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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】フロントスポイラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
B62D37/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018079512
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019182385
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518135364
【氏名又は名称】中村 友也
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 友也
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-016979(JP,U)
【文献】特開2009-040173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0292943(US,A1)
【文献】特開昭62-221977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントバンパーの下部に装着されるフロントスポイラーであって、
前記車両に装着された状態において、
前記車両の幅方向に長尺な曲面パネルを含む正面部材と、
前記正面部材の左右端から前記車両後方に延伸する一対の左右部材と、
前記正面部材の下端及び前記一対の左右部材の下端から車両中心側に向けて入り込み地面と対向する底面部材と、
を備え、
前記曲面パネルは、上下方向に関して下端が上端よりも前方に突出する凹状の曲面を有すると共に、左右方向に関して中央が左右端よりも前方に突出する形状を有し、
前記正面部材と前記底面部材との間には、前記車両の幅方向に延びる第1の溝が形成されており、
前記正面部材と前記一対の左右部材との間には、上下方向に延びる第2の溝が形成されていることを特徴とするフロントスポイラー。
【請求項2】
前記第1の溝と前記第2の溝とは1本の溝として連続的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントスポイラー。
【請求項3】
前記正面部材は前記曲面パネルの上側にフレームを含み、
前記曲面パネルと前記フレームとの間には、前記車両の幅方向に延びる第3の溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロントスポイラー。
【請求項4】
前記第1の溝と前記第2の溝と前記第3の溝とは1本の連続した溝として形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフロントスポイラー。
【請求項5】
前記フロントスポイラーは、金型を用いた射出成形によって一体的に成形されることを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のフロントスポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントバンパーの下部に装着されるフロントスポイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
フロントスポイラーは、自動車の空気力学的な抵抗・揚力の低減や、操縦・走行安定性の向上等を図ることを目的として、車体の特に前方及び後方の下部に取り付けられることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-016308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントスポイラーは、車体の下部に取り付けられる性質上、縁石や駐車場の車止め等の障害物にぶつけたり乗り上げたりしてしまい、破損することが多い。硬度が高い樹脂を用いた場合ほど破損しやすく、その分修理費用が嵩む。そのため、従来、そのような障害物に遭遇しても、ある程度変形することで破損を免れるよう、比較的硬度の低い樹脂を利用して成形されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、硬度の低い樹脂を用いたフロントスポイラーは、車両走行時に風圧で変形してばたついたり、変形により空力性能が低下したりする問題がある。そこで、本発明者は、上記特許文献1に記載されているような補強部材を用いることなく、形状自体に改良を加えることにより、強度及び空力性能の高いフロントスポイラーを開発するに至った。
【0006】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであり、車両走行時に風圧でばたつくことがなく、且つ、空力性能や操縦・走行安定性が低下することのない、フロントスポイラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車両のフロントバンパーの下部に装着されるフロントスポイラーであって、前記車両に装着された状態において、前記車両の幅方向に長尺な曲面パネルを含む正面部材と、前記正面部材の左右端から前記車両後方に延伸する一対の左右部材と、前記正面部材の下端及び前記一対の左右部材の下端から車両中心側に向けて入り込み地面と対向する底面部材と、を備え、前記曲面パネルは、上下方向に関して下端が上端よりも前方に突出する凹状の曲面を有すると共に、左右方向に関して中央が左右端よりも前方に突出する形状を有し、前記正面部材と前記底面部材との間には、前記車両の幅方向に延びる第1の溝が形成されており、前記正面部材と前記一対の左右部材との間には、上下方向に延びる第2の溝が形成されていることを特徴とするフロントスポイラーを提供している。
【0008】
また、前記第1の溝と前記第2の溝とは1本の溝として連続的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントスポイラーであることが好ましい。
【0009】
また、前記正面部材は前記曲面パネルの上側にフレームを含み、前記曲面パネルと前記フレームとの間には、前記車両の幅方向に延びる第3の溝が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記第1の溝と前記第2の溝と前記第3の溝とは1本の連続した溝として形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフロントスポイラーであることが好ましい。
【0011】
また、前記正面部材、前記一対の左右部材及び前記底面部材は、金型を用いた射出成形によって一体的に成形されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フロントスポイラーに第1の溝及び第2の溝が形成されているため、補強部材を用いていなくても、フロントスポイラーの強度が増す。よって、車両走行中に受ける風圧によってフロントスポイラーに生じるねじれや歪みが低減され、空力性能等を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るフロントスポイラーを示す斜視図。
図2】フロントスポイラーの前面を斜め上から見た斜視図。
図3】フロントスポイラーを下から見た底面図。
図4】フロントスポイラーの左側面図。
図5】フロントスポイラーのV-V断面図。
図6】第1の変形例に係るフロントスポイラーを示す左側面図。
図7】第2の変形例に係るフロントスポイラーを示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.構成>
本発明の実施形態によるフロントスポイラー1について図1乃至図5を参照しながら説明する。本発明のフロントスポイラー1は、自動車のフロントバンパー(不図示)の下部に装着される部材である。なお、説明の都合上、各図面において、フロントスポイラー1に関して前後方向D1、左右方向D2及び上下方向D3を定義している。
【0015】
図1に示されるように、フロントスポイラー1は、正面部材3と、左右に一対の側面部材5(5L,5R)と、底面部材7(図3参照)とを備えている。ここでは、フロントスポイラー1は、金型を用いた射出成形によって一体的に形成されているものとする。つまり、正面部材3、一対の側面部材5L,5R及び底面部材7(図3参照)の各部材は独立した部材ではなく、フロントスポイラー1の一部を構成するものである。
【0016】
以下、フロントスポイラー1を構成する正面部材3、一対の側面部材5L,5R及び底面部材7について詳細に説明する。
【0017】
正面部材3は、フロントスポイラー1が車両に装着された状態において、車両の進行方向を向いて車両の幅方向に長尺な部材である。
【0018】
具体的には、正面部材3は、曲面パネル31と上部フレーム33と溝部4Uとを備えて構成される。上部フレーム33は、溝部4Uを隔てて曲面パネル31の上側に配置される部材であり、上下方向D3の長さが曲面パネル31よりも短い。溝部4Uは、図4及び図5に示されるように、曲面パネル31と上部フレーム33との間において曲面パネル31及び上部フレーム33に対して後方(車両側)に凹となるように形成されている。
【0019】
図1に示すように、正面部材3を構成する曲面パネル31、上部フレーム33及び溝部4Uは、いずれも、車両の幅方向において右左両端まで延在している。
【0020】
図4及び図5に示されるように、曲面パネル31は、上下方向D3に関して下端が上端よりも前方に突出する凹状の曲面を有する。また、図2に示さるように、曲面パネル31は、左右方向に関して中央が左右端よりも前方に突出する弓形状を有する。
【0021】
曲面パネル31は、アートパネルとも称され、車両のユーザがデザインを施したり、広告用の看板として用いたりするための領域である。曲面パネル31が車両正面下部に配置されることにより、比較的目立つ場所に独自のデザインをアレンジ(デコレーション)する領域が確保される。
【0022】
一対の側面部材5L,5Rは、正面部材3の左右端側から車両後方に向けて緩やかに曲がりながら略直角に延伸する部分である。図1及び図2に示すように、右側の側面部材5Rは正面部材3の右端から後方に延在しており、左側の側面部材5Lは正面部材3の左端から後方に延在している。側面部材5L,5Rの上端は、正面部材3の上部フレーム33と連続的に形成されており、正面部材3と側面部材5L,5Rとの境目は緩やかな曲線を描いている。また、側面部材5L,5Rの下端は、車両のデザインにもよるが、上端から略鉛直方向の下方に位置していてもよいし、やや外側に広がっていてもよい。
【0023】
図2に示されるように、曲面パネル31と側面部材5Lとの間には溝部6Lが形成されており、曲面パネル31と側面部材5Rとの間には溝部6Rが形成されている。溝部6L,6Rは、いずれも、曲面パネル31及び一対の側面部材5L,5Rに対して内側(車両側)に凹となるように形成されている。また、溝部6L,6Rは、上述の溝部4Uと連続的に形成されている。すなわち、溝部4Uと溝部6L,6Rとは連続した一本の溝部を構成する。
【0024】
図3に示されるように、底面部材7は、正面部材3の下端及び一対の側面部材5L,5Rの下端から車両中心側に向けて入り込み地面と対向する部材である。底面部材7は、下側から見た場合に、U字形状を有する。
【0025】
また、図3及び図5に示されるように、底面部材7と曲面パネル31との間には溝部4Lが形成されている。溝部4Lは、曲面パネル31に沿って左右方向に延在し、上述の溝部6L,6Rに接続されている。すなわち、溝部4Lと溝部6L,6Rとは連続した一本の溝部を構成する。また、上述したとおり溝部4Uと溝部6L,6Rとが連続しているため、溝部4Uと溝部6L,6Rと溝部4Lとは曲面パネル31を包囲するように連続した一本の溝部を構成する。
【0026】
溝部4U、溝部6L,6R及び溝部4Lは、正面部材3が車両走行時に受ける高い風圧によって変形するのを防ぐためのリブとして機能する(図4参照)。各溝部の形状は、コの字状、U字状、又はV字状のいずれであってもよい。深さは、正面部材3の強度を高める程度のものであれば、特に限定されない。
【0027】
図2に示すように、正面部材3(曲面パネル31、溝部4U及び上部フレーム33)は、左右方向に関して、前方に凸となる弧を描くように弓状に形成されている。上部フレーム33及びその下側に設けられる溝部4Uは、ほぼ同じ曲率半径を有している。
【0028】
一方、曲面パネル31の曲率半径は、上部フレーム33及び溝部4Uの曲率半径よりも小さく、曲がりが大きくなるように構成されている。
【0029】
まず、図4を参照しつつ、曲面パネル31の上端側における幅方向の曲がり具合について説明する。図4においては、曲面パネル31の中央が符号31Cで示され、曲面パネル31の左端が符号31Lで示されている。図4に示されるように、曲面パネル31の中央31Cの上端は上部フレーム33と略同じ位置(つらいち)であるのに対し、曲面パネル31の左端31Lの上端は上部フレーム33よりも大きく後方(車両側)に凹んでいる。なお、図示及び説明は省略するが、反対側の右端についても同様である。よって、曲面パネル31の上端側の曲率半径は、上部フレーム33及び溝部4Uの曲率半径よりも小さい。
【0030】
次に、曲面パネル31の下端側における幅方向の曲がり具合について説明する。曲面パネル31の下端側は上端側よりも前方に突出している。よって、曲面パネル31の下端側の曲率半径も、上部フレーム33及び溝部4Uの曲率半径に比べると小さい。
【0031】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、フロントスポイラー1に溝部4U、溝部6L,6R及び溝部4Lが形成されているため、補強部材を用いていなくても、フロントスポイラー1の強度が増す。よって、車両走行中に受ける風圧によってフロントスポイラー1に生じるねじれや歪みが低減され、空力性能等を発揮することが可能である。
【0032】
また、本実施形態では、曲面パネル31を含む正面部材3、一対の側面部材5L,5R及び底面部材7が一体的に構成されているが、溝部4U、溝部6L,6R及び溝部4Lによって曲面パネル31が別部材のように見える。
【0033】
<2.変形例>
本発明によるフロントスポイラーは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、溝部4U、溝部6L,6R及び溝部4Lが連続した一本の溝として構成される場合を例示したが、これに限定されず、それぞれ独立した溝として構成されるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、正面部材3、一対の側面部材5L,5R及び底面部材7が一体の部材として構成される場合を例示したが、これに限定されず、それぞれ別部材として構成されるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、溝部6L,6Rが曲線で形成される場合を例示したが(図4参照)、これに限定されず、図6に示されるように、くの字状に屈曲する2本の直線61L,63Lで形成されるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、正面部材3が曲面パネル31と溝部4Uと上部フレーム33との3要素で構成される場合を例示したが、溝部4U及び上部フレーム33は必ずしも必須の構成要素ではない。例えば、図7に示すように、フロントスポイラー1から溝部4U及び上部フレーム33を無くしてもよい。
【0038】
かかる変形例においても、溝部6L,6R及び溝部4Lによってフロントスポイラー1のねじれや歪みを低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように本発明にかかるフロントスポイラーは車両のフロントバンパーに装着するのに適している。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントスポイラー
3 正面部材
4L,4U 溝部
5(5L,5R) 側面部材
6L,6R 溝部
7 底面部材
31 曲面パネル
31C 中央
31L 左端
33 上部フレーム
D1 前後方向
D2 左右方向
D3 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7