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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燃料添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10L 10/10 20060101AFI20220309BHJP
   C10L 1/232 20060101ALI20220309BHJP
   C10L 1/06 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C10L10/10
C10L1/232
C10L1/06
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018542198
(86)(22)【出願日】2017-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017052933
(87)【国際公開番号】W WO2017137521
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】16155212.0
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597142701
【氏名又は名称】ビーピー オイル インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】アリ,ラナ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,ソーリン ベイシル
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02308849(GB,A)
【文献】特表2009-502857(JP,A)
【文献】特表2003-511491(JP,A)
【文献】国際公開第2015/003961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 10/10
C10L 1/232
C10L 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火内燃機関用の燃料に用いるための添加剤組成物であって、オクタン価向上添加剤を含む添加剤組成物が、以下の式を有し:
【化1】
式中:
は、水素であり;
、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
、R、R、及びRは、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
Xは、-O-又は-NR10-から選択され、ここで、R10は、水素及びアルキル基から選択され;並びに
nは、0又は1であり;
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R11及びR12のうちの少なくとも1つが、水素以外の基から選択され;
及び、1つまたはそれ以上のさらなる燃料添加剤を含む
添加剤組成物。
【請求項2】
、R、R、R、R11、及びR12が、各々独立して、水素及びアルキル基から、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から、より好ましくは、水素、メチル、及びエチルから、さらにより好ましくは、水素及びメチルから選択される請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
、R、R、及びRが、各々独立して、水素、アルキル、及びアルコキシ基から、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ基から、より好ましくは、水素、メチル、エチル、及びメトキシから、さらにより好ましくは、水素、メチル、及びメトキシから選択される請求項1又は請求項2に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、水素以外の基から選択される請求項1~3のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの5つ以下、好ましくは、3つ以下、より好ましくは、2つ以下が、水素以外の基から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
及びRのうちの少なくとも1つが、水素であり、好ましくは、R及びRが水素である請求項1~5のずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素であり、好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である請求項1~6のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、メチル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素であり、好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つが、メチル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である請求項7に記載の添加剤組成物。
【請求項9】
Xが、-O-又は-NR10-であり、ここで、R10は、水素、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から、好ましくは、水素、メチル、及びエチル基から選択され、さらにより好ましくは、水素であり、好ましくは、Xが、-O-である請求項1~8のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項10】
nが、0である請求項1~9のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項11】
前記添加剤が:
【化2】
から選択され、好ましくは:
【化3】
から選択される請求項1~10のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項12】
火花点火内燃機関用の燃料に用いるための添加剤組成物であって、オクタン価向上添加剤;
【化4】
を含み、
及び、1つまたはそれ以上のさらなる燃料添加剤を含む
添加剤組成物。
【請求項13】
前記1つまたはそれ以上のさらなる燃料添加剤のうちの少なくとも1つが、清浄剤である請求項1~12のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項14】
前記オクタン価向上添加剤が、少なくとも10重量%、好ましくは、15重量%~95重量%、より好ましくは、20重量%~80重量%、さらにより好ましくは、30重量%~80重量%の量で前記添加剤組成物中に存在する請求項1~13のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項15】
(i)請求項1~12のいずれか一項に記載のオクタン価向上添加剤;並びに
(ii)前記オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段;
を含む容器。
【請求項16】
前記手段が、前記容器を前記燃料系と結合するように構成されている請求項15に記載の容器。
【請求項17】
前記手段が、漏斗、注ぎ口、又はインジェクタを含む請求項15又は請求項16に記載の容器。
【請求項18】
前記燃料系が、エンジン又は燃料タンカーを含む請求項15~17のいずれか一項に記載の容器。
【請求項19】
(a)添加剤重量/ベース燃料重量基準で、0.1%~10%、より好ましくは、0.2%~5%、さらにより好ましくは、0.25%~2%、なおさらにより好ましくは、0.3%~1%の率で燃料タンク又は燃料タンカー中の燃料を処理するのに適する量で;
(b)燃料タンク又は燃料タンカー中の燃料のオクタン価を少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも2、さらにより好ましくは、少なくとも2.5高めるのに適する量で;及び/又は
(c)100ml超、好ましくは、150ml超、より好ましくは、200ml超である量で;
オクタン価向上添加剤を含む請求項1~12のいずれか一項に記載の容器。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか一項に記載のオクタン価向上添加剤;及び
火花点火内燃機関用の燃料に前記オクタン価向上添加剤を用いるための指示
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火内燃機関用の燃料に用いるための添加剤組成物に関する。詳細には、本発明は、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めるのに用いるためのオクタン価向上添加剤を含む添加剤組成物に関する。本発明はさらに、オクタン価向上添加剤を含む容器及びキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火内燃機関は、家庭用及び産業用の両方における動力として広く用いられている。例えば、火花点火内燃機関は、自動車産業において、乗用車などの車両の動力として一般的に用いられている。
【0003】
火花点火内燃機関中での燃焼は、火炎フロントを作り出す火花によって開始される。火炎フロントは、火花プラグから進行し、ほとんどすべての燃料が消費されるまで、燃焼室を素早く滑らかに横切って移動する。
【0004】
火花点火内燃機関は、より高い圧縮比で運転される場合に、すなわち、エンジン中の燃料/空気混合物に対して、その点火前により高い圧縮度が掛けられる場合に、より効率的であると広く考えられている。したがって、最新の高性能火花点火内燃機関は、高い圧縮比で運転される傾向にある。より高い圧縮比は、エンジンが吸気に対して高度の追加の過給圧を有する場合にも所望される。
【0005】
しかし、エンジン内の圧縮比を高めることは、特に、エンジンが過給される場合、自己着火を含む異常燃焼の可能性を増加させる。自己着火の形態は、典型的には火炎フロントと燃焼室壁/ピストンとの間の未燃ガスであるとして理解される末端ガスが自然着火する場合に発生する。着火すると、末端ガスは、燃焼室内の火炎フロントの前方で急速に早過ぎる燃焼を起こし、シリンダー内の圧力の急な上昇が引き起こされる。これは、特徴的なノッキング音又はピンキング音を発生させ、「ノック」、「デトネーション」、又は「ピンキング」として知られる。場合によっては、特に過給エンジンの場合、他の形態の自己着火が、「メガノック」又は「スーパーノック」として知られる破壊的な現象を引き起こすことさえあり得る。
【0006】
ノックは、燃料のオクタン価(耐ノック性又はオクタン指数としても知られる)がエンジンの耐ノック要件よりも低い場合に発生する。オクタン価は、任意の燃料においてノックが発生するポイントを評価するために用いられる標準的な尺度である。より高いオクタン価は、燃料-空気混合物が、末端ガスの自己着火が発生する前に、より高い圧縮に耐えることができることを意味している。言い換えると、オクタン価が高い程、燃料の耐ノック特性が良好となる。リサーチオクタン価(RON)又はモーターオクタン価(MON)を用いて、燃料の耐ノック性能を評価することができるが、最近の文献では、最新の自動車エンジンにおける燃料の耐ノック性能の指標として、RONに重点が置かれつつある。
【0007】
したがって、高いオクタン価、例えば、高いRONを有する火花点火内燃機関用の燃料が求められている。特に、吸気に対して高度の追加の過給圧を用いるエンジンを含む高圧縮比エンジン用の燃料が、より高いエンジン効率をノックなしで享受することができるように高いオクタン価を有することが求められている。
【0008】
オクタン価を高めるために、典型的には、オクタン価改良添加剤が燃料に添加される。そのような添加剤添加は、そうでなければベース燃料のオクタン価が低過ぎる場合に燃料が該当する燃料規格を満たすように、燃料ターミナル又はバルク燃料ブレンダーを例とする精製所又は他の供給業者によって行われ得る。
【0009】
例えば、鉄、鉛、又はマンガンを含む有機金属化合物は、よく知られたオクタン価改良剤であり、テトラエチル鉛(TEL)が、非常に効果的なオクタン価改良剤として広く用いられてきた。しかし、TEL及び他の有機金属化合物は、現在、一般的には、用いられたとしても少量でしか燃料に用いられず、それは、それらが毒性であり得、エンジンに損傷を与え、環境を破壊し得るからである。
【0010】
金属系ではないオクタン価改良剤としては、含酸素化合物(例:エーテル及びアルコール)、及び芳香族アミンが挙げられる。しかし、これらの添加剤も、様々な欠点を抱えている。例えば、芳香族アミンであるN-メチルアニリン(NMA)は、燃料のオクタン価に対して著しい効果を得るには、比較的高い処理率(1.5から2%添加剤重量/ベース燃料重量)で用いられる必要がある。NMAも毒性であり得る。含酸素化合物は、NMAの場合と同様に、燃料のエネルギー密度を低下させ、高い処理率で添加する必要があり、燃料保存、燃料ライン、シール、及び他のエンジンコンポーネントとの適合性の問題を引き起こす可能性がある。
【0011】
NMAに代わる非金属オクタン価改良剤を見出すための取り組みが行われてきた。英国特許第2308849号には、耐ノック剤として用いるためのジヒドロベンゾキサジン誘導体が開示されている。しかし、これらの誘導体から得られる燃料のRONの上昇は、同様の処理率においてNMAによって得られるよりも著しく小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、例えばNMAの耐ノック効果に少なくとも匹敵する耐ノック効果を実現することができ、同時に上記で注目した問題の少なくとも一部を軽減する火花点火内燃機関用の燃料のための添加剤が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、2個の隣接する芳香族炭素原子を6又は7員環飽和ヘテロ環式環と共有する6員環芳香族環を含み、6又は7員環飽和ヘテロ環式環は、共有炭素原子のうちの1個と直接結合して二級アミンを形成する窒素原子、及び他方の共有炭素原子と直接結合した酸素又は窒素から選択される原子を含み、6又は7員環ヘテロ環式環の残りの原子は炭素であるという化学構造を有する添加剤によって、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価、特にRONの著しい上昇が得られることがここで見出された。そのようなオクタン価向上添加剤は、NMAよりも低い毒性を示すことも予測される。毒性が低減されると、オクタン価向上添加剤を含む添加剤組成物、容器、及びキットは、オクタン価向上の有益性を提供することができると同時に、保存、輸送、使用、及び廃棄を容易とすることができる。
【0014】
したがって、本発明は、火花点火内燃機関用の燃料に用いるための添加剤組成物を提供し、添加剤組成物は、2個の隣接する芳香族炭素原子を6又は7員環飽和ヘテロ環式環と共有する6員環芳香族環を含み、6又は7員環飽和ヘテロ環式環は、共有炭素原子のうちの1個と直接結合して二級アミンを形成する窒素原子、及び他方の共有炭素原子と直接結合した酸素又は窒素から選択される原子を含み、6又は7員環ヘテロ環式環の残りの原子は炭素であるという化学構造を有するオクタン価向上添加剤、及び1つ以上のさらなる燃料添加剤を含む。
【0015】
本発明はまた、
(i)本明細書で述べるオクタン価向上添加剤;及び
(ii)オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段
を含む容器も提供する。
【0016】
本発明はさらに、
(a)添加剤重量/ベース燃料重量基準で、0.1%から10%、より好ましくは、0.2%から5%、さらにより好ましくは、0.25%から2%、なおさらにより好ましくは、0.3%から1%の率で燃料タンク又は燃料タンカー中の燃料を処理するのに適する量で;
(b)燃料タンク又は燃料タンカー中の燃料のオクタン価を少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも2、さらにより好ましくは、少なくとも2.5高めるのに適する量で;又は
(c)100ml超、好ましくは、150ml超、より好ましくは、200ml超である量で
オクタン価向上添加剤を含む容器も提供し、ここで、オクタン価向上添加剤は、本明細書で述べる通りである。
【0017】
また、
本明細書で述べるオクタン価向上添加剤;及び
火花点火内燃機関用の燃料にオクタン価向上添加剤を用いるための説明書
を含むキットも提供される。
【0018】
本明細書で述べるオクタン価向上添加剤は、好ましくは、以下の式を有し:
【0019】
【化1】
【0020】
式中:
は、水素であり;
、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
、R、R、及びRは、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
Xは、-O-又は-NR10-から選択され、ここで、R10は、水素及びアルキル基から選択され;並びに
nは、0又は1である。
【0021】
本発明の他の態様は、火花点火内燃機関用の燃料における本明細書で述べる添加剤組成物の使用、並びに火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めるための、さらには、火花点火内燃機関に用いられる場合に、例えば、自己着火、早期着火、ノック、メガノック、及びスーパーノックのうちの少なくとも1つについての燃料の傾向を低減することによって、燃料の自己着火特性を改善するための、本明細書で述べる添加剤組成物の使用を含む。
【0022】
また、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めるための方法、さらには、火花点火内燃機関に用いられる場合に、例えば、自己着火、早期着火、ノック、メガノック、及びスーパーノックのうちの少なくとも1つについての燃料の傾向を低減することによって、燃料の自己着火特性を改善するための方法も提供され、前記方法は、本明細書で述べる添加剤組成物を燃料とブレンドすることを含む。
【0023】
本明細書で述べる添加剤組成物を含む燃料組成物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1a~cは、本明細書で述べる様々な量のオクタン価向上添加剤で処理した場合の、燃料のオクタン価(RON及びMONの両方)の変化のグラフを示す。具体的には、図1aは、添加剤添加前のRONが90であるE0燃料のオクタン価の変化のグラフを示し;図1bは、添加剤添加前のRONが95であるE0燃料のオクタン価の変化のグラフを示し;図1cは、添加剤添加前のRONが95であるE10燃料のオクタン価の変化のグラフを示す。
図2図2a~cは、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤及びN-メチルアニリンで処理した場合の、燃料のオクタン価(RON及びMONの両方)の変化を比較するグラフを示す。具体的には、図2aは、処理率に対するE0燃料及びE10燃料のオクタン価の変化のグラフを示し;図2bは、0.67%重量/重量の処理率でのE0燃料のオクタン価の変化のグラフを示し;図2cは、0.67%重量/重量の処理率でのE10燃料のオクタン価の変化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
オクタン価向上添加剤
本発明は、オクタン価向上添加剤が用いられる添加剤組成物、キット、容器、使用、及び方法を提供する。
【0026】
オクタン価向上添加剤は、2個の隣接する芳香族炭素原子を6又は7員環のそれ以外は飽和であるヘテロ環式環と共有する6員環芳香族環を含み、6又は7員環飽和ヘテロ環式環は、共有炭素原子のうちの1個と直接結合して二級アミンを形成する窒素原子、及び他方の共有炭素原子と直接結合した酸素又は窒素から選択される原子を含み、6又は7員環ヘテロ環式環の残りの原子は炭素であるという化学構造を有する(簡便に、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤、と称される)。理解されるように、6員環芳香族環と2個の隣接する芳香族炭素原子を共有する6又は7員環ヘテロ環式環は、2個の共有炭素原子以外は飽和であると見なされ得ることから、「それ以外では飽和である」と称され得る。
【0027】
別の言い方をすると、本発明で用いられるオクタン価向上添加剤は、置換若しくは無置換の3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン(ベンゾモルホリンとしても知られる)、又は置換若しくは無置換の2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾキシアゼピンであってよい。言い換えると、この添加剤は、3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン若しくはその誘導体、又は2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾキシアゼピン若しくはその誘導体であってよい。したがって、添加剤は、1つ以上の置換基を含んでいてよく、そのような置換基の数又は種類に関して特に限定されない。
【0028】
好ましい添加剤は、以下の式を有し:
【0029】
【化2】
【0030】
式中:
は、水素であり;
、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
、R、R、及びRは、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、二級アミン、及び三級アミン基から選択され;
Xは、-O-又は-NR10-から選択され、ここで、R10は、水素及びアルキル基から選択され;並びに
nは、0又は1である。
【0031】
ある実施形態では、R、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、水素及びアルキル基から、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択される。より好ましくは、R、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、水素、メチル、及びエチルから、さらにより好ましくは、水素及びメチルから選択される
【0032】
ある実施形態では、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素、アルキル、及びアルコキシ基から、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ基から選択される。より好ましくは、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素、メチル、エチル、及びメトキシから、さらにより好ましくは、水素、メチル、及びメトキシから選択される。
【0033】
有利には、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの少なくとも1つ、並びに好ましくは、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、水素以外の基から選択される。より好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つは、水素以外の基から選択される。別の言い方をすると、オクタン価向上添加剤は、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12によって表される位置のうちの少なくとも1つで、好ましくは、R、R、R、及びRによって表される位置のうちの少なくとも1つで、より好ましくは、R及びRによって表される位置のうちの少なくとも1つで置換されていてもよい。水素以外の少なくとも1つの基が存在することで、燃料中でのオクタン価向上添加剤の溶解性が改善され得るものと考えられる。
【0034】
また、有利には、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの5つ以下、好ましくは、3つ以下、より好ましくは、2つ以下が、水素以外の基から選択される。好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの1又は2つが、水素以外の基から選択される。ある実施形態では、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの1つだけが、水素以外の基から選択される。
【0035】
及びRのうちの少なくとも1つが水素であることも好ましく、より好ましくは、R及びRの両方が水素である。
【0036】
好ましい実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である。より好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である。
【0037】
さらなる好ましい実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、メチル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である。より好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つが、メチル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12のうちの残りが、水素である。
【0038】
好ましくは、Xは、-O-又は-NR10-であり、ここで、R10は、水素、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から、好ましくは、水素、メチル、及びエチル基から選択される。より好ましくは、R10は、水素である。好ましい実施形態では、Xは、-O-である。
【0039】
nは、0又は1であってよいが、nは0であることが好ましい。
【0040】
本発明で用いられてよいオクタン価向上添加剤としては、以下が挙げられる:
【0041】
【化3】
【0042】
好ましいオクタン価向上添加剤としては、以下が挙げられる:
【0043】
【化4】
【0044】
添加剤の混合物が用いられてもよい。例えば:
【0045】
【化5】
【0046】
の混合物が本発明で用いられてもよい。
【0047】
アルキル基への言及は、アルキル基の異なる異性体を含むことは理解される。例えば、プロピル基への言及は、n-プロピル及びi-プロピル基を包含し、ブチルへの言及は、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル基を包含する。
【0048】
添加剤組成物
本発明の態様では、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤は、1つ以上のさらなる燃料添加剤を含む添加剤組成物に用いられてよい。
【0049】
オクタン価向上添加剤は、添加剤組成物に対して、少なくとも10重量%、好ましくは、15重量%から95重量%、より好ましくは、20重量%から80重量%、さらにより好ましくは、30重量%から80重量%の量で添加剤組成物中に存在していてよい。
【0050】
添加剤組成物中に存在してよいさらなる燃料添加剤の例としては、清浄剤、摩擦調整剤/耐摩耗性添加剤、腐食防止剤、燃焼調整剤、酸化防止剤、バルブシートリセッション添加剤(valve seat recession additives)、濁り防止剤(dehazers)/抗乳化剤、着色剤、マーカー、臭気剤、帯電防止剤、抗微生物剤、及び潤滑性向上剤が挙げられる。好ましくは、1つ以上のさらなる燃料添加剤のうちの少なくとも1つは、清浄剤である。
【0051】
さらなるオクタン価改良剤が添加剤組成物に用いられてもよく、すなわち、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤ではないオクタン価改良剤、すなわち、2個の隣接する芳香族炭素原子を6又は7員環飽和ヘテロ環式環と共有する6員環芳香族環を含み、6又は7員環飽和ヘテロ環式環は、共有炭素原子のうちの1個と直接結合して二級アミンを形成する窒素原子、及び他方の共有炭素原子と直接結合した酸素又は窒素から選択される原子を含み、6又は7員環ヘテロ環式環の残りの原子は炭素であるという化学構造を有していないオクタン価改良剤である。
【0052】
適切な清浄剤の例としては、ポリイソブチレンアミン(PIBアミン)及びポリエーテルアミンが挙げられる。
【0053】
適切な摩擦調整剤及び耐摩耗性添加剤の例としては、灰形成添加剤(ash-producing additives)又は無灰添加剤であるものが挙げられる。摩擦調整剤及び耐摩耗性添加剤の例としては、エステル(例:モノオレイン酸グリセロール)及び脂肪酸(例:オレイン酸及びステアリン酸)が挙げられる。
【0054】
適切な腐食防止剤の例としては、有機カルボン酸のアンモニウム塩、アミン、及びヘテロ環式芳香族が挙げられ、例えば、アルキルアミン、イミダゾリン、及びトリルトリアゾールである。
【0055】
適切な酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤(例:2,4-ジ-tert-ブチルフェノール及び3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸)、及びアミン系酸化防止剤(例:パラ-フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、及びこれらの誘導体)が挙げられる。
【0056】
適切なバルブシートリセッション添加剤の例としては、カリウム又はリンの無機塩が挙げられる。
【0057】
適切なさらなるオクタン価改良剤の例としては、非金属オクタン価改良剤が挙げられ、N-メチルアニリン及び窒素系無灰オクタン価改良剤を含む。メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、フェロセン、及びテトラエチル鉛を含む金属含有オクタン価改良剤も、用いられてよい。しかし、好ましい実施形態では、添加剤組成物は、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、並びに例えばフェロセン及びテトラエチル鉛を含む他の金属オクタン価改良剤を含む添加される金属オクタン価改良剤をまったく含まない。
【0058】
適切な濁り防止剤/抗乳化剤の例としては、フェノール樹脂、エステル、ポリアミン、スルホネート、又はポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールにグラフトされたアルコールが挙げられる。
【0059】
適切なマーカー及び着色剤の例としては、アゾ又はアントラキノン誘導体が挙げられる。
【0060】
適切な帯電防止剤の例としては、燃料可溶性金属クロム、高分子硫黄及び窒素化合物、四級アンモニウム塩、又は複合体有機アルコールが挙げられる。しかし、添加剤組成物は、好ましくは、すべての高分子硫黄、及びクロム系化合物を含むすべての金属添加剤を実質的に含まない。
【0061】
ある実施形態では、添加剤組成物は、溶媒、例えば添加剤が液体燃料と保存又は混合可能である形態であることを確保するために用いられてきた溶媒を含む。適切な溶媒の例としては、ポリエーテル、並びに芳香族及び/又は脂肪族炭化水素が挙げられ、例えば、重質ナフサ、例えば、Solvesso(商標)、キシレン、及びケロシンである。
【0062】
容器及びキット
本発明の態様では、容器は、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤、及びオクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段を含む。
【0063】
実施形態では、オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段は、交換可能であり、例えば、この手段は、非破壊的な方法で容器からの取り外し、及び再取り付けが可能であり、及び/又は交換用の手段を、非破壊的な方法で容器に取り付け可能である。「非破壊的な方法」とは、容器の使い捨て要素の考え得る破損及び/又は破壊を除いて、容器の完全性が主として変化されないことを意味するものとして理解される。
【0064】
他の実施形態では、オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段は、容器の一体化部分を形成して、交換することができないものであり、例えば、この手段は、非破壊的な方法での取り外し又は再取り付けを行うことができない。
【0065】
好ましい実施形態では、手段は、容器を燃料系と結合するように構成されている。結合とは、手段と燃料系との間の機械的相互作用を表すことを意図しており、例えば、ネジとネジ山、及びクリックアンドロックシステム(click-locking systems)、さらには弾力部材から力が付与される(例:結合手段の一部を形成する弾力部材が、燃料系へ力を付与するか、又は逆も同様)締りばめである。手段は、燃料系にあるメス部と結合するように構成されたオス部を含んでよい。別の選択肢として、手段は、燃料系にあるオス部と結合するように構成されたメス部を含んでもよい。
【0066】
他の実施形態では、オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段は、燃料系と結合しない。このような実施形態では、手段は、燃料系にあるメス部に単に挿入されるオス部を含んでよい。別の選択肢として、手段は、燃料系からのオス部を受けるように設計されたメス部を含んでもよい。
【0067】
好ましい実施形態では、オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段は、注ぎ口(spout)、漏斗、及びインジェクタのうちの少なくとも1つを含む。
【0068】
手段及び/又は燃料系は、さらに、シールを含んでもよい。シールは、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤が、燃料系への導入中に漏出することを防ぐ働きを有する。
【0069】
燃料系は、エンジン、又は燃料タンカーを含み得る。
【0070】
エンジンは、好ましくは、車両の一部、好ましくは、オートバイ又は乗用車などの自動車両の一部を形成するが、静置エンジンも考えられる。エンジンは、配管、及びエンジン室内で燃焼させるための燃料を溜めておく燃料タンクを含み得る。
【0071】
燃料系は、トラックなどの車両に載せて運ばれる燃料タンカーであってよい。しかし、燃料タンカーは、燃料貯蔵タンカーなどの静置タンカーであってもよい。
【0072】
本発明の別の態様では、既に述べたような容器を例とする容器は、添加剤重量/ベース燃料重量基準で、20%まで、好ましくは、0.1%から10%、より好ましくは、0.2%から5%、さらにより好ましくは、0.25%から2%、なおさらにより好ましくは、0.3%から1%の率で燃料タンク中又は燃料タンカー中のベース燃料を処理するのに適する量で、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤を含む。2種類以上の本明細書で述べるオクタン価向上添加剤が用いられる場合、これらの値は、燃料中の本明細書で述べるオクタン価向上添加剤の合計量を意味することは理解される。
【0073】
別の選択肢として、又は加えて、既に述べたような容器を例とする容器は、燃料タンク中又は燃料タンカー中の燃料のオクタン価を、少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも2、さらにより好ましくは、少なくとも2.5高めるのに適する量で、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤を含む。
【0074】
別の選択肢として、又は加えて、既に述べたような容器を例とする容器は、100ml超、好ましくは、150ml超、より好ましくは、200ml超の量で、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤を含む。例えば、オクタン価向上添加剤は、300から1000ml、好ましくは、350から800ml、より好ましくは、400から600mlの量で、容器中に存在してよい。これは、乗用車のタンク分の燃料を処理するのに適する体積であると考えられる。オクタン価向上添加剤が、トラックに載せて運搬されるタイプを例とする燃料タンカーの処理のために用いられる場合、容器は、5kg超、好ましくは、10kg超、より好ましくは、50kg超の量で、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤を含んでよい。
【0075】
本発明の別の態様では、キットは、既に述べたような容器を例とする容器、及び火花点火内燃機関用の燃料にオクタン価向上添加剤を用いるための説明書を含む。
【0076】
本明細書で開示される容器は、少なくとも部分的に、好ましくは、全体が、金属及び/又はプラスチック材料から製造され得る。適切な材料としては、様々な条件下での保存及び使用に例えば適し得る強化熱可塑性プラスチック材料が挙げられる。
【0077】
容器は、少なくとも1つの商標、ロゴ、製品情報、広告情報、他の識別用の特徴、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。容器は、少なくとも1つの商標、ロゴ、製品情報、広告情報、他の識別用の特徴、又はこれらの組み合わせによる印刷及び/又はラベル付けが成されていてよい。これは、偽造を防止するという利点を有し得る。容器は、単色であっても、又は多色であってもよい。商標、ロゴ、又は他の識別用の特徴は、容器の残りの部分と同じ色及び/若しくは材料であってよく、又は容器の残りの部分と異なる色及び/若しくは材料であってもよい。ある例では、容器は、ボックス又はパレットなどのパッケージを備えていてもよい。ある例では、パッケージは、複数の容器に対して提供されていてよく、ある例では、ボックス及び/又はパレットは、複数の容器に対して提供されていてもよい。
【0078】
燃料
本明細書で述べるオクタン価向上添加剤及び添加剤組成物は、火花点火内燃機関用の燃料組成物に用いられ得る。オクタン価向上添加剤及び添加剤組成物は、添加剤又は組成物が用いられる燃料が、火花点火内燃機関での使用に適する限りにおいて、火花点火内燃機関以外のエンジンで用いられてもよいことは理解される。ガソリン燃料(含酸素化合物を含有するものを含む)は、典型的には、火花点火内燃機関に用いられる。したがって、本発明に従う燃料組成物は、ガソリン燃料組成物であってもよい。
【0079】
本明細書で述べるオクタン価向上添加剤が、例えば添加剤組成物の形態で、燃料に用いられる場合、得られる燃料組成物は、過半量(すなわち、50重量%超)の液体燃料(「ベース燃料」)、並びに少量(すなわち、50重量%未満)の本明細書で述べるオクタン価向上添加剤、すなわち、2個の隣接する芳香族炭素原子を6又は7員環飽和ヘテロ環式環と共有する6員環芳香族環を含み、6又は7員環飽和ヘテロ環式環は、共有炭素原子のうちの1個と直接結合して二級アミンを形成する窒素原子、及び他方の共有炭素原子と直接結合した酸素又は窒素から選択される原子を含み、6又は7員環ヘテロ環式環の残りの原子は炭素であるという化学構造を有する添加剤、を含み得る。
【0080】
適切な液体燃料の例としては、炭化水素燃料、含酸素燃料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
火花点火内燃機関で用いられ得る炭化水素燃料は、鉱物源及び/又はバイオマスなどの再生可能源(例:バイオマス・ツー・リキッド源)及び/又はガス・ツー・リキッド源及び/又はコール・ツー・リキッド源から誘導され得る。
【0082】
火花点火内燃機関で用いられ得る含酸素燃料は、アルコール及びエーテルなどの含酸素燃料成分を含有する。適切なアルコールとしては、1から6個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐鎖状のアルキルアルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールである。好ましいアルコールとしては、メタノール及びエタノールが挙げられる。適切なエーテルとしては、5個以上の炭素原子を有するエーテルが挙げられ、例えば、メチルtert-ブチルエーテル及びエチルtert-ブチルエーテルである。
【0083】
ある好ましい実施形態では、燃料組成物は、EN 15376:2014に準拠するエタノールを例とするエタノールを含む。燃料組成物は、85体積%までの量で、好ましくは、1体積%から30体積%、より好ましくは、3体積%から20体積%、さらにより好ましくは、5体積%から15体積%の量でエタノールを含んでよい。例えば、燃料は、約5体積%(すなわち、E5燃料)、約10体積%(すなわち、E10燃料)、又は約15体積%(すなわち、E15燃料)の量でエタノールを含有してよい。エタノールを含まない燃料は、E0燃料と称される。
【0084】
エタノールは、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤の燃料中での溶解性を改善するものと考えられる。したがって、ある実施形態では、例えば、オクタン価向上添加剤が無置換(例:R、R、R、R、R、R、R、R、及びRが水素であり;Xが-O-であり;nが0である添加剤)である場合、この添加剤を、エタノールを含む燃料と共に用いることが好ましいものであり得る。
【0085】
燃料組成物は、特定の自動車産業の基準を満たし得る。例えば、燃料組成物は、2.7質量%の最大酸素含有量を有し得る。燃料組成物は、EN 228に指定される最大量の含酸素化合物を有してよく、例えば、メタノール:3.0体積%、エタノール:5.0体積%、イソプロパノール:10.0体積%、イソブチルアルコール:10.0体積%、tert-ブタノール:7.0体積%、エーテル(例:5個以上の炭素原子を有する):10体積%、及び他の含酸素化合物(適切な最終沸点を条件とする):10.0体積%である。
【0086】
燃料組成物は、10.0重量ppmまでを例とする50.0重量ppmまでの硫黄含有量を有してよい。
【0087】
適切な燃料組成物の例としては、加鉛及び無鉛燃料組成物が挙げられる。好ましい燃料組成物は、無鉛燃料組成物である、
【0088】
実施形態では、燃料組成物は、例えばBS EN 228:2012に記載のように、EN 228の要件を満たす。他の実施形態では、燃料組成物は、例えばASTM D 4814-15aに記載のように、ASTM D 4814の要件を満たす。燃料組成物が、両方の要件、及び/又は他の燃料基準を満たしてよいことは理解される。
【0089】
火花点火内燃機関用の燃料組成物は、例えばBS EN 228:2012に従って定められる通りの以下のうちの1つ以上(すべて、など):最小リサーチオクタン価95.0、最小モーターオクタン価85.0、最大鉛含有量5.0mg/l、密度720.0から775.0kg/m、少なくとも360分間の酸化安定性、最大実在ガム含有量(溶媒洗浄後)5mg/100ml、クラス1の銅片腐食性(3時間、50℃)、透明で光沢のある外観、最大オレフィン含有量18.0重量%、最大芳香族含有量35.0重量%、及び最大ベンゼン含有量1.00体積%、を示し得る。
【0090】
燃料組成物は、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤を、添加剤重量/ベース燃料重量基準で、20%まで、好ましくは、0.1%から10%、より好ましくは、0.2%から5%の量で含有してよい。さらにより好ましくは、燃料組成物は、オクタン価向上添加剤を、添加剤重量/ベース燃料重量基準で、0.25%から2%、なおさらにより好ましくは、0.3%から1%の量で含有する。2種類以上の本明細書で述べるオクタン価向上添加剤が用いられる場合、これらの値は、燃料中の本明細書で述べるオクタン価向上添加剤の合計量を意味することは理解される。
【0091】
燃料組成物は、少なくとも1つの他のさらなる燃料添加剤を含んでよい。
【0092】
燃料組成物中に存在してもよいそのような他の添加剤の例としては、添加剤組成物中に存在してもよい添加剤として上記で述べたものが挙げられる。
【0093】
燃料組成物中の添加剤(存在する場合)及び溶媒の代表的で典型的及びより典型的なそれぞれの量を、以下の表に示す。添加剤の場合、濃度は、活性添加剤化合物の重量(ベース燃料に対して)によって、すなわち、いずれの溶媒又は希釈剤とは無関係に表される。各タイプに対して2種類以上の添加剤が燃料組成物中に存在する場合、添加剤の各タイプの合計量が、以下の表で表される。
【0094】
【表1】
【0095】
ある実施形態では、燃料組成物は、上記の表に挙げた典型的な若しくはより典型的な量の添加剤及び溶媒を含むか、又は添加剤及び溶媒から成る。
【0096】
燃料組成物は、1つ以上の工程で、火花点火内燃機関用の燃料を、本発明の容器又はキットからの添加剤組成物又はオクタン価向上添加剤と混合することを含む方法によって作製されてよい。
【0097】
燃料組成物が1つ以上のさらなる燃料添加剤を含む実施形態では、さらなる燃料添加剤も、1つ以上の工程で、燃料と混合されてよい。
【0098】
ある実施形態では、本発明の容器又はキットからの添加剤組成物又はオクタン価向上添加剤は、精製所製の添加剤組成物の形態で、又は市販の添加剤組成物として燃料に混合されてよい。したがって、オクタン価向上添加剤は、市販の添加剤として、例えば、ターミナル又は配給ポイントにおいて、燃料組成物の1つ以上の他の成分(例:添加剤及び/又は溶媒)と混合されてよい。オクタン価向上添加剤はまた、ターミナル又は配給ポイントにおいて、本発明の容器又はキットから単独で添加されてもよい。オクタン価向上添加剤はまた、販売用の本発明の容器又はキットの中で、燃料組成物の1つ以上の他の成分(例:添加剤組成物に関連して上記で述べたものなどの添加剤及び/又は溶媒)と混合されてもよく、それは例えば、後の時点で燃料に添加される。
【0099】
燃料組成物の一部を形成することになるオクタン価向上添加剤及び他のいずれの添加剤も、所望に応じて溶媒又は希釈剤を含む1つ以上の添加剤濃縮物及び/又は添加剤部分パック(additive part packs)として、燃料組成物中に組み込まれてよい。
【0100】
本発明の容器又はキットからの添加剤組成物及びオクタン価向上添加剤はまた、燃料が用いられる車両内で燃料に添加されてもよく、燃料流に組成物若しくは添加剤を添加することによるか、又は燃焼室中へ直接組成物若しくは添加剤を添加することによる。
【0101】
また、オクタン価向上添加剤は、エンジン内で受ける燃焼条件下で分解して本明細書で定めるオクタン価向上添加剤を形成する前駆体化合物の形態で、本発明の添加剤組成物、容器、又はキットの一部として燃料に添加されてもよいことも理解される。
【0102】
使用及び方法
本発明の添加剤組成物、容器、又はキットの一部を形成する本明細書で開示されるオクタン価向上添加剤は、火花点火内燃機関用の燃料に用いられ得る。火花点火内燃機関の例としては、直接噴射式火花点火エンジン及びポート噴射式火花点火エンジンが挙げられる。火花点火内燃機関は、乗用車などの車両を例とする自動車用途に用いられ得る。
【0103】
適切な直接噴射式火花点火内燃機関の例としては、過給直接噴射式火花点火内燃機関が挙げられ、例えば、ターボチャージ過給直接噴射式エンジン及びスーパーチャージ過給直接噴射式エンジンである。適切なエンジンとしては、2.0L過給直接噴射式火花点火内燃機関が挙げられる。適切な直接噴射式エンジンとしては、サイド搭載直噴インジェクタ及び/又はセンター搭載直噴インジェクタを有するものが挙げられる。
【0104】
適切なポート噴射式火花点火内燃機関の例としては、例えば、BMW 318iエンジン、Ford 2.3L Rangerエンジン、及びMB M111エンジンを含む適切ないかなるポート噴射式火花点火内燃機関をも挙げられる。
【0105】
本明細書で開示されるオクタン価向上添加剤は、添加剤組成物の一部として、又は本発明の容器若しくはキットによって提供されて、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めるために用いられ得る。ある実施形態では、オクタン価向上添加剤は、燃料のRON又はMONを高める。好ましい実施形態では、オクタン価向上添加剤は、燃料のRONを高め、より好ましくは、燃料のRON及びMONを高める。燃料のRON及びMONは、それぞれ、ASTM D2699-15a及びASTM D2700-13に従って試験され得る。
【0106】
本明細書で述べるオクタン価向上添加剤は、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めることから、オクタン価が望ましい値よりも低い結果として発生し得る異常燃焼に対処するためにも用いられ得る。したがって、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤、及びオクタン価向上添加剤を含む本発明の添加剤組成物は、火花点火内燃機関に用いられる場合に、例えば、自己着火、早期着火、ノック、メガノック、及びスーパーノックのうちの少なくとも1つについての燃料の傾向を低減することによって、燃料の自己着火特性を改善するために用いられ得る。
【0107】
また、火花点火内燃機関用の燃料のオクタン価を高めるための方法、さらには、火花点火内燃機関に用いられる場合に、例えば、自己着火、早期着火、ノック、メガノック、及びスーパーノックのうちの少なくとも1つについての燃料の傾向を低減することによって、燃料の自己着火特性を改善するための方法も考慮される。これらの方法は、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤又は添加剤組成物を燃料とブレンドする工程を含む。
【0108】
本明細書で述べる方法は、さらに、ブレンド済み燃料を火花点火内燃機関へ送ること、及び/又は火花点火内燃機関を運転することも含み得る。
【0109】
本発明について、ここで、以下の限定されない例を参照して記載する。
【実施例
【0110】
例1:オクタン価向上添加剤の作製
以下のオクタン価向上添加剤を、標準的な方法を用いて作製した:
【0111】
【化6】
【0112】
オクタン価向上添加剤を作製した後、それらを、オクタン価向上添加剤を燃料系へ導入するように構成された手段を含む容器へ導入した。
【0113】
例2:オクタン価向上添加剤を含有する燃料のオクタン価
火花点火内燃機関用の2つの異なるベース燃料のオクタン価に対する例1からのオクタン価向上添加剤(OX1、OX2、OX3、OX5、OX6、OX8、OX9、OX12、OX13、OX17、及びOX19)の効果を測定した。
【0114】
添加剤を、5g添加剤/1リットル燃料の処理率と同等である0.67%添加剤重量/ベース燃料重量の比較的低い処理率で容器から燃料に添加した。第一の燃料は、E0ガソリンベース燃料であった。第二の燃料は、E10ガソリンベース燃料であった。ベース燃料及びベース燃料とオクタン価向上添加剤とのブレンドのRON並びにMONを、それぞれ、ASTM D2699及びASTM D2700に従って特定した。
【0115】
以下の表は、燃料及び燃料とオクタン価向上添加剤とのブレンドのRON並びにMON、さらには、オクタン価向上添加剤を用いることによってもたらされたRON及びMONの変化を示す。
【0116】
【表2】
【0117】
オクタン価向上添加剤を用いて、火花点火内燃機関用のエタノール非含有燃料及びエタノール含有燃料のRONを高めることができることが分かる。
【0118】
例1からのさらなる添加剤(OX4、OX7、OX10、OX11、OX14、OX15、OX16、及びOX18)を、E0ガソリンベース燃料及びE10ガソリンベース燃料で試験した。エタノール含有燃料による分析を実施するのに充分な添加剤がなかったOX7を除いて、添加剤の各々は、両方の燃料のRONを高めた。
【0119】
例3:オクタン価向上添加剤処理率によるオクタン価の変動
火花点火内燃機関用の3つの異なるベース燃料のオクタン価に対する例1からのオクタン価向上添加剤(OX6)の効果を、様々な処理率(%添加剤重量/ベース燃料重量)にわたって測定した。
【0120】
第一及び第二の燃料は、E0ガソリンベース燃料であった。第三の燃料は、E10ガソリンベース燃料であった。上記と同様に、ベース燃料及びベース燃料とオクタン価向上添加剤とのブレンドのRON並びにMONを、それぞれ、ASTM D2699及びASTM D2700に従って特定した。
【0121】
以下の表は、燃料及び燃料とオクタン価向上添加剤とのブレンドのRON並びにMON、さらには、オクタン価向上添加剤を用いることによってもたらされたRON及びMONの変化を示す。
【0122】
【表3】
【0123】
3つの燃料のRON及びMONに対するオクタン価向上添加剤の効果のグラフを図1a~cに示す。オクタン価向上添加剤が、非常に低い処理率であっても、各燃料のオクタン価に対して著しい効果を有していたことが分かる。
【0124】
例4:オクタン価向上添加剤のN-メチルアニリンとの比較
火花点火内燃機関用の2つの異なるベース燃料のオクタン価に対して、様々な処理率(%添加剤重量/ベース燃料重量)にわたって、例1からのオクタン価向上添加剤(OX2及びOX6)の効果を、N-メチルアニリンの効果と比較した。
【0125】
第一の燃料は、E0ガソリンベース燃料であった。第二の燃料は、E10ガソリンベース燃料であった。上記と同様に、ベース燃料及びベース燃料とオクタン価向上添加剤とのブレンドのRON並びにMONを、それぞれ、ASTM D2699及びASTM D2700に従って特定した。
【0126】
N-メチルアニリン及びオクタン価向上添加剤(OX6)の処理率に対するE0及びE10燃料のオクタン価の変化のグラフを、図2aに示す。処理率は、燃料に用いられるのに典型的な処理率である。グラフから、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤の性能が、処理率全体にわたって、N-メチルアニリンの性能よりも著しく良好であることが分かる。
【0127】
0.67%重量/重量の処理率でのE0及びE10燃料のオクタン価に対する2種類のオクタン価向上添加剤(OX2及びOX6)、及びN-メチルアニリンの効果の比較を図2b及び2cに示す。グラフから、本明細書で述べるオクタン価向上添加剤の性能が、N-メチルアニリンの性能よりも著しく優れていることが分かる。具体的には、RONについては、約35%から約50%の改善が見られ、MONについては、約45%から約75%の改善が見られる。
【0128】
本明細書で開示される寸法及び値は、列挙した厳密な数値に厳格に限定されるものとして理解されるべきではない。そうではなく、特に断りのない限り、そのような寸法の各々は、列挙した値及びその値近辺の機能的に同等である範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0129】
いずれの相互参照される若しくは関連する特許又は特許出願も含む本明細書で引用されるすべての文書は、明確に除外されるか、又はそれ以外で限定される場合を除いて、その全内容が参照により本明細書に援用される。いずれの文書についても、その引用は、本明細書で開示若しくは請求されるいかなる発明に関しても、それが先行技術であることを認めるものではなく、又は単独で、若しくは他のいずれの参考文献とのいずれの組み合わせにおいても、それが、そのようないずれの発明をも教示、示唆、若しくは開示することを認めるものでもない。さらに、本文書中の用語のいずれの意味又は定義についても、参照により援用される文書中の同じ用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する場合、本文書中の用語に対して割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【0130】
本発明の特定の実施形態について説明し、記載してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び改変が行われ得ることは明らかである。したがって、添付の請求項では、本発明の範囲及び趣旨に含まれるそのような変更及び改変のすべてを含むことを意図している。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c