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  • 特許-液晶表示パネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】液晶表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20220309BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/1339 505
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018060926
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174573
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和真
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-158271(JP,A)
【文献】特開2016-191861(JP,A)
【文献】特開2001-305977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0242208(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0011780(KR,A)
【文献】特開昭56-128919(JP,A)
【文献】特開平09-203892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と第二基板を貼り合わせることで形成された隙間に画像表示領域が設けられると共に液晶が封入された液晶表示パネルの製造方法であって、
前記第一基板と前記第二基板を貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後に、前記第一基板と前記第二基板のうち少なくとも一方を加熱または冷却することで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する均一化工程と、を有し、
前記均一化工程において、前記隙間の大きさが所定の値よりも小さい領域については、前記加熱を行い、前記隙間の大きさが所定の値よりも大きい領域については、前記冷却を行うことで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する、
ことを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記均一化工程において、前記隙間の大きさが所定の値よりも小さい領域については、前記隙間に介在する気体を前記加熱により膨張させ、前記隙間の大きさが所定の値よりも大きい領域については、前記隙間に介在する気体を前記冷却により収縮させることで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造方法として、2枚のマザー基板の一方に複数個の画像表示領域が形成されるように画素電極を形成すると共にその画素電極の上に配向膜を形成し、もう一方のマザー基板に各画像表示領域に対応する共通電極を形成すると共にその共通電極の上に配向膜を形成した後、各画像表示領域を取り囲むようにシール部材を設けた上で両マザー基板を互いに位置合わせして貼り合わせ、その後、互いに貼り合わせた両マザー基板を画像表示領域毎に分断することで内部が空洞状態の複数の液晶表示パネルを作製し、続いて、液晶表示パネルのシール部材の一部に設けられた液晶注入口から液晶を注入した上で液晶注入口を封口部材で封口することで内部に液晶が封入された液晶表示パネルを作製する製造方法が知られている。(例えば、特許文献1、2参照)
【0003】
図2は2枚のマザー基板を貼り合わせた状態を示す(a)上面図と(b)A-A’断面図である。マザー基板として構成される第一基板1とマザー基板として構成される第二基板2の互いに対向する表面には液晶に電圧をかけるための画素電極(不図示)とITO電極3がそれぞれ形成され、さらに画素電極とITO電極3の上には液晶を配向させるための配向膜4が形成されている。第一基板1と第二基板2は各画像表示領域を取り囲むように設けられた複数の周辺シール材5にて互いに所定の隙間(GAP)6を介して固定されている。第一基板1と第二基板2を互いに固定する際には、第一基板1と第二基板2を複数の周辺シール材5を挟んで互いに所定の位置関係となるように位置決めを行い、常温環境において一定の加圧力を第一基板1と第二基板2の面内全体にかけた状態で、周辺シール材5にUV(紫外線)を照射して周辺シール材5を硬化させる。ここで重要なのは周辺シール材5より内側のGAP6を均一にすることであり、一般的には機械的に第一基板1と第二基板2を均一に加圧することで実現させている。周辺シール材5を硬化させた後は、第一基板1と第二基板2を画像表示領域毎に分断し、内部が空洞状態の複数の液晶表示パネルの状態にした上で、周辺シール材5の一部に設けられた液晶注入口5aからGAP6の中に液晶を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-255364
【文献】特開平9-179129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では第一基板1と第二基板2を加圧する際の機械的な加圧方法としてエアバッグなどによる加圧方法が用いられるが、このような加圧方法では第一基板1と第二基板2の中央領域と外周領域において加圧差が生じると共にGAP6における空気の抜け方(抜け易さ)が中央領域と外周領域において異なるため、中央領域と外周領域においてGAP6の差が発生する。GAP6の差が発生すると中央領域と外周領域において液晶表示パネルが表示する画像の色の見え方に変化(色ムラ)が生じ、画像品質が低下してしまうこととなる。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたもので、画像品質を向上させることが可能な液晶表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一基板と第二基板を貼り合わせることで形成された隙間に画像表示領域が設けられると共に液晶が封入された液晶表示パネルの製造方法であって、前記第一基板と前記第二基板を貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ工程の後に、前記第一基板と前記第二基板のうち少なくとも一方を加熱または冷却することで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する均一化工程と、を有し、前記均一化工程において、前記隙間の大きさが所定の値よりも小さい領域については、前記加熱を行い、前記隙間の大きさが所定の値よりも大きい領域については、前記冷却を行うことで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する、液晶表示パネルの製造方法とする。
【0012】
前記均一化工程において、前記隙間の大きさが所定の値よりも小さい領域については、前記隙間に介在する気体を前記加熱により膨張させ、前記隙間の大きさが所定の値よりも大きい領域については、前記隙間に介在する気体を前記冷却により収縮させることで、前記隙間の大きさが前記画像表示領域において均一となるように、前記隙間の大きさを制御する、液晶表示パネルの製造方法とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、加熱または冷却によりGAPを膨張または収縮させることでGAPを制御することができるため、液晶表示パネルの画像品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による液晶表示パネルの製造方法の一実施形態を示すフローチャート
図2】2枚のマザー基板を貼り合わせた状態を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図
図3】加熱冷却装置を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図
図4】加熱冷却方法を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明による液晶表示パネルの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。図2は2枚のマザー基板を貼り合わせた状態を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図である。図3は加熱冷却装置を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図である。図4は加熱冷却方法を示す(a)平面図、(b)A-A’断面図である。本実施形態においては、図2に示したようにマザー基板として構成される第一基板1と第二基板2を貼り合わせるに当たり、以下の(1)~(7)に示すような一連の工程を実施している。尚、(1)~(7)の各工程は、特段の説明が無い限り、常温環境下且つ大気圧環境下で行われるものとする。
【0017】
(1)表面に画素電極(不図示)と配向膜4が重ねて形成された第一基板1と表面にITO電極3と配向膜4が重ねて形成された第二基板2を準備する。配向膜4は例えばスピンコーター等を用いて平坦に形成される。
【0018】
(2)第一基板1の画素電極と配向膜4が形成された側の面に各画像表示領域を取り囲むように周辺シール材5を塗布する。周辺シール材5としては例えば紫外線硬化性樹脂を用いることができる。(周辺シール材塗布工程)
【0019】
(3)周辺シール材5を挟んで第一基板1と第二基板2を互いに所定の隙間(GAP)6を介して貼り合わせる。(貼り合わせ工程)
【0020】
(4)貼り合わせた第一基板1と第二基板2のGAP6が均一になるように第一基板1と第二基板2の面内に所定の圧力を均一に掛ける。その際には、例えば、第一基板1と第二基板2の中央領域を外側からエアバッグで加圧し、そこから徐々にエアバッグを変形または移動させることで外周領域を加圧する。(加圧工程)
【0021】
(5)第一基板1と第二基板2を貼り合わせたものを図4に示すように加熱冷却装置の複数の温度調節板7上に載置し、複数の温度調節板7により第一基板1と第二基板2を全体ではなく局所的に加熱または冷却する。加熱する温度は、例えば常温より高い温度であり、冷却する温度は、例えば常温より低い温度である。それらの温度は、第一基板1と第二基板2を介して、GAP6内に介在する空気(又はその他の気体)へ伝わり、GAP6内に介在する空気を局所的に膨張または収縮させ、結果的にGAP6のムラ(不均一性)を減少させる。例えば、GAP6の大きさ(厚さ)が所定の値よりも小さい領域については、その領域を加熱することで空気を膨張させてGAP6を大きくし、GAP6の大きさが所定の値よりも大きい領域については、その領域を冷却することで空気を収縮させてGAP6を小さくし、全体としてGAP6の大きさが均一となるようにする。GAP6は、液晶が封入される領域の全体において均一となっているのが望ましいが、画像表示領域においてのみ均一となっていても良い。(加熱冷却工程)
【0022】
(6)GAP6が均一となった状態の第一基板1と第二基板2をUV照射装置に投入し、周辺シール材5に紫外線を照射することにより周辺シール材5を硬化させる。これにより、GAP6が均一となった状態が安定する。その際には、(5)の加熱冷却工程と同様に第一基板1と第二基板2を局所的に加熱または冷却することが望ましく、そうすることでGAP6を確実に均一化することができる。但し、この工程においては、そのような加熱または冷却は行わなくても良い。(周辺シール材硬化工程)
【0023】
(7)周辺シール材5が硬化した状態の第一基板1と第二基板2をUV照射装置より取り出し、第一基板1と第二基板2を常温環境に戻して次工程へ流動させる。以降の工程としては、従来技術と同様に、貼り合わされた第一基板1と第二基板2を分断して個片化し、個片化した液晶表示パネルの内部に液晶を注入する。
【0024】
図3に示す加熱冷却装置は、温度調節板7を支持する支持基板8を備えており、支持基板8には複数の温度調節板7が互いに離間するように配置されている。
【0025】
温度調節板7は、例えばペルチェ素子であり、第一基板1上の画像表示領域の数と同じ数だけ設けられ、画像表示領域と対向する位置に1つずつ配置されている。温度調節板7の下面と側面は、支持基板10に固定され、温度調節板7の上面は、支持基板10の上方へ露出している。複数の温度調節板7は、互いに独立して駆動が制御されると共に、それぞれの面内において温度が一様となるように、または、温度が部分的に異なるように駆動が制御される。
【0026】
温度調節板7の大きさは、例えば、平面的に液晶表示パネルの画像表示領域から周辺シール材5の中央付近までを覆う大きさである。温度調節板7の大きさは、それに限定されず、例えば、液晶表示パネルの画像表示領域から周辺シール材5の外側の領域まで(第一基板1の分断予定線まで等)を覆う大きさや、液晶表示パネルの画像表示領域の一部のみを覆う大きさであっても良い。また、温度調節板7の形状は、板状に限らず、その他の形状であっても良い。
【0027】
支持基板8は、第一基板1と同様の外形を有する板状の部材であり、温度調節板7の中央部と対向する位置には、スリット8aが設けられている。スリット8aは、支持基板8を貫通し、温度調節板7の下面に達している。スリット8aは、温度調節板7を駆動させる配線等を収納する役割やその内部の空間(空気層等)により断熱効果を高める役割を果たす。スリット8aは、温度調節板7と対向する位置のみならず、互いに隣接する温度調節板7の間の領域に設けられていても良い。スリット8は、支持基板8を貫通しない凹部として形成されていても良いが、断熱効果を高める意味では支持基板8を貫通しているのが望ましい。
【0028】
第一基板1と第二基板2の組み合わせは様々であり、例えば、それぞれガラス基板とガラス基板、シリコン基板とガラス基板、プラスチック基板とプラスチック基板等の組み合わせが用いられる。
【0029】
第一基板1と第二基板2としてはマザー基板に限らず、予め液晶表示パネル単位で個片状に分断された基板を用いることも可能である。また、液晶表示パネルを構成する基板は3枚以上であっても構わない。
【0030】
図1に示すフローチャートは一例であって、工程の追加や削除、順序の入替を適宜実施することができる。
【0031】
(5)の加熱冷却工程は、図1に示す次工程以降において追加的に実施されても良く、こうすることで、GAP6の大きさを追加的に調整することができる。
【0032】
(5)の加熱冷却工程は、周辺シール材5に液晶注入口9が設けられていない液晶表示パネルに対して実施することも可能である。その場合には、例えば、枠状の周辺シール材5で囲まれた領域に液晶を滴下して第一基板1と第二基板2を貼り合わせた後に(5)の加熱冷却工程を実施し、液晶を膨張または収縮させることでGAP6を部分的に変化させても良い。
【0033】
(5)の加熱冷却工程は、真空環境において実施することも可能である。その場合には、例えば、第一基板1、第二基板2、周辺シール材5等の部材間における熱膨張係数の差を利用してGAP6を部分的に変化させても良い。
【0034】
(5)の加熱冷却工程は、(6)の周辺シール材硬化工程よりも後に実施されても良い。但し、(5)の加熱冷却工程によりGAP6が均一化された状態を安定的に維持するためには、(5)の加熱冷却工程は、(6)の周辺シール材硬化工程よりも前に実施されるのが望ましい。
【0035】
(5)の加熱冷却工程において第一基板1と第二基板2を加熱または冷却する手段は、温度調節板7に限らず、その他の手段であっても良く、例えば、熱気や冷気を吹き付けたり、赤外線や電磁波を照射することにより、加熱または冷却を行うものであっても良い。また、温度調節板7は、加熱のみ、または、冷却のみを行うものであっても良い。
【0036】
(5)の加熱冷却工程において加熱または冷却されるのは、第一基板1と第二基板2の両方に限らず、第一基板1のみ、または、第二基板のみであっても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 第一基板
2 第二基板
3 ITO電極
4 配向膜
5 周辺シール材
5a 液晶注入口
6 隙間(GAP)
7 温度調節板
8 支持基板
8a スリット
図1
図2
図3
図4