IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大建工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水性塗料組成物 図1
  • 特許-水性塗料組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220309BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220309BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220309BHJP
   C09D 7/45 20180101ALI20220309BHJP
   C09D 7/61 20180101ALN20220309BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 Z
C09D5/02
C09D7/45
C09D7/61
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018058127
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019167497
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 森平
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132091(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105617(WO,A1)
【文献】特開2015-071703(JP,A)
【文献】特開2017-110130(JP,A)
【文献】特開2019-065264(JP,A)
【文献】特開2019-093692(JP,A)
【文献】特開2009-067910(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006993(WO,A1)
【文献】特開2002-338897(JP,A)
【文献】特表2007-514810(JP,A)
【文献】特開2001-301313(JP,A)
【文献】特開2007-320977(JP,A)
【文献】特開2009-185206(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/00
C09D 5/02
C09D 7/45
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒100重量部に対し8~30重量部の多孔性物質と2~4重量部の合成樹脂とを含む塗料組成物に、該塗料組成物の全体量の0.005~0.05%のセルロース系ナノファイバーが添加されており
上記多孔性物質は、活性炭、シリカ、珪藻土の少なくとも1つから選択されるものであって、微細孔に物質を吸着する吸着性を有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
請求項1において、
塗料組成物の全体量の0.02~0.05%のセルロース系ナノファイバーが添加されていることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、
セルロース系ナノファイバーは、セルロースナノファイバー、キチンナノファイバーの少なくとも1つから選択されるものであることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1つにおいて、
合成樹脂は、水溶性樹脂又は水分散エマルション樹脂の少なくとも1つであることを特徴とする水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性物質を含む水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗料組成物として、例えば特許文献1に示されるように、活性炭等の吸着性多孔体を含有した粉体塗料や、特許文献2に示されるように、同様の多孔質材料粉末を溶媒(水)中に分散させた水性塗料組成物が知られており、これらを基材の表面に塗布することで、消臭機能を有する消臭塗料とすることが行われている。例えば室内に施工される建材に塗布することにより、室内に滞留している揮発性有機化合物や臭気物等を吸着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-242659号公報
【文献】特開2012-224747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のように多孔性物質を含む塗料組成物では、多孔性物質を溶媒に均一に分散させるために塗料組成物を撹拌しておくことが必要であり、撹拌が停止すると、多孔性物質の沈殿(凝集)が生じる。こうして多孔性物質が一旦沈殿すると、その沈殿した多孔性物質を再度の撹拌によって分散させることが困難になる。
【0005】
このように多孔性物質に沈殿する現象があることから、塗装ラインにおいて、1ロット生産した塗料を最初に使用してから使用停止して、その後に再使用する場合に、その停止時間(再使用までの経過時間)が長いときには当該塗料が使用できないことがあり、生産上の損失となっている。
【0006】
前記活性炭等の多孔性物質を粉砕によって数μmサイズにすることにより、その分散性を維持する方法も考えられるが、その場合、粉砕に伴い多孔性物質の微細孔が損傷されて吸着性能が低下する可能性がある。
【0007】
また、塗料中に分散剤と呼ばれる界面活性剤を添加して多孔性物質の沈降を抑制する方法も検討されているが、多孔性物質が界面活性剤を吸着することにより、沈降抑制効果を低下させるとともに、その吸着は経時で起こるため、塗料自体の粘度等の状態を経時で変化させ、工業生産的に塗布量のばらつき等の不具合を生じてしまう。また、多孔性物質の吸着孔を塞ぐことで本来の目的である吸着性能を低下させる恐れがある。
【0008】
他の手法として、塗料自体の粘度を上げることで多孔性物質の沈降を抑制する方法も考えられるが、塗装生産工程での使用時に希釈が必要なことや、希釈後に粘度等の経時変化が発生する等の生産上の不具合が発生する。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、多孔性物質を含む塗料組成物に特定の物質を微量添加することで、多孔性物質の粉砕や界面活性剤の添加等を要することなく、多孔性物質の沈殿を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、塗料組成物に微量のセルロース系ナノファイバーを添加するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明の水性塗料組成物は、水性溶媒100重量部に対し8~30重量部の多孔性物質と2~4重量部の合成樹脂とを含む塗料組成物に、該塗料組成物の全体量の0.005~0.05%の固形分としてのセルロース系ナノファイバーが添加されており上記多孔性物質は、活性炭、シリカ、珪藻土の少なくとも1つから選択されるものであって、微細孔に物質を吸着する吸着性を有することを特徴とする。
【0012】
この第1の発明では、塗料組成物に分散性の高いセルロース系ナノファイバーが塗料組成物の全体量の0.005~0.05%添加されているので、このセルロース系ナノファイバーに多孔性物質が絡まった状態となり、水性塗料組成物の撹拌停止後に多孔性物質が沈降して凝集しようとしても、その凝集はセルロース系ナノファイバーの介在により抑制される。よって、多孔性物質の粉砕や界面活性剤の添加を要することなく、多孔性物質の沈殿を抑制することができる。また、仮に沈殿したとしても、セルロース系ナノファイバーによって多孔性物質の撹拌抵抗が小さくなり、撹拌が容易になって多孔性物質を分散させることができる。
【0013】
また、セルロース系ナノファイバーの添加量が0.005~0.05%であるので、水性塗料組成物を撹拌の停止後に再撹拌するときに撹拌抵抗が小さく保たれるまでの時間を長く延ばすことができる。
【0014】
塗料組成物に添加するセルロース系ナノファイバーの固形分添加量は全体量の0.005~0.05%という微量であるので、ナノファイバーによる増粘効果も殆どなく、水性塗料組成物は汎用的な塗装工程でも使用することができ、水性塗料組成物のコストアップを招くことはなく、多孔性物質や樹脂の成分量を制限することもない。
【0015】
セルロース系ナノファイバーの添加量は、0.005%未満であると、多孔性物質を沈降及び凝集する効果が十分に得られない一方、0.05%を超えると、コストが増加する上、ナノファイバーによる粘度上昇が著しく発生するため、0.002~0.05%とされている。
【0016】
また、上記多孔性物質は、例えば粒径が数μmから100μm程度の活性炭、シリカ、珪藻土の少なくとも1つから選択されるものであることで、微細孔に物質を吸着する吸着性を有する望ましい多孔性物質が具体的に得られる。
【0017】
の発明は、第1の発明において、塗料組成物の全体量の0.02~0.05%のセルロース系ナノファイバーが添加されていることを特徴とする。
【0018】
この第の発明では、セルロース系ナノファイバーの添加量を0.02~0.05%とすることで、水性塗料組成物を撹拌の停止後に再撹拌するときに撹拌抵抗が小さく保たれるまでの時間をさらに長く延ばすことができる。
【0019】
の発明は、第1又は第2の発明において、セルロース系ナノファイバーは、例えば繊維径が数十nmで繊維長が数μmのセルロースナノファイバー、キチンナノファイバーの少なくとも1つから選択されるものであることを特徴とする。
【0020】
この第の発明では、多孔性物質が沈降して凝集するのを抑制し、仮に沈殿しても水性塗料組成物の撹拌抵抗が小さくなるセルロース系ナノファイバーが容易に得られる
【0021】
の発明は、第1~第の発明のいずれか1つにおいて、合成樹脂は、アクリル樹脂、酢ビ系樹脂、ウレタン樹脂、ポバール樹脂等の水性塗料として一般的に用いられる水溶性樹脂、又は水分散エマルション樹脂のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。このことで、水性塗料組成物に多孔性物質と共に含まれる合成樹脂が具体的に得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の水性塗料組成物によると、水性溶媒に、微細孔による吸着する吸着性を有する多孔性物質と合成樹脂とを含む塗料組成物に、その全体量の0.005~0.05%のセルロース系ナノファイバーを添加し、多孔性物質は、活性炭、シリカ、珪藻土の少なくとも1つから選択されるものとしたことにより、水性塗料組成物の撹拌停止後に多孔性物質が沈降して凝集しようとするのをセルロース系ナノファイバーの介在により抑制でき、多孔性物質の粉砕や界面活性剤の添加を要することなく、多孔性物質の沈殿を抑制することができるとともに、仮に沈殿しても水性塗料組成物の撹拌抵抗を小さくして、撹拌により多孔性物質を容易に分散させることができ、延いては水性塗料組成物の生産後の長期使用化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、塗料組成物の組成例を示す図である。
図2図2は、組成例にセルロースナノファイバーを添加量を変えて添加したときの撹拌停止後の活性炭の分散性についての評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
本発明の実施形態に係る水性塗料組成物は、その組成として、水性溶媒、多孔質物質及び合成樹脂を含んでいる。水性溶媒は、例えば水が用いられる。
【0026】
多孔性物質は、例えば活性炭、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土等の鉱石系の少なくとも1つが用いられ、微細孔に消臭物質等を吸着する吸着性を有する。活性炭は、粒径が数μmから100μm程度のものであり、例えば70μm以下のものを使用するのが望ましい。
【0027】
合成樹脂は、アクリル樹脂、酢ビ系樹脂、ウレタン樹脂、ポバール樹脂等の水性塗料として一般的に用いられる水溶性樹脂、又は水分散エマルション樹脂のうちの少なくとも1つが用いられる。水性塗料組成物には、その他、分散剤、消泡剤等の塗料安定化剤を加えてもよい。
【0028】
そして、水性塗料組成物には、セルロース系ナノファイバーが添加されている。このセルロース系ナノファイバーは、例えばセルロースナノファイバー、キチンナノファイバーの少なくとも1つからなるのが好ましい。そのうち、セルロースナノファイバーは、例えばセルロース・キチン・キトサンを超高圧ウォータージェット技術で加工した極細繊維であり、その直径は約0.02~0.05μm、長さは数μm程度である。このセルロースナノファイバーは、その低線熱膨張性、高弾性、透明性、生体適合性、抗菌性、生理機能改善効果等の特長を有する。
【0029】
上記セルロース系ナノファイバーは、水性溶媒100重量部に対し8~30重量部の多孔性物質と2~4重量部の合成樹脂とを含む塗料組成物に、該塗料組成物の全体量の固形分として0.002~0.05%だけ添加されている。すなわち、セルロース系ナノファイバーが添加されていない塗料組成物は、水性溶媒100重量部と多孔性物質8~30重量部と合成樹脂2~4重量部とを含んだものであり、セルロース系ナノファイバーは、その塗料組成物の全体量に対して0.002~0.05%添加されている。
【0030】
このセルロース系ナノファイバーの添加量は、塗料組成物の全体量の0.002%未満であると、多孔性物質を沈降及び凝集する効果が十分に得られない一方、0.05%を超えると、コストが増加する上、増粘が著しいため、0.002~0.05%とされている。
【0031】
また、多孔性物質の沈降及び凝集を抑制するために、このセルロース系ナノファイバーの添加量が塗料組成物の全体量の0.005~0.05%であればより好ましく、0.02~0.05%であればさらに好ましい。
【0032】
この実施形態の水性塗料組成物においては、セルロース系ナノファイバーが添加されているので、そのセルロース系ナノファイバーに多孔性物質が絡まった状態となる。セルロース系ナノファイバーの分散性は高いので、水性塗料組成物の撹拌停止後に多孔性物質が沈降して凝集しようとしても、その凝集はセルロース系ナノファイバーの介在により抑制される。このことによって多孔性物質の沈殿を抑制することができる。
【0033】
また、こうしてセルロース系ナノファイバーの添加によって多孔性物質の沈殿が抑制されるので、その沈殿の抑制のために、多孔性物質を粉砕せずとも済み、粉砕に伴って多孔性物質の微細孔が損傷されて吸着性能が低下することはない。また、同様に、界面活性剤を添加することも不要となり、界面活性剤の使用割合の増加によるコストアップを招くことはなく、時間の経過と共に塗料そのものの粘度の変化に対する再度の希釈作業も不要となる。
【0034】
しかも、セルロース系ナノファイバーの添加による多孔性物質の沈殿抑制効果により、増粘剤、消泡剤、チクソ性剤等の一般的な塗料安定化剤を減らせるか又は用いる必要がなくなる。また、塗料の安定化のために、塗料を増粘させた状態で作っておき、それを塗布前に希釈して使用するという2度手間も不要となる。
【0035】
さらに、多孔性物質が仮に沈殿したとしても、セルロース系ナノファイバーの介在によって撹拌抵抗は小さくなる。そのため、水性塗料組成物の再撹拌が容易になって多孔性物質を分散させることができる。
【0036】
また、塗料組成物に添加するセルロース系ナノファイバーの添加量は全体量の0.002~0.05%という微量であるので、水性塗料組成物は汎用的な塗装工程でも使用することができ、水性塗料組成物のコストアップを招くことはなく、多孔性物質や樹脂の成分量を制限することもない。
【実施例
【0037】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。セルロース系ナノファイバーとしてはセルロースナノファイバーを用い、そのセルロースナノファイバーが添加されていない塗料組成物を組成例1及び組成例2の2種類とした。多孔性物質は活性炭(大阪ガス株式会社製の商品名「CW-50-1」及び株式会社クラレ製の商品名「PW-W5」)を用い、合成樹脂はアクリル樹脂及びポバール樹脂とし、水性溶媒は水とした。セルロースナノファイバーは、株式会社スギノマシン製の商品名「BinFi-S IMa」を用いた。
【0038】
[組成例1]
組成例1では、塗料中の固形分組成として活性炭7.5%、アクリル樹脂0.75%、ポバール樹脂1.5%とした。その他は溶媒としての水と組成物質が持つ水分となる。このとき、水分100重量部に対し活性炭は8.3部、アクリル樹脂及びポバール樹脂は合わせて2.5部となる。
【0039】
この組成例1の塗料組成物に対し、比較例を除き、セルロースナノファイバーを添加した。具体的には、セルロースナノファイバーを後から添加するのではなく、先に水にセルロースナノファイバーをホモジナイザーにより分散させ、その水をディスパーで撹拌しながら(比較例では水のみの拡散)、上記活性炭、アクリル樹脂及びポバール樹脂を加えて水性塗料組成物を作製した。
【0040】
[組成例2]
一方、組成例2では、塗料中の固形分組成として活性炭20.0%、アクリル樹脂0.75%、ポバール樹脂1.5%とした。その他は溶媒としての水と組成物質が持つ水分となる。このとき、水分100重量部に対し活性炭は25.7部、アクリル樹脂及びポバール樹脂は合わせて2.9部となる。この組成例2は、組成例1に比べて活性炭の含有量が多く、活性炭が沈降して凝集し易くなっている。
【0041】
そして、組成例1と同様に、この組成例2の塗料組成物に対し、比較例を除き、セルロースナノファイバーを添加した。すなわち、水にセルロースナノファイバーをホモジナイザーにより分散させ、その水をディスパーで撹拌しながら(比較例では水のみの拡散)、活性炭、アクリル樹脂及びポバール樹脂を加えて水性塗料組成物の作製を行った。
【0042】
そして、組成例1及び組成例2のいずれにおいても、セルロースナノファイバーの添加量を以下の実施例1~実施例7及び比較例のように変更した。その実施例1~実施例7及び比較例での添加量は組成例1及び組成例2で同じである。
【0043】
(実施例1)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.05%とした。
【0044】
(実施例2)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.04%とした。
【0045】
(実施例3)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.03%とした。
【0046】
(実施例4)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.02%とした。
【0047】
(実施例5)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.01%とした。
【0048】
(実施例6)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.005%とした。
【0049】
(実施例7)
セルロースナノファイバーの固形分添加量を塗料組成物全体に対し0.002%とした。
【0050】
(比較例)
セルロースナノファイバーは添加せず、その添加量は塗料組成物全体に対し0%である。
【0051】
この組成例1及び組成例2の各々における実施例1~実施例7及び比較例について評価した。具体的には、各例の水性塗料組成物を作製後からディスパーによる撹拌を続けておいた後、その撹拌を停止し、その停止から一定時間(1時間、3時間、8時間、24時間、48時間、168時間)が経過した後の水性塗料組成物をその状態や再度撹拌したときの撹拌抵抗により評価した。その結果を図2に示す。図2では、評価での良否を種別として表しており、その種別は「◎」、「○」、「△」、「×」、「××」の5段階で、「◎」が最も高くて「××」が最も低く、「◎」、「○」、「△」であれば実用上の問題がない評価レベルとした。
【0052】
この図2の結果を考察すると、組成例1のように、活性炭の組成比が低い場合には、セルロースナノファイバーの添加量が多くなるに連れて評価種別が「△」以上(「◎」、「○」、「△」)となる撹拌停止後経過時間が長くなっており、実施例7のように添加量が0.002%では、撹拌停止後に24時間が経過しても再撹拌によって活性炭を分散可能となっている。また、実施例1~6のように添加量が0.005%以上になると、撹拌停止後に168時間(7日)が経過しても評価種別が「△」以上になり、撹拌停止時と同じ状態が維持されるかないしは再撹拌によって活性炭を分散可能となっている。
【0053】
一方、組成例2のように、活性炭の組成比が高くなると、組成例1と同様にセルロースナノファイバーの添加量が多くなるに連れて評価種別が「△」以上となる撹拌停止後経過時間が長くなるものの、組成例1に比べると短くなり、実施例7のように添加量が0.002%では、撹拌停止後に1時間が経過するまでしか再撹拌によって活性炭を分散可能とならず、セルロースナノファイバーの添加のない比較例と同じとなっている。そして、実施例6や実施例5のように添加量が0.005%や0.01%になると、撹拌停止後に3時間が経過するまで再撹拌によって活性炭を分散可能となり、実施例1~4のように添加量が0.02%以上になると、撹拌停止後に168時間(7日)が経過しても評価種別が「△」以上になり、撹拌停止時と同じかないしは再撹拌によって活性炭を分散可能となっている。
【0054】
これらを考慮すると、仮に塗装ラインを停止した後に翌日に再稼働させるまでの時間が例えば8時間としたとき、活性炭の含有量が低い場合(組成例1)にあっては、セルロースナノファイバーの添加量が0.002%であれば、また活性炭の含有量が高い場合(組成例2)にあっては、セルロースナノファイバーの添加量が0.02%であれば、それぞれ評価種別が「△」以上となって再撹拌により活性炭を分散可能となり、実用上効果があることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、活性炭等の多孔性物質が含有された水性塗料組成物において、その撹拌停止後に多孔性物質の沈降・凝集を抑制できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
図1
図2