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  • 特許-熱交換器のタンク構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】熱交換器のタンク構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20220309BHJP
   F28F 9/06 20060101ALI20220309BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F28F9/02 301B
F28F9/02 301Z
F28F9/06
F28F9/02 301J
F28F3/08 311
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018058520
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019168200
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 聡
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055711(JP,A)
【文献】実開昭62-056985(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02434245(EP,A1)
【文献】実開平06-022784(JP,U)
【文献】特開平05-223503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 9/06
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に形成された開口部(1)の外面側にシール用のフランジ部(2)が突設されたタンク本体(3)と、
内面側に環状溝(4)が形成され、外面側にカシメ用の爪部(5)が延長されたプレート(6)と、を具備し、
前記環状溝(4)にタンク本体(3)のフランジ部(2)がシールパッキン(7)を介して嵌入され、前記爪部(5)が前記フランジ部(2)側に断面L字状にカシメられて、カシメ部(8)を形成する熱交換器のタンク構造において、
前記タンク本体(3)の前記外面側に、前記フランジ部(2)と平行な平面を有する基準用フランジ部(9)が突設されており、その前記開口部(1)側の平面(9a)とそれに対向する前記フランジ部(2)の平面(2a)との距離が、所定の距離に離間しており、
前記プレート(6)は、その上端部が平面方形に形成され、
前記爪部(5)が存在しない前記方形のプレート(6)のコーナ部(14)の頂面(14a)が、カシメ部(8)が形成された状態において、フランジ(2)の平面(2a)より上方位置に存在し、その頂面(14a)位置と、前記基準用フランジ部(9)の前記平面(9a)との各コーナにおける各距離(δ1、δ2、δ3、δ4)の各値の差(δ1-δ2、δ2-δ3、δ3-δ4、δ4-δ1)が、1.0mm未満とされた熱交換器のタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂タンクの開口端がパッキンを介してプレートに組み付けられる熱交換器のタンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のラジエータのシール構造は、ラジエータコアとタンク部とを有し、タンク部は取付部を有するケースと、かしめ部を有するコアプレートとで形成する。そのかしめ部は取付部を受け入れるように形成され、その取付部が係止可能な段差部を設け、取付部の下面には突起を形成する。取付部の下面とかしめ部との間にラジエータパッキンを配置したのち、かしめ部をかしめる。この時、取付部が段差部に止着することで、ラジエータパッキンの圧縮量が規制されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-32379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のラジエータのシール構造は、タンクの外周に形成された環状溝の構造が複雑であると共に、タンク自体に特別な突起を形成する必要がある。そのため、構造が複雑で製作が面倒である欠点がある。
そこで、本発明は構造が簡単で組み付けの容易な熱交換器のタンク構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、一端に形成された開口部1の外面側にシール用のフランジ部2が突設されたタンク本体3と、
内面側に環状溝4が形成され、外面側にカシメ用の爪部5が延長されたプレート6と、を具備し、
前記環状溝4にタンク本体3のフランジ部2がシールパッキン7を介して嵌入され、前記爪部5が前記フランジ部2側に断面L字状にカシメられて、カシメ部8を形成する熱交換器のタンク構造において、
前記タンク本体3の前記外面側に、前記フランジ部2と平行な平面を有する基準用フランジ部9が突設されており、その前記開口部1側の平面9aとそれに対向する前記フランジ部2の平面2aとの距離が、所定の距離に離間しており、
前記プレート6は、その上端部が平面方形に形成され、
前記爪部5が存在しない前記方形のプレート6のコーナ部14の頂面14aが、カシメ部8が形成された状態において、フランジ2の平面2aより上方位置に存在し、その頂面14a位置と、前記基準用フランジ部9の前記平面9aとの各コーナにおける各距離δ1、δ2、δ3、δ4の各値の差δ1-δ2、δ2-δ3、δ3-δ4、δ4-δ1が、1.0mm未満とされた熱交換器のタンク構造である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、タンク本体3の外面側に、前記フランジ部2と平行な平面を有する基準用フランジ部9が突設されており、その開口部1a側の平面9aとそれに対向するはフランジ部2の平面2aとの間が、所定の距離に離間しているものである。
それにより、基準用フランジ部9に加重を加えて、シールパッキン7を適正に圧縮しつつ、タンク本体3とプレート6とをカシメ用の爪部5介して容易に接続できる。また、基準用フランジ部9は、タンク本体3の補強リブの作用があり、タンク本体3の剛性を高めると共に、内圧に対する耐圧性を向上する。
【0010】
また、プレート6は、その上端部が平面方形に形成され、爪部5が存在しない方形の各コーナ部14の頂面14aが、カシメ部8が形成された状態において、フランジ2の平面2aより上方位置に存在し、その頂面14a位置と、基準用フランジ部9の前記平面9aとの各コーナにおける各距離δ1、δ2、δ3、δ4の各値の差δ1-δ2、δ2-δ3、δ3-δ4、δ4-δ1が、1.0mm未満とされたものである。
即ち、一例として、|δ1-δ2|<1.0mmである。同様に各部のδの値の差が1.0mmより小さい。これは、各コーナ部間の高さに差がないことを意味し、各部のシールパッキン7の押圧力が均衡して、シールパッキン7の漏れがないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の熱交換器のタンク構造の要部分解斜視図。
図2】同タンク構造の組み立て状態を示す要部斜視図。
図3】同タンク構造の組み立て状態を示す要部縦断面図であって、(A)はその組み付け前の状態を示し、(B)は同組み付け後の状態を示す。
図4】プレート6のコーナ部14の頂部と基準用フランジ部9の平面9aとの距離δの関係を示す。
図5】タンク本体3の基準用フランジ部9の他の実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1図3は本発明の熱交換器をEGRクーラに適用したタンク構造であり、図1はその分解斜視図、図2は同組み立て状態を示す斜視図、図3はその要部縦断面図である。
この例では、多数の偏平チューブ16を積層して、熱交換器のコア17を形成し、その外周をプレート6によって被嵌したものである。このプレート6は、筒状に形成され、その端部の内面側にはブラケット18が接続されており、ブラケット18とプレート6との間に環状溝4が形成され、その環状溝4内にシールパッキン7を介してタンク本体3のフランジ部2が嵌着し、そのフランジ部2の外面側にプレート6の爪部5を折り曲げてカシメ部8を形成しているものである。
【0013】
コア17を構成する偏平チューブ16は、夫々溝型に形成された一対のプレートをその溝底が対向するようにして嵌着したものである。そして、各偏平チューブ16は、その溝底の長手方向両端部が厚み方向に膨出し、その膨出部において各偏平チューブ16が積層されたものである。そして各偏平チューブ16の内部に排気ガスが流通し、外面側に冷却水が流通して、両流体間に熱交換が行われるものである。
この熱交換器はヘッダープレートを不要とするヘッダープレートレス型である。なお、それに代えて、ヘッダープレートを有するものにも本発明は適用できる。その場合には、ヘッダープレートのチューブ挿通孔にチューブが挿通され、その挿通部がろう付される。
【0014】
次に、タンク本体3はその一端に開口部1が設けられ、その端部に環状のフランジ部2が一体に形成されている。さらに、その外面側にはフランジ部2に対して所定距離離れて、フランジ部2に平行に基準用フランジ部9が、その両端部を除き、一体に突設されている。この基準用フランジ部9は、タンク本体3の外周を補強すると共に、熱交換器を組み立てる際の加圧面となる。即ち、シールパッキン7を押圧しつつ、タンク本体3のフランジ2の外周を爪部5で締結する際の加圧力の支持面となる。
【0015】
次に、プレート6の内面側にはブラケット18が接合され、それと開口部1の内面側との間に環状溝4が形成される(図3)。そしてこの環状溝4に図3(A)の如く、シールパッキン7が挿入され、次いで(B)の如く、タンク本体3のフランジ部2が環状溝4に嵌着される。このとき、基準用フランジ部9の上面側が下方に押圧され、シールパッキン7を適量圧着する。次いで、プレート6の爪部5をL字状に折り曲げ、そこにカシメ部8を形成する。このときカシメ部8は図において、その上面と基準用フランジ部9の下面との距離が、高さh1に形成される。
【0016】
なお、プレート6の爪部5は図1に示す如く、その端部に定間隔に突設されている。そして、この例ではプレート6の上端部は平面方形に形成され、その四隅のコーナ部14は爪部5の付根よりも僅かに上方位置に存在する。そして図2に示す如く、各爪部が断面L字状に折り曲げられて、カシメ部8が形成される。このときプレート6のコーナ部14においては、図4に示す如く、コーナ部14の平面14aと基準用フランジ部9の平面9aとの距離が高さδに形成される。
【0017】
そして、各コーナ部14と各基準用フランジ部9の平面9aとの各距離を順に、δ1、δ2、δ3、δ4とする。そして各δどうしの差δ1-δ2、δ2-δ3、δ3-δ4、δ4-δ1が、一例として|δ1-δ2|<1.0mmとなるようにする。同様に他のδ間の差も1.0mm以下である。これは、そのシールパッキン7の圧縮量Lを少なくとも各コーナ部14で均等にするものである。このとき、シールパッキンの圧縮量は25%とする。この例は、シールパッキン7の直径を3mmとすると、その圧縮量は、直径3mm×圧縮率0.25×安全係数1.3である。
【0018】
次に、図5は本発明の熱交換器のタンク構造の他の実施例であり、この例が前記実施例と異なる点は、タンク本体3の基準用フランジ部9の形状である。この例では、タンク本体3の基準用フランジ部9がタンク本体3の外周の全周に環状に形成されている。これにより、タンク本体3の補強リブの効果がさらに向上し、タンク内の流体に対する耐圧性が高まる。また、タンク本体3のフランジ部2をシールパッキン7を介して環状溝4に圧入する際に、タンク本体3の長手方向の両端部にも加重を加えることができ、シールパッキン7の圧縮力を高めることができる。それにより、タンク本体3の長手方向の両端部の液密性、機密性を高めることができる。
【0019】
(発明の特徴)
ここにおいて、本発明の特徴は、従来のタンク本体には存在しなかった、基準用フランジ部9の存在であり、それにより、タンクの耐圧性が高まると共に、タンク本体3の内部流体によりタンクが外側に広がることが防止される。そして、タンクの液密性、機密性が高まり、熱交換器の信頼性が向上するものである。さらには、シールパッキン7の圧縮を各部で均等にし、流体の漏れを確実に防止することである。
【符号の説明】
【0020】
1 開口部
2 フランジ部
2a 平面
3 タンク本体
4 環状溝
5 爪部
6 プレート
7 シールパッキン
8 カシメ部
【0021】
9 基準用フランジ部
9a 平面
14 コーナ部
14a 頂面
16 偏平チューブ
17 コア
18 ブラケット
h1 高さ
L 圧縮量
δ 距離
図1
図2
図3
図4
図5