(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ゲッター素子およびゲッター素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/17 20060101AFI20220309BHJP
G21C 3/16 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G21C3/17 100
G21C3/16 100
G21C3/16 400
(21)【出願番号】P 2018545191
(86)(22)【出願日】2017-03-07
(86)【国際出願番号】 US2017021125
(87)【国際公開番号】W WO2017172298
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-01-15
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エイチェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ジェイムス エム.
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0010915(US,A1)
【文献】特開昭55-051396(JP,A)
【文献】特開昭61-228382(JP,A)
【文献】特開平04-069592(JP,A)
【文献】特開昭58-171694(JP,A)
【文献】特開2012-185020(JP,A)
【文献】特開昭62-130385(JP,A)
【文献】特開平05-100065(JP,A)
【文献】特開昭52-072094(JP,A)
【文献】特開昭60-018791(JP,A)
【文献】米国特許第04257847(US,A)
【文献】米国特許第04710343(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00508715(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/17
G21C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲッター素子の製造方法であって、
選択されたある期間にわたって核分裂炉心の流体流の中に含まれる分裂生成物の予想される量を決定するステップと、
選択された上記期間にわたって、予想される量の上記分裂生成物と、ゲッター材料と、の間で起こる化学反応にて形成される反応生成物の予想される量を特定するステップと、
上記分裂生成物の予想される量と反応生成物の予想される量とに基づいて、上記ゲッター材料を含むゲッター処理混合物の体積パラメータを決定するステップと、
決定された上記体積パラメータによって規定される少なくとも1つの貫通経路を含むゲッター体を、上記ゲッター処理混合物を用いて形成するステップと、
上記ゲッター材料と複数の空隙形成構造物とを混合して上記ゲッター処理混合物を形成するステップとを含み、
上記ゲッター体を形成するステップは、上記ゲッター処理混合物から上記空隙形成構造物を除去して、少なくとも1つの貫通経路を形成するステップを含むことを特徴とする、ゲッター素子の製造方法。
【請求項2】
決定された上記体積パラメータは、予想される量の上記分裂生成物と、上記ゲッター材料と、の間の化学反応が、選択された上記期間にわたって、反応生成物の予想される量を生成するのを、促進するのに十分な表面積を規定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記分裂生成物は、
セシウムおよびセシウム化合物のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記ゲッター処理混合物の上記ゲッター材料は、
金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記金属酸化物は、ジルコニウム酸化物、チタン酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、バナジウム酸化物およびクロム酸化物のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記金属酸化物は、100ないし500nmの平均粒子径を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記金属酸化物は、100nmより小さい平均粒子径を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
上記ゲッター体を形成するステップは、
上記ゲッター体の理論的密度の25ないし45%の密度を有するゲッター体を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記ゲッター体を形成するステップは、
上記ゲッター体の理論的密度の50ないし70%の密度を有するゲッター体を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記ゲッター体を多孔性容器の中に配置するステップと、上記多孔性容器を燃料ピンの中に配置するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記多孔性容器を燃料ピンの中に配置するステップは、上記燃料ピンの中の分裂生成物源のうちの実質的に全てが、上記燃料ピンの中の上記ゲッター体の同じ側にあるように、上記多孔性容器を配置するステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記燃料ピンは、上記燃料ピンの中で生成された気体を原子炉の頭隙へ排出するように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
上記ゲッター処理混合物は、上記流体流の第1分裂生成物との反応を促進するための第1ゲッター材料と、上記流体流の第2分裂生成物と反応するための第2ゲッター材料と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記空隙形成構造物は、有機材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記空隙形成構造物は、50ないし150ミクロンの平均径を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記体積パラメータを決定するステップは、1:1ないし3:1のゲッター材料と空隙形成構造物との質量比として決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記ゲッター体を形成するステップは、上記ゲッター処理混合物を緻密化するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記ゲッター処理混合物を緻密化するステップは、約200ないし約1300MPaの選択された圧力で上記ゲッター処理混合物をプレスするステップを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
緻密化された上記ゲッター処理混合物から複数の上記空隙形成構造物を除去するステップは、
上記ゲッター処理混合物に溶媒を加えて、複数の上記空隙形成構造物を溶解するステップを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
原子炉の核燃料の中の反応処理中に形成される1つ以上の分裂生成物を除去するためのゲッター素子であって、
入力流の中に含まれる分裂生成物と反応性のあるゲッター材料を含むゲッター体を含み、
上記ゲッター体は、上記ゲッター体を通る上記入力流の流れを促進するための少なくとも1つの貫通経路を含み、
上記ゲッター体は、所定の時間間隔の間、ゲッター素子を通る上記入力流の流れを維持するのに十分な体積パラメータを有し、
少なくとも1つの上記貫通経路は、上記所定の時間間隔の間、予め特定された量の上記分裂生成物を取り込むのに十分な反応表面積を含み、
上記ゲッター材料は無規律な形態であり、
少なくとも1つの上記貫通経路は、ゲッター材料同士の間に不規則に分布する複数の空隙を含
み、
複数の上記空隙は、所定の拡張範囲の中での上記ゲッター材料の拡張にもかかわらず、貫通流伝送を、選択された流量レベルより上に維持するのに十分な、体積を有することを特徴とする、ゲッター素子。
【請求項21】
原子炉の核燃料の中の反応処理中に形成される1つ以上の分裂生成物を除去するためのゲッター素子であって、
入力流(608)の中に含まれる分裂生成物(610)と反応性のあるゲッター材料を含むゲッター体を含み、
上記ゲッター体は、上記ゲッター体を通る上記入力流の流れを促進するための少なくとも1つの貫通経路(622)を含み、
上記ゲッター体は、所定の時間間隔の間、ゲッター素子を通る上記入力流の流れを維持するのに十分な体積パラメータを有し、
少なくとも1つの上記貫通経路は、上記所定の時間間隔の間、予め特定された量の上記分裂生成物を取り込むのに十分な反応表面積を含み、
少なくとも1つの上記貫通経路は、上記ゲッター材料に囲まれた多孔性の棒内の複数の空隙を含
み、
複数の上記空隙は、所定の拡張範囲の中での上記ゲッター材料の拡張にもかかわらず、貫通流伝送を、選択された流量レベルより上に維持するのに十分な、体積を有することを特徴とする、ゲッター素子。
【請求項22】
原子炉の核燃料の中の反応処理中に形成される1つ以上の分裂生成物を除去するためのゲッター素子であって、
入力流の中に含まれる分裂生成物と反応性のあるゲッター材料を含むゲッター体(802)を含み、
上記ゲッター体は、上記ゲッター体を通る上記入力流の流れを促進するための少なくとも1つの貫通経路(806)を含み、
上記ゲッター体は、所定の時間間隔の間、ゲッター素子を通る上記入力流の流れを維持するのに十分な体積パラメータを有し、
少なくとも1つの上記貫通経路は、上記所定の時間間隔の間、予め特定された量の上記分裂生成物を取り込むのに十分な反応表面積を含み、
上記ゲッター材料は、円筒形状の複数の同心領域(804a、804b)を含み、
少なくとも1つの上記貫通経路は、上記複数の同心領域の間の複数の環状形状の空隙を含むことを特徴とする、ゲッター素子。
【請求項23】
上記反応表面積は、上記所定の時間間隔の間、上記入力流の中の上記分裂生成物のうちの実質的に全てのものとの間での化学反応を提供するのに十分であることを特徴とする、請求項20~22のいずれか1項に記載のゲッター素子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本願は、発明の名称を分裂生成物ゲッターとして2016年3月8日に出願された米国仮出願第62/305,272号の利益に対する優先権を主張し、これは、参照によってその全体がここに組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般に、分裂生成物ゲッター装置と、分裂生成物ゲッター装置の製造方法に関する。
【0003】
〔発明の概要〕
本開示の1つ以上の例証の実施形態に関し、分裂生成物ゲッター装置が開示される。一つの例証の実施形態において、分裂生成物ゲッター装置は、ある量のゲッター材料を含んで空隙構造物を有するゲッター体(getter body)を含む。他の例証の実施形態において、ゲッター材料は、核分裂原子炉からの流体流の中に含まれる分裂生成物と反応性がある。他の例証の実施形態において、ゲッター体は、選択されたある期間の間、ゲッター体の空隙構造物を通る流体流を維持するのに十分な、決定された体積パラメータ(量パラメータ)(volume parameter)を有する。他の例証の実施形態において、ゲッター体の、決定された体積パラメータは、決定された体積パラメータを有しており、また、選択されたある期間にわたって、ゲッター体の拡張を、選択された拡張閾値より下に維持するのに十分な、ゲッター体の中の空隙量を提供する。
【0004】
上述のものは概要であり、したがって、簡易化、一般化、包含および/または詳細の省略を含みうる。したがって、当業者は、この概要が例証だけのものであってどのような制限も意図されていないことを理解するであろう。装置および/または処理の他の態様、特徴、利点および/またはここに記載の他の内容は、ここで述べた教示から明らかとなるであろう。
【0005】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、高速原子炉心を有する例示的な核分裂炉を示す図である。
【0006】
図2は、ゲッター材料を含む体積によって形成される例示的なゲッター体を示す図である。
【0007】
図3Aは、蓋素子によって支持されるゲッター体を含む例示的なゲッター素子を示す図である。
【0008】
図3Bは、
図3Aに示される蓋素子の一つについての他の画像を示す図である。
【0009】
図4Aは、蓋素子によって支持されるゲッター体を含む他の例示的なゲッター素子を示す図である。
【0010】
図4Bは、
図4Aに示される蓋素子の一つについての他の画像を示す図である。
【0011】
図5Aは、ゲッター素子での使用に適した例示的な支持構造物を示す図である。
【0012】
図5Bは、ゲッター素子での使用に適した他の例示的な支持構造物の簡略化された概略画像を示す図である。
【0013】
図6は、ゲッター素子での使用に適した他の例示的な支持構造物を示す図である。
【0014】
図7は、他の例示的なゲッター体の、端を前向きにした画像を示す図である。
【0015】
図8は、さらに他の例示的なゲッター体の、端を前向きにした画像を示す図である。
【0016】
図9は、例示的なゲッター素子を装備した原子炉の燃料ピンの横断面図である。
【0017】
図10は、核燃料と分裂空間との間に直列に配置された2つの例示的なゲッター素子を装備した原子炉の燃料ピンの横断面図である。
【0018】
図11は、ゲッター素子を含む一組の燃料ピンを含む例示的な燃料集合体の平面図である。
【0019】
図12は、一組の燃料集合体を含む原子炉心の透視図である。
【0020】
図13は、原子炉の分裂気体出力流を清浄化するのに用いられるゲッター体を形成するための例示的な動作を示す図である。
【0021】
図14は、ゲッター処理混合物を調製し、複数の空隙を有するゲッター体を形成する、一連の例示的な動作を示す図である。
【0022】
図15Aは、形状が球形である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【0023】
図15Bは、形状が楕円面(ellipsoidal)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【0024】
図15Cは、偏円回転楕円体(扁球面)形状(oblate-spheroid-shaped)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【0025】
図15Dは、偏長回転楕円体形状(prolate-spheroid-shaped)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【0026】
図16は、固められたゲッター処理混合物の塊の一部分の概念図である。
【0027】
図17は、適用された金型圧力に応じて達成されたゲッター処理混合物の理論的密度(TD)の割合を示すグラフである。
【0028】
図18Aは、犠牲的な空隙形成構造物とゲッター材料とを含む例示的なゲッター体を示す図である。
【0029】
図18Bは、犠牲的な空隙形成構造物を分解する熱的または化学的処理を受けて空隙を残した後の
図19Aの例示的なゲッター体を示す図である。
【0030】
図19Aは、組み立てられたゲッター素子の放射方向の横断面を示し、また、ゲッター素子の全ての空隙構造物を形成する多くの孔を示す図である。
【0031】
図19Bは、
図20Aの組み立てられたゲッター素子の単一の孔の拡大画像を示す図である。
【0032】
図20は、ゲッター素子を形成する、一連の例示的な付加的な組み立て動作を示す図である。
【0033】
図21は、付加的な組み立て処理によって形成された例示的なゲッター体を示す図である。
【0034】
図22は、付加的な組み立て処理によって形成された他の例示的なゲッター体を示す図である。
【0035】
図23は、付加的な組み立て処理によって形成されたさらに他の例示的なゲッター体を示す図である。
【0036】
図24は、犠牲的鋳型処理によってゲッター素子を形成する例示的な動作を示す図である。
【0037】
図25は、直接的泡立ち動作によってゲッター素子を形成する例示的な動作を示す図である。
【0038】
〔発明の詳細な実施形態〕
以下に詳述する説明では、その一部をなす付随の図面を参照する。図面では、典型的には、断りの無い限り同様の符号は同様の部材を同一視する。詳述する説明における例証の実施形態、図面および特許請求の範囲は、制限を課すことを意図していない。ここに示した主題の精神と範囲から逸脱することなく、他の実施形態も利用でき、他の変更も可能である。
【0039】
本開示は、気体および/または液体の流れから、原子炉の核燃料の中の反応処理中に形成される分裂生成物などの1つ以上の分裂生成物を除去するためのゲッター素子の種々の実施形態に向けられている。ゲッター素子は、流体(液体および/または気体)の流れの連続的な処理能力を促進する1つ以上の内部通路を含み、また、標的の分裂生成物と化学的に反応して流れから分裂生成物を除去するゲッター材料をも含む。開示された技術は、限定されないが、高速原子炉、増殖炉、増殖燃焼炉、および/または、ある場合には搬送波原子炉を含む、種々の原子炉における実施形態に適している。本開示は、さらに、ゲッター素子を製造する種々の方法にも向けられている。
【0040】
図1は、高速原子炉心132を有する例示的な核分裂原子炉130を示す。高速原子炉心132は、保護容器136によって囲まれた反応容器140に配置されている。一つの実施形態において、高速原子炉心132は、核分裂性の核燃料の分裂反応のための中性子を提供する核分裂点火器(図示せず)を含む。核分裂原子炉130は、多くの燃料集合体(燃料アセンブリー)(fuel assembly)(例えば画像Bの燃料集合体138)を含み、各燃料集合体はさらに、複数の燃料素子をふくみ、それらはここでは燃料ピンとも称する。開示された技術の一つの実施形態において、個々の燃料ピンはそれぞれさらに、画像B、CおよびDを参照して以下に述べるように、入力流から1つ以上の分裂生成物を収集するための機構を含む。
【0041】
高速原子炉心132は、典型的には、冷却材を含み、冷却材は、冷却材(例えば液体ナトリウム)のプールや、核分裂原子炉139全体を冷却材が流れうるようなループなどである。いくつかの原子炉では、高速原子炉心132の上の方の頭隙(headspace)に冷却材の貯蔵部がある。高速原子炉心132から熱を逃がすのを支援するために、冷却材の貯蔵部に隣接してまたは接触して、熱交換器(図示せず)が配置されてもよい。
【0042】
画像Aを参照して、核分裂原子炉130は、画像Bにてより詳細に示される多くの燃料集合体(例えば燃料集合体138)を含む。各燃料集合体はさらに、複数の燃料ピンを含み、これらは燃料ピン120(画像Cに示す)などである。画像Bは、高速原子炉心132の中での使用に適した各燃料集合体装置の配列142を示す。各集合体は、複数の燃料ピン(例えば燃料ピン120)を含む。他の装置形状および配列構成も考慮されるが、
図1の例示的な核燃料集合体装置はそれぞれ、固形の六角形の管周囲(環境)(tube surrounding)を含む。いくつかの実施形態では、六角形ではない管も用いられうる。配列142の中の個々の燃料集合体装置138の構成要素を、画像CおよびDにさらに詳細に示す。
【0043】
画像Cに示すように、核燃料集合体装置138は、燃料ピン120のような細長い複数の燃料要素(fuel element)を囲んでいる。燃料ピンの中で核分裂が起きると、ピンの中で圧力を生成するのに貢献できる分裂生成物が生成されうる。いくつかの原子炉では、燃料ピンは、この圧力を高い燃焼度(burn-up)で提供するための大きな空間を含むように設計される。他の原子炉は、圧力を緩和するために気体を排出するように設計された燃料ピンを含んでもよく、この排出は例えば、分裂生成物が流れて頭隙148にて冷却材の貯蔵部と接触することができるように排出する。いくつかの分裂生成物は揮発性でありうるので、この排出は危険を引き起こしうる。
【0044】
燃料を排出する設計も燃料を排出しない設計もどちらも、ここに開示された技術から恩恵を得ることができ、このことは一般的には、核分裂原子炉130の中での流体流から1つ以上の分裂生成物を除去する道具や技術を提供する。
【0045】
燃料ピン120の構成要素は、画像Dにてより詳細に示され、以下に述べられる。一つの実施形態では、個々の燃料集合体装置のそれぞれにおける管構造物は、冷却材が、燃料ピンを過ぎて、隣接する管壁の間の間隙隙間(interstitial gap)を通って流れることができるようにする。各管はまた、個々の集合体の開口部を設ける(orificing)ことを可能にし、燃料束に対する構造的支持(structural support)を提供し、操作ソケットから注入口ノズルへ操作負荷を伝送する。燃料ピンは典型的には、放射材料と冷却材システムとを分離するためのクラッド(cladding)(および場合によっては追加の仕切りおよび/またはライナー)によって囲まれた複数の核燃料棒(ウラン、プルトニウムまたはトリウムなど)から成る。高速原子炉心132の核燃料集合体装置138の個々のピンは、ピンに挿入された最初の核燃料棒とピンの中の増殖状況とに依存して、核分裂性核燃料および/または燃料親(fertile)核燃料を含むことができる。
【0046】
画像Dに、より詳細に例示的な燃料ピン120を示す。燃料ピン120は、燃料122、ゲッター素子100および随意的な空間領域124を含む。ゲッター素子100は、燃料122から受けた入力流108に含まれる分裂生成物110と化学反応性のある材料(図示せず)を格納する。例えば、入力流110は、燃料122の核分裂の間に生成された1つ以上の分裂生成物を含む。ゲッター素子100は、ゲッター素子100を通っての気体および/または液体の連続的な伝送を促進する少なくとも1つの内部流体流通路を含む。流体流通路は、例えば、1つ以上の細長い経路、相互に連結した孔、微小流体(microfluidic)構造物などであってもよい。ゲッター素子100を通る流体流通路は、ゲッター素子100に対する内部表面積として、分裂生成物110と化学反応して入力流108から分裂生成物110を除去し、それによって、入力流108よりも分裂生成物110の濃度が低い出力流112を生成しうるような、ゲッター素子100に対する内部表面積を提供する。種々の実施形態では、分裂生成物110は揮発性または非揮発性であってもよい。空間領域124はゲッター素子100よりも上の方に示してあり、ゲッター素子100は燃料122よりも上の方に示してあるが、これらの構成要素は、任意の適切な順番および方法で互いに対して相対的に配置されてもよいことが理解されるべきである。
【0047】
ここで述べた燃料ピン(例えば燃料ピン120)の種々の例は、排出するまたは排出しない燃料ピンを表していてもよい。排出する燃料ピンでは、空間領域124は、時には、核原子炉の頭隙148と、または、他の適切な気体貯蔵部と、流体連通する。例えば、燃料ピンは、空間領域124と頭隙148との間の流体連通を促進する種々の排出孔または開口部を含んでもよい。
【0048】
ここで用いられるときには、(例示的なゲッター素子100のような)「ゲッター素子」は、分裂生成物110と化学反応できて、それによって入力流からある量の分裂生成物を除去できるような「ゲッター素子」を含む任意の構造物を指すことが意図される。ゲッター材料が、「ゲッター体」の中に導入されてもよいし、「ゲッター体」の中に形成されてもよい。例えば、ゲッター体は、支柱なしで立っている(free-standing)構造物、粒子の集まり(例えば粉末)、小さいカプセルまたはペレットであってもよい。ゲッター体は、ゲッター材料だけを含んでもよいし、ゲッター材料と、分裂生成物110と反応しない1つ以上の他の非ゲッター材料とを含んでもよい。いくつかの場合には、ゲッター素子は、ゲッター体を含み、また、ゲッター体を保持するための容器をも含む。
【0049】
ゲッター素子100は、ゲッター体と流体連通するように入力流108を配置するための1つ以上の経路を含む。一つの実施形態において、ゲッター体は、ゲッター体と、ゲッター素子100を通る入力流108との間の、接触表面積を最大にするように設計された特性を有する。例えば、ゲッター体は、その全表面積を増加させる、孔または他の経路を含んでもよい。追加のおよび/または代替の実施形態において、ゲッター素子100は、入力流108をゲッター体に接触するように方向づけるための1つ以上の拡散素子(diffusing element)を有する容器を含む。ゲッター素子100およびゲッター体の中の、またはそれら全体の流体空間は、入力流108がゲッター材料に接触して化学反応して入力流から分裂生成物110を除去することを可能にする。
【0050】
いくつかの実施形態において、ゲッター素子100は、示されるように、燃料ピン(例えば燃料ピン120)に含まれない。むしろ、ゲッター素子100は、標的の分裂生成物に接近可能な、核分裂原子炉130の中の他のどこかの位置に配置される。例えば、ゲッター素子100は、核分裂原子炉130の反応容器および/または頭隙148の中の原子炉心の上の方に配置されて、燃料副集合体(燃料サブアセンブリー)(fuel subassembly)を出る分裂生成物流体を受けてそれと反応するようであってもよい。
【0051】
図面を簡素化するために、冷却材循環ループ、冷却材ポンプ、熱交換器、原子炉冷却材システムなどのような、例示的な核分裂原子炉130の特定の構造物が
図1から省かれていることに注意すべきである。したがって、例示的な核分裂原子炉130は、
図1に示されていない追加の構造物を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0052】
図2は、ゲッター材料204を含む塊(volume)によって形成された例示的なゲッター体200を示す。ゲッター体200は、ゲッター体200を通して入力流208の流れを伝送するための少なくとも1つの貫通経路(through-channel)(例えば貫通経路220)を含む。貫通経路は、ゲッター体200の一方の側から他の反対の側へ気体を運搬するのを促進するようにするために、ゲッター体200の長手方向の長さに沿って(例えば、示されるように入力流208の方向に)伸びていてもよいし、および/または、1つ以上の他の方向に伸びていてもよい。
【0053】
ゲッター体200の貫通経路は、ここに開示された種々の実施形態において、種々の異なる形態を呈する。適切な形態は、限定されないが、相互に連結した空隙または孔、人工的に作られた(engineered)経路、および/または、(例えば、以下の
図3Aおよび
図3Bに関してさらに述べるように、ゲッター体が無規律な(loose)粉末であるような実施形態における)離散的な粒子間の隔たりを含む。
【0054】
入力流208は、気体、液体、またはそれらの組み合わせであってもよく、また、さらに、気体、液体、固体、溶解した、懸濁した、またはそれらの組み合わせたものであってもよい分裂生成物210を含む。一つの実施形態において、ゲッター材料204は、分裂生成物210と化学反応できる1つ以上の材料を含む。これに関して、分裂生成物210を含む入力流208がゲッター体200に接触すると、ゲッター材料204が分裂生成物210と化学反応し、ゲッター体200の中に保持される副産物を形成する一方、入力流208の残りは出力流212として、ゲッター体200を出る、または、それを過ぎてまたはそれを通って移動する。したがって、出力流212は、入力流208より少ない分裂生成物210を含む。ゲッター材料との化学反応によって入力流208から分裂生成物210を除去する処理は、ここでは、「取り込み」とも称する(例えば、ゲッター体200は分裂生成物210を「取り込む」)。一つの実施形態において、ゲッター体は、ある期間にわたって、例えば燃料ピンの有効寿命にわたって、燃料ピンの中で生成された選択された分裂生成物の実質的に全てのものの取り込みを提供するように特に人工的に作られる。ここで用いられるときには、選択された分裂生成物の「実質的に全て」とは、選択された分裂生成物の少なくとも95%の、ある場合には95%より多くの、取り込みを指す。
【0055】
ゲッター体200の貫通経路は複数の目的の役割を果たす。第1に、これらの貫通経路の存在は、特定の内容物(例えば不活性気体)が逃げられるようにすることによって、ゲッター体200および/または対応する燃料ピンの領域において圧力を緩和するのに役立つ。第2に、これらの貫通経路の存在は、ゲッター体200に対し、例えば高い燃焼度で、拡張して入って行く領域を提供し、それによって、関連する燃料ピンおよび/または燃料副集合体(subassembly)の関連する領域への潜在的な損傷の可能性を減少させる。一つの実施形態において、貫通経路は、所定の熱拡張範囲の中でのゲッター材料の拡張にもかかわらず、貫通流を、予め選択された流量レベル(flow level)より上に維持するのに十分な、体積を有する。
【0056】
第3に、これらの貫通経路の存在は、分裂生成物208と反応できる利用可能な表面積を増加させる。一つの実施形態において、これらの貫通経路の表面積は、特定の計算された量の分裂生成物208、例えば所定の時間間隔にわたって関連の燃料ピンによって生成されることが予想される分裂生成物208の実質的に全て、の取り込みを促進するように特に設計される。
【0057】
入力流208の分裂生成物210は、揮発性または非揮発性の分裂生成物であってもよい。例示的な揮発性の分裂生成物は、限定されないが、セシウム(Cs)またはCsを主成分とした化合物(例えば、Cs2、CsBr、Cs2I2、CsIなど)、ルビジウム(Rb)またはRbを主成分とした化合物(Rb、Rb2、RbI、RbBrなど)、ストロンチウム(Sr)またはSrを主成分とした化合物(Srなど)、および、ヨード(およびその化合物)を含む。例示的な非揮発性の分裂生成物は、限定されないが、ジルコニウム、モリブデン、ネオジムなどを含む。
【0058】
ゲッター材料204は、分裂生成物210と化学反応性のある、当該分野で公知の任意の材料を含む。種々の材料が適切なゲッター材料であるが、開示された技術のいくつかの実施形態は、ゲッター材料の中に金属酸化物を含み、例えば、ジルコニウム酸化物(例えばZrO2)、チタン酸化物(例えばTiO2)、モリブデン酸化物(例えばMoO2、MoO3)、ニオブ酸化物(例えばNbO2、Nb2O5)、タンタル酸化物(例えばTa2O5)など、のうちの1つ以上である。検討されたゲッター材料は関係のある全ての分裂生成物に対して同等の反応性を示すわけではないので、ゲッター材料は、構成要素の混合物から成ってもよく、混合物の組成物は、ゲッター材料と1つ以上の標的の分裂生成物との間の反応を最大化するように仕立てられる(例えば75%-Ta2O3/25%-Nb2O3混合物)。いくつかの実施形態では、これらの異種の構成要素を混ぜることは有利でありうるが、他の実施形態では、離散的な層が、ゲッター材料のその次の層との潜在的な有害な相互作用を防ぐために、優先的な段階で、流体から、標的の分裂生成物を選択的に除去するようにすることが有利でありうる。ゲッター材料はまた、結合剤、構造安定化剤などの1つ以上の非反応性の構成要素を含んでもよい。
【0059】
一つの実施形態において、ゲッター材料204は、セシウム(Cs)またはCsを主成分とした化合物と反応する1つ以上の材料を含む。同じまたは他の実施形態において、ゲッター材料204は、ルビジウム(Rb)またはRbを主成分とした化合物と反応する少なくとも1つの材料を含む。同じまたは他の実施形態において、ゲッター材料204は、ヨードまたはヨードを主成分とした化合物と反応する少なくとも1つの材料を含む。
【0060】
図2において、ゲッター体200は、空隙構造物206(例えば孔)を含む、円筒形状の固体の構造物であるように示されている。一つの実施形態において、空隙構造物206は、開口した孔構造物を形成する、不規則にまたは規則的に分布する孔を含む。分布する孔は、大きさ、形状、内部接続性、構造安定性、分布概要などについて、選択的に人工的に作られてもよい。ゲッター体の中に空隙構造物206および/または他の経路を形成するのに適した種々の処理が存在し、これは、限定されないが、犠牲的鋳型処理(sacrificial templating process)、付加的製造処理(additive manufacturing)、鋳型複製処理(template replication)、および直接的泡立ち処理(direct foaming)を含む。これらの方法について、以下に、より詳細に述べる。
【0061】
一つの実施形態において、ゲッター体200の空隙構造物206は、犠牲的鋳型処理によって形成される。例えば、空隙構造物206は、ゲッター材料204を空隙形成材料と混合することによって形成されうる。空隙は、空隙形成材料を除去(例えば焼き取り(burning off)または溶解)することによって形成される。空隙形成材料の除去の結果、ゲッター体200のゲッター材料204の体積全体に、空隙(例えば孔または小空洞(cell))が形成される。犠牲的鋳型処理の実施形態の一例は、Andre R. Studart et al. in Processing Routes to Macroporous Ceramics: Review, J. Am. Ceram. Soc. 89 [6] 1771-1789 (2006)に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。種々の処理が、ゲッター材料から空隙材料の除去処理に適している可能性があって、空隙構造物を形成する可能性があり、これは、溶解、(例えば燒結中、専用の焼き取り(burn-off)サイクル中の)熱処理などのうちの任意の1つ以上のものを含む。例示的な犠牲的鋳型処理のさらなる詳細は、
図14Aないし
図20に関して、以下に、より詳細に述べる。
【0062】
他の実施形態において、ゲッター体200の空隙構造物206は、付加的製造処理によって形成される。例えば、空隙構造物206は、3次元印刷処理によって組み立てられうる。これに関して、ゲッター体200の空隙構造物206は、直接に人工的に作られてもよいし、また、その形成は、製造処理によって直接に制御されてもよい。3次元印刷材料に用いられる選択的レーザー燒結が追加的におよび/または代替的に適切であり、一般に、1986年10月17日に出願された米国特許4,863,538号に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。例示的な付加的製造処理のさらなる詳細は、
図20ないし
図23に関して、以下に、より詳細に述べる。
【0063】
他の実施形態において、ゲッター体200の空隙構造物206は、鋳型複製処理によって形成される。例えば、孔(例えば小空洞(cellular)または多孔性構造物)は、空隙構造物をゲッター材料懸濁液(または前駆体溶液)に含浸(impregnation)させることによって形成されてもよく、最初の多孔性材料として同じ(またはほぼ同じ)形態を示す、ある体積(量)(volume)の多孔性ゲッター材料が得られる。複製処理の一例は、Andre R. Studart et al. in Processing Routes to Macroporous Ceramics: Review, J. Am. Ceram. Soc. 89 [6] 1771-1789 (2006)に記載されており、これはその全体が上に参照によって盛り込まれる。鋳型複製処理における基本処理ステップは、
図24に関して述べる。
【0064】
他の実施形態において、ゲッター体200の空隙構造物206は、直接的泡立ち処理によって形成される。例えば、ゲッター体200の空隙構造物206は、気体(例えば空気)をゲッター材料の懸濁液または液体形態(またはゲッター材料の前駆体溶液)に導入する処理によって形成されてもよく、これは、懸濁液または液体の中に泡立ち構造物(foam structure)を確立する役割を果たす。その後、材料は、設定ステップまたは凝固ステップを受けて、泡立ちの中に形成された空隙構造物206において動かなくなる(lock)役割を果たす。直接的泡立ち処理の適切な一例は、Andre R. Studart et al. in Processing Routes to Macroporous Ceramics: Review, J. Am. Ceram. Soc. 89 [6] 1771-1789 (2006)に記載されており、これはその全体が上に参照によって盛り込まれる。鋳型複製処理における基本処理ステップは、
図25に関して述べる。
【0065】
さらに他の実施形態において、ゲッター体200の空隙構造物206は、他の物理的方法論(例えば、機械的研削、エッチングレーザー切除など)、または、化学的エッチングのような化学的方法論によって形成される。空隙構造物206を生成するために、上述の技術(例えば、犠牲的鋳型処理、付加的製造処理、鋳型複製処理、直接的泡立ち処理、化学的/物理的エッチング、研削、切除など)のうちの任意の2つ以上が組み合わされて用いられてもよいことに注意すべきである。例えば、初めはゲッター体200に小さい空隙を生成するのに犠牲的鋳型処理を用いてもよく、その後、ゲッター体200の分裂気体注入口の近くなどに、より大きい空隙を生成するのに機械加工処理を用いてもよい。
【0066】
図3Aおよび
図3Bは、両端で蓋素子314a、314bの間に配置されるように構成された、および/または蓋素子に連結するように構成されたゲッター体302を含む例示的なゲッター素子300の簡略化された概略画像を示す。他の構成(例えば
図4Aないし
図5B)も考慮されるが、
図3のゲッター体302は、空隙構造物306を含めて、支柱なしで立っている固体の素子である。動作時には、蓋素子314a、314bは、ゲッター体302への機械的な支持を提供する役割を果たすとともに、さらに、ゲッター素子300を通っての入力流308の排出を促進する役割を果たす。
【0067】
いくつかの実施形態において、主要ゲッター体(main getter body)302は、支柱なしで立っている固体の構造物ではない。例えば、主要ゲッター体302は、粒子形態(例えば粉末)でもよいし、または、素子の集まり(例えば、粒子をさらに格納する固体のペレットまたは小さいカプセル)であってもよい。これらの実施形態において、蓋素子314a、314bは、主要ゲッター体302を入れてさらに支持するための、容器または支持骨組みと組み合わされて用いられてもよい。
【0068】
蓋素子314a、314bは、高温と原子炉心の中性子束とを受けたときに変形に抵抗する熱安定性材料から出来ている。理想的な候補の材料は、入力流308に含まれる分裂生成物(例えば分裂生成物310)に対しても反応性を有しないものとしてもよい。蓋素子314a、314bの例示的な適切な材料は、例えば、鋼、耐熱金属/合金、または構造用セラミックスを含む。
【0069】
図3Aおよび
図3Bでは、1つ以上の蓋素子314a、314bは、多孔性材料から形成されている。例えば、1つ以上の蓋素子314a、314bは、多孔性金属板313(例えば、
図2Bに示すような多孔性金属円盤)を含んでもよい。他の多孔性構造物、例えば、排出孔、網状材料など、も考慮される。一つの実施形態において、蓋素子314a、314bは、ドリルで開けた穴(hole)のような複数の貫通穴を含む固体の構造物である。穴は、所望の流速、特定のゲッター材料、標的の分裂生成物などのような特定の実施形態の詳細に応じて、種々の大きさおよび分布であってよい。
【0070】
図4Aおよび
図4Bは、蓋素子414a、414bの間に配置されるおよび/または蓋素子に連結するように構成されたゲッター体402を含む他の例示的なゲッター素子400の簡略化された概略画像を示す。ゲッター体402は、空隙構造物406を有し、また、入力流408の中に含まれる分裂生成物410と反応するゲッター材料404を含み、それによって、入力流408と比べて、出力流412において分裂生成物410の濃度を減少させる。
図3A、
図3Bの多孔性構造物と異なり、蓋素子414a、414bは、排出される(vented)金属板415(例えば、排出される金属円盤)である。蓋素子414a、414bの、適した構造物材料や他の詳細は、
図3A、
図3Bに関して上述したものと同じまたは類似であってもよい。
【0071】
図5Aは、ゲッター素子での使用に適した例示的な支持構造物500の簡略化された概略画像を示す。支持構造物500は、端蓋514a、514bに連結された容器部521を含む。動作時に、支持構造物500は、ゲッター体に対する機械的支持を提供してもよく、また、ゲッター素子および/またはゲッター体を通して入力流508の排出を促進してもよい。支持構造物500は、(例えば、
図4Aの主要ゲッター体部402のような、)支柱なしで立っている固体のゲッター体を支持してもよいし、あるいは、支持構造物500は、粒子形態(例えば粉末)のゲッター体や、そうでなければ、支柱なしで立っている素子の集まり(例えば、粒子をさらに格納する固体のペレットまたは小さいカプセル)として表されるゲッター体を支持してもよい。
【0072】
容器部521は、選択された原子炉環境の、流体流、中性子照射および分裂生成物の存在下で、熱的、化学的および構造安定性を提供する任意の材料から形成されてもよい。一つの実施形態において、容器部521は、鋼から形成されている。他の適した容器材料は、耐熱金属/合金、および構造用セラミックスを含んでもよい。
図5A、
図5Bには示していないが、容器部521は、流体および/または気体が、容器部521を通って、および、端蓋514a、514bの排出孔515または多孔性開口部を通って、流れることができるようにするための、容器部の周囲の周りの複数の開口部を含んでもよい。種々の実施形態において、設計および/または安全性を考慮して、蓋素子514aにおける排出孔515の、任意の適した数、大きさ、位置、および/または分布が適宜用いられうる。
【0073】
図5Bは、燃料ピン510の中にゲッター体(例えば
図2のゲッター体200または
図3Aおよび
図3Bのゲッター体300)を配置するための他の例示的な支持構造物502の簡略化された概略画像を示す。支持構造物502は、多孔性端蓋514a、514bを含むとともに、支持構造物502の中央へのおよびゲッター体(図示せず)の中での流体流の取り入れを可能にする、円筒状の側壁520における多くの周辺開口部(例えば開口部518)を有する中央体516を含む。一つの実施形態において、流体流が端蓋514aを迂回して、円筒状の側壁520における開口部(例えば開口部518)のうちの1つ以上のものを通って支持構造物502に入ることができるように、支持構造物502の幅W1は、燃料ピン510の幅W2よりわずかに小さい。
【0074】
図6は、ゲッター素子での使用に適した他の例示的な支持構造物600の一部分の簡略化された概略画像を示す。支持構造物600は、容器部617と拡散器集合体(diffuser assembly)609とを含む。拡散器集合体609はさらに、拡散蓋部614と拡散経路部622(例えば細長い中央経路)とを含む。動作時に、ゲッター体(図示せず)は、容器部617の中に格納される。例えば、ゲッター体は、拡散経路部622を、囲むかまたは部分的に囲んでもよい。拡散器集合体609は、入力流608の気体または液体をゲッター体のゲッター材料と流体連通させるのに役立つ。例えば、拡散蓋部614と拡散経路部622とは、ゲッター体の中へ入る流体流通路および/またはゲッター体を通る流体流通路を提供する開口部(例えば孔、排出孔など)を含む。
【0075】
拡散経路部622は、
図6では、拡散経路部622の内部領域と拡散経路部622の外部領域との間を気体が自由に流れるようにする多くの穴を有する単一の中央経路として示されている。しかし、支持構造物600は、拡散経路部622の代わりに、またはそれに加えて、複数の経路を含んでもよいことが理解されるべきである。例えば、拡散器集合体609は、容器部617の他の領域全体に分布する他の経路を含んでもよい。いくつかの場合には、拡散器集合体609は、ゲッター体を囲む多孔性環状経路などの、ゲッター体を囲む気体伝送経路を含む。
【0076】
ゲッター体への分裂生成物610の取り込みによって、ゲッター体は、やがて、分裂生成物610を蓄積する。ゲッター体の中への分裂生成物610の蓄積の結果、容器部617を通る分裂気体流、および/または、容器部617の中のゲッター体全体の分裂気体流が減少する。いくつかの場合において、蓄積が激しい場所では、ゲッター体の1つ以上の多孔性構造物が封鎖(blocked)されることがある。このような場合には、拡散器集合体609は、この封鎖にもかかわらずゲッター材料(図示せず)を通って入力流608の流れを維持するのに役立ちうる。さらに、拡散器集合体609は、ゲッター体のゲッター材料の体積拡張のときにゲッター体の中の流体流通路を通る流体流を確実にする役割も果たしうる。
【0077】
拡散蓋部614は、多孔性金属またはセラミックス板または一組の排出穴を有する排出される板の形態のような、種々の形態を採用してもよい。拡散経路部622も多孔性であり、また、例えば、多孔性金属棒、または、一組の排出穴を有する金属棒であってもよい。いくつかの非金属材料(例えばセラミックス)もまた、拡散器集合体609の全てのまたは種々の構成要素を形成するのに適切でありうる。
【0078】
図7は、空隙構造物706を有する他の例示的なゲッター体702の一部分の、端を前向きにした画像を示す。一つの実施形態において、ゲッター体702は、
図5A、
図5Bの対応する支持構造物、および、
図6の対応する支持構造物、のうちの一つのものの中に配置されるような大きさと形状になっている。動作時には、ゲッター体702の、図示された端部が、分裂生成物を含む入力流を受けうる。入力流がゲッター体702に接触すると、ゲッター体702のゲッター材料704が入力流の1つ以上の分裂生成物と化学反応し、その分裂生成物を入力流から除去する。
【0079】
ゲッター体702は、支柱なしで立っている固体の構造物である。例えば、ゲッター体702は、多孔性燒結金属またはセラミックス構造物であってもよい。他の配置も考慮されるが、ゲッター体702の空隙構造物706は、ゲッター体702の中の位置に応じて大きさが変化するように配置される。例えば、空隙構造物706の大きさは、一般に、ゲッター体702の中央からの放射方向の距離に応じて減少してもよい。例えば、空隙構造物706の分布は、ゲッター体702の組み立て中に用いられる空隙形成構造物の大きさおよび/または重量によって影響されうる。これに関して、(例えば
図13ないし
図20に関して以下に述べるもののような)空隙形成構造物は、ゲッター材料704と混合されると、沈殿(settling)および/または撹拌処理によって、自己仕分け(self-sort)して分布(例えば勾配(傾斜)分布(gradient distribution))を形成するように作動しうる。
【0080】
ゲッター体702の空隙構造物706は、任意のパターンまたは分布で、ゲッター体702全体に分布してもよい。いくつかの実施形態において、空隙構造物706は、分裂気体注入口の近くでは大きさがより大きい孔を含み、分裂気体排出口の近くでは大きさがより小さい孔を含む。
【0081】
図8は、円筒形状であって、また、伝送経路(例えば、環状形状の空隙806)によって互いから分離されたゲッター材料の複数の同心領域804a、804bを含んでいる、他の例示的なゲッター体802の一部分の、端を前向きにした画像を示す。図示された配置は、ゲッター体802のゲッター材料と、ゲッター体800を通って方向づけられる入力流(図示せず)と、の間の接触表面積を最大化するのに役立ちうる。一つの実施形態において、ゲッター材料の同心領域804a、804bは、燒結された金属またはセラミックス構造物のような、固体構造物である。他の実施形態において、ゲッター体802は、ゲッター容器の多くの多孔性の同心の骨組みのうちのそれぞれを充填する粉末によって形成される。種々の他の構成も考慮される(それらのうちのいくつかは、以下の図面に関して記載されている)。
【0082】
図9は、例示的なゲッター素子900が装備された原子炉の燃料ピン920の横断面図である。ゲッター素子900が燃料ピン920の中に配置されて、燃料ピン920の核燃料922から入力流908(例えば分裂気体)を受けるように配置されていることが示されている。例えば、ゲッター素子900は、核燃料922と入力流908の開始点との上流(upstream)の位置であって、分裂気体空間924の下流(downstream)の位置に、(単独で、または他のゲッター素子と組み合わされて)配置されている。他の実施形態においては、ゲッター素子900は、分裂気体空間924の中に、(例えば、ゲッター素子900の一方の端または両端で、空間の余地を有してまたは有さずに)配置される。
【0083】
蓋素子914aおよび914bは、ゲッター素子900とその直接隣接した構造物との間の仕切りを提供する。一つの実施形態において、分離蓋914aおよび914bは、多孔性の端蓋(例えば孔または排出孔を有する板)である。他の実施形態において、分離蓋914aおよび914bは、入力流908によって生成した圧力下で開くバルブである。
【0084】
ゲッター素子900は、1つ以上の揮発性または不揮発性の分裂生成物910と化学反応して出力流912が得られるゲッター材料を含むゲッター体(図示せず)を含む。ゲッター素子900を出る出力流912は、ゲッター素子900に入る入力流908よりも低い揮発性分裂生成物含有量レベルを有している。一つの実施形態において、出力流912は、分裂空間924の1つ以上のピン排出孔などを通して、燃料ピン920から排出される。
【0085】
いくつかの実施形態において、ゲッター材料は、セシウム、ルビジウム、ストロンチウムなどのような入力流908の1つ以上の揮発性の分裂生成物910と反応する。追加のまたは代替の実施形態において、ゲッター体のゲッター材料が、1つ以上の不揮発性の分裂生成物910と反応する。
【0086】
図10は、核燃料1022と分裂空間1024との間に直列に配置された2つの例示的なゲッター素子1000a、1000bを装備した原子炉の燃料ピン1020の横断面図である。動作時には、燃料1022からの分裂気体は、入力流1008を介し、直列のゲッター素子1000a、1000bを通る。ゲッター素子1000a、1000bのそれぞれの中で、入力流1008の中の1つ以上の分裂生成物1010がゲッター材料との化学反応を受け、それによって、入力流1008を清浄化または部分的に清浄化し、出力流1012中の分裂生成物1010の濃度を減少させる。分離蓋1014a、1014b、1014cは、多孔性であるか、または、入力流1008の圧力下などで選択的に開放することができる、仕切りである。
【0087】
一つの実施形態において、第1ゲッター素子1000aは、第1分裂生成物の取り込みを目的とするための第1ゲッター材料を含み、一方、第2ゲッター素子1000bは、第2分裂生成物の取り込みを目的とするための第2ゲッター材料を含む。例えば、第1ゲッター素子1000aの第1材料は、第1の素子または化合物の取り込みを目的とするゲッター材料を含んでもよく、一方、第2ゲッター素子1000bの第2材料は、第1の素子および/または他の異なる素子を含む他の化合物の取り込みを目的とするゲッター材料を含んでもよい。一つの例示的な実施形態において、2つのゲッター素子1000aおよび1000bのうちの一方は、ニオブまたは酸化チタンのような、セシウムの取り込みのためのゲッター材料を含み、一方、2つのゲッター素子1000aおよび1000bのうちの他方は、銀、銅またはバリウムのような、ヨウ素の取り込みのための、異なるゲッター材料を含む。
【0088】
ここで、
図10の燃料ピン1020は2つのゲッター素子や上に挙げた材料に限定されず、これらは単に説明の目的のために提供されたものであることに注意する。他の実施形態は、2つより少ないまたは2つより多いゲッター素子を含んでもよい。
【0089】
ここで、本開示の1つ以上のゲッター素子(例えば1000a、1000b)の形状は、
図1ないし
図10に示した円筒形状に限定されないことに注意する。本開示の1つ以上のゲッター素子1000は、任意の一般的な幾何形状を採用しうる。他の実施形態では、1つ以上のゲッター素子1000は、限定されないが、六角形プリズム形状、平行六面体形状、三角形プリズム形状、螺旋形状、円錐形状などを含む、種々の形状を採用する。一つの実施形態において、燃料ピン1020の中に含まれる1つ以上のゲッター素子1000は、燃料ピン1020の内部形状に実質的に一致(conform)するように構成される。これに関して、1つ以上のゲッター素子1000は、燃料ピン1020の形状に基づいて当該分野で公知の任意の形状を採用しうる。
【0090】
本開示のゲッター素子(例えば1000a、1000b)は、任意の核反応環境で動作することに適合しうることに注意する。燃料ピン1020の中に含まれる核燃料は、限定されないが、リサイクルされた核燃料、未燃核燃料および濃縮(enriched)核燃料を含めて、当該分野で公知の核分裂性および/または燃料親(fertile)核燃料を含んでもよい。
【0091】
一つの実施形態において、燃料1022は、金属核燃料を含み、また、複数の他の燃料ピンに沿って金属燃料原子炉(metal fuel nuclear reactor)の炉心を形成するのに用いられる。一つの実施形態において、金属燃料原子炉は高速原子炉である。例えば、金属燃料原子炉は、限定されないが、搬送波原子炉などの増殖炉を含んでもよい。
【0092】
図11は、一組の燃料集合体(例えば燃料集合体1130)を含む原子炉心1100の透視図である。各燃料集合体はさらに、一組の燃料ピンを含み、各燃料ピンは、ここですでに述べたような1つ以上のゲッター素子を含む。
【0093】
原子炉心の燃料集合体の構造および配置は、当該分野で公知の任意の形態を採用しうる。
図11の例示的配置では、燃料集合体は六角形の配列で配置されている。
図11に示した配置は、本開示を限定するものではなく、単に説明の目的のために提供されたものであることに注意する。いくつかの実施形態において、燃料集合体は、限定されないが、円筒、平行六面体、三角形プリズム、円錐、螺旋構造などのような他の形状に従って配置される。
【0094】
図12は、一組の燃料ピン(例えば燃料ピン1120)を含む例示的な燃料集合体1200の平面図である。燃料ピンのそれぞれには、分裂気体を清浄化して1つ以上の揮発性または非揮発性の分裂生成物を除去するための、1つ以上のゲッター素子が装備されている。
図12では、燃料ピンは円筒形状であり、六方最密充填配列で配置されている。しかし、この配置は、他の実施形態の他の形態を採用しうる。例えば、燃料集合体1200の燃料ピン1220は、個々に、六角形、平行六面体、三角形、螺旋、円錐などの形状をしていてもよい。他の実施形態において、図示しないが、燃料集合体1200の燃料ピン1220は、長方形配列、正方形配列、同心環配列などで配列されてもよい。
【0095】
図13は、原子炉の分裂気体出力流を清浄化するのに用いられるゲッター体を形成するための例示的な動作1300を示す図である。決定動作1302は、選択されたある期間にわたって核分裂炉心からの流体流出力の中に含まれる分裂生成物の量を決定する。選択された期間は、単一または複数の燃料サイクルとすることができ、また、原子炉の単一の燃料ピンまたは燃料集合体の予想寿命としてもよい。異なる燃料集合体および/または燃料ピンは、異なる燃料要素に対して異なる予想される分裂生成物の決定を提供されうるような異なる予想寿命または燃料サイクルを有していてもよいことが理解されるべきである。流体流の中に含まれる分裂生成物の量はさらに、現在の燃料タイプおよび特定の期間にわたっての燃料要素の予想される中性子的環境(例えば燃料の燃焼)の任意の適切な中性子的方法および/またはモデルを用いて決定できる、選択された期間中に消費される核分裂燃料の特定の量に該当する。
【0096】
提供動作1304は、核分裂原子炉心からの流体流出力の分裂生成物と反応性のあるゲッター材料を含むゲッター処理混合物を提供する。ゲッター体を形成するのに用いられるゲッター処理混合物の量は、以下に述べる動作1306および1308によって決定される。
【0097】
他の決定動作1306は、選択された期間にわたって分裂生成物とゲッター材料との間の化学反応によって形成される反応生成物の所望の量を決定する。一つの実施形態において、反応生成物の所望の量は、ゲッター材料と、決定動作1302にて決定された分裂生成物の実質的に全てと、の間での反応から得られるものとして算出される量である。反応生成物の所望の量に基づいて、他の決定動作1308は、選択されたある期間において、反応生成物の所望の量を生成するのに必要なゲッター処理混合物の量または体積を特定するゲッター処理混合物の体積パラメータを決定する。決定動作1308はまた、ゲッター処理混合物の量を決定するだけではなく、反応生成物の所望の量の体積パラメータの取り込み(uptake)に適したゲッター材料の所望の体積量または密度をも決定しうる。特に、反応生成物は、取り込みが起きると、空隙構造物を減少させうるか、ゲッター材料の密度を増加させうるような、体積(volume)を有する。反応生成物の所望の量(または反応生成物の所定の量)のこの体積を決定することによって、反応生成物の所望の量の決定された体積に適合するまたはそれを超えるようなゲッター材料の体積パラメータを選択することができ、ゲッター材料を通る流体流が維持される(これは、選択された流速または流量レベルにまたはそれより上に維持されてもよい)こと、および/または、ゲッター材料の体積膨張が設計境界の中に留まること、が確実になる。例えば、ゲッター材料の体積パラメータは、限定されないが、孔の大きさ、孔濃度、ゲッター材料の理論的密度、ゲッター材料と犠牲的空隙形成構造物との質量比などのうちの任意の1つ以上を含んでもよい。
【0098】
形成動作1310は、決定された体積パラメータによって規定されるゲッター体を形成する。ゲッター体は、ゲッター処理によって形成される。いくつかの実施形態において、形成動作1310はさらに、容器の中にゲッター体を配置することを必要とする(例えば、最終の「ゲッター素子」を形成することは、それを通る気体または液体の伝送のための少なくとも1つの経路または通路を含む)。
【0099】
いくつかの実施形態において、ゲッター素子は、多孔性の容器の中の無規律な(loose)粉末、複数のペレット、粒子などの形態のゲッター体を含む。他の実施形態において、ゲッター体は、多くの相互に連結した孔または複数の空隙領域を含む固体の構造物などの、固体の(例えば支柱なしで立っている)構造物を生成する、多くの化学的および/または物理的処理によって形成される。したがって、ゲッター素子は、必ずしも容器を含んでいなくてもよい。ゲッター体は、細長い経路などの、他の種々の形状の経路または孔を含んでもよい。さらに他の実施形態において、ゲッター体は、複数の異なる多孔性の構成要素(例えば、支柱なしで立っている複数の多孔性のペレット、多孔性の拡散構成要素(diffusing components)など)によって形成される。
【0100】
図14は、ゲッター処理混合物を調製し、複数の空隙(例えば孔)を有するゲッター体を形成する、一連の例示的な動作1400を示す図である。例示的な動作1400は、犠牲的な構造物を用いることによる空隙の生成を開示し、これは、熱および/または化学的処理にて分解する(それによって、ゲッター処理混合物の中に空隙を形成する)構造物である。(以下の
図20ないし
図25に関して記載されたものなどの)他の実施形態において、ゲッター体の空隙は、他の方法論および/または空隙形成構造物によって形成される。例えば、付加的製造処理、鋳型複製処理、および直接的泡立ち処理は全て、犠牲的な空隙形成構造物を用いない、適切な空隙形成構造物生成方法である。
【0101】
選択動作1402は、ゲッター処理混合物に含まれるある量のゲッター材料を選択する。ゲッター材料は、原子炉で1つ以上の揮発性または非揮発性の分裂生成物と化学反応するのに適した当該分野で公知の任意の単一または組み合わせた材料を含んでもよい。一つの実施形態において、ゲッター材料は、粉末形態で提供される。例えば、ステップ1402で提供されるゲッター材料は、限定されないが、金属酸化物粉末を含む。例えば、ステップ1402で提供される金属酸化物粉末は、限定されないが、ZrO2、TiO2、MoO2、MoO3、NbO2、Nb2O5、Ta2O5、VO2、V2O5、およびCr2O3を含んでもよい。これらのうちの任意のものおよび類縁材料は、1つ以上の揮発性の分裂生成物と容易に化学反応することが示されており、これらは、限定されないが、Cs、CsBr、CsI、Rb、RbI、RbBrまたは他のRb化合物、SrまたはSrを主成分とした化合物、ヨード(およびその化合物)を含む。上述のような1つ以上の反応性材料に加えて、ゲッター材料はまた、結合剤、構造安定化剤などの1つ以上の非反応性の構成要素を含んでもよい。
【0102】
一つの実施形態において、ゲッター材料は、100ないし500nmの平均粒子径などの選択された粒子径を有する金属酸化物粉末を含む。他の実施形態において、ゲッター材料は、100nmまたはそれより小さい平均粒子径を有する金属酸化物粉末を含む。例えば、ゲッター材料は、限定されないが、100nmより小さい平均粒子径を有するある量のナノ粉末を含んでもよい。
【0103】
提供動作1404は、ゲッター処理混合物においてゲッター材料と組み合わせるためのある量の空隙形成構造物(例えば、犠牲的な空隙形成構造物)を提供する。一つの実施形態において、空隙形成構造物は、無酸素で昇温時に熱分解(例えば化学分解)を受ける公知の1つ以上の有機材料を含む。例えば、有機材料は、(例えば以下に述べる緻密化動作1408に適用される熱の間に到達する)適用された燒結温度かそれより低温で分解するように選択されてもよい。空隙形成構造物を形成するのに用いられる有機材料は、200ないし600℃の温度で破壊するように選択されてもよい。例えば、空隙形成構造物は、およそ500℃より下の温度(例えば330ないし410℃)で分解する有機材料から形成されてもよい。一つの実施形態において、犠牲的な空隙形成構造物は、合成有機材料から形成される。例えば、空隙形成構造物は、当該分野で公知の任意の合成有機材料から形成されてもよく、限定されないが、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(登録商標)、ナフタレンなどである。他の実施形態において、空隙形成構造物は、天然有機材料から形成される。例えば、空隙形成構造物は、当該分野で公知の任意の天然有機材料から形成されてもよく、限定されないが、ゼラチン、セルロース、澱粉、ワックスなどである。
【0104】
さらに他の実施形態において、空隙形成構造物は、化学処理で破壊する。例えば、空隙形成構造物は、1つ以上の水溶性イオン化合物から形成されてもよい。一つの実施形態において、空隙形成構造物は、1つ以上の塩を含む。例えば、塩を主成分とした空隙形成構造物は、限定されないが、NaCl、KCl、LiClなどを含んでもよい。
【0105】
他の実施形態において、空隙形成構造物は、1つ以上の酸性浸出剤と反応する1つ以上の金属またはセラミックス化合物を含む。化学処理を用いる犠牲的鋳型処理は、一般に、H. Wang, I. Y. Sung, X. D. Li, D. Kim, “Fabrication of Porous SiC Ceramics with Special Morphologies by Sacrificing Template Method,” J. Porous Mater., 11 [4] 265-71 (2004)に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。化学処理を用いる犠牲的鋳型処理は、また、一般に、H. Kim, C. da Rosa, M. Boaro, J. M. Vohs, R. J. Gorte, “Fabrication of Highly Porous Yttria-Stabilized Zirconia by Acid Leaching nickel from a Nickel-Yttria-Stabilized Zirconia Cermet,” J. Am. Ceram. Soc., 85 [6] 1473-6 (2002)に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。化学処理を用いる犠牲的鋳型処理は、また、一般に、N. Miyagawa および N. Shinohara, “Fabrication of Porous Alumina Ceramics with Uni-Directionally-Arranged Continuous Pores Using a Magnetic Field,” J. Ceram. Soc. Jpn., 107 [7] 673-7 (1999)に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。
【0106】
一つの例示的な犠牲的鋳型処理法においては、固体の鋳型に、ゲッター材料を含む懸濁液を含浸させる。構造物は、(例えば上で示した公開物にて説明されているような)当該分野で公知の1つ以上の技術で固化し、鋳型構造物は、酸性浸出などによって除去される。例えば、サンゴにホットワックスを含浸させてもよく、ワックスを冷却してもよく、また、強い酸性溶液を用いてサンゴを浸出することもできる。
【0107】
他の実施形態において、空隙形成構造物は、昇華を受ける1つ以上の固体を含む。例えば、犠牲的な空隙形成構造物は、限定されないが、ナフタレンなどの、容易に昇華する任意の固体を含んでもよい。これに関して、1つ以上の固体の犠牲的な空隙形成構造物は、多孔性構造物を生成するためにゲッター処理混合物から昇華してもよい。
【0108】
空隙形成構造物は、ゲッター体を通る選択された分裂気体流を維持するのに十分な体積を有する空隙構造物を生成することができる。例えば、空隙形成構造物は、10ないし300μmの大きさ分布を有する孔を生成してもよい。空隙形成構造物は、決定された空隙に対し、適宜、限定されないが、およそ100マイクロメートル、150マイクロメートル、50マイクロメートル、30マイクロメートル、などの平均の大きさを有してもよい。上で挙げた大きさの範囲は、本開示を限定するものではなく、単に説明の目的のために提供されたものであることに注意する。選択される空隙形成構造物の大きさおよび/または濃度は、空隙構造物の空隙の所望の大きさに、および、得られるゲッター体の所望の密度に、依存してもよい。さらに、空隙形成構造物の大きさは、空隙構造物における反応性の材料の予想される体積増加の説明(原因)となる(account for)ように選択されてもよい。
【0109】
提供動作1404で提供される空隙形成構造物は、限定されないが、本開示の
図15Aないし
図15Dに示す例示的な形状を含めて、当該分野で公知の任意の形状を採用しうる。
【0110】
本開示の多くは固体の空隙形成構造物を重点的に取り扱っているが、これは、本開示を限定するものではない。むしろ、空隙構造物は、液体または気体形態であってもよいことに注意する。例えば、空隙形成構造物は、ゲッター体から蒸発または昇華して空隙領域を生成する水および油を含んでもよい。さらに他の実施形態において、空隙形成構造物は、(例えば以下に述べる技術である直接的泡立ち処理におけるように、)ゲッター材料を含む液体構造物の中へ注入される気体などの、気体形態である。
【0111】
形成動作1406は、ゲッター材料の量と空隙形成構造物の量との両方を含むゲッター処理混合物を形成する。例えば、ゲッター材料と空隙形成構造物は、得られるゲッター体にて所望の空隙構造物を達成するために、任意の選択された比率で混合されてもよい。一つの実施形態において、ゲッター材料と空隙形成構造物との質量比は、限定されないが、1:1ないし3:1の比率を含んでもよい。例えば、ゲッター材料はナノ粉末であってもよく、ナノ粉末と球状PE空隙形成構造物との質量比は、限定されないが、以下のもののうちの1つ以上:1:1、1:25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.50:1、2.75:1または3.0:1を含んでもよい。
【0112】
一つの実施形態において、形成動作1406は、湿式混合(wet mixing)処理によってゲッター材料と空隙形成構造物とを混合する。例えば、空隙形成構造物は、ある場合には(例えば沈殿するのに十分大きい粒子を含む)懸濁液混合物でありうるような構成要素混合溶液を形成するための溶液と混合されてもよい。数ある構成要素の中でとりわけ、溶液は、例えば、水またはアルコール(例えばエタノール)を含んでもよい。
【0113】
形成動作1406は、いくつかの実施形態において、ゲッター材料の凝集(cohesion)に対しておよび/または空隙形成構造物から空隙の形成に対して支援するために、空隙形成構造物とゲッター材料とを含む混合物に、結合剤の追加を必要としてもよい。結合剤は、粉末処理の分野で公知の任意の結合剤を含んでもよい。例えば、結合剤は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでもよい。例えば、ステップ1406の混合物は、限定されないが、重量で(by mass)1~10%の結合剤(例えば重量で5%のPEG)を含んでもよい。結合剤は、湿式混合処理および乾式混合(dry mixing)処理の両方で有益でありうる。
【0114】
一つの湿式混合処理では、ゲッター材料、空隙形成構造物および溶液を含む懸濁液に、界面活性剤を加える。界面活性剤は、(例えば粉末形態の場合)ゲッター材料の分散を支援する役割を果たす。一つの実施形態において、界面活性剤は、ゲッター材料および/または犠牲的な空隙形成構造物を加える前に、溶液に加えられる。懸濁液に加えられる界面活性剤の量は、限定されないが、重量で0.05~2%(例えば重量で0.1%)を含んでもよい。界面活性剤は、限定されないが、ポリオキセスリエン(polyoxethlyene)(20)ソルビタン モノオレアートなどの、当該分野で公知の任意の界面活性剤を含んでもよい。
【0115】
他の例示的な湿式混合処理では、ゲッター処理混合物は、懸濁液(例えば、ゲッター材料、犠牲的な空隙形成構造物および溶液)であり、超音波槽を用いて処理される。例えば、超音波槽は、(例えば上述したような)結合剤および/または界面活性剤を加えた後に用いられてもよい。超音波槽は、ゲッター材料粉末の塊を破壊するのに役立つ可能性があり、また、溶液中でのゲッター材料と犠牲的な空隙形成構造物との均一な混合を促進する可能性がある。撹拌、網フィルターなどを含めて、粒子物質(particulate matter)についての追加のまたは代替の濾過を用いてもよい。
【0116】
懸濁液を含む上述の実施形態のうちの任意のものにおいて、形成動作1406はさらに、懸濁液を乾燥させる1つ以上の動作を含んでもよい。例えば、懸濁液を乾燥させるために、溶鉱炉(furnace)またはオーブンを用いてもよい。
【0117】
上述の湿式混合および乾燥の技術とは対照的に、形成動作1406はまた、乾式混合処理であってもよい。例えば、ゲッター材料と空隙形成構造物とを含む乾燥した混合物を、限定されないが、混合器、タンブラーなどの、当該分野で公知の任意の混合機器を用いて混合してもよい。ここで、乾式混合処理において結合剤も用いてもよいことに注意する。一つの実施形態において、ゲッター材料粉末と空隙形成構造物とを乾燥させるために、選択された比率(例えば重量で1~10%の結合剤)で結合剤(例えばPEG)を加える。
【0118】
緻密化動作1408は、ゲッター処理混合物を緻密化する。一つの実施形態において、緻密化動作1408は、選択された圧力でゲッター処理混合物をプレス(pressing)して、固められたペレットを形成することを含んでいる。適用される圧力は実施形態ごとに様々でありうるが、適用される圧力は、一般には、自立する固められた塊(volume)を形成するのに十分である。一つの実施形態において、緻密化動作1408は、ゲッター処理混合物に、200ないし1300MPaの範囲(例えば750MPa)の圧力を適用する。
【0119】
ゲッター材料と空隙形成構造物は、当該分野で公知の任意の緻密化装置および/または技術を用いて固められてもよい。例えば、ゲッター材料と空隙形成構造物は、ペレット処理において当該分野で公知の任意のペレット金型を用いてプレスされてペレットにされてもよい。プレスされた塊の密度(例えば圧縮されたゲッター処理混合物)は、ゲッター処理混合物に適用される金型圧力によって、および/または、ゲッター処理混合物に含まれる空隙形成構造物の量によって、制御されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、緻密化動作1408は、燒結を必要とする。燒結は、例えば、選択された時間の間、選択された温度にまで、ゲッター処理混合物を加熱することを含んでもよい。一つの実施形態において、ゲッター処理混合物は、1000ないし1500℃の温度にまで加熱され、その温度で1ないし24時間保持される。例えば、ゲッター処理混合物は、1350℃の温度にまで加熱されてその温度で4時間保持されてもよい。他の例では、固められた塊は、1100℃の温度にまで加熱されてその温度で8時間保持されてもよい。セラミックス材料の燒結は、一般に、Borg, R. J., & Dienes, G. J., An Introduction to Solid State Diffusion. San Diego: Academic Press Inc. (1988)に記載されており、これはその全体がここに参照によって盛り込まれる。
【0121】
いくつかの実施形態において、ゲッター処理混合物の燒結は、空隙形成構造物の熱破壊を引き起こしうる。具体的には、空隙形成構造物は破壊して(例えば熱分解を受ける)、ゲッター体を出て、固体のゲッター体を残してもよい。いくつかの実施形態において、燒結は、空隙形成構造物の熱分解を促進するための雰囲気中で行われる。例えば、燒結は、窒素を含む雰囲気(例えば空気)の存在下で行われてもよい。
【0122】
燒結を用いるいくつかの実施形態において、緻密化動作1408はさらに、空隙形成構造物の熱破壊を開始しておよび/または十分に促進するのに役立つように、燒結の前に、空隙形成構造物に対し、予熱処理を適用することを必要とする。例えば、燒結の前に空隙形成構造物を十分に燃やし尽くすようにするために、予熱処理は、選択された時間の間、燒結温度より低い中間温度にまで、ゲッター処理混合物を加熱する。例えば、ゲッター処理混合物は、400ないし800℃の中間温度にまで加熱されてその温度で1ないし10時間保持されてもよい。一つの特定の実施形態において、固められた塊は、4時間、500℃の中間温度にまで加熱される。
【0123】
緻密化動作1408にて加熱処理を用いる実施形態において、固められた塊は、選択されたランプ(ramp)速度にて制御されてもよい。例えば、固められた塊が燒結の前に粉々にならないことを確実にするために、空隙形成構造物の焼き取り(burn-off)処理中での使用に対してランプ速度が選択される。一つの実施形態において、固められた塊の温度は、0.1ないし5℃/分の速度でランプされ、限定されないが、例えば1℃/分である。
【0124】
開示された技術のいくつかの実施形態は、緻密化動作1408(例えば加圧、加熱、燒結)を含まないことに注意すべきである。例えば、いくつかの空隙形成構造物は、沈殿などによって、自然に空隙を形成する能力があってもよい。さらに他の実施形態において、緻密化動作1408は、加熱や燒結を用いないような圧縮を必要とする。
【0125】
得られるゲッター素子の密度を制御するために、緻密化動作1408の種々のパラメータを選択可能であってもよい。例えば、固められた塊の密度、またそれゆえ、緻密化されたゲッター素子の密度を制御するようにするために、ゲッター材料と空隙形成構造物との(重量での)量の比率を制御してもよい。他の例では、ゲッター処理混合物および得られるゲッター素子の密度を制御するようにするために、緻密化動作1408によって適用される圧力を制御してもよい。さらに、特定の大きさまたは形状の勾配によって記述可能な空隙の分布を形成するように、空隙形成構造物の重量および大きさを選択してもよい。例えば、種々の大きさまたは形状の空隙形成構造物の沈殿または撹拌によって、分布が自然に生じてもよい。他の実施形態において、種々の大きさおよび/または形状を有する空隙形成構造物の複数の層が、ゲッター処理混合物に、規則正しく整然と生成される。
【0126】
図15Aないし
図15Dは、熱および/または化学的処理を受けたときに分解する犠牲的な空隙形成構造物の例示的な形状を示す。
図15Aないし
図15Dの犠牲的な空隙形成構造物は、単に説明のためのものであり、ゲッター処理混合物から形成されるゲッター体において「空隙」を生成するのに用いられうる構造物の、非限定的な例である。具体的には、
図15Aは、球状形状の犠牲的な空隙形成構造物1500(例えば犠牲的な空隙形成構造物1502)の例示的な量を示す。他の実施形態において、犠牲的な空隙形成構造物は、楕円面(ellipsoids)、偏円回転楕円体(扁球面)(oblate spheroids)、偏長回転楕円体(prolate spheroids)などのように、種々の形状である。例えば、
図15Bは、楕円面(ellipsoidal)形状である犠牲的な空隙形成構造物の量1502を示す。
図15Cは、偏円回転楕円体(扁球面)形状(oblate-spheroid-shaped)である犠牲的な空隙形成構造物の例示的な量1504を示し、
図15Dは、偏長回転楕円体形状(prolate-spheroid-shaped)である犠牲的な空隙形成構造物の例示的な量1506を示す。
【0127】
ここで、50ないし200μmの範囲の大きさ分布を有するPEから形成される球は、本開示の空隙形成構造物としての使用に適した330ないし410℃の温度で適切な熱分解を示すことに注意する。
【0128】
図16は、
図14に関して記載された緻密化動作1408中に形成されたような、固められたゲッター処理混合物の塊(volume)1600の一部分の概念図である。固められた塊は、塊1600を通って流体流が運搬されるようにする少なくとも1つの貫通経路1606を提供する、ゲッター材料1602と空隙形成構造物1604とを含む、加圧された塊である。
【0129】
図17は、適用された金型圧力に応じて達成されたゲッター処理混合物の理論的密度(TD)の割合を示すグラフ1700である。グラフ1700に示すように、密度は、TDの割合の形で表現され、金型圧力の増加と共に増加する。一つの実施形態において、ゲッター素子での分裂生成物の取り込みを、ゲッター素子を通る十分な流れを維持する能力と釣り合わせるように、ゲッター素子の密度が選択される。一つの実施形態において、組み立てられたゲッター素子の密度は、25ないし45%TDである。例えば、組み立てられたゲッター素子の密度は、35ないし40%TDである。他の実施形態において、組み立てられたゲッター素子の密度は、50ないし70%TDである。さらに他の実施形態において、組み立てられたゲッター素子の密度は、60ないし70%TDである。
【0130】
図18Aは、ゲッター材料1804と混合した犠牲的な空隙形成構造物1806を含む例示的なゲッター体1800を示す図である。
図18Bは、犠牲的な空隙形成構造物を分解する熱的または化学的処理を受けて空隙(例えば空隙1808)を残した後の例示的なゲッター体1800を示す図である。いくつかの実施形態において、
図18Bのゲッター体1800は、高圧と熱とを受けて、ゲッター体1800を、燒結したペレットまたは他の構造物へと変化させる。
【0131】
図19Aおよび
図19Bは、本開示の1つ以上の実施形態に関して、球状のPE空隙形成構造物を用いて形成されるゲッター素子の空隙構造物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。より具体的には、
図19Aは、組み立てられたゲッター素子の放射方向の横断面を示し、また、ゲッター素子の全ての空隙構造物を形成する多くの孔を示す図である。一つの実施形態において、図示された空隙構造物の平均の孔の大きさは、50ないし200μmである。例えば、空隙構造物は、限定されないが、およそ100~120μmの平均の孔の大きさを有していてもよい。空隙形成構造物は、適切でありうるような任意の適切な大きさおよび/または形状(または種々の大きさおよび形状でさえ)を有していてもよいことが理解されるべきである。例えば、空隙形成構造物は、200μmより大きい直径を有する構造物を含んでいてもよい。
【0132】
図19Bは、空隙構造物の単一の孔の拡大画像を示し、また、燒結されたゲッター材料の粒子構造を示す図である。ここで、
図19Aおよび
図19BのSEM画像に関するゲッター素子は、上述の範囲の中の密度を有しうることに注意する。
【0133】
図20は、ゲッター素子を形成する、一連の例示的な付加的な組み立て動作を示す図である。上述のゲッター体形成処理(例えば
図14に関して記載された動作1400)と異なり、付加的な組み立て処理動作2000は、犠牲的な空隙形成構造物を全く用いずにゲッター体を形成する。例えば、付加的な組み立て処理動作2000は、選択的レーザー燒結処理などによって空隙を生成する3D印刷を必要としてもよい。
【0134】
提供動作2002は、ゲッター材料を提供する。一つの実施形態において、ゲッター材料は、粒子形態で提供される。例えば、ゲッター材料は、金属酸化物粉末(例えばZrO2、TiO2、MoO2、MoO3、NbO2、Nb2O5、Ta2O5、VO2、V2O5、およびCr2O3)であってもよい。一つの実施形態において、ゲッター材料の平均粒子径は、100ないし500nmである。他の実施形態において、平均粒子径は、100nmまたはそれより小さい。ゲッター材料および用いられる製造処理に依存して、異なる実施形態での使用に、500nmを超えるものも含めて、広い範囲の平均粒子径が適切でありうることが理解されるべきである。
【0135】
付加的な形成動作2004は、ゲッター材料から、支柱なしで立っている3次元物体を合成するために、付加的な製造処理(例えば3D印刷)を用いる。支柱なしで立っている構造物は、集合的に、(例えば、以下の
図22ないし
図24に関して示されてさらに記載されたように、)ゲッター体を形成する。一つの例示的な適切な付加的な製造処理は、選択的レーザー燒結処理である。選択的レーザー燒結処理は、3Dモデルによって規定された空間における点でレーザーを狙って発射することによって粉末材料を燒結するためにレーザーを用い、それによって、材料同士を結合させて固体の構造物を生成する。選択的レーザー燒結処理は、一般に、1986年10月17日に出願された米国特許4,863,538に記載されており、これはその全体が上に参照によって盛り込まれる。
【0136】
例示的な組み立て動作2000は、所定の適用に対する分裂生成物の取り込みを維持する能力がある任意のミクロ構造物および/またはマクロ構造物を含んでもよく、これは、ゲッター素子を通る十分な流れを維持しうる。いくつかの例示的なゲッター体は、
図21ないし
図23に示されている。
【0137】
図21は、付加的な組み立て(例えば3D印刷)処理によって形成された例示的なゲッター体2102を示す図である。ゲッター体2102の種々の素子(例えば素子2104)は、異なる実施形態では異なる形状および大きさを呈しうる。一つの実施形態において、ゲッター体2102の素子は、相互に連結されておらず、容器(例えば、図示した分布を生成するための、円筒状の容器)の中に自由に配置されている。他の実施形態において、この異なる素子は、相互に連結されている。ゲッター体2102の、異なる素子同士の間の空間は、入力流2108の流体が当該伝送経路を通ってゲッター体2102の中でその伝送経路の活性表面と接触しうるような、伝送経路2106を生成する。
【0138】
図22は、付加的な組み立て(例えば3D印刷)処理によって形成された他の例示的なゲッター体2202を示す図である。ゲッター体2202は、ゲッター体2202と入力流2208との間の接触表面積を最大化するために、孔2206の行と列とを含む、支柱なしで立っている単一の構造物である。
【0139】
図23は、付加的な組み立てによって形成されたさらに他の例示的なゲッター体2302を示す図である。ゲッター体2302は、付加的な組み立て処理によって、相互に連結した構造物にそれぞれ加えられた、多くの個々の素子(例えば素子2304)を含む。ゲッター体2302の、異なる素子同士の間の空間は、入力流2308の気体または液体が当該伝送経路を通ってゲッター体2302の表面と接触しうるような、伝送経路2306を生成する。
【0140】
ゲッター体2302は、
図23にて陰影付けによって示されるように、異なるゲッター材料を含む異なる素子を含む。例えば、ゲッター素子の第1部分に印刷された第1素子2304は、第1ゲッター材料を含み、一方、ゲッター素子の第2部分に印刷された第2素子2305は、第2ゲッター材料を含む。これに関して、単一のゲッター体2302に2つ以上のタイプの材料が設けられてもよく、入力流2308からの2つ以上のタイプの分裂生成物またはより多くの生成物の、目的とする取り込みを促進する。例えば、第1素子2304は、セシウムを取り込むことを目的とするゲッター材料を含んでもよく、一方、第2素子2305は、他の元素または他のセシウム化合物を取り込むことを目的とするゲッター材料を含む。類似の処理によって形成された他のゲッター体は、2つより多い標的分裂生成物の取り込のための、2つより多い素子を含んでもよい。
【0141】
図24は、犠牲的鋳型処理によってゲッター素子を形成する例示的な動作2400を示す図である。提供動作2402は、核反応の標的の分裂生成物と反応性のあるゲッター材料を含む懸濁液を提供する。含浸動作2404は、鋳型構造物に懸濁液を含浸させる。凝固動作2406は、懸濁液を凝固させる。除去動作2408は、鋳型を除去して、多孔性鋳型をまねた(mimicking)多孔性構造物を有する凝固したゲッター素子を残す。例えば、除去動作2408は、多孔性鋳型構造物が分解するような熱および/または化学的処理を必要としてもよい。
【0142】
図25は、直接的泡立ち動作によってゲッター素子を形成する例示的な動作2500を示す図である。提供動作2502は、標的の分裂生成物と反応性のあるゲッター材料を含む懸濁液を提供する。導入動作2504は、懸濁液に気体を導入して、ゲッター材料を含む泡を形成する。第1凝固動作2506は、懸濁液を凝固させる。第2凝固動作2508は、泡を凝固させて、気体によって生成した空隙構造物を含むゲッター体を有する、凝固したゲッター素子を形成する。
【0143】
ここに記載の要素、動作、装置、物体およびそれらに付随する議論は、概念的な明瞭性の目的のための例として用いられており、種々の構成の修飾が考慮される。したがって、ここで用いられるときに、記載された特定の例や付随する議論は、それらのより一般的な分類の代表を表すことを意図している。一般に、任意の特定の例の使用は、その分類の代表を意図しており、特定の要素(例えば動作)、装置および物体の非限定は、制限するものとして理解すべきではない。
【0144】
さらに、明確に特許請求された、さもなければ特定の順序が特許請求の範囲によって本質的に必要とされているのでない限り、ここに記載の処理動作は、所望される、任意の順序、追加および削除を行って実行されてもよいことが理解されるべきである。上記の詳細な説明、実施例およびデータは、開示された技術の例示的な実施形態の構造と使用の完全な記述を提供する。開示された技術の多くの実施形態は、開示された技術の精神と範囲から逸脱することなく行うことができるため、開示された技術は、ここ以降に追加されている特許請求の範囲に属する。さらに、種々の実施形態の構造的特徴は、記載された請求項から逸脱することなく、さらに他の実施形態と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【0146】
高速原子炉心を有する例示的な核分裂炉を示す図である。
【
図2】ゲッター材料を含む体積によって形成される例示的なゲッター体を示す図である。
【
図3A】蓋素子によって支持されるゲッター体を含む例示的なゲッター素子を示す図である。
【
図3B】
図3Aに示される蓋素子の一つについての他の画像を示す図である。
【
図4A】蓋素子によって支持されるゲッター体を含む他の例示的なゲッター素子を示す図である。
【
図4B】
図4Aに示される蓋素子の一つについての他の画像を示す図である。
【
図5A】ゲッター素子での使用に適した例示的な支持構造物を示す図である。
【
図5B】ゲッター素子での使用に適した他の例示的な支持構造物の簡略化された概略画像を示す図である。
【
図6】ゲッター素子での使用に適した他の例示的な支持構造物を示す図である。
【
図7】他の例示的なゲッター体の、端を前向きにした画像を示す図である。
【
図8】さらに他の例示的なゲッター体の、端を前向きにした画像を示す図である。
【
図9】例示的なゲッター素子を装備した原子炉の燃料ピンの横断面図である。
【
図10】核燃料と分裂空間との間に直列に配置された2つの例示的なゲッター素子を装備した原子炉の燃料ピンの横断面図である。
【
図11】ゲッター素子を含む一組の燃料ピンを含む例示的な燃料集合体の平面図である。
【
図12】一組の燃料集合体を含む原子炉心の透視図である。
【0147】
原子炉の分裂気体出力流を清浄化するのに用いられるゲッター体を形成するための例示的な動作を示す図である。
【
図14】ゲッター処理混合物を調製し、複数の空隙を有するゲッター体を形成する、一連の例示的な動作を示す図である。
【
図15A】形状が球形である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【
図15B】形状が楕円面(ellipsoidal)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【
図15C】偏円回転楕円体(扁球面)形状(oblate-spheroid-shaped)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【
図15D】偏長回転楕円体形状(prolate-spheroid-shaped)である例示的なある量の犠牲的な空隙形成構造物を示す図である。
【
図16】固められたゲッター処理混合物の塊の一部分の概念図である。
【0148】
適用された金型圧力に応じて達成されたゲッター処理混合物の理論的密度(TD)の割合を示すグラフである。
【
図18A】犠牲的な空隙形成構造物とゲッター材料とを含む例示的なゲッター体を示す図である。
【
図18B】犠牲的な空隙形成構造物を分解する熱的または化学的処理を受けて空隙を残した後の
図19Aの例示的なゲッター体を示す図である。
【
図19A】組み立てられたゲッター素子の放射方向の横断面を示し、また、ゲッター素子の全ての空隙構造物を形成する多くの孔を示す図である。
【
図19B】
図20Aの組み立てられたゲッター素子の単一の孔の拡大画像を示す図である。
【
図20】ゲッター素子を形成する、一連の例示的な付加的な組み立て動作を示す図である。
【0149】
付加的な組み立て処理によって形成された例示的なゲッター体を示す図である。
【
図22】付加的な組み立て処理によって形成された他の例示的なゲッター体を示す図である。
【
図23】付加的な組み立て処理によって形成されたさらに他の例示的なゲッター体を示す図である。
【0150】
犠牲的鋳型処理によってゲッター素子を形成する例示的な動作を示す図である。
【0151】
直接的泡立ち動作によってゲッター素子を形成する例示的な動作を示す図である。