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特許7037441梁受け金物、梁受け金物設置方法、梁受け構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】梁受け金物、梁受け金物設置方法、梁受け構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20220309BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/58 508L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018106768
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019210673
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】315007581
【氏名又は名称】BXカネシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】杉目 勝也
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012935(JP,A)
【文献】特開2002-013203(JP,A)
【文献】特開2011-149256(JP,A)
【文献】特開2008-069548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/38
E04B 1/48
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の一方側に設けられ木材の外に突出する木材突出部と、その木材挿入部の他方側に設けられ前記木材貫通孔の内径よりも外径が大きく前記木材突出部の方への抜止めを行う抜止め防止部とを有し、前記木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界に固定用嵌合部が設けられた梁受け金物本体と、
前記梁受け金物本体の前記木材挿入部が前記木材貫通孔に通された後、前記固定用嵌合部に嵌合し前記梁受け金物本体を木材に固定する固定部材とを備え、
前記木材突出部および前記木材挿入部は、前記木材貫通孔を通る大きさであることを特徴とする梁受け金物。
【請求項2】
木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の両側にそれぞれ設けられ木材の外に突出する木材突出部とを有し、前記木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界部分に固定用嵌合部が設けられた梁受け金物本体と、
前記梁受け金物本体の前記木材挿入部が前記木材貫通孔に通された後、前記固定用嵌合部に嵌合し前記梁受け金物本体を木材に固定する固定部材とを備え、
前記木材突出部および前記木材挿入部は、前記木材貫通孔を通る大きさであることを特徴とする梁受け金物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の梁受け金物において、
前記梁受け金物本体を構成する木材挿入部および木材突出部は、
木材に設けられた木材貫通孔の直径とほぼ同じ高さを有すると共に、当該木材貫通孔の長さ以上の長さを有する長尺プレートで一体に構成されており、
前記木材挿入部には、その長手方向に前記木材貫通孔の内径とほぼ同じ外径の円板部が任意の間隔で設けられていることを特徴とする梁受け金物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一の請求項に記載の梁受け金物において、
前記梁受け金物本体の固定用嵌合部は、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界に形成された固定用嵌合孔部または固定用嵌合溝部であり、
前記固定部材には、前記梁受け金物本体の前記固定用嵌合孔部に嵌合する固定用突部または前記固定用嵌合溝部に嵌合する固定用屈曲部が形成されていることを特徴とする梁受け金物。
【請求項5】
木材には1または複数の木材貫通孔が形成されており、前記1または複数の木材貫通孔に請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載の梁受け金物を構成する梁受け金物本体をそれぞれの前記木材突出部が突出するように挿入し、
前記1または複数の木材貫通孔から突出した前記梁受け金物本体を前記固定部材で木材に固定することによって梁受け金物を設置することを特徴とする梁受け金物設置方法。
【請求項6】
木材には1または複数の木材貫通孔が形成されており、前記1または複数の木材貫通孔に請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載の梁受け金物を構成する梁受け金物本体がそれぞれの前記木材突出部を突出させるように挿入されている一方、
前記1または複数の木材貫通孔から突出した前記梁受け金物本体を前記固定部材で木材に固定することによって構築されていることを特徴とする梁受け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や胴差し梁等の木材に取り付けられ、その木材とは別の梁を受ける梁受け金物、梁受け金物設置方法、梁受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱や胴差し等の木材に取り付けられ、梁を受ける従来の梁受け金物として、ボルト孔にボルトを通して柱や胴差し等の木材に固定される背板と、ドリフトピンが挿入されるピン孔が設けられており、梁の端面に加工されたスリットに差し込まれ、そのピン孔にドリフトピンが通され梁に固定される一対の側板とを有する平面視、コ字状の梁受け金物が各種提案されている(例えば、特許文献1~7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-070456号公報
【文献】特開2014-066033号公報
【文献】特開2013-238061号公報
【文献】特開2013-238060号公報
【文献】特開2013-237968号公報
【文献】特開2013-234512号公報
【文献】特開2013-234511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1~7に記載の従来の梁受け金物は、背板のボルト孔にボルトを通してナットによって柱や胴差し等の木材に固定するため、現場でナット締めの作業が必要であり、現場における作業員の負担が大きい、という問題がある。
【0005】
また、特許文献1~7に記載の従来の梁受け金物は、背板がボルトおよびナットによって柱や胴差し等の木材に固定されるため、道路の振動や生活振動等によりナットが緩むおそれがある、という問題もある。
【0006】
さらに、特許文献1~7に記載の従来の梁受け金物の場合、梁成(梁の高さ)に応じてサイズの異なる梁受け金物を用意しておくことになるが、サイズの異なる梁受け金物を用意すると、その分だけ、金型費等がかかりコスト高になると共に、保管場所が必要になり、さらには在庫が増える等の問題もある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題に着目してなされたもので、木材に取り付ける際にボルトおよびナットが不要で、現場作業の負担が軽減されると共に、ナットの緩みを気にする必要なく、かつ、梁成(梁の高さ)に応じてサイズの異なる梁受け金物を用意する必要がない梁受け金物、梁受け金物設置方法、梁受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る梁受け金物では、木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の一方側に設けられ木材の外に突出する木材突出部と、その木材挿入部の他方側に設けられ前記木材貫通孔の内径よりも外径が大きく前記木材突出部の方への抜止めを行う抜止め防止部とを有し、前記木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界部分に固定用嵌合部が設けられた梁受け金物本体と、前記梁受け金物本体の前記木材挿入部が前記木材貫通孔に通された後、前記固定用嵌合部に嵌合し前記梁受け金物本体を木材に固定する固定部材とを備え、前記木材突出部および前記木材挿入部は、前記木材貫通孔を通る大きさであることを特徴とする。
また、本発明に係る梁受け金物では、木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の両側にそれぞれ設けられ木材の外に突出する木材突出部とを有し、前記木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界部分に固定用嵌合部が設けられた梁受け金物本体と、前記梁受け金物本体の前記木材挿入部が前記木材貫通孔に通された後、前記固定用嵌合部に嵌合し前記梁受け金物本体を木材に固定する固定部材とを備え、前記木材突出部および前記木材挿入部は、前記木材貫通孔を通る大きさであることも特徴とする。
また、本発明に係る梁受け金物では、前記梁受け金物本体を構成する木材挿入部および木材突出部は、木材に設けられた木材貫通孔の直径とほぼ同じ高さを有すると共に、当該木材貫通孔の長さ以上の長さを有する長尺プレートで一体に構成されており、前記木材挿入部には、その長手方向に前記木材貫通孔の内径とほぼ同じ外径の円板部が任意の間隔で設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る梁受け金物では、前記梁受け金物本体の固定用嵌合部は、前記木材挿入部と前記木材突出部との境界に形成された固定用嵌合孔部または固定用嵌合溝部であり、前記固定部材には、前記梁受け金物本体の前記固定用嵌合孔部に嵌合する固定用突部または前記固定用嵌合溝部に嵌合する固定用屈曲部が形成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る梁受け金物設置方法では、木材には1または複数の木材貫通孔が形成されており、前記1または複数の木材貫通孔に上述のいずれかの梁受け金物を構成する梁受け金物本体をそれぞれの前記木材突出部が突出するように挿入し、前記1または複数の木材貫通孔から突出した前記梁受け金物本体を前記固定部材で木材に固定することによって梁受け金物を設置することを特徴とする。
また、本発明に係る梁受け構造では、木材には1または複数の木材貫通孔が形成されており、前記1または複数の木材貫通孔に上述のいずれかの梁受け金物を構成する梁受け金物本体がそれぞれの前記木材突出部を突出させるように挿入されている一方、前記1または複数の木材貫通孔から突出した前記梁受け金物本体を前記固定部材で木材に固定することによって構築されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る梁受け金物は、木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の一方側に設けられ木材の外に突出する木材突出部と、その木材挿入部の他方側に設けられ木材貫通孔の内径よりも外径が大きく木材突出部の方への抜止めを行う抜止め防止部とを有し、木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、木材挿入部と木材突出部との境界部分に固定用嵌合部が設けられた梁受け金物本体(片引き用の梁受け金物の場合)、または木材に設けられた木材貫通孔に挿入される木材挿入部と、その木材挿入部の両側にそれぞれ設けられ木材の外に突出する木材突出部とを有し、木材突出部にはピンを受けるピン受け凹部およびピンが挿通されるピン挿通孔が設けられている一方、木材挿入部と木材突出部との境界部分に固定用嵌合部が設けられた両引き用の梁受け金物本体(両引き用の梁受け金物の場合)と、梁受け金物本体の木材挿入部が木材貫通孔に通された後、固定用嵌合部に嵌合し梁受け金物本体を木材に固定する固定部材とを備え、木材突出部および木材挿入部は、木材貫通孔を通る大きさである。
そのため、梁受け金物を構築する際にボルトおよびナットが不要になるので、本発明に係る梁受け金物、その梁受け金物設置方法、梁受け構造によれば、現場作業の負担が軽減されると共に、ナットの緩みを気にする必要がなくなる。
また、本発明に係る梁受け金物の梁受け金物本体を木材に間隔を離して設ける数を変えれば、梁成(梁の高さ)に応じたサイズの異なる梁受け金物を簡単に構成することができる。
そのため、本発明に係る梁受け金物、その梁受け金物設置方法、梁受け構造によれば、サイズの異なる梁受け金物を用意する必要がなくなり、コストを低減することができると共に、保管場所や、在庫点数、在庫管理の手間等を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態1の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の斜視図、平面図である。
図2】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態1の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の正面図、左側面図である。
図3】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態1の梁受け金物本体を構成する長尺プレートと、円板部と、抜止め防止部を示す図である。
図4】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態1の梁受け金物を構成する固定部材の斜視図、平面図、正面図である。
図5】(a),(b)それぞれ、実施形態1の梁受け金物本体を任意の間隔を空けて通す木材貫通孔を梁に2箇所形成した状態を示す斜視図、その2箇所の木材貫通孔に梁受け金物本体を通すところを示す斜視図である。
図6】(a),(b)それぞれ、梁に設けた2箇所の木材貫通孔それぞれに梁受け金物本体を挿入した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
図7】(a),(b)それぞれ、梁に設けた2箇所の木材貫通孔それぞれに実施形態1の梁受け金物本体を挿入し、固定部材により固定する際の状態を示す斜視図、固定部材により固定した後の状態を示す斜視図である。
図8】(a),(b)それぞれ、梁に設けた2箇所の木材貫通孔それぞれに挿入した実施形態1の2本の梁受け金物本体に固定部材を嵌合して固定が完了した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
図9】(a),(b)それぞれ、梁に固定した実施形態1の梁受け金物に別の梁を掛ける際の状態を示す斜視図、別の梁を掛けた後、ドリフトピンを挿入する際の状態を示す斜視図である。
図10】(a),(b)それぞれ、柱に実施形態1の梁受け金物を構成する4本の梁受け金物本体を通して構築した梁受け金物の状態を示す斜視図、柱に実施形態1の梁受け金物を構成する3本の梁受け金物本体を通して構築した梁受け金物の状態を示す斜視図である。
図11】(a),(b)それぞれ、柱に実施形態1の梁受け金物を構成する5本の梁受け金物本体を通して構築した梁受け金物の状態を示す斜視図、柱に実施形態1の梁受け金物を構成する6本の梁受け金物本体を通して構築した梁受け金物の状態を示す斜視図である。
図12】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態2の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の正面図、平面図である。
図13】(a),(b)それぞれ、梁に設けた2箇所の木材貫通孔それぞれに挿入した実施形態2の2本の梁受け金物本体に固定部材を嵌合して固定が完了した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
図14】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の斜視図、平面図である。
図15】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の正面図、左側面図である。
図16】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態3の梁受け金物本体を構成する長尺プレートと、円板部と、抜止め防止部を示す図である。
図17】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態3の梁受け金物を構成する固定部材の斜視図、正面図、右側面図である。
図18】(a),(b)それぞれ、柱に設けた3箇所の木材貫通孔それぞれに実施形態3の梁受け金物本体を挿入し、固定部材により固定する際の状態を示す斜視図、固定部材により固定した後の状態を示す斜視図である。
図19】(a),(b)それぞれ、柱に固定した実施形態3の梁受け金物に梁を掛ける際の状態を示す斜視図、梁を掛けた後、ドリフトピンを挿入する際の状態を示す斜視図である。
図20】(a),(b)それぞれ、柱に実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体を2本挿入し固定部材により固定した状態を示す斜視図、柱に実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体を4本挿入して固定部材により固定した状態を示す斜視図である。
図21】(a),(b)それぞれ、柱に実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体を5本挿入し固定部材により固定した状態を示す斜視図、柱に実施形態3の梁受け金物を構成する梁受け金物本体を6本挿入して固定部材により固定した状態を示す斜視図である。
図22】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態4の梁受け金物を構成する梁受け金物本体の平面図、正面図である。
図23】(a),(b)それぞれ、柱に設けた3箇所の木材貫通孔それぞれに挿入した実施形態4の3本の梁受け金物本体に固定部材を嵌合して固定が完了した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態1~4の梁受け金物、及び梁受け金物の設置方法、および梁受け金物を使用した梁受け構造について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態1~4は、あくまで、本発明の一例であり、本発明は、下記に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
実施形態1.
実施形態1(片引き用)の梁受け金物1は、図1図4に示すように、梁受け金物本体11と、固定部材12とで構成される。
【0013】
<梁受け金物本体11>
梁受け金物本体11は、図3(a)に示すような形状の長尺プレート11aと、図3(b)に示すような円板部11bを2枚と、図3(c)に示すような抜止め防止部11cとを溶接等により接合して図1図2等に示すように構成され、後述するように例えば梁5の木材貫通孔5a(図6(a)等参照。)に通された後、固定部材12で固定されるもので、梁5の中に挿入される木材挿入部11a1(図2(a)参照。)と、梁5の外に突出する木材突出部11a2(図2(a)参照。)とを有する。
【0014】
尚、図2(b)に示すように長尺プレート11aの厚さをW1、図2(a)に示すように円板部11bの厚さをW2、抜止め防止部11cの厚さをW3とする。これらの部材の厚さW1~W3は同一で良いし、それぞれ違っていても良く、本発明では厚さにこだわらない。
【0015】
(長尺プレート11a)
長尺プレート11aは、図3(a)に示すように、梁5に設けられた木材貫通孔5aの内径とほぼ同じ高さh1を有すると共に、その木材貫通孔5aの長さ以上、すなわち梁5の太さ以上の長さを有する長尺の鋼板等から構成されている。
【0016】
長尺プレート11aは、木材挿入部11a1に図3(b)に示す2枚の円板部11bを任意の間隔で取り付けるため、長尺プレート11aの高さh1のほぼ1/4の深さh2の凹部11a11,11a12が形成されていると共に、図3(c)に示す抜止め防止部11cを嵌めるため長尺プレート11aの高さh1のほぼ1/2である高さh4の凸部11a13が形成されている。
【0017】
凹部11a11,11a12は、図3(b)に示す円板部11bが図3(a)に示すように下方から嵌るように下側開放で形成されており、それらの幅W4は、円板部11bが嵌るため円板部11bの幅W2と同じか、その幅W2前後の大きさとしている。
【0018】
凸部11a13は、抜止め防止部11cを嵌めて取り付けるため、その高さh4は、図3(c)に示すように抜止め防止部11cに形成された取付け孔11c1の高さh5と同じか、その高さh5前後の大きさにしている。また、凸部11a13の突出量W5は、抜止め防止部11cの厚さW3と同じか、その厚さW3前後の大きさとしている。
【0019】
(円板部11b)
円板部11bは、長尺プレート11aの凹部11a11,11a12に嵌め溶接等して取り付けるもので、図3(b)に示すように、長尺プレート11aの幅W1と同じか、その幅W1前後の大きさの幅W6で、深さh3の凹部11b1が形成されている。尚、凹部11a11,11a12の深さh2が長尺プレート11aの高さh1のほぼ1/4であるため、凹部11b1の深さh3は、長尺プレート11aの高さh1のほぼ3/4となる。ここで、円板部11bは、長尺プレート11aと同様に鋼板製だけでなく、樹脂製等でも良い。ただし、樹脂製の円板部11bの場合には溶接できないので、溶接以外の方法、例えば圧入や接着剤等によって長尺プレート11aの凹部11a11,11a12に取り付けるようにする。尚、円板部11bが鋼板製だけでなく、樹脂製等でも良いことは、後述する他の実施形態2~4でも同様である。
【0020】
また、円板部11bは、長尺プレート11aに取り付けられて、梁5の木材貫通孔5aに挿入されるため、梁5の木材貫通孔5aの内径と同じか、その内径前後の大きさの外径(直径)を有する。尚、本実施形態では、円板部11bを2枚設けて説明しているが、2枚はあくまで一例であり、1枚でも、3枚以上でも勿論良いし、その間隔も任意であり、このことは後述する他の実施形態2~4でも同様である。
【0021】
(抜止め防止部11c)
抜止め防止部11cは、長尺プレート11aの凸部11a13に嵌め溶接等して取り付けられ、梁受け金物本体11の抜止めを行うもので、図3(c)に示すように、長尺プレート11aの幅W1と同じか、その幅W1前後の大きさの幅W7で、凸部11a13の高さh4と同じか、その高さh4前後の大きさの高さh5の取付け孔11c1が形成されており、梁5の木材貫通孔5aの内径や長尺プレート11aの高さh1よりも大きい外径を有している。
【0022】
(木材挿入部11a1)
木材挿入部11a1は、梁5の木材貫通孔5aに挿入される部分で、図1及び図2に示すように、上述した2枚の円板部11bを長尺プレート11aの凹部11a11,11a12に任意の間隔で嵌めた後、溶接等によって取り付ける一方、上述した抜止め防止部11cを長尺プレート11aの凸部11a13に嵌めた後、溶接等によって取り付けて構成されている。
【0023】
(木材突出部11a2)
木材突出部11a2は、梁5の木材貫通孔5aから突出する部分で、図1図2等に示すように、ドリフトピン7を受けるピン受け凹部11a21と、ドリフトピン7が挿通される内径R2のピン挿通孔11a22とが設けられている一方、木材挿入部11a1との境界部分に、固定部材12の固定用突部12a1が挿入される内径R1の固定用嵌合孔部11a23が形成されている。
【0024】
<固定部材12>
固定部材12は、梁5の木材貫通孔5aに通された梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23に嵌めて当該梁受け金物本体11をボルトやナットを使用せずに梁5に固定するもので、例えば、図4(a)~(c)に示すように、固定部材12の挿入方向と平行な挿入板部12aと、挿入板部12aに対し垂直な垂直板部12bとによって平面視、L字形状に形成されており、挿入板部12a先端には、2本の梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23にそれぞれに嵌合する2つの固定用突部12a1が2本の梁受け金物本体11の取付け間隔に合わせて設けられている。尚、図4(a)~(c)に示す固定部材12は一例であり、後述するように固定すべき梁受け金物本体11の本数および間隔に合わせて固定用突部12a1を設ける。
【0025】
各固定用突部12a1は2本の梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23にそれぞれに嵌合する必要があるため、その高さh6は長尺プレート11aの固定用嵌合孔部11a23の内径R1(図3(a)参照。)とほぼ同一か若干小さく形成されている一方、各固定用突部12a1の突出長L1は、梁受け金物本体11の長尺プレート11aの厚さW1(図2(b)参照。)以上とする。
【0026】
<実施形態1の梁受け金物1を使用した梁受け金物設置方法および梁受け構造>
次に、以上のように構成された実施形態1の梁受け金物1を使用した梁受け金物設置方法および梁受け構造について説明する。尚、ここでは、梁受け金物本体11を2本と、2本の梁受け金物本体11を同時に固定可能な固定部材12を1個で説明する。
【0027】
まず、図5(a)に示すように、梁5に、実施形態1の2本の梁受け金物本体11の木材挿入部11a1および木材突出部11a2を挿入するための木材貫通孔5aを任意の間隔で2箇所形成すると共に、抜止め防止部11cを収めるための座掘り部5bを形成する。尚、本発明では、梁5側に座掘り部5bを設けることは任意である。
【0028】
次に、図5(b)に示すように梁5に任意の間隔を空けて設けた2箇所の木材貫通孔5aそれぞれに木材突出部11a2先端から梁受け金物本体11を通す。図6(a),(b)に示すように梁受け金物本体11の抜止め防止部11cが座掘り部5bに収まると、2箇所の木材貫通孔5aそれぞれから各梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23が露出するように木材突出部11a2が突出する。
【0029】
そして、図6(a),(b)に示すように、梁5の2箇所の木材貫通孔5aそれぞれに固定用嵌合孔部11a23が露出した状態で2本の梁受け金物本体11の挿入が完了すると、次いで図7(a)に示すように、梁5の各木材貫通孔5aそれぞれから突出している2本の梁受け金物本体11に固定部材12を近付け、図7(b)に示すように、2本の梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23それぞれに固定部材12の2つの固定用突部12a1を嵌合する。
【0030】
図8(a),(b)は、それぞれ、図7(b)に示すように梁5の2箇所の木材貫通孔5aそれぞれに挿入した2本の梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23それぞれに固定部材12の2つの固定用突部12a1の嵌合が完了した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
【0031】
図8(a),(b)に示すように、2本の梁受け金物本体11は、それぞれ、固定部材12の2つの固定用突部12a1と、その反対側の端部の抜止め防止部11cとによって梁5に固定されることになる。
【0032】
そのため、実施形態1の梁受け金物1では、ボルトやナットを使用せずに、2本の梁受け金物本体11を1つの固定部材12により梁5に固定して、ピン受け凹部11a21とピン挿通孔11a22とを有する梁受け金物を構成することができる。
【0033】
つまり、実施形態1の梁受け金物1では、図8(b)等に示すように2本の梁受け金物本体11を使用した場合、2本の梁受け金物本体11の内、上側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21が従来の背板と一対の側板を有する梁受け金物のピン受け凹部として機能する一方、上側および下側の梁受け金物本体11のピン挿通孔11a22が、従来の背板と一対の側板を有する梁受け金物のピン挿通孔として機能することになる。また、下側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21も、上部が開放しているもののピン挿通孔として機能する。
【0034】
図7(b)や図8(a),(b)に示すように2本の梁受け金物本体11及び1個の固定部材12によって梁5に梁受け金物を構築すると、図9(a)に示すように、その2本の梁受け金物本体11及び1個の固定部材12が挿入される細幅スリット6aおよび太幅スリット6bと、2本の梁受け金物本体11それぞれのピン受け凹部11a21およびピン挿通孔11a22に対応した4つのピン挿通孔6c~6fが形成された別の梁6を用意し、上側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21に対応したピン挿通孔6cにドリフトピン7を挿入しておく。
【0035】
そして、梁5側の2本の梁受け金物本体11の梁受け金物本体11及び1個の固定部材12が、梁6側の細幅スリット6aおよび太幅スリット6bに挿入されるように梁6を梁5側に移動し、図9(b)に示すように梁6のピン挿通孔6cに予め通しておいたドリフトピン7を、梁5側で梁受け金物を構成する上側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21に嵌合させる。
【0036】
梁6のピン挿通孔6cに予め通しておいたドリフトピン7が、梁5に固定された上側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21に嵌合すると、梁6側の残り3箇所のピン挿通孔6d~6fと、梁5側で梁受け金物を構成する上下2本の梁受け金物本体11のピン挿通孔11a22と下側の梁受け金物本体11のピン受け凹部11a21の位置とが合うので、図9(b)に示す矢印の方向に、残り3箇所のピン挿通孔6d~6fそれぞれにドリフトピン7を挿入する。
【0037】
これにより、実施形態1の梁受け金物1を構成する2本の梁受け金物本体11及び1個の固定部材12と、ドリフトピン7を4本使用することによって、ボルトおよびナットを使用せずに梁5に対する梁6の固定が完了する。
【0038】
以上説明したように、実施形態1の梁受け金物1は、梁5に設けられた木材貫通孔5aに通され梁5の中に挿入される木材挿入部11a1と、梁5の外に突出する木材突出部11a2と、木材突出部11a2とは反対側の木材挿入部11a1端部に設けられ、木材貫通孔5aの内径よりも外径が大きく抜止めを行う抜止め防止部11cとを有し、木材突出部11a2にはドリフトピン7を受けるピン受け凹部11a21及びドリフトピン7が挿通されるピン挿通孔11a22が設けられている一方、木材挿入部11a1との境界部分に固定用嵌合孔部11a23が設けられた梁受け金物本体11と、木材貫通孔5aに通された梁受け金物本体11の固定用嵌合孔部11a23に嵌めて当該梁受け金物本体11を木材に固定する固定部材12とを有する。
【0039】
そのため、実施形態1の梁受け金物1、その梁受け金物設置方法、梁受け構造によれば、固定対象である梁5等の木材に形成した1または複数の木材貫通孔5aに梁受け金物本体11を通し、その後、固定部材12によって梁受け金物本体11を梁5等の木材に固定することによって、ピン受け凹部およびピン挿通孔を有する梁受け金物を構築することができる。
【0040】
その結果、実施形態1の梁受け金物1、その梁受け金物設置方法、梁受け構造によれば、梁受け金物を固定対象である梁5等の木材に取り付けるためのボルトおよびナットが不要になり、現場作業の負担が軽減されると共に、ナットの緩みを気にする必要がなくなる。また、梁受け金物1を固定対象である木材に固定する際、通常は丸鋼、鋼管、ボルト等を用いるが、実施形態1の梁受け金物1、その梁受け金物設置方法、梁受け構造では、ボルト・ナットが不要な工法であるので、生活振動などによるナットの緩みなどの懸念事項がなくなる。
【0041】
特に、実施形態1の梁受け金物1では、梁受け金物本体11を構成する木材挿入部11a1及び木材突出部11a2は、梁5に設けられた木材貫通孔5aの直径とほぼ同じか若干小さい高さを有すると共に、当該木材貫通孔5aの長さ以上の長さを有する長尺プレート11aで一体に構成されており、木材挿入部11a1には、その長手方向に間隔を空けて梁5の木材貫通孔5aの内径と同じ外径の円板部11bを2つ設けることによって梁受け金物本体11を構成したため、梁受け金物1を少ない材料で効率良く作製することができる。
【0042】
つまり、実施形態1の梁受け金物1は、図3(a)に示すような形状の長尺プレート11a、図3(b)に示すような円板部11bおよび図3(c)に示すような抜止め防止部11cからなる梁受け金物本体11と、図4に示すような固定部材12等の板状部材を組み合わせることで特殊な金型などを必要とせずに製造することができると共に、長尺プレート11aの長さや円板部11bの個数および間隔等を自由に設計して、木材の高さだけではなく、幅や求められる耐力、規格サイズ等に捉われず対応することができる。例えば、円板部11bを設ける間隔を狭くし、円板部11bを設ける個数を増やすことで必然的に実施形態1の梁受け金物1の耐力が向上し、また応力が必要な箇所に円板部11bを装着することで合理的に補強することができると共に、木材貫通孔5aの中でバランスが取り易くなり、梁受け金物本体11が一方に傾き難くなるので、施工性が向上し、ガタツキ防止効果も向上する。
【0043】
また、実施形態1の梁受け金物1では、固定部材12が梁受け金物本体11に対しくさびの役割も果たすので、金物と木材相互を引寄せる引寄せ効果を発揮できる。引寄せ効果は梁受け金物本体11が複数でも1個でも生じる。また、固定部材12が梁受け金物本体11を2本以上固定する場合、梁受け金物本体11の回転やガタツキも防止できる共に、通常、梁6を上から落として施工するため、梁受け金物本体11が回転していたりガタツキがあると施工し難いが、固定部材12によって梁受け金物本体11が真っ直ぐ取り付けられることで、施工精度および作業性も向上する。ただし、固定部材12のくさびの役割は付加的なものであり、梁受け金物1が挿入した木材から抜け落ちない機構になっていれば、固定部材12や固定用嵌合孔部11a23の形状等にこだわるものでない。
【0044】
尚、以上説明した実施形態1では、梁受け金物本体11を上下方向に任意の間隔を空けて2本設けて説明したが、本発明では、これに限らず、図10(a),(b)や図11(a),(b)に示すように固定対象である柱8に間隔を離して3本以上設け、梁成(梁の高さ)に応じたサイズの異なる梁受け金物を簡単に構成することができる。特に、
【0045】
例えば、図10(a)に示すように、柱8の上下方向に間隔を離して4本の梁受け金物本体11を設けることにより、梁成(梁の高さ)の大きい梁6に対応した梁受け金物を構築できる一方、図10(b)に示すように、柱8の上下方向に間隔を離して3本の梁受け金物本体11を設けることにより、梁成(梁の高さ)が中程度の梁6に対応した梁受け金物を構築できる。
【0046】
ただし、図10(a)に示す場合は、梁受け金物本体11を4本固定する必要があるため、図1図9にて説明した固定用突部12a1を2つ有する固定部材12を2本使用すれば良いが、図10(b)に示す場合は、梁受け金物本体11を3本固定する必要があるため、例えば、3つの固定用突部12aを有する固定部材12’を使用して固定することになる。尚、図10(a)に示す場合は、図示しないが、4個の固定用突部12aを有する固定部材を1つ使用することもできる。
【0047】
また、図11(a),(b)に示すように、柱8に間隔を離して5本と6本の梁受け金物本体11を取り付けることにより、それぞれ、梁成(梁の高さ)がかなり大きい梁6にも対応することができる。ただし、図11(a)に示す場合は、梁受け金物本体11を5本使用するので、例えば、図4等に示した2つの固定用突部12aを有する固定部材12と、図10(b)にて説明した3つの固定用突部12aを有する固定部材12’とを1個ずつ使用して固定する一方、図11(b)に示す場合は、図10(b)にて説明した3つの固定用突部12aを有する固定部材12’を2本して固定することができる。尚、図11(a),(b)に示す場合も、図示しないが、5個または6個の固定用突部12aが設けられた固定部材を使用することもできる。尚、図11(b)に示す場合においても、図4等に示した2つの固定用突部12aを有する固定部材12を3個使用して固定するようにしても良い。
【0048】
そのため、実施形態1の梁受け金物1、その梁受け金物設置方法、梁受け構造によれば、サイズの異なる梁受け金物を用意する必要がなくなるので、コストを低減することができると共に、保管場所や在庫点数、在庫管理の手間等を削減することができる。
【0049】
尚、上記実施形態1の梁受け金物1の説明では、梁受け金物本体11を2本~6本の複数本と、固定部材12,12’を1個または複数個使用して梁受け金物を構築するように説明したが、本発明では、1本の梁受け金物本体11と、1個の固定部材を使用して梁受け金物を構築するようにしても勿論良いし、7本以上使用しても良い。また、上述したように梁受け金物1によって梁5と梁6とを固定しても良いし、柱8と梁6とを固定する等、上述した以外の木材同士の固定に使用するようにしても良い。
【0050】
実施形態2.
実施形態1の梁受け金物1は、図1図11に示すように、片引きの梁受け金物を構築するように説明したが、実施形態2の梁受け金物2は、図12(a),(b)および図13(a),(b)に示すように、両引き、すなわち両側で梁6を受けることができる梁受け金物について説明する。尚、実施形態2の梁受け金物2は、梁受け金物本体21と固定部材12とで構成されるが、固定部材12は実施形態1のものと同じ構成なので、梁受け金物本体21のみを説明する。また、実施形態1の梁受け金物1と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明する。
【0051】
図12(a),(b)は、それぞれ、本発明に係る実施形態2の梁受け金物2を構成する梁受け金物本体21の平面図、正面図である。
【0052】
図12(a),(b)に示すように、実施形態2の梁受け金物2は両引きの梁受け金物であるため、梁受け金物本体21の長尺プレート21aは、木材挿入部11a1の長手方向の両側にそれぞれ木材突出部11a2を設けて構成されている。
【0053】
ここで、実施形態2の梁受け金物2は、図1(a),(b)および図2(a),(b)に示す実施形態1の梁受け金物1の梁受け金物本体11とは異なり、抜止め防止部11cが設けられてなく、固定対象である梁5や柱8等の木材の両側それぞれから固定部材12でその木材を挟むようにして梁受け金物本体21をその木材に固定する。
【0054】
つまり、実施形態2の梁受け金物2を構成する梁受け金物本体21を木材の木材貫通孔に通すと、その木材の両側からそれぞれ木材突出部11a2,11a2が突出し、このままでは梁受け金物本体21がいずれの方向にも抜けてしまうので、例えば、図13(a),(b)に示すように木材突出部11a2,11a2それぞれの木材挿入部11a1との境界部分の固定用嵌合孔部11a23,11a23に固定部材12の2つの固定用突部12aを嵌合して、2本の固定部材12で固定対象の木材である梁5を両側から挟むようにして梁受け金物本体21を梁5に固定する。
【0055】
これにより、実施形態2の梁受け金物2を使用すると、両引きの梁受け金物1を構築することが可能となり、固定対象である梁5の左右両側でそれぞれ別の梁6を受けることが可能となる。
【0056】
従って、実施形態2の梁受け金物2によれば、梁受け金物本体21の木材挿入部11a1の両側にそれぞれ木材突出部11a2,11a2を設け、木材突出部11a2,11a2それぞれの木材挿入部11a1との境界部分に設けた固定用嵌合孔部11a23,11a23に固定部材12の2つの固定用突部12aを嵌合して両引きの梁受け金物1を構築するように構成したため、実施形態1の梁受け金物1と同様に、固定対象である梁5等の木材に取り付ける際にボルトおよびナットが不要になり、現場作業の負担が軽減されると共に、ナットの緩みを気にする必要がなくなる等の効果が得られる。
【0057】
また、実施形態2の梁受け金物2によれば、図10および図11に示す実施形態1の梁受け金物1と同様に固定対象である柱8の上下方向に間隔を離して3本~6本の梁受け金物本体31を取り付けることにより、梁成に応じたサイズの異なる両引き用の梁受け金物を簡単に構成することができるので、サイズの異なる梁受け金物を用意する必要がなくなり、コストを低減することができると共に、保管場所も削減することができる。
【0058】
さらに、実施形態1の梁受け金物1と実施形態2の梁受け金物2とを梁や柱等の同一の固定対象に併用しても勿論良い。例えば、同一の固定対象に両引き用の実施形態2の梁受け金物2を2本取り付ける一方、その下方に片引き用の実施形態1の梁受け金物1を1本取り付けることによって、両引き用の実施形態2の梁受け金物2の木材突出部11a2のみが突出した側と、両引き用の実施形態2の梁受け金物2および片引き用の実施形態1の梁受け金物1の木材突出部11a2側とで梁成(梁の高さ)の異なる梁を同一の固定対象に取り付けることができる。尚、このことは後述する実施形態3の片引き用の梁受け金物3と、実施形態4の両引き用の梁受け金物4の場合も同様で、実施形態3の片引き用の梁受け金物3と、実施形態4の両引き用の梁受け金物4とを混在して使用しても勿論良い。
【0059】
尚、上記実施形態1(片引き用)および実施形態2(両引き用)の梁受け金物1,2の説明では、それらの梁受け金物1,2を、別部材の長尺プレート11a,21aと、円板部11bと、抜止め防止部11cにそれぞれ凹部や凸部、取付け孔を予め形成しておき、それらを組付けた後、溶接等により接合して構成するように説明したが、本発明では、これに限らず、一体成形や圧入などで取り付けても良い。また、長尺プレート11a,21aは、鋼板により構成して説明したが、鋼製の丸棒や角材等の棒材も使用することが可能であり、例えば、柱8の木材貫通孔5aの内径とほぼ同じ外径(直径)の棒材を使用する場合には、円板部11bを省略することも可能で、このことは後述する実施形態3,4の梁受け金物3,4でも同様である。
【0060】
実施形態3.
次に、本発明に係る実施形態3の片引き用の梁受け金物3について説明する。尚、実施形態1の梁受け金物1等と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明する。
【0061】
図14(a),(b)は、それぞれ、本発明に係る実施形態3の片引き用の梁受け金物3を構成する梁受け金物本体31の斜視図、平面図、図15(a),(b)は、それぞれ、その正面図、左側面図、図16(a)~(c)は、それぞれ、本発明に係る実施形態3の梁受け金物本体31を構成する長尺プレート31aと、円板部31bと、抜止め防止部31cを示す図である。
である。
【0062】
<梁受け金物本体31>
図1図11に示す実施形態1の片引き用の梁受け金物1では、梁受け金物本体11における木材挿入部11a1と木材突出部11a2との境界部分に設ける固定用嵌合部として固定用嵌合孔部11a23を設けて説明したが、実施形態3の片引き用の梁受け金物3では、梁受け金物本体31における木材挿入部31a1と木材突出部31a2との境界部分に設ける固定用嵌合部として、固定用嵌合孔部11a23の代わりに固定用嵌合溝部31a24を形成したことを特徴とする。そのため、実施形態3の片引き用の梁受け金物3では、固定部材32の形状も変更する。
【0063】
(長尺プレート31a)
つまり、実施形態3の片引き用の梁受け金物3では、図14(a),(b)および図15(a),(b)に示すように、梁受け金物本体31を構成する長尺プレート31aに固定用嵌合孔部11a23の代わりに固定用嵌合溝部31a24を形成した点と、円板部31bを3枚設けた点以外は、図1図3に示す実施形態1の片引き用の梁受け金物1と同様に構成されている。
【0064】
ここで、固定用嵌合溝部31a24は、図14(a),(b)および図15(a),(b)に示すように、上部開放の凹形状の溝であり、図16(a)に示すような形状の長尺プレート31aの幅W9を有する凹部31a14に、図16(b)に示す円板部31bを取り付けた後の残りの凹部分によって幅がW8の固定用嵌合溝部31a24が形成される。
【0065】
また、長尺プレート31aには、図16(a)に示すように、実施形態1等のピン受け凹部11a21およびピン挿通孔11a22と同様のピン受け凹部31a21およびピン挿通孔31a22が設けられている一方、図16(b)に示す円板部31bを任意の間隔で取り付けるため幅がW4で長尺プレート31aの高さh1のほぼ1/4の深さh2の凹部31a11,31a12が形成されていると共に、図16(c)に示す抜止め防止部31cを嵌めるため実施形態1等の凸部11a13と同様の凸部31a13が形成されている。
【0066】
(円板部31b)
円板部31bは、厚さがほぼW4で、図16(b)に示すように幅がW6、深さh3が長尺プレート31aの高さh1のほぼ3/4である凹部31b1が設けられている
【0067】
(抜止め防止部31c)
抜止め防止部31cは、実施形態1等の抜止め防止部11cと同様であり、幅W7、高さh5の取付け孔31c1が設けられている。
【0068】
<固定部材32>
固定部材32は、梁5や柱8等の木材の木材貫通孔に通された実施形態3の梁受け金物本体31の固定用嵌合溝部31a24に嵌めて当該梁受け金物本体31をボルトやナットを使用せずに木材に固定するもので、図17(a)~(c)に示すように、例えば、3本の梁受け金物本体31の固定用嵌合溝部31a24にそれぞれに嵌合する3つの固定用屈曲部32aが任意の間隔で設けられている。
【0069】
各固定用屈曲部32aは、図17(a)~(c)に示すように、それぞれ、L字を180度回転させた形状に形成されており、深さh7が長尺プレート31aのほぼ1/4で、幅W10が長尺プレート31aの厚さW1と同じか、その厚さW1前後の凹部32a1を備えて構成されている。また、各固定用屈曲部32aの高さh8は、各梁受け金物本体31を木材に確実に固定することができるよう長尺プレート31aの高さh1と同じか、その高さh1よりも大きくしているが、各梁受け金物本体31を固定できれば十分であるので、その高さh8については特にこだわるものではない。
【0070】
そして、固定部材32の厚さW11は、固定部材32の固定用屈曲部32aが梁受け金物本体31の固定用嵌合溝部31a24に嵌ることによって梁受け金物本体31を木材に固定する必要があるため、固定用嵌合溝部31a24の幅W8とほぼ同じにしている。
【0071】
そのため、例えば、図18(a)に示すように、柱8に任意の間隔で固定した実施形態3の3本の各梁受け金物本体31の固定用嵌合溝部31a24に、図18(b)に示すように固定部材32の各固定用屈曲部32aを嵌めることによって、ボルトやナットを使用せずに、3本の梁受け金物本体31を1個の固定部材32により柱8に固定して、ピン受け凹部31a21とピン挿通孔31a22とを有する梁受け金物を構成することができる。
【0072】
その後は、図19(a)に示すように、3本の梁受け金物本体31及び1個の固定部材32に応じた細幅スリット6a’および太幅スリット6b’と、最上位の梁受け金物本体31のピン受け凹部31a21に対応したピン挿通孔6cと、その下方の2本の梁受け金物本体31のピン挿通孔31a22に対応したピン挿通孔6dとが形成され、かつ、最上位のピン挿通孔6cにドリフトピン7を挿入した梁6を上方から柱8側の3本の梁受け金物本体31及び1個の固定部材32によって構築した梁受け金物に掛ける。
【0073】
そして、図19(b)に示すように、梁6側の最上位のピン挿通孔6cに予め通しておいたドリフトピン7が、柱8側で梁受け金物を構成する最上位の梁受け金物本体31のピン受け凹部31a21に収まると、梁6側の残り2箇所のピン挿通孔6dと、柱8側で梁受け金物を構成する最上位の梁受け金物本体31以外の2本の梁受け金物本体31のピン挿通孔31a22とが位置が合うので、それぞれ、ドリフトピン7を挿入する。
【0074】
これにより、実施形態3の梁受け金物3やドリフトピン7を使用して、柱8に対する梁6の固定が完了する。
【0075】
また、実施形態3の梁受け金物3を使用し、例えば、図20(a)に示すように、柱8に間隔を離して2本の梁受け金物本体31を設けることにより、梁成(梁の高さ)の小さい梁6に対応した梁受け金物を構築できる一方、図20(b)に示すように、柱8に間隔を離して4本の梁受け金物本体31を設けることにより、梁成(梁の高さ)が中程度の梁6に対応した梁受け金物を構築できる。
【0076】
ただし、図20(a),(b)に示す場合は、それぞれ、実施形態3の梁受け金物本体31をそれぞれ2本または4本使用するので、図17(a)~(c)等に示す固定部材32とは異なり、例えば、2つの固定用屈曲部32aが設けられた固定部材32’を1個または2個使用して固定する。尚、図20(b)に示す場合は、図示しないが、4個の固定用屈曲部32aが設けられた固定部材を使用しても良い。
【0077】
また、図21(a),(b)に示すように、柱8に間隔を離して5本と6本の実施形態3の梁受け金物本体31を固定することにより、それぞれ、梁成(梁の高さ)がかなり大きい梁6にも対応することができる。ただし、図21(a)に示す場合は、実施形態3の梁受け金物本体31を5本使用するので、例えば、図17(a)~(c)等に示す固定部材32と、図20(a),(b)に示す固定部材32’とを1個ずつ使用して固定する一方、図21(b)に示す場合は、図17(a)~(c)等に示す固定部材32を2個使用して固定すれば良い。
【0078】
実施形態4.
次に、本発明に係る実施形態4の両引き用の梁受け金物4について説明する。
【0079】
図22(a),(b)は、それぞれ、本発明に係る実施形態4の両引き用の梁受け金物4を構成する梁受け金物本体41の平面図、正面図、図23(a),(b)は、それぞれ、本発明に係る実施形態4の両引き用の梁受け金物4を構成する梁受け金物本体41と固定部材32を嵌合して固定が完了した状態を示す横方向断面図、縦方向断面図である。
【0080】
図22(a),(b)に示すように、本発明に係る実施形態4の両引き用の梁受け金物4は、図14(a),(b)~図21(a),(b)に示す実施形態3の片引き用の梁受け金物1を両引き用に構成したものであり、上述した実施形態1の片引き用の梁受け金物1と実施形態2の両引き用の梁受け金物2の関係と同じであり、梁受け金物本体41の長尺プレート41aは、木材挿入部31a1の長手方向の両側にそれぞれ木材突出部31a2を設けて構成されている。
【0081】
そして、図23(a),(b)に示すように、梁受け金物本体41を柱8の貫通孔8aに通した後、柱8の両側から露出する梁受け金物本体41両側の木材突出部31a2の固定用嵌合溝部31a24にそれぞれ、実施形態3の片引き用の梁受け金物1の場合と同様に固定部材32の固定用屈曲部32aを嵌合することによって実施形態4の各梁受け金物本体41を柱8に固定することができる。
【0082】
その後は、図19(a)に示すように加工して、最上位のピン挿通孔6cにドリフトピン7を挿入した梁6を上方から柱8の両側に構築した梁受け金物に引掛け、図19(b)に示すように柱8両側それぞれの梁6の残りのピン挿通孔6dにドリフトピン7を挿入することによって、柱8の両側に梁6を固定することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,2,3,4 梁受け金物
11,21,31,41 梁受け金物本体
11a,21a,31a,41a 長尺プレート
11a1,31a1 木材挿入部
11a11,11a12,31a11,31a12,31a14 凹部
11a13,31a13 凸部
11a2,31a2 木材突出部
11a21,31a21 ピン受け凹部
11a22,31a22 ピン挿通孔
11a23 固定用嵌合孔部(固定用嵌合部)
31a24 固定用嵌合溝部(固定用嵌合部)
11b,31b 円板部
11b1,31b1 凹部
11c,31c 抜止め防止部
11c1,31c1 取付け孔
12,12’,32,32’ 固定部材
12a 挿入板部
12a1 固定用突部
12b 垂直板部
32a 固定用屈曲部
32a1 凹部
5 梁(木材)
5a 木材貫通孔
5b 座掘り部
6 梁(木材)
6a,6a’ 細幅スリット
6b,6b’ 太幅スリット
6c~6f ピン挿通孔
7 ドリフトピン
8 柱(木材)
8a 木材貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23