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特許7037486医薬としてのヒト由来免疫抑制タンパク質およびペプチドの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】医薬としてのヒト由来免疫抑制タンパク質およびペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/48 20060101AFI20220309BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20220309BHJP
   C12N 15/81 20060101ALI20220309BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220309BHJP
   C07K 14/15 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220309BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220309BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220309BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C12N15/48 ZNA
C12N15/70 Z
C12N15/81 Z
C12N15/86 Z
C07K14/15
A61P37/06
A61P37/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P29/00
A61P31/04
A61P11/06
A61P37/08
A61K38/10
A61K38/08
A61K38/16
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K39/39
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018536331
(86)(22)【出願日】2016-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 DK2016050316
(87)【国際公開番号】W WO2017054831
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】PA201570620
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201670634
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】518111162
【氏名又は名称】エイムヴィオン・アクティエセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】AimVion A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】マウダリーナ・ヤニーナ・ラスカ
(72)【発明者】
【氏名】アン・マルグレーテ・トロルボー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ステンゴー-ペデルセン
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴィン・バーラミ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/106073(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/119484(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/087748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LSILLNEE(配列番号26)、LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)、LQNRRGLGLSILLNEECGPGPGP(配列番号19)、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)から選択されるペプチド配列からなるポリペプチド。
【請求項2】
グリコシル化されている、および/またはアシル化されている、請求項に記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のペプチドの二量体、三量体または多量体。
【請求項4】
請求項1~2のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項に記載の二量体、三量体または多量体を含み、少なくとも1つの希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~2のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項6】
抑制免疫療法における使用のための、請求項1~2のいずれかに記載のポリペプチド、または請求項3に記載の二量体、三量体または多量体、または請求項に記載の医薬組成物、または請求項に記載の単離された酸。
【請求項7】
使用が、
1)自己免疫疾患または関節炎、または
2)炎症症状または炎症に関連する障害、または
3)敗血症、または
4)乾癬、または
5)喘息および/またはアレルギー
の処置、改善または予防のためである、請求項に記載のポリペプチド、または二量体、三量体または多量体、または医薬組成物、または単離された核酸。
【請求項8】
使用が、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、脊椎関節炎、または多発性硬化症(MS)、または急性もしくは慢性炎症または炎症性腸疾患の処置、改善または予防のためである、請求項に記載のポリペプチド、または二量体、三量体または多量体、または医薬組成物、または単離された核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト内在性レトロウイルスに関連するタンパク質およびそのようなタンパク質に由来するペプチドならび治療への応用のためのそれらの使用に関する。詳細には、本発明は、ヒト内在性レトロウイルスに関する免疫調節活性および免疫抑制ドメイン(ISD)、ならびに免疫調節のためのおよび炎症の軽減のためのそれらの使用に関する。さらに、本発明は、自己免疫疾患および炎症性腸疾患の処置のための多機能薬物のクラスに関する。加えて、本発明は、内在性レトロウイルスに由来する免疫調節性タンパク質およびペプチド(タンパク質およびペプチドを本明細書では以降、一般にポリペプチドと呼ぶ)を含む医薬組成物に関する。
【0002】
加えて、本発明は、そのようなポリペプチドとカップリングしている材料、表面および/または粒子に関する。本発明は、さらに、前記タンパク質、ペプチドおよび医薬組成物を生成する方法、ならびにそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0003】
レトロウイルスは、RNAゲノムを含有することを特徴とするウイルス群であり、感染すると該RNAゲノムがDNAコピーに逆転写され、その後、それが宿主細胞に組み込まれる。この結果として、そのような感染細胞のすべての子孫は、ウイルスゲノムを含有することになる(プロウイルスと呼ばれる)。すべてのレトロウイルスは、以下の3つの遺伝子/コード配列を含む:gag、これは、ウイルスの構造タンパク質を含有する;pol、これは、逆転写酵素をはじめとする酵素を含有する;および最後に、nev、これは、宿主細胞へのウイルス侵入、および多くのレトロウイルスにより明示される免疫抑制活性に主に関与する、ウイルス表面糖タンパク質をコードする。本発明は、env遺伝子、およびそのタンパク質産物であるENVタンパク質、その誘導体、これに由来するペプチド、ならびにこれらの化合物または実体(entities)のいずれかの使用に、主に関する。
【0004】
ヒト内在性レトロウイルス(HERV)は、ヒトのゲノム内に恒久的に固定されている古代レトロウイルス組込み物である。HERVエレメントの大部分は、蓄積された非常に多くの突然変異および欠失を有するが、HERVの大部分のウイルス成分に関して機能性タンパク質の存在が実証されており、そのような機能性タンパク質にはウイルスプロテアーゼおよびエンベロープ表面タンパク質が含まれる(Schmitt, Reichrath, Roesch, Meese, & Mayer, 2013;Tonjes et al., 1996; Willer et al., 1997)。一部の機能性HERVエンベロープオープンリーディングフレーム(ORF)を維持するようにおよびそれらの発現を特定の組織に限定するように進化により明らかに加えられる選択圧は、HERV由来のタンパク質が有意な生理的可能性を示すように発達した可能性があることを示唆する。例えば、HERV由来のエンベロープ糖タンパク質は、胎盤組織において豊富に発現され(Boyd, Bax, Bax, Bloxam, & Weiss, 1993)、その下にある細胞栄養芽層細胞層を融合することにより合胞体栄養細胞分化に関与することが提唱されている(Venables, Brookes, Griffiths, Weiss, & Boyd, 1995)。
【0005】
レトロウイルス感染症は、一般に、有意な免疫抑制を引き起こし得る。特に、一部のヒト内在性レトロウイルスは免疫抑制活性を示し、例えば、免疫正常マウスに移植された腫瘍細胞の免疫依存性排除を、エンベロープ発現ベクターによるこれらの腫瘍細胞への形質導入後、弱めることができる(Mangeney & Heidmann, 1998)。
【0006】
HERV-Hファミリーは、ヒト内在性レトロウイルスの中で最も存在量の多い群の1つであり、一倍体ゲノム当りのエレメント数は、おおよそ1000である。HERV-Hプロウイルスの大部分は、それらの有意なオープンリーディングフレーム活性を失わせる欠失および/または突然変異を含む。しかし、小サブセットは実質的に無傷であり、完全長gag、polおよびenvドメインを有する。おおよそ100のHERV-H由来エンベロープ遺伝子の中で、HERV-H Env59(本明細書では移行「Env59」と呼ぶ)を含む3つのみが、免疫抑制ドメイン(本明細書では以降ISUドメインまたは単にISDとも呼ぶ)を包含する大きいタンパク質をコードする能力を有する。ISDまたはISU配列に関する以前の知識は、主として、外在性マウスガンマレトロウイルスに由来する。この場合、ISU配列は、エンベロープタンパク質のC末端付近に位置する。
【0007】
免疫抑制ドメインはウイルス糖タンパク質の小セグメントを構成し、レトロウイルスによる免疫抑制の主要メディエーターである。レトロウイルスエンベロープタンパク質が有意な免疫抑制活性を有することは周知である。ガンマレトロウイルスの場合、この活性は、いくつかの種のレトロウイルス(ネズミ、ネコおよびヒトレトロウイルスを含み、ヒトレトロウイルスにはヒトT細胞白血病ウイルスが含まれる)間で保存されるレトロウイルス膜貫通(TM)タンパク質内の明確に定義された構造(いわゆるISD)にある。
【0008】
自己免疫および自己免疫疾患
自己免疫は、生物の、それ自体の健常細胞および組織に対する、免疫応答システムである。低レベルの自己免疫は身体維持(body maintaneance)に役立つが、高レベルの自己免疫は疾患の原因になり得る。そのような異常免疫応答の結果として生じるあらゆる疾患が自己免疫疾患と呼ばれる。自己免疫疾患には、多種多様な異なる作用がある。しかし、以下の3つの特徴的な病理学的作用のうちの1つの発生により、疾患は自己免疫疾患と定義される:組織の損傷もしくは破壊、臓器成長変化または臓器機能変化。
【0009】
自己免疫によって引き起こされる疾病は80種より多くあり、西欧諸国人口のおおよそ2~5%が自己免疫疾患の患者である。したがって、前記集団の実質的少数派がこれらの疾患に罹患しており、これらの疾患は多くの場合、慢性、消耗性、および致死性である。女性は、男性より多く罹患するように見受けられ、自己免疫疾患は、米国の65歳以下の全年齢群における女性間の主な死亡原因の1つと推定される。環境事象が、身体の組織を損傷させ得る放射線またはある一定の薬物への曝露などの、自己免疫疾患の一部の原因を誘発することもある。感染が、一部の自己免疫疾患、例えば、抗ヒストン抗体の産生増加を引き起こす特発性障害のより軽度の型と考えられるループスの誘因になることもある。
【0010】
自己免疫疾患の処置は、典型的には、免疫応答を減少させる免疫抑制剤治療を含む。新規処置は、サイトカイン遮断(サイトカインシグナル伝達経路の治療的阻害)、エフェクターT細胞およびB細胞の除去(例えば、抗CD20療法は、煽動するB細胞の除去に有効であり得る)ならびに静脈内免疫グロブリンを含み、前記静脈内免疫グロブリンは、一部の抗体媒介自己免疫疾患の処置にも役立っている。
【0011】
多数の自己免疫疾患が認知されている。ゲノムワイド関連スキャンにより、自己免疫疾患の根底にある病態生理への新たな洞察を得ることができるようになった。一例として、この技術によって、自己免疫疾患間での顕著な遺伝子共有度が同定されている。
【0012】
関節炎
関節炎は、1つまたは複数の関節の炎症を伴う関節障害の1形態である。
【0013】
100を超える異なる形態の関節炎がある。最もよく見られる形態である変形性関節症(変性関節疾患)は、関節の外傷、関節の炎症、または加齢の結果である。他の関節炎形態は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および関連自己免疫疾患である。敗血症性関節炎は、関節感染によって引き起こされる。
【0014】
関節炎の共通因子は、関節痛である。疼痛は多くの場合持続性であり、罹患している関節に局在し得る。関節炎からの疼痛は、関節周囲で起こる炎症、疾患からの関節の損傷、日常的な関節の摩耗および裂傷、こわばった、痛みがある関節に対する強引な運動によって引き起こされる筋挫傷、ならびに疲労に起因する。
【0015】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、主として関節を冒す長期間持続性の自己免疫疾患である。RAは、熱をもった、腫脹した、および痛みがある関節を概してもたらす。疼痛およびこわばりは、休息後に悪化することが多い。最も一般的には、手首および手が冒され、典型的に、身体の両側の同じ関節が冒される。身体の他の部分もこの疾患に冒されることがある。これは、低赤血球数、肺周囲の炎症、および心臓周囲の炎症をもたらすことがある。発熱および活力低下が存在することもある。多くの場合、症状は、数週間から数ヶ月かけて徐々に出てくる。
【0016】
関節リウマチの原因は明らかでないが、遺伝的因子と環境因子の組合せに関わると考えられている。根底にある機序は、関節を攻撃する身体の免疫系に関わる。これが、関節包の炎症および肥厚をもたらす。それは、下にある骨および軟骨も冒す。診断は、主として、人物の身体的兆候および症状に基づいて下されるが、X線および臨床検査により同様の症状を有する他の疾患の診断または除外が裏付けられることもある。同様に症状が見つかることがある他の疾患としては、とりわけ、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎および線維筋痛症が挙げられる。
【0017】
処置の目標は、疼痛および炎症を減少させること、ならびに人の機能全般を向上させることである。これは、休息と運動のバランスを取ること、副木および固定具の使用、または補助器具の使用により補うことができる。症状に効くように鎮痛薬、ステロイド、およびNSAIDが使用されることが多い。疾患修飾性抗リウマチ薬(DNARD)と呼ばれる医薬群が、疾患の進行の緩徐化を試みるために使用されることもある。それらには、医薬ヒドロキシクロロキンおよびメトトレキサートが含まれる。生物学的DMARDは、疾患が他の処置に応答しない場合に使用され得る。しかし、それらは、より高い有害事象率を有し得る。関節を修復するための、置換するための、または癒着させるための外科手術は、ある一定の状況では役立ち得る。大部分の代替医療処置は、証拠によって裏付けられていない。
【0018】
先進国では成人の0.5~1%がRA患者であり、100,000人当り5~50人が毎年新たにこの症状を発症する。発症は、中年期が最も高頻度であり、女性は男性の2.5倍、罹患頻度が高い。2013年には、その結果としての死亡が、1990年における28,000件から増加して38,000件になった。関節リウマチという用語は、水が溜まっている、炎症している関節についてのギリシャ語に基づく。
【0019】
関節リウマチにおける(またあるいは他の炎症性関節炎における)炎症性滑膜炎は、炎症誘発性サイトカイン(pro-inflammatory cytokines)の過剰生産に伴う、または自然の抗炎症機序の不備からの、サイトカインネットワークの不均衡の結果であるように見える。RAの場合、いくつかのサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)-1、IL-6、IL-8、IL-12、IL-17、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターフェロン-γ(IFN-γ)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が、関節の炎症および破壊のほぼすべての態様に関与する。
【0020】
インターロイキン6(IL-6)は、関節リウマチ(RA)の病態生理において極めて重要な役割を果す。IL-6は、RA患者の滑液および血清において豊富に見出され、そのレベルは、疾患活動性および関節破壊と相関する。IL-6は、好中球遊走、破骨細胞成熟および血管内皮増殖因子(VEGF)刺激パンヌス増殖を刺激することにより、滑膜炎および関節破壊を促進し得る。IL-6はまた、急性期反応[C反応性タンパク質(CRP)を含む]、ヘプシジン(hecipidin)産生による貧血、視床下部・下垂体・副腎(HPA)軸(hypothalamic-pituitary-adrenal (HPA) axis)による疲労、および破骨細胞に対するその作用からの骨粗鬆症の誘発を含む、RAの全身症状発現の多くを媒介し得る。加えて、IL-6は、B細胞成熟およびTH-17分化による自己免疫過程の誘導および維持の一因になり得る。上記のすべてにより、IL-6遮断は、RA処置の望ましい治療選択肢である。動物実験成功後、ヒト化抗インターロイキン-6受容体(抗IL-6R)モノクローナル抗体であるトシリズマブ(TCZ)は治験に入り、RAに関するいくつかの大規模第III相治験において、疾患活動性の迅速かつ持続的改善、X線写真の関節損傷の低減および身体機能の向上があり、有効な処置であることが証明されている(Srirangan & Choy, 2010)。
【0021】
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)は、B細胞活性亢進、T細胞異常活性化、ならびにアポトーシス細胞および免疫複合体の排除の欠如を特徴とする、全身自己免疫の慢性炎症性疾患である。病因は、まだはっきりとは分からないが、SLEの際の無数の自然および適応免疫系異常がこの疾患の主要原因として確認されている。
【0022】
IL-6とループスの進行との関連性がSLEのいくつかのマウスモデルについて発表されている。加えて、いくつかの研究からのデータは、IL-6が、B細胞活性亢進およびヒトSLEの免疫病理において重要な役割を果すこと、ならびに組織損傷の媒介に直接関与し得ることを示唆している。すべての研究ではないが一部の研究において、ループス患者には疾患活動性または抗DNA(抗核抗体)レベルと相関する血清IL-6レベル上昇があった(Peterson, Robertson, & Emlen, 1996)。SLEの発病におけるIL-6の重要な役割を裏付ける最も説得力がある証拠が、NZB/WFマウスにおけるIL-6受容体遮断の有益効果およびIL-6の憎悪作用によって示された(Mihara, Takagi, Takeda, & Ohsugi, 1998)。
【0023】
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)は、結腸および小腸の一連の炎症症状である。クローン病および潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の主要な型である。クローン病は、小腸および大腸を冒すばかりでなく、口、食道、胃および肛門も冒すことがあるが、潰瘍性大腸炎は、主として結腸および直腸を冒すことに留意することが重要である。
【0024】
サイトカインは、腸免疫系の調節において中心的役割を果す。サイトカインは、リンパ球(特に、Th1およびTh2表現型のT細胞)、単球、腸マクロファージ、顆粒球、上皮細胞、内皮細胞ならびに線維芽細胞によって産生される。サイトカインは、炎症誘発機能[インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、IL-6、IL-8、IL-12]または抗炎症機能[インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IL-4、IL-10、IL-11、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFベータ)]を有する。多くの炎症誘発性および抗炎症性サイトカインの粘膜および全身濃度は、炎症性腸疾患(IBD)の際に上昇する。炎症誘発性サイトカインと抗炎症性サイトカインとの不均衡が、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩質炎、および炎症性大腸炎(andinfectious colitis)の患者の炎症した粘膜におけるIL-1/IL-1ra比について見出された。さらに、炎症誘発性サイトカインの阻害および抗炎症性サイトカインの補充(upplementations)は、動物モデル、例えば、デキストラン硫酸大腸炎(DSS)モデル、トリニトロベンゼン硫酸(TNBS)モデル、またはIL-10ノックアウトマウスの遺伝子改変モデルにおいて炎症を軽減した。これらの発見に基づき、サイトカイン処置の理論的根拠が定義された。TNFアルファに対する中和モノクローナル抗体(cA2)または抗炎症性サイトカインIL-10を使用する最初の治験は、有望な結果を示した。しかし、多くの疑問に答えなければならず、サイトカインをIBDの標準治療と見なすことができるのはその後である(Rogler & Andus, 1998)。
【0025】
潰瘍性大腸炎およびクローン病は、GI管の慢性炎症性障害である。これらの障害は、通常、臨床的および病理学的基準に基づいて区別することができるが、自然な経過および治療への応答の点で類似性がある。
【0026】
炎症誘発性サイトカインIL-6が、IBDの主な特徴である無制御の腸炎症過程に極めて重要な役割を果すという証拠は、増え続けている。腸マクロファージおよびCD4+T細胞によるIL-6およびその可溶性受容体(sIL-6R)の産生増加がある。CD4+T細胞の膜上でgp130と相互作用(トランスシグナル伝達)するIL-6-sIL-6R複合体の形成増加は、STAT3の発現および核移行増加につながり、これに起因してBcl-xlなどの抗アポトーシス遺伝子が誘導される。これは、固有層T細胞のアポトーシスに対する抵抗性増強につながる。その後のT細胞発現は、慢性腸炎症の永続化の一因となる。IL-6依存性炎症カスケードの主な病因的役割に関するこの理解は、この疾患の処置の新たな治療戦略の開発につながり得る。
【0027】
敗血症
敗血症は、感染により誘発される全身炎症症状(全身性炎症反応症候群またはSIRSと呼ばれる)を特徴とする、死に至る可能性がある医学的症状である。身体は、微生物に対する免疫系によるこの炎症反応を血液、尿、肺、皮膚または他の組織において発現し得る。敗血症(sepsis)の一般用語は、血液中毒であり、これは敗血症(septicaemia)を記述するためにも使用される。重症敗血症は、全身性炎症反応、感染、および臓器機能不全の存在である。
【0028】
重症敗血症は、集中治療室において静脈内輸液および抗生物質で通常は処置される。補液が血圧を維持するのに十分でなかった場合、特定の昇圧薬が使用され得る。人工呼吸器および透析が、それぞれ肺および腎臓の機能を支援するために必要とされることもある。治療を誘導するために、中心静脈カテーテルおよび動脈カテーテルが留置されることもあり、他の血行動態変数[例えば、心拍出量、混合静脈血酸素飽和度、または1回拍出量(stroke volume)変化]の測定が用いられることもある。敗血症患者には深部静脈血栓症、ストレス潰瘍および褥瘡の予防対策が必要であるが、他の条件によりこれが予防される場合はその限りでない。一部の患者は、インスリンでの(ストレス性高血糖を対象とする)血糖値の厳格な管理による恩恵を受けることもあるだろう。コルチコステロイド(低用量または別様)の使用は、議論の余地がある。活性型ドロトレコギンアルファ(組換えプロテインC)は役立つことが見出されず、最近販売が中止された。
【0029】
誘発する感染症に関係する症状に加えて、敗血症は、全身の至る所に存在する急性炎症の存在を特徴とし、したがって、発熱および白血球数増加(白血球増多症)または低い白血球数(白血球減少症)および平均より低い体温、ならびに嘔吐を伴うことが多い。敗血症の最新の概念は、感染に対する宿主の免疫応答が、血液動態の帰結および臓器の損傷をもたらす、敗血症の殆どの症状の原因であるというものである。この宿主応答は、全身性炎症反応症候群(SIRS)と名付けられ、心拍数上昇(90より上の毎分拍動数)、高い呼吸数(20より上の毎分呼吸数または32未満の血中二酸化炭素分圧)、異常な白血球数[12,000超、4,000未満、または桿状核球(band form)10%超]、および体温上昇または低下、すなわち、36℃(96.8°F)より低いまたは38℃(100.4°F)より高い体温を特徴とする。
【0030】
この免疫学的応答は、急性期タンパク質の広範な活性化を引き起こし、これは補体系および凝固経路に影響を与え、次いでそれらが脈管構造の損傷はもちろん臓器の損傷も引き起こす。次いで、様々な神経内分泌対抗制御系も活性化され、その結果、問題が複雑になることが多い。即座にかつ積極的に処置したとしても、これは多臓器機能不全症候群、そして最終的に死に進行し得る。
【0031】
炎症誘発性サイトカインは、敗血症により引き起こされる合併症の主な原因である。
【0032】
1つの研究では、重症患者の(ofcritically ill patients)レジスチン、活性PAI-1、MCP-1、IL-1アルファ、IL-6、IL-8、IL-10、およびTNF-アルファの血漿レベルは、60名の健常供血者と比較して有意に高かった。このことから、これらのサイトカインは免疫抑制ペプチドによるダウンレギュレーションの標的となっている(Hillenbrand et al., 2010)。
【0033】
第2の研究では、前向き観察研究が、重症敗血症の重症患者の大多数における3つの主要炎症誘発性サイトカインとしての腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1βおよびIL-6の予測的役割を決定するために使用された。
【0034】
3つの測定されたサイトカインの中で、TNF-αおよびIL-6の一連のレベルは、生存者と非生存者の間で有意差を示すことが見出された。IL-6には、この研究期間中、アウトカムおよびスコア化システムと良好な相関関係があった。この研究の結果は、IL-6が、重症敗血症患者の死亡率予測および臨床評価に有用なサイトカインであることを示唆している(Hamishehkar et al., 2010)。
【0035】
自己免疫疾患には、以下のものも含まれる:急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome)、抗シンセターゼ抗体症候群(Antisynthetase syndrome)、動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロ病/バロ同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎(Cutaneous leukocytoclasticangiitis)、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、汎発性皮膚全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板エリテマトーデス、湿疹、子宮内膜症、腱付着物炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasiaossificansprogressiva)、線維化性肺胞炎(Fibrosingalveolitis)、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、肝炎、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症細胞脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis)、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合型結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(Neuromyelitisoptica)、神経性筋強直症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、眼瘢痕性類天疱瘡(Occularcicatricial pemphigoid)、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、回帰性リウマチ、PANDAS[小児自己免疫性溶連菌関連神性経精神障害(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcus)]、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎(Polyarteritisnodosa)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、じん麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】原文に記載なし。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の発明者らは、IL-6およびTNF-αなどの炎症誘発性サイトカインを本発明のペプチドおよびタンパク質により抑制または活性化することができることを証明することができた。本発明のペプチドおよびタンパク質は、自己免疫疾患に関連する症状の予防もしくは処置のための活性成分、または免疫療法のための、例えば、ワクチンアジュバントとして使用されるときの活性成分を提供することができる。
【0038】
ある態様によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62%、より好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも87%、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含むポリペプチドに関する。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも70%の配列同一性または相同性を有するペプチド配列を含むポリペプチド、ならびにその誘導体、その断片、その複合体;単量体、二量体、三量体、多量体、らせん構造および球状構造の形態の、その任意の三次構造;ならびに架橋体;ならびに物理化学的形態および特性ならびにバイオアベイラビリティを増加させるような、その任意の化学修飾体に関する。
【0040】
本発明のポリペプチドは、例えば、単一ペプチド鎖、凝集体、複合体および/もしくはナノ粒子の形態であってもよく、またそれらの一部であってもよい。
【0041】
ある態様によれば、本発明は、本発明によるポリペプチドを含むタンパク質に関する。
【0042】
ある態様によれば、本発明は、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質をコードする、単離された核酸に関する。
【0043】
ある態様によれば、本発明は、本発明の核酸および該核酸の発現に必要なエレメントを含む発現ベクターに関する。
【0044】
ある態様によれば、本発明は、本発明による核酸および/または本発明による発現ベクターを含む組換え細胞に関する。
【0045】
ある態様によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を含み、少なくとも1つの希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【0046】
ある態様によれば、本発明は、医薬組成物の調製のための方法であって、
a.本発明による1つまたは複数のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を用意し、所望により、前記1つまたは複数のポリペプチドを架橋させる工程;
b.所望により、希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤を用意する工程;
c.物質を用意する工程;
d.用意した1つまたは複数のペプチドを、所望による工程b.の任意の担体および工程d.の物質と混合して、医薬組成物を得る工程
を含む方法に関する。
【0047】
ある態様によれば、本発明は、本発明に従って得ることができる医薬組成物に関する。
【0048】
ある態様によれば、本発明は、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物を含む、生体材料に関する。
【0049】
ある態様によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物または生体材料の医学的使用に関する。
【0050】
ある態様によれば、本発明は、抗炎症薬または免疫抑制もしくは免疫調節用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0051】
ある態様によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することにより、自己免疫疾患および/または炎症症状を予防的にまたは治療的に処置する方法に関する。
【0052】
ある態様によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することにより、がんまたは他の疾患を処置するための免疫療法の方法に関する。
【0053】
ある態様によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することによって前記ワクチンまたは免疫原の免疫原性を増加させるために併用するための、ワクチンまたは他の免疫原と併用するためのアジュバントに関する。
【0054】
ある態様によれば、本発明は、活性成分を含む医薬組成物であって、前記活性成分が、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも70%の配列同一性もしくは相同性を有するペプチド配列、またはその誘導体、その断片;ならびにそれが由来したHERV-H Env59タンパク質、それらの誘導体、それらの断片、それらの複合体;単量体、二量体、三量体、多量体、らせん構造および球状構造の形態の、それらの任意の三次構造;架橋体;ならびに化合物の物理的および/または化学的形態、特性ならびにバイオアベイラビリティを増加させるそれらの任意の化学修飾体を含む、医薬組成物に関する。
【0055】
ある態様によれば、本発明は、活性成分がペプチド配列を含み、および/またはその化学的誘導体であり、および/または単量体もしくは二量体としてのものを含む、より大きなポリペプチドもしくはタンパク質の一部であるか、または全体としてもしくは部分的に、球状もしくはらせん構造などの三次構造の一部であり、前記三次構造が、らせん構造、ベータシート、三重らせん構造を、いずれも全体的にもしくは部分的に含む、単量体、二量体、三量体、多量体を含むものである、医薬組成物に関する。
【0056】
ある態様によれば、本発明は、活性成分またはペプチドが、凝集体、複合体またはナノ粒子の一部である、医薬組成物に関する。
【0057】
ある態様によれば、本発明は、注射、局所、経皮または経口適用のための医薬組成物に関する。
【0058】
ある態様によれば、本発明は、がんまたは他の疾患の免疫療法処置のための医薬組成物に関する。
【0059】
ある態様によれば、本発明は、ワクチン接種における使用のための医薬組成物に関する。
【0060】
ある態様によれば、本発明は、自己免疫疾患の処置または予防のための医薬組成物に関する。
【0061】
ある態様によれば、本発明は、炎症症状の処置または予防のための医薬組成物に関する。
【0062】
ある態様によれば、本発明は、自己免疫疾患の処置または予防のための医薬組成物でああって、前記自己免疫疾患がSLE、または関節リウマチを含む関節炎である、医薬組成物に関する。
【0063】
ある態様によれば、本発明は、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)からなる群の中から選択されるペプチド配列および/またはその誘導体を含む、医薬組成物に関する。
【0064】
ある態様によれば、本発明は、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択されるペプチド配列を含む、上記のポリペプチドに関する。
【0065】
ある態様によれば、本発明は、配列番号1~配列番号1043の中から選択される配列またはその断片に結合している配列LSILLNEE(配列番号26)を含有するポリペプチドに関する。前記結合は、両方のペプチド断片における任意の化学的部分間のN末端、C末端ペプチド結合または任意の他の化学的共有および/もしくは非共有結合であり得る。
【0066】
ある態様によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも70%の配列同一性または相同性を有するペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0067】
ある態様によれば、本発明は、本発明のペプチドのいずれかをコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0068】
ある態様によれば、本発明は、微生物に基づく発現系、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、麻疹ウイルス、またはサルモネラ菌、大腸菌(E.coli)または酵母に基づくベクターを用いる、上記の発現ベクターに関する。
【0069】
ある態様によれば、本発明は、本発明の任意の発現ベクターを含む医薬組成物に関する。
【0070】
ある態様によれば、本発明は、本発明の医薬組成物の予防または治療有効量を1つまたは複数の投与経路によりそれを必要とする対象に投与する、自己免疫疾患および/または炎症症状を予防的にまたは治療的に処置する方法に関する。
【0071】
ある態様によれば、本発明は、本発明のポリペプチドを含有する生体材料、例えば、表面、粒子、メッシュ、デバイス、チューブなどに関する。ポリペプチドは、生体材料に化学的に結合していることもあり、またはそれと、例えばその内部で、物理的に会合していることもある。
【0072】
さらに別の態様では、本発明は、HERV-H DNAの発現レベルを測定することによるSLEの診断に関する。発現レベルは、平均コピー数によって、または平均RNAによって表されることがある。
【0073】
さらに別の態様では、本発明は、ENV-59DNAおよび/またはRNAの発現レベルを測定することによるSLEの診断に関する。
【0074】
さらに別の態様では、本発明は、RNAに全体的にまたは部分的に転写され、ある症状を有する人において前記症状を有さない人物と比較して低い転写レベルまたは高い転写レベルのどちらかを有するヒト内在性レトロウイルスの、前記症状の処置または診断のための使用に関する。
【0075】
さらに別の態様では、本発明は、RNAに全体的にまたは部分的に転写され、自己免疫症状を有する人物において前記症状を有さない人物と比較して低い転写レベルまたは高い転写レベルのどちらかを有するヒト内在性レトロウイルスの、前記自己免疫症状の処置または診断のための使用に関する。
【0076】
さらに別の態様では、本発明は、RNAに全体的にまたは部分的に転写され、ある症状を有する人物において前記症状を有さない人物と比較して低い転写レベルまたは高い転写レベルのどちらかを有する、ヒトHERV-Hの、前記症状または疾患の診断のための処置のための(for treatment for diagnosis)使用に関する。
【0077】
さらに別の態様では、本発明は、前記症状または疾患の診断のための、HERV-H59由来DNA、RNAまたはタンパク質の使用に関する。ENV59ペプチド配列を配列番号1044として提供し、ENV59DNA配列を配列番号1045として提供し、HERV-H59完全プロウイルス配列を配列番号1046として提供する。
【0078】
ある態様によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62.5%、より好ましくは75%、より好ましくは87.5%、より好ましくは少なくとも100%の配列同一性を有するペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0079】
ある態様によれば、本発明は、LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有する1つまたは複数のペプチド配列を含む、上記のポリペプチドに関する。
【0080】
ある態様によれば、本発明は、配列番号1~41の中から選択される配列と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有するペプチド配列を含む、上記いずれかのポリペプチドに関する。
【0081】
ある態様によれば、本発明は、LSILLNEE(配列番号26)、LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択される配列と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有するポリペプチドの中から選択される、上記のポリペプチドに関する。
【0082】
ある態様によれば、本発明は、LSILLNEE(配列番号26)、LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択される、請求項1に記載のポリペプチドに関する。
【0083】
ある態様によれば、本発明は、上記いずれかのポリペプチドを含むポリペプチド実体であって、250未満のアミノ酸(aminoacids)、好ましくは200未満のアミノ酸、より好ましくは175未満のアミノ酸、好ましくは150未満のアミノ酸、より好ましくは125未満のアミノ酸、好ましくは100未満のアミノ酸、より好ましくは75未満のアミノ酸、好ましくは60未満のアミノ酸、より好ましくは50未満のアミノ酸、好ましくは40未満のアミノ酸、より好ましくは35未満のアミノ酸、好ましくは30未満のアミノ酸、より好ましくは25未満のアミノ酸、好ましくは20未満のアミノ酸、より好ましくは19未満のアミノ酸、好ましくは18未満のアミノ酸、より好ましくは17未満のアミノ酸、好ましくは16未満のアミノ酸、より好ましくは15未満のアミノ酸、好ましくは14未満のアミノ酸、より好ましくは13未満のアミノ酸、好ましくは12未満のアミノ酸、より好ましくは11未満のアミノ酸、好ましくは10未満のアミノ酸、より好ましくは9未満のアミノ酸、好ましくは8未満のアミノ酸、より好ましくは7未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸を含むポリペプチド実体に関する。
【0084】
ある態様によれば、本発明は、上記いずれかのポリペプチドを含むポリペプチド実体であって、少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、より好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、より好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも35、より好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも125、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも175、より好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも250のアミノ酸を含むポリペプチド実体に関する。
【0085】
ある態様によれば、本発明は、17アミノ酸の長さを有するポリペプチドであって、最初の7つのアミノ酸の配列が、配列番号26~1027の配列の中から選択される配列の最初の7つのアミノ酸の配列と同一であり、少なくとも10のアミノ酸が、GLSILLNEEC(配列番号25)である、ポリペプチドに関する。
【0086】
ある態様によれば、本発明は、1、2、3または4つの点突然変異を含む、上記のポリペプチドに関する。
【0087】
ある態様によれば、本発明は、グリコシル化される、上記いずれかのポリペプチドに関する。
【0088】
ある態様によれば、本発明は、アシル化される、上記いずれかのポリペプチドに関する。
【0089】
ある態様によれば、本発明は、単量体である、上記いずれかのポリペプチドに関する。
【0090】
ある態様によれば、本発明は、二量体化または三量体化されている、上記いずれかのポリペプチドに関する。
【0091】
ある態様によれば、本発明は、上記いずれかのポリペプチドを含むタンパク質であって、250未満のアミノ酸、好ましくは200未満のアミノ酸、より好ましくは175未満のアミノ酸、好ましくは150未満のアミノ酸、より好ましくは125未満のアミノ酸、好ましくは100未満のアミノ酸、より好ましくは75未満のアミノ酸、好ましくは60未満のアミノ酸、より好ましくは50未満のアミノ酸、好ましくは40未満のアミノ酸、より好ましくは35未満のアミノ酸、好ましくは30未満のアミノ酸、より好ましくは25未満のアミノ酸、好ましくは20未満のアミノ酸、より好ましくは19未満のアミノ酸、好ましくは18未満のアミノ酸、より好ましくは17未満のアミノ酸、好ましくは16未満のアミノ酸、より好ましくは15未満のアミノ酸、好ましくは14未満のアミノ酸、より好ましくは13未満のアミノ酸、好ましくは12未満のアミノ酸、より好ましくは11未満のアミノ酸、好ましくは10未満のアミノ酸、より好ましくは9未満のアミノ酸、好ましくは8未満のアミノ酸、より好ましくは7未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸を含むタンパク質に関する。
【0092】
ある態様によれば、本発明は、上記いずれかのタンパク質もしくはポリペプチド、または上記いずれかのポリペプチドを含むタンパク質に関し、前記タンパク質またはポリペプチドは、少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、より好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、より好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも35、より好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも125、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも175、より好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも250のアミノ酸を含む。
【0093】
ある態様によれば、本発明は上記いずれかのポリペプチドを含むタンパク質であって、融合活性(fusion active)がないタンパク質に関する。
【0094】
ある態様によれば、本発明は、哺乳動物細胞系または動物モデルにおけるIL-6発現を阻害する、上記いずれかのポリペプチドまたはタンパク質に関する。
【0095】
ある態様によれば、本発明は、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする、単離された核酸に関する。
【0096】
ある態様によれば、本発明は、上記の核酸および該核酸の発現に必要なエレメントを含む発現ベクターに関する。
【0097】
ある態様によれば、本発明は、真核生物または原核生物またはウイルス発現ベクターである、上記の発現ベクターに関する。
【0098】
ある態様によれば、本発明は、酵母、大腸菌(e-coli)およびバキュロからなる群の中から選択される、上記発現ベクターに関する。
【0099】
ある態様によれば、本発明は、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸または発現ベクターを含み、少なくとも1つの希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【0100】
ある態様によれば、本発明は、前記少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞が、前記医薬品の活性成分または唯一の活性成分である、請求項のいずれかに記載の医薬組成物に関する。
【0101】
ある態様によれば、本発明は、医薬組成物の調製のための方法であって、
a.前記請求項のいずれかに記載の1つまたは複数のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を用意し、所望により、前記1つまたは複数のポリペプチドを架橋させる工程;
b.所望により、希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤を用意する工程;
c.物質を用意する工程;
d.用意した1つまたは複数のペプチドを、所望による工程b.の任意の担体および工程d.の物質と混合して、医薬組成物を得る工程
を含む方法に関する。
【0102】
ある態様によれば、本発明は、工程c.の前記物質が、クリーム、ローション、軟膏(ointment)、ゲル、香膏(balm)、半固形軟膏(salve)、油、フォームおよびシャンプーからなる群から選択される、上記の方法に関する。
【0103】
ある態様によれば、本発明は、上記のようにして得ることができる医薬組成物に関する。
【0104】
ある態様によれば、本発明は、クリーム、ローション、懸濁性ローション(shake loation)、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォーム、シャンプー、スプレー剤、エアロゾル、経皮パッチおよび絆創膏からなる群の中から選択される、上記いずれかの医薬組成物に関する。
【0105】
ある態様によれば、本発明は、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の医学的使用に関する。
【0106】
ある態様によれば、本発明は、免疫抑制または免疫調節のための、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0107】
ある態様によれば、本発明は、疾患の外科手術、予防、治療、診断方法、処置および/または改善における使用のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0108】
ある態様によれば、本発明は、自己免疫疾患の処置、改善または予防のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0109】
ある態様によれば、本発明は、自己免疫疾患が、SLE(全身性エリテマトーデス)、または関節炎、例えば関節リウマチ、脊椎関節炎、または多発性硬化症(MS)である、上記のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0110】
ある態様によれば、本発明は、炎症症状、または急性もしくは慢性炎症などの炎症に関連する障害の処置、改善または予防のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0111】
ある態様によれば、本発明は、医薬としての使用のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0112】
ある態様によれば、本発明は、敗血症の予防または処置を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0113】
ある態様によれば、本発明は、脊椎関節炎の予防または処置を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0114】
ある態様によれば、本発明は、喘息および/またはアレルギーの予防または処置を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0115】
ある態様によれば、本発明は、例えばワクチン中のアジュバントに入れて用いるための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物に関する。
【0116】
ある態様によれば、本発明は、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することにより、自己免疫疾患および/または炎症症状を予防的にまたは治療的に処置する方法に関する。
【0117】
ある態様によれば、本発明は、注射、吸入、局所、経皮、経口、経鼻、膣または肛門デリバリーの中から選択される投与経路による症状または疾患の予防または処置のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0118】
ある態様によれば、本発明は、注射の方式が、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)および(筋肉内)IMの中から選択される、上記の使用に関する。
【0119】
ある態様によれば、本発明は、炎症などの障害の患部への直接注射による疾患の処置のための、上記の使用に関する。
【0120】
ある態様によれば、本発明は、関節炎の処置のための、前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、組成物が炎症部位に直接注射される、使用に関する。
【0121】
本発明は、とりわけ、自己免疫疾患へのHERV遺伝子の関与および自己免疫疾患における免疫学的応答に対するそれらの影響の研究結果である。SLE患者において、HERV-H Env59 mRNAの発現がIL-6およびTLR7発現のレベルと負に相関すること(それぞれ、p=0.0065、p=0.02)を見出した。HERV-H Env59は、機能性膜糖タンパク質をコードし、レンチウイルスベクター系とともに感染性シュードタイプビリオンを作ることを実証した。さらに、公知のISDと比較して特有の配列またはISD様配列(a unique sequence compared to known ISDs og ISD like sequences)を有する、ENV-59におけるISDを同定した。
【0122】
このENV-59ISDは、ヒトに特有であるようである(1つの点突然変異を有する類似のISDがチンパンジーにおいても見出され、他の霊長類にも存在する可能性があるが)。
【0123】
Env59ISUドメインに由来するペプチド、GLSILLNEEC(配列番号25)は、インビトロ(in vitro)、エクスビボ(ex vivo)およびインビボ(in vivo)両方において有意な免疫制御活性を有する。驚くべきことに、ウイルス由来免疫抑制ペプチドは、他にも作用はあるが、IL-6の産生を阻害し、これは、SLE患者におけるIL-6発現レベルとENV59発現レベル間に見られる負の相関を確証する。これは、さらに、内在性エンベロープタンパク質が、ヒト免疫系において極めて重要な役割を果すことに適応したものであり、自己免疫疾患を抑制する上で有利な機能を有することを示唆する。
【0124】
インビボで、ISDペプチドは、妥当性が確認されており、かつ認知されている2つの動物モデル、すなわち、坂口(Sakaguchi)マウスモデルおよびコラーゲン誘発関節炎-マウスモデル、つまりCIA-マウスモデルにおいて誘発された関節炎の症状を強く軽減することができる。これは、ISDペプチドがヒトにおいて抗関節リウマチ(anti-Rhuematoid-Arthrtitis)活性を有する可能性を強く示唆する。
【0125】
ある実施形態によれば、本発明は、ペプチド配列LSILLNEE(配列番号26)、またはその誘導体、その断片、ならびにそれが由来したHERV-H Env59タンパク質、それらの誘導体、それらの断片;それらの複合体;単量体、二量体、三量体、多量体、ヘリックス構造および球状構造の形態の、それらの任意の三次構造;架橋体;ならびに本発明の化合物の、または各々別々にもしくは任意の組合せで本発明のポリペプチドもしくはペプチドの物理的および/または化学的形態、特性ならびにバイオアベイラビリティを増加させる、それらの任意の化学修飾体に関する。加えて、本発明は、上記ペプチドおよびタンパク質のそれを必要とする患者への適用に適した任意の医薬製剤にも関する。
【0126】
ある実施形態によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含むポリペプチドに関する。
【0127】
ある実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されている。
【0128】
ある実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、アシル化されている。
【0129】
ある実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、二量体化または三量体化されている。
【0130】
ポリペプチドは、配列から、例えば、1、2または3つの点欠失、点挿入および/または点突然変異によって得ることができる。点突然変異は、単一のアミノ酸の変化についてここでは用いられ、点挿入は、単一のアミノ酸の挿入であり、点欠失は、単一のアミノ酸の除去である。
【0131】
本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも70%の配列同一性または相同性を有するペプチド配列を含むポリペプチド、ならびにその誘導体、その断片、その複合体;単量体、二量体、三量体、多量体、らせん構造および球状構造の形態の、その任意の三次構造;ならびに架橋体;ならびに物理化学的形態および特性ならびにバイオアベイラビリティを増加させるような、その任意の化学修飾体にも関する。
【0132】
本発明のポリペプチドは、例えば、単一ペプチド鎖、凝集体、複合体および/もしくはナノ粒子の形態であってもよく、またはそれらの一部であってもよい。
【0133】
ある実施形態によれば、本発明は、配列番号1~配列番号1043の中から選択される配列またはその断片に結合している配列LSILLNEE(配列番号26)を含むポリペプチドに関する。
【0134】
前記結合は、両方のペプチド断片における任意の化学的部分間のN末端、C末端ペプチド結合または任意の他の化学的共有および/もしくは非共有結合であり得る。
【0135】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択されるペプチド配列を含むかまたはからなる。
【0136】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、配列:LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むかまたはからなる。
【0137】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むかまたはからなる。
【0138】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、配列番号1~41の中から選択される配列と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むかまたはからなる。
【0139】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、250未満のアミノ酸、好ましくは200未満のアミノ酸、より好ましくは175未満のアミノ酸、好ましくは150未満のアミノ酸、より好ましくは125未満のアミノ酸、好ましくは100未満のアミノ酸、より好ましくは75未満のアミノ酸、好ましくは60未満のアミノ酸、より好ましくは50未満のアミノ酸、好ましくは40未満のアミノ酸、より好ましくは35未満のアミノ酸、好ましくは30未満のアミノ酸、より好ましくは25未満のアミノ酸、好ましくは20未満のアミノ酸、より好ましくは19未満のアミノ酸、好ましくは18未満のアミノ酸、より好ましくは17未満のアミノ酸、好ましくは16未満のアミノ酸、より好ましくは15未満のアミノ酸、好ましくは14未満のアミノ酸、より好ましくは13未満のアミノ酸、好ましくは12未満のアミノ酸、より好ましくは11未満のアミノ酸、好ましくは10未満のアミノ酸、より好ましくは9未満のアミノ酸、好ましくは8未満のアミノ酸、より好ましくは7未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸を含む。
【0140】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、より好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、より好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも35、より好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも125、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも175、より好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも250のアミノ酸を含む。
【0141】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは17アミノ酸の長さを有し、最初の7つのアミノ酸の配列が配列番号42~1043の配列の中から選択される配列の最初の7つのアミノ酸の配列と同一であり、少なくとも10のアミノ酸がGLSILLNEEC(配列番号25)である。
【0142】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、1、2、3または4つの点突然変異を有する。
【0143】
ある実施形態によれば、ポリペプチドは、免疫抑制ドメインであるか、または免疫抑制ドメインとして作用する。そのようなポリペプチドは、免疫抑制ペプチドと呼ばれることもある。ある実施形態によれば、免疫抑制ドメインは、本発明によるポリペプチドから少なくとも1つの点突然変異、欠失または挿入によって得ることができる。ある実施形態によれば、点突然変異、欠失または挿入の総数は、1、2、3および4の中から選択される。ある実施形態によれば、点突然変異、欠失または挿入の総数は、4より多い。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、単量体ペプチドである。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドと架橋されており、および/またはタンパク質に連結されており、前記タンパク質は、少なくとも1つのさらなる免疫抑制ドメインに連結されている。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、二量体を形成するように少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドに連結されている。ある実施形態によれば、二量体は、同種のものであり、ジスルフィド結合によりN末端とN末端、C末端とC末端および/またはタンデムリピートが架橋されている少なくとも2つの免疫抑制ペプチドを含む。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、同種二量体または異種二量体を形成するように少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドに連結されている。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、多量体または重合体を形成するように少なくとも2つのさらなる免疫抑制ペプチドに連結されている。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、1つまたは複数の修飾を含む。ある実施形態によれば、修飾は、化学的誘導体化、L-アミノ酸置換、D-アミノ酸置換、合成アミノ酸置換、脱アミノ化および脱カルボキシル化からなる群から選択される。ある実施形態によれば、ポリペプチドは、前記少なくとも1つの修飾を含まないペプチドまたはタンパク質と比較して増加したタンパク質分解抵抗性を有する。
【0144】
特定の実施形態では、免疫抑制ペプチドの活性成分の長さは、35アミノ酸、または34、または33、または32、または31、または30、または29、または28、または27、または26、または25、または24、または23、または22、または21、または20、または19、または18、または17、または16、または15、または14、または13、または12、または11、または10、または9、または8、または、または7、または6、または5、または4、または3アミノ酸長である。したがって、本発明の免疫抑制ペプチドは、あらゆる公知ISDに対応する長さおよびアミノ酸配列を有する。本発明の免疫抑制ペプチドの特別な特徴は、該ポリペプチドがそれらのN末端またはC末端のどちらかに追加のシステイン(CysまたはC)残基を含有し得ることである。特定の実施形態において、システイン残基は、ペプチドのC末端に位置する。このシステイン残基の存在および機能は、主として、2つ以上のポリペプチドを互いに架橋させるためのものであり、この架橋は、本明細書において以下で説明するように、ジスルフィド結合によることが好ましい。しかし、追加のシステインの機能は、架橋以外の機能であってもよい。したがって、本発明の免疫抑制ペプチドは、配列番号1~1043のいずれかに対応するアミノ酸配列を有することができ、前記免疫抑制ペプチドは、該ペプチドのN末端またはC末端のどちらかに追加のシステイン[CysまたはC(Cys og C)]残基をさらに含有する。
【0145】
ある実施形態によれば、さらなるアミノ酸または分子を免疫抑制ペプチドに付加または連結させて、該免疫抑制ペプチド(immusuppressive peptide)の溶解性を向上させることができる。
【0146】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明によるポリペプチドを含むタンパク質に関する。
【0147】
ある実施形態によれば、タンパク質は、エンベロープタンパク質である。
【0148】
ある実施形態によれば、タンパク質は、機能性膜糖タンパク質でない。
【0149】
ある実施形態によれば、タンパク質は、融合活性がない。「融合活性がない」という表現は、タンパク質が2つの生体膜の融合を媒介することができないことを意味する。
【0150】
ある実施形態によれば、タンパク質は、膜と結合あるいは連結していない。
【0151】
ある実施形態によれば、タンパク質は、膜内在性タンパク質でない。
【0152】
ある実施形態によれば、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質は、哺乳動物細胞系または動物モデルにおけるIL-6発現を阻害する。
【0153】
ある実施形態によれば、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質は、哺乳動物細胞系または動物モデルにおけるIL-6発現を誘導する。
【0154】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質をコードする、単離された核酸に関する。
【0155】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明の核酸および該核酸の発現に必要なエレメントを含む発現ベクターに関する。
【0156】
ある実施形態によれば、本発明は、真核生物または原核生物またはウイルス発現ベクターである、発現ベクターに関する。
【0157】
ある実施形態によれば、本発明は、配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62%の配列同一性または相同性を有するペプチドをコードする(encoding for)核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0158】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明によるポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0159】
発現ベクターは、微生物、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、麻疹ウイルス、サルモネラ菌に基づくベクター、大腸菌(E coli)ベクター、酵母に基づき得る。
【0160】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明による核酸および/または本発明による発現ベクターを含む組換え細胞に関する。
【0161】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を含み、少なくとも1つの希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【0162】
投与形態、製剤および投与計画
本発明の化合物を含む薬学的に有用な組成物は、公知の方法に従って、例えば、薬学的に許容される担体および/またはさらなる活性化合物の混合により、製剤化することができる。そのような担体および製剤化方法の例は、Remington's Pharmaceutical Sciencesにおいて見出すことができる。有効な投与に適した薬学的に許容される組成物を形成するために、そのような組成物は、本発明の化合物の有効量を含有することになる。そのような組成物は、本発明の1つより多くの化合物を含有することもある。
【0163】
本発明の医薬組成物または化合物は、治療有効量で個体に投与される。有効量は、個体の状態、体重、性別および年齢などの様々な因子によって変わり得る。他の因子としては、投与の方式が挙げられる。一般に、組成物は、約1μg~約100mg、特に、約10μg~約10mgの範囲の投薬量で投与されることになる。
【0164】
医薬組成物は、様々な経路により、具体的には、例えば、皮下経路により、局所経路により、経口経路により、粘膜経路により、静脈内経路により、非経口的に、および筋肉内経路により、個体に投与することができる。
【0165】
そのような製剤は、一般に安全であり、毒性副作用を有さず、有効な経路により投与することができ、安定しており、医薬担体と適合性である。
【0166】
本発明の医薬製剤および化合物は、カプセル剤、懸濁液、エリキシル剤または溶液などの剤形で使用することができる。
【0167】
本発明の医薬製剤および化合物を単回投与で投与してもよく、または複数回投与で投与してもよい。
【0168】
本発明の組成物または塩を未加工の化学物質として投与することは可能であるが、それらを医薬製剤の形態で提供するほうが好ましい。したがって、本発明は、本発明の実体またはその薬学的に許容される塩およびそれらのための薬学的に許容される担体を含む、医療用途の医薬製剤をさらに提供する。
【0169】
本組成物の薬学的に許容される塩もまた、それらを調製することができる場合、本発明によって包含されることを意図したものである。
【0170】
ある実施形態によれば、本発明は、前記少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞が前記医薬品の活性成分または唯一の活性成分である医薬組成物に関する。
【0171】
本発明の医薬組成物は、活性成分としてペプチド配列および/またはその化学的誘導体を含むことがあり、前記配列またはその誘導体は、例えば単量体、二量体として、より大きいポリペプチドもしくはタンパク質の一部であることもあり、または全体として、もしくは部分的に、球状もしくはらせん構造などの三次構造の一部をであることもあり、前記三次構造は、単量体、二量体、三量体、多量体としてのものを含み、らせん構造、ベータシート、三重らせん構造を、いずれも全体的にまたは部分的に含むものである。
【0172】
本発明の医薬組成物は、凝集体、複合体またはナノ粒子の一部であるペプチドを、活性成分として含むこともある。
【0173】
ある実施形態によれば、本発明は、医薬組成物の調製のための方法であって、
a.本発明による1つまたは複数のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を用意し、所望により、前記1つまたは複数のポリペプチドを架橋させる工程;
b.所望により、希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤を用意する工程;
c.物質を用意する工程;
d.用意した1つまたは複数のペプチドを、所望による工程b.の任意の担体および工程d.の物質と混合して、医薬組成物を得る工程
を含む方法に関する。
【0174】
ある実施形態によれば、本発明は、工程c.の前記物質が、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォームおよびシャンプーからなる群から選択される方法に関する。
【0175】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明の方法に従って得ることができる医薬組成物に関する。
【0176】
ある実施形態によれば、本発明は、クリーム、ローション、懸濁性ローション、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォーム、シャンプー、スプレー剤、エアロゾル、経皮パッチおよび絆創膏からなる群の中から選択される医薬組成物に関する。
【0177】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物を含む、生体材料に関する。
【0178】
ある実施形態によれば、本発明は、表面、粒子、メッシュ、デバイス、チューブまたはインプラントの中から選択される生体材料に関する。
【0179】
ポリペプチドは、生体材料に化学的に結合していることもあり、またはそれと、例えばその内部で、物理的に会合していることもある。
【0180】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物または生体材料の医学的使用に関する。
【0181】
ある実施形態によれば、本発明は、免疫抑制または免疫調節のための、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0182】
ある実施形態によれば、本発明は、疾患の外科手術、予防、治療、診断方法、処置および/または改善における使用のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0183】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患の処置、改善または予防のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0184】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患が、SLE(全身性エリテマトーデス)、または関節炎、例えば関節リウマチである、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0185】
ある実施形態によれば、本発明は、炎症症状、または急性もしくは慢性炎症などの炎症に関連する障害の処置、改善または予防のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0186】
ある実施形態によれば、本発明は、医薬としての使用のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0187】
ある実施形態によれば、本発明は、対象がヒトまたは動物である、本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0188】
ある実施形態によれば、本発明は、臓器に対する使用のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0189】
ある実施形態によれば、本発明は、移植患者の準備または処置のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0190】
ある実施形態によれば、本発明は、以下から選択される症状の予防または処置を含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する:急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗シンセターゼ抗体症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロ病/バロ同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、汎発性皮膚全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板エリテマトーデス、湿疹、子宮内膜症、腱付着物炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、肝炎、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症細胞脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合型結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌関連神性経精神障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、じん麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症。
【0191】
ある実施形態によれば、本発明は、尋常性ざ瘡、アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アテローム動脈硬化症、自己免疫疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、血管炎、間質性膀胱炎、がん、うつ病、白血球増多症、および白血球欠損症の中から選択される障害の処置または予防のための、本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0192】
ある実施形態によれば、敗血症の予防または処置を含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0193】
ある実施形態によれば、本発明は、脊椎関節炎の予防または処置を含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0194】
ある実施形態によれば、本発明は、喘息および/またはアレルギーの予防または処置を含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0195】
ある実施形態によれば、本発明は、がんの予防または処置を含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0196】
ある実施形態によれば、ワクチンの免疫原性またはワクチンに使用されるものを含む任意の抗原の免疫原性を増強することを含む本発明による使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントに関する。
【0197】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善方法における使用のための、免疫抑制ドメインであるかまたは免疫抑制ドメインとして作用するポリペプチドであって、前記免疫抑制ドメインを発現する遺伝子配列が、前記自己免疫疾患に罹患している患者群において健常対照群と比較して発現増加または減少を示す、ポリペプチドに関する。ある実施形態によれば、本発明は、前記免疫抑制ドメインが、内在性レトロウイルス、好ましくは、ヒト内在性レトロウイルスからのものである、ポリペプチドに関する。ある実施形態によれば、本発明は、前記免疫抑制ドメインが、配列番号:番号1~1043(SEQ ID NO:NO:1-1043)の配列の中から選択される、ポリペプチドに関する。
【0198】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患のまたは該自己免疫疾患と関連する少なくとも1つの症状の予防または処置または改善のための、配列番号:番号1~1043の配列の中から選択されるポリペプチドの使用に関する。
【0199】
ある実施形態によれば、本発明は、抗炎症薬または免疫抑制もしくは免疫調節用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0200】
ある実施形態によれば、本発明は、移植患者の準備または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0201】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫または炎症性疾患の予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0202】
ある実施形態によれば、本発明は、以下から選択される症状の予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する:急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗シンセターゼ抗体症候群、動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロ病/バロ同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、汎発性皮膚全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板エリテマトーデス、湿疹、子宮内膜症、腱付着物炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、肝炎、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症細胞脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合型結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌関連神性経精神障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、じん麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症。
【0203】
ある実施形態によれば、本発明は、急性または慢性炎症などの、炎症または炎症に関連する症状の、予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0204】
ある実施形態によれば、本発明は、尋常性ざ瘡、アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アテローム動脈硬化症、自己免疫疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、血管炎、間質性膀胱炎、がん、うつ病、白血球増多症、および白血球欠損症の中から選択される症状の予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0205】
ある実施形態によれば、本発明は、敗血症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)および脊椎関節炎の中からの少なくとも症状選択(at least condition selection)の予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0206】
ある実施形態によれば、本発明は、喘息および/またはアレルギーの予防または処置用の医薬の製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0207】
ある実施形態によれば、本発明は、アジュバントの製造のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用に関する。
【0208】
ある実施形態によれば、本発明は、ナノ粒子および/または生体材料のコーティングのための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0209】
生体材料は、生物系と相互作用する任意の物質、表面、粒子または構築物である。生体材料は、自然に由来することもあり、または金属成分、セラミック、ポリマーまたは複合材料を利用する様々な化学的アプローチを使用して研究室で合成されることもある。一部の生体材料は、天然に存在する化合物の主として有機性のマトリックス内の無機結晶体からなる。
【0210】
生体材料は、医療用途に使用されるおよび/または適していることが多く、それ故、天然の機能を果す、増大させる、またはそれに取って代わる生体構造または医用デバイスの全部または一部を構成する。そのような機能は、心臓弁に使用されているような穏やかなものであることもあり、またはヒドロキシアパタイト被覆股関節インプラントなどの、より相互作用性の高い機能性を備えている生物活性のものであることもある。生体材料は、歯科用途、外科手術、およびドラッグデリバリー、例えば、ナノ粒子の形態でのドラッグデリバリーにも日々使用されている。医薬品を含浸させた構築物を体内に留置することができ、これにより、長期間にわたっての薬物の持続放出が可能になる。生体材料は、移植材料として使用される自家移植片、同種移植片または異種移植片であることもある。
【0211】
生体材料は、例えば、関節置換、骨プレート、骨セメント、人工靱帯および腱、歯固定用の歯科インプラント、人工血管、心臓弁、皮膚修復デバイス(人工組織)、人工内耳置換、コンタクトレンズ、乳房インプラントに使用される。
【0212】
ある実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのナノ粒子または生体材料への免疫応答の少なくとも部分的抑制のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0213】
ある実施形態によれば、本発明は、患者におけるナノ粒子および/または生体材料および/または医療デバイスおよび/またはインプラントのインビボ半減期を増加させるための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0214】
ある実施形態によれば、本発明は、疾患の診断のための内在性レトロウイルスの使用に関する。
【0215】
ある実施形態によれば、本発明は、発現レベルまたはコピー数が、ある症状を有する対象において該症状がない対象と比較して異なる内在性レトロウイルスの、疾患の診断のための使用に関する。
【0216】
ある実施形態によれば、本発明は、発現レベルまたはコピー数が、自己免疫症状を有する対象において該症状がない対象と比較して異なる内在性レトロウイルスの、疾患の診断のための使用に関する。
【0217】
ある実施形態によれば、本発明は、疾患の診断のための、HERV-H59に関連する一塩基多型の使用に関する。
【0218】
ある実施形態によれば、本発明は、SLEの診断のためのHERV-H59の使用に関する。
【0219】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することにより、自己免疫疾患および/または炎症症状を予防的にまたは治療的に処置する方法に関する。
【0220】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善の方法であって、
a.前記自己免疫疾患に罹患している患者群における少なくとも1つの内在性レトロウイルスの発現またはコピー数を測定すること;
b.前記発現を、健常対照群における前記少なくとも1つの内在性レトロウイルスの発現と比較すること;
c.前記患者群中で異なる発現を有する少なくとも1つの内在性レトロウイルスを同定すること;
d.所望により、前記少なくとも1つの内在性レトロウイルスにおける少なくとも1つの免疫抑制ドメインを同定すること;
e.少なくとも1つの免疫抑制ドメイン、好ましくは、前記少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含有するタンパク質および/または前記内在性レトロウイルスにより発現されたタンパク質に含有されている前記少なくとも1つの免疫抑制ドメインの投与により、前記症状に罹患している少なくとも1名の患者を処置すること
を含む方法に関する。
【0221】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善の方法であって、
f.前記自己免疫疾患に罹患している患者群における少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含む少なくとも1つのタンパク質またはポリペプチドの濃度を測定すること;
g.前記濃度を健常対照群における濃度と比較すること;
h.前記患者群中で異なる発現を有する少なくとも1つの免疫抑制ドメインを同定すること;
i.前記少なくとも1つの免疫抑制ドメイン、および/または前記少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含むタンパク質の投与により、前記症状に罹患している少なくとも1名の患者を処置すること
を含む方法に関する。
【0222】
ある実施形態によれば、本発明は、前記異なる発現が発現増加および減少の中から選択される方法に関する。
【0223】
ある実施形態によれば、本発明は、前記内在性レトロウイルスがヒト内在性レトロウイルスである方法に関する。
【0224】
ある実施形態によれば、本発明は、前記ヒト内在性レトロウイルスがHERV-HサブファミリーまたはHERV-Kサブファミリーに属する方法に関する。
【0225】
ある実施形態によれば、本発明は、前記内在性レトロウイルスが、タンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有する方法に関する。
【0226】
ある実施形態によれば、本発明は、前記少なくとも1つのオープンリーディングフレームが、少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも250、好ましくは少なくとも300、より好ましくは少なくとも350、好ましくは少なくとも400ヌクレオチドの長さを有する方法に関する。
【0227】
ある実施形態によれば、本発明は、注射、吸入、局所、経皮、経口、経鼻、膣または肛門デリバリーの中から選択される投与経路による症状または疾患の予防または処置のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0228】
ある実施形態によれば、本発明は、注射の方式が静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)および(筋肉内)IMの中から選択される、使用に関する。
【0229】
ある実施形態によれば、本発明は、炎症などの障害の患部への直接注射による疾患の処置のための、使用に関する。
【0230】
ある実施形態によれば、本発明は、皮膚疾患、乾癬、関節炎、喘息、敗血症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、SLE、および脊椎関節炎の中から選択される症状の処置のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用に関する。
【0231】
ある実施形態によれば、本発明は、関節炎の処置のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、組成物が炎症部位に直接注射される、使用に関する。
【0232】
ある実施形態によれば、本発明は、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、好ましくは組成物が経口送達される、胃腸過敏性疾患、食物アレルギー疾患、食物不耐性疾患および炎症性腸疾患の中から選択される症状の処置のための使用に関する。
【0233】
ある実施形態によれば、本発明は、関節炎の処置のための、本発明によるポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、組成物が吸入により送達される、使用に関する。
【0234】
本発明のある実施形態によれば、本発明の実体(ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物および/またはインプラント)を使用して、炎症ならびに/または炎症性および自己免疫疾患の作用を低減または改善することができる。
【0235】
本発明の実体は、例えば、リンパ球、単球、または免疫系の他の細胞上または内のタンパク質に結合することによりそれらの免疫調節活性を発揮することができる。そのようなタンパク質または受容体は、これらに限定されないが、Toll様受容体(TLR)、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、抗体、接着分子、輸送体(アミノ酸、無機イオン、有機イオンもしくは糖輸送体、膜貫通ポンプ、輸送体タンパク質、エスコートタンパク質、酸輸送タンパク質、陽イオン輸送タンパク質、または陰イオン輸送タンパク質を含むがこれらに限定されない)、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、リン酸チャネルを含むがこれらに限定されないイオンチャネルなどのチャネルタンパク質、ならびに任意の他の陽イオンまたは陰イオン輸送体を含む、いずれのタンパク質ファミリーに属していてもよい。特に、リンパ球および単球の活性化に関与するカルシウムおよびカルシウム活性化カリウムチャネルは、ISDペプチドの標的になり得る。
【0236】
本発明の実体はまた、細胞膜に変化を導入すること、例えば、膜の曲率を変化させることによってそれらの免疫調節活性を発揮することができ、または膜を透過性にして、もしくは不安定化して代謝物もしくは他の分子およびイオンを通過させることによって、細胞内のそのような分子の生物学的相対濃度を乱れさせること、もしくは膜を横断するそのような分子の勾配を遮断することができ、これは、細胞の正常な機能にとって重要であり得る。他の機序が存在することもある。
【0237】
坂口マウスモデルおよびコラーゲン誘発関節炎-マウスモデル、つまりCIA-マウスモデルであるモデル[ヒトにおけるISDペプチドの抗関節リウマチ(anti-RhuematoidArthritis)活性を予測する]ならびに本発明のペプチド、タンパク質および医薬製剤のインビボ検証:
SKGマウスは、T細胞介在慢性自己免疫性関節炎を自然発症する。これは、T細胞における重要なシグナル伝達分子である70kDaのζ会合タンパク質(ZAP-70)のSrcホモログ2(SH2)ドメインをコードする遺伝子の突然変異に起因する(Sakaguchi et al., Nature 2003)。この突然変異は、胸腺におけるT細胞の正および負の選択を害し、その結果、関節炎誘発性T細胞が胸腺で産生されることになる。臨床的には、関節腫脹が指の小関節で始まり、手首および足首をはじめとするより大きい関節に対称性に進行する。組織学的には、腫脹した関節は、隣接する軟骨および軟骨下骨に侵食および浸潤するパンヌスの形成を伴う、重度滑膜炎を示す。SKGマウスは、追加の関節外病変、例えば、間質性肺炎、血管炎、およびRAにおけるリウマドイド結節とよく似ている皮下類壊死性結節を発症する。血清学的には、それらは、II型コラーゲンに特異的な高力価のRFおよび自己抗体を発生させる。さらに、CD4T細胞は、BALB/c遺伝的バックグラウンドを有するSKGマウスにおける関節炎を、T細胞欠損BALB/cヌードまたはT細胞/B細胞欠損SCIDマウスに養子移入することができ、これは、前記疾患がT細胞介在自己免疫疾患であることを示す。原因遺伝子に加えて、MHC遺伝子の多型も、環境条件に依存してSKG関節炎の発生の一因となる。したがって、マウスにおけるこの自然発症自己免疫性関節炎は、関節および関節外病変の臨床的および組織学的特徴について、血清学的特徴について、ならびに関節炎の惹起におけるCD4T細胞の重要な役割について、ヒトRAと似ている(Sakaguchi et al Nature 2003)。
【0238】
サイトカインは、SKGマウスにおける自然発症CD4T細胞介在慢性自己免疫性関節炎において重要な役割を果す。畑(Hata)らによって行われた研究(J Clin Invest 2004)は、IL-6の遺伝的欠損が、血中リウマトイド因子の持続性に関係なく、SKGマウスにおける関節炎の発症を完全に抑制したことを示す。IL-1またはTNF-αのどちらかの欠損が関節炎の発症を遅らせ、その発生率および重症度を実質的に低下させた。その一方で、IL-10欠損は疾患を悪化させたが、IL-4欠損あるいはIFN-γ欠損は疾患の経過を変えなかった。関節炎SKGマウスの滑液は、大量のIL-6、TNF-αおよびIL-1を、罹患した関節におけるこれらのサイトカイン遺伝子の活性転写に従って含有した。注目すべきことに、免疫組織化学的検査により、滑膜細胞の別個のサブセットが炎症した滑膜において異なるサイトカインを産生し、表在性の滑膜表層細胞が主としてIL-1およびTNF-αを産生するのに対して、散在性の滑膜下細胞がIL-6を産生することが明らかになった。したがって、IL-6、IL-1、TNF-αおよびIL-10は、SKG関節炎の発症において別個の役割を果す。これらの結果は、各サイトカインのみならず、別個のサイトカインを分泌する各細胞集団も標的とすることが、関節リウマチの有効な処置であり得ることも示す(Hata et al. j.Clin Invest 2004)。
【0239】
本発明のある実施形態によれば、本発明の実体は、関節炎の坂口(SKG)マウスモデルにおいて炎症、特に関節の炎症の発症を抑制することができる。本発明によれば、本発明の実体は、そのような動物における関節炎スコアを低下させることができ、マンナン注射による炎症の誘発時のスコアが低下され、該スコアの少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、例えば、少なくとも40%、少なくとも45%、例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%低下がある。
【0240】
本発明の実体は、SKGマウスモデルによれば全身性炎症に罹患している動物における免疫応答を抑制することができる。本発明によれば、本発明の実体は、マンナンを追加投与した坂口マウスにおいてIL-6レベルを低下させることができ、マンナンを追加投与したマウスにおいてIL-6レベルが低下され、該IL-6レベルの少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、例えば、少なくとも40%、少なくとも45%、例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%低下がある。
【0241】
コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルは、関節リウマチの最もよく研究されている自己免疫疾患モデルである。自己免疫性関節炎は、このモデルでは、完全フロイントアジュバントとII型コラーゲン(CII)のエマルジョンでの免疫付与により誘発される。
【0242】
このモデルはいくつかの病理学的特徴をRAと共有し、II型コラーゲン(CII)は、RAの標的組織である軟骨における主要タンパク質である。加えて、軟骨タンパク質に基づく抗原定義モデルのCIAマウスモデルは、免疫付与と疾患症状発現との期間が最短である。CIAモデルは、疾患発症および進行における個々の細胞型の役割を含む、自己免疫の潜在的発病機序を同定するために、ならびに新たな治療法の設計および試験のために、広範に使用されてきた。近年、CIAモデルは、マクロファージおよびT細胞により産生されるサイトカインであって、RAの発病における主要炎症メディエーターであるサイトカインである腫瘍壊死因子-αを標的とするものなどの、生物学に基づく新たな治療法の試験および開発に役立っている。
【0243】
CIAは、マウスの遺伝的に感受性の高い系統において、完全フロイントアジュバント(CFA)に乳化されたCIIでの免疫付与により誘発される。その後の発病は、滑膜過形成、単核細胞浸潤、軟骨分解をはじめとするいくつかの病理学的特徴をRAと共有し、RA同様、感受性が特異的MHCクラスII遺伝子の発現に関連づけられる。このモデルとRAとの最も顕著な差は、リウマトイド因子がCIAには存在せず、CIAには性バイアスが殆どまたは全くないこと、および多少の再発性CIAマウスモデルが記載されているが一般にはこの実験的疾患が一相性であることである。CIIに対するT細胞およびB細胞免疫の存在がRAに関して報告されているが、これが、この疾患に関連する発病の原因因子であるのか、または結果であるのかは不明である。CIAモデルの元々の「ゴールド・スタンダード」は、DBA/1(H-2q)マウス系統であった。しかし、近年、RAに対する感受性に関連するHLA-DR1またはDR4クラスII遺伝子のトランスジェニック発現がレシピエントマウス系統においてCIAに対する感受性を付与するいくつかのHLA-DRマウスモデルが確立された。これらのデータは、RAに対する感受性に関連するDR分子がCIIへの免疫応答に少なくとも関与することを示す。
【0244】
CIAの免疫病原性は、CIIへのT細胞特異的応答とB細胞特異的応答の両方に関わる。CIAを媒介するCIIの免疫優性T細胞決定基が、この実験的疾患に対する感受性に関連するクラスII分子の大部分について同定されており、少数は、クラスII分子およびT細胞受容体とのそれらの相互作用について詳細に研究されている。同様に、CIIへの抗体応答の標的になるB細胞決定基も同定されており、RA患者からの抗体がCIAからのものと同じCII分子領域を標的とするという証拠が多少ある。病原性B細胞決定基の同定は、病原性抗体が三重らせん未変性CIIと結合することができなければならないという必要条件のせいでより困難になることが判明した。T細胞が主要発病機序である、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)などの他の自己免疫モデルとは異なり、CIAの発病は、軟骨と結合し、補体結合能力があるCII特異的抗体によって大部分が媒介される。まとめると、これらのデータは、研究者が、このモデルにおける広範な発病機序を研究すること、ならびに新規治療法を設計および試験することを可能にした(Brand, Latham, & Rosloniec, 2007)。
【0245】
TNF-αはCIAにおいて重要な役割を果す。研究により、コラーゲン関節炎(collagenarthritis)の抑制はTNFαに対する中和抗体でも、可溶性TNF受容体でも実現されることが証明された。興味深いことに、TNFαは、関節炎の発症時に極めて重要であるが後期にはさほど有力でないようであることが見出された。実際、TNF受容体ノックアウトマウスにおける研究により、関節炎の発生率および重症度はそのようなマウスにおけるほうが低いが、一旦関節が罹患してしまうと一見TNF依存的にびらん性損傷への完全な進行が認められることが実証された。
【0246】
同様に、CIAにおいて、IL-1aとIL-1βの両方に対する中和抗体のセットでの処置は、既存の関節炎において依然として非常に有効であり、炎症と軟骨破壊の進行の両方を低減させることが証明された。別々のIL-1アイソフォームに対する抗体に関する研究により、IL-1βのほうが重要であることが明らかになった。これは、ICE(IL-1β変換酵素)阻害剤のこのモデルにおける明白な有効性、およびICE欠損マウスにおけるCIA低減の観察と一致している。同様に、炎症した膝関節へのレトロウイルス遺伝子移入によるIL-1raの局所的過剰発現は、その部位に対して有効であった。関節炎の動物モデルにおける別々の標的としてのTNFαおよびIL-1βの同定と一致して、TNFブロッカーとIL-1ブロッカーの両方での併用療法は最適な保護をもたらすことが、説得力をもって実証されている。
【0247】
IL-6もCIAの発症において重要な役割を果し、IL-6-/-マウスは、II型コラーゲンへの抗体応答低減、ならびに膝関節における炎症細胞および組織損傷の非存在を伴って、CIAから完全に保護される。CIIへの特異的免疫応答の抑制とTh2サイトカインプロファイルにシフトする傾向(a tendency to a shift)の両方が、IL-6-/-マウスにおけるCIAの減弱にある程度寄与し得る(Sasai et al., 1999)。
【0248】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明の実体は、関節炎のコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルにおいて炎症、特に関節の炎症の発症を抑制することができる。
【0249】
本発明のある実施形態によれば、本発明の免疫抑制ポリペプチドは、そのような動物における関節炎スコアを低下させることができ、コラーゲン注射による炎症の誘発からのスコアが低下され、該スコアの少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、例えば、少なくとも40%、少なくとも45%、例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%低下がある。
【0250】
タンパク質およびペプチド
本発明の一実施形態において、ポリペプチドは単量体のものである。本発明の別の実施形態において、ポリペプチドは二量体のものである。本発明の別の実施形態において、ポリペプチドは三量体のものである。本発明のさらに別の実施形態において、ポリペプチドは多量体のものである。したがって、本発明によれば、ポリペプチドは、単量体のもの、同種二量体のもの、異種二量体のもの、同種三量体のもの、異種三量体のもの、同種多量体のものおよび/または異種多量体のものであり得る。特定の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、同種二量体のものである。
【0251】
加えて、本発明は、二量体、三量体および/または多量体ポリペプチドの組合せを含み得る。一実施形態において、本発明は、同種二量体ペプチドを他の同種二量体ペプチドと組み合わせて含む。別の実施形態において、本発明は、同種二量体ペプチドを異種二量体ペプチドと組み合わせて含む。ペプチドの以下の組合せも本発明の範囲内である:同種二量体ペプチドと同種三量体のもの、同種二量体のものと異種三量体のもの、異種二量体のものと同種三量体のもの、異種二量体のものと異種三量体のもの、同種二量体のものと同種多量体のもの、異種二量体のものと同種多量体のもの、同種二量体のものと異種多量体のもの、異種二量体のものと異種多量体のもの、同種三量体のものと同種多量体のもの、同種三量体のものと異種多量体のもの、異種三量体のものと同種多量体のもの、および異種三量体のものと異種多量体免疫抑制ペプチド。
【0252】
本発明のある一定の実施形態によれば、ポリペプチドは、同種二量体、例えば、配列番号1~1043の中から選択されるペプチドのうちの2つによって形成される同種二量体である。
【0253】
一実施形態において、単量体ペプチドは、それらのペプチドのN末端とN末端またはC末端とC末端を架橋させることにより、架橋されて二量体になる。好ましい実施形態において、ペプチドは、それらのペプチドのC末端とC末端を架橋させるジスルフィド結合により、架橋される。
【0254】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、担体タンパク質として作用することができる少なくとも1つのタンパク質に連結される。多量体は、担体タンパク質もしくは他の分子に連結させることにより、および/またはいくつかのペプチドを前記担体タンパク質に連結させることにより形成することができる。
【0255】
一実施形態において、単量体ペプチドは、1つより多くのペプチドとカップリングさせることができるタンパク質(例えば、担体タンパク質)または任意の他の分子に化学的に連結される。カップリングは共有結合によることもあり、またはより弱い結合、例えば、水素結合もしくはファンデルワールス結合によることもある。ペプチドは、そのN末端、C末端、またはペプチド配列内のどこでカップリングされていてもよい。ペプチドの架橋について本明細書に記載の任意の方法を使用して、ペプチドをタンパク質または担体分子とカップリングさせて、前記ペプチドのいくつかのコピーを含有する分子を得ることができる。
【0256】
本発明のポリペプチドは、種々の長さのものであり得る。しかし、免疫抑制ペプチドの活性成分が、約100アミノ酸、例えば約90アミノ酸、例えば約80アミノ酸、例えば約70アミノ酸、例えば約60アミノ酸、例えば約50アミノ酸、例えば約40アミノ酸、例えば約35アミノ酸の最大長を有することは理解される。
【0257】
ある実施形態によれば、ポリペプチド、または該ポリペプチドの配列は、より大きいペプチドまたは分子の一部を構成し、その生物学的特性をなお保持することができる。ある実施形態によれば、さらなるアミノ酸または分子を免疫抑制ペプチドに付加させて、該免疫抑制ペプチドの溶解性および/またはバイオアベイラビリティ特性を向上させることができる。
【0258】
さらに、本発明は、1つまたは複数のアミノ酸残基が修飾されているポリペプチドであって、前記1つまたは複数の修飾が、インビボまたはインビトロでの化学的誘導体化、例えば、これらに限定されないが、アセチル化またはカルボキシル化、グリコシル化、例えば、グリコシル化に影響を与える酵素、例えば、哺乳動物グリコシル化酵素もしくは脱グリコシル化酵素へのポリペプチドの曝露の結果として生じるグリコシル化、リン酸化、例えば、リン酸化されたアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンをもたらすアミノ酸残基の修飾からなる群から好ましくは選択される、ポリペプチドも包含する。本発明によるポリペプチドは、天然に存在するL-アミノ酸、D-アミノ酸および天然に存在しない合成アミノ酸からなる群から独立して選択される1つまたは複数のアミノ酸を含むことができる。本発明のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基は、好ましくは、タンパク質分解に対する抵抗性および安定性を向上させるように、または溶解特性を最適化するように、またはポリペプチドを治療剤としてより適したものにするように修飾される。本発明は、ポリペプチドのNおよび/もしくはC末端を望ましくない分解から保護するために、ならびに/または前記末端を安定化するために、ブロッキング基が導入されている、本発明のポリペプチドにも関する。そのようなブロッキング基は、これらに限定されないが、分岐または非分岐アルキル基およびアシル基、例えば、ホルミル基およびアセチル基、その上それらの置換形態、例えばアセトアミドメチルも含む群から選択することができる。本発明は、以下のものにも関する:1つまたは複数のブロッキング基が、ペプチドのN末端にカップリングされているかまたはN末端アミノ酸残基の代わりに使用されている、アミノ酸のデスアミノ類似体を含むN末端ブロッキング基から選択される、本発明のポリペプチド。1つまたは複数のブロッキング基が、C末端のカルボキシル基が組み込まれているかまたは組み込まれていないC末端ブロッキング基、例えば、エステル、ケトンおよびアミド、ならびに脱カルボキシル化アミノ酸類似体から選択される、しかしこれらに限定されない、本発明によるポリペプチド。1つまたは複数のブロッキング基が、エステルまたはケトン形成性アルキル基(ester or ketoneforming alkyl groups)、例えば、低級(C1~C6)アルキル基、例えばメチル、エチルおよびプロピル、ならびにアミド形成性アミノ基、例えば、第1級アミン(-NH2)、ならびにモノおよびジアルキルアミノ基、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノなどを含む、C末端ブロッキング基から選択される、本発明によるポリペプチド。N末端の遊離アミノ基および前記末端の遊離カルボキシル基を一緒にポリペプチドから除去して、該ポリペプチドの生物活性に有意な影響を与えることなくそのデスアミノおよび脱カルボキシル化形態を形成することができる、本発明によるポリペプチド。望ましい特性は、例えば、化学的保護により、すなわち、本発明のタンパク質およびペプチドを保護化学基と反応させることにより実現することができ、または天然に存在しないアミノ酸、例えば、D-アミノ酸の組込みにより、本発明のタンパク質およびペプチドの半減期を延長するという結果をもって実現することができる。
【0259】
ある実施形態によれば、本発明は、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。内在性レトロウイルスは、古代レトロウイルス組込みの遺物であり、他のレトロウイルスとの配列相同性のため当業者には容易に同定することができる。
【0260】
ある実施形態によれば、本発明は、RNAに転写される内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0261】
ある実施形態によれば、本発明は、その転写レベルが、疾患または症状に関与する他の遺伝子の転写レベルと相関がある、RNAに転写される内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0262】
ある実施形態によれば、本発明は、その転写レベルが、自己免疫疾患に関与する他の遺伝子の転写レベルと相関がある、RNAに転写される内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0263】
ある実施形態によれば、本発明は、その転写レベルが、ある症状を有する対象においてそのような症状を有さない対象と比較して異なる、RNAに転写される内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。そのような症状は、自己免疫疾患または先天性疾患などの、疾患であり得る。
【0264】
ある実施形態によれば、本発明は、その転写レベルが、自己免疫症状を有する対象においてそのような症状を有さない対象と比較して異なる、RNAに転写される内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。そのような症状としては、SLE、関節リウマチ、IBDなどが挙げられる。
【0265】
ある実施形態によれば、本発明は、異なる個体において異なるコピー数を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0266】
ある実施形態によれば、本発明は、ある疾患または症状を有する個体において前記疾患または症状を有さない個体と比較して異なるコピー数を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0267】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫を有する個体において自己免疫症状を有さない個体と比較して異なるコピー数を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0268】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫または先天性疾患を有する個体において自己免疫症状または先天性疾患を有さない個体と比較して異なるコピー数を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0269】
ある実施形態によれば、本発明は、SLE、関節リウマチ、IBDなどのような症状を有する個体においてそのような症状を有さない個体と比較して異なるコピー数を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0270】
ある実施形態によれば、本発明は、異なる個体において一塩基多型(SNP)を含有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0271】
ある実施形態によれば、本発明は、ある疾患または症状を有さない個体と比較して前記疾患または症状の発生率と相関する一塩基多型(SNP)を有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0272】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫症状を有さない個体と比較して自己免疫の発生率と相関するSNPを有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0273】
ある実施形態によれば、本発明は、自己免疫または先天性疾患を有する個体において自己免疫症状または先天性疾患を有さない個体と比較して高いまたは低い頻度で発生するSNPを有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0274】
ある実施形態によれば、本発明は、SLE、関節リウマチ、IBDなどのような症状を有さない個体と比較してそのような症状の発生率と相関するSNPを有する、内在性レトロウイルス由来の遺伝子または遺伝子セグメントに関する。
【0275】
ある実施形態によれば、本発明は、1つまたは複数の免疫抑制ペプチドの組成物に関する。免疫抑制ポリペプチドは、動物において免疫応答を抑制することができるポリペプチドであり、前記動物には、人間および他の動物、例えば、飼育もしくは畜産動物(ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタなど)または試験種、例えばマウス、ラット、ウサギなどが含まれる。
【0276】
本発明の一実施形態において、免疫抑制ポリペプチドは、Tリンパ球増殖の少なくとも5%阻害、Tリンパ球増殖の少なくとも10%、少なくとも20%、例えば少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%阻害が可能である。特定の実施形態において、本発明の免疫抑制ペプチドは、Tリンパ球増殖の少なくとも75%阻害、Tリンパ球増殖の少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも97%、例えば少なくとも99%、少なくとも100%阻害が可能である。
【0277】
本発明の別の実施形態によれば、免疫抑制ポリペプチドは、本明細書において以下で説明するような、刺激性接触皮膚炎モデルであるTPAモデルによれば、全身性の皮膚の炎症に罹患している動物において免疫応答を抑制することができる。本発明によれば、本発明の免疫抑制ポリペプチドは、13-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール(TPA)を追加投与したマウスにおいて耳の肥厚を低減させることができ、TPAの追加投与後の耳の肥厚が低減され、耳の肥厚の少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、例えば少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、例えば少なくとも40%、少なくとも45%、例えば少なくとも50%、少なくとも55%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、例えば少なくとも70%、少なくとも75%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%低減がある。
【0278】
本発明の医薬組成物において使用するための薬学的に許容される酸付加塩の例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、p-トルエンスルホン酸およびアリールスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
【0279】
いくつかの定義
タンパク質およびペプチド
「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によってカップリングされている少なくとも3つのアミノ酸残基を含有する任意の分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、ここでは、該ポリペプチドの特定の長さに必ずしも限定されずに、ペプチドおよび/またはタンパク質について使用される。
【0280】
「タンパク質」という用語は、ポリペプチドと同義で使用され、いずれの特定の長さにもサイズにも限定されない。ポリペプチドおよびタンパク質は、断片もしくは複合体の形態であってもよく、あるいは任意の一次、二次、三次または四次構造、例えば、これらに限定されないが、単量体、二量体、三量体、四量体もしくは多量体、アルファらせん、ベータシートまたは任意の他のらせん構造および/もしくは球状構造を有してもよい。ポリペプチドおよびタンパク質は、架橋または任意の化学修飾を含有してもよい。
【0281】
ポリペプチドおよびタンパク質は、修飾されていてもよい。非限定的な例として、本発明のポリペプチドは、グリコシル化、アシル化および/または二量体化もしくは三量体化されている必要はないが、グリコシル化、アシル化および/または二量体化もしくは三量体化されていてもよい。
【0282】
ポリペプチドおよびタンパク質は、天然に存在するL-アミノ酸、D-アミノ酸および天然に存在しない合成アミノ酸からなる群から独立して選択される1つまたは複数のアミノ酸を含むことができる。
【0283】
「架橋因子(cross-linker)」または「架橋部分」という表現は、本明細書において以下でさらに詳細に説明するような1つまたは複数のポリペプチドと1つのポリペプチドを架橋させるために使用される外部架橋剤(cross-linking agent)により付与される連結部分を指す。
【0284】
「担体」という用語は、ポリペプチドの数を増加させるために、ポリペプチドの活性もしくは免疫抑制効果を増加させるために、分子に安定性を付与するために、ペプチドの生物活性を増加させるために、またはその血清半減期を増加させるために、またはその免疫原性を低下させるために、ポリペプチドに結合される化合物を指す。「担体」は、タンパク質担体であってもよく、または非タンパク質担体であってもよい。非タンパク質担体の非限定的な例としては、リポソーム、ミセル、高分子ナノ粒子およびジアミノエタンが挙げられる。リポソームは、グルコサミノグリカンヒアルロナン(HA)および/またはPEGを含み得る。一実施形態では、担体は、イムノリポソームである。他の担体としては、プロタミン、または多糖類、例えば、アミノデキストランもしくはキトサンが挙げられる。タンパク質担体の非限定的な例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えば、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、クジラミオグロビン、オボアルブミン、免疫グロブリン、リゾチーム、炭酸脱水酵素、またはホルモン、例えばインスリンが挙げられる。本発明の他の実施形態において、担体は、本明細書において以下で説明するような薬学的に許容される担体であってもよい。本発明の免疫調節性ペプチドは、本明細書において以下でさらに説明するような架橋手段により担体にカップリングさせることができる。
【0285】
「タンパク質修飾」、「タンパク質安定性」および「ペプチド安定性」という用語は、タンパク質およびペプチドの状態、特に、前記タンパク質および/またはペプチドが、分解、フィブリル化および凝集に対してより抵抗性であり、ならびに/あるいは加水分解および/もしくはタンパク質分解に向かう特性が増加したまたは有効保存期間が改善された状態を記述するために使用される。特に、タンパク質分解安定性は、プロテアーゼとしても公知であるタンパク質分解酵素、すなわち、タンパク質またはペプチドのアミド/ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素の作用に対する抵抗性を指す。さらに、本発明は、1つまたは複数のアミノ酸残基が修飾されているポリペプチドであって、前記1つまたは複数の修飾が、インビボまたはインビトロでの化学的誘導体化、例えば、これらに限定されないが、アセチル化またはカルボキシル化、グリコシル化、例えば、グリコシル化に影響を与える酵素、例えば、哺乳動物グリコシル化もしくは脱グリコシル化酵素へのポリペプチドの曝露の結果として生じるグリコシル化、リン酸化、例えば、リン酸化されたアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンをもたらすアミノ酸残基の修飾からなる群から好ましくは選択される、ポリペプチドも包含する。本発明によるポリペプチドは、天然に存在するL-アミノ酸、天然に存在するD-アミノ酸および天然に存在しない合成アミノ酸からなる群から独立して選択される1つまたは複数のアミノ酸を含むことができる。本発明のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基は、好ましくは、タンパク質分解に対する抵抗性および安定性を向上させるように、または溶解特性を最適化するように、またはポリペプチドを治療剤としてより適したものにするように修飾される。本発明は、ポリペプチドのNおよび/もしくはC末端を望ましくない分解から保護するために、ならびに/または前記末端を安定化するために、ブロッキング基が導入されている、本発明のポリペプチドにも関する。そのようなブロッキング基は、これらに限定されないが、分岐または非分岐アルキル基およびアシル基、例えば、ホルミル基およびアセチル基、その上、それらの置換形態、例えばアセトアミドメチルも含む群から選択することができる。本発明は、以下のものにも関する:1つまたは複数のブロッキング基が、ペプチドのN末端にカップリングされているかまたはN末端アミノ酸残基の代わりに使用されている、アミノ酸のデスアミノ類似体を含むN末端ブロッキング基から選択される、本発明のポリペプチド。1つまたは複数のブロッキング基が、C末端のカルボキシル基が組み込まれているかまたは組み込まれていないC末端ブロッキング基、例えば、エステル、ケトンおよびアミド、ならびに脱カルボキシル化アミノ酸類似体から選択される、しかしこれらに限定されない、本発明によるポリペプチド。1つまたは複数のブロッキング基が、エステルまたはケトン形成性アルキル基、例えば、低級(C1~C6)アルキル基、例えばメチル、エチルおよびプロピル、ならびにアミド形成性アミノ基、例えば、第1級アミン(-NH2)、ならびにモノおよびジアルキルアミノ基、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノなどを含む、C末端ブロッキング基から選択される、本発明によるポリペプチド。N末端の遊離アミノ基および前記末端の遊離カルボキシル基を一緒にポリペプチドから除去して、該ポリペプチドの生物活性に有意な影響を与えることなくそのデスアミノおよび脱カルボキシル化形態を形成することができる、本発明によるポリペプチド。特性の増加は、例えば、化学的保護により、すなわち、本発明のタンパク質およびペプチドを保護化学基と反応させることにより実現することができ、または天然に存在しないアミノ酸、例えば、D-アミノ酸の組込みにより、本発明のタンパク質およびペプチドの半減期を延長するという結果をもって実現することができる。
【0286】
一塩基多型(SNP):
単純塩基多型としても公知の一塩基多型(SNP、スニップと発音される;複数形スニップス)は、ゲノム(または他の共有配列)内の一塩基-A、T、CまたはG-が生物学的種のメンバー間または対の染色体間で異なる、集団内に共通して存在する(例えば1%)DNA配列変異である。例えば、異なる個体からの2つの配列決定されたDNA断片、AAGCCTA対AAGCTTAは、一塩基の差を有する。この場合、2つの対立遺伝子があると言う。ほぼすべての共通SNPは、対立遺伝子を2つしか有さない。SNPのゲノム分布は、均一ではない。SNPは、非コード領域においてコード領域より高頻度に出現し、または一般には、自然選択が作用しており、最も好適な遺伝的適応を構成するSNPの対立遺伝子を「固定している」(他の変異体を排除している)場合に出現する。遺伝子組換えおよび突然変異率などの他の因子もSNP密度を左右し得る。
【0287】
SNP密度は、マイクロサテライトの存在により予測することができる:特にATマイクロサテライトは、SNP密度の強力な予測因子であり、長い(AT)(n)繰り返し配列が、有意に低下したSNP密度の領域および低いGC含量の領域において見出される傾向がある。
【0288】
集団内で、SNPは、マイナー対立遺伝子頻度-特定の集団内で観察される遺伝子座での最低対立遺伝子頻度-を指定することができる。これは、単に、一塩基多型についての2つの対立遺伝子頻度のうちの小さいほうの頻度である。ヒト集団間には変異があるため、ある地理群または民族群ではよく見られるSNP対立遺伝子が別の群ではかなり稀であることもある。
【0289】
個体間の(特に、ゲノムの非コード部分における)これらの遺伝子変異は、化学捜査に使用されるDNAフィンガープリント法に活用されることもある。また、これらの遺伝的変異は疾患に対する我々の感受性の差の根底にある。病気の重症度、および我々の身体の処置への応答の仕方もまた、遺伝子変異の現れである。例えば、APOE(アポリポタンパク質E)遺伝子の一塩基突然変異は、より高いアルツハイマー病リスクに関連している。
【0290】
相同性および同一性
「相同性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列間または2つ以上のポリペプチド配列間の配列類似性または、同義で、配列同一性を指す。
【0291】
「パーセント同一性」および「%同一性」という句は、ポリペプチド配列に適用される場合、標準アルゴリズムを使用してアラインメントされた少なくとも2つのポリペプチド配列間の残基一致パーセンテージを指す。ポリペプチド配列アラインメント方法は周知である。一部のアラインメントの方法は、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる。上記でより詳細に説明した、そのような保存的置換は、置換部位における変化および疎水性を一般に保存し、したがってポリペプチドの構造(およびしたがって機能)を保存する。
【0292】
「パーセント同一性」は、例えば特定の配列番号によって定義されるような、被定義ポリペプチド配列全体の長さにわたって測定されることもあり、またはより短い長さにわたって、例えば、より大きい被定義ポリペプチド配列から取った断片、例えば、連続する少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70または少なくとも150残基の断片の長さにわたって測定されることもある。このような長さは例示的なものに過ぎず、当然のことながら、本明細書において表、図または配列表に示されている配列により支持される任意の断片長が、パーセンテージ同一性が測定され得る長さを記載するために使用され得る。
【0293】
他の用語
アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強する、および/またはそれを所望の免疫応答に向けて調節する、成分である。アジュバントは、特定のワクチン抗原と併用されたときに抗原特異的免疫応答を加速、延長または強化するように作用する任意の物質と定義される。
【0294】
免疫療法という用語は、免疫応答を誘導、強化または抑制することによる疾患の処置を指す。免疫応答を惹起または増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、その一方で低減または抑制する免疫療法は、抑制免疫療法として分類される。
【0295】
「免疫抑制ポリペプチド」という用語は、免疫抑制活性を示すことができるポリペプチドについて使用される。「本発明の免疫抑制ポリペプチド」という用語は、免疫抑制活性を示すことができる、本発明のポリペプチドについて使用される。
【0296】
「免疫調節」という用語は、免疫系の変化について、またはその機能を活性化もしくは抑制する薬剤による免疫応答の変化について本明細書では使用される。「免疫調節」という用語は、部分的にもしくは完全に抑制される、または誘発もしくは誘導もしくは強化される、免疫応答の過程を指すこともある。これは、免疫付与または免疫調節薬の投与を含み得る。
【0297】
「免疫調節性ペプチド」という用語は、免疫調節活性を示すことができるポリペプチドについて使用される。「本発明の免疫調節性ポリペプチド」という用語は、免疫調節活性を示すことができる、本発明のポリペプチドについて使用される。
【0298】
同様に、本明細書で使用される「増殖調節」は、細胞増殖が部分的にもしくは完全に抑制されるまたは細胞増殖が誘導もしくは増進もしくは促進される過程(the process of were the cell proliferation is either suppressed, partly or completely, or where cell proliferation is induced or enhanced or promoted)を指す。
【0299】
「物質」という用語は、本明細書のどこで使用される場合も、本発明のポリペプチドを含むのに適した物質の任意の形態を含む。
【0300】
そのような物質の非限定的な例は、クリーム、ローション、懸濁性ローション、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォーム、シャンプー、スプレー剤、エアロゾル、ならびに経皮パッチおよび絆創膏である。
【0301】
「処置」という用語は、本明細書のどこで使用される場合も、本明細書に記載の臨床症状を終わらせること、予防すること、改善すること、および/またはそのような臨床症状に対する感受性を低下させることを目的とする、任意のタイプの治療を含む。好ましい実施形態において、処置という用語は、予防的処置、すなわち、本明細書で定義の臨床症状、障害または症状の感受性を低下させるための治療に関する。
【0302】
したがって、本明細書で使用される「処置」、「処置すること」などは、ヒトを含む哺乳動物における病的症状または障害の任意の処置を包含する、所望の薬理学的および/または生理的効果を得ることを指す。前記効果は、障害もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防ぐ点で予防的であることもあり、ならびに/または障害をおよび/もしくは該障害に起因する有害作用を部分的にもしくは完全に治癒させる点で治療的であることもある。すなわち、「処置」は、(1)対象における障害の発生または再発を防ぐこと、(2)障害を抑制すること、例えば、その発症を抑止すること、(3)例えば、喪失した、欠損している、もしくは不完全な機能を回復させるかもしくは修復すること、または効率の悪い過程を刺激することにより、宿主がもはや障害またはその症状に苦しまないように、障害または少なくともそれに関連する症状を停止させるまたは終わらせること、例えば、障害またはその症状を退行させること、あるいは(4)障害またはそれに関連する症状を緩和、軽減または改善することを含み、緩和することは、炎症、疼痛および/または免疫不全などのパラメータの規模の低下を少なくとも指すために広い意味で使用される。
【0303】
本明細書で使用される「動物」という用語は、ヒト、飼育もしくは畜産動物(ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタなど)または試験種、例えばマウス、ラット、ウサギなどを含むように定義され得る。したがって、動物は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒト、ヒツジ、ヤギまたはシカ科起源の動物も含み得る。
【0304】
「内在性レトロウイルスに由来する」という表現は、ドメインが、内在性レトロウイルスの免疫抑制ドメインと実質的に同一であり、突然変異、挿入または欠失があってもよいことを意味する。
【0305】
引用するすべての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0306】
添付の図および実施例は、本発明を限定するためではなく説明するために提供するものである。本発明の態様、実施形態、項目および請求項を組み合わせてもよく、またそれらを背景技術および引用参考文献に記載の特徴と組み合わせてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【実施例1】
【0307】
HERV-Env59はSLE患者において健常個体と比較して過剰発現される
ここで、本発明者らは、45名の健常個体からのおよび全身性エリテマトーデス(ここではSLE)を有する45名の患者からのPBMC(末梢血単核細胞)におけるHERV-Env59遺伝子発現のリアルタイムRT-PCRによる調査に関するデータを提示する。データをRPL13aまたはRPL37Aハウスキーピング遺伝子に対して正規化した。静脈血試料をCPT(商標)チューブ(BD Vacutainers(登録商標)、BD Diagnostics、NJ USA)に採取し、1時間以内に処理した。チューブ/血液試料を室温で水平ローターにおいて最低30分間、1800g(相対遠心力)で遠心分離した。遠心分離後、単核細胞層を回収し、15mlサイズのコニカルチューブに移した。2洗浄工程の後、細胞ペレットを後続のRNA抽出のために望ましい培地に再懸濁させた。RNeasy(登録商標)Plusミニキット(Qiagen、DK)をその製造業者の手順書に従って使用して末梢血試料からRNAを単離した。単離されたRNA試料の量および完全性を、A260/A280、A260/A230吸光度比、および28S/18S rRNA比を決定することにより制御した。PBMCから精製した200ngの全RNAを、iScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad、CA USA)をその製造業者の説明書に従って使用するcDNA合成に使用した。Light Cycler 480サイクラー(Roche Diagnostics、DK)を使用してリアルタイムQ-PCR分析を行った。2μlのcDNA(合計20μlの反応容量からのもの)を20μl反応に使用した。リアルタイムQ-PCR反応は、10μlのサイバーグリーン2xマスターミックス(Roche Diagnostics、DK)、2μlのフォワードプライマ-(5pmol/μl)、2μlのリバースプライマー(5pmol/μl)および4μlの水を含有した。95℃で10分間の初期変性後、PCR増幅を45サイクル行った。各転写物の交差ポイント(CP)を測定し、Light Cycler 480ソフトウェアにおいて一定蛍光レベルで定義した。試験遺伝子のmRNAレベルをRPL13a値に対して正規化し、PE Applied Biosstems(Perkins Elmer、Foster City、CA USA)により提供されたΔCTモデルを使用して相対定量を決定した。
【0308】
特異的増幅産物(プライマーセット:Env3フォワードセット1およびEnv3リバースセット1、ISD59フォワードおよびISD59リバース、EnvH3フォワードおよびEnvH3リバース)が、すべてのSLE試料において、および健常対照において観察された。相対HERV-Env59 mRNA発現レベルは、健常対照よりSLEの患者のほうが有意に高かった(P<0.001)図1。バーは、中央値およびSDを示す。P値は、試料間の統計的差異(<0.05)を示す。P値は、ノンパラメトリックなマン・ホイットニーU検定を使用して計算した。さらに、HERV-Env59 mRNA発現レベルの有意なばらつきが、SLE患者から採取したPBMC試料において観察された。差異は、逆転写の質によるものではなかった。RNA RPL13aまたはRPL37A発現レベルの分析により、全cDNA量が試験したすべての試料にわたって同一であることが確証されたからである。
【0309】
結果を図1に提示する。
【実施例2】
【0310】
SLE患者におけるIL-6および/またはTLR-7 mRNA発現レベルとHERV-Env59発現レベルの間の相関
ここで、本発明者らは、SLE患者におけるIL-6および/またはTLR7 mRNA発現レベルとHERV-Env59発現レベルの間の相関の調査に関するデータを提示する。Env59発現レベルの研究に使用した試料集団の中で、本発明者らは、SLE患者からのPBMCにおけるIL-6 mRNA発現レベルをリアルタイムRT-PCRにより検査した(アッセイに関する詳細については実施例1を参照されたい)。加えて、本発明者らは、SLE患者からのPBMCにおけるTLR-7 mRNA発現レベルを評定した。データをハウスキーピング遺伝子RPL13a mRNA発現レベルに対して正規化した。本発明者らは、次に、HERV-Env59 mRNAとIL-6 mRNAまたはTLR-7 mRNA(これらの両方が特徴的調節を示した)の発現間のスピアマン相関分析を行った。図2aおよび2bは、IL-6またはTLR-7遺伝子発現に対してプロットした、SLE患者から採取したPBMCにおける、リアルタイムRT-PCRにより評価したEHRV-Env59遺伝子発現レベルを示す。統計解析は、SLE群においてHERV-Env59のmRNA発現とIL-6のmRNA発現の間(P=0.0065、r=‐0.5400)またはTLR-7との間(p=0.02、r=‐0.38)の有意な負の相関を明示した。したがって、この相関分析は、HERV-Env59がSLE患者においてより低いIL-6またはTLR-7レベルに関連づけられることを示唆する。
【0311】
結果を図2aおよび2bに提示する。
【実施例3】
【0312】
HERV-H3/Env-59遺伝子座からの機能性エンベロープタンパク質の特性解析
ここで、本発明者らは、HERV-Env59遺伝子座からの機能性エンベロープ(enevelope)タンパク質の特性解析に関するデータを提示する。HERV-Env59の構造構成を以前に確認し、レトロウイルスエンベロープの疎水性プロファイルならびに他の特徴、すなわち、M2メチオニンの下流に位置する推定的シグナルペプチド、CWLCモチーフ、SUサブユニットとTMサブユニットの接合部のフューリン切断部位、それに続く疎水性融合ペプチドおよび疎水性膜貫通ドメインを開示した。このタンパク質の発現および活性をさらに研究するために、コードHERV-Env59 cDNAを、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターにより駆動される発現ベクターにクローニングした。インシリコ(in silico)法により同定された推定的シグナルペプチドの後のタンパク質のN末端にHAタグを付加させた。PUC57Env59プラスミドは、Genscript(NJ、USA)が合成Env59インサートをPUC57プラスミドのEcoRV部位にクローニングして構築したものであった。市販の抗体が無かったため、遺伝子をC末端HAタグに融合させた。発現研究のために、EcoRIおよびNotI(EcoRIand NotI)制限部位を使用してEnv59を867p-IRES-puroベクターに挿入して、最終pEnv59IRESpuro構築物を得た。配列の正確さをシークエンシングにより検証した。
【0313】
一過性にトランスフェクトしたHEK293またはNIH3T3細胞において、ウエスタンブロットで、HAタグに対するモノクローナル抗体を使用し、Liofectamine LTX(登録商標)またはLipofectamine 2000(登録商標)試薬(ThermoFisher Scientific)を使用して、HERV-Env59遺伝子の発現を確認した(図3a)。トランスフェクションの48時間後、細胞を溶解し、ウエスタンブロッティング用に処理した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics、DK)を含有するNP-40溶解バッファー(10mM Tris-HCL pH7.4、137mMNaCl、10%v/vグリセロール、1%v/v Nonidet P-40)での溶解後、全細胞抽出物を調製した。細胞片を10.00xgで25分間、4℃での遠心分離により除去し、タンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce、VWR/Bie&Berntsen、DK)により決定した。等量のタンパク質(20μg/試料)をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロース膜に転写し、特異的抗体とともにインキュベートし、その後、HRP標識二次抗体とともにインキュベートした。有標の試薬(Millipore、DK)を使用する増強化学発光により免疫ブロットを現像した。
【0314】
明らかにわかるように、約62kDaの分子量に対応するバンドのみが、HERV-Env59発現ベクターをトランスフェクトしたHEK293およびNIH3T3細胞において検出され、HERV-Env59遺伝子が、完全長タンパク質をコードする能力を有し、ex vivoで発現され得ることを実証した。
【0315】
エンベロープタンパク質の正確な表面発現を判定するために、本発明者らは、一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞において、蛍光標識抗HA抗体を使用して免疫蛍光共焦点顕微鏡観察を行った。pEnv59IRESpuroおよびpcDNA-eGFP構築物をトランスフェクトしたHEK293細胞におけるHERV-H Env59表面発現を免疫蛍光により可視化するために、本発明者らは、ホルムアルデヒドで固定した、透過処理していない細胞を、マウス抗HAタグ抗体で染色し、その後、蛍光標識抗マウス抗体であるAlexa Fluor568nmで染色した。すべての実験において、HERV-H Env59検出は、トランスフェクションのおおよそ36~48時間後、ガラスカバースリップ上で増殖させた細胞を用いて行った。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を使用して細胞核を染色した。無関係の発現ベクターをトランスフェクトした細胞に関してはシグナルが検出されなかった。観察は、Zeiss LSM510レーザー走査共焦点顕微鏡下で行った。
【0316】
透過処理していない細胞の染色は、HERV-Env59タンパク質を細胞表面で検出できることを示し、レトロウイルスエンベロープタンパク質と一致するタンパク質の正確な細胞内輸送を確認した(図3b)。
【0317】
図3aは、HERV-H Env59HAタグトランスフェクト細胞におけるHAタグエンベロープ糖タンパク質の検出を示す(depitsdetection)。
【0318】
ヒトHEK293またはマウスNIH3T3細胞に、HERV-H Env59HAタグcDNAまたは対照プラスミドpcDNA3.1eGFPのどちらかを発現するプラスミドをトランスフェクトしたか、またはトランスフェクトせずに(untrnsfected)培養培地中に放置した。48時間後、Env59トランスフェクト細胞、pcDNA3.1eGFPトランスフェクト細胞、および非トランスフェクト細胞を溶解し、次いで(thein)、HAタグまたはチューブリンに対する抗体(Ab)でのウエスタンブロッティング用に処理した(proceed)。
【0319】
図3bは、HERV-Env59タンパク質の発現を示す(Figure 3bdepictsexpression of the HERV-Env59 protein)。HERV-H Env59タンパク質を細胞表面で検出することができ、機能性Envについて予想した局在と一致する結果であった。
【0320】
完全コードHERV-H Env59遺伝子の発現ベクター(赤色)および対照pcDNA3.1eGFPベクター(緑色)を一過性にトランスフェクトしたヒトHEK293細胞の免疫蛍光分析からの共焦点顕微鏡像。検出は、トランスフェクションのおおよそ36時間後、ガラスカバースリップ上で増殖させた、固定され透過性処理していないHEK293細胞を用いて行った。マウス抗HAタグ抗体を使用してHERV-H Env59を検出した(赤色)。細胞核をDAPIで染色した。
【実施例4】
【0321】
HERV-Env59は機能性エンベロープタンパク質をコードする
ここで、本発明者らは、HERV-Env59をコードするタンパク質の機能的特性の調査に関するデータを提示する。本発明者らは、このエンベロープタンパク質が、レンチウイルスコア粒子を用いるこのタンパク質のシュードタイピングにより、依然として融合活性であるかどうかを調査した。eGFPタンパク質をコードするウイルス移入ベクターを含む3つのプラスミドベクター系を使用して、シュードタイプレンチウイルス/HERV-Env59粒子を形成した。コトランスフェクトしたとき、これら3つのプラスミドはレンチウイルス粒子を産生し、表面タンパク質をコードする第4のプラスミドをトランスフェクション混合物に含めれば、レンチウイルス粒子を表面タンパク質で装飾することができる。レンチウイルスパッケージング用のプラスミドは、Jacob Giehm Mikkelsen教授により快く提供されたものであった。pMD.2Gによりコードされた水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)、またはpEnv59IRESpuro、または対照pcDNA3.1を用いてシュードタイプ化したレンチウイルスベクターを、pCCL/PGK-eGFP.pMDLg/p-RRE.pRSV-REVを含有する4つのプラスミド発現レンチウイルス系を使用して生成した。本発明者らの系では、複製可能なウイルスの組換えおよび産生のリスクをさらに低下させるために、Rev遺伝子をpRSV-REVプラスミドに挿入した。標準リン酸カルシウム媒介法を使用する293T細胞への一過性トランスフェクションによりウイルスを産生した。6ウェルプレート1つ当りに使用したDNAの総量は、レンチウイルスベクタープラスミド4μgであり、1.59μgのpCLL/PGK-eGFP、1.59μgのpMDIg/p-RRE、0.37μgのpRSV-Revおよび0.46μgのpMDM.2G/pEnv59IRESpuro/pcDNA3.1であった。トランスフェクションの48時間後、ベクターを含有する培地を回収し、500xgで5分間回転させ、0.45μ孔径フィルター(Corning、NY USA)により濾過し、そのまま標的細胞の形質導入に使用した。HEK293細胞を6ウェルプレートに1ウェルにつき細胞5×10個で播種し、その翌日にポリブレン(8μg/ml)の存在下、濃縮ウイルスストックの系列希釈物を用いて感染させることにより、レンチウイルス力価を判定した。12時間インキュベーション後、培養培地を交換し、細胞をさらなる時間、インキュベートした。蛍光顕微鏡法を用いて、EGFPを発現する細胞を同定した(図4)。図4で明らかなように、VSV-gシュードタイプ粒子はすべての細胞型を感染させ、これは、このアッセイがすべての細胞型において感染を検出することができることを示すが、未装飾の裸の粒子は感染性でなかった。最も興味深いこととして、ENV59シュードタイプ粒子は、HEK293細胞のみに感染することができる。ヒトHEK293細胞に対する力価は、3500~5000CFU/ml範囲の範囲であり、これは極めて有意である。これは、ENV59が出芽ウイルスに組込まれ、活性融合可能エンベロープタンパク質を構成することを示唆する。さらに、このエンベロープタンパク質は、HEK293細胞上でのみ見出される受容体であって、マウスNIH3T3上でもHeLa細胞上でも見出されない受容体を使用するようである。
【0322】
HERV-H Env59エンベロープの感染アッセイ。感染性HERV-H Env59ハイブリッドウイルス粒子の形成。pMD.2Gによりコードされた水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)、またはpEnv59IRESpuro、または対照pcDNA3.1を用いてシュードタイプ化した(pseudotypedwit)レンチウイルスベクターを、4つのプラスミド発現レンチウイルス系を使用して生成した。シュードタイプビリオン(Pseudotypedvirons)を感染力についてアッセイし、標的細胞は、ヒトHEK293細胞であった。ウイルス力価は、2回の独立した実験からの平均である。
【実施例5】
【0323】
SLEおよび他の自己免疫疾患の発病に影響を与える、HERV-Env59レトロウイルスペプチドにより導入される免疫調節機能。
LPS放出の結果としての炎症性ショックは、依然として、深刻な臨床的懸念事項である。ヒトの場合、LPSに対する炎症反応は、単球およびマクロファージからのサイトカインおよび他の細胞メディエーターの放出をもたらし、これが発熱、ショック、臓器不全および死亡の原因になり得る。プロLPSおよび抗LPS(pro-and anti- LPS)は、単球の組織化で始まる自然免疫におけるサイトカイン産生の強力なプロトタイプインデューサーとして広く使用されている。リポ多糖(LPS)のような、病原体関連分子パターン(PAMP)は、グラム陰性菌による感染に起因する様々な宿主応答の阻害において極めて重要な役割を果す。そのような作用は、全身性炎症反応、例えば、血流へのサイトカインタンパク質の分泌をもたらす炎症誘発性および抗炎症性サイトカインのアップレギュレーションにつながる。
【0324】
ここで、本発明者らは、ENV59ペプチドでの細胞の前処置が、IL-6などの炎症誘発性サイトカインを含むサイトカインの放出の減少をもたらすことを示すデータを提示する。したがって、敗血症または他の炎症症状を発症するリスクがある患者のENV59ペプチドでの処置は、炎症誘発性サイトカインの産生を減少させるように、およびこれによってショック、臓器不全および死亡を生じさせるリスクを低下させるように、有益に作用することができるだろう。ここで、本発明者らは、ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1における、ならびに健常ドナーまたはSLE患者から採取したPBMCにおける、IL-6の発現レベルに対するEnv59ISDの調節機能を検査した。THP-1細胞およびPBMCを、10%FBSと100U/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンと2mMのL-グルタミンとを補充したRPMI1640中、37℃で、5%COインキュベーターにおいて維持した。THP-1細胞がリポ多糖(LPS)処置に応答してIL-6 mRNAおよびタンパク質を誘導することは公知である。THP-1細胞を未処置で放置するか、または最適な用量およびインキュベーション時間を見出すための以前の分析に基づいて、0uM、30μMもしくは60μMのEnv-59ISDとともにインキュベートし、1μg/μlのLPSで4時間刺激した。図5aおよび5bは、刺激物質誘導IL-6 mRNAタンパク質発現に関するリアルタイムRT-PCF(アッセイに関する詳細については実施例1を参照されたい)およびELISA分析の結果の代表である。
【0325】
IL-6ELISA分析については、ペプチドで処置したTHP-1細胞またはPBMC(図5cおよびd)からの上清を、ヒトIL-6ELISA Max(商標)Deluxe Set(Biolegend、#430505)を用いてアッセイした。ELISAアッセイは、製造業者の手順書に従って、以下のように行った。各インキュベーション工程の後、密封し、プレートを振盪させなかった捕捉抗体との一晩のインキュベーションを除き、回転テーブルを用いて150~200rpmで振盪させた。ELISA実行の前日、1×コーティングバッファー(ddHOで希釈した5×コーティングバッファー)で1:200希釈した捕捉抗体で96ウェルアッセイプレートを覆った。100μLのこの捕捉抗体溶液をすべてのウェルに添加し、密封し、一晩(16~18時間)4℃でインキュベートした。翌日、使用前にそのセットからのすべての試薬を室温(RT)にした。プレートを1ウェルにつき最低300μLの洗浄バッファー(1×PBS、0.05%Tween20)で4回洗浄した。後続の洗浄の際には残留バッファーを吸収紙でのプレートの吸い取りにより除去した。次に、200μLの1×アッセイ希釈液A(PBS pH=7.4で希釈した5×アッセイ希釈液A)を1時間にわたって添加して、非特異的結合をブロックした。プレートをブロッキングしている間に、すべての試料および標準物質(プレートごとに必須)を調製した。標準物質および試料を3回ずつ実行した。1mLの最良の標準物質250pg/mLを、IL-6ストック溶液から1×アッセイ希釈液A(1×AD)で調製した。250pg/mLの最良の標準物質の6種の2倍系列希釈を行い、ヒトIL-6標準濃度:250pg/mLを用いて、それぞれ、125pg/mL、62.5pg/mL、31.2pg/mL、15.6pg/mL、7.8pg/mLおよび3.9pg/mLにした。1×ADは、ゼロ標準物質(0pg/mL)として役立つ。プレートをブロッキングした後、洗浄を行い、100μLの標準物質および試料を3回ずつアッセイし、2時間、室温でインキュベートした。試料を希釈せず、THP-1またはPBMC細胞からの全上清をアッセイした。洗浄後、100μLの検出抗体を各ウェルに適用し、1×ADで1:200希釈し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、その後、1×ADで1:1000希釈した、1ウェルにつき100μLのアビジン-HRP溶液とともに30分インキュベートした。最終洗浄を5回、洗浄と洗浄の間に少なくとも30秒の間隔をとって行って、バックグラウンドを減少させた。次に、100μLの混合したばかりのTMB基質溶液(1プレートにつき10mL、2つの基質各々から5mLをセットに供給した)を適用し、暗所で15分間放置した。陽性ウェルが青色に変わるシグナル飽和を防止するために観察する必要がある。暗所でのインキュベーション後、1ウェルにつき100μLの2N HSOを用いて反応を停止させた。陽性ウェルは黄色に変わった。30分以内に450nmおよび570nm(バックグラウンド)で吸光度を読み取った。データをMicrosoft Excel 2010プログラムで分析した。
【0326】
結果を図5A~Dに提示する。
【0327】
図5Aおよび5B。LPS刺激THP-1細胞におけるIL-6 mRNAおよびIL-6タンパク質の発現に対するEnv59(ISU)ペプチドの阻害効果。THP-1細胞を完全増殖培地、または30μM Env59ペプチド、60μM Env59ペプチド、30μM対照ペプチド、60μM対照ペプチドのいずれかとともにインキュベートし、同時に1μg/mlのLPSで4時間刺激した。インキュベーション後、試料をRNA抽出用に処理し(proceed for RNA extraction)、上清をELISA実験に使用した。実験を5回繰り返した。5つの典型的な結果のうちの1つを図5Aおよび5Bに示す。インキュベーション時間およびペプチド濃度を経時的な用量応答曲線実験(Wasaporn 2010)で最適化した。
【0328】
図5Cおよび5D。PMA/イオノマイシン刺激ヒトPBMCにおけるIL-6タンパク質およびINF-ガンマタンパク質に対するEnv59(ISU)ペプチドの阻害効果。健常ドナーまたはSLE患者から採取したヒトPBMCを、完全増殖培地、または30μM Env59-H6ペプチド、60μM Env59-H6ペプチド、30μM Env59-GP3ペプチド、60μM Env59-GP3ペプチド、30μM対照ペプチド、60μM対照ペプチドのいずれかとともにインキュベートし、同時に50ng/mlのPMAおよび1μg/mlのイオノマイシンで4時間刺激した。インキュベーション後、上清を回収し、ELISA実験に使用した。実験を5回行った。5つの典型的な結果のうちの1つを図5Cおよび5Dに示す。インキュベーション時間およびペプチド濃度を経時的な用量応答曲線実験で最適化した。
【0329】
Env59ISDは、LPS刺激THP-1細胞におけるIL-6のmRNAおよびタンパク質の発現を強く抑制した。対照ペプチドは、IL-6 mRNA発現レベルに対しても、IL-6タンパク質発現レベルに対しても抑制効果を示さなかった。IL-6タンパク質の発現は、培地のみとインキュベートしたTHP-1細胞において最小であった(図5B)。mRNA最適化に使用したハウスキーピング遺伝子RPL13aのレベルは、ペプチドおよび/またはLPS処置による影響を受けなかった。IL-6は、SLEに関与すると考えられるため、細胞株においてIL-6を阻害するEnv59ISDの能力は、非常に有意であり、SLEの低減は自己免疫疾患の新規処置戦略の構成要素となると予想される。50ng/mlのPMAに加えて1μg/mlのイオノマイシンでPBMCを刺激した。この刺激は、ヒトPBMCにおけるIL-6タンパク質誘導について最も一貫した結果を与える(データを示さない)ので選択した。リアルタイムRT-PCR定量は、PBMCから得ることができる精製RNAの濃度が低いため、行わなかった。結果を図5Cに示す。IL-6レベルは、Env-59ISDペプチドのいずれかとともにインキュベートしたPBMCにおけるほうが有意に低かった。対照ペプチドは、IL-6タンパク質の合成に影響を与えなかった。IL-6タンパク質のレベルは、培地のみとインキュベートしたPBMCでは検出下限より下であった。最後の一連の実験において、本発明者らは、Env59ISDが他の炎症性サイトカイン、例えば、インターフェロンガンマ(IFN-ガンマ)の産生に影響を与えるかを確かめることに関心があった。IFN-ガンマの過剰産生は、全身性エリテマトーデスの発病に関係づけられており、INF-ガンマ受容体の欠乏は、疾患の過程を完全に無効にする。合成Env59ISDペプチドは、PMA/イオノマイシン刺激ヒトPBMCによるINF-ガンマの産生を、異なるレベルでだが、阻害する(図5D)。これらの研究において、エフェクター分子の阻害は、トリパンブルー色素排除により評定して、PBMCへのペプチドの非特異的毒性の単に二次的なものではなかった。
【実施例6】
【0330】
SG#1~SG#17(ID1031~ID1047)により誘導される免疫調節機能。
ペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)での細胞の前処置は、IL-6、TNF-アルファ、IL-10およびIL-8などの炎症誘発性サイトカインを含む、サイトカインの放出に影響を与える。
【0331】
ここで、本発明者らは、ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1におけるIL-6、TNF-アルファ、IL-10およびIL-8の発現レベルに対するペプチド、ペプチドSG#1~SG#17(ここではID1031~ID1047)の調節機能を検査した。THP-1細胞を、10%FBSと100U/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンと2mMのLグルタミンとを補充したRPMI1640中、37℃で、5%COインキュベーターにおいて維持した。THP-1細胞がリポ多糖(LPS)処置に応答してIL-6、TNF-アルファ、IL-10およびIL-8 mRNAおよびタンパク質を誘導することは公知である。THP-1細胞を未処置で放置するか、または最適な用量およびインキュベーション時間を見出すための以前の分析に基づいて、0uM、7.5μM、15μM、30μM、60μMまたは100μMのペプチドの各々、ペプチドSG#1~SG#17(ここではID1031~ID1047)の各々とともにインキュベートし、1μg/μlのLPSで6時間刺激した。
【0332】
表1:ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1におけるIL-6の発現レベルに対するペプチド、ペプチドSG#1~SG#17(ここではID1031~ID1047)の調節機能。(-)阻害は、LPS処置試料のみ(100%での任意セット)と比較したときの阻害パーセンテージ(%)を示す。したがって、100μMでのSG#17についての(-)98.93875は、LPSのみで処置した細胞と比較してペプチドSG#17(ID1047)での処置によりIL-6分泌の98.93875パーセンテージ(%)が阻害された(または0.1%未満のIL-6が分泌された)ことを示す。したがって、100μMでのSG#13についての(+)36.9828パーセンテージ(%)は、分泌されたサイトカインのレベルが、LPSのみで処置した試料(100%)より36.9828パーセンテージ(%)高かった、または136.98285%であったことを示す。
【0333】
【表1】
【0334】
図6(A、B、C、D):TNF-アルファタンパク質分泌の発現レベルに対する、SG#2、SG#3、SG#15、SG#15(ID1032、ID1033、ID1035およびID1045)により誘導される免疫調節機能。
【0335】
図7(A、B、C、D):IL-10の発現レベルに対する、SG#2、SG#3、SG#15、SG#15(ID1032、ID1033、ID1035およびID1045)により誘導される免疫調節機能。
【0336】
図8(A、B、C、D):IL-8の発現レベルに対する、SG#2、SG#3、SG#15、SG#15(ID1032、ID1033、ID1035およびID1045)により誘導される免疫調節機能。
【0337】
IL-6、TNF-アルファ、IL-10およびIL-8ELISA定量の手順
ELISAアッセイは、製造業者の手順書に従って、以下のように行った。各インキュベーション工程の後、密封し、プレートを振盪させなかった捕捉抗体との一晩のインキュベーションを除き、回転テーブルを用いて150~200rpmで振盪させた。ELISA実行の前日、1×コーティングバッファー(ddHOで希釈した5×コーティングバッファー)で1:200希釈した捕捉抗体で96ウェルアッセイプレートを覆った。100μLのこの捕捉抗体溶液をすべてのウェルに添加し、密封し、一晩(16~18時間)4℃でインキュベートした。翌日、使用前にそのセットからのすべての試薬を室温(RT)にした。プレートを1ウェルにつき最低300μLの洗浄バッファー(1×PBS、0.05%Tween20)で4回洗浄した。後続の洗浄の際には残留バッファーを吸収紙でのプレートの吸い取りにより除去した。次に、200μLの1×アッセイ希釈液A(PBS pH=7.4で希釈した5×アッセイ希釈液A)を1時間にわたって添加して、非特異的結合をブロックした。プレートをブロッキングしている間に、すべての試料および標準物質(プレートごとに必須)を調製した。標準物質および試料を3回ずつ実行した。最良の標準濃度(250pg/mLまたはIL-10定量のために300pg/mL)のもの1mLを適切なIL-6、TNF-アルファ、IL-10またはIL-8ストック溶液から1×アッセイ希釈液A(1×AD)で調製した。250pg/mL(またはIL-10定量のために300pg/mL)の最良の標準物質の6種の2倍系列希釈を行い、ヒトIL-6、TNF-アルファまたはIL-8標準濃度:250pg/mL、125pg/mL、62.5pg/mL、31.2pg/mL、15.6pg/mL、7.8pg/mLおよび3.9pg/mLをそれぞれ用い、ならびにIL-10標準濃度:300pg/mL、150pg/mL、75pg/mL、37.5pg/mL、18.75pg/mL、9.375pg/mLおよび4.6875pg/mLをそれぞれ用いた。1×ADは、ゼロ標準物質(0pg/mL)として役立つ。プレートをブロッキングした後、洗浄を行い、100μLの標準物質および試料を3回ずつアッセイし、2時間、室温でインキュベートした。試料を希釈せず、THP-1またはPBMC細胞からの全上清をアッセイした。洗浄後、100μLの検出抗体を各ウェルに適用し、1×ADで1:200希釈し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、その後、1×ADで1:1000希釈した、1ウェルにつき100μLのアビジン-HRP溶液とともに30分インキュベートした。最終洗浄を5回、洗浄と洗浄の間に少なくとも30秒の間隔を取って行って、バックグラウンドを減少させた。次に、100μLの混合したばかりのTMB基質溶液(1プレートにつき10mL、2つの基質各々から5mLをセットに供給した)を適用し、暗所で15分間放置した。陽性ウェルが青色に変わるシグナル飽和を防止するために観察する必要がある。暗所でのインキュベーション後、1ウェルにつき100μLの2N HSOを用いて反応を停止させた。陽性ウェルは黄色に変わった。30分以内に450nmおよび570nm(バックグラウンド)で吸光度を測定した。データをMicrosoft Excel 2010プログラムで分析した。Microsoft Excell 2010プログラムを使用して統計解析を行った。
【実施例7】
【0338】
坂口マウスモデル(自然発症CD4+T細胞介在性慢性自己免疫性関節炎)における関節炎スコアおよびSAA-3発現に対するペプチドの効果。
ここで、本発明者らは、HERV-Env59ペプチドのインビボ効果の調査に関するデータを提示する。疾患発症に対するEnv59ISUペプチドの効果をスクランブルペプチドまたは食塩水処置対照群と比較した。90μg/mlの濃度のマンナン220μlの陰茎内注射により、関節炎を誘発した。示した濃度のEnv-59ペプチド、スクランブルペプチド対照またはNaCL食塩水対照の皮下注射により動物を毎日処置した。関節腫脹を視診によりモニターし、以下のようにスコアを付けた:0、関節腫脹なし;0.1、指関節の腫脹;0.5、手首または足首の軽度腫脹;1.0、手首または足首の重度腫脹。図9Aでは、すべての指、手首および足首のスコアをマウスごとに合計した。
【0339】
図9A
SKGマウスにおける関節炎の発症。縦のバーは、全マウス群(各群動物5匹)の平均+SDを表す。関節炎スコアは、Env3ペプチド処置マウスとNaCl対照処置マウスの間で有意な差がある。ペプチドまたは対照食塩水NaClを日(-1、処置1日前)で開始して週に5回皮下投与した。
【0340】
マウス血清アミロイドA-3ELISA
急性期血清アミロイドAタンパク質(A-SAA)は、炎症の急性期に分泌される。CRPと同様、急性期SAAレベルは、炎症刺激後数時間以内に増加し、増加の規模がCRPのものより大きいこともある。SAA3遺伝子は、炎症誘発性サイトカインIL-6により制御される。ELISAアッセイの質は、2つの参照QC試料(キットに含まれており、期待範囲が分かっているもの)を含めることにより検証されている。ELISAをその製造業者の手順書(Millipore)に従って使用して、血漿試料をSAA3の存在について2回ずつ分析した。動物から瀉血し、屠殺した時点(試験の28日目)と同時点で採取した血漿中のSAA3の濃度を決定した(図9B)。処置群間で中央値の差が検出された。SAA3レベルは、食塩水NaCLで処置したSKGマウスにおいて、HERV-Env59由来ペプチドで処置した動物と比較して上昇した。次に、本発明者らは、循環SAA3レベルと関節炎スコアの相関を処置群に関係なく検査した。線形回帰を使用して、SAA3血漿濃度と関節炎スコア間に正の相関があった(図9)。しかし、この関係は曲線を成しており、片対数(log-X、線形-Y)モデル(R=0.73)に最もよく適合した。これは、循環SAA3のlog増加が、関節炎スコアの単位変化に対応することを示唆する。
【0341】
結果を図9bおよび9Cに提示する。
【実施例8】
【0342】
リアルタイムRT-PCR分析に使用したプライマーのリスト(表2)
【0343】
【表2】
【実施例9】
【0344】
コラーゲン誘発関節炎モデル(CIAモデル)における関節炎スコアに対するペプチドの効果。
CIAモデルは、骨および軟骨に対する抗体を発生させるためのウシコラーゲンでの免疫付与に基づく抗関節炎活性の評価のための「標準」動物モデルである。
【0345】
ここで、本発明者らは、HERV-Env59ペプチドのインビボ効果の調査に関するデータを提示する。目的は、コラーゲン誘発関節炎のマウスモデルにおいて抗関節炎投薬パラダイムを決定することであった。この研究は、雌DBA/1Jマウスで行った。疾患発症に対するEnv59ISUペプチドの効果をメトトレキサートMTX(陽性対照)または食塩水処置対照群と比較した。
【0346】
手順の概要:
0日目:マウスを計量し、以下の表(表3)におけるように首の項部に皮下注射した:
【0347】
【表3】
【0348】
1時間後、マウスの尾の基部に50μlのコラーゲン/CFAエマルジョンを皮下注射した。
【0349】
その後41日の間、毎週月、水および金曜日に関節炎の兆候について以下のようにマウスにスコアを付けた:
・足ごとにスコアを与える
・0=関節炎の目に見える影響なし
・1=1本の指の浮腫および/または紅斑
・2=2本の指の浮腫および/または紅斑
・3=2本より多くの指の浮腫および/または紅斑
・4=足および指全体の重度関節炎
【0350】
関節炎指数(AI)を個々の足スコアの加算により計算した。
【0351】
42日目にマウスを計量し、関節炎の兆候についてスコアを付けた。
【0352】
表4および図10は、AIに基づく疾患発症平均値に対する処置の効果を示す。
【0353】
表5は、最終的な個々の足スコア平均値に対する処置の効果を示す。
【0354】
【表4】
【0355】
【表5】
【0356】
結果の概要:4μ/マウスのHERV-Env59ペプチドでの予防的連日皮下注射は、疾患の70%発生率および疾患重症度の70%低下をもたらした。
【0357】
結論:疾患誘発(disease induction)の1時間前に開始した、4μg/マウスの試験化合物での1日1回の皮下注射は、疾患に関して70%の発生率しかもたらさず、これは、この研究の終了時の疾患重症度の有意な70%低下を伴うものであった。
【実施例10】
【0358】
赤血球に関する溶血アッセイ。
薬物誘発性溶血は、重度毒性になりやすいが比較的稀である。それは、2つの機序(mechansisms)によって起こる:
中毒性溶血 - 薬物、その代謝物、または製剤中の賦形剤の直接毒性。
【0359】
アレルギー性溶血 - 以前に薬物に感作された患者において免疫反応により引き起こされる毒性。
【0360】
正常個体の大多数は、十分に高い溶血薬濃度で中毒性溶血を経験し得るが、大部分の薬物について、溶血の遺伝的素因がある個体にはより低い用量で中毒性溶血が引き起こされる。US FDAは、注射剤用の賦形剤について、IV投与が指示される濃度でインビトロ溶血研究を行って溶血の可能性に関して試験するべきであると提言している。溶血アッセイでは、ヒト赤血球および試験材料を、細胞外、初期エンドソームおよび後期エンド・リソソーム環境を模倣する被定義pHのバッファー中で、コインキュベートする。無傷の赤血球をペレット化するための遠心分離工程後、培地に放出されたヘモグロビンの量を分光光度法(最高ダイナミックレンジのために405nm)で測定する。次いで、パーセント赤血球分布を、界面活性剤で溶解した陽性対照試料を基準にして定量する。このモデル系では、赤血球膜は、エンド・リソソーム小胞を封入する脂質二重層膜の代替物として役立つ。望ましい結果は、生理的pH(7.4)で無視できる溶血、およびおおよそpH5~6.8のエンド・リソソームpH範囲での確固たる溶血である。
【0361】
ここで、本発明者らは、ニワトリからの赤血球を使用する、Env59ペプチド濃度の関数としての溶血の調査に関するデータを提示する。37℃で1時間のインキュベーション時間後のEnv3ペプチドの溶血活性を図6に示す。ニワトリ赤血球(RBC)のパーセンテージ溶解についてのペプチドの濃度反応曲線を示す。陽性対照として、エボラウイルスの糖タンパク質からのペプチドを含め、ここでそれをEbo Zとして与える。100%溶血の対照は、NP-40界面活性剤で処置した赤血球の試料であった。ペプチド濃度をμMとして報告する。
【0362】
結果を図11に提示する。
【実施例11】
【0363】
ペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)についての毒性プロファイル
ここで、本発明者らは、2つのヒト細胞株THP-1またはHT-1080細胞に対するペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)の細胞毒性効果を検査した。
【0364】
CellTiter-Blue(登録商標)細胞生存率アッセイは、マルチウォールプレート(multiwall plate)内に存在する生存細胞の数を推定するための均一な蛍光測定法を提供する。このアッセイは、細胞の代謝能力を測定するために細胞生存率の指示薬である指示色素レサズリンを使用する。生存細胞は、高蛍光性であるレゾルフィンにレサズリンを還元する能力を保持する。
【0365】
CellTiter-Blue(登録商標)試薬は、高純度レサズリンを含有する緩衝溶液である。レサズリンは、色が濃青色であり、内在蛍光を殆ど有さない。しかし、レサズリンは、レゾルフィンに還元されると、ピンク色になり、高蛍光性(579EX/584EM)になる。
【0366】
手順例:
1.培養培地中の細胞が入っている96ウェルアッセイプレートを準備する。HT-1080については、実験の1日目に1ウェルにつき細胞1.6×10個を播種する。1ウェルにつき100μlの完全培養培地(DMEM)に細胞を播種する。
【0367】
2.2日目に、培地を穏やかに除去し、50μlの完全DMEM培地を添加し、適切なウェルにペプチドおよび媒体対照を、各ウェルにおける最終容量が100μlになるように添加する。必要に応じて完全DMEMを補充する。
【0368】
3.望ましい試験曝露期間、約20時間、細胞を培養する。
【0369】
4.3日目に、37℃インキュベーターからアッセイプレートを取り出し、20μl/ウェルのCellTiter-Blue(登録商標)試薬を添加する。
【0370】
5.10秒間震盪させる。
【0371】
6.標準細胞培養条件を使用して4時間インキュベートする。
【0372】
7.10秒間プレートを振盪させ、560/590nmで蛍光を記録する。
【0373】
結果:
ペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)についての毒性プロファイル。すべてのペプチドを投薬量漸増(10nm、30nM、100nM、1μM、10μM、30μM、100μMおよび300μM)で試験した。1μMのIC50を有する細胞毒性細胞透過性ペプチドを陽性対照として同じ投薬量漸増で含めた。
【0374】
被験ペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)のいずれも、投薬量漸増(10nm、30nM、100nM、1μM、10μM、30μM、100μMおよび300μM)でTHP-1細胞に対してもHT-1080細胞に対しても毒性効果の兆候を示さない。図12は、SG#16(ID1046)についての代表グラフである。
【0375】
【表6】
【0376】
ペプチドSG#1~SG#17(ID1031~ID1047)のいずれも、投薬量漸増(10nm、30nM、100nM、1μM、10μM、30μM、100μMおよび300μM)でTHP-1細胞に対してもHT-1080細胞に対しても毒性効果の兆候を示さないので、EC50を計算しない。
【実施例12】
【0377】
コラーゲン誘発関節炎モデル(CIAモデル)における関節炎スコアに対するペプチドの効果、研究番号2。
CIAモデルは、実施例9において説明したように、骨および軟骨に対する抗体を発生させるためのウシコラーゲンでの免疫付与に基づく抗関節炎活性の評価のための「標準」動物モデルである。
【0378】
ここで、本発明者らは、HERV-Env59、SG#2、およびSG#5、およびSG#15ペプチドのインビボ効果の調査に関するデータを提示する。目的は、コラーゲン誘発関節炎のマウスモデルにおいて抗関節炎投薬パラダイムを決定することであった。この研究は、雌DBA/1Jマウスで行った。疾患発症に対するEnv59ISUペプチド、SG#2、SG#5またはSG#15ペプチドの効果をメトトレキサートMTX(陽性対照)または食塩水処置対照群と比較する。
【0379】
手順の概要:
0日目:マウスを計量し、以下の表(表6)におけるように首の項部に皮下注射した:
【0380】
【表7】
【0381】
1時間後、マウスの尾の基部に50μlのコラーゲン/CFAエマルジョンを皮下注射した。
【0382】
その後41日の間、毎週月、水および金曜日に関節炎の兆候について以下のようにマウスにスコアを付けた:
・足ごとにスコアを与える
・0=関節炎の目に見える影響なし
・1=1本の指の浮腫および/または紅斑
・2=2本の指の浮腫および/または紅斑
・3=2本より多くの指の浮腫および/または紅斑
・4=足および指全体の重度関節炎
【0383】
関節炎指数(AI)を個々の足スコアの加算により計算した。
【0384】
42日目にマウスを計量し、関節炎の兆候についてスコアを付けた。
【0385】
表7および図13は、AIに基づく疾患発症平均値に対する処置の効果を示す。
【0386】
表8は、最終的な個々の足スコア平均値に対する処置の効果を示す。
【0387】
表7
疾患発症(AI)平均値(Avarage)に対する処置の効果:
疾患発症(AI)平均値に対する処置の効果:
【0388】
【表8】
【0389】
表8 最終的な個々の足スコアの平均値に対する処置の効果:
【0390】
【表9】
【0391】
結果の概要および結論:
SG#2ペプチドでの予防的処置の効果(群3):
疾患誘発の1時間前に開始した、4μg/マウスのSG#2ペプチドでの1日1回の皮下注射は、30%の疾患発生率しかもたらさず、これは、この研究の終了時の疾患重症度の有意な90%低下を伴うものであった。この処置計画は、マウス体重減少に対して効果がなかった。
【0392】
SG#5ペプチドでの予防的処置の効果(群4):
疾患誘発の1時間前に開始した、4μg/マウスのSG#5ペプチドでの1日1回の皮下注射は、80%の疾患発生率をもたらし、これは、この研究の終了時の疾患重症度の有意な70%低下を伴うものであった。この処置計画は、マウス体重減少に対して効果がなかった。
【0393】
SG#15ペプチドでの予防的処置の効果(群5):
疾患誘発の1時間前に開始した、4μg/マウスのSG#15ペプチドでの1日1回の皮下注射は、30%の疾患発生率しかもたらさず、これは、この研究の終了時の疾患重症度の有意な97%低下を伴うものであった。この処置計画は、マウス体重減少に対して効果がなかった。
【0394】
HERV-Env59ペプチドでの予防的処置の効果(群6):
疾患誘発の1時間前に開始した、4μg/マウスの試験化合物4での1日1回の皮下注射は、80%の疾患発生率をもたらし、これは、この研究の終了時の疾患重症度の有意な67%低下を伴うものであった。この処置計画は、マウス体重減少に対して効果がなかった。
【0395】
【表10】

【表11】
【0396】
SG#16は、ペプチドKGLSILLNEEにおけるリシン残基のαおよびεアミノ基にC末端がカップリングされている2つのLQNRRGLペプチドを有する、分岐ペプチド構造を有する。そのような構造を描写する1つの方法は、以下の通りである:(LQNRRGL)(>K)GLSILLNEE
【0397】
SG#10は、配列LQNRRGLGLSILLNEECGPGPGPを有し、この配列は、SG#17と同一であるが、そのC末端にカップリングされている追加のNH2基を有する。
【0398】
アミノ酸の1文字および3文字記号を以下の表1に提供する。
【0399】
【表12】

【表13】
【0400】
項目
(項目1)
配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含むポリペプチド。
【0401】
(項目2)
配列番号1~配列番号1043の中から選択される配列またはその断片に結合している配列LSILLNEE(配列番号26)を含む、項目1に記載のポリペプチド。
【0402】
(項目3)
GLSILLNEEC(配列番号25)、LQNRRGLGLSILLNEECEEGPGPGP(配列番号27)、LQNRRGLDLSILLNEECGPGPGP(配列番号28)、GLSILLNEECGPGPGP(配列番号29)およびLQNRRGLLQNRRGLGLSILLNEE(配列番号30)の中から選択されるペプチド配列を含むかまたはからなる、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0403】
(項目4)
配列:LQNRRGLGLSILLNEEC(配列番号1)と少なくとも70%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含む、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0404】
(項目5)
配列番号1と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含む、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0405】
(項目6)
配列番号1~25の配列の中から選択される配列と少なくとも76%、より好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも94%、好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなるかまたはそれを含む、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0406】
(項目7)
250未満のアミノ酸、好ましくは200未満のアミノ酸、より好ましくは175未満のアミノ酸、好ましくは150未満のアミノ酸、より好ましくは125未満のアミノ酸、好ましくは100未満のアミノ酸、より好ましくは75未満のアミノ酸、好ましくは60未満のアミノ酸、より好ましくは50未満のアミノ酸、好ましくは40未満のアミノ酸、より好ましくは35未満のアミノ酸、好ましくは30未満のアミノ酸、より好ましくは25未満のアミノ酸、好ましくは20未満のアミノ酸、より好ましくは19未満のアミノ酸、好ましくは18未満のアミノ酸、より好ましくは17未満のアミノ酸、好ましくは16未満のアミノ酸、より好ましくは15未満のアミノ酸、好ましくは14未満のアミノ酸、より好ましくは13未満のアミノ酸、好ましくは12未満のアミノ酸、より好ましくは11未満のアミノ酸、好ましくは10未満のアミノ酸、より好ましくは9未満のアミノ酸、好ましくは8未満のアミノ酸、より好ましくは7未満のアミノ酸、好ましくは6未満のアミノ酸を含む、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0407】
(項目8)
少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、より好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16、好ましくは少なくとも17、より好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも35、より好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも125、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも175、より好ましくは少なくとも200、好ましくは少なくとも250のアミノ酸を含む、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0408】
(項目9)
17アミノ酸の長さを有するポリペプチドであって、最初の7つのアミノ酸の配列が配列番号26~1043の配列の中から選択される配列の最初の7つのアミノ酸の配列と同一であり、少なくとも10のアミノ酸がGLSILLNEEC(配列番号25)である、ポリペプチド。
【0409】
(項目10)
1、2、3または4つの点突然変異を含む、項目8に記載のポリペプチド。
【0410】
(項目11)
免疫抑制ドメインであるか、または免疫抑制ドメインとして作用する、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0411】
(項目12)
前記ドメインが、項目1~9のいずれかに記載のポリペプチドから少なくとも1つの点突然変異、欠失または挿入によって得ることができる、項目11に記載のポリペプチド。
【0412】
(項目13)
点突然変異、欠失または挿入の総数が、1、2、3および4の中から選択される、項目11に記載のポリペプチド。
【0413】
(項目14)
点突然変異、欠失または挿入の総数が、4より多い、項目11に記載のポリペプチド。
【0414】
(項目15)
単量体ペプチドである、項目11~14のいずれかに記載のポリペプチド。
【0415】
(項目16)
少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドと架橋されており、および/またはタンパク質に連結されており、前記タンパク質が、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのさらなる免疫抑制ドメインに連結されている、項目11~15のいずれかに記載のポリペプチド。
【0416】
(項目17)
少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドに二量体を形成するように連結されている、項目11~16のいずれかに記載のポリペプチド。
【0417】
(項目18)
前記二量体が同種のものであり、ジスルフィド結合によりN末端とN末端、C末端とC末端および/またはタンデムリピートが架橋されている、項目11~16のいずれかに記載の少なくとも2つの免疫抑制ペプチドを含む、項目17に記載のポリペプチド。
【0418】
(項目19)
少なくとも1つのさらなる免疫抑制ペプチドに同種二量体または異種二量体を形成するように連結されている、項目17または18に記載のポリペプチド。
【0419】
(項目20)
少なくとも2つのさらなる免疫抑制ペプチドに多量体または重合体を形成するように連結されている、項目11~19のいずれかに記載のポリペプチド。
【0420】
(項目21)
1つまたは複数の修飾を含む、項目11~20のいずれかに記載のポリペプチド。
【0421】
(項目22)
前記修飾が、化学的誘導体化、L-アミノ酸置換、D-アミノ酸置換、合成アミノ酸置換、脱アミノ化および脱カルボキシル化からなる群から選択される、項目21に記載のポリペプチド。
【0422】
(項目23)
前記ペプチドまたはタンパク質は、少なくとも1つの修飾を含まないペプチドまたはタンパク質と比較して増加したタンパク質分解抵抗性を有する、項目21または22に記載のポリペプチド。
【0423】
(項目24)
前記項目のいずれかに記載のポリペプチドを含むタンパク質。
【0424】
(項目25)
エンベロープタンパク質である、項目24の記載のタンパク質。
【0425】
(項目26)
項目1~14のいずれかに記載のポリペプチドを含むタンパク質であって、機能成膜糖タンパク質でないタンパク質。
【0426】
(項目27)
融合活性がない、項目1~14のいずれかに記載のポリペプチドを含むタンパク質。
【0427】
(項目28)
膜に結合または連結されていない、項目1~14のいずれかに記載のポリペプチドを含むタンパク質。
【0428】
(項目29)
哺乳動物細胞系または動物モデルにおけるIL-6発現を阻害する、前記項目のいずれかに記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【0429】
(項目30)
前記項目のいずれかに記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする、単離された核酸。
【0430】
(項目31)
項目30に記載の核酸および該核酸の発現に必要なエレメントを含む発現ベクター。
【0431】
(項目32)
真核生物または原核生物またはウイルス発現ベクターである、項目31に記載の発現ベクター。
【0432】
(項目33)
配列LSILLNEE(配列番号26)と少なくとも62%の配列同一性または相同性を有するペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクター。
【0433】
(項目34)
項目1~29のいずれかに記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクター。
【0434】
(項目35)
項目18に記載の核酸、および/または項目31~34のいずれかに記載の発現ベクターを含む組換え細胞。
【0435】
(項目36)
前記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を含み、少なくとも1つの希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤をさらに含む医薬組成物。
【0436】
(項目37)
前記少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞が、前記医薬品の活性成分または唯一の活性成分である、項目36に記載の医薬組成物。
【0437】
(項目38)
医薬組成物の調製のための方法であって、
a.前記項目のいずれかに記載の1つまたは複数のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは組換え細胞を用意し、所望により、前記1つまたは複数のポリペプチドを架橋させる工程;
b.所望により、希釈剤、担体、結合剤、溶媒または賦形剤を用意する工程;
c.物質を用意する工程;
d.用意した1つまたは複数のペプチドを、所望による工程b.の任意の担体および工程d.の物質と混合して、医薬組成物を得る工程
を含む方法。
【0438】
(項目39)
工程c.の前記物質が、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォームおよびシャンプーからなる群から選択される、項目38に記載の方法。
【0439】
(項目40)
項目38または39に従って得ることができる医薬組成物。
【0440】
(項目41)
クリーム、ローション、懸濁性ローション、軟膏、ゲル、香膏、半固形軟膏、油、フォーム、シャンプー、スプレー剤、エアロゾル、経皮パッチおよび絆創膏からなる群の中から選択される、項目36、37または40のいずれかに記載の医薬組成物。
【0441】
(項目42)
前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物を含む生体材料。
【0442】
(項目43)
表面、粒子、メッシュ、デバイス、チューブまたはインプラントの中から選択される、項目42に記載の生体材料。
【0443】
(項目44)
前記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物または生体材料の医学的使用。
【0444】
(項目45)
免疫抑制または免疫調節のための、前記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0445】
(項目46)
疾患の外科手術、予防、治療、診断方法、処置および/または改善における使用のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0446】
(項目47)
自己免疫疾患の処置、改善または予防のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0447】
(項目48)
自己免疫疾患が、SLE(全身性エリテマトーデス)、または関節炎、例えば関節リウマチである、項目47に記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0448】
(項目49)
炎症症状、または急性もしくは慢性炎症などの炎症に関連する障害の処置、改善または予防のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0449】
(項目50)
医薬としての使用のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0450】
(項目51)
対象がヒトまたは動物である、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0451】
(項目52)
臓器に対する使用のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0452】
(項目53)
移植患者の準備または処置のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0453】
(項目54)
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗シンセターゼ抗体症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロ病/バロ同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、汎発性皮膚全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板エリテマトーデス、湿疹、子宮内膜症、腱付着物炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、肝炎、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症細胞脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合型結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌関連神性経精神障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、じん麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症の中から選択される症状の予防または処置を含む、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0454】
(項目55)
尋常性ざ瘡、アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アテローム動脈硬化症、自己免疫疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、血管炎、間質性膀胱炎、がん、うつ病、白血球増多症、および白血球欠損症の中から選択される障害の処置または予防のための、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0455】
(項目56)
敗血症の予防または処置を含む、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0456】
(項目57)
脊椎関節炎の予防または処置を含む、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0457】
(項目58)
喘息および/またはアレルギーの予防または処置を含む、前記項目のいずれかに記載の使用のためのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラント。
【0458】
(項目59)
自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善方法における使用のためのポリペプチドであって、前記免疫抑制ドメインを発現する遺伝子配列が、前記自己免疫疾患に罹患している患者群において健常対照群と比較して発現増加または減少を示す、項目11~23のいずれかに記載のポリペプチド。
【0459】
(項目60)
前記免疫抑制ドメインが、内在性レトロウイルス、好ましくは、ヒト内在性レトロウイルスからのものである、項目59に記載のポリペプチド。
【0460】
(項目61)
前記免疫抑制ドメインが、配列番号:番号1~1043の配列の中から選択される、項目59または60に記載のポリペプチド。
【0461】
(項目62)
自己免疫疾患または該自己免疫疾患と関連する少なくとも1つの症状の予防または処置または改善のための、配列番号:番号1~1043の中から選択されるポリペプチドの使用。
【0462】
(項目63)
抗炎症薬または免疫抑制もしくは免疫調節用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0463】
(項目64)
移植患者の準備または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0464】
(項目65)
自己免疫または炎症性疾患の予防または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0465】
(項目66)
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗シンセターゼ抗体症候群、動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロ病/バロ同心円硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、汎発性皮膚全身性強皮症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板エリテマトーデス、湿疹、子宮内膜症、腱付着物炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、肝炎、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症細胞脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合型結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、眼瘢痕性類天疱瘡、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌関連神性経精神障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感神経性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、じん麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症の中から選択される症状の予防または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0466】
(項目67)
急性もしくは慢性炎症などの、炎症または炎症に関連する症状の予防または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0467】
(項目68)
尋常性ざ瘡、アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アテローム動脈硬化症、自己免疫疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、血管炎、間質性膀胱炎、がん、うつ病、白血球増多症、および白血球欠損症の中から選択される症状の予防または処置用の医薬の製造のための、項目67に記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0468】
(項目69)
敗血症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)および脊椎関節炎の中からの少なくとも症状選択の予防または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0469】
(項目70)
喘息および/またはアレルギーの予防または処置用の医薬の製造のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞、医薬組成物またはインプラントの使用。
【0470】
(項目71)
ナノ粒子および/または生体材料のコーティングのための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用。
【0471】
(項目72)
少なくとも1つのナノ粒子または生体材料への免疫応答の少なくとも部分的抑制のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用。
【0472】
(項目73)
患者におけるナノ粒子および/または生体材料および/または医療デバイスおよび/またはインプラントのインビボ半減期を増加させるための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用。
【0473】
(項目74)
疾患の診断のための内在性レトロウイルスの使用。
【0474】
(項目75)
発現レベルまたはコピー数が、ある症状を有する対象において該症状がない対象と比較して異なる内在性レトロウイルスの、疾患の診断のための使用。
【0475】
(項目76)
発現レベルまたはコピー数が自己免疫症状を有する対象において該症状がない対象と比較して異なる内在性レトロウイルスの、疾患の診断のための使用。
【0476】
(項目77)
疾患の診断のための、HERV-H59に関連する一塩基多型の使用。
【0477】
(項目78)
SLEの診断のための、HERV-H59の使用。
【0478】
(項目79)
前記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の予防または治療有効量を1回または複数回または数回の投与によりそれを必要とする対象に投与することにより、自己免疫疾患および/または炎症症状を予防的にまたは治療的に処置する方法。
【0479】
(項目80)
自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善の方法であって、
a.前記自己免疫疾患に罹患している患者群における少なくとも1つの内在性レトロウイルスの発現またはコピー数を測定すること;
b.前記発現を、健常対照群における前記少なくとも1つの内在性レトロウイルスの発現と比較すること;
c.前記患者群中で異なる発現を有する少なくとも1つの内在性レトロウイルスを同定すること;
d.所望により、前記少なくとも1つの内在性レトロウイルスにおける少なくとも1つの免疫抑制ドメインを同定すること;
e.少なくとも1つの免疫抑制ドメイン、好ましくは、前記少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含有するタンパク質および/または前記内在性レトロウイルスにより発現されたタンパク質に含有されている少なくとも1つの免疫抑制ドメインの投与により、前記症状に罹患している少なくとも1名の患者を処置すること
を含む方法。
【0480】
(項目81)
自己免疫疾患に関連する症状の予防または処置または改善の方法であって、
f.前記自己免疫疾患に罹患している患者群における少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含む少なくとも1つのタンパク質またはポリペプチドの濃度を測定すること;
g.前記濃度を健常対照群における濃度と比較すること;
h.前記患者群中で異なる発現を有する少なくとも1つの免疫抑制ドメインを同定すること;
i.前記少なくとも1つの免疫抑制ドメイン、および/または前記少なくとも1つの免疫抑制ドメインを含むタンパク質の投与により、前記症状に罹患している少なくとも1名の患者を処置すること
を含む方法。
【0481】
(項目82)
前記異なる発現が、発現増加および減少の中から選択される、項目80または81に記載の方法。
【0482】
(項目83)
前記内在性レトロウイルスがヒト内在性レトロウイルスである、項目80~82のいずれかに記載の方法。
【0483】
(項目84)
前記ヒト内在性レトロウイルスがHERV-HサブファミリーまたはHERV-Kサブファミリーに属する、項目83に記載の方法。
【0484】
(項目85)
前記内在性レトロウイルスが、タンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有する、項目80~84のいずれかに記載の方法。
【0485】
(項目86)
前記少なくとも1つのオープンリーディングフレームが、少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも250、好ましくは少なくとも300、より好ましくは少なくとも350、好ましくは少なくとも400ヌクレオチドの長さを有する、項目85に記載の方法。
【0486】
(項目87)
注射、吸入、局所、経皮、経口、経鼻、膣または肛門デリバリーの中から選択される投与経路による症状または疾患の予防または処置のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用。
【0487】
(項目88)
注射の方式が、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)および(筋肉内)IMの中から選択される、項目87に記載の使用。
【0488】
(項目89)
炎症などの障害の患部への直接注射による疾患の処置のための、項目88に記載の使用。
【0489】
(項目90)
皮膚疾患、乾癬、関節炎、喘息、敗血症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、SLE、および脊椎関節炎の中から選択される症状の処置のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用。
【0490】
(項目91)
関節炎の処置のための、前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、前記組成物が炎症部位に直接注射される、使用。
【0491】
(項目92)
前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、好ましくは前記組成物が経口送達される、胃腸過敏性疾患、食物アレルギー疾患、食物不耐性疾患および炎症性腸疾患の中から選択される症状の処置のための使用。
【0492】
(項目93)
前記項目のいずれかに記載のポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、組換え細胞または医薬組成物の使用であって、前記組成物が吸入により送達される喘息の処置のための使用。
【0493】
参考文献
【表14】
【表15】
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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