(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】地図情報作成装置、地図情報作成方法、地図情報作成プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20220309BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/01 A
(21)【出願番号】P 2018160813
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 大路
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-032500(JP,A)
【文献】特開2007-278764(JP,A)
【文献】特開2008-256620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部と、
前記地図情報から、車両が進行する進行方向が同一の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成部と、
前記地図情報における前記判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、前記生成部が生成した2以上のリンクに置換
し、前記記憶部に記憶する置換部とを備える
地図情報作成装置。
【請求項2】
前記判定部は、更に、前記車線の進行方向が複数あるか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、その進行方向が複数ある車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図情報作成装置。
【請求項3】
前記地図情報は、更に、前記車線について、進行方向を示すペイントの情報を有し、
前記判定部は、更に、前記車線に対して、複数の進行方向を示す矢印のペイントがあるか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、進行方向を示す矢印のペイントがある車線について、当該車線に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図情報作成装置。
【請求項4】
前記抽出部が抽出した車線について、当該車線を走行する車両の走行履歴を示す走行履歴情報を取得する取得部を更に備え、
前記判定部は、更に、前記車線を走行する走行履歴情報に基づいて、複数の車両が並走しているか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、前記車線を複数の車両が並走したと判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図情報作成装置。
【請求項5】
前記判定部は、更に、単位時間当たりに前記車線を走行した車両について、複数の車両が並走している割合が所定以上であるか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、単位時間当たりに前記車線を複数の車両が並走している割合が所定以上であると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の地図情報作成装置。
【請求項6】
前記判定部は、所定単位時間毎に、前記車線を走行した車両について、複数の車両が並走している割合が所定以上であるか否かを判定し、
前記生成部は、前記所定単位時間毎に、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、前記車線を複数の車両が並走している割合が所定以上であると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の地図情報作成装置。
【請求項7】
前記車線を走行する車両の走行履歴を示す走行履歴情報を取得する取得部を更に備え、
前記判定部は、更に、前記車線を走行する走行履歴情報に基づいて、当該車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できるか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、前記車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図情報作成装置。
【請求項8】
前記判定部は、更に、前記走行経路が2以上特定できた場合であって、当該2以上の走行経路それぞれを走行する車両が一定以上あるか否かを判定し、
前記生成部は、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、前記車線を走行する車両の走行経路が2以上特定でき、それぞれを走行する車両が一定以上あると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項7に記載の地図情報作成装置。
【請求項9】
前記判定部は、所定単位時間毎に、前記抽出部が抽出した1車線の道路を走行する走行履歴情報に基づいて、当該車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できるか否かを判定し、
前記生成部は、前記所定単位時間毎に、前記判定部が車線幅が所定距離以上あり、前記を走行する車両の走行経路が2以上特定でき、それぞれを走行する車両が一定以上あると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の地図情報作成装置。
【請求項10】
道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部にアクセス可能な地図情報作成装置が実行する地図情報作成方法であって、
前記地図情報から、車両が進行する進行方向が同一の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成ステップと、
前記地図情報における前記判定ステップが車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、前記生成ステップが生成した2以上のリンクに置換
し、前記記憶部に記憶する置換ステップとを含む地図情報作成方法。
【請求項11】
道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部にアクセス可能なコンピュータに、
前記地図情報から、車両が進行する進行方向が同一の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出機能と、
前記抽出機能において抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能が車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成機能と、
前記地図情報における前記判定機能が車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、前記生成機能が生成した2以上のリンクに置換
し、前記記憶部に記憶する置換機能とを実現させる地図情報作成プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の地図情報作成プログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報を作成する地図情報作成装置、地図情報作成方法、地図情報作成プログラム、及び当該プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ナビゲーションシステムのための地図情報の作成において、地図を作成するオペレータの労苦を軽減するために様々な思索が練られている。例えば、特許文献1には、高精度な地図情報を生成するために、車両の位置を精度よく推定する技術が開示されており、複数の車両の各々の走行軌跡を生成し、生成した走行軌跡について、走行軌跡の横位置の分布のピークを基準として、ピーク毎にピークを含む定めた範囲の走行軌跡が、同一レーンを走行したデータとしてグループ分けすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車線において、ナビゲーションシステム用の地図が示す情報と実際の運用における車両の走行態様との間に乖離が発生することがある。ナビゲーションシステム上の地図情報が示す内容と、車線を走行する車両との間に運用態様の乖離があった場合には、例えば、車両を自動運転により制御する場合などに、問題が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、地図情報と実際の車線の運用態様との間に乖離を小さくすることができる地図情報作成装置、地図情報作成方法及び地図情報作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る地図情報作成装置は、道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部と、地図情報から、進行方向の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出部と、抽出部が抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定部と、判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成部と、地図情報における判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、生成部が生成した2以上のリンクに置換する置換部とを備える。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る地図情報作成方法は、道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部にアクセス可能な地図情報作成装置が実行する地図情報作成方法であって、地図情報から、進行方向の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定ステップと、判定ステップが車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成ステップと、地図情報における判定ステップが車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、生成ステップが生成した2以上のリンクに置換する置換ステップとを含む。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る地図情報作成プログラムは、道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部にアクセス可能なコンピュータに、地図情報から、進行方向の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出機能と、抽出機能において抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定機能と、判定機能が車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成機能と、地図情報における判定機能が車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、生成機能が生成した2以上のリンクに置換する置換機能とを実現させる。
【0009】
上記地図情報作成装置において、判定部は、更に、車線の進行方向が複数あるか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、その進行方向が複数ある車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0010】
上記地図情報作成装置において、地図情報は、更に、車線について、進行方向を示すペイントの情報を有し、判定部は、更に、車線に対して、複数の進行方向を示す矢印のペイントがあるか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、進行方向を示す矢印のペイントがある車線について、当該車線に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0011】
上記地図情報作成装置において、抽出部が抽出した車線について、当該車線を走行する車両の走行履歴を示す走行履歴情報を取得する取得部を更に備え、判定部は、更に、車線を走行する走行履歴情報に基づいて、複数の車両が並走しているか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、車線を複数の車両が並走したと判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0012】
上記地図情報作成装置において、判定部は、更に、単位時間当たりに車線を走行した車両について、複数の車両が並走している割合が所定以上であるか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、単位時間当たりに車線を複数の車両が並走している割合が所定以上であると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0013】
上記地図情報作成装置において、判定部は、所定単位時間毎に、車線を走行した車両について、複数の車両が並走している割合が所定以上であるか否かを判定し、生成部は、所定単位時間毎に、判定部が車線幅が所定距離以上あり、車線を複数の車両が並走している割合が所定以上であると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0014】
上記地図情報作成装置において、車線を走行する車両の走行履歴を示す走行履歴情報を取得する取得部を更に備え、判定部は、更に、車線を走行する走行履歴情報に基づいて、当該車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できるか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0015】
上記地図情報作成装置において、判定部は、更に、走行経路が2以上特定できた場合であって、当該2以上の走行経路それぞれを走行する車両が一定以上あるか否かを判定し、生成部は、判定部が車線幅が所定距離以上あり、車線を走行する車両の走行経路が2以上特定でき、それぞれを走行する車両が一定以上あると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【0016】
上記地図情報作成装置において、判定部は、所定単位時間毎に、抽出部が抽出した1車線の道路を走行する走行履歴情報に基づいて、当該車線を走行する車両の走行経路が2以上特定できるか否かを判定し、生成部は、所定単位時間毎に、判定部が車線幅が所定距離以上あり、を走行する車両の走行経路が2以上特定でき、それぞれを走行する車両が一定以上あると判定した車線のリンクとして2以上の並行するリンクを生成することとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る地図情報作成装置は、1車線の中で、実際には並走しているような車線について、複数の並走するリンクを生成することで、地図情報を実際の運用態様に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】地図情報作成装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】地図情報作成装置による地図情報の作成方法を示すフローチャートである。
【
図4】地図の一例であって、車線幅を説明するための図である。
【
図5】地図の一例であって、車線とノードとリンクの関係を説明するための図である。
【
図6】地図の一例であって1車線に2つの並走するリンクを生成した地図に変換した例を示す図である。
【
図7】地図情報作成装置による地図情報の作成方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】車線に矢印のペイントが付されている様子を示す図である。
【
図9】1車線を2以上の車両が並走する様子を示す図である。
【
図10】ナビゲーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】自動運転システムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】地図情報のリンクとノードを補正した例を示す図である。
【
図13】ナビゲーションシステムの動作例を示すフローチャートである。
【
図14】自動運転システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図15】(a)は、地図情報作成装置の別構成例を示すブロック図であり、(b)は、ナビゲーションシステムの別構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施態様に係る地図情報作成装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<実施の形態1>
<地図情報作成装置の構成>
本発明の一態様に係る地図情報作成装置は、道路の車線を示すリンクと車線と車線との接点をノードとで表現し、各車線について少なくとも車線幅の情報を有する地図情報を記憶する記憶部(
図1の104参照)と、地図情報から、進行方向の車線中で、車線に対応するリンクとして1つのリンクが設定されている車線を抽出する抽出部(
図1の105参照)と、抽出部が抽出した1車線の道路のうち、当該道路の車線幅が所定距離以上あるか否かを判定する判定部(
図1の105参照)と、判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線について、当該道路に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する生成部(
図1の105参照)と、 地図情報における判定部が車線幅が所定距離以上あると判定した車線のリンクを、生成部が生成した2以上のリンクに置換する置換部(
図1の105参照)とを備える。
【0021】
図1は、地図情報作成装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、地図情報作成装置100は、受付部101と、受信部102と、出力部103と、記憶部104と、CPU105とを備える。地図情報作成装置100は、一例として車両などに搭載されて経路案内をするためのナビゲーション装置用の地図を作成する装置であり、サーバ装置、PCなどにより実現されるが、これらに限定するものではなく、スマートフォン等の携帯端末などにより実現されるものであってもよい。地図情報作成装置100は、地図情報が示す道路等の情報と、実際に車両が走行する態様と異なる場合に、その地図情報を実際の運用に近づくように、地図情報を作成、あるいは、既存の地図情報を修正するものである。具体的には、地図情報作成装置100は、1車線において複数の車両が並走しているにも関わらず、地図情報では、この1車線が1車線として登録されている場合に、その車線に複数のリンクが並行するように構成する。以下、地図情報作成装置100の各機能部について詳細に説明する。
【0022】
受付部101は、地図情報作成装置100のユーザからの入力を受け付けて、CPU105に伝達する機能を有する。受付部101は、例えば、地図情報作成装置100に備えられたハードウェアキーや、タッチキーなどのソフトキーなどにより実現することができる。なお、受付部101に対する入力は音声による入力であってもよい。
【0023】
受信部102は、他の装置から通信により情報を受信する機能を有する。受信部102は、例えば、実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された車両の走行履歴である走行履歴情報、所謂プローブ情報(プローブ交通情報)を受信する。受信部102は、プローブ情報を、例えば、プローブ情報を収集、蓄積する道路交通情報通信システム(サーバ)等から受信する。受信部102は、取得したプローブ情報を、CPU105に伝達する。
【0024】
出力部103は、CPU105からの指示に従って、指示されたデータを出力する機能を有する。出力部103は、例えば、地図を示す画像をモニターに出力したり、地図情報141をナビゲーションシステム等の外部装置に出力したりすることができる。出力部103は、外部の装置に対して、CPU105から指定された情報を出力する通信インターフェースとして機能する。
【0025】
記憶部104は、地図情報作成装置100が動作するうえで必要とする各種のプログラム及び地図情報を含む各種のデータを記憶する記録媒体である。記憶部104は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部104は、CPU105からアクセス可能に構成されている。記憶部104は、地図情報141を記憶しており、当該地図情報141には、各道路の車線を示すリンク及び道路と道路(車線と車線)の接点であるノードの情報が含まれ、その他には、少なくとも、各車線の車線幅を示す距離情報が含まれる。また、地図情報141には、車線に対して矢印のペイントがある場合に、その情報(車線に矢印のペイントがされていること、並びに、矢印が指し示す方向の情報)が含まれてよい。
【0026】
CPU105は、記憶部104に記憶されている各種のプログラム及び各種のデータを利用して、地図情報作成装置100が実行すべき処理を実行するプロセッサである。
【0027】
CPU105は、記憶部104に記憶されている地図情報141において、1つの車線において、その進行方向に向かって、リンクが1本の車線を抽出する抽出部として機能する。ここで、車線のリンクが一本とは、車線の進行方向にそって、1以上のリンクがノードを介して連接されて1本の線のようになっていることをいい、車線そのものが1つのリンクだけから構成されていることを意図しているわけではないことに留意されたい。ただし、1つの車線が1つのリンクだけで構成されることを否定するわけではない。即ち、CPU105は、車線に対して複数の並行するリンクが設定されていない車線を特定する。
【0028】
また、CPU105は、抽出した車線の車線幅が所定の距離以上あるか否かを判定する判定部として機能する。ここで、所定の距離とは、2以上の車両が並走できる十分な距離のことをいい、例えば、5.0mである。なお、この長さは一例であり、シミュレーション等により適切な長さを決定することとしてよい。
【0029】
CPU105は、車線の車線幅が所定の距離以上あると判定した車線に対して、当該車線に対応するリンクとして2つの並行するリンク(端点は同じノードに接続することがある)を生成する生成部として機能する。
【0030】
更に、CPU105は、生成した2つのリンクを当該車線用のリンクとして設定、または、元からあるリンクに代わって用いる新たなリンクとして置換する置換部として機能する。具体的には、CPU105は、当該車線の元からあるリンクを削除し、その代わりに新たに生成したリンクを地図情報141に登録する。
【0031】
なお、CPU105は、1本のリンクで構成され、車線幅が所定距離以上ある車線について、所定の条件を満たすか否かで更なる絞り込みをかけたうえで、リンクを生成して置換するようにしてもよい。
【0032】
ここで、所定の条件とは、1車線でありながら、複数の車両が並走している車線である可能性が高い車線を特定可能な条件のことであり、例えば、1車線に対して、進行方向を示す矢印のペイントであって、異なる方向を示す矢印が複数あるか否かであったり、プローブ情報から、複数の車両が並走したことが検知できるか否かであったり、プローブ情報から、単位時間当たりの複数の車両が並走している割合が所定以上であるか否かであったり、プローブ情報から、車両が走行した軌道が2以上特定できるか否かであったりしてよい。
【0033】
これらの条件にしたがって、CPU105は、車線の絞り込みを実行してもよい。
【0034】
以上が地図情報作成装置100の構成例である。
【0035】
<地図情報作成装置の動作>
次に、
図2を用いて、地図情報作成装置100による地図情報の作成装置の動作について説明する。
図2は、地図情報作成装置100による、地図情報において、1車線に対して1本のリンクで構成される車線であって、実際の走行上の運用では2以上の車両が並走しているような車線に対して、2本以上の並行するリンクに置換する処理を示すフローチャートである。本フローチャートは、元々存在する地図情報を改良する場合の動作を示すが、地図情報を作成する際にも同様に動作する。
【0036】
図2に示すように、CPU105は、記憶部104に記憶されている地図情報141から、進行方向の車線に対して1本のリンクで構成されている車線を抽出する(ステップS201)。
【0037】
CPU105は、抽出した車線全てについて、ステップS203からS205の処理を繰り返す(ステップS202)。
【0038】
CPU105は、抽出した車線の車線幅情報を地図情報141から取得する。そして、取得した車線幅が予め定められた距離以上あるか否かを判定する(ステップS203)。車線の車線幅が予め定められた所定距離以上である場合に(ステップS203のYES)、CPU105は、車線に対するリンクとして、2以上の並行するリンクを生成する(ステップS204)。この時、CPU105は、生成するリンクとして、自動運転車両が、そのリンク上の実際の位置を走行する際に、他の車両の妨げとならないよう、かつ、自動運転車両の走行に支障がでないように生成する。なお、車線の車線幅が予め定められた所定距離以上でない場合に(ステップS203のNO)、ステップS206に移行する。
【0039】
CPU105は、生成した2つの並行するリンクで、元の車線の1本のリンクを置換する(ステップS205)。
【0040】
CPU105は、抽出したリンク全てについて、ステップS203~S205の処理を実行し終えている場合には、処理を終了し、そうでない場合には、残っている車線について、ステップS203~S205の処理を実行する(ステップS206)。
【0041】
このように、地図情報作成装置100は、地図情報141を、より実際の運用態様に近い態様に近づけるように、修正することができる。その結果、地図情報141をよりユースケースに沿った地図に改良することができる。
【0042】
<具体例>
ここから、
図3から
図7に示す一具体例を用いて、地図情報作成装置100によるリンクの作成手法について説明する。
【0043】
図3は、地図情報141の一部を示す図である。
図3には、高速道路から降りて一般道路に接続する箇所における合流点の地図の一例を示している。
図3における矢印は、各車線の進行方向を示している。このような場所において、
図4に示す高速道路から降りる高速道路と一般道路とを接続する合流道路(点線401で囲った道路)を考える。この合流道路は、基本的には、1車線の道路であるとする。この場合、この合流道路の車線幅は、
図4に示す距離dで示される。そして、この地図において、地図情報141では、
図5に示すようにリンクとノードで示される。例えば、合流道路は、
図5では、ノード501と、ノード502と、ノード503と、ノード504と、ノード505と、それぞれのノード間を接続するリンク511と、リンク512と、リンク513と、リンク514とから構成されていることが理解できる。なお、
図5において、ノード505が接している点線521で囲われている領域は、地図情報141において、交差点領域として設定されている領域である。
【0044】
この合流道路の車線幅dが、所定距離以上であったとする。すると、地図情報作成装置100のCPU105は、当該車線に対するリンクとして、2本の並行するリンクを生成して、置換することになる。具体的には、
図5に示すノード502からノード505までの1本のリンク(一続きのリンク)とその間のノードを、
図6に示すリンク611、ノード601、リンク612、ノード602、リンク613、ノード603からなる一連のリンクと、この一連のリンクに並行するリンク616、ノード606、リンク617、ノード607、リンク618、ノード608からなる一連のリンクとの、二つの並行するリンクに置換する。
【0045】
このように、地図情報作成装置100は、1車線で所定幅を有する車線があった場合に、その車線に対するリンクとして2つの並行するリンクを生成し、当該車線に対するリンクを置換することができる。したがって、1車線の道路であっても、2台以上の車両が並走することが可能である場合には、実際に複数の車両が並走するという状況が有り得るが、そのような状況に、地図情報141を対応させることができる。
【0046】
<車線の絞り込みを行う場合の地図情報作成装置の動作>
ところで、単純に車線の幅が所定距離以上となっている車線に全てに対して、二つの並行するリンクに置換しても通常の運用と異なる地図を作成することになる可能性がある。そこで、地図情報作成装置100は、車線幅が所定距離以上である車線の中から、2つの並行するリンクに置換する車線の絞り込みを行う。
【0047】
図7は、地図情報作成装置100の車線の絞り込み処理を含んだ、リンクの置換処理を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図2に示すフローチャートと、ステップS203と、ステップS204との間に、ステップS701の処理が挿入されているという点において相違する。そこで、ここでは、ステップS701に示す処理について説明する。
【0048】
地図情報作成装置100のCPU105は、車線幅が所定距離以上である車線について所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS701)。所定の条件を満たす場合に(ステップS701のYES)、地図情報作成装置100は、当該車線のリンクを2つの並行するリンクとして置換する車線として決定する。所定の条件を満たしていない場合に(ステップS701のNO)、ステップS206の処理に移行する。
【0049】
ここで、所定の条件は、上述した通り、以下に示す少なくともいずれか1つであってよく、以下のうちの複数であってもよい。
【0050】
(条件1)車線の進行先としての進行方向が複数ある。
(条件2)車線に矢印のペイントがされており、その指し示す方向が複数ある。
(条件3)複数の車両が並走している状況が検知できる。
(条件4)単位時間当たりに複数の車両が並走している割合が所定以上である。
(条件5)車線に対して車両が走行した走行軌道が2以上検知できる。
(条件6)車線に対して車両が走行した走行軌道が2以上検知でき、それぞれの走行軌道を一定数以上の車両が通過していることが検知できる。
【0051】
このような条件のうち、少なくともいずれか1つを満たした場合に、地図情報作成装置100は、その車線を2つの並行するリンクを生成する車線として特定することとしてよい。上記の条件はいずれもその車線を複数の車両が並走していることがあるという確度を高めることができる条件である。
【0052】
条件1は、地図情報141に示される車線が示すリンクと、その進行方向に対して終点側のノードの先に複数のリンク(交差点領域を介在する場合もある)が接続されているか否かから、条件を満たすか否かを判定することができる。
【0053】
条件2は、地図情報141に示される車線に対する情報から、条件を満たすか否かを判定することができる。なお、車線に矢印のペイントがされており、その指し示す方向の一具体例を
図8に示す。
図8に示すように、合流車線には、矢印801と矢印802との二種類のペイントがされており、車両は直進と右折が許容されていることが理解できる。この
図8のように、車線に対して互いに異なる複数種類のペイントが施されているとの情報が、地図情報141に登録されている場合に、条件2を満たすと判定する。
【0054】
条件3を満たしているか否かは、受信部102が、受信したプローブ情報であって、当該車線を走行したことを示すプローブ情報によって判定することができる。当該車線を走行していることを示す複数のプローブ情報から、同じ時間に、当該車線を並走していると検知できた場合に、条件3を満たすと判定する。条件3に示す複数の車両が並走している状況とは、例えば、
図9に示すような状況をいう。
図9に示すように1車線である合流車線を複数の車両が並走していることが理解できる。
【0055】
条件4を満たしているか否かは、受信部102が受信したプローブ情報であって、当該車線を走行したことを示すプローブ情報によって判定することができる。条件4は、例えば、単位時間当たり(例えば、1時間当たり)に当該車線を走行したことを示すプローブ情報全体に対して、車両が並走していることを示すプローブ情報の組み合わせが、予め定めた所定割合以上あるか否かによって、判定することができる。例えば、ある単位時間内に当該車線を走行したことを示すプローブ情報が100個あったとき、それらの中から2つのプローブ情報を抽出した同じ時間に並走したか否かを検知する。そして、そうやって、同じ時間に並走したと特定できるプローブ情報の組み合わせの、プローブ情報全てからできる全組み合わせ数に対する割合が、所定以上である場合に、条件4を満たすと判定する。
【0056】
条件5を満たしているか否かは、受信部102が受信したプローブ情報であって、当該車線を走行したことを示すプローブ情報によって判定することができる。条件5は、例えば、各プローブ情報に基づいて、車線中の走行経路を特定する。そして、車線中の走行経路のうち、互いに、位置がおおよそ相似する走行経路は同じ走行経路であるとして、グループ分けする。そうやって、グループ分けの結果、複数のグループができる場合に、条件5を満たすと判定することができる。
【0057】
条件6を満たしているか否かは、条件5に加えて、それぞれグループ分けされた走行経路上を、一定数以上の車両が走行したか否かを判定することにより、条件を満たすか否かを判定することができる。ここで、一定数以上は、単純に、所定数以上であってもよいし、一定時間中のプローブ情報について、その一定時間内での所定数以上であってもよい。
【0058】
なお、プローブ情報は、一般にマップマッチング後の道路単位での情報であるので、同時間において、同じ車線を走行している車両があれば2以上の車両が並走していることが検知できる。一方で、条件5や条件6の場合は、マップマッチング前の情報をプローブ情報として収集できることが前提となる。
【0059】
この車線の絞り込みによって、地図情報141の改良の精度を向上させることができる。なお、地図情報141は、時間帯ごとのものを作成するようにしてもよい。即ち、午前中(6:01~10:00)、昼時(10:01~14:00、午後(14:01~19:00)、夜(19:01~6:00)というように時間帯を分けて、それぞれの時間帯用の地図情報を作成することとしてもよい。時間帯によって、車両の走行の程度が変わり得るので、その際には、車線の利用態様も異なることが想定できるが、そのような場合にも、各時間帯の地図情報141を作成することで、対応することができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、CPU105は、1車線のリンクを、2つの並行するリンクに変更することとしたが、車両が十分に走行可能なのであれば、3以上の並行するリンクに変更するようにしてもよい。
【0061】
以上に説明したように、本実施の形態に係る地図情報作成装置100は、1車線において、複数の車両が並走することがあるような車線の地図上の情報を、より実際の運用に近い状態に改良することができる。このような、地図情報141は、例えば、自動運転システムに利用でき、自動運転車両の走行経路の特定に利用することができる。
【0062】
<実施の形態1のまとめ>
実施の形態1に係る地図情報作成装置100によれば、現実において、1車線でありながら、運用上は、ほぼ2車線に等しい運用をしている箇所の地図を、より現実に即した地図情報に修正することができる。
【0063】
<実施の形態2>
本実施の形態2においては、実施の形態1において作成した地図情報141を利用するナビゲーションシステム、自動運転車両について説明する。
【0064】
図10は、地図情報141を利用して、経路探索等の処理を行い、自動運転システムに伝達するナビゲーションシステム1000の構成例を示すブロック図である。ナビゲーションシステム1000は、自動運転車両に搭載されて利用される。ナビゲーションシステム1000は、車両に搭載されるナビゲーション用のコンピュータとして実現されてもよいし、スマートフォン等の携帯端末として実現されてもよい。
【0065】
図10に示すように、ナビゲーションシステム1000は、受付部1001と、受信部1002と、出力部1003と、記憶部1004と、CPU1005と、位置情報取得部1006とを備える。
【0066】
受付部1001は、ナビゲーションシステム1000のユーザ(ドライバー)からの入力を受け付けて、CPU1005に伝達する機能を有する。受付部1001は、例えば、ナビゲーションシステム1000に備えられたハードウェアキーや、タッチキーなどのソフトキーなどにより実現することができる。なお、受付部1001に対する入力は音声による入力であってもよい。受付部1001は、例えば、ユーザから目的地の入力を受け付けて、目的地の情報を、CPU1005に伝達する。
【0067】
受信部1002は、他の装置から通信により情報を受信する機能を有する。受信部1002は、例えば、車両のCAN(Controller Area Network)などから、車両の状況を示す状況情報を受信する。当該状況情報は、車両の周囲を走行する他の車両の情報(他の車両との間の距離、他の車両が存在する方向、他の車両の走行速度の情報など)、自車両の走行速度、走行位置などが含まれてよい。本実施の形態においては、受信部1002は、ナビゲーションシステム1000が搭載される車両に搭載されている自動運転システム1100から、状況情報を受信する。受信部1002は、取得した状況情報を、CPU1005に伝達する。なお、自動運転システム1100については、
図11を参照しながら、その詳細を後述する。
【0068】
出力部1003は、CPU1005からの指示に従って、指示されたデータを出力する機能を有する。出力部1003は、例えば、CPU1005から伝達された車線単位の走行経路を示す経路情報を、自動運転システム1100に出力する。出力部1003は、外部の装置に対して、CPU1005から指定された情報を出力する通信インターフェースとして機能する。
【0069】
記憶部1004は、ナビゲーションシステム1000が動作するうえで必要とする各種のプログラム及び地図情報を含む各種のデータを記憶する記録媒体である。記憶部1004は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部1004は、CPU1005からアクセス可能に構成されている。記憶部1004は、地図情報作成装置100が作成した地図情報141を記憶しており、当該地図情報141には、各道路の車線を示すリンク及び道路と道路(車線と車線)の接点であるノードの情報が含まれる。
【0070】
CPU1005は、記憶部1004に記憶されている各種のプログラム及び各種のデータを利用して、ナビゲーションシステム1000が実行すべき処理を実行するプロセッサである。
【0071】
受付部1001から伝達された目的地と、位置情報取得部1006から伝達された車両の現在位置から、CPU1005は、記憶部1004に記憶されている地図情報141を参照して、目的地までの経路を探索する。当該経路探索は、車線単位での経路探索を行う。CPU1005は、例えば、Aスターアルゴリズム、ダイクストラ法などを用いて、経路探索を実行する。CPU1005は、探索して得られた車線単位の経路を出力部1003に、自動運転システム1100に宛てて出力させる。
【0072】
また、CPU1005は、受付部1001が受け付けた状況情報に基づいて、進行方向の車列が、地図情報141に示されるリンクと一致しないと判断したときには、地図情報141のリンクを補正する補正部として機能する。CPU1005は、車両の進行先において、リンク上以外の場所を走行している、即ち、渋滞などにより車列が伸びて、地図情報141上で想定していないところまで車両が存在するような場合には、一時的に、地図情報141のリンクをその現状に沿うようにリンクとノードを修正する。そして、CPU1005は、修正後のリンクに基づいて、新たな経路を探索しなおし、探索後の新たな経路を自動運転システム1100に出力する。
【0073】
CPU1005により、地図情報141の修正する必要があるときには、以下のように補正する。例えば、地図情報141で示されるリンクとノードの関係が、
図5に示される状態であるとする。そして、そのときに、状況情報で示される車列の状態が、
図9に示すような状態であったとする。
図9においては、車列が伸びて、地図情報のリンク上にはない状態にあることが理解できる。このような場合には、CPU1005は、
図12に示すように、リンクやノードを補正する。具体的には、
図6に示すように、ノード502、リンク611、ノード601、リンク612、ノード602、リンク613、ノード603からなる一連のリンクと(第1リンクと呼称する)、ノード502、リンク616、ノード606、リンク617、ノード607、リンク618、ノード608からなる一連のリンク(第2リンクと呼称する)とが、地図情報141に登録されている状態で、CPU1005は、
図12に示すように、ノード501、リンク1211、ノード1201、リンク1212、ノード601、リンク612、ノード602、リンク613、ノード603からなる一連のリンク(第3リンクと呼称する)と、ノード1206、リンク1216、ノード1207、リンク1217、ノード1208、リンク617、ノード607、リンク618、ノード608からなる一連のリンクと(第4リンクと呼称する)、になるように補正する。即ち、CPU105は、第1リンクを、第3リンクに示すように延伸し、第2リンクを、第4リンクに示すように延伸する。
【0074】
位置情報取得部1006は、ナビゲーションシステム1000(車両)の現在位置を取得する。具体的には、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)等の各種衛星電波を利用した測位システム、ジャイロスコープ等の自律航法システムを用いることによって実現される。この際、現在位置情報は、少なくとも自車両が存在する位置の緯度情報及び経度情報を含み、高度情報を含んでもよい。なお、位置情報取得部1006による現在位置情報の取得は、例えば、走行道路上に設置されて設置位置情報を取得することができるビーコン等を用いるなどして取得してもよく、上記測位システムに限定されるものではない。位置情報取得部1006は、これらの外部からの位置情報あるいは測位システムにより測位された現在位置情報を逐次(又は適時)取得し、取得した位置情報を現在位置情報としてCPU1005に伝達する。
【0075】
以上が、ナビゲーションシステム1000の構成例である。
【0076】
図11は、車両に搭載されている自動運転システム1100の構成を示すブロック図である。自動運転システム1100は、車両の駆動系に制御指示を出力する制御コンピュータである。
【0077】
自動運転システム1100は、センサ1101と、車両制御部1103と、記憶部1104と、CPU1105とを備える。
【0078】
センサ1101は、車両に搭載された各種のセンサのことであり、車両の周囲、車両内の各種の情報を取得する。センサ1101としては、例えば、イメージセンサ、超音波センサ、赤外線センサ、ジャイロセンサ、加速度センサなど、各種のセンサを用いることができる。センサ1101は、各種のセンサにより得られたセンシングデータをCPU1105に伝達する。
【0079】
車両制御部1103は、CPU1105からの指示に従って、車両の駆動系に対する指示信号を出力する。
【0080】
記憶部1104は、自動運転システム1100が動作上必要とする各種のプログラムや各種のデータを記憶する機能を有する。記憶部1104は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現される。記憶部1104は、CPU1105からアクセス可能に構成されている。記憶部1104は、例えば、車両の自動運転を制御する自動運転プログラム1141の他、ナビゲーションシステム1000から伝達された経路情報を記憶する。
【0081】
CPU1105は、ナビゲーションシステム1000から伝達された経路情報、及び、センサ1101から伝達されたセンシングデータに基づいて、車両の自動運転制御を実行する。車両の自動運転制御については、従来の手法、または、今後開発される自動運転技術を用いるものとする。CPU1105は、記憶部1104の自動運転プログラム1141を実行することにより、車両の自動運転制御のための指示信号を生成する。CPU1105は、周囲の状況に応じて、車両の運転のための指示信号を生成する。CPU1105は、例えば、センサ1101から周囲の状況を示す状況情報として、自車両の走行している車線の前方に、車列が続いていることが検出できた場合に、その車列に追随するように指示信号を生成する。
【0082】
以上が、自動運転システム1100の構成例である。
【0083】
<動作>
図13は、ナビゲーションシステム1000の動作を示すフローチャートである。
【0084】
受付部1001は、車両のユーザから、目的地の入力を受け付ける(ステップS1301)。受付部1001は、受け付けた目的地の情報は、CPU1005に伝達する。
【0085】
CPU1005は、受付部1001から伝達された目的地の情報、及び、位置情報取得部1006から伝達された現在位置に基づいて、現在位置から、目的地までの経路を探索する(ステップS1302)。
【0086】
CPU1005は、探索した経路を示す経路情報を、出力部1003を介して、自動運転システム1100に出力させる(ステップS1303)。
【0087】
受信部1002は、逐次、自動運転システム1100から、車両の周囲の状況を示す状況情報を受信する(ステップS1304)。受信部1002は、受信した状況情報をCPU1005に伝達する。
【0088】
CPU1005は、位置情報取得部1006から伝達された現在位置に基づいて、地図情報141において、現在走行している位置からその先で、1車線に対して2以上の並行するリンクのいずれかに対応する位置を走行するか否かを判定する(ステップS1305)。CPU1005は、車両が現在走行している位置のその先で、1車線に対して2以上の並行するリンクのいずれかに対応する位置を走行しないと判断した場合に(ステップS1305のNO)、ステップS1308の処理に移行する。
【0089】
CPU1005は、車両が現在走行している位置のその先で、1車線に対して2以上の並行するリンクのいずれかに対応する位置を走行すると判断した場合に(ステップS1305のYES)、次に、CPU1005は、状況情報から伝達された情報に基づいて、複数の車両による車列がリンクの手前から発生しているか否かを判定する(ステップS1306)。
【0090】
CPU1005は、状況情報から伝達された情報に基づいて、複数の車両に車列がリンクの手前から発生していると判定した場合に(ステップS1306のYES)、上述したように、地図情報141のリンクとノードの情報を一時的に補正する(ステップS1307)。CPU1005は、状況情報から伝達された情報に基づいて、福栖の車両に車列がリンクの手前から発生していないと判定した場合に(ステップS1306のNO)、ステップS1308の処理に移行する。
【0091】
ステップS1308において、CPU1005は、経路の再探索を行う。このとき、CPU1005は、ステップS1307において、リンク情報を補正していれば、補正後の地図情報141に基づいて、経路の再探索を実行する。そして、CPU1005は、再探索した経路を、出力部1003を介して、自動運転システム1100に出力する(ステップS1308)。
【0092】
CPU1005は、自動運転システム1100から、状況情報として、車両のエンジンを停止した情報を得たか否かを判定する(ステップS1309)。そして、エンジンが停止されていた場合に(ステップS1309のYES)、処理を終了し、停止されていない場合に(ステップS1309のNO)、ステップS1304の処理に戻る。なお、
図13には示していないが、CPU1005は、位置情報取得部1006が取得した車両の現在位置に基づいて、リンクを補正した箇所を通過すると、CPU1005は、地図情報141を、補正前の状態に戻す。
【0093】
このようにして、CPU1005は、状況情報に応じて、地図情報141を一時的に修正して、現実の状況に応じた地図に変更して、自動運転を行うための経路情報を出力することができる。
【0094】
最後に、
図14を用いて、自動運転システム1100の動作を説明する。
図14は、自動運転システム1100の動作を示すフローチャートである。
【0095】
図14に示すように、自動運転システム1100のセンサ1101は、車両の周囲の情報を取得する(ステップS1401)。
【0096】
CPU1105は、ナビゲーションシステム1000に対して、センサ1101が収集したセンシングデータに基づく状況情報を出力する(ステップS1402)。
【0097】
CPU1105は、ナビゲーションシステム1000から、状況情報に応じて作成された車線単位の経路情報の入力を受け付ける(ステップS1403)。
【0098】
そして、CPU1105は、受け付けた経路情報に示される経路を走行するように、自動運転をするための指示信号を生成して、自動運転を実行する(ステップS1404)。車両制御部1103は、生成された指示信号を車両の各部(例えば、エンジン、ブレーキ、操舵系など)に適切に送信する。
【0099】
CPU1105は、ユーザにより車両のエンジンが切られたか否かをセンサ1101からのデータにより判定し、エンジンが停止されている場合には(ステップS1405のYES)、処理を終了し、停止されていない場合には(ステップS1405のNO)、ステップS1401の処理に戻る。
【0100】
図14に示す処理を逐次繰り返すことにより、自動運転システム1100は、道路状況に応じた車両の自動運転を実行することができる。
【0101】
<実施の形態2のまとめ>
本実施の形態に係るナビゲーションシステム1000によれば、道路状況に応じて、地図情報を修正したうえで、経路探索を行うことができる。即ち、現実の道路状況に応じた経路を提案することができる。そして、自動運転システム1100は、そのナビゲーションシステム1000が地図情報を補正した上での経路案内に基づく自動運転を実行できるので、現実の道路状況に応じた自動運転を実行することができる。
【0102】
<補足>
上記実施の形態に係る地図情報作成装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、他の手法により実現されてもよいことは言うまでもない。以下、各種変形例について説明する。
【0103】
(1)上記実施の形態においては、地図情報作成装置における1車線に対して2つ以上の並行するリンクを含む地図情報作成の手法として、地図情報作成装置のプロセッサが地図情報作成プログラム等を実行することにより、作成することとしているが、これは装置に集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよい。また、これらの回路は、1または複数の集積回路により実現されてよく、上記実施の形態に示した複数の機能部の機能は1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。すなわち、
図15(a)に示すように、地図情報作成装置100は、受付回路101a、受信回路102a、出力回路103a、記憶回路104a、制御回路105a、とから構成されてよく、それぞれ、受付部101、受信部102、出力部103、記憶部104、CPU105、に相当する。
【0104】
同様に、ナビゲーションシステムにおける地図情報の補正処理の手法として、ナビゲーションシステムのプロセッサが地図情報を補正するプログラム等を実行することにより、補正することとしているが、これは装置に集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよい。また、これらの回路は、1または複数の集積回路により実現されてよく、上記実施の形態に示した複数の機能部の機能は1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。すなわち、
図15(b)に示すように、ナビゲーションシステム1000は、受付回路1001a、受信回路1002a、出力回路1003a、記憶回路1004a、制御回路1005a、とから構成されてよく、それぞれ、受付部1001、受信部1002、出力部1003、記憶部1004、CPU1005、に相当する。
【0105】
また、上記地図情報作成プログラムや上記補正プログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記地図情報作成プログラムや補正プログラムは、当該地図情報作成プログラムや補正プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記プロセッサに供給されてもよい。つまり、例えば、スマートフォン等の情報処理機器を利用して、ネットワーク上から地図情報作成プログラムや補正プログラムをダウンロードして実行する構成としてもよい。本発明は、上記地図情報作成プログラムや補正プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0106】
なお、上記地図情報作成プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装できる。
【0107】
(2)上記実施の形態に示した各種の実施例や、<補足>に示した各種の例は適宜組み合わせることとしてもよい。また、各フローチャートに示した各動作は、結果として矛盾がなければその実行順序を入れ替えたり、並列に実行したりすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
100 地図情報作成装置
101 受付部
102 受信部
103 出力部
104 記憶部
105 CPU(抽出部、判定部、生成部、置換部)
141 地図情報
1000 ナビゲーションシステム
1001 受付部
1002 受信部
1003 出力部
1004 記憶部
1005 CPU(補正部)
1006 位置情報取得部