(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】剛直チェーンおよび剛直チェーンのリンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16G 13/20 20060101AFI20220309BHJP
B21L 11/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F16G13/20
B21L11/00
(21)【出願番号】P 2018544433
(86)(22)【出願日】2016-11-15
(86)【国際出願番号】 FR2016052953
(87)【国際公開番号】W WO2017085389
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-09-25
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518171133
【氏名又は名称】セラピド フランス
【氏名又は名称原語表記】SERAPID - FRANCE
【住所又は居所原語表記】ZI bleu Louis Delaporte,76370 Rousmesnil-Bouteilles,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セニュール,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィック,フィリップ
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】豪国特許出願公開第2010212303(AU,A1)
【文献】実公昭63-6091(JP,Y2)
【文献】実公昭34-21433(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3035213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/20
B21L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛直チェーン(100)のリンク(200
n-1,200
n,200
n+1)を順次連続的に組み付けることで形成される剛直チェーン(100)であって、
前記リンク(200
n)は、全体として矩形の形状および主平面(81)に垂直な方向において実質的に一定の厚さ(93,97)を有するフランジ(1)を少なくとも1つ備え、
前記フランジ(1)は、第1の部分(2)と、第2の部分(4)とを備え、
前記第1の部分(2)と第2の部分(4)の各々は、
前記剛直チェーン(100)の
前記リンク(200
n-1
,200
n
,200
n+1
)に対して組み付けられる、さらに先行または後続する類似
のリンク(200
n-2;200
n+2)の類似
のフランジ(1
n-2
;1
n+2
)の対応するヒールに当接するようになされたヒール(5)
であって、2つの前記類似のリンクが、長手方向に位置合わせされる前記フランジを有するヒール(5)と、
隣接するリンク(200
n-1;200
n+1)に対して回転軸(400)の周囲にベアリングを形成するようになされたベース(7)と、
を備え、
各ヒール(5)は、前記
さらに先行または後続する類似
のリンク(200
n-2;200
n+2)の対応する面に当接するように配向された前面(55)に当接し、
前記前面(55)および長手方向の端面(35)は互いに垂直であり、
前記前面(55)は連続的な面であり、かつ長手方向に垂直であり、
前記ヒール(5)と前記ベース(7)とは、前記主平面(81)の一方の側と他方の側にそれぞれ位置し、前記主平面(81)に対して平行である、剛直チェーン(100)。
【請求項2】
前記第1の部分(2)のヒール(5)と前記第2の部分(4)のヒール(5)とは、共に前記主平面(81)の一方の側に位置し、前記第1の部分(2)のベース(7)と前記第2の部分(4)のベース(7)とは、共に前記主平面(81)の他方の側に位置する、請求項1に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項3】
前記第1の部分(2)のベース(7)と前記第2の部分(4)のベース(7)とは、前記主平面(81)に垂直な横断面(83)に対して実質的に互いに対称である、請求項1または2に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項4】
前記剛直チェーン(100)のリンク(200
n)は、類似のリンク(200
n-2,200
n-1,200
n+1,200
n+2)の対応する面に当接して協働するようになされた、実質的に前記面と一致する形状を有する面(55,15,615,715,57,657,757)を有し、前記第1の部分(2)のヒール(5)と前記第2の部分(4)のヒール(5)とは、前記主平面(81)に垂直な横断面(83)に対して、当接して協働するようになされた前記面(55,15,615,715,57,657,757)の形状を除いて、実質的に互いに対称である、請求項1から3のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項5】
前記フランジ(1)は、一体に形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項6】
前記第1の部分(2)および/または前記第2の部分(4)のヒール(5)およびベース(7)の各々は、前記主平面(81)と実質的に同じ平面上にある面(31;71)を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項7】
前記フランジ(1)は、ボディ(3)をさらに備え、前記ボディ(3)は、前記ヒール(5)と前記ベース(7)とを互いに接続する、請求項1から6のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項8】
前記フランジ(1)の第1の部分(2)および第2の部分(4)の各々は、曲げ加工によって形成された接続部(9)を備え、前記接続部(9)は、前記ヒール(5)と前記ベースとを互いに接続する、請求項1から7のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項9】
前記ベース(7)には、実質的に円形の孔(75)が設けられ、前記ヒール(5)と前記ベース(7)との間には、空隙(77,79,80)が設けられ、前記空隙(77,79,80)は、前記フランジ(1)の長手方向の一方の端部に開口し、前記円形の孔(75)の中心を越えて長手方向の他方の端部に向けて長手方向に延びる、請求項1から8のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項10】
前記フランジ(1)は、前記リンク(200
n)と該リンクに隣接するリンク(200
n-1;200
n+1)との相対的な回転を制限するために、前記隣接するリンク(200
n-1;200
n+1)が有する対応する側面に当接するように配向された側面(57,657,757,15,615,715)を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項11】
前記フランジ(1)は、前記ベース(7)と同じ前記主平面(81)の側に配置されたニップル(11;611;711)をさらに備え、前記ヒール(5)は、側面(57,657,757)を有し、前記ニップル(11;611;711)は、他の
側面(15;615;715)を有し、前記ヒール(5)の側面(57;657;757)は、前記隣接するリンク(200
n-1;200
n+1)のニップルが有する対応する側面に当接し、前記ニップル(11;611;711)の前記側面(15;615;715)は、前記隣接するリンク(200
n-1;200
n+1)のヒールが有する対応する側面に当接する、請求項10に記載の剛直チェーン(100)。
【請求項12】
厚さ方向において、請求項1から11のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)における複数のリンク(200
n-1,200
n,200
n+1)のうちの前記リンク(200
n)のフランジ(1)の向きを、先行するリンク(200
n-1)および後続するリンク(200
n+1)のフランジ(1)のそれぞれに対して反転させ、前記リンクを連続的に組み付けることで形成される剛直チェーン(100)であって、各リンク(200
n)は、ベース(7)にねじ込まれたロッド(91)を用いて、前記先行するリンク(200
n-1)と前記後続するリンク(200
n+1)とに回転可能に取り付けられる、剛直チェーン(100)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の剛直チェーン(100)のリンク(200
n)を製造する方法であって、
(a)金属板からフランジ(1)のブランクを切り出すステップと、
(b)ヒール(5)に対して厚さ方向にベース(7)をずらして形成し、曲げ加工によって前記ヒール(5)と前記ベース(7)とを接続する接続部(9)を形成するステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積荷の移動のために使用される剛直チェーンと呼ばれるチェーンに関し、より詳細には、そのようなチェーンを形成するために使用されるリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロッドとしても知られる剛直チェーンは、全体として占有面積が小さい折り畳まれた状態から、重い積荷を牽引、支持および押すことができる直線的且つ剛直化した形態の展開状態に移行することができる。
【0003】
このようなチェーンは、1列に並んだ類似のリンクによって形成され、各リンクは、回転ピンによって別のリンクに回転可能に取り付けられた2つの側方フランジ(側壁とも呼ばれる)を備えている。リンクの構成によって、チェーンは、直線的な状態から湾曲した状態またはチェーン自体が巻かれた状態に、またその逆に、移行することができる。チェーンは、単一平面内および単一方向に湾曲することができる。特に、チェーンを構成する部品の適切な構造および適切な調整によって、他の方向への湾曲やねじれが防止される。
【0004】
仏国特許発明第2134196号明細書では、2つの異なる機械的部品を互いに組み付けることによって、リンクフランジがそれぞれ作製される。複雑な形状を有する平坦な第1の部品は、チェーンが直線的な状態にあるときに、1つのリンクから別のリンクに圧縮力を伝達する。長楕円形状を有する平坦な第2の部品は、2つの隣接する回転ピンと接続され、本質的に牽引力によって動作する。2つの部品は、互いに圧着されて組み付けられる。部品には、ときに、平坦性に関する欠陥のような製造上の欠陥が生じることがある。リンクの規模次第では、このような欠陥を許容できる可能性がある。すなわち、チェーンのリンクが小さな欠陥を有していても、チェーンの動作は損なわれない。現在では、これらの部品は、一般的にバッチごとに大量生産されている。チェーンを形成するために使用される1バッチ内のすべての部品が小さな欠陥を有している場合、これらの欠陥は、チェーンの長さ、特により長い距離にわたって蓄積されて、正常な動作を妨げてしまう。さらに、複数のフランジに対して実質的に垂直な方向に曲げ力が印加された場合、一方の側壁が望ましくない方向に曲げられてチェーンが動かなくなる程度まで、フランジの圧着性および/または平坦性が損なわれる可能性がある。
【0005】
仏国特許発明第2573832号明細書は、チェーンの各フランジを形成するために、一体部品を使用する実施形態を開示している。このような部品も、フランジに対して垂直な方向に曲げ力が印加された場合、望ましくない方向に曲げられてしまい、チェーンの使用上の条件を制限する。さらに、1バッチ内のすべての部品に起きる製造上の欠陥による故障のリスクを回避するために、チェーンの長さは制限される。
【0006】
仏国特許出願公開第2345626号明細書に開示される構成は簡略化されており、チェーンのフランジは単一のタイプの部品のみによって構成されている。チェーンの各フランジについては、2列に並んだ部品が五の目状に重なり合っている。フランジに対して垂直な方向に曲げ力が印加された場合、このチェーンもまた脆弱である。
【0007】
本出願人は、同一の平坦な部品を互いに組み付けて構成されるフランジを有する剛直チェーンを開発した。このような構成は、仏国特許発明第2786476号明細書に開示されている。これにより、部品の製造および組立て作業が容易になる。本構成では、各フランジに対して2つの同一の部品を五の目状に重ね合わせる必要性がまだある。特に、フランジの平面に垂直な方向に曲げ力が印加された場合、この重なり合っている状態を長期間保持することは困難である。チェーンの側壁部品の間に望ましくない遊びや相対的な移動が生じることによって、早期の摩耗および望ましくない方向への曲げにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの問題を改善するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、全体として矩形の形状および主平面に垂直な方向において実質的に一定の厚さを有するフランジを少なくとも1つ備える剛直チェーンのリンクを提案する。フランジは、第1の部分と、第2の部分とを備えている。該部分の各々は、
・剛直チェーン内で隣接するリンクが有する類似フランジの対応するヒールに当接するようになされたヒールと、
・隣接するリンクに対して回転軸の周囲にベアリングを形成するようになされたベースと
を備えている。また、ヒールとベースとは、主平面の一方の側と他方の側とにそれぞれ位置し、主平面に対して平行である。
【0010】
このような剛直チェーンのリンクは、曲げ力に対して良好な抵抗を有しながら、チェーンの主方向への力の伝達を確実にさせる。フランジの形状は、複数のフランジを、単純に重ね合わせるのではなく、互いへの貫入を可能にする。フランジが入れ子状態にされることによって、曲げ力が印可される方向に関わらず、曲げ力に対する抵抗およびチェーンの座屈現象に対する強度が増加する。追加的な補強部品は不要である。そのため、フランジの製造は簡単且つ比較的低コストである。剛直チェーンとして組み立てる際には、複数の同一のフランジを、交互に向きを反転させながら並置するだけでよい。この組み立ての際の各フランジの向きは、フランジの形状によって決められているため、組立てエラーが生じることはない。さらに、本出願人は、2つのフランジの一方の向きを反転させると、例えば、平坦性に関するフランジの製造上の欠陥が、さらに向きを反転された次のフランジの欠陥によって補われることも見出した。すなわち、1バッチ内のすべてのフランジが同じ欠陥を有する場合、互いに対して反転されたフランジを有する一対のリンクは、欠陥を有さない。一方のフランジの欠陥は、他方のフランジの欠陥を補う。各フランジの製造上の欠陥の影響は、チェーンの長さにわたって蓄積されるのではなく、対応するフランジによって補われる。チェーンの長さは、このような製造上の欠陥によってもはや制限されなくなる。
【0011】
剛直チェーンのリンクは、以下の任意の特徴を単独でまたは組み合わせで有することができる。
・第1の部分のヒールと第2の部分のヒールとは、共に主平面の一方の側に位置し、第1の部分のベースと第2の部分のベースとは、主平面の他方の側に位置している。これにより、一方の方向および他方の方向にそれぞれ複数のフランジを連続的に配置して、リンクを連続的に形成することができる。したがって、1バッチ内のすべてのフランジの製造上の欠陥による影響は、各リンク間で補われる。
・第1の部分のベースと第2の部分のベースとは、主平面に垂直な横断面に対して実質的に互いに対称である。これにより、一方の方向および他方の方向にそれぞれ複数のフランジを連続的に配置して隣接するリンクへ組み付けることを容易にしながら、動作時の遊びを減少させることができる。
・剛直チェーンのリンクは、類似のリンクが有する面に当接して協働するようになされた、実質的に該面と一致する形状を有する面を有している。第1の部分のヒールと第2の部分のヒールとは、主平面に垂直な横断面に対して、当接して協働するようになされた面の形状を除いて、実質的に互いに対称である。これにより、一方の方向および他方の方向にそれぞれ複数のフランジを連続的に配置して隣接するリンクへ組み付けることを容易にしながら、動作時の遊びを減少させることができる。さらに、2つのリンク間の圧縮におけるベアリング領域は、これらのリンクの回転軸から実質的に等距離で離間しており、これにより、応力の分配や曲げ力に対する抵抗を改善することができる。
・フランジは、一体に形成されている。これにより、圧着接続部などの接続部に関してフランジが脆弱化するリスクを制限することができる。
・第1の部分および/または第2の部分のヒールおよびベースの各々は、主平面と実質的に同じ平面上にある面を有している。これにより、2つの隣接するリンクのフランジ間の遊びや相対的な移動を制限することができる。
・フランジは、ボディをさらに備え、ボディは、ヒールとベースとを互いに接続している。これにより、フランジの頑健性を向上することができる。
・フランジの第1の部分および第2の部分の各々は、曲げ加工によって形成された接続部を備え、接続部は、ヒールとベースとを互いに接続している。これは、フランジの製造を容易にする。接続部は、例えば、金属板のブランクからフランジを切り出すときに、同時に形成されてもよい。
・ベースには、実質的に円形の孔が設けられている。ヒールとベースとの間には、空隙が設けられ、空隙は、フランジの長手方向の一方の端部に開口し、円形の孔の中心を越えて長手方向の他方の端部に向けて長手方向に延びている。このような空隙によって、一方のフランジと他方のフランジとの貫入を深くすることができる。フランジの製造における公差は、変形された部分同士の貫入を妨げることなく、許容される。
・各ヒールは、隣接するリンクが有する対応する前面に当接するように配向された前面を有している。このような前面は、直線的な状態におけるチェーンの主方向と実質的に整列した力の伝達を確実にさせ、フランジに対する曲げ力の発生を制限する。
・フランジは、リンクと隣接するリンクとの相対的な回転を制限するために、隣接するリンクが有する対応する側面に当接するように配向された側面を有している。フランジ同士の正確な位置合わせは、チェーンの直線部分において良好に調整される。
・フランジは、ベースと同じ主平面の側に配置されたニップルをさらに備え、ヒールは、上述した側面を有し、ニップルは、他の上述した側面を有し、ヒールの側面は、隣接するリンクのニップルが有する対応する側面に当接し、ニップルの側面は、隣接するリンクのヒールが有する対応する側面に当接する。正確な調整によるフランジの相対的な回転は、フランジ全体の厚さを増加させることなく、良好に制御される。
【0012】
本発明の第2の態様によると、本出願人は、上述したように、厚さ方向において、1つのリンクのフランジの向きを、先行するリンクおよび後続するリンクのフランジのそれぞれに対して反転させ、これらのリンクを連続的に組み付けることで形成される剛直チェーンをさらに提供する。各リンクは、ベースにねじ込まれたロッドを用いて、先行するリンクと後続するリンクとに回転可能に取り付けられている。
【0013】
本出願人は、さらに、以下のステップを備える、上述したリンクを製造する方法を提供する。
(a)金属板からフランジのブランクを切り出すステップ。
(b)ヒールに対して厚さ方向にベースをずらして形成し、曲げ加工によって接続部を形成するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになる。
【
図1】本発明に係るチェーンの一部を示す図である。
【
図3】
図1のチェーンのフランジを示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る剛直チェーンに組み付けられる前の2つの同一のフランジを示す斜視図である。
【
図5】
図4の2つのフランジの部分的な組立体を示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る2つのフランジを示す、
図7と同様の図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る2つのフランジを示す、
図7と同様の図である。
【
図10】本発明に係る3つの同一のフランジの組立体を示す正面図である。
【
図11】チェーンの湾曲した状態における、本発明に係る3つの同一のフランジの組立体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面および以下の説明は、特定の特徴を有する要素の大部分を網羅している。したがって、それらは、本発明をより良く理解するためだけでなく、その定義に貢献するためにも適宜使用することができる。複雑なフランジの幾何学的形状等の要素は、図面を用いる以外にそれらを定義することが難しいことに留意されたい。
【0016】
図1および
図2を参照すると、チェーンが符号100によって示されている。チェーン100のリンク200は、後部リンクから先頭リンクまで下付き文字1からnによって互いに区別される。したがって、下付き文字nがリンク200
nとして示されている場合、下付き文字n+1はチェーン100の先頭側にある後続するリンク200
n+1を示している。チェーン100のリンク200に対する各フランジまたは側壁は、符号1によって示されている。
【0017】
互いに垂直な3つの方向は、軸の三次元系の以下の記号によって示されている。
・方向xは、
図1および
図2の紙面に対して垂直な横断方向に対応し、
・方向yは、チェーン100のフランジ1の厚さ方向、リンク200の回転軸400の方向および
図1における上下方向に対応し、
・方向zは、長手方向、直線的な形状におけるチェーン100の主方向および
図1における左右方向に対応する。
【0018】
各リンク200
nは、1つ以上のフランジ1
nを備えている。
図1および
図2の実施例では、各リンク200
nは、一対のフランジ1
nを備え、各フランジ1
nは、チェーン100の2つの側壁のうちの一方を形成する列に属している。リンク200
nの2つのフランジ1
nは、回転軸400に沿って延びる2本の共通のロッド91周りに回転可能に取り付けられている。ここでは、フランジ1
nは、例えば、サークリップを用いてロッド91の周囲に移動可能に固定されている。チェーン100の長手方向zに垂直な断面は、全体として正方形である。あるいは、チェーン100は、単一の列のまたは2列以上のフランジを備えている。この場合、各リンク200
nは、1つまたは2つ以上のフランジ1
nをそれぞれ備えている。
【0019】
チェーン100の各列は、五の目状に1列に並んだフランジ1を備えている。リンク200nのフランジ1nは同時に、
・直前を先行する後部リンク200n-1の部分1n-1と共有する第1のロッド91周りに回転可能に取り付けられ、
・さらに先行する後部リンク200n-2の部分1n-2と共に長手方向に位置合わせされ、
・直後を後続する先頭リンク200n+1の部分1n+1と共有する第2のロッド91周りに回転可能に取り付けられ、
・さらに後続する先頭リンク200n+2の部分1n+2と同じ長手方向に位置合わせされる。
【0020】
ここでは、チェーン100の複数の部分1はすべて同一である。各部分1は、矩形の一般的形状の長さ、幅および厚さを有している。チェーン100の各部分1は、
・各部分1の幅がチェーン100の横断方向xに沿うように、
・各部分1の厚さが厚さ方向yに沿うように、ならびに
・各部分1の長さがチェーン100の長手方向zに沿うように、配向されている。
【0021】
他の図において部分1または複数の部分1が図示されている場合、軸の三次元系は、部分1nのチェーン100に対する向きを示している。
【0022】
ここで、リンク200から分離されたフランジ1を示す
図3を参照する。
【0023】
フランジ1は、厚さ方向yに垂直な主平面81を有している。フランジ1は対向する2つの長手方向部分、すなわち第1の部分2と第2の部分4とを有している。第1の部分2と第2の部分4とは、長手方向zおよび主平面81に垂直な横断面83によって互いに区画されている。チェーン100として組み立てられた状態では、長手方向においてチェーンの100の先頭側にある部分は先頭部分と呼ばれ、他方の部分は後部部分と呼ばれる。チェーン100に取り付けられるフランジ1の方向に応じて、
図1の右側に示す第1の部分2が先頭部分となり、
図1の左側に示す第2の部分4が後部部分となる、またはその逆となる。
【0024】
ここで説明する例では、フランジ1の第1の部分2と第2の部分4とは、横断面83に対して互いに対称となっている。横断面83は、フランジ1の対称面を構成する。あるいは、フランジ1は、横断面83に対して部分的に対称性を有する。
【0025】
フランジ1は、板状に形成されたボディ3を備えている。ボディ3は、第1の面31とそれに対向する第2の面33とを有している。第1の面31および第2の面33は、実質的に平坦且つ厚さ方向yにそれぞれ垂直である。第1の面31は、主平面81と実質的に一致する。第1の面31と第2の面33との距離は、ボディ3の厚さ93を画定する。ボディ3の厚さ93は、実質的に均一である。
【0026】
ここで、
図3に示す横断面83の右側にある第1の部分2に相当する、フランジ1の長手方向の右側の半分を説明する。第2の部分4に相当する左側の半分は、横断面83に対して右側の半分と対称であることから、構造を推測することができる。
【0027】
フランジ1の第1の部分2は、ヒール5とベース7とを備えている。横断方向xにおいて、ヒール5は、
図1の上部に示すフランジ1の一方の側に位置し、ベース7は、
図1の下部に示すフランジ1の他方の側に位置している。
【0028】
ここでは、ヒール5は、圧縮の際に機能するように構成されており、他のリンクの対応する部分に当接するフランジ1の一部を画定する。横断面83の反対側にある長手方向の端部または先端部において、ヒール5は、ボディ3の長手方向の延長部として形成されている。
図1の上部に示す共通の長手方向の端面35によって、ボディ3とヒール5とが互いに区画されている。長手方向の端面35は、実質的に連続的な面であり、横断方向xに垂直である。あるいは、長手方向の端面35は、例えば、チェーン100が移動するときに、対応する形状を有するガイド部材と協働するように、僅かに凸状または僅かに凹状である。長手方向の端面35は、フランジ1の全体の長さにわたって延在しており、第1の面31と第2の面33とを互いに接続している。
【0029】
第1の部分2の長手方向の端部おいて、前面55がヒール5を画定する。前面55も、第1の面31と第2の面33とを互いに接続している。さらに、前面55と長手方向の端面35とは、実質的に互いに垂直であり、接続帯部によって互いに接続されている。ここでは、前面55は、フランジ1の全体の幅の半分よりも小さい幅にわたって横断方向xに延在している。
【0030】
前面55は、類似フランジ1が有する対応する前面と一致する形状を介して協働するように構成されている。チェーン100として組み立てられた直線的な状態では、リンク200nのフランジ1nの第1の部分2nの前面55nは、類似フランジ1n+2の第2の部分4n+2の前面55n+2と協働する。これらの前面55は、互いに当接することによって協働する。
【0031】
前面55は、長手方向zに垂直な実質的に連続的な面である。厳密には、フランジ1の第1の部分2および第2の部分4の前面55の各々は、横断面83に対して互いに対称である。あるいは、第1の部分2および第2の部分4の前面55の各々は、異なりながらも実質的に一致する形状を有している。例えば、一方は凸状であり、他方は凹状である。この場合、これらの前面は、フランジ1の対称性の例外となる。第1の部分2と第2の部分4とは、前面55の形状を除いて、実質的に互いに対称である。
【0032】
長手方向の端面35の反対側では、側面57と接続部80とがヒール5を横断方向xに画定している。側面57は、実質的に平坦且つ横断方向xに対して垂直であり、第1の部分2の長手方向の端部の側に位置し、接続帯部によって前面55に接続されている。接続部80は、横断面83に向かう側面57の延長部として形成されている。接続部80は、実質的に凹状であり、丸みが付けられている。接続部80は、ベース7周りにベース7から離間して部分的に延在している。側面57と接続部80とは、第1の面31と第2の面33とを互いに接続している。
【0033】
ベース7は、全体として円形の一部の形状を有している。ベース7は、ボディ3およびヒール5に対して平行な面に実質的に沿っている。ベース7は、第1の面71とそれに対向する第2の面73とを有している。第1の面71および第2の面73は、実質的に平坦且つ厚さ方向yに対して垂直である。第1の面71は、主平面81と実質的に一致する。第1の面71と第2の面73との間の距離は、ベース7の厚さ97を画定し、ここでは、厚さ93は実質的に均一で、ボディ3およびヒール5の厚さ93に等しい。主平面81の一方の側にボディ3およびヒール5が位置し、他方の側にベース7が位置し、ボディ3およびヒール5とベース7とは、主平面81に対して平行である。ボディ3およびヒール5の厚さ93およびベースの厚さ97は、主平面81に対して垂直な方向において実質的に一定である。フランジ1は、実質的に一定の厚さを有する。フランジ1全体の厚さは、厚さ93および97の2倍に実質的に等しく、これは、ボディ3およびヒール5に対して厚さ方向yにベース7をずらして形成した結果である。
【0034】
円形の孔75が、厚さ方向yにベース7を貫通している。孔75の開口部は、実質的に円筒形であり、第1の面71と第2の面73とを互いに接続している。動作する際には、回転軸400のうちの1つに対して、孔75に配置されたロッド91周りをフランジ1が回転するように、ベース7がベアリングを形成する。
【0035】
ベース7は、接続部9を用いてボディ3とヒール5とに接続されている。接続部9は、主平面81を貫通して延在している。接続部9は、曲げ部分が実質的に「S」形状となるように、互いに反対方向に直角を実質的に形成する複雑な二重曲げ形状を有している。接続部9の二重曲げ部は、ボディ3およびヒール5の第1の面31とベース7の第2の面73とが実質的に連続して互いに接続されるように、概して丸みが付けられている。同様に、ボディ3およびヒール5の第2の面33とベース7の第1の面71とは、実質的に連続して互いに接続されている。
【0036】
長手方向の端面35に対向する
図3の底部に示す長手方向の端面37によって、ボディ3とベース7とが横断方向xに互いに区画されている。長手方向の端面37は、実質的に平坦且つ横断方向xに対して垂直である。あるいは、長手方向の端面37は、例えば、チェーン100が移動するときに、対応する形状を有するガイド部材と協働するように、僅かに凸状または僅かに凹状である。長手方向の端面37は、1つのベース7から、対称である他のベースまで延在し、ボディ3および接続部9の中間部を貫通する。長手方向の端面37は、長手方向の端面35とは異なり、例えば
図2に示すように、ボディ3、接続部9およびベース7に沿った厚さ方向yにずらされており、直線状ではない。長手方向の端面37は、ボディ3の第1の面31と第2の面33とを互いに接続し、ベース7の第1の面71と第2の面73とを互いに接続している。
【0037】
長手方向の端部の各々において、長手方向の端面37は、実質的に連続するように横断方向の端面77と接続されている。横断方向の端面77は、ベース7の一部を囲む実質的に円筒形の形状を有し、孔75周りに180°を超えて延在している。
【0038】
横断面83の近くに位置するベース7の部分すなわち基端部は、ボディ3が接続される接続部9に部分的に囲まれており、横断面83から最も離れたベース7の部分すなわち先端部は、横断方向の端面77によって画定される自由端である。接続面79は、接続部9の長手方向の端部を画定する。接続面79は、長手方向zに対して実質的に垂直に延在している。接続面79は、接続部80に接続されている。
【0039】
要約すると、フランジ1の輪郭は、
・フランジ1の全長にわたって延在する長手方向の端面35と、
・第1の部分2の前面55と、
・第1の部分2の側面57と、
・第1の部分2の接続部80と、
・第1の部分2の接続面79と、
・第1の部分2の横断方向の端面77と、
・第1の部分2から第2の部分4まで延在する長手方向の端面37と、
・第2の部分4の横断方向の端面77と、
・第2の部分4の接続面79と、
・第2の部分4の接続部80と、
・第2の部分4の側面57と、
・長手方向の端面35に接続される第2の部分4の前面55と
によって連続的に形成されている。
【0040】
第1の部分2および第2の部分4の横断方向の端面77、接続面79および接続部80は、ヒール5とベース7との間に形成された空隙をそれぞれ画定する。この空隙は、フランジ1の一方の長手方向の端部に開口し、孔75の中心を越えて横断面83に向かってベース7周りに長手方向に延びている。空隙は、ここでは切り欠けの形態にある。すなわち、空隙の接続部9を画定する接続面79は、厳密に、回転軸400と横断面83との離間距離より短い距離だけ横断面83から離間している。
図7に示すように、共通のロッド91周りに2つのフランジ1を組み付けるときには、これらのフランジ1の接続面79は、互いに接触することなく離間している。
【0041】
ここで説明する例では、フランジ1はニップル11を備えている。ニップル11は、ボディ3の第1の面31から突出している。したがって、ニップル11は、ベース7と同じ主平面81の側に突出している。ここでは、ニップル11は、第1の面31の実質的に中央に配置され、横断面83を貫通するように延在している。
【0042】
ニップル11は、ここでは矩形の断面を有している。さらに、ニップル11は、側面15を有している。側面15は、実質的に平坦且つ横断方向xに垂直であり、
図1の上方に示す長手方向の端面35の方を向いている。ボディ3に対するニップル11の位置は、側面15とヒール5の側面57とが実質的に同じ平面上にあるように、また互いに反対方向を向くように選択される。したがって、チェーン100が直線的な形態をとった場合には、側面15は、2つの隣接するフランジ1の各々の側面57の台座となる。この当接による協働は、例えば、
図5に示されている。
【0043】
ヒール5の側面57とニップル11の側面15とは、各フランジ1間で互いに一致する形状を介して協働するように構成されている。組み立てられたチェーン100の直線的な状態において、側面57nは、側面15n-1および15n+1の各々と協働する。側面15nは、1つの側面57n-1と1つの側面57n+1と協働する。チェーン100が湾曲した状態から直線的な状態に移行して直線的な形状に到達したときには、上述した側面は、2つの隣接するフランジ1の相対的な回転が停止するように、当接して協働する。
【0044】
第2の面33は、ニップル11に対応する窪みまたは凹面13を含んでいる。窪み13は、ここではニップル11を形成するために金属板を変形させたプレス加工の結果として得られる。あるいは、ニップル11が、例えば材料を第1の面31に追加して溶接することで形成された部分である場合、または螺合や機械溶接によって取り付けられる部分である場合には、窪み13は存在しない。
【0045】
図3から
図7に示す実施形態に係るニップル11の矩形の形状、特に、方向xに対して垂直な側面15の向きによって、方向zに向けられた圧縮力が1つのリンク200から他のリンクへ伝達されることを防止することができる。
【0046】
図8には、他の実施形態に係るニップルの変形例が示されている。このニップルは、符号611として示されている。ニップル611は、円形の断面を有しており、上述した実施形態に係るニップル11よりも長手方向の端面35の近くに配置されている。第2の面33における凹状の窪み613も円形の断面を有している。ニップル611は、実質的に円筒形の側面615を有している。本変形例では、側面657と側面615とは、互いに一致する形状を有しており、すなわち実質的に円筒形のまたは半円形の凹状の形状を有している。側面657は、ヒール5の端部、すなわち前面655に形成されている。側面657は、円形の形状に接する帯部によって前面655に接続され、厳密には円筒形ではない。このような帯部は、チェーン100の一部の折り畳み/展開している間に、ニップル611を側面657に配置することを容易にする。
【0047】
図9では、他の実施形態に係るニップルの変形例が、符号711として示されている。ニップル711も円形の断面を有しており、
図3に示すニップル11と同じボディ3の位置に配置されている。第2の面33における凹状の窪み713も、円形の断面を有している。ニップル711は、実質的に円筒形の側面715を有している。本変形例では、側面757は、窪み713に一致する形状、すなわち円の四分の一の切り欠け形状を有している。側面757は、
図3に示す前面55と対応する長手方向の端面とを側面57に接続するための角部に形成されている。
【0048】
ここで説明する例では、フランジ1の第1の部分2および第2の部分4の各々の側面15,615,715,57,657,757は、横断面83に対して対称である。このように、フランジ1の対称性は厳密に一致している。あるいは、第1の部分2の側面と第2の部分4の側面とは、互いに非対称の構成を有している。この場合、これらの側面は、フランジ1の対称性の例外となり、第1の部分2と第2の部分4とは、側面15,615,715,57,657,757を除いて、実質的に互いに対称となる。
【0049】
ここで
図4から
図7を参照すると、チェーン100内の隣接するリンクが有する2つのフランジ1
nおよび1
n+1の組立体が図示されている。
【0050】
組立作業の際には、フランジ1
nと1
n+1とは、同様の向きに配向されながら、厚さ方向yにおいて互いに対して反対方向に向けられる。つまり、長手方向の側壁35
nと35
n+1とが位置合わせされ、長手方向の側壁37
nと37
n+1とが位置合わせされて、第1の面31
nと31
n+1とが互いを面する方向に向けられる。主平面81
nと81
n+1とは、互いに一致している。ボディ3
nおよびヒール5
nとベース7
n+1とが位置合わせされ、ボディ3
n+1およびヒール5
n+1とベース7
nとが位置合わせされる。組み立ての際には、
図4に示す状態から
図5から
図7に示す状態に移行するために、フランジ1
nと1
n+1とを、互いに向けて共通の長手方向zに移動させて互いを貫入させる。最終的な位置では、第2の部分4
nの孔75
nと第2の部分4
n+1の孔75
n+1とが位置合わせされ、ロッド91がその孔にねじ込まれ、これにより、回転軸400が画定する。
【0051】
第1の面31および71と第1の面31および71とが互いに貫入した組立体によって、五の目状のフランジ1の列が形成されている。1つのリンク200と別のリンクとでフランジ1の方向を交互に変えることで、横断方向yにおいて第1の部分2と第1の部分2とが重なり合い、第2の部分4と第2の部分4とが重なり合う。したがって、一方の第1の部分2の側面15,615,715,57,657,757と他方の第2の部分4の側面とは構成が異なっていてもよく、互換性がなくてもよい。この場合、これらの側面は、フランジ1の対称性の例外となり、第1の部分2と第2の部分4とは、側面15,615,715,57,657,757を除いて、実質的に互いに対称となる。第1の部分2の前面55と第2の部分4の前面55とは、互いに当接する。これらの前面は、互いに互換性がある。
【0052】
フランジ1nと1n+1との組立体の厚さは、フランジ1全体の厚さ、すなわちボディ3の厚さ93の2倍に相当する。
【0053】
2つのフランジ1nと1n+1との組立体は、必要な長さのチェーン100を形成するために必要な回数だけ繰り返される基本パターンを構成している。
【0054】
図10では、フランジ1
nの一方の側がフランジ
n+1に組み付けられ、他方の側がフランジ1
n-1に組み付けられる。
図11および
図12に示すような湾曲した形状から
図10に示すような直線的な形状に移行するチェーン100の一部は、3つのフランジ1が有する対応する側面15と57との当接によって、反対方向に湾曲することがない。次に、側面15と57とが当接面を画定する。
図10から
図12では、回転軸400を画定するロッド91は図示されていない。
【0055】
チェーン100の展開動作の間に、チェーンは、巻かれた形状または少なくとも湾曲した形状から直線的な形状に徐々に移行し、長手方向zに圧縮されて移動素子を押すようにおよび/または孔75に設けられたロッド91を介して移動素子を牽引するように機能する。展開動作の間に、チェーン100は、モータによって駆動される。チェーン100の一部である複数のリンク200は、少なくとも1つのガイド領域へ逐次移動される。例えば、一組のレールであるガイド領域は、フランジ1を互いに対して回動させて、
図11および
図12に示す形状から
図10に示す直線的な形状に移行させる。
【0056】
次に、フランジ1は、その2倍の厚さに相当する2つの層に整列される。すなわち、第1の層は、フランジ1n-4,1n-2,1n,1n+2,1n+4等の端部同士の当接によって構成され、第2の層は、フランジ1n-3,1n-1,1n+1,1n+3等の端部同士の当接によって構成される。前面55n-1と前面55n+1とは、互いに当接する。したがって、展開が進むにつれて、2つのフランジ1は、前面55をそれぞれ介して互いに押しつけられ、これによって、支持面を画定する。チェーン100のリンクは、長手方向zにおいてチェーンを圧縮するように機能する。チェーン100の規模では、圧縮力は、直線的な状態のチェーン100の主方向zに垂直な2つの部分に分布され、これらの部分は、前面55の面積の2倍に実質的に相当する。
【0057】
第1の態様では、チェーン100は、水平または垂直方向に対して傾斜する方向に移動するようになされている。この場合、長手方向zはこの移動方向に対応する。例えば、チェーン100は、重い物体を運ぶために使用される。チェーン100の重量は、一般的に、チェーン100自体の重量下での曲げや意図しない湾曲に抵抗するには重すぎる。この場合、特に長い距離にわたって移動する場合には、外部サポートが必要となる。チェーン100の直線部分は、適切な構造体の上に載置され、その構造体に対して平行移動する。この場合、ニップル11,611,711の存在や側面57,657,757間の協働は不要であるが、ニップル11,611,711の存在と側面57,657,757間の協働とによって、チェーン100のリンクの位置決めが良好に保持される。
【0058】
第2の態様では、チェーン100は実質的に垂直な方向に移動するようになされている。この場合、長手方向zはこの垂直方向に対応する。例えば、チェーン100は、荷物用エレベータのプラットホームを上昇させるために使用される。プラットホームの重量、プラットホームが支持する物品の重量および/またはチェーン100自体の重量は、チェーン100の垂直部分において長手方向zの高圧縮力を維持するには十分である。この場合、ニップル11,611,711の存在や側面15,57,615,657,715,757の協働は不要である。あるいは、チェーン100の座屈現象または予想外の湾曲の現象を防止するために、チェーン100の垂直移動の距離の少なくとも一部に沿ってチェーン100の移動を誘導する。例えば、フランジ1の長手方向の端面35および/または長手方向の端面37の摺動および接触によって支持するようにレールが設けられている。ニップル11,611,711が設けられている場合、側面57,657,757との協働によって、チェーン100の直線的な形状の保持を改善することができる。
【0059】
チェーン100を収容する動作の間は、移動の方向は展開動作に対して逆となる。チェーン100は、ベース7とベース7を貫通するロッド91とによって、牽引動作を行うことができる。
【0060】
ベース7に形成されたベアリング内に配置されたロッド91を用いて組み立てられたフランジ1の組立体によって連続的に形成されたチェーン100は、機能的である。しかしながら、移動距離が長く、積荷が重い場合、このようなチェーン100は座屈現象や横断方向yの曲がりに対して敏感になりやすい。特に、フランジ1の接続部9が変形してチェーン100が使用できなくなる可能性がある。望ましくない移動を防止してこのようなリスクを制限するために、チェーン100は、その移動距離の大部分にわたって誘導されてもよい。チェーン100は、
図1および
図2に示すように同等に複製されてもよい。このとき、各リンクは、ベース7を貫通する共通の回転軸400を画定するロッド91によって接続された2つの類似フランジ1を備えている。この場合、チェーン100は、平坦な形状ではなく、実質的に正方形の断面を有している。これにより、強度ならびに曲げ力に対する抵抗が改善される。チェーン100は、2列に並んだ複数のフランジ1を有し、各列は、互いに貫入した2つの五の目状の層からなる。あるいは、各リンクは、ロッドによって相互に接続された3つ以上の類似フランジの列を備えていてもよい。
【0061】
図1および
図2に示す構成では、同じリンク200の一対のフランジ1は、横断方向yに垂直な平面に対して対称であるように取り付けられている。あるいは、一対のフランジは、非対称であるように取り付けられてもよい。
【0062】
ここに記載する例では、フランジ1は金属板から作製されている。フランジ1は、一体に形成されている。フランジ1には、リベット、ボルトまたはナットタイプの外部固定具や溶接されたまたはろう付けされた継手が設けられていない。あるいは、フランジ1は、例えば、2つの一体部品を溶接して一体に形成されてもよい。
【0063】
本製造方法は、以下のステップに分けられてもよい。
(a)金属板からフランジ1のブランクを切り出すステップ。
(b)ヒール5に対して厚さ方向にベース7をずらして形成し、例えば、二重曲げまたは窪みを形成する等の曲げ加工によってヒール5とベース7とを接続する接続部9を形成するステップ。
【0064】
上述した方法は、ここでは以下の追加的なステップをさらに備えている。
(c)一方のボディ3およびヒール5と、他方のベース7とが互いに平行になるように、平坦化するステップ。
(d)ヒール5、ニップル11および孔75等の少なくとも幾つかの機能的面を仕上げるステップ。
【0065】
切り出しのステップ(a)の間に、上で定義したフランジ1の輪郭が切り出される。さらに、孔75もくりぬかれ、ニップル11も形成される。切り出しのステップの終わりには、フランジ1のブランクまたはプレートは、依然として実質的に平坦なプレート状である。ステップ(b)の間に接続部9が形成されることによって、フランジ1のブランクは、最終的なまたは準最終的な形状となる。フランジ1のブランクの厚さは、加工前のプレートの厚さに比べて全体の厚さの約2倍、すなわちボディ3およびヒール5の厚さ93とベース7の厚さ97との和に相当する。
【0066】
あるいは、フランジ1は、少なくとも部分的に機械加工によって固形物から製造される。フランジ1に要求される全体の厚さに実質的に等しい厚さを有するブランクには、フランジ1を形成するために材料を除去する連続的な加工が施される。ずらされた構成を有するフランジ1は、2つの部品の溶接または機械的な溶接によって、形成されてもよい。
【0067】
あるいは、フランジ1は、プラスチック材料等の非金属の材料から作製される。フランジ1は、例えば、射出成形によって形成されてもよい。
【0068】
本発明は、単に一例として上述した剛直チェーンのリンクおよび剛直チェーンの実施例に限定されず、当業者が添付の特許請求の範囲内であると想定することができる全ての変形例を包含する。