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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】挿管システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20220309BHJP
   A61M 16/04 20060101ALI20220309BHJP
   A61B 1/267 20060101ALI20220309BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61B1/045 622
A61M16/04 Z
A61B1/267
A61B1/045 610
A61B1/045 618
A61B1/00 711
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018062120
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019170667
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 勤
(72)【発明者】
【氏名】村山 文彦
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0291001(US,A1)
【文献】特開2011-036372(JP,A)
【文献】特開2013-085880(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156378(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/151796(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0263935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
A61M16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の生体情報を測定部で測定する測定装置と、
被検者の口から目的部位に向かって挿入される挿入部の先端部近傍に撮像部が配置される挿管装置と
を備え、
前記挿管装置と一体及び/または別体に配置され、前記撮像部および前記測定部にそれぞれ接続されて、前記撮像部で撮像された体内画像と共に前記測定部で測定された前記生体情報を表示する挿管用表示部と、
前記挿管用表示部に表示された前記体内画像と前記生体情報を対応付けて記憶する全容記憶部と
前記撮像部で撮像された前記体内画像および前記測定部で測定された前記生体情報の少なくとも一方に基づいて、前記全容記憶部における前記体内画像と前記生体情報の記憶の開始を制御する記憶制御部とをさらに有することを特徴とする挿管システム。
【請求項2】
前記挿管用表示部は、前記生体情報を前記体内画像と合成した合成画像を表示し、
前記全容記憶部は、前記合成画像を記憶する請求項1に記載の挿管システム。
【請求項3】
前記挿管装置は、
予め設定された前記目的部位の特徴量に基づいて、前記撮像部で撮像された前記体内画像から前記目的部位を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記目的部位の位置と前記挿入部に沿って進退可能に配置される挿管用チューブの進行方向とに基づいて、前記挿管用チューブを前記目的部位に挿入可能か否かを判定する挿管判定部とを有し、
前記記憶制御部は、前記挿管判定部において前記挿管用チューブを前記目的部位に挿入可能と判定された場合に、前記全容記憶部に前記体内画像と前記生体情報の記憶を開始させる請求項1または2に記載の挿管システム。
【請求項4】
前記挿管装置において操作者が把持する把持部を振動させる振動部、および、前記測定部において警告音を出力する音出力部のうち少なくとも一方を有し、
前記測定部で測定される前記生体情報の値が所定の閾値に達した場合に、前記振動部および前記音出力部のうち少なくとも一方を動作させる報知制御部をさらに有する請求項1~のいずれか一項に記載の挿管システム。
【請求項5】
前記全容記憶部は、前記測定装置に配置され、
前記測定装置は、前記測定部で測定された前記生体情報を表示する測定用表示部を有し、前記全容記憶部に記憶された前記体内画像を対応する前記生体情報と共に前記測定用表示部に表示する請求項1~のいずれか一項に記載の挿管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、挿管システムに係り、特に、被検者の口から挿入された挿入部に沿って挿管用チューブを目的部位に挿入する挿管装置を有する挿管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気管などの目的部位への挿管は、被検者の口から挿入された喉頭鏡で喉頭展開を行い外部から目的部位を直接視認することで、目的部位に向かって挿管用チューブが挿入されていた。しかしながら、目的部位と挿管用チューブの先端部を外部から明確に視認することは困難であり、挿管用チューブを目的部位へスムーズに挿入できないおそれがあった。
【0003】
そこで、目的部位と挿管用チューブの先端部を明確に視認する技術として、例えば、特許文献1には、挿入具を患者の気管へ挿入する際の操作性に優れた挿管支援装置が提案されている。この挿管支援装置は、挿入具の先端が位置する観察部位が撮像手段で撮像され、その撮像された画像がディスプレイ部に表示されるため、気管と挿管用チューブの先端部を画像で明確に視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-144123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、挿管装置は、生体情報モニタ、除細動器および人工呼吸器などの測定装置で測定される被検者の生体情報を確認しつつ操作される場合がある。このときに、特許文献1の挿管支援装置は、体内画像が表示されたディスプレイ部から視線を移して測定装置の生体情報を確認する必要があり、体内画像および生体情報などの挿管に関連する複数の挿管情報を容易に把握することが困難であった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、複数の挿管情報を容易に把握する挿管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る挿管システムは、被検者の生体情報を測定部で測定する測定装置と、被検者の口から目的部位に向かって挿入される挿入部の先端部近傍に撮像部が配置される挿管装置とを備え、挿管装置と一体及び/または別体に配置され、撮像部および測定部にそれぞれ接続されて、撮像部で撮像された体内画像と共に測定部で測定された生体情報を表示する挿管用表示部と、挿管用表示部に表示された体内画像と生体情報を対応付けて記憶する全容記憶部とをさらに有するものである。
【0008】
ここで、挿管用表示部は、生体情報を体内画像と合成した合成画像を表示し、全容記憶部は、合成画像を記憶することができる。
【0009】
また、撮像部で撮像された体内画像および測定部で測定された生体情報の少なくとも一方に基づいて、全容記憶部における体内画像と生体情報の記憶の開始を制御する記憶制御部をさらに有することが好ましい。
【0010】
また、挿管装置は、予め設定された目的部位の特徴量に基づいて、撮像部で撮像された体内画像から目的部位を検出する検出部と、検出部で検出された目的部位の位置と挿入部に沿って進退可能に配置される挿管用チューブの進行方向とに基づいて、挿管用チューブを目的部位に挿入可能か否かを判定する挿管判定部とを有し、記憶制御部は、挿管判定部において挿管用チューブを目的部位に挿入可能と判定された場合に、全容記憶部に体内画像と生体情報の記憶を開始させることができる。
【0011】
また、挿管装置において操作者が把持する把持部を振動させる振動部、および、測定部において警告音を出力する音出力部のうち少なくとも一方を有し、測定部で測定される生体情報の値が所定の閾値に達した場合に、振動部および音出力部のうち少なくとも一方を動作させる報知制御部をさらに有することが好ましい。
【0012】
また、全容記憶部は、測定装置に配置され、測定装置は、測定部で測定された生体情報を表示する測定用表示部を有し、全容記憶部に記憶された体内画像を対応する生体情報と共に測定用表示部に表示することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、挿管用表示部が撮像部で撮像された体内画像と共に測定部で測定された生体情報を表示し、全容記憶部が挿管用表示部に表示された体内画像と生体情報を対応付けて記憶するので、複数の挿管情報を容易に把握する挿管システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る挿管システムの構成を示す図である。
図2】挿管装置と測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】被検者の口から挿入部が挿入される様子を示す図である。
図4】挿管用表示部に合成画像を表示した様子を示す図である。
図5】目的部位がターゲットマークに重なるように挿入部が操作された様子を示す図である。
図6】実施の形態2の挿管装置と測定装置の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態3の挿管装置と測定装置の構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態4の挿管装置と測定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る挿管システムの構成を示す。この挿管システムは、挿管装置1と測定装置2を有する。
【0016】
挿管装置1は、装置本体3を有し、この装置本体3の下部に挿入部4が着脱自在に取り付けられると共に装置本体3の上部に挿管用表示部5が設けられている。また、挿入部4の側部に沿って挿管用チューブ6が配置され、挿入部4の先端部近傍に撮像部7が配置されている。
【0017】
装置本体3は、操作者が挿管の操作を行うもので、下半部に把持部8が形成されている。把持部8は、操作者が把持しやすいように操作者の手に収まる大きさで柱状に形成されている。
挿入部4は、被検者の口から声門に向かって挿入されるもので、長尺形状を有すると共に先端部側が湾曲するように形成されている。また、挿入部4の側部には、基端部から先端部に延びる溝部9が形成されている。溝部9は、挿管用チューブ6を進退可能に保持するもので挿管用チューブ6に応じた大きさで形成されている。
【0018】
挿管用チューブ6は、管形状を有すると共に挿入部4の溝部9に沿って延びるように形成されている。ここで、挿管用チューブ6は、挿入部4の先端部から進退可能に溝部9に配置されており、溝部9に規制されて所定の進行方向に進行させることができる。また、挿管用チューブ6の先端部近傍には、挿管用チューブ6を声門に挿入する際に目印となる挿入マーク6aが付されている。
撮像部7は、被検者の体内画像を撮像するもので、挿入部4の先端部近傍に前方を向く、すなわち挿入部4の延長線が延びる方向を向くように配置されている。撮像部7は、例えば、CCDイメージセンサなどから構成することができる。
【0019】
挿管用表示部5は、撮像部7に接続されて、操作者が挿入部4および挿管用チューブ6を操作するために撮像部7で撮像された体内画像を表示するものである。挿管用表示部5は、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置から構成することができる。
【0020】
一方、測定装置2は、測定用表示部10を有し、この測定用表示部10に測定部11が接続されている。なお、測定装置2としては、例えば、生体情報モニタ、除細動器および人工呼吸器などが挙げられる。
【0021】
測定部11は、被検者の生体情報を測定するものである。生体情報としては、例えば挿管に関連する情報であり、酸素飽和度(SpO)および心拍数などが挙げられる。測定部11は、例えば、被検者の指先などに光を照射する照射部と、指先を透過した透過光または指先から反射した反射光を受光する受光部とから構成することができる。照射部から照射される光は、600nm~1300nmの波長を有することが好ましい。例えば、照射部が波長660nmの赤色光と波長940nmの赤外光を照射し、指先を透過した赤色光と赤外光を受光部で受光することができる。
【0022】
測定用表示部10は、測定部11で測定された被検者の生体情報を表示するものである。測定用表示部10は、挿管用表示部5と同様に、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置から構成することができる。
なお、挿管装置1と測定装置2は、互いに無線により接続されている。
【0023】
次に、挿管装置1と測定装置2の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、挿管装置1は、撮像部7に接続された画像処理部13を有し、この画像処理部13に、検出部14、表示制御部15および挿管用表示部5が順次接続されている。また、検出部14に特徴量格納部16が接続されると共に表示制御部15に無線通信部17aが接続されている。さらに、画像処理部13、検出部14、および表示制御部15に挿管制御部18が接続され、この挿管制御部18に操作部19と格納部20がそれぞれ接続されている。
【0024】
画像処理部13は、撮像部7で撮像された体内画像の画像信号を処理して、挿管用表示部5に表示させる体内画像を生成するものである。
特徴量格納部16は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、予め撮像された声門の画像からその特徴量を抽出して格納されている。声門の特徴量としては、例えば、声帯の形状値および声帯の色度などが挙げられる。
検出部14は、特徴量格納部16から読み出される声門の特徴量に基づいて、撮像部7で撮像された体内画像から声門を目的部位として検出する。
【0025】
表示制御部15は、撮像部7で撮像された体内画像に測定装置2の測定部11で測定された生体情報を合成した合成画像を生成し、その合成画像を表示するように挿管用表示部5を制御する。また、表示制御部15は、挿管用チューブ6の進行方向における所定の位置にターゲットマークを合成画像に重畳して挿管用表示部5に表示させると共に、検出部14で検出された声門の位置に部位マークを合成画像に重畳して挿管用表示部5に表示させる。ここで、挿管用チューブ6の進行方向は、挿入部4における溝部9の形成方向に基づいて予め設定、例えば溝部9の延長線上に予め設定されている。
無線通信部17aは、測定装置2の測定部11で測定された生体情報を無線通信により受信すると共に、表示制御部15で生成された合成画像を無線通信により測定装置2に送信する。
【0026】
操作部19は、操作者が入力操作を行うためのもので、ボタンおよびタッチパネル等から構成することができる。
格納部20は、動作プログラム等を格納するもので、メモリ、ハードディスクおよびSDカード等の記憶装置を用いることができる。
【0027】
挿管制御部18は、操作者により操作部19から入力された各種の操作信号等に基づいて挿管装置内の各部の制御を行うものである。
なお、画像処理部13、検出部14、表示制御部15および挿管制御部18は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0028】
一方、測定装置2は、測定部11に接続された生体情報算出部21を有し、この生体情報算出部21が表示制御部22および測定用表示部10に順次接続されている。また、表示制御部22に全容記憶部23が接続されている。また、生体情報算出部21と全容記憶部23に無線通信部17bが接続されている。さらに、生体情報算出部21と表示制御部22に測定制御部24が接続され、この測定制御部24に操作部25および格納部26がそれぞれ接続されている。
【0029】
生体情報算出部21は、測定部11で測定された測定値に基づいて生体情報を算出する。具体的には、血液中のヘモグロビンは酸素の結合量が多いほど赤外光を吸収することが知られており、生体情報算出部21は、測定部11の受光部で受光した赤色光と赤外光の強度差に基づいて酸素飽和度を算出する。また、生体情報算出部21は、脈拍に応じた赤色光と赤外光の強度の変動に基づいて心拍数を算出する。
無線通信部17bは、挿管装置1の無線通信部17aとの間で無線通信して、生体情報算出部21で算出された生体情報を表示制御部15に送信すると共に、表示制御部15で生成された合成画像を受信して全容記憶部23に出力する。
【0030】
全容記憶部23は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、表示制御部15で生成された合成画像を順次記憶する。
表示制御部22は、生体情報算出部21で算出された生体情報を表示するように測定用表示部10を制御するものである。また、表示制御部22は、全容記憶部23に記憶された合成画像を表示するように測定用表示部10を制御する。
【0031】
操作部25は、操作者が入力操作を行うためのもので、ボタンおよびタッチパネル等から構成することができる。
格納部26は、動作プログラム等を格納するもので、メモリ、ハードディスクおよびSDカード等の記憶装置を用いることができる。
【0032】
測定制御部24は、操作者により操作部25から入力された各種の操作信号等に基づいて挿管装置内の各部の制御を行うものである。
なお、生体情報算出部21、表示制御部22および測定制御部24は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0033】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、図1に示す挿管装置1および測定装置2において、図示しない電源部がそれぞれONされて挿管装置1および測定装置2の各部が起動される。続いて、操作者は、測定装置2の測定部11を被検者の指先に装着して、測定部11の照射部から波長660nmの赤色光と波長940nmの赤外光を照射すると共に指先を透過した赤色光と赤外光を受光部で受光する。測定部11の受光部で受光した測定信号は、図2に示すように、測定部11から生体情報算出部21に出力される。
【0034】
測定部11で測定された測定信号が生体情報算出部21に入力されると、生体情報算出部21は、測定信号に基づいて生体情報を算出する。具体的には、生体情報算出部21は、測定部11で受光された赤色光と赤外光の強度差および強度の変動に基づいて、酸素飽和度と心拍数を生体情報として算出する。算出された酸素飽和度と心拍数は、生体情報算出部21から表示制御部22と無線通信部17bにそれぞれ出力される。
【0035】
生体情報算出部21で算出された酸素飽和度と心拍数が無線通信部17bに入力されると、無線通信部17bは、挿管装置1の無線通信部17aを介して表示制御部15に酸素飽和度と心拍数を出力する。
一方、生体情報算出部21で算出された酸素飽和度と心拍数が表示制御部22に入力されると、表示制御部22は、酸素飽和度と心拍数を測定用表示部10に表示させる。
【0036】
このようにして、測定用表示部10に酸素飽和度と心拍数が表示されることにより、挿管装置1を操作する操作者が被検者の状態を把握し、図3に示すように、挿入部4を被検者Sの口から声門G1に向かって挿入させる。このとき、挿入部4の先端部近傍に配置された撮像部7により体内画像が撮像されており、その体内画像の画像信号が撮像部7から画像処理部13に順次出力される。画像処理部13は、体内画像の画像信号に基づいて挿管用表示部5に表示させる体内画像を生成し、生成された体内画像を検出部14に出力する。
【0037】
画像処理部13で生成された体内画像が検出部14に入力されると、検出部14は、声門G1の特徴量に基づいて体内画像に含まれる声門G1を検出する。具体的には、検出部14は、特徴量格納部16に格納された声門G1の特徴量に基づいて体内画像に含まれる声門G1を探索する。声門G1の特徴量としては、例えば、声門G1を構成する声帯の形状値および声帯の色度などが挙げられる。声帯は、一般的に、ひだ状に湾曲して延びる形状で且つ白色に近い色を有するなど、特徴的な形状値および色度を有している。このため、声帯の形状値および色度に基づいて体内画像を探索することで体内画像に含まれる声門G1を確実に検出することができる。
【0038】
なお、特徴量格納部16は、声門G1の特徴量に加えて、声門G1の周辺部位の特徴量、例えば喉頭蓋や披裂軟骨などの特徴量を格納することが好ましい。これにより、検出部14は、特徴量格納部16に格納されている声門G1の特徴量及び声門G1の周辺部位の特徴量に基づいて体内画像を探索し、声門G1との類似度および声門G1の周辺部位との関連度に基づいて体内画像に含まれる声門G1を高精度に検出することができる。
【0039】
また、特徴量格納部16は、挿管装置で測定中の被検者Sからリアルタイムに取得された声門G1の特徴量、過去の測定時において取得された声門G1の特徴量、他の被検者から過去の測定時に取得された声門G1の特徴量、またはそれらの声門G1を収集して算出された特徴量を格納することができる。なお、声門G1の特徴量は、挿管装置で測定されたものに限られず、外部の医療機器装置などで収集されたものを利用してもよい。
【0040】
なお、特徴量格納部16は、様々な形態の声門G1の特徴量を格納することが好ましい。例えば、病気により変形した声門G1の特徴量、血液および吐物などの遮蔽物が付着した声門G1の特徴量などを格納することができる。これにより、検出部14は、体内画像に含まれる声門G1が稀な形態を有する場合であっても、その声門G1を確実に検出することができる。
声門G1の検出結果は、撮像部7で撮像された体内画像と共に検出部14から表示制御部15に出力される。
【0041】
このようにして、表示制御部15には、検出部14から体内画像と声門G1の検出結果が入力され、測定装置2の生体情報算出部21から酸素飽和度と心拍数が入力される。そして、表示制御部15は、酸素飽和度と心拍数を体内画像に合成した合成画像を生成し、生成された合成画像を挿管用表示部5に表示させる。
【0042】
例えば、表示制御部15は、図4に示すように、体内画像に並べて酸素飽和度と心拍数を表示した合成画像Rを挿管用表示部5に表示させることができる。
また、表示制御部15は、予め設定された挿管用チューブ6の進行方向に対応する位置にターゲットマークM1を合成画像Rに重畳して表示させる。さらに、表示制御部15は、検出部14において声門G1が検出された場合に、検出部14で検出された声門G1の位置に部位マークM2を合成画像Rに重畳して表示させる。
【0043】
このように、生体情報を体内画像に合成した合成画像Rを挿管用表示部5に表示させることで、操作者は、挿管用表示部5から視線を移すことなく、挿管に関連する複数の挿管情報を容易に把握することができる。このため、操作者は、酸素飽和度と心拍数を把握しつつ体内画像を視認して挿入部4を声門G1に向かって安全に挿入することができる。これにより、例えば、酸素飽和度と心拍数が低下した場合には、挿管装置1を被検者から取り外して蘇生バッグなどで呼吸を安定させるなど、被検者の状態の変化に速やかに対応することができる。
また、従来のように、挿管用表示部5に体内画像のみを表示した場合には、操作者は、体内画像を注視して挿入部4を操作するため、測定装置2などから音だけで酸素飽和度と心拍数が低下したことを報知しても気付かないおそれがある。そこで、挿管用表示部5に体内画像と共に生体情報を表示させることで、操作者は生体情報を確実に把握することができ、挿入部4の操作を適切に行うことができる。
【0044】
なお、表示制御部15は、生体情報と共にターゲットマークM1と部位マークM2を体内画像に合成した合成画像Rを生成することもできる。
このようにして、表示制御部15で生成された合成画像Rは、無線通信部17aおよび17bを介して、測定装置2の全容記憶部23に出力されて、全容記憶部23に順次記憶される。
【0045】
続いて、操作者は、図5に示すように、声門G1とターゲットマークM1が重なるように挿入部4を操作する。これにより、声門G1が挿管用チューブ6の進行方向に位置し、操作者が挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判断すると、挿管用チューブ6を前方に進行させて挿管用チューブ6の先端部が声門G1に挿入される。そして、操作者は、挿管用チューブ6の側面に付された挿入マーク6aを指標に挿管用チューブ6の挿入量を調節することにより、挿管用チューブ6を適切な位置まで挿入する。
【0046】
このようにして、挿管用チューブ6の先端部を被検者Sの声門G1に挿入して気管への挿管が完了する。その後、操作者が過去の挿管の様子を確認したい場合には、測定装置2の操作部25を操作して、全容記憶部23に記憶された合成画像Rを表示制御部22により測定用表示部10に表示させる。これにより、操作者は、挿管の体内画像と共にそれに対応する酸素飽和度と心拍数を容易に確認することができ、例えば酸素飽和度と心拍数に対する挿入部4の操作の可否を適切に判断することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、挿管用表示部5が生体情報を体内画像と合成した合成画像Rを表示し、全容記憶部23が挿管用表示部5で表示された合成画像Rを記憶するため、操作者が挿管中および挿管後において生体画像および生体情報からなる複数の挿管情報を容易に把握することができる。
【0048】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、全容記憶部23は、挿管用表示部5に表示された合成画像を記憶したが、体内画像と生体情報を対応付けて記憶することができればよく、合成画像に限られるものではない。
例えば、図6に示すように、実施の形態1の表示制御部15に換えて表示制御部27を配置すると共に、無線通信部17bと全容記憶部23の間に記憶制御部28を新たに配置することができる。
【0049】
表示制御部27は、撮像部7で撮像された体内画像に測定装置2の測定部11で測定された生体情報を重畳して挿管用表示部5に表示させる。
記憶制御部28は、無線通信部17b、表示制御部22および全容記憶部23にそれぞれ接続されている。記憶制御部28は、挿管用表示部5に表示された体内画像と生体情報を対応付けて全容記憶部23に順次記憶させる。
【0050】
このような構成により、実施の形態1と同様に、表示制御部27には、撮像部7で撮像された体内画像が入力されると共に測定装置2の生体情報算出部21から生体情報が入力される。続いて、表示制御部27は、生体情報を体内画像に重畳して挿管用表示部5に表示させ、その表示された体内画像を対応する生体情報と共に無線通信部17aおよび17bを介して記憶制御部28に出力する。
【0051】
体内画像と生体情報が記憶制御部28に入力されると、記憶制御部28は、体内画像と生体情報を対応付けて全容記憶部23に順次記憶する。そして、操作者が過去の挿管の様子を確認したい場合には、測定装置2の操作部25が操作され、記憶制御部28が全容記憶部23から互いに対応する体内画像と生体情報を順次読み出して、表示制御部22により測定用表示部10に表示される。
なお、記憶制御部28は、生体情報と共にターゲットマークM1と部位マークM2を体内画像に対応付けて全容記憶部23に記憶させることもできる。
【0052】
本実施の形態によれば、記憶制御部28が、挿管用表示部5に表示された体内画像と生体情報を対応付けて全容記憶部23に記憶させるため、体内画像に対して生体情報の表示状態を自由に変更することができる。
【0053】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、挿管システムは、体内画像および生体情報の少なくとも一方に基づいて全容記憶部23における体内画像と生体情報の記憶の開始および停止を制御する記憶制御部を有することが好ましい。
例えば、図7に示すように、実施の形態1の検出部14と表示制御部15の間に挿管判定部31が新たに配置されると共に、無線通信部17bと全容記憶部23の間に記憶制御部32を新たに配置することができる。
【0054】
挿管判定部31は、検出部14で検出された声門G1の位置と挿管用チューブ6の進行方向とに基づいて、挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能か否かを判定する。すなわち、挿管判定部31は、検出部14で検出された声門G1の位置が挿管用チューブ6の進行方向に存在するか否かを判定する。ここで、挿管用チューブ6の進行方向は、例えば、挿入部4における溝部9の形成方向に基づいて設定することができる。
記憶制御部32は、無線通信部17b、表示制御部22および全容記憶部23にそれぞれ接続されている。記憶制御部32は、挿管判定部31において挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判定された場合に、全容記憶部23に体内画像と生体情報の記憶を開始させる。
【0055】
このような構成により、実施の形態1と同様に、検出部14が声門G1の特徴量に基づいて体内画像に含まれる声門G1を検出する。検出された声門G1の位置が検出部14から挿管判定部31に入力されると、挿管判定部31は、声門G1の位置と、挿管用チューブ6の進行方向、すなわちターゲットマークM1の位置とに基づいて、挿管用チューブ6が声門G1に挿入可能か否かを判定する。
【0056】
例えば、図4に示すように、声門G1の位置とターゲットマークM1の位置が異なる場合には、挿管判定部31は、挿管用チューブ6が声門G1に挿入不可能と判定する。一方、図5に示すように、声門G1の位置とターゲットマークM1の位置が一致する場合には、挿管判定部31は、挿管用チューブ6が声門G1に挿入可能と判定する。挿管判定部31は、判定結果を体内画像と共に表示制御部15に出力する。
【0057】
表示制御部15は、生体情報を体内画像に合成した合成画像Rを挿管用表示部5に表示させると、その合成画像Rと共に挿管判定部31の判定結果を無線通信部17aおよび17bを介して記憶制御部32に出力する。
記憶制御部32は、挿管判定部31において挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判定されるまでは合成画像Rを全容記憶部23に記憶せず、挿管判定部31において挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判定された場合に、全容記憶部23における合成画像Rの記憶を開始させる。なお、挿管判定部31は、声門G1への挿管用チューブ6の挿入が完了した時点、例えば、挿管装置1の電源部がOFFされた時点、体内画像において挿管用チューブ6に付された挿入マーク6aが検出された時点などで全容記憶部23における合成画像Rの記憶を停止することができる。
【0058】
これにより、被検者Sの口から挿入部4を挿入して声門G1を探すまでの間の合成画像Rは全容記憶部23に記憶されず、挿管用チューブ6の挿入開始から挿入完了までの間の合成画像Rのみが全容記憶部23に記憶される。このため、操作者が挿管用チューブ6を声門G1に挿入する様子を確認したい場合に、所望の合成画像Rを容易に確認することができる。
なお、記憶制御部32は、挿管判定部31において挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判定された場合に記憶を開始するものに限られるものではなく、例えば、検出部14において声門G1が検出された場合、生体情報の値が所定の閾値に達した場合などに合成画像Rの記憶を開始することもできる。
【0059】
本実施の形態によれば、記憶制御部32が挿管判定部31において挿管用チューブ6を声門G1に挿入可能と判定された場合に全容記憶部23に体内画像と生体情報の記憶を開始させるため、所望の合成画像Rを容易に確認することができる。
【0060】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3において、挿管システムは、測定部11で測定される生体情報の値が所定の閾値に達した場合に生体情報の変化を報知する報知部を有することが好ましい。
例えば、図8に示すように、実施の形態1において無線通信部17aに振動部41を接続すると共に、生体情報算出部21に報知制御部42および音出力部43を順次接続し、さらに報知制御部42を無線通信部17bに接続することができる。
【0061】
振動部41は、挿管装置1に配置され、把持部8を振動させて操作者に酸素飽和度と心拍数の低下を報知するものである。振動部41は、例えばバイブレータなどから構成することができる。
音出力部43は、測定装置2に配置され、警告音を出力して操作者に酸素飽和度と心拍数の低下を報知するものである。音出力部43は、例えばスピーカーなどから構成することができる。
報知制御部42は、測定部11で測定される酸素飽和度と心拍数が低下して所定の閾値に達した場合に、振動部41を振動させると共に音出力部43から警告音を出力させる。
【0062】
このような構成により、報知制御部42が、生体情報算出部21で算出される酸素飽和度と心拍数が低下して所定の閾値に達した場合に、音出力部43から警告音を出力させると共に無線通信部17aおよび17bを介して振動部41を振動させる。このように、挿管用表示部5への生体情報の表示に加えて振動と警告音が出力されるため、操作者は被検者の状態の変化をより確実に把握することができる。
【0063】
本実施の形態によれば、報知制御部42が、測定部11で測定される生体情報の値が所定の閾値に達した場合に振動部41を振動させると共に音出力部43から警告音を出力するため、操作者に被検者の状態の変化をより確実に報知することができる。
【0064】
なお、上記の実施の形態1~4では、挿管装置1は、1つの測定装置に接続されたが、複数の測定装置に接続してそれぞれの測定装置から出力される複数の生体情報を挿管用表示部5に表示することもできる。
また、上記の実施の形態1~4では、全容記憶部23は、測定装置2に配置されたが、体内画像と生体情報を対応付けて記憶することができればよく、測定装置2に限られるものではない。例えば、挿管装置1に配置してもよく、挿管装置1および測定装置2とは別の表示装置に配置することもできる。
【0065】
また、上記の実施の形態1~4では、全容記憶部23は、体内画像と生体情報を対応付けて記憶したが、さらにその他の挿管情報を体内画像と対応付けて記憶することもできる。例えば、マイクロフォンなどの音入力部を配置し、音入力部から入力される周囲の音を生体情報と共に体内画像と対応付けて全容記憶部23に記憶させることができる。
【0066】
また、上記の実施の形態1~4では、挿管装置1の表示制御部は、生体情報を体内画像に重畳するように挿管用表示部5に表示させたが、生体情報を体内画像と共に挿管用表示部5に表示させることができればよく、これに限られるものではない。例えば、生体情報を体内画像と間隔を空けて表示してもよい。
また、上記の実施の形態1~4では、挿管用表示部5は、装置本体3に一体に設けられたが、撮像部7で撮像された体内画像を表示できればよく、装置本体3と別体に配置することもできる。
【0067】
また、上記の実施の形態1~4では、挿管用表示部5に表示された体内画像と生体情報は、1つの全容記憶部23に記憶されたが、対応付けて記憶されていればよく、複数の全容記憶部に別けて記憶することもできる。例えば、2つの全容記憶部を配置して、一方の全容記憶部に体内画像を記憶すると共に他方の全容記憶部に体内画像と対応付けられた生体情報を記憶することができる。このとき、体内画像と生体情報は、例えば挿管用表示部5に表示された時間により対応付けて記憶することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 挿管装置、2 測定装置、3 装置本体、4 挿入部、5 挿管用表示部、6 挿管用チューブ、6a 挿入マーク、7 撮像部、8 把持部、9 溝部、10 測定用表示部、11 測定部、13 画像処理部、14 検出部、15,27 表示制御部、16 特徴量格納部、17a,17b 無線通信部、18 挿管制御部、19 操作部、20 格納部、21 生体情報算出部、22 表示制御部、23 全容記憶部、24 測定制御部、25 操作部、26 格納部、28,32 記憶制御部、31 挿管判定部、41 振動部、42 報知制御部、43 音出力部、M1 ターゲットマーク、M2 部位マーク、S 被検者、G1 声門、R 合成画像。
図1
図2
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図5
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図7
図8