(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ピリド[1,2-a]ピリミドン類似体、それらの結晶形、それらの中間体、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220309BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220309BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220309BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C07D471/04 117A
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2018531358
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2016110284
(87)【国際公開番号】W WO2017101847
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】201510951482.3
(32)【優先日】2015-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー,タオ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ニン
(72)【発明者】
【氏名】コン,リンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ペイペイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ゼミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,フェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ゾンビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャフ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チェンデ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192760(WO,A1)
【文献】特表2011-500823(JP,A)
【文献】国際公開第2014/022128(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103539777(CN,A)
【文献】国際公開第2014/067473(WO,A1)
【文献】特表2017-518382(JP,A)
【文献】特表2004-529123(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102206222(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表され、X線回折パターンにおいて、
2θ=7.947°,10.073°,14.531°,19.187°,21.237°,24.055°,25.497°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物1の結晶形IXの結晶。
【化1】
【請求項2】
X線回折パターンにおいて、2θ=7.947°,10.073°,11.970°,13.468°,14.531°,15.911°,19.187°,21.237°,24.055°,25.497°の回折ピークを有するか、又は、
X線回折パターンにおいて、2θ=7.947°,10.073°,11.970°,13.468°,14.531°,15.911°,19.187°,19.561°,21.237°,23.446°,24.055°,25.497°,27.074°の回折ピークを有する、
請求項1に記載の結晶形IXの結晶。
【請求項3】
XRPDパターン解析データが以下の通り表されることを特徴とする、
請求項1に記載の結晶形IXの結晶。
【表1】
【請求項4】
下記式で表される化合物2。
【化2】
【請求項5】
X線回折パターンにおいて、
2θ=10.154°,12.285°,14.511°,16.328°,24.311°,26.188°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=7.270°,10.154°,12.285°,13.206°,14.511°,16.328°,24.311°,26.188°,27.724°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=7.270°,10.154°,12.285°,13.206°,14.511°,16.328°,19.008°,20.702°,21.259°,24.311°,26.188°,27.724°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形Iの結晶。
【表2】
【請求項6】
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.524°,7.782°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.524°,7.782°,11.628°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°,20.962°,23.269°の回折ピークを有するか:又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.524°,7.782°,11.628°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°,20.962°,23.269°,24.257°,26.009°,31.533°の回折ピークを有するか;又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形IIの結晶。
【表3】
【請求項7】
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.979°,9.939°,14.392°,16.107°,20.982°,25.990°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.187°,6.979°,9.939°,11.910°,14.392°,16.107°,20.982°,22.755°,25.990°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.187°,6.979°,9.939°,11.910°,13.148°,14.392°,16.107°,20.982°,22.755°,23.975°,25.990°,29.006°の回折ピークを有するか;又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形IIIの結晶。
【表4】
【請求項8】
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.388°,7.278°,11.076°,15.454°,21.256°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.388°,7.278°,11.076°,12.102°,15.454°,16.091°,18.912°,21.256°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.388°,7.278°,11.076°,12.102°,15.103°,15.454°,16.091°,18.912°,21.256°,21.846°の回折ピークを有するか:又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形IVの結晶。
【表5】
【請求項9】
X線回折パターンにおいて、
2θ=7.116°,14.137°,15.911°,22.223°,24.610°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=7.116°,14.137°,15.911°,21.691°,22.223°,24.213°,24.610°,28.987の回折ピークを有するか:又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形Vの結晶。
【表6】
【請求項10】
X線回折パターンにおいて、
2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,22.518°,26.623°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,17.132°,20.939°,22.518°,26.623°の回折ピークを有するか;又は、X線回折パターンにおいて、
2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,17.132°,20.939°,22.518°,23.745°,26.623°,31.295°の回折ピークをするか;又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項4に記載の化合物2の結晶形VIの結晶。
【表7】
【請求項11】
下記式で表される化合物3。
【化3】
【請求項12】
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.325°,12.677°,15.813°,21.395°,22.519°,27.133°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.325°,12.677°,13.251°,15.813°,18.954°,21.395°,22.519°,25.161°,27.133°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=6.325°,12.677°,13.251°,15.813°,16.565°,18.954°,21.395°,22.519°,24.117°,25.161°,26.405°,27.133°の回折ピークを有するか;又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項11に記載の化合物3の結晶形VIIの結晶。
【表8】
【請求項13】
下記式で表される化合物4。
【化4】
【請求項14】
X線回折パターンにおいて、
2θ=5.889°,11.002°,12.518°,14.906°,17.825°,22.814°,25.555°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=5.889°,7.173°,11.002°,11.396°,12.518°,12.895°,14.906°,17.825°,22.814°,25.555°の回折ピークを有するか;又は、
X線回折パターンにおいて、
2θ=5.889°,7.173°,11.002°,11.396°,12.518°,12.895°,14.906°,16.169°,17.825°,19.875°,21.574°,22.814°,25.555°,27.254°の回折ピークを有するか;又は、
下記XRPDパターン解析データを有することを特徴とする、
請求項13に記載の化合物4の結晶形VIIIの結晶。
【表9】
【請求項15】
請求項1乃至3、5乃至10、12及び14のうち何れか一項に記載の結晶形の結晶を含む結晶組成物であって、
前記結晶形の結晶が、前記結晶組成物の質量の50%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上にて存在する、
結晶性組成物。
【請求項16】
請求項4、11及び13のうち何れか一項に記載の化合物、又は、
請求項1乃至3、5乃至10、12及び14のうち何れか一項に記載の結晶形の結晶、又は、
請求項15に記載の結晶組成物を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、前記化合物、又は前記結晶形の結晶、又は前記結晶組成物を治療有効量で含み、そして所望により、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
PI3Kキナーゼ関連疾患の治療のための薬剤を製造するための、
請求項1乃至3、5乃至10、12及び14のうち何れか一項に記載の結晶形の結晶、又は、
下記式で表される化合物1、又は、
請求項4、11及び13のうち何れか一項に記載の化合物、又は、
請求項15に記載の結晶組成物
の使用。
【化5】
【請求項18】
前記PI3Kキナーゼ関連疾患は癌から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記PI3Kキナーゼ関連疾患は結腸がん及び胃がんから選択される、請求項17又は請求項18に記載の使用。
【請求項20】
PI3Kキナーゼ関連疾患治療用の
請求項1乃至3、5乃至10、12及び14のうち何れか一項に記載の結晶形の結晶
。
【請求項21】
PI3Kキナーゼ関連疾患治療用の
請求項4、11及び13のうち何れか一項に記載の化合物。
【請求項22】
PI3Kキナーゼ関連疾患治療用の
請求項15に記載の結晶組成物
【請求項23】
PI3Kキナーゼ関連疾患治療用の
請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項24】
下記式で表される化合物1の製造方法であって
【化6】
下記工程:
【化7】
(式中、
XはCl又はBrから選択され;
塩基Cはピリジン、2,6-ルチジン(2,6-ジメチルピリジン)、Et
3N、4-DMAP、LiOH、Cs
2CO
3、又はK
2CO
3から選択され;
溶媒cは、ピリジン、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、DMF又はTHFから選択され;
化合物7対化合物8のモル比は1:1~3、又は1:1.2~1.6であり;
化合物7対塩基Cのモル比は1:1~3である。)
を含む、製造方法。
【請求項25】
さらに下記工程:
【化8】
【化9】
(式中、
塩基Aは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムから選択され;
溶媒aは、DMF、DMSO、又はNMPから選択され;
塩基Bは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムから選択され;
溶媒bは、1,4-ジオキサン、DMSO、THF、1,4-ジオキサン/水、又はTHF/水から選択され;
前記溶媒bにおける1,4-ジオキサン又はTHF対水の体積比は3~6:1、又は5:1であり、
触媒はPd(dppf)Cl
2、又はPd(PPh
3)
4から選択され;
2-ジメチルアミノエチルクロリド又は2-ジメチルアミノエチルブロミドはその塩の形態であってよい。)
を含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
化合物1の製造のための中間体としての、
下記式で表される化合物。
【化10】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピリド[1,2-a]ピリミドン類似体の結晶形、それらの製造方法、及びそれらの中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
PI3K経路(PI3K pathway)は、突然変異が最も一般的に起こり、細胞増殖、活性化、およびシグナル増幅につながり得る、ヒトのがん細胞の部位である。
【0003】
PI3Kキナーゼ(ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ、PI3Ks)は、脂質キナーゼに属し、ホスファチジルイノシトールのイノシトール環の3’-OH末端をリン酸化することができる。PI3Kは、調節サブユニットp85又はp101と触媒サブユニットp110から構成される脂質キナーゼであり、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスフェート(PIP2)のリン酸化を促進してホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスホスフェート(PIP3)を形成し、それにより、Aktの下流などを活性化することにより、細胞増殖、生存及び代謝などにおける重要な役割を果たす。したがって、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼの抑制は、PI3K経路に影響を与え、がん細胞の増殖及び活性化を抑制する。
【0004】
腫瘍抑制遺伝子PTEN(第10染色体上で欠失しているホスファターゼ・テンシン・ホモログ(phosphatase and tension homolog))は、PIP3を脱リン酸化してPIP2を生成し、PI3K/Aktシグナル伝達経路の負の調節を達成し、細胞増殖を抑制して、アポトーシスを促進する。PI3K遺伝子変異及び増幅の頻発並びに癌におけるPTEN損失などが、PI3Kが腫瘍形成と密接に関連していることを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、化合物1の製造方法を提供し、
【化1】
該方法は、下記工程を含む
【化2】
上記式中、
XはCl又はBrから選択され、
塩基Cはピリジン、2,6-ルチジン(2,6-ジメチルピリジン)、Et
3N、4-DMAP、LiOH、Cs
2CO
3、又はK
2CO
3から選択され;
溶媒cは、ピリジン、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、DMF又はTHFから選択され;
化合物7対化合物8のモル比は1:1~3であり;
化合物7対塩基Cのモル比は1:1~3である。
【0006】
本発明のいくつかの実施態様において、化合物7対化合物8のモル比は1:1.2~1.6である。
【0007】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の製造は、下記工程を含む。
【化3】
式中、
塩基Aは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムから選択され;
溶媒aは、DMF、DMSO、又はNMPから選択される。
【0008】
本明細書において、2-ジメチルアミノエチルクロリド又は2-ジメチルアミノエチルブロミドは、例えば、2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩、又は2-ジメチルアミノエチルブロミド塩酸塩などの、それらの塩の形態で使用可能である。
【0009】
本発明のいくつかの実施態様において、化合物5対2-ジメチルアミノエチルクロリド(又はその塩酸塩)又は2-ジメチルアミノエチルブロミド(又はその塩酸塩)のモル比は1:1~2である。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様において、化合物5対2-ジメチルアミノエチルクロリド(又はその塩酸塩)又は2-ジメチルアミノエチルブロミド(又はその塩酸塩)のモル比は1:1.1~1.3である。
【0011】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の製造は、下記工程を含む。
【化4】
式中、
塩基Bは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムから選択され;
溶媒bは、1,4-ジオキサン、DMSO、THF、1,4-ジオキサン/水、又はTHF/水から選択され;
前記溶媒bにおける1,4-ジオキサン又はTHF対水の体積比は3~6:1、好ましくは5:1であり、
触媒はPd(dppf)Cl
2、又はPd(PPh
3)
4から選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様において、前記溶媒bにおける1,4-ジオキサン又はTHF対水の体積比は5:1である。
【0013】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の製造は、下記工程を含む。
【化5】
【0014】
上記反応スキームにおいて、化合物6を生成するための、化合物5と2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩との反応は、好ましくは塩基Aと溶媒aの存在下で実施され、塩基Aは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムから選択され;溶媒aは、DMF、DMSO、又はNMPから選択される。本発明のいくつかの実施態様において、化合物5対2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩のモル比は1:1~2である。本発明のいくつかの実施態様において、化合物5対2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩のモル比は1:1.1~1.3である。
【0015】
上記反応スキームにおいて、化合物7を生成するための、化合物6と2-メトキシ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-アミンとの反応は、好ましくは塩基Bと溶媒bと触媒の存在下で実施され、塩基Bは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、ナト
リウムt-ブトキシド、酢酸カリウム又は酢酸ナトリウムから選択され;溶媒bは、1,4-ジオキサン、DMSO、THF、1,4-ジオキサン/水、又はTHF/水から選択され、溶媒bにおける1,4-ジオキサン又はTHF対水の体積比は3~6:1、好ましくは5:1であり;そして触媒はPd(dppf)Cl2、又はPd(PPh3)4から選択される。
【0016】
上記反応スキームにおいて、化合物1を生成するための、化合物7と2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリドとの反応は、好ましくは塩基Cと溶媒cの存在下で実施され、塩基Cは、ピリジン、2,6-ルチジン(2,6-ジメチルピリジン)、Et3N、4-DMAP、LiOH、Cs2CO3、又はK2CO3から選択され;溶媒cは、ピリジン、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、DMF又はTHFから選択され;そして化合物7対2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリドのモル比は1:1~3であり;化合物7対塩基Cのモル比は1:1~3である。本発明のいくつかの実施態様において、化合物7対2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリドのモル比は1:1.2~1.6である。
【0017】
本発明はまた、化合物1の製造のための中間体としての下記式で表される化合物を提供する。
【化6】
【0018】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=7.947°,10.073°,14.531°,19.187°,21.237°,24.055°,25.497°の;典型的には、2θ=7.947°,10.073°,11.970°,13.468°,14.531°,15.911°,19.187°,21.237°,24.055°,25.497°の;より典型的には、2θ=7.947°,10.073°,11.970°,13.468°,14.531°,15.911°,19.187°,19.561°,21.237°,23.446°,24.055°,25.497°,27.074°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物1の結晶形IXを提供する。
【0019】
本発明は、
図25に示すXRPDパターンを有する、化合物1の結晶形IXを提供する。
【0020】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の結晶形IXのXRPDパターン解析データは下記表1に示される。
【表1】
【0021】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の結晶形IXのDSCパターンは
図26に示される通りである。
【0022】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物1の結晶形IXのTGAパターンは
図27に示される通りである。
【0023】
化合物1の結晶形IXは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0024】
本発明は、結晶形IXの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形IXは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0025】
本発明は、治療有効量の結晶形IX、又は結晶形IXの結晶組成物を含む、結晶形IX
の医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0026】
本発明は下記式で表される化合物2を提供する。
【化7】
【0027】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=10.154°,12.285°,14.511°,16.328°,24.311°,26.188°の;典型的には、2θ=7.270°,10.154°,12.285°,13.206°,14.511°,16.328°,24.311°,26.188°,27.724°の;より典型的には、2θ=7.270°,10.154°,12.285°,13.206°,14.511°,16.328°,19.008°,20.702°,21.259°,24.311°,26.188°,27.724の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形Iを提供する。
【0028】
本発明は、
図1に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形Iを提供する。
【0029】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IのXRPDパターン解析データは下記表2に示される。
【表2】
【0030】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IのDSCパターンは
図2に示される通りである。
【0031】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IのTGAパターンは
図3に示される通りである。
【0032】
化合物2の結晶形Iは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0033】
本発明は、結晶形Iの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形Iは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0034】
本発明は、治療有効量の結晶形I、又は結晶形Iの結晶組成物を含む、結晶形Iの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0035】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=6.524°,7.782°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°の;典型的には、2θ=6.524°,7.782°,11.628°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°,20.962°,23.269°の;より典型的に
は、2θ=6.524°,7.782°,11.628°,13.895°,15.495°,17.487°,19.322°,20.962°,23.269°,24.257°,26.009°,31.533°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形IIを提供する。
【0036】
本発明は、
図4に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形IIを提供する。
【0037】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIのXRPDパターン解析データは下記表3に示される。
【表3】
【0038】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIのDSCパターンは
図5に示される通りである。
【0039】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIのTGAパターンは
図6に示される通りである。
【0040】
化合物2の結晶形IIは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0041】
本発明は、結晶形IIの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形IIは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0042】
本発明は、治療有効量の結晶形II、又は結晶形IIの結晶組成物を含む、結晶形IIの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0043】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=6.979°,9.939°,14.392°,16.107°,20.982°,25.990°の;典型的には、2θ=6.187°,6.979°,9.939°,11.910°,14.392°,16.107°,20.982°,22.755°,25.990°の;より典型的には、2θ=6.187°,6.979°,9.939°,11.910°,13.148°,14.392°,16.107°,20.982°,22.755°,23.975°,25.990°,29.006°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形IIIを提供する。
【0044】
本発明は、
図7に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形IIIを提供する。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIIのXRPDパターン解析データは下記表4に示される。
【表4】
【0046】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIIのDSCパターンは
図8に示される通りである。
【0047】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IIIのTGAパターン
は
図9に示される通りである。
【0048】
化合物2の結晶形IIIは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0049】
本発明は、結晶形IIIの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形IIIは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0050】
本発明は、治療有効量の結晶形III、又は結晶形IIIの結晶組成物を含む、結晶形IIIの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0051】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=6.388°,7.278°,11.076°,15.454°,21.256°の;典型的には、2θ=6.388°,7.278°,11.076°,12.102°,15.454°,16.091°,18.912°,21.256°の;より典型的には、2θ=6.388°,7.278°,11.076°,12.102°,15.103°,15.454°,16.091°,18.912°,21.256°,21.846°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形IVを提供する。
【0052】
本発明は、
図10に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形IVを提供する。
【0053】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IVのXRPDパターン解析データは下記表5に示される。
【表5】
【0054】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IVのDSCパターンは
図11に示される通りである。
【0055】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形IVのTGAパターンは
図12に示される通りである。
【0056】
化合物2の結晶形IVは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0057】
本発明は、結晶形IVの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形IVは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0058】
本発明は、治療有効量の結晶形IV、又は結晶形IVの結晶組成物を含む、結晶形IVの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0059】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=7.116°,14.137°,15.911°,22.223°,24.610°の;典型的には、2θ=7.11
6°,14.137°,15.911°,21.691°,22.223°,24.213°,24.610°,28.987°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形Vを提供する。
【0060】
本発明は、
図13に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形Vを提供する。
【0061】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VのXRPDパターン解析データは下記表6に示される。
【表6】
【0062】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VのDSCパターンは
図14に示される通りである。
【0063】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VのTGAパターンは
図15に示される通りである。
【0064】
化合物2の結晶形Vは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0065】
本発明は、結晶形Vの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形Vは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0066】
本発明は、治療有効量の結晶形V、又は結晶形Vの結晶組成物を含む、結晶形Vの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0067】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,22.518°,26.623°の;典型的には、2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,17.132°,20.939°,22.518°,26.623°の;より典型的には、2θ=5.775°,11.770°,14.415°,15.753°,17.132°,20.939°,22.518°,23.745°,26.623°,31.295°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物2の結晶形VIを提供する。
【0068】
本発明は、
図16に示すXRPDパターンを有する、化合物2の結晶形VIを提供する。
【0069】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VIのXRPDパターン解析データは下記表7に示される。
【表7】
【0070】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VIのDSCパターンは
図17に示される通りである。
【0071】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物2の結晶形VIのTGAパターンは
図18に示される通りである。
【0072】
化合物2の結晶形VIは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0073】
本発明は、結晶形VIの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形VIは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは9
0%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0074】
本発明は、治療有効量の結晶形VI、又は結晶形VIの結晶組成物を含む、結晶形VIの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0075】
本発明は下記式で表される化合物3を提供する。
【化8】
【0076】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=6.325°,12.677°,15.813°,21.395°,22.519°,27.133°の;典型的には、2θ=6.325°,12.677°,13.251°,15.813°,18.954°,21.395°,22.519°,25.161°,27.133°の;より典型的には、2θ=6.325°,12.677°,13.251°,15.813°,16.565°,18.954°,21.395°,22.519°,24.117°,25.161°,26.405°,27.133°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物3の結晶形VIIを提供する。
【0077】
本発明は、
図19に示すXRPDパターンを有する、化合物3の結晶形VIIを提供する。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物3の結晶形VIIのXRPDパターン解析データは下記表8に示される。
【表8】
【0079】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物3の結晶形VIIのDSCパターンは
図20に示される通りである。
【0080】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物3の結晶形VIIのTGAパターンは
図21に示される通りである。
【0081】
化合物3の結晶形VIIは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0082】
本発明は、結晶形VIIの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形VIIは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0083】
本発明は、治療有効量の結晶形VII、又は結晶形VIIの結晶組成物を含む、結晶形VIIの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0084】
本発明は下記式で表される化合物4を提供する。
【化9】
【0085】
本発明は、X線回折(XRD)パターンにおいて、2θ=5.889°,11.002°,12.518°,14.906°,17.825°,22.814°,25.555°の;典型的には、2θ=5.889°,7.173°,11.002°,11.396°,12.518°,12.895°,14.906°,17.825°,22.814°,25.555°の;より典型的には、2θ=5.889°,7.173°,11.002°,11.396°,12.518°,12.895°,14.906°,16.169°,17.825°,19.875°,21.574°,22.814°,25.555°,27.254°の回折ピークを有することを特徴とする、化合物4の結晶形VIIIを提供する。
【0086】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物4の結晶形VIIIのXRPDパターン解析データは
図22に示される。
【0087】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物4の結晶形VIIIのXRPDパターン解析データは下記表9に示される。
【表9】
【0088】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物4の結晶形VIIIのDSCパターンは
図23に示される通りである。
【0089】
本発明のいくつかの実施態様において、前記化合物4の結晶形VIIIのTGAパターンは
図24に示される通りである。
【0090】
化合物4の結晶形VIIIは、非溶媒和物結晶又は溶媒和物結晶の形態で存在し得る。本明細書において溶媒和物とは、有機溶媒及び/又は水と対応する化合物により形成される溶媒和物を言及する。
【0091】
本発明は、結晶形VIIIの結晶組成物を提供する。いくつかの実施態様において、結晶形VIIIは、前記結晶組成物の質量の50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上にて存在する。
【0092】
本発明は、治療有効量の結晶形VIII、又は結晶形VIIIの結晶組成物を含む、結晶形VIIIの医薬組成物を提供する。さらに医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
【0093】
本発明の目的は、また、PI3K受容体関連疾患の治療のための薬剤の製造における、化合物1、2、3及び4、又はそれらの医薬組成物の使用を提供することである。
【0094】
本発明の別の目的は、PI3Kキナーゼ関連疾患の治療のための薬剤の製造における、結晶形I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII及びIX、それらの結晶組成物、及びそれらの医薬組成物の使用を提供することである。
【0095】
本発明のいくつかの実施態様において、PI3Kキナーゼ関連疾患は、結腸がん、胃がんなどの癌から選択される。
【0096】
本発明の目的は、治療有効量の化合物1、2、3及び4、又はそれらの医薬組成物を、それらを必要とする患者に対して投与することを含む、PI3Kキナーゼ関連疾患を治療するための方法を提供することである。
【0097】
本発明の別の目的は、治療有効量の本発明の結晶形I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII及びIX、それらの結晶組成物、及びそれらの医薬組成物を、それらを必要とする患者に対して投与することを含む、PI3Kキナーゼ関連疾患を治療するための方法を提供することである。
【0098】
本発明のいくつかの実施態様において、PI3Kキナーゼ関連疾患は、結腸がん、胃がんなどの癌から選択される。
【課題を解決するための手段】
【0099】
定義及び説明
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語及びフレーズ(語句)は、以下の意味を有することを意図している。特定のフレーズ又は用語は、特定の定義がない場合、不確実または不明瞭とみなされるべきではなく、常識に従って理解されるべきである。本明細書において商品名が現れる場合、対応する製品またはその有効成分を言及するものであることを意図している。
【0100】
本発明の中間化合物は、下記に説明される特定の実施態様、他の化学合成方法と組み合わせて形成された実施態様、及び当業者に既知の均等物を含む、当業者に既知の種々の合成方法で製造され得る。好ましい実施態様としては、本発明の実施例が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明の特定の実施態様における化学反応は、適切な溶媒中で遂行され、該溶媒は化学変化並びに本発明で必要とされる試薬及び材料に適していなければならない。本発明の化合物を得るために、本明細書のこれら実施態様に基づいて、当業者は、合成工程又は反応スキームを変更又は選択することがときに必要である。
【0102】
当該分野において任意の合成ルート計画に関して考慮すべき重要な要因は、反応性官能基(例えば本発明におけるアミノ基)のための適切な保護基の選択である。グリーン及びウッツ(有機合成における保護基、ワイリー・アンド・サンズ、1991)は、当技術分野の熟練した実践者にとって、この分野における権威である。本発明に引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されることを意図するものではない。
【0104】
本発明において使用される全ての溶媒は市販されており、さらなる精製をすることなく使用される。反応は、一般に、不活性窒素ガス下で、無水溶媒中で行われる。プロトン核磁気共鳴データを、Bruker Avance III 400(400MHz)スペクトロメーターで記録し、ケミカルシフトを低磁場(low field)にて、テトラメチルシランの(ppm)として示す。マススペクトルをAgilent 1200 シリーズ plus 6110(&1956A)で測定した。LS/MS又はShimadzu MSはDADを含む:SPD-M20A(LC)及びShimadzuマイクロマス 2020 デテクター。マススペクトロメーターは、ポジティブ又はネガティブモードで操作されるエレクトロスプレーイオン源(ESI)を備える。
【0105】
X線回折スペクトルにおいて、結晶化合物から得られる回折パターンは、しばしば、特定の結晶形に特徴的であるが、バンドの相対強度(特に低角度における)は、結晶状態、粒子サイズ及び他の測定条件の変化から生じる優位な配向効果により変化し得る。それゆえ、回折ピークの相対強度は、目的とする結晶形に特徴的なものではない。結晶形が既知のものと同一であるかどうかを判断する際、注目すべきはピークの相対強度よりはむしろピークの相対的な位置である。さらに、与えられた任意の結晶形に関して、ピークの位置にわずかな誤差が存在し得、これは結晶学の分野でもよく知られている。例えば、ピークの位置は、試料の解析中の温度変化、試料の移動、又は装置のキャリブレーションにより変化し得、2θ値の測定誤差は、ときに約±0.5°、好ましくは約±0.3°、より好ましくは約±0.2°である。したがって、各結晶形の構造を決定する際、そのような誤差を考慮すべきであり、誤差を含めた2θ値もまた本発明の範囲内である。XRDパターンにおいて、ピークの位置は、通常、2θ角又は面間隔dで表され、これらの間に単純な変換式が存在する:d=λ/2sinθ、式中、dは面間隔を表し、λは入射X線の波長を表し、θは回折角を表す。同種の化合物の同じ結晶形に関して、XRDスペクトルにおけるピークの位置は全体的に類似し、相対強度はより大きな誤差を有し得る。混合物の同定において、含有量の減少といった要因により、回折線の一部が失われ得る点も指摘されるべきである。この場合、1つのバンドであっても所定の結晶に特徴的であり得、高純度試料で観察されるように全てのバンドを頼りにする必要はない。
【0106】
薬物の結晶形を調製する際、薬物分子と溶媒分子が互いに接触している場合には、溶媒分子と化合物分子が共晶を形成し、外部条件及び内部要因により固体にとどまり、それにより溶媒和物を、例えば化学量論的及び非化学量論的溶媒和物を形成することは避けられないということを把握すべきである。そのような溶媒和物は、本発明の範囲内に包含される。
【0107】
本発明により調製される化合物2(塩酸塩)における塩化物イオンの化学量論は、イオ
ンクロマトグラフィーにより決定され得る。使用される装置は、883 Basic IC plus 1であり;選択されるカラムは Metrosep A Supp 5-150/4.0であり;流量は0.700mL/分であり;ランタイムは10分である。
【0108】
本発明は、以下の略語を採用する:DCMはジクロロメタンを意味し;PEは石油エーテルを意味し;EAは酢酸エチルを意味し;DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを意味し;DMSOはジメチルスルホキシドを意味し;THFはテトラヒドロフランを意味し;MeOHはメタノールを意味し;NMPはN-メチルピロリドンを意味し;Et3Nはトリエチルアミンを意味し;4-DMAPは4-ジメチルアミノピリジンを意味し;LiOHは水酸化リチウムを意味し;Cs2CO3は炭酸セシウムを意味し;K2CO3は炭酸カリウムを意味し;PPh3はトリフェニルホスフィンを意味し;Pd(PPh3)4はテトラ-トリフェニルホスフィンパラジウムを意味し;Pd(dppf)Cl2は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムクロリドを意味する。
【0109】
本発明におけるX線粉末回折装置(XRPD)法:
装置モデル:ブルカー D8 アドバンス X線回折装置
試験条件:詳細なXRPDパラメータは以下の通りである:
X線発生器(発生源):Cu、kα(λ=1.54056Å)
管電圧(チューブ電圧):40kV、管電流(チューブ電流):40mA
散乱スリット:0.60mm
検出スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
スキャンレンジ:4-40deg(°)
ステップレングス:0.02deg(°)
速度:0.1S(秒)
試料プレートの回転速度:15rpm
【0110】
本発明における示差走査熱量計(DSC)法:
装置モデル:TA Q2000 示差走査熱量計
試験条件:試料(0.5~1mg)を取り、試験用DSCアルミニウムパンに載せ、試験は室温~300℃、昇温速度10℃/分。
【0111】
本発明における熱重量測定装置(TGA)法:
装置モデル:TA Q5000 IR 熱重量測定装置
試験条件:試料(2~5mg)を取り、試験用TGAプラチナパンに載せ、試験は室温~300℃、昇温速度10℃/分。
【発明の効果】
【0112】
技術的効果
本発明により提供される、化合物2、3、及び4、化合物1の結晶形IX、化合物2の結晶形I、II、III、IV、V及びVI、化合物3の結晶形VII、及び化合物4の結晶形VIIIは、事実上安定であり、良好な溶解性と優れた吸湿性を有し、薬剤として将来性有望である。
【0113】
本発明により提供される、化合物1及びそれらの中間体の合成に関するプロセスは、原材料が安価であり入手容易であり、使用する試薬の高い毒性、激しい反応条件、分離及び精製が困難であり、工業化が容易でないといった不利点を克服する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形IのXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、化合物2の結晶形IのDSCパターンである。
【
図3】
図3は、化合物2の結晶形IのTGAパターンである。
【
図4】
図4は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形IIのXRPDパターンである。
【
図5】
図5は、化合物2の結晶形IIのDSCパターンである。
【
図6】
図6は、化合物2の結晶形IIのTGAパターンである。
【
図7】
図7は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形IIIのXRPDパターンである。
【
図8】
図8は、化合物2の結晶形IIIのDSCパターンである。
【
図9】
図9は、化合物2の結晶形IIIのTGAパターンである。
【
図10】
図10は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形IVのXRPDパターンである。
【
図11】
図11は、化合物2の結晶形IVのDSCパターンである。
【
図12】
図12は、化合物2の結晶形IVのTGAパターンである。
【
図13】
図13は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形VのXRPDパターンである。
【
図14】
図14は、化合物2の結晶形VのDSCパターンである。
【
図15】
図15は、化合物2の結晶形VのTGAパターンである。
【
図16】
図16は、Cu-Kα線を用いた化合物2の結晶形VIのXRPDパターンである。
【
図17】
図17は、化合物2の結晶形VIのDSCパターンである。
【
図18】
図18は、化合物2の結晶形VIのTGAパターンである。
【
図19】
図19は、Cu-Kα線を用いた化合物3の結晶形VIIのXRPDパターンである。
【
図20】
図20は、化合物3の結晶形VIIのDSCパターンである。
【
図21】
図21は、化合物3の結晶形VIIのTGAパターンである。
【
図22】
図22は、Cu-Kα線を用いた化合物4の結晶形VIIIのXRPDパターンである。
【
図23】
図23は、化合物4の結晶形VIIIのDSCパターンである。
【
図24】
図24は、化合物4の結晶形VIIIのTGAパターンである。
【
図25】
図25は、Cu-Kα線を用いた化合物1の結晶形IXのXRPDパターンである。
【
図26】
図26は、化合物1の結晶形IXのDSCパターンである。
【
図27】
図27は、化合物1の結晶形IXのTGAパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下の具体例を組み合わせてさらに説明するが、本発明の内容を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0116】
【0117】
メチル2-(ベンジルオキシ)酢酸(2)の製造
【化11】
ジクロロメタン(960mL)を3.0Lの三ツ口丸底フラスコに加え、メタノール(197.6g、247mL)及びピリジン(304.78mL、311mol)を加え、そして混合物を氷浴で0℃まで冷却した。窒素ガスの保護下で、2-(ベンジルオキシ)アセチルクロリド(300g、1.54mol)を丸底フラスコに滴下して加え、添加の間、温度を0-10℃に制御した。添加後、氷浴を除去し、反応溶液を20℃で1.5時間撹拌した。サンプリング及び検出後、TLC(石油エーテル/酢酸エチル=5/1)は反応が完了したことを示した。水(1.5L)を丸底フラスコに加え、10分間撹拌し、層を分離させて、有機層を回収した;その後有機層を1.0mol/Lの希釈塩酸(900mL×2)で洗浄し、層を分離させて、有機層を回収した;有機層をさらに20%炭酸ナトリウム溶液(600mL)で洗浄し、層を分離させ、有機層を回収し、無水硫酸ナトリウム(150g)で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、無色の油状生成物を得た(284g、1.53mol、収率97%、純度99%)。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)ppm 7.37-7.32(m,5H),4.63(s,2H),4.11(s,2H),3.76(s,3H);LCMS(ESI)m/z:202.8(M+23).
【0118】
メチル2-(ベンジルオキシ)-3-(ジメチルアミノ)アクリレート(3)の製造
【化12】
メチル2-(ベンジルオキシ)酢酸(506g、2.72mol)を3L丸底フラスコに加え、t-ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン(569g、3.26mol)を加え、反応温度を90℃-100℃に制御して、14時間反応させた。サンプリング及び検出後、TLC(PE/EA=5/1)は反応が完了したことを示した。反応溶液を60℃
に冷却し、オイルポンプを用いて濃縮し、黄色の油状生成物(699g、粗生成物)を得、これを次の工程に直接使用した。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)ppm 7.44-7.2(m,2H),7.37-7.28(m,3H),6.87(s,1H),4.72(s,2H),3.73(s,3H),2.98(s,6H).
【0119】
3-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(4)の製造
【化13】
メチル2-(ベンジルオキシ)-3-(ジメチルアミノ)アクリレート(318g、1.35mol)を5L丸底フラスコに加え、酢酸(3L)及び2-アミノ-5-ブロモピリジン(246g、1.35mol)をそれらに加えた。反応溶液を温度を120℃-130℃に制御し、撹拌しながら、14時間反応させた。サンプリング及び検出後、LCMSは反応がほぼ完了したことを示した。反応溶液を60℃に冷却し、濃縮し、蒸発させて溶媒を除去し、酢酸エチル(750mL)を加え、10分間撹拌し、ろ過した。得られたろ過ケーキに酢酸エチル(500mL)を加え、10分間撹拌し、ろ過した。さらに得られたろ過ケーキを酢酸エチル(150mL)でリンスし、スピンドライ(脱水)して、黄色の固体化合物を得た(319g、純度95%、収率67.79%)。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)d=9.13(d,J=2.0Hz,1H),8.05(s,1H),7.56(dd,J=2.0,9.6Hz,1H),7.46-7.42(m,3H),7.37-7.33(m,3H),5.30(s,2H);LCMS(ESI)m/z:332.6(isotope M+1).
【0120】
7-ブロモ-3-ヒドロキシ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(5)の製造
【化14】
トリフルオロ酢酸(1.2L)を3L丸底フラスコに加え、3-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(313g、897.9mmol)をそれらに加え、反応溶液を温度を80℃-90℃に制御し、撹拌しながら、2時間反応させた。サンプリング及び検出後、LCMSは反応がほぼ完了したことを示した。反応溶液を60℃に冷却し、濃縮し、蒸発させて溶媒を除去し、酢酸エチル(1.2L)を加え、60分間撹拌し、ろ過した。得られたろ過ケーキに酢酸エチル(400mL)を加え、60分間撹拌し、ろ過した。さらに得られたろ過ケーキを減圧下、40℃で70時間乾燥し、黄色の固体化合物を得た(191g、含量95.6%、純度100%、収率84.59%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)d=9.92(br,1H),8.90(s,1H),8.07(s,1H),7.73(dd,J=2.0,9.6Hz,1H),7.53(d,J=9.6Hz,1H);MS m/z:240.9(M+1),2
42.8(isotope M+1).
【0121】
例1:化合物1の製造
7-ブロモ-3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(6)の製造
【化15】
7-ブロモ-3-ヒドロキシ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(300g、1.2mol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(3L)を丸底フラスコに加え、反応装置の温度を95℃-100℃に調節した。炭酸カリウム(497.4g、3.6mol)を反応フラスコに入れ、30分間撹拌した。2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩を3つに分けて、以下の通り供給した:2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(70.6g、0.49mol)を反応フラスコに入れ、30分間撹拌した;2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(70.6g、0.49mol)を反応フラスコに入れ、30分間撹拌した;そして2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(70.6g、0.49mol)を反応フラスコに入れ、2-2.5時間撹拌した。
【0122】
反応完了後(HPLCを用いてモニターした)、反応装置の温度を15±5℃に調節した。反応溶液を水(15L)に加え、その後ジクロロメタン(4.5L×4)で抽出した。有機層を合わせて、減圧下、35±5℃にて、一定重量まで濃縮した。濃縮後の得られた生成物に、n-ヘプタン(1.8L)を加え、15±5℃で15-16時間撹拌した。ろ過後、得られたろ過ケーキを、減圧下、35±5℃で回転蒸発(ロータリーエバポレート)し、緑色の固体生成物を得た(280g、収率74.09%、純度98.22%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)d=2.35(s,6H),2.78(t,J=5.6Hz,2H),4.25(t,J=6.0Hz,2H),7.45(d,J=9.6Hz,1H),7.55(dd,J=9.6Hz,2Hz,1H),8.13(s,1H),9.09(d,J=2.0Hz,1H);LCMS(ESI)m/z:312(isotope M+1).
【0123】
7-(5-アミノ-6-メトキシピリミジン-3-イル)-3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(7)の製造
【化16】
7-ブロモ-3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(275g、0.87mol)、2-メトキシ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-アミン(249g、0.96mol)、1,4-ジオキサン(2.75L)、水(550mL)、及び炭酸カリウム(362g、2.62mol)を、次々に反応フラスコに加えた;30-60分間バブリングさせた後、Pd(dppf)Cl
2(19.2g、26mmol
)を反応フラスコに加えて、反応フラスコを窒素ガスで5回置換した;反応フラスコの温度を95±5℃に調節し、この温度で2-2.5時間、混合物を撹拌した。反応完了後(HPLCを用いてモニターした)、反応装置の温度を15±5℃に調節した。反応溶液をn-ヘプタン(6.6L)に加え、温度を15±5℃に調節した後、この温度で2-2.5時間、混合物を撹拌した。ろ過後、得られたろ過ケーキを、減圧下、45±5℃でスピンドライ(脱水)した。得られた残留物にジクロロメタン/メタノール(V/V=8/1、2.75L)を加え、15±5℃で30-60分間撹拌し、ろ過して、ろ過ケーキを得た;ろ過ケーキにジクロロメタン/メタノール(V/V=8/1、1.375L)を加え、15±5℃で30-60分間撹拌し、再びろ過して、別のろ過ケーキを得、これをジクロロメタン/メタノール(V/V=8/1、1.375L)でリンスした。得られた2つのろ液を合わせ、減圧下、45±5℃で濃縮した。濃縮残留物にジクロロメタン/メタノール(V/V=2/1、4.125L)を加え、撹拌して溶解した。得られた溶液にチオシアヌル酸(13.93g)及び活性炭素(27.5g)を加え、15±5℃にて15-16時間撹拌し、珪藻土(137.5g)でろ過し、得られたろ過ケーキをジクロロメタン/メタノール(V/V=2/1、1.375L×2)でリンスした。ろ液を減圧下、45±5℃で濃縮した。濃縮残留物にメタノール(1.1L)を加え、15±5℃で2-3時間撹拌し、ろ過し、得られたろ過ケーキをメタノール(137.5mL)でリンスし、減圧下、45±5℃で回転蒸発させて、黄色の固体生成物を得た(270g、純度97.98%、収率84.24%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)d=8.92(d,J=1.6Hz,1H),8.24(s,1H),8.04(dd,J=9.6Hz,2Hz,1H),7.80(d,J=2Hz,1H),7.67(d,J=9.6Hz,1H),7.27(d,J=2.0Hz,1H),5.24(s,2H),4.19(t,J=6.0Hz,2H),3.93(s,3H),2.66(t,J=6.0Hz,2H),2.25(s,6H);LCMS(ESI)m/z:356(M+1).
【0124】
化合物1の製造
【化17】
7-(5-アミノ-6-メトキシピリミジン-3-イル)-3-(2-ジメチルアミノ)エトキシ)-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(265g、0.72mol)及びピリジン(2.65L)を反応フラスコに加えた;5±5℃に冷却した後、2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド(252g、1.08mol)のピリジン(504mL)溶液を滴下して反応フラスコに加えた;添加が完了した際、反応溶液を温度30℃-35℃に調節し、この温度で2-3時間撹拌した。反応完了後(HPLCを用いてモニターした)、反応溶液を減圧下、45±5℃で、化合物7の2.5-3倍の重さまで濃縮した。濃縮生成物にジクロロメタン(3.7L)を加え、25±5℃で30分間撹拌し、減圧下、45±5℃で、化合物7の2.5-3倍の重さまで濃縮した。濃縮生成物にジクロロメタン(3.7L)を加え、25±5℃で2-3時間スラリーした。ろ過後、ろ過ケーキを回収し、45±5℃で、化合物7の1.3-1.7倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物にジクロロメタン(1.85L)を加え、25±5℃で2
-3時間スラリーした。ろ過後、ろ過ケーキを回収し、45±5℃で、化合物7の1.2-1.4倍の重さまで回転蒸発し、その後45℃で3-4時間、化合物7の1.2-1.3倍の重さまで真空乾燥した。得られた粗生成物にアセトニトリル(2.12L)を加え、55±5℃で15-16時間スラリーした。スラリー後の溶液を25±5℃に冷却し、ろ過し、得られたろ過ケーキを回収し、45±5℃で、化合物7の1.1-1.2倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物にアセトニトリル(1.9L)を加え、55±5℃で15-16時間スラリーした。スラリー後の溶液を25±5℃に冷却し、ろ過し、得られたろ過ケーキを45±5℃で、化合物7の1.0-1.1倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物にメタノール(5.3L)及び活性炭素(53g)を加え、75±5℃で2-3時間撹拌した。ろ過を珪藻土(132g)で実施し、得られたろ過ケーキを回収し、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒(V/V=4/1、7.95L)を加え、25±5℃で30-60分間撹拌した。ろ過を再度実施し、2つの得られたろ液を合わせて、45±5℃で化合物7の1.01-1.03倍の重さまで濃縮した。濃縮生成物に水(4.24L)及びエタノール(1.06L)を加え、25±5℃で5-10分間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1.3L)を滴下して加え、更に2-3時間撹拌した。ろ過後、ろ過ケーキを、45±5℃で、化合物7の1.1-1.3倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物にエタノール(1.59L)を加え、75±5℃で15-16時間スラリーした。スラリー後の溶液を25±5℃に冷却し、ろ過し、ろ過ケーキを回収し、45±5℃で、化合物7の0.89-0.92倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物にエタノール(1.59L)を加え、75±5℃で15-16時間スラリーした。スラリー後の溶液を25±5℃に冷却し、ろ過し、得られたろ過ケーキを回収し、45±5℃で、化合物7の0.87-0.9倍の重さまで回転蒸発させた。回転蒸発した生成物に水(2.35L)を加え、45±5℃で61±1時間撹拌した。混合溶液を25±5℃に冷却し、ろ過した。得られたろ過ケーキを回収し、水(2.35L)を加え、25±5℃で2-3時間撹拌し、ろ過した。得られたろ過ケーキを回収し、60℃で15-16時間真空乾燥し、60メッシュシーブで篩分けし、淡黄色の固体生成物を得た(190g、純度98.33%、収率47.36%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6-d)d=2.96(t,J=6.0Hz,2H),3.72(s,3H),4.27(t,J=5.2Hz,2H),7.32(td,J=8.8,2.8Hz,1H),7.60(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),7.70(d,J=9.2Hz,1H),7.75(d,J=2.0Hz,1H),7.95-8.05(m,2H),8.15(d,J=1.6Hz,1H),8.27(s,1H),8.85(s,1H);LCMS(ESI)m/z:548(M+1).
【0125】
例2:化合物1の結晶形IXの製造
7-(5-アミノ-6-メトキシピリミジン-3-イル)-3-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(2.5g、6.75mmol、1.0当量)をピリジン(25mL)に溶解し、2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド(2.01g、8.78mmol、1.3当量)を、0℃にて滴下して加え、10℃-20℃で16時間撹拌した。反応完了後、溶媒をスピンドライして除き、粗生成物を得た。粗生成物をカラム(DCM/MeOH:10/1-4/1)で精製した。黄色の固体生成物を得た(2.4g、純度98.31%、収率63.79%)。上記黄色固体(1.3g、2.37mmol)を分取HPLC(中性)で分離した。分取HPLC(中性)での分離からの液体をDCM(500mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム(100g)で乾燥し、ろ過し、得られたろ液をスピンドライして、白色固体生成物である、化合物1の結晶形IXを得た(970mg、1.75mmol、純度99%、収率73.94%)。
【0126】
例3:化合物2の結晶形Iの製造
7-(5-アミノ-6-メトキシピリミジン-3-イル)-3-(2-(ジメチルアミ
ノ)エトキシ)-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(29.0g、81.60mmol、1.0当量)及びピリジン(290mL)を、撹拌機が備えられた1.0Lの三ツ口丸底フラスコR1に加えた。R1を氷浴に入れ、0-5℃に冷却した。2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド(24.30g、106.08mmol、1.3当量)のピリジン(60mL)溶液をR1に約30分かけて滴下して加え、反応溶液を自然に20℃まで温め、16時間撹拌しながら反応させた。反応完了後、反応溶液を減圧下で濃縮してピリジンを除去し、80gの赤色固体粗生成物を得た。上記の粗生成物64gを取り、1.0L丸底フラスコR2に入れ、ジクロロメタン(350mL)をR2に加えた。R2を15℃で2時間撹拌し、ろ過し、得られたろ過ケーキを回収して、乾燥し、淡赤色固体を得た(33.4g、収率77%、純度99.4%)。上記の固体30gを取り、1Lの丸底フラスコR3に入れ、メタノール(600mL)及び活性炭素(6g、20%)をR3に加えた。混合物を70℃のオイルバスに入れ、12時間撹拌した。混合物を珪藻土(15g)で温かいうちにろ過した。ろ液を回収し、スピンドライして黄色固体生成物を得た(22.6g、純度97.47%)。アセトニトリル(150mL)を上記固体に加えた;得られた混合物を85℃のオイルバスにて12時間撹拌し、20℃に冷却し、ろ過した;得られたろ過ケーキを回収し、乾燥して、白色固体にて、表題生成物である、化合物2の結晶形Iを得た(21g、収率44.3%、純度100%)。イオンクロマトグラフィーから決定した化合物2の塩素イオン対化合物1の塩素イオンのモル比は1:1であった。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6-d)d=2.91(s,6H),3.53(t,2H),3.71(s,3H),4.52(t,2H),7.38(m,1H),7.77(m,2H),7.97(m,2H),8.16(m,1H),8.45(m,2H),8.98(s,1H).
【0127】
例4:化合物2の結晶形IIの製造
約50mgの化合物2の結晶形Iを取り、0.4mLのアセトンを加え、懸濁液を形成した。懸濁液試料をミキサーに設置し、一定温度(40℃)で2日間振盪した(遮光した(光から保護した))。残留固体を遠心分離し、真空乾燥オーブンにて40℃で一晩乾燥し、化合物2の結晶形IIを得た。
【0128】
例5:化合物2の結晶形IIIの製造
結晶形IIIの製造手順は、溶媒であるアセトンをイソプロパノールに替えた以外は、結晶形IIのものと同一であった。化合物2の結晶形IIIを得た。
【0129】
例6:化合物2の結晶形IVの製造
結晶形IVの製造手順は、溶媒であるアセトンを酢酸エチルに替えた以外は、結晶形IIのものと同一であった。化合物2の結晶形IVを得た。
【0130】
例7:化合物2の結晶形Vの製造
化合物2の結晶形I(2.0g、3.42mmol)を500mLの一つ口フラスコR1に入れ、DCM/MeOH(2/1、200mL)を加えて撹拌しながら固体を完全に溶解させた。溶液を40℃で減圧下に晒して溶媒を除去し、2.0gの黄色固体を得た;該固体1gを取り、50mLの一つ口フラスコに入れ、続いてエタノール(6mL)を加えた;得られた混合物をオイルバスに入れ80℃で12時間撹拌し、その後加熱を停止した。混合物を撹拌しながら20℃に冷却し、ろ過し、ろ過ケーキを乾燥し、化合物2の結晶形Vを得た。
【0131】
例7:化合物2の結晶形VIの製造
7-(5-アミノ-6-メトキシピリミジン-3-イル)-3-(2-ジメチルアミノ)エトキシ)-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(70.0g、222.90
mmol、1.0当量、純度99.4%)及びピリジン(700mL)を、メカニカルスターラーが備えられた2.0Lの三ツ口丸底フラスコR1に加え、R1を氷浴に入れ、0-5℃に冷却した。2-クロロ-4-フルオロベンゼンスルホニルクロリド(70.81g、293.67mmol、1.5当量、純度95%)のピリジン(140mL)溶液をR1に約30分かけて滴下して加えた。R1を30℃のオイルバスに入れ、2時間撹拌しながら反応させた。反応完了後、反応溶液を減圧下で濃縮して溶媒であるピリジンを除去し、赤色固体の粗生成物(200g)を得た。残留物にジクロロメタン(1.0L)を加え、20℃で3時間撹拌した。ろ過後、ろ過ケーキを回収した。アセトニトリル(1.2L)をろ過ケーキに加えた;得られた反応溶液を85℃で12時間還流し、20℃に冷却し、ろ過した;別のろ過ケーキを回収し、乾燥して固体(92g)を得た。ろ過ケーキの固体にメタノール(2L)及び活性炭素(14g)を加え、撹拌しながら3時間還流し、温かいうちに珪藻土(40g)でろ過し、500mLでリンスした。ろ液を減圧下40℃でスピンドライし、固体(83g)を得た。得られた固体にアセトニトリル(800mL)を加え、混合物を85℃で一晩還流し、20℃に冷却してろ過し、得られたろ過ケーキを乾燥して白色固体77gを得た。72gの白色固体を取り、メタノールに完全に溶解し、スピンドライし、化合物2の結晶形VIを得た。
【0132】
例8:化合物3の結晶形VIIの製造
化合物1(997.34mg、1.82mmol、1.00当量)を5mLのガラス瓶に入れ、エタノール/水(7.5mL/2.5mL)を加え、室温(15℃)で0.1時間撹拌したが、大量の固体は溶解しなかった。マレイン酸(211.25mg、1.82mmol、1.00当量)を混合物に加え、室温(15℃)で18時間撹拌し、固体を完全に溶解し、黄色溶液を形成した。得られた溶液を減圧下40℃で2mL体積になるまでスピンドライし、EA(20mL)を加え、0.5時間撹拌し、ろ過した;形成されたろ過ケーキを減圧下40℃ででスピンドライし、化合物3の結晶形VIIを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)d ppm 2.94(s,6H)3.51-3.56(m,2H)3.71(s,3H)4.36-4.59(m,2H)6.03(s,2H)7.18-7.48(m,1H)7.65-7.90(m,2H)7.92-8.09(m,2H)8.17(dd,J=9.29,1.76Hz,1H)8.35-8.55(m,2H)8.99(s,1H).
【0133】
例9:化合物4の結晶形VIIIの製造
化合物1(997.34mg、1.82mmol、1.00当量)を5mLのガラス瓶に入れ、エタノール/水(7.5mL/2.5mL)を加え、室温(15℃)で0.5時間撹拌したが、大量の固体が溶解しなかった。クエン酸(382.45mg、1.82mmol、1.00当量)を混合物に加え、室温(15℃)で18時間撹拌し、反応ビン中に乳白色スラリーを得た。得られた混合溶液を減圧下40℃で2mL体積になるまでスピンドライし、EA(20mL)を加え、0.5時間撹拌し、ろ過した;形成されたろ過ケーキを減圧下40℃でスピンドライし、化合物4の結晶形VIIIを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)d ppm 2.56-2.68(m,4H)2.76(s,6H)3.31(m,2H)3.72(s,3H)4.37-4.40(m,2H)7.35-7.37(m,1H)7.71-7.78(m,2H)7.91-7.95(m,1H)7.95-8.09(m,1H)8.11-8.13(m,1H)8.36-8.37(m,2H)8.96(d,J=1.6,1H).
【0134】
試験例1:異なる溶媒における化合物1の結晶形IXの安定性試験
適切な量にて化合物1の結晶形IXのいくつかの試料を取り、夫々に0.3-0.4mLの下記表に示す単一溶媒又は混合溶媒を加え、40℃で撹拌した。2日間撹拌後、試料を遠心分離した。試料中の固体を回収し、その結晶状態をXRPDで検出した。結果を表10に示す。
【表10】
【0135】
試験例2:高温、多湿及び強光条件下の、化合物1の結晶形IXの固体状態の安定性試験
約10mgの化合物1の結晶形IXを量り取り、ガラスサンプル瓶の底に置き、薄層を形成させた。配置した試料に関して、60℃条件下、及び室温/92.5RH条件下で、瓶の上部をアルミホイルでカバーし、アルミホイルにいくつかの穴を開け、試料が環境中の空気に完全にさらされるように保証した;強光(5Klx)下に配置した試料に関して、スクリューキャップで瓶を密封した。結晶形IXの別の試料15mgを取り、上記の方法に従い、試料の結晶形を検出するために配置した。異なる条件下で配置した試料をサンプルし、5日目及び10日目に検出し、検出結果を0日目の当初の検出結果と比較した。試験結果を表11に示す。
【表11】
【0136】
試験結果:
本発明の結晶形は優れた安定性を有し、薬剤を容易に製造することが可能である。
【0137】
試験例3:酵素活性のインビトロ(体外)試験
ADP-Glo アッセイ I
化合物の希釈:
試験化合物を3倍濃度勾配で希釈し、全10の濃度(10000nM~0.5nM)を
得た。
【0138】
試験方法:
本発明の試験化合物50nLを反応プレート(パーキンエルマー #6007299)に移し、3μLの酵素/基質混合物(0.33nM PI3Kα、ミリポア #14-602-K/166.5μM PIP2)を加えた;20分間のインキュベーション後、2μLのATP溶液(100μM)を加え、反応を開始した;室温で2時間反応の後、5μLのADP-Glo試薬を添加してキナーゼ反応を停止させ、続いて室温で60分間インキュベーションし、残存する未反応のATPを完全に消化させた;得られた溶液に10μLのキナーゼ検出試薬を加え、室温で40分間インキュベートし、蛍光をエンヴィジョン(Envision)にて読み取った。PIP2、ATP、ADP-Glo試薬、及びキナーゼアッセイ試薬は、全てADP-Gloキナーゼアッセイキット(プロメガ #V1792)からのものである。
【0139】
データ解析:
IC50を、標準4-パラメータフィッティング法(モデル205、XL-fit、iDBS)を用いて計算した。
【0140】
mTORキナーゼにおける本発明の試験化合物の活性を、下記試験方法で試験した。
反応バッファー:20mM Hepes(pH7.5)、10mM MgCl2、2mM
MnCl2、1mM EGTA、0.02% Brij35、0.02mg/mL BSA、0.1mM Na3VO4、2mM DTT、2% DMSO。
反応酵素:昆虫細胞中で発現させた、N-末端GSTタグ(アミノ酸1360-2549、分子量=163.9kDa)を有するヒト化組み換えmTOR断片。
反応基質:バクテリア中で発現させた、N-末端Hisタグ(分子量=13.6kDa)を有するヒト化組み換え完全長4EBP1
反応条件:3μM 4EBP1 及び 10μM ATP
反応手順:
1.反応基質及び他の反応因子を新たに調製した反応バッファーに加えた。
2.キナーゼを基質反応物に加え、穏やかに混合した。
3.100%DMSOに溶解した化合物を、Acousticテクノロジー(Echo550;nanoliter rang(ナノリッターレンジ))を用いてキナーゼ反応溶液に移し入れ、室温で20分間インキュベートした。
4.適切な濃度の32P-ATPを反応系に添加した。
5.室温で2時間インキュベートした。
6.キナーゼ活性をP81フィルター結合法で検出した。
【0141】
【0142】
結論:化合物1はPI3K(p110α)に対して有意な阻害効果を有するが、mTORにおけるその阻害効果は弱い。
【0143】
ADP-Glo アッセイ II
試験手順:
1)化合物をラブサイト(Labcyte)社のEchoを用いて希釈し、化合物50nLをアッセイプレートに移し、速度1000rpmで10秒間遠心分離した。
2)キナーゼ/脂質基質混合溶液及びキナーゼ反応バッファー/脂質基質混合溶液を調製した;キナーゼ/脂質基質混合溶液をアッセイプレートの3-24カラムに1ウェルあたり3μLずつ加えた;キナーゼ反応バッファー/脂質基質混合溶液をアッセイプレートのカラム1-2に1ウェルあたり3μLずつ加えた;プレートを速度1000rpmで10秒間遠心分離した。
3)ATP溶液を調製し、アッセイプレートに1ウェルあたり2μLずつ加えた;プレートを速度1000rpmで10秒間遠心分離し、プレートシェイカーの第2ギアモードで1分間振盪及び混合し、さらに、速度1000rpmで10秒間遠心分離し、そして23℃で120分間インキュベートした。
4)ADP-Glo(登録商標)試薬を調製し、アッセイプレートに1ウェルあたり5μLずつ加えた;プレートを速度1000rpmで10秒間遠心分離し、プレートシェイカーの第2ギアモードで1分間振盪及び混合し、さらに速度1000rpmで10秒間遠心分離し、そして23℃で60分間インキュベートした。
5)キナーゼ検出試薬を調製し、アッセイプレートに1ウェルあたり10μLずつ加えた;プレートを速度1000rpmで10秒間遠心分離し、プレートシェイカーの第2ギアモードで1分間振盪及び混合し、さらに速度1000rpmで10秒間遠心分離し、そして23℃で30分間インキュベートした;その後、マルチマーカー検出エンヴィジョン(Envision)で読み取った。
データ解析:
IDBS社のXlfit5(Formula205)によりIC50結果を解析した。
【0144】
陽性コントロール薬として化合物BKM-120を用い、対応する試験及び分析を、上記に示す試験手順を適用して実施した。
【0145】
試験結果:
PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδ、及びPI3Kγ活性における化合物1のIC50阻害値は、それぞれ、0.6±0.2nM、9.9±2.7nM、0.5±0.1nM、及び7.0±0.9nM(N=2)であった。対して、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδ、及びPI3Kγ活性における陽性コントロール薬物BKM120(PI3K阻害物質、ブパルリシブ)のIC50阻害値は、それぞれ、24.7±4.7nM、241.6±50.6nM、68.8±25.0nM、及び111.9±15.2nMであった。
【0146】
結論:
化合物1は、PI3Kの4つ全てのサブタイプに対してとても高い阻害活性を示した。
【0147】
試験例4:細胞活性のインビトロ(体外)試験
試験工程及び方法:
1)MCF-7細胞を密度2.5×104細胞/ウェルで96-ウェルプレートに播種した(使用した培地は、10%FBSを含む完全培地でなければならない)。
2)次の日、各ウェルの培地を取り出した。特定濃度(予備スクリーニング)の又は濃度群(IC50試験)の試験化合物を、血清を含まない培地に溶解し、96ウェルプレートに添加して、2時間細胞培養した。
3)血清を含まない培地にインスリンを溶解し、培養細胞に加え、30分間インキュベートし、最終インスリン濃度を10mg/mLとした。
4)反応の待ち時間中に、溶菌(lysis)溶液を下記手順にて調製した:
a)予めエンハンサー溶液を冷蔵庫から取り出して溶解させた。
b)エンハンサー溶液を5×溶菌バッファーで10倍に希釈し、濃縮溶菌溶液を得た。
c)濃縮溶菌溶液を、再蒸留水で5倍に希釈し、溶菌溶液を得た。
5)各ウェル中の培地を完全に除去し、各ウェルをPBSですばやく1回リンスした。
6)新たに調製した溶菌溶液150μLを各ウェルに加え、室温で10分間振盪した。
7)全ての細胞が分離したことを確認した後、細胞残屑を含む溶菌溶液を1.5mLチューブに移した。
8)チューブを数回ボルテックスし、溶菌溶液及び細胞を完全に混合し、その後混合物を4℃で12000gにて10分間、遠心分離した。
9)必要となるELISA-one マイクロ-ウェルプレートのストリップ数を計算した。必要のないストリップをフレームから取り出し、貯蔵バックに入れ密封した。マイクロ-ウェルプレートのストリップを使用する前に、200μLの再蒸留水で各ウェルをリンスし、防腐剤を除去した。
10)50μLの抗体混合物を各ウェルに加えた(抗体混合物溶液は、medium抗体試薬と酵素標識化抗体試薬を等量で混合したものである。抗体混合物の調製にはボルテックスを必要としない。)。
11)25μLの細胞溶解物を、ELISA-one マイクロ-ウェルプレートの各ウェルに加えた。マイクロ-ウェルプレートを接着性シーリングフィルムで覆い、室温にて1時間、マイクロ-ウェルプレート振動装置でインキュベートした。
12)各ウェルを150μLの1×リンスバッファーで3回リンスした。最後のリンスの後、ウェル中のリンスバッファーを完全に除去した。必要に応じて、1×リンスバッファーを最大30分間マイクロ-ウェルプレートに滞留させて、その間に基質混合物溶液を調製することができた。
13)基質混合物溶液を夫々の使用の直前に調製し、100μLの基質混合物溶液を各ウェルに加え、マイクロ-ウェルプレートをスズ箔でシールし、マイクロ-ウェルプレート振動装置にて室温で10分間インキュベートした。
14)10μLの停止溶液を各ウェルに加え、マイクロ-ウェルプレート振動装置でわずかに(5-10秒)混合した。
15)対応するELISA-Oneフィルター群を組み立て、蛍光シグナル強度を読み取るために使用した。
【0148】
【0149】
試験例5:インビボ(体内)有効性試験
本研究は、試験薬物が、ヒト大腸癌CO-04-0032動物モデル及び胃癌ST-02-0013動物モデルにおいて、インビボ有効性を有するかどうかを調べるために行った。試験における動物飼料、飼料成分、実験的観察、実験的指標(指数)、実験終了、並びにデータ解析は下記の通りである:
【0150】
動物飼料:
動物は到着後、実験の開始前に、実験環境で3-7日間飼育せねばならない。動物を、SPFグレードの動物収容施設のIVC(独立換気システム)ケージ(1ケージあたり5匹)に収容した。全てのケージ、パッディング、及び飲料水は、使用前に滅菌する必要があり、滅菌記録は附属書に示される。動物収容施設の全ての研究室職員は、手術の際に、
保護服とラテックス手袋を着用せねばならない。各ケージの情報カードは、ケージ内の動物数、性別、種族、到着日、投与計画、実験番号、グループ、及び実験の開始日を示す必要がある。ケージ、飼料、及び飲料水を、1週間に2回交換した。採餌環境及び光条件は以下の通りである:
温度:20~26℃
湿度:40~70%
明暗サイクル:光あり12時間、光なし12時間
【0151】
試料成分:
飼料は、実験動物の食物識別基準に適合している。汚染物質の最大含量は、制御可能な範囲内であり、製造者は定期的な検査の責任を負う。オートクレーブした飲料水を飲料水として使用した。
【0152】
動物群:
動物の体重を測定し、投与の前に腫瘍体積を測定した。動物は腫瘍体積に従いランダムにグループ分けした(ランダムブロックデザイン)。
【0153】
観察:
実験プロトコル及びそれらの任意の変形を、上海、WuXi AppTecの動物ケア及び使用委員会(IACUC)の承認を得て実施した。実験動物の使用及び福祉は、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の規則に従った。動物の健康及び死亡を毎日監視し、日常的な検査では、動物の日々の行動及びパフォーマンス、例えば、食料及び水分摂取量、体重変化(1週間に2回の体重測定)、外観、又はその他の異常な状況に対する、腫瘍の成長及び薬物の治療に対する影響を観察することが含まれる。動物の死亡及び副作用は、各グループの動物数に基づいて記録され、相関記録が付録に示される。
【0154】
実験的指標(指数):
実験的指標は、腫瘍の成長が抑制されるか、遅延されるか、又は治癒されるかどうかを調べるために用いた。腫瘍径を週に2回、ノギスで測定した。腫瘍体積を下記式により算出した:V=0.5a×b2、式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径及び短径を表す。化合物の腫瘍成長抑制(TGI)を、T-C(日)及びT/C(%)で評価した。T-C(日)は、腫瘍成長遅延指数を反映し、ここでTは投与群における所定の腫瘍体積(例えば1,000mm3)に達するのに必要な平均日数を表し、Cはコントロール群で同じ腫瘍体積に達するのに必要な平均日数を表す。T/C(%)パーセンテージ値は、腫瘍成長抑制率を反映し、T及びCは、夫々投与群及びコントロール群の特定日における腫瘍重量(腫瘍体積)を表す。
【0155】
腫瘍成長抑制率は、下記式により算出される:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100、式中、Tiは特定日の投与群の平均腫瘍体積を表し、T0は投与開始時の投与群の平均腫瘍体積を表す;Viは特定日(Tiと同じ日)のビヒクルコントロール群の平均腫瘍体積を表し、V0は投与開始時のビヒクルコントロール群の平均腫瘍体積を表す。実験の最後に、腫瘍体積を測定し、T/Cパーセンテージを算出し、ここでT及びCは、それぞれ、投与群とビヒクルコントロール群の腫瘍体積を表す。
【0156】
実験終結:
動物の健康状態が悪化し続けるか、あるいは、動物が2,000mm3以上の腫瘍体積、あるいは、重篤な病気又は痛みを有した場合、動物は安楽死させねばならない。以下の症状が現れた場合、獣医師に通告され、動物を安楽死させる:
明らかにやせて、20%超の体重減少;
食べ物や水に自由にアクセスできない;
コントロール群の平均腫瘍体積が2,000mm3に達した場合、この場合には試験は終結させるべきである。
動物が下記の臨床兆候を示し、悪化し続ける:
・立毛
・弓背(アーチバック)
・青白い耳、鼻、目あるいは足
・慌ただしい呼吸
・発作
・持続性の下痢
・脱水症
・緩慢な動作
・発声
【0157】
データ解析:
3以上の群の比較に、一元配置分散分析(One-way ANOVA)を用いた。F値に有意差がある場合、ANOVA解析後に複数の比較を行う必要がある。全てのデータをSPSS 17.0を用いて解析した。p<0.05は有意差を示す。
【0158】
ヒト結腸癌CO-04-0032細胞の皮下異種移植片腫瘍モデルにおける試験薬物のインビボ薬力学研究:
試験設計:
ヒト腫瘍移植モデルの確立:
ヒト結腸癌CO-04-0032モデルは、もともと手術で除去された腫瘍検体(サンプル)に由来する。サンプルの取得と利用は、患者からのインフォームドコンセントを含む、国家、病院及び企業の倫理法及び規則を厳守した。モデルの確立プロセスは社内のSOPを厳密に遵守した。継代世代の命名規則は以下の通りである:ヌードマウスへの腫瘍サンプルの接種後の腫瘍をP0世代に指定し、継続する継代をP1世代などと指定した;そして、再生サンプルをFPと指定した。この実験に使用された腫瘍組織はFP4世代であった。
動物:
BALB/cヌードマウス、メス、6-8週齢、体重18-20g、上海Sippr-BKラボラトリーアニマル社より供給。
腫瘍接種:
体積約30mm3のCO-04-0032腫瘍塊を、各マウスの右背中に皮下接種した;平均腫瘍体積が約100乃至200mm3に到達したとき、マウスを群に分け、各群に薬物を投与した。
試験結果:
本発明の化合物1(その結晶形XIを含む)の投与の15日から30日まで、腫瘍体積はほとんど増大しなかった;陽性コントロール薬剤BKM120と比べて、本発明の化合物1(その結晶形XIを含む)は、結腸癌に対してより優れた抗腫瘍活性を有する。
【0159】
ヒト胃癌ST-02-0013の皮下異種移植片腫瘍モデルにおける試験薬物のインビボ薬力学研究:
試験設計:
ヒト腫瘍移植モデルの確立:
ST-02-0013のPDX(患者腫瘍組織移植)モデルは、もともと手術で除去された臨床検体(サンプル)に由来し、これをヌードマウスに埋め込み、P0世代と指定した。マウスの世代から世代への連続的な移植による腫瘍に関して、P0腫瘍の移植からの次世代をP1世代などと指定した。FP2腫瘍は、FP3腫瘍を得るために復元された。FP3腫瘍を継代してFP4腫瘍を得、これをこの研究に使用した。
動物:
BALB/cヌードマウス、メス、6-8週齢、体重18-22g、上海Ling Chang Biotechnology社より供給。
腫瘍接種:
体積約30mm3のST-02-0013 FP4腫瘍組織を、各マウスの右背中に皮下接種した;平均腫瘍体積が約150乃至200mm3に到達したとき、マウスを群に分け、各群に薬物を投与した。
試験結果:
本発明の化合物1(その結晶形XIを含む)の投与の15日から30日まで、腫瘍体積はほとんど増大しなかった;陽性コントロール薬剤BKM120と比べて、本発明の化合物1(その結晶形XIを含む)は、胃癌に対してより優れた抗腫瘍活性を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0160】
【文献】グリーン及びウッツ(有機合成における保護基、ワイリー・アンド・サンズ、1991)