(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】カムシャフト
(51)【国際特許分類】
F01L 1/04 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
F01L1/04 C
(21)【出願番号】P 2018056511
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂川 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】町田 剛太郎
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-041906(JP,A)
【文献】特開昭63-071506(JP,A)
【文献】特開昭60-033301(JP,A)
【文献】特開2010-059821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0122424(US,A1)
【文献】特開昭63-134806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04
F01M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動弁機構に用いられるカムシャフトであって、
中空軸部とこれに支持されるカム部とを備えるシャフト本体と、
前記中空軸部の軸方向の開口端部に挿入されるスリーブ部材と、
前記スリーブ部材に挿入され、前記開口端部を閉塞するプラグ部材と、
を有し、
前記スリーブ部材は、前記中空軸部の内側を向く第1端部と、前記中空軸部の外側を向く第2端部と、を備え、
前記第1端部の内周面は、前記第2端部から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面であ
り、
前記中空軸部には径方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記中空軸部の軸方向において、前記第1端部の前記テーパ面は前記プラグ部材と前記貫通孔との間に位置する、
カムシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載のカムシャフトにおいて、
前記第2端部の内周面は、前記第1端部から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面である、
カムシャフト。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のカムシャフトにおいて、
前記スリーブ部材の少なくとも一部は、前記カム部に対して前記中空軸部の径方向に重なる、
カムシャフト。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のカムシャフトにおいて、
前記カム部には前記貫通孔を露出させる切り欠きが形成されている、
カムシャフト。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のカムシャフトにおいて、
前記スリーブ部材が挿入される前記開口端部は、カム回転体が取り付けられる取付部とは逆側に位置する端部である、
カムシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに用いられるカムシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドには、動弁機構を駆動するカムシャフトが設けられる(特許文献1および2参照)。このカムシャフトを回転させることにより、吸気バルブや排気バルブを開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-41906号公報
【文献】実開昭58-173708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダヘッド内で回転するカムシャフトには、軽量化や高剛性化が求められている。カムシャフトの剛性を維持しつつ質量を低減するためには、中空構造のカムシャフト内に補強部材を組み込むことが考えられる。しかしながら、補強部材によってカムシャフト内を複雑に構成することは、カムシャフトの生産性を低下させる要因であった。つまり、カムシャフトに対して切削加工を施した後には、カムシャフトを洗浄して切粉等を除去する必要があるが、補強部材の形状によってはカムシャフトの洗浄作業が困難となっていた。
【0005】
本発明の目的は、カムシャフトに補強部材を組み込みつつ、カムシャフトの生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカムシャフトは、エンジンの動弁機構に用いられるカムシャフトであって、
中空軸部とこれに支持されるカム部とを備えるシャフト本体と、前記中空軸部の軸方向の開口端部に挿入されるスリーブ部材と、前記スリーブ部材に挿入され、前記開口端部を閉塞するプラグ部材と、を有し、前記スリーブ部材は、前記中空軸部の内側を向く第1端部と、前記中空軸部の外側を向く第2端部と、を備え、前記第1端部の内周面は、前記第2端部から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面であり、前記中空軸部には径方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記中空軸部の軸方向において、前記第1端部の前記テーパ面は前記プラグ部材と前記貫通孔との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中空軸部の軸方向の開口端部に挿入されるスリーブ部材は、中空軸部の内側を向く第1端部と、中空軸部の外側を向く第2端部と、を備え、第1端部の内周面は、第2端部から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面である。これにより、カムシャフトにスリーブ部材を組み込みつつ、カムシャフトの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態であるカムシャフトが用いられたエンジンを示す概略図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿ってヘッド本体の構造を示す図である。
【
図3】(a)はカムシャフトを示す側面図であり、(b)は
図3(a)のA-A線に沿う断面図である。
【
図4】(a)および(b)は、カムシャフトの各製造工程におけるワークの加工状況を示す図である。
【
図5】(a)および(b)は、カムシャフトの各製造工程におけるワークの加工状況を示す図である。
【
図6】(a)および(b)は、カムシャフトの各製造工程におけるワークの加工状況を示す図である。
【
図7】機械加工時のリアピースおよびその近傍を示す図である。
【
図8】ワークW洗浄時の洗浄液流れを簡単に示した図である。
【
図9】カムシャフト内のオイル流れを簡単に示した図である。
【
図10】(a)はカムロブとリアピースとの位置関係の一例を示す図であり、(b)はカムロブとリアピースとの位置関係の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[エンジン構造]
図1は本発明の一実施の形態であるカムシャフトが用いられたエンジン10を示す概略図である。
図1に示すように、エンジン10は、一方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック11と、他方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック12と、一対のシリンダブロック11,12に支持されるクランクシャフト13と、を有している。各シリンダブロック11,12に形成されるシリンダボア14にはピストン15が収容されており、ピストン15にはコネクティングロッド16を介してクランクシャフト13が連結されている。
【0011】
各シリンダブロック11,12には、吸気ポート20および排気ポート21を備えたシリンダヘッド22,23が設けられている。また、シリンダヘッド22,23には、吸気ポート20や排気ポート21を開閉する動弁機構24が設けられている。つまり、シリンダヘッド22,23には、吸気ポート20を開閉する吸気バルブ30が組み付けられるとともに、吸気バルブ30を駆動する吸気側のロッカーアーム31およびカムシャフト32が組み付けられている。また、シリンダヘッド22,23には、排気ポート21を開閉する排気バルブ40が組み付けられるとともに、排気バルブ40を駆動する排気側のロッカーアーム41およびカムシャフト42が組み付けられている。なお、シリンダヘッド22,23は、シリンダブロック11,12に組み付けられるヘッド本体25、およびヘッド本体25に組み付けられるロッカーカバー26等によって構成されている。
【0012】
図2は
図1のA-A線に沿ってヘッド本体25の構造を示す図である。
図2に示すように、シリンダヘッド22のヘッド本体25には、吸気側のカムシャフト32を組み付けるため、半円状のボア部を備えた3つの支持壁33が設けられている。これら支持壁33のボア部にはカムシャフト42のジャーナル34a~34cが組み付けられており、このジャーナル34a~34cを挟み込むように支持壁33には図示しないキャップ部材が組み付けられる。同様に、シリンダヘッド22のヘッド本体25には、排気側のカムシャフト42を組み付けるため、半円状のボア部を備えた3つの支持壁43が設けられている。これら支持壁43のボア部にはカムシャフト42のジャーナル44a~44cが組み付けられており、このジャーナル44a~44cを挟み込むように支持壁43には図示しないキャップ部材が組み付けられる。
【0013】
また、カムシャフト32,42の端部であるフロントエンド35,45には、カムスプロケット36,46を備えた油圧アクチュエータ37,47が設けられている。カムスプロケット36,46にはタイミングチェーン48が巻き掛けられており、このタイミングチェーン48はクランクシャフト13の図示しないクランクスプロケットにも巻き掛けられる。つまり、カムシャフト32,42とクランクシャフト13とは、タイミングチェーン48を介して互いに連結されている。なお、油圧アクチュエータ37,47は、カムシャフト32,42とカムスプロケット36,46との位相をずらすことにより、バルブタイミングを調整することが可能である。
【0014】
[カムシャフト構造]
図3(a)はカムシャフト42を示す側面図であり、
図3(b)は
図3(a)のA-A線に沿う断面図である。以下の説明では、
図3(a)および(b)に基づき、排気側のカムシャフト42の構造について説明するが、吸気側のカムシャフト32の構造については、排気側と同様の構造を有することからその説明を省略する。
【0015】
図3(a)および(b)に示すように、カムシャフト42は、中空軸部50およびカムロブ(カム部)51a~51dを備えたシャフト本体52を有している。シャフト本体52を構成する中空軸部50には、内部流路53が形成されている。また、中空軸部50の軸方向の一方の端部50aには、内部流路54を備えたフロントエンド45が設けられている。一方、中空軸部50の軸方向の他方の端部(開口端部)50bには、筒状に形成されたリアピース(スリーブ部材)55が挿入されている。
図2に示されるように、カムシャフト42のフロントエンド(取付部)45には、カムスプロケット(カム回転体)46が取り付けられている。つまり、リアピース55が挿入される中空軸部50の端部50bとは、カムスプロケット46が取り付けられるフロントエンド45とは逆側に位置する端部である。なお、シャフト本体52には、内部流路53と内部流路54とを互いに連通する連通路56が形成されている。
【0016】
図3(b)の拡大部分に示すように、筒状に形成されるリアピース55は、中空軸部50の内側(矢印X1方向)を向く第1テーパ部(第1端部)61と、中空軸部50の外側(矢印X2方向)を向く第2テーパ部(第2端部)62と、第1テーパ部61と第2テーパ部62との間に設けられる円筒部63と、を有している。第1テーパ部61の内周には、中空軸部50の内側(矢印X1方向)に向けて内径が拡大するテーパ面61aが形成されている。つまり、第1テーパ部61の内周面は、第2テーパ部62から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面61aである。また、第2テーパ部62の内周には、中空軸部50の外側(矢印X2方向)に向けて内径が拡大するテーパ面62aが形成されている。つまり、第2テーパ部62の内周面は、第1テーパ部61から離れるにつれて内径が拡大するテーパ面62aである。また、円筒部63の内周には、両側のテーパ面61a,62aに連なる円筒面63aが形成されている。このリアピース55の円筒部63にはプラグ(プラグ部材)64が挿入されており、プラグ64によってシャフト本体52の端部50bが閉塞されている。
【0017】
図3(a)に示すように、カムシャフト42には、3つのジャーナル44a~44cが形成されている。つまり、フロントエンド45とカムロブ51aとの間にはジャーナル44aが形成されており、カムロブ51aとカムロブ51bとの間にはジャーナル44bが形成されており、カムロブ51cとカムロブ51dとの間にはジャーナル44cが形成されている。また、
図3(b)に示すように、ジャーナル44aには径方向に貫通するオイル導入孔70が形成されており、ジャーナル44b,44cには径方向に貫通するオイル供給孔71が形成されている。さらに、カムロブ51a~51d近傍の中空軸部50には径方向に貫通するオイル噴射孔(貫通孔)72が形成されており、カムロブ51a~51dにはオイル噴射孔72を露出させる切り欠き73が形成されている。
【0018】
図2に示すように、ヘッド本体25の支持壁43にはオイルを案内する油路74が形成されており、この油路74にはカムシャフト42のオイル導入孔70が対向している。つまり、油路74およびオイル導入孔70を介して、ヘッド本体25からカムシャフト42にはオイルが供給されている。
図3(b)に示すように、オイル導入孔70から内部流路54に取り込まれたオイルは、内部流路54から油圧アクチュエータ47に供給されるとともに、内部流路54から連通路56および内部流路53を経てオイル供給孔71やオイル噴射孔72に供給される。カムシャフト42を回転させることにより、内部流路53内のオイルはオイル噴射孔72からロッカーアーム41やバルブ40に向けて飛散する。なお、吸気側のカムシャフト32についても、排気側のカムシャフト42と同様に、内部流路やオイル噴射孔等が形成されている。
【0019】
[製造工程]
続いて、カムシャフト42の製造工程について説明する。
図4~
図6は、カムシャフト42の各製造工程におけるワークWの加工状況を示す図である。
図4~
図6には、
図3(b)に示した断面と同様の断面が示されている。
【0020】
図4(a)に示すように、中空軸部50の材料であるパイプ材80の外周に、カムロブ51a~51dの材料であるカム材81が位置決めされて接合される。なお、パイプ材80とカム材81との接合方法として、例えば拡散接合を用いることができる。また、
図4(b)に示すように、パイプ材80の軸方向の一端部には、フロントエンド45の材料であるフロントピース材82が接合され、パイプ材80の軸方向の他端部には、リアピース55の材料であるリアピース材83が挿入されて接合される。なお、パイプ材80とフロントピース材82との接合方法として、例えば摩擦圧接を用いることができ、パイプ材80とリアピース材83との接合方法として、例えばろう付けを用いることができる。このように、パイプ材80、カム材81、フロントピース材82およびリアピース材83を互いに接合することにより、カムシャフト42を製造するためのワークWが完成する。
【0021】
図5(a)に示すように、ワークWの一端面つまりフロントピース材82の端面には、機械加工時に位置決めするためのテーパ穴84が形成される。また、ワークWの他端面つまりリアピース材83の端面には、機械加工時に位置決めするためのテーパ面62aが形成される。その後、
図5(b)に示すように、ワークWに対して切削加工や研削加工等の機械加工を施すことにより、ワークWには、ジャーナル44a~44c、カムロブ51a~51d、オイル導入孔70、オイル供給孔71、オイル噴射孔72、内部流路54および連通路56等が形成される。
【0022】
ここで、
図7は機械加工時のリアピース55およびその近傍を示す図である。
図7に示すように、機械加工時においてはリアピース55のテーパ面62aに治具100を押し付けることにより、図示しない切削装置等に対してワークWが位置決めされる。このように、パイプ材80に対して位置決め用のテーパ面を形成するのではなく、リアピース55に対して位置決め用のテーパ面62aを形成するようにしたので、肉厚の薄いパイプ材80を用いてカムシャフト42を製造することができ、カムシャフト42の軽量化を達成することができる。また、パイプ材80にリアピース55が挿入されることから、補強部材として機能するリアピース55によってパイプ材80を補強することができ、この点からも、パイプ材80の肉厚を薄くしてカムシャフト42の軽量化を達成することができる。
【0023】
続いて、
図6(a)に矢印αで示すように、切削加工後のワークWから切粉等の所謂コンタミを除去するため、洗浄液がワークW内の内部流路53,54に供給される。これにより、ワークWの内部流路53,54等に残存するコンタミを外部に排出することができ、ワークWからコンタミを除去することができる。ここで、
図8はワークW洗浄時の洗浄液流れを簡単に示した図である。
図8に矢印で示すように、ワークW内に供給された洗浄液は、内部流路53の内周面に沿って流される。このとき、リアピース55にはテーパ面61aが形成されることから、洗浄液と共にコンタミ101をスムーズに押し流すことができ、コンタミ101をリアピース55に引っ掛けることなく外部に排出することができる。これにより、ワークWを簡単に洗浄することができるため、洗浄工程での工数を削減することができ、カムシャフト42の生産性を向上させることができる。そして、洗浄工程を経てワークWからコンタミ101を除去した後に、
図6(b)に示すように、リアピース55の円筒部63にプラグ64が圧入され、カムシャフト42が完成する。
【0024】
[オイル流れ]
続いて、エンジン運転時におけるカムシャフト42内のオイル流れについて説明する。
図9はカムシャフト42内のオイル流れを簡単に示した図である。
図9に示すように、リアピース55にはテーパ面61aが形成されることから、矢印βで示すように、プラグ64に当たって径方向外方に案内されたオイルは、テーパ面61aに沿って向きを変えてオイル噴射孔72に供給される。このように、リアピース55に対してテーパ面61aを形成することにより、内部流路53からオイル噴射孔72に向けてオイルをスムーズに誘導することができ、多くのオイルをオイル噴射孔72から噴射させることができる。これにより、ロッカーアーム41等を十分に潤滑することができ、エンジン10を適切に機能させることができる。
【0025】
[カムロブとリアピースとの位置関係]
続いて、カムロブ51dとリアピース55との位置関係について説明する。
図10(a)はカムロブ51dとリアピース55との位置関係の一例を示す図であり、
図10(b)はカムロブ51dとリアピース55との位置関係の他の例を示す図である。
【0026】
図10(a)に符号L1で示すように、リアピース55の一部は、カムロブ51dに対して中空軸部50の径方向に重なっている。このように、リアピース55とカムロブ51dとを径方向に重ねることにより、カムロブ51dを支持する中空軸部50をリアピース55によって補強することができる。これにより、回転するカムロブ51dがロッカーアーム41を押し込む場合であっても、中空軸部50の変形を抑制してカムロブ51dの位置精度を高めることができ、バルブ40を精度良く開閉させることができる。また、
図2に示すように、カムロブ51dを備える中空軸部50の端部50bは、ヘッド本体25によって支持されていない自由端であるが、この場合であっても、中空軸部50にリアピース55が組み込まれることから、中空軸部50の変形を抑制することが可能である。なお、
図10(a)に示した例では、リアピース55の一部がカムロブ51dに重なっているが、これに限られることはなく、オイル噴射孔72を塞がないように構成されていれば、カムロブ51dに対してリアピース55の全部を中空軸部50の径方向に重ねても良い。
【0027】
前述の説明では、リアピース55の少なくとも一部がカムロブ51dに対して径方向に重なっているが、これに限られることはなく、リアピース55がカムロブ51dに対して径方向に重なっていなくても良い。ここで、
図10(b)に示されるカムシャフト90は、中空軸部50の端部50bを軸方向に伸ばした実施形態のカムシャフトである。
図10(b)に符号L2で示すように、カムロブ51dに対してリアピース55が軸方向に離れていても良い。この場合であっても、中空軸部50にリアピース55を挿入することにより、中空軸部50を補強して変形を抑制することができる。また、リアピース55に位置決め用のテーパ面62aが形成されることから、肉厚の薄いパイプ材80を用いてカムシャフト42を製造することができ、カムシャフト42の軽量化を達成することができる。しかも、リアピース55にはテーパ面61aが形成されることから、洗浄液と共にコンタミをスムーズに押し流すことができ、コンタミをリアピース55に引っ掛けることなく外部に排出することができる。これにより、ワークWを簡単に洗浄することができるため、洗浄工程での工数を削減することができ、カムシャフト90の生産性を向上させることができる。
【0028】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、水平対向エンジン10に用いられるカムシャフト42に本発明を適用しているが、これに限られることはなく、V型エンジン、直列エンジン、単気筒エンジン等に用いられるカムシャフトに本発明を適用しても良い。前述の説明では、タイミングチェーン48を用いてカムシャフト32,42を連結しているが、これに限られることはなく、タイミングベルトを用いてカムシャフト32,42を連結しても良い。この場合には、カムシャフト32,42のフロントエンド35,45に対し、カム回転体としてのカムプーリが取り付けられる。
【0029】
前述の説明では、リアピース55にプラグ64を挿入しているが、これに限られることはなく、中空軸部50の内部をオイルの流路として使用しない場合には、リアピース55からプラグ64を外しても良い。また、前述の説明では、リアピース55に外側のテーパ面62aを形成しているが、これに限られることはなく、リアピース55から外側のテーパ面62aを削減しても良い。つまり、リアピース55には、第2端部として第2テーパ部62が設けられているが、これに限られることはなく、第2端部として円筒部を設けても良い。このように、リアピース55に内側のテーパ面61aだけが形成される場合であっても、テーパ面61aに沿って洗浄液と共にコンタミをスムーズに押し流すことができ、コンタミをリアピース55に引っ掛けることなく外部に排出することができる。これにより、ワークWを簡単に洗浄することができるため、洗浄工程での工数を削減することができ、カムシャフト42の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 エンジン
24 動弁機構
32 カムシャフト
42 カムシャフト
45 フロントエンド(取付部)
46 カムスプロケット(カム回転体)
50 中空軸部
50b 端部(開口端部)
51a~51d カムロブ(カム部)
52 シャフト本体
55 リアピース(スリーブ部材)
61 第1テーパ部(第1端部)
61a テーパ面(内周面)
62 第2テーパ部(第2端部)
62a テーパ面(内周面)
64 プラグ(プラグ部材)
72 オイル噴射孔(貫通孔)
73 切り欠き
90 カムシャフト