
【0183】
また、上記各実施形態では、規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82の各範囲において外部警報機から警告音声メッセージを警報として出力する構成としたが、この構成に限らない。例えば警報ブザー等の警告音を出力する構成としてもよい。
また、上記第2実施形態では、バックホウ1の作業領域の近傍に1台だけ第2外部警報機92を設置する構成としたが、この構成に限らない。例えば、無線通信範囲を考慮して、予め等間隔で複数台の第2外部警報機92を予め設置する構成としてもよいし、1台の第2外部警報機92をその都度設置し直す構成としてもよい。
【0184】
また、上記第3実施形態では、列車見張り員Bが列車の接近を視認したときに接近通知信号送信機94を操作することで接近通知信号APを無線送信する構成としたが、この構成に限らない。例えば、従来公知の軌道回路を利用したTC型無線式列車接近警報装置(以下、「TC列警」と略称)や、GPS測位機能を利用した列車接近警報装置(以下、「GPS列警」と略称)などの自動で列車の接近を検知して列車見張り員に通知する装置に、列車の接近を検知したときに接近通知信号APを無線送信する機能を搭載する構成としてもよい。この構成とした場合、例えば、TC列警やGPS列警が列車の接近を検知すると自動で接近通知信号APを無線送信することが可能となるので、列車見張り員による送信忘れ等を防ぐことが可能となる。
【0185】
なお、列車見張り員を例に挙げたが、特にGPS列警であれば移動体が列車以外のものでも同様の構成を適用可能である。
また、上記第3実施形態では、接近通知信号APを受信したことに応じて、自動で上部旋回体4の旋回位置を安全な位置へと変更する構成としたが、この構成に限らない。例えば、安全な位置への変更指示を警告音声メッセージとして運転室内のオペレータに伝え、オペレータが手動で旋回位置を安全な位置へと変更する構成としてもよい。このとき、規制領域範囲80側への旋回動作を禁止するようにしてもよい。
【0186】
また、上記各実施形態では、上部旋回体4の旋回動作を行うアクチュエータとして旋回用油圧モータ51を用いる構成としたが、この構成に限らない。例えば、エンジンや電動モータ等の他のアクチュエータを用いてもよい。この場合は、圧油の流量(比例電磁弁50の開度)に代えて、例えばエンジンの出力(回転数等)や電動モータの出力(回転数等)を制御することで旋回規制制御を行う。
また、上記各実施形態では、開度Aとして60[%]を、開度Bとして30[%]を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、「A>B」の関係であれば他の開度としてもよい。
また、上記各実施形態では、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bの旋回角度範囲β1[°]と、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bの旋回角度範囲β2[°]との関係を、「β1<β2」としたが、この構成に限らない。例えば、「β1>β2」の関係としてもよいし、他の角度範囲としてもよい。角度の割合についても、規制領域範囲80を50[%]、第1及び第2の油圧緩衝範囲81A及び81Bを20[%]、第3及び第4の油圧緩衝範囲82A及び82Bを30[%]とする構成に限らず、他の割合及び大小関係としてもよい。
【0187】
また、上記各実施形態では、GNSS受信機や各種センサによってバックホウ1の位置及び作業機3の位置を検出する構成としたが、この構成に限らず、TSを用いて位置を検出する構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、クローラ装置で走行する構成のバックホウを例に挙げて説明したが、この構成に限らず、車輪等の他の走行手段で走行する構成のバックホウに対しても本発明は適用可能である。
また、上記各実施形態では、作業車両としてバックホウを例に挙げて説明したが、この構成に限らず、例えば、タワークレーン、ラフタークレーン、クローラークレーン等の旋回体を有する他の作業車両に対しても本発明は適用可能である。
【0188】
例えば、開口部などにおいてクレーンを用いて高所からの荷を開口部下へと下ろす作業において、本発明をクレーンに適用することは好適である。例えば、図40の例では、本発明をタワークレーン10に適用した場合を示すが、工事用桟橋102上から開口部103の下へと工事用の荷を下ろす作業を行っている様子を示している。開口部103の周囲に設けられた転落防止用の手摺112には、上記第2実施形態の第2外部警報機92の無線受信機92aが設置されている。また、図40の例では、開口部103の下までの距離が長いため、警報機92bは開口部103の下に設置されている。そして、無線受信機92aと警報機92bとは信号線92cにて接続されている。ここで、開口部103側の180°の旋回範囲は規制領域範囲80として設定され且つ旋回禁止フラグがOFFに設定されていることとする。図40に示すように、タワークレーン10の旋回部の旋回位置は、規制領域範囲80内であるため、タワークレーン10の旋回規制制御部176は、無線機73を介して警報信号ASを無線送信する。そして、この警報信号ASは、無線受信機92aを介して受信され、警報機92bから、例えば「荷下ろし中、離れてください」などの警告音声メッセージが出力される。これにより、開口部103の下の作業員Eは、自身上方の工事用桟橋102上で荷下ろし作業が行われていることを知ることが可能である。
【0189】
また、上記各実施形態において、規制領域範囲80及び油圧緩衝範囲81~82の各範囲において、バックホウ1の旋回動作を規制する制御と警報を出力する制御との双方を行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、警報を出力する制御のみを行う構成としてもよい。この構成の場合、旋回速度を規制する制御が行われないため、警告音声メッセージとして、「停止中」などのメッセージに代えて、例えば「規制対象に接近中」、「規制対象領域内を通過中」などの警告音声メッセージを出力する。
【符号の説明】
【0190】
1 バックホウ
2 機体
3 作業機
4 上部旋回体
5 運転室
6 走行装置
7 作業車両用旋回制御システム
8 旋回範囲
20 第2コントローラ
30 ブーム
31 アーム
32 バケット
32T 爪先部
40 動力源
41 油圧ポンプ
42 圧油供給装置
50 比例電磁弁
51 旋回用油圧モータ
70 コントロールボックス
70a 第1コントローラ
70b メモリリーダ
70c 記憶装置
70d 表示入力装置
71A~71B 第1~第2GNSS受信機
72A~72C 第1~第3角度センサ
73 無線機
74 ジャイロセンサ
75 旋回角度センサ
80 規制領域範囲
81A,81B 第1,第2の油圧緩衝範囲
82A,82B 第3,第4の油圧緩衝範囲
83 通常旋回範囲
85 移動可能範囲
90 内部警報機
91~93 第1~第3外部警報機
92a 無線受信機
92b 警報機
92c 信号線
94 接近通知信号送信機
120 列車
121 線路
130 開口部
140 手摺
170 測位情報補正部
171 機体座標算出部
172 バケット座標算出部
173 画像表示処理部
174 作業機姿勢算出部
175 旋回範囲設定部
176 旋回規制制御部
200 第1のガイダンス画像
400 平面図
700 旋回範囲設定案内画像
701 バックホウ画像
702 CAD画像
703 規制対象画像
704 GNSS情報画像
705 方位磁針画像
706 操作ボタン画像
708 情報表示枠画像
709 終了ボタン画像
710 旋回範囲手動設定開始ボタン画像
711 旋回範囲自動設定開始ボタン画像
712 旋回角記憶ボタン画像
713 肯定ボタン画像
714 否定ボタン画像
715 規制対象領域画像
716 手摺画像
730 旋回範囲手動設定画像
750 第2のガイダンス画像
800 旋回範囲画像
801 規制領域範囲画像
802A,802B 第1,第2の油圧緩衝範囲画像
803A,803B 第3,第4の油圧緩衝範囲画像
804 通常旋回範囲画像
850 移動可能範囲画像
910,921 警報出力画像
920 警報機画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
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図39
図40
図41
図42
図43