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特許7037466制御装置、流量感度補正方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】制御装置、流量感度補正方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01F 25/00 20220101AFI20220309BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20220309BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G01F25/00 G
G01F1/00 W
G01M3/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018191133
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060427
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000130178
【氏名又は名称】株式会社コスモ計器
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 昭男
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 敏充
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134180(JP,A)
【文献】特開2018-072262(JP,A)
【文献】特開2010-107454(JP,A)
【文献】特開2017-067714(JP,A)
【文献】米国特許第05412978(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 25/00
G01F 1/00
G01M 3/02
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の圧力をタンク圧Pに制御するタンク圧制御部と、
前記タンクとワークを接続する管路を開放して前記ワーク内の圧力であるワーク圧Pを計測するワーク圧計測部と、
前記タンク圧Pと前記ワーク圧Pと前記タンクの内容積Vから前記ワークの内容積xを求め、予め設定した前記ワークのテスト圧P’に対応するタンクの制御圧P’を求める制御圧計算部と、
前記タンク圧を前記制御圧P’に設定して前記管路の開放を行った場合に、前記ワーク内の圧力が前記テスト圧P’を中心とする所定の範囲に収束するか否かを判定する収束判定部と、
前記ワーク内の圧力が前記所定の範囲に収束する場合に、前記制御圧P’と前記テスト圧P’に基づいて、前記タンクと前記ワークを接続する管路に設けられたマスフローセンサを補正するための係数である流量補正係数Kを算出し、当該流量補正係数Kに基づいて前記マスフローセンサを補正するマスフローセンサ補正部を含む
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記マスフローセンサ補正部は、
を前記ワーク内の圧力の初期値とし、前記流量補正係数Kを
【数11】

として算出する
制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置であって、
前記タンクと前記ワークを接続する管路を開放し、当該管路に設けられた前記マスフローセンサの前記流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Bを検出する第1流量検出部と、
前記タンクと前記ワークと漏れ流量値Fのフローマスタを接続する管路を開放し、当該管路に設けられた前記マスフローセンサの前記流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Cを検出する第2流量検出部と、
前記漏れ流量値Fと、流量Cと流量Bの差分が等しくなるように校正係数αを取得し、前記マスフローセンサを校正するマスフローセンサ校正部を含む
制御装置。
【請求項4】
タンク内の圧力をタンク圧Pに制御するタンク圧制御ステップと、
前記タンクとワークを接続する管路を開放して前記ワーク内の圧力であるワーク圧Pを計測するワーク圧計測ステップと、
前記タンク圧Pと前記ワーク圧Pと前記タンクの内容積Vから前記ワークの内容積xを求め、予め設定した前記ワークのテスト圧P’に対応するタンクの制御圧P’を求める制御圧計算ステップと、
前記タンク圧を前記制御圧P’に設定して前記管路の開放を行った場合に、前記ワーク内の圧力が前記テスト圧P’を中心とする所定の範囲に収束するか否かを判定する収束判定ステップと、
前記ワーク内の圧力が前記所定の範囲に収束する場合に、前記制御圧P’と前記テスト圧P’に基づいて、前記タンクと前記ワークを接続する管路に設けられたマスフローセンサを補正するための係数である流量補正係数Kを算出し、当該流量補正係数Kに基づいて前記マスフローセンサを補正するマスフローセンサ補正ステップを含む
流量感度補正方法。
【請求項5】
請求項4に記載の流量感度補正方法であって、
前記マスフローセンサ補正ステップは、
を前記ワーク内の圧力の初期値とし、前記流量補正係数Kを
【数12】

として算出する
流量感度補正方法。
【請求項6】
請求項4または5の何れかに記載の流量感度補正方法であって、
ストレージタンク方式の漏れ流量計測システムに対して前記各ステップを実行する
流量感度補正方法。
【請求項7】
等圧タンク方式の漏れ流量計測システムに対する流量感度補正方法であって、
タンク内の圧力をテスト圧Pに制御するテスト圧制御ステップと、
前記タンクとワークを接続する管路を開放して前記ワーク内の圧力であるワーク圧Pを計測するワーク圧計測ステップと、
前記テスト圧Pと前記ワーク圧Pに基づいて、前記タンクと前記ワークを接続する管路に設けられたマスフローセンサを補正するための係数である流量補正係数Kを算出し、当該流量補正係数Kに基づいて前記マスフローセンサを補正するマスフローセンサ補正ステップを含む
流量感度補正方法。
【請求項8】
請求項4から7の何れかに記載の流量感度補正方法であって、
前記タンクと前記ワークを接続する管路を開放し、当該管路に設けられた前記マスフローセンサの前記流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Bを検出する第1流量検出ステップと、
前記タンクと前記ワークと漏れ流量値Fのフローマスタを接続する管路を開放し、当該管路に設けられた前記マスフローセンサの前記流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Cを検出する第2流量検出ステップと、
前記漏れ流量値Fと、流量Cと流量Bの差分が等しくなるように校正係数αを取得し、前記マスフローセンサを校正するマスフローセンサ校正ステップを含む
流量感度補正方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から3の何れかに記載の制御装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフローセンサの流量感度を補正する制御装置、流量感度補正方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
流量式リークテストシステムの従来例として、例えば非特許文献1がある。図1を参照して従来のストレージタンク方式の漏れ流量計測システムの構成を説明する。同図に示すように、従来のストレージタンク方式の漏れ流量計測システム9は、空圧源905と、空圧源905とタンク920を接続する第1管路に接続された電空変換器910と、第1管路を開閉可能に接続され、電空変換器910よりもタンク920側に位置する第1閉止弁915と、タンク920と、タンク920とワーク935を接続する第2管路に接続されたマスフローセンサ925と、第2管路を開閉可能に接続され、マスフローセンサ925よりもワーク935側に位置する第2閉止弁930と、ワーク935と、タンク920とフローマスタ960を接続する第3管路を開閉可能に接続された第3閉止弁940と、タンク920に接続された圧力センサ945と、タンク920内の気体を排気するための第4閉止弁950と、第2閉止弁930よりもワーク935側の第2管路と、第3閉止弁940よりもフローマスタ960側の第3管路とを接続する第4管路と、第4管路よりもフローマスタ側の第3管路を開閉可能に接続された第5閉止弁955と、フローマスター960と、システム全体を制御する制御装置965を含む。同図における破線は制御装置965の制御信号を伝送する制御線である。
【0003】
図2を参照して、従来の漏れ流量計測システム9の制御圧設定動作を説明する。まず、制御装置965は、第1閉止弁915を開き、タンク920内の圧力がタンク圧Pになるよう電空変換器910を制御し、タンク920内の圧力を計測する(S9651)。次に制御装置965は、第1閉止弁915を閉じ、第3閉止弁940を開き、ワーク935内の圧力であるワーク圧Pを計測する(S9652)。
【0004】
ここで、大気圧(ワーク935内の圧力の初期値)をP、タンク920の内容積(既知)をV、ワーク935の内容積(未知)をxとすれば、ステップS9651におけるタンク圧P、ステップS9652で計測されたワーク圧Pに基づき、ボイルの法則により、
【0005】
【数1】
【0006】
が成り立つ。制御装置965は、式(2)に基づき、タンク圧Pとワーク圧Pとタンクの内容積Vからワーク935の内容積xを求め、予め設定したワーク935のテスト圧P’に対応するタンク920の制御圧P’を、以下の式(3)により求める(S9653)。
【0007】
【数2】
【0008】
式(3)は、制御圧P’を求めるための数式である。制御装置965は、タンク圧を制御圧P’に設定してタンク920とワーク935を接続する管路の開放を行った場合に、ワーク935内の圧力がテスト圧P’を中心とする所定の範囲(P’±ΔP’、ΔP’は任意の値)に収束するか否かを判定する(S9654)。ワーク935内の圧力が所定の範囲(P’±ΔP’)となる場合(S9654-条件分岐Y)、処理を終了し(エンド)、ワーク935内の圧力が所定の範囲(P’±ΔP’)とならない場合(S9654-条件分岐N)ステップS9651に戻り、制御装置965は再度ステップS9651、S9652、S9653を実行し、再度制御圧P’を求め、ワーク935内の圧力が、所定の範囲(P’±ΔP’)となるか否かを検証する(S9654)。条件分岐Nのループに入っている限り、ステップS9651~S9654が繰り返し実行される。
【0009】
なお、式(3)は絶対圧における表現であるが、P=P+P11,P=P+P22,P’=P+P11’,P’=P+P22’とゲージ圧表現で表せば、
【0010】
【数3】
【0011】
と表される。
【0012】
次に、図3を参照して従来の漏れ流量計測システム9の流量感度校正動作について説明する。校正動作の開始にあたり、ワーク935として漏れのないワークが使用されるものとする。またフローマスター960として漏れ流量値Fのフローマスターが使用されるものとする。
まず、制御装置965は、第3閉止弁940を閉じ、第2閉止弁930を開いてマスフローセンサ925の計測値である流量Sを検出する(S9656)。次に、制御装置965は、第5閉止弁955を開いてマスフローセンサ925の計測値である流量Tを検出する(S9657)。ワーク935を漏れのないワークであるとみなし、T-S≒Fとなれば、マスフローセンサ925の読み値を真値であるとみなすことができる。従って制御装置965は、α=F/(T-S)として校正係数αを取得し、校正係数αによりマスフローセンサ925を校正する(S9658)。校正係数αによりマスフローセンサ925を校正することにより、マスフローセンサ925の読み値を流量の真値として扱うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】株式会社フクダ、“流量式リークテストの原理と測定方式”、[online]、[平成30年 9月26日検索]、インターネット〈URL:http://www.fukuda-jp.com/leak/f01/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の漏れ流量計測システムは、ワーク935の種類が変わるたびに図3の流量感度校正動作が必須となるため、煩雑かつ高コストになっていた。
【0015】
そこで本発明では、校正を場合により省略できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の制御装置は、タンク圧制御部と、ワーク圧計測部と、制御圧計算部と、収束判定部と、マスフローセンサ補正部を含む。
【0017】
タンク圧制御部は、タンク内の圧力をタンク圧Pに制御する。ワーク圧計測部は、タンクとワークを接続する管路を開放してワーク内の圧力であるワーク圧Pを計測する。制御圧計算部は、タンク圧Pとワーク圧Pとタンクの内容積Vからワークの内容積xを求め、予め設定したワークのテスト圧P’に対応するタンクの制御圧P’を求める。収束判定部は、タンク圧を制御圧P’に設定して管路の開放を行った場合に、ワーク内の圧力がテスト圧P’を中心とする所定の範囲に収束するか否かを判定する。マスフローセンサ補正部は、ワーク内の圧力が所定の範囲に収束する場合に、制御圧P’とテスト圧P’に基づいて、タンクとワークを接続する管路に設けられたマスフローセンサを補正するための係数である流量補正係数Kを算出し、当該流量補正係数Kに基づいてマスフローセンサを補正する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制御装置によれば、校正を場合により省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の漏れ流量計測システムの構成を示す空圧回路図。
図2】従来の制御装置の制御圧設定動作を示すフローチャート。
図3】従来の制御装置の流量感度校正動作を示すフローチャート。
図4】実施例1の漏れ流量計測システムの構成を示す空圧回路図。
図5】実施例1の制御装置の構成を示すブロック図。
図6】実施例1の制御装置の制御圧設定動作を示すフローチャート。
図7】実施例1の制御装置の流量感度校正動作を示すフローチャート。
図8】実施例2の漏れ流量計測システムの構成を示す空圧回路図。
図9】実施例2の制御装置の構成を示すブロック図。
図10】実施例2の制御装置の流量補正係数Kの算出動作を示すフローチャート。
図11】実施例2の制御装置の流量感度校正動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
以下、図4を参照して実施例1の漏れ流量計測システムの構成を説明する。同図に示すように、本実施例の漏れ流量計測システム1は、従来の漏れ流量計測システム9と同様の空圧源905、電空変換器910、第1閉止弁915、タンク920、マスフローセンサ925、第2閉止弁930、ワーク935、第3閉止弁940、圧力センサ945、第4閉止弁950、第5閉止弁955、フローマスター960を含み、従来の制御装置965と異なる制御を実行する制御装置165を含む。同図における破線は制御装置165の制御信号を伝送する制御線である。
【0022】
以下、図5を参照して本実施例の制御装置165の構成を説明する。同図に示すように本実施例の制御装置165は、タンク圧制御部1651と、ワーク圧計測部1652と、制御圧計算部1653と、収束判定部1654と、マスフローセンサ補正部1655と、第1流量検出部1656と、第2流量検出部1657と、マスフローセンサ校正部1658を含む。
【0023】
以下、図6を参照して本実施例の制御装置165の制御圧設定動作を説明する。まず、タンク圧制御部1651は、第1閉止弁915を開き、タンク920内の圧力がタンク圧Pになるよう電空変換器910を制御し、タンク920内の圧力を計測する(S1651)。ワーク圧計測部1652は、第1閉止弁915を閉じ、第3閉止弁940を開くことにより、タンク920とワーク935を接続する管路を開放してワーク935内の圧力であるワーク圧Pを計測する(S1652)。制御圧計算部1653は、タンク圧Pとワーク圧Pとタンク920の内容積Vからワーク935の内容積xを求め、予め設定したワーク935のテスト圧P’に対応するタンク920の制御圧P’を求める(S1653)。収束判定部1654は、タンク圧を制御圧P’に設定して管路の開放を行った場合に、ワーク935内の圧力がテスト圧P’を中心とする所定の範囲(P’±ΔP’)に収束するか否かを判定する(S1654)。
【0024】
ワーク935内の圧力が所定の範囲(P’±ΔP’)に収束する場合(S1654-条件分岐Y)、マスフローセンサ補正部1655は、制御圧P’とテスト圧P’に基づいて、タンク920とワーク935を接続する管路に設けられたマスフローセンサ925を補正するための係数である流量補正係数Kを、後述する式(6-a)により算出し、当該流量補正係数Kに基づいてマスフローセンサ925を補正する(S1655)。
【0025】
ワーク935内の圧力が所定の範囲(P’±ΔP’)とならない場合(S1654-条件分岐N)ステップS1651に戻り、制御装置165は再度ステップS1651、S1652、S1653を実行し、再度制御圧P’を求める。条件分岐Nのループに入っている限り、ステップS1651~S1654が繰り返し実行される。
<流量補正係数Kの求め方>
漏れ流量計測のマスフローセンサにおいて、漏れた流量と同じ流量が入力側から供給されたときは、マスフローセンサは正しい漏れ流量を表示するが、漏れた流量と同じ流量が供給されない場合、マスフローセンサは正しい漏れ流量を表示しない。例えば1次側に内容積Vのタンク、2次側に内容積Vのワークを設け、タンクとワークをつなぐ管路に流量計(マスフローセンサ)を設けた場合、当該管路を開閉する閉止弁を開き、タンク内の圧力とワーク内の圧力が等圧になった後、マスフローセンサはワーク側の漏れ流量を表示するが、1次側タンク内の圧力は漏れ流量の影響を受けて一定ではなく、ワークの漏れ流量に比例してその内圧が変化し、漏れ流量が一定であっても漏れ流量感度が変化することになる。
【0026】
そこで、マスフローセンサ925の計測値(表示値)をQ’とし、補正後の流量をQとすれば、流量感度の補正式を以下のように表すことができる。
【0027】
【数4】
【0028】
式(4)におけるVを上述のVとし、式(4)におけるVを上述のxとし、xを式(2)によりP、P、Pを用いた表現に変形すれば式(4)は以下のように変形される。
【0029】
【数5】
【0030】
よって計測値(表示値)Q’を正しい流量Qに補正するための流量補正係数Kは、
【0031】
【数6】
【0032】
と表される。式(6)は、制御圧P’、テスト圧P’に基づく式としてもよい。その場合、以下のように表される。
【0033】
【数7】
【0034】
式(5)、式(6)をゲージ圧表現で表せば、
【0035】
【数8】
【0036】
となる。様々な種類のワークを用いて、実測感度係数Kと、圧力を用いた式(6’)により導出した流量補正係数Kと、内容積を用いた式(4)により導出した流量補正係数Kを比較した結果を下表に示す。
【0037】
【表1】

表1に示すように、実測感度係数の値と式(6’)を用いて導出した流量補正係数の値は近似しており、ワークが剛体の場合にはこの傾向が顕著になる。よって、式(6’)を用いて導出した流量補正係数の値を実測感度係数の値の代用として用いることが可能である。
【0038】
以下、図7を参照して本実施例の制御装置165の流量感度校正動作を説明する。第1流量検出部1656は、第3閉止弁940を閉じ、第2閉止弁930を開くことにより、タンク920とワーク935を接続する第2管路を開放し、当該管路に設けられたマスフローセンサ925の、流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Bを検出する(S1656)。第2流量検出部1657は、第5閉止弁955を開いて、タンク920とワーク935と漏れ流量値Fのフローマスタ960を接続する管路(第2管路、第4管路、第3管路の一部)を開放し、当該管路に設けられたマスフローセンサ925の流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Cを検出する(S1657)。マスフローセンサ校正部1658は、漏れ流量値Fと、流量Cと流量Bの差分(C-B)が等しくなるように校正係数αを取得し、校正係数αに基づいてマスフローセンサ925を校正する(S1658)。すなわち、マスフローセンサ校正部1658は、校正係数αを
【0039】
【数9】
【0040】
と計算する。
【0041】
図7に示したステップS1656~S1658は、場合により省略可能である。例えばあるワークにおいてステップS1651~S1655を実行することにより、流量補正係数Kを算出してマスフローセンサ925を補正した場合、補正後かつ校正前の状態においてF≒C-B(∴α≒1)となっていることを簡易的に目視確認できれば、ステップS1656~S1658の校正作業は割愛可能である。校正作業は、専門分野の知識を持つ者がマニュアルに従って正しく行わなければならない作業であるため、煩雑かつコストが高い。本実施例の制御装置165を用いれば、上記の煩雑な校正作業を多くの場合に割愛できるため、ユーザの利便性が高まる。ただし、F≠C-B(∴α≠1)となる場合には、ステップS1656~S1658の校正作業を行う必要がある。
【実施例2】
【0042】
以下、図8を参照して実施例2の漏れ流量計測システムの構成を説明する。同図に示すように、本実施例の漏れ流量計測システム2は、空圧源805と、空圧源805のワークおよびタンク側に接続されたオイルミストセパレータ810と、オイルミストセパレータ810のワークおよびタンク側に接続された調圧弁815と、調圧弁815のワークおよびタンク側に接続されたテスト圧計820と、テスト圧計820のワークおよびタンク側に接続された電磁弁825と、電磁弁825からワーク、タンクのそれぞれに向かって二股に延伸する管路のうち一方の(タンクにつながる)管路である第1管路に接続された電磁弁830と、電磁弁825から二股に分かれる管路のうち他方の(ワークにつながる)管路である第2管路に接続された電磁弁835と、電磁弁830、835よりもワークおよびタンク側にあり第1管路と第2管路を接続する第3管路において、当該第3管路の第1管路側に接続されたマスフローセンサ840と、当該第3管路の第2管路側に接続された電磁弁845と、第3管路よりもタンク側で第1管路から分岐する第4管路の終端に接続される電磁弁850と、第3管路よりもワーク側で第2管路から分岐する第5管路の終端に接続される電磁弁855と、第3管路よりもタンク側で、第1管路に接続される弁860と、第3管路よりもワーク側で、第2管路に接続される弁865と、弁860よりもタンク側で、第1管路に接続されるテスト圧計870と、弁865よりもワーク側で、第2管路から分岐する第6管路の終端に接続されるフローマスター875と、第1管路の終端に接続されるタンク880と、第2管路の終端に接続されるワーク885と、上記の一般的な等圧タンク方式の空圧回路の各構成を制御可能な制御装置265を含む。なお同図において制御線の表示を省略した。
【0043】
以下、図9を参照して本実施例の制御装置265の構成を説明する。同図に示すように本実施例の制御装置265は、テスト圧制御部2651と、ワーク圧計測部2652と、マスフローセンサ補正部2655と、第1流量検出部2656と、第2流量検出部2657と、マスフローセンサ校正部2658を含む。
【0044】
以下、図10を参照して本実施例の制御装置265の流量補正係数Kの算出動作を説明する。まず、テスト圧制御部2651は、電磁弁825、830、弁860を開き、タンク880内の圧力をテスト圧Pになるよう、調圧弁815を制御し、タンク880内の圧力を計測する(S2651)。ワーク圧計測部2652は、電磁弁825を閉じ、電磁弁835、弁865を開き、タンク880とワーク885を接続する管路を開放してワーク885内の圧力であるワーク圧Pを計測する(S2652)。
【0045】
マスフローセンサ補正部2655は、テスト圧Pとワーク圧Pに基づいて、タンク880とワーク885を接続する第3管路に設けられたマスフローセンサ840を補正するための係数である流量補正係数Kを、式(6)により算出し、当該流量補正係数Kに基づいてマスフローセンサ840を補正する(S2655)。
【0046】
制御装置265は、通常の流量計測では、テスト圧Pをタンク880とワーク885に同時に加圧し、電磁弁830、835を閉じ、電磁弁845を開く。マスフローセンサ840は、上記のステップで求めた流量補正係数Kにより補正された流量を表示する。
【0047】
以下、図11を参照して本実施例の制御装置265の流量感度校正動作を説明する。第1流量検出部2656は、電磁弁830、835を閉じ、電磁弁845を開くことにより、タンク880とワーク885を接続する第3管路を開放し、当該管路に設けられたマスフローセンサ840の、流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Bを検出する(S2656)。第2流量検出部2657は、フローマスター875の弁を開いて、タンク880とワーク885と漏れ流量値Fのフローマスター875を接続する管路を開放し、マスフローセンサ840の流量補正係数Kによる補正済みの計測値である流量Cを検出する(S2657)。マスフローセンサ校正部2658は、漏れ流量値Fと、流量Cと流量Bの差分(C-B)が等しくなるように校正係数αを取得し、マスフローセンサ840を校正する(S2658)。
【0048】
実施例1と同様に、マスフローセンサ校正部2658は、校正係数αを
【0049】
【数10】
【0050】
と計算する。
【0051】
実施例2の制御装置265によれば、等圧タンク方式の漏れ流量計測システムにおいても実施例1と同様の効果(校正作業の適宜省略)が得られる。
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD-ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0052】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0053】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0054】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0055】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0056】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD-RAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP-ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0057】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0058】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0059】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
図1
図2
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図4
図5
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図9
図10
図11