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特許7037506CD3結合ドメインを有する多量体IL-15系分子の構築及び特性評価
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】CD3結合ドメインを有する多量体IL-15系分子の構築及び特性評価
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220309BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220309BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20220309BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220309BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220309BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220309BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220309BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220309BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/24
C12N15/63 Z
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/54
A61K47/68
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/06
A61P35/02
A61K48/00
A61K35/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018561962
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017034656
(87)【国際公開番号】W WO2017205726
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】62/397,236
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/342,311
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504090190
【氏名又は名称】アルター・バイオサイエンス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【氏名又は名称】牛山 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】リウ, バイ
(72)【発明者】
【氏名】ロード, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ヒン シー.
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541335(JP,A)
【文献】特表2015-535828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 1/00 - 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの可溶性融合タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体であって、
A.ここで、第1の融合タンパク質が、(b)インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドドメインに共有結合された(a)第1の結合ドメインを含み、前記第1の融合タンパク質が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、
第2の融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインに融合された(d)可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)に共有結合された(c)第2の結合ドメインを含み、
B.前記第1及び第2の結合ドメインのうち1つが抗CD3抗体を含み、他の結合ドメインが抗原特異的結合ドメインを含み、前記抗原特異的結合ドメインが抗CD20抗体を含み、
C.前記第1の融合タンパク質のIL-15ドメインが第2の融合タンパク質の可溶性IL-15RαSuドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する、少なくとも2つの可溶性融合タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項2】
前記IL-15ポリペプチドが、N72D突然変異を含むIL-15変異体(IL-15N72D)である、請求項1に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項3】
前記抗CD3抗体が、ポリペプチドリンカー配列によって免疫グロブリン重鎖可変ドメインに共有結合された免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む、請求項1又は2に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項4】
前記抗CD20抗体が、ポリペプチドリンカー配列によって免疫グロブリン重鎖可変ドメインに共有結合された免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項5】
前記第2の融合タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の第2の融合タンパク質に共有結合された請求項1~5のいずれか一項に記載の第1の融合タンパク質を含む、可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項7】
前記第1の融合タンパク質が、前記第1の融合タンパク質のFcドメインを前記第2の融合タンパク質のFcドメインに連結するジスルフィド結合によって、前記第2の融合タンパク質に共有結合される、請求項6に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【請求項8】
請求項1に記載の前記第1の融合タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸であって、配列番号1に示される配列を含む、核
【請求項9】
前記核酸が、前記融合タンパク質をコードする配列に制御可能に連結されたプロモーター、翻訳開始シグナル、及びリーダー配列をさらに含む、請求項8に記載の核
【請求項10】
請求項8に記載の前記核酸配列、および任意で請求項5に記載の前記第2の融合タンパク質をコードする第2の核酸配列を含む、DNAベクターであって、前記第2の核酸配列が配列番号3に示される配列を含む、DNAベクター。
【請求項11】
前記抗原特異的結合ドメインが疾患抗原を認識し、当該抗原が任意で新生物、感染症、又は自己免疫疾患と関連する抗原である、請求項1に記載の可溶性融合タンパク質複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)のもと、2016年9月20日付で出願された米国特許仮出願第62/397,236号、及び2016年5月27日付で出願された米国特許仮出願第62/342,311号の優先権の利益を主張する国際特許出願であり、いずれの出願もそれらの全体を参照することにより本明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、概して多量体融合分子の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載される発明以前には、非特異的免疫活性と関連する副作用を伴わずに治療利益を提供するため、疾患部位に対する様々なエフェクター分子を標的とするための新たな戦略を開発することが急務であった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも一部は、多重特異性タンパク質がエフェクターT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、それらの疾患細胞に対する活性を標的とすることにより、疾患特異的傷害性をもたらすという驚くべき発見に基づく。本発明では、疾患抗原を認識する1つの結合ドメインと、T細胞上のCD3を認識する第2の結合ドメインとを有する多重特異性タンパク質が提供される。例示的な疾患抗原は、新生物、感染症又は自己免疫疾患と関係する。具体的には、抗CD3 scAb/huIL-15N72D融合タンパク質及び抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合タンパク質を含むタンパク質複合体が本明細書に記載される。この複合体は、抗CD20 scAbドメインによりB細胞リンパ腫を認識し、IL-15活性によりNK細胞及びT細胞の応答を誘導し、抗CD3 scAbドメインによりT細胞応答を活性化し、Fc結合ドメインにより抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を賦活する。
【0005】
少なくとも2つの可溶性融合タンパク質を含む単離された可溶性融合タンパク質複合体が提供される。例えば、第1の融合タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドに共有結合された第1の結合ドメインを含む。第2の融合タンパク質は、疾患抗原を認識する第2の結合ドメインを含み、このドメインは、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)に共有結合される。第1又は第2の結合ドメインのうち1つは、抗CD3抗体を含み、別の結合ドメインは抗原特異的結合ドメインを含む。融合タンパク質の例示的な抗原特異的結合ドメインとして、抗CD20抗体が挙げられる。例えば、第2の融合タンパク質は、IL-15RαSu/Fc融合に共有結合された抗CD20抗体を含む。第1の融合タンパク質のIL-15ドメインは、第2の融合タンパク質の可溶性IL-15RαSuドメインに結合して、可溶性融合タンパク質複合体を形成する。代替的には、第1の融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインに融合された可溶性IL-15受容体アルファsushi結合ドメイン(IL-15RαSu)に共有結合された抗CD3抗体を含むのに対し、第2の融合タンパク質は、共有結合された疾患抗原、及び変異インターロイキン15(IL-15)ポリペプチドを認識する結合ドメインを含む。幾つかの場合、IL-15ポリペプチドは、N72D突然変異(IL-15N72D)を含むIL-15変異体を含む。
【0006】
幾つかの場合、抗CD3抗体は単鎖抗体を含み、ここで、ポリペプチドリンカー配列によって、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインが免疫グロブリン重鎖可変ドメインに共有結合される。同様に、幾つかの場合、疾患抗原を認識する結合ドメイン、例えば抗CD-20抗体は、ポリペプチドリンカー配列によって免疫グロブリン重鎖可変ドメインに共有結合された免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む単鎖抗体である。
【0007】
例示的な第1の融合タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。例示的な第2の融合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質をコードする例示的な核酸配列は、配列番号1に示される配列を含む。第2の融合タンパク質をコードする例示的な核酸配列は、配列番号3に示される配列を含む。或る1つの態様では、核酸配列は、融合タンパク質をコードする配列に制御可能に連結された、プロモーター、翻訳開始シグナル、及びリーダー配列をさらに含む。
【0008】
また、本明細書に記載される核酸配列を含むDNAベクターが提供される。例えば、核酸配列は複製、発現又はそれらの両方に対するベクター中に存在する。
【0009】
また、第2の可溶性融合タンパク質複合体に共有結合された第1の可溶性融合タンパク質複合体を含む、可溶性融合タンパク質複合体が提供される。例えば、本発明の可溶性融合タンパク質複合体は、多量体化、例えば二量体化、三量体化、或いは多量体化(例えば、四重複合体、五重複合体等)される。例えば、多量体はホモマルチマー又はヘテロマルチマーである。可溶性融合タンパク質複合体は、共有結合、例えばジスルフィド結合、化学架橋剤によって連結される。幾つかの場合、1つの可溶性融合タンパク質は、第1の可溶性融合タンパク質のFcドメインを第2の可溶性融合タンパク質のFcドメインにつなぐジスルフィド結合によって別の可溶性融合タンパク質に共有結合で連結される。
【0010】
Fcドメイン又はその機能性フラグメントとして、IgG Fcドメイン、ヒトIgG1 Fcドメイン、ヒトIgG2 Fcドメイン、ヒトIgG3 Fcドメイン、ヒトIgG4 Fcドメイン、IgA Fcドメイン、IgD Fcドメイン、IgE Fcドメイン及びIgM Fcドメインからなる群から選択されたFcドメイン;又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。任意に、Fcドメインは、変更された補体若しくはFc受容体の結合特性、又は変更された二量体化若しくはグルコシル化のプロファイルを有するFcドメインをもたらす、アミノ酸変化を含む。アミノ酸変化は、変更された補体若しくはFc受容体の結合語句性、又は変更された二量体化若しくはグルコシル化のプロファイルを有するFcドメインを生じるためのアミノ酸変化は、当該技術分野で知られている。例えば、IgG1 C2の234位及び235位(抗体コンセンサス配列に基づくナンバリング)におけるロイシン残基(すなわち、…P E L L G G…)のアラニン残基(すなわち、…P E A A G G…)による置換は、Fcガンマ受容体結合の喪失をもたらすのに対し、IgG1 C2の322位(抗体コンセンサス配列に基づくナンバリング)におけるリジン残基(すなわち、…K C K S L…)のアラニン残基(すなわち、…K C A S L…)による置換は、補体活性化の喪失をもたらす。幾つかの例では、かかる突然変異が併用される。
【0011】
幾つかの態様では、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15ポリペプチド(又はその機能性フラグメント)に共有結合される。同様に、第2の生物学的に活性なポリペプチドは、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15Rαポリペプチド(又はその機能性フラグメント)に共有結合される。任意に、IL-15Rαポリペプチド(又はその機能性フラグメント)は、ポリペプチドリンカー配列によってFcドメイン(又はその機能性フラグメント)に共有結合でされる。ポリペプチドリンカー配列はそれぞれ独立して選択され得る。任意に、ポリペプチドリンカー配列は同一である。代替的には、それらは異なる。
【0012】
任意に、本発明の可溶性融合タンパク質複合体が提供され、ここで、可溶性融合タンパク質の少なくとも1つは検出可能な標識を含む。検出可能な標識として、限定されないが、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素又はその触媒的に活性なフラグメント、放射性核種、ナノ粒子、常磁性金属イオン、又は蛍光性、リン光性、若しくは化学発光性の分子、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0013】
本発明は、本発明の可溶性融合タンパク質複合体を作製する方法を提供する。上記方法は、以下の工程を含む:a)第1の融合タンパク質をコードする適切な対照配列を有するDNAベクターを第1の宿主細胞に導入する工程、b)細胞又は培地中に第1の融合タンパク質を発現するのに十分な条件下で培地において第1の宿主細胞を培養する工程;c)宿主細胞又は培地から第1の融合タンパク質を精製する工程、d)第2の融合タンパク質をコードする適切な対照配列を含むDNAベクターを第2の宿主細胞を導入する工程、e)細胞又は培地中に第2の融合タンパク質を発現するのに十分な条件下で培地において第2の宿主細胞を培養する工程;及びf)宿主細胞又は培地から第2の融合タンパク質を精製する工程、及びg)第1の融合タンパク質のIL-15ドメインと第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインとの間の結合を可能とするのに十分な条件下で第1及び第2の融合タンパク質を混合して、可溶性融合タンパク質複合体の形成させる工程。
【0014】
幾つかの場合、上記方法は、上記発現ベクターから発現されたポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能とするのに十分な条件下で第1及び第2の融合タンパク質を混合することをさらに含む。
【0015】
代替的には、本発明の可溶性融合タンパク質複合体を作製する方法は、a)第1の融合タンパク質をコードする適切な対象配列を含むDNAベクター、及び第2の融合タンパク質をコードする適切な対照配列を含むDNAベクターを宿主細胞に導入する工程、b)細胞又は培地中に融合タンパク質を発現し、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインと第2の融合タンパク質のIL-15Rαドメインとの間の会合を可能として可溶性融合タンパク質複合体を形成させるのに十分な条件下で培地において宿主細胞を培養する工程、及びc)可溶性融合タンパク質複合体を宿主細胞又は培地から精製する工程、によって行われる。
【0016】
或る1つの態様では、上記方法は、発現ベクターから発現されるポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能とするのに十分な条件下で第1及び第2の融合タンパク質を混合することをさらに含む。
【0017】
また、可溶性融合タンパク質複合体を作製する方法であって、a)第1及び第2の融合タンパク質をコードする適切な対照配列を有するDNAベクターを宿主細胞に導入する工程、b)細胞又は培地中に融合タンパク質を発現し、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインと第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインとの間の会合を可能として可溶性融合タンパク質複合体を形成させる、及びポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能とするのに十分な条件下で培地において宿主細胞を培養する工程、c)宿主細胞又は培地から可溶性融合タンパク質複合体を精製する工程、を含む方法が提供される。
【0018】
任意に、上記方法は、発現ベクターから発現されたポリペプチド間のジスルフィド結合の形成を可能とするのに十分な条件下で、第1及び第2の融合タンパク質を混合することをさらに含む。
【0019】
被験体において新生物、感染症、又は自己免疫疾患を治療する方法は、可溶性抗CD3 scAb/IL-15N72D:疾患抗原特異的scAb/IL-15RαSu/Fc融合タンパク質複合体を含む有効量の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与して、新生物、感染症、又は自己免疫疾患を治療することにより行われ得る。例えば、被験体においてB細胞リンパ腫又はB細胞媒介自己免疫疾患を治療する方法は、可溶性抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合タンパク質複合体(2B8T3M)を含む有効量の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与して、リンパ腫又は自己免疫疾患を治療することにより行われる。例示的な抗CD3 scAb/huIL-15N72Dは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。例示的な抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fcは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記融合タンパク質複合体は、被験体において免疫応答を誘導する。
【0020】
本明細書に記載される治療に適した新生物として、膠芽腫、前立腺癌、血液癌、急性骨髄性白血病、B細胞新生物、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、悪性皮膚T細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、固形腫瘍、尿路上皮/膀胱癌、黒色腫、肺癌、腎の細胞癌腫、乳癌、胃及び食道癌、膵臓癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、及び卵巣癌、非小細胞肺癌、並びに頭頚部扁平上皮癌が挙げられる。本明細書に記載される方法を使用する治療に対する例示的な感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症である。また、本明細書に記載される方法は細菌感染症(例えばグラム陽性菌又はグラム陰性菌細菌)を治療するのに有用である(Oleksiewicz et al.2012.Arch Biochem Biophys.526:124-31)。本明細書に記載される方法を使用する治療に対する例示的な自己免疫疾患は、B細胞によって媒介される自己免疫疾患である。かかる自己免疫疾患として、関節リウマチ、多発性硬化症、特発性血小板減少症、IgM媒介多発性ニューロパチー、第VIII因子欠損症、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、炎症性筋炎、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ANCA関連脈管炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、自己免疫性貧血、赤血球系無形成症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、エバンス症候群、脈管炎(例えば、多発血管炎を伴う肉芽腫症、以前はウェゲナー肉芽腫症)、水疱性皮膚傷害(例えば天疱瘡、類天疱瘡)、I型糖尿病、抗NMDA受容体脳炎及びドヴィック病、グレーブス眼症https://en.wikipedia.org/wiki/Rituximab-cite_note-17、自己免疫性膵炎、眼球クローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、https://en.wikipedia.org/wiki/Rituximab-cite_note-19、及びIGg4関連疾患が挙げられる。
【0021】
上記融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、有効量で投与される。例えば、上記医薬組成物の有効量は、約1μg/kg~100μg/kg、例えば1μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、95μg/kg又は100μg/kgである。代替的には、ALT-803は、固定用量又は体表面積(すなわち1m当たり)に基づいて投与される。
【0022】
上記融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、少なくとも1ヶ月に1回、例えば、1ヶ月に2回、1週間に1回、1週間に2回、1日に1回、1日に2回、8時間毎、4時間毎、2時間毎、又は毎時間投与される。上記医薬組成物に対する好適な投与様式として、全身投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、吸入、及び腹腔内投与が挙げられる。
【0023】
好ましくは、上記融合タンパク質は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の血清レベルを増加させ、及び/又はCD4及びCD8のT細胞、並びにNK細胞を賦活して、被験体において疾患細胞又は腫瘍細胞を死滅させる。例えば、上記融合タンパク質は、上記新生物、感染症、又は自己免疫疾患と関連する細胞に対するCD4及びCD8のT細胞の応答を賦活する。
【0024】
本発明の可溶性融合タンパク質複合体の特定の態様では、IL-15ポリペプチドは、天然IL-15ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するIL-15変異体である。ヒトIL-15ポリペプチドは、本明細書において、huIL-15、hIL-15、huIL-15、hIL-15、IL-15野生型(wt)と称され、それらの変異体は本来のアミノ酸、成熟配列におけるその位置、及び変異体アミノ酸を使用して称される。例えば、huIL-15N72Dは、72位におけるNのDへの置換を含むヒトIL-15を指す。或る1つの態様では、IL-15変異体は、例えば天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の増加によって実証されるように、IL-15アゴニストとして機能する。代替的には、IL-15変異体は、例えば天然IL-15ポリペプチドと比較したIL-15RβγC受容体に対する結合活性の減少によって実証されるように、IL-15アンタゴニストとして機能する。
【0025】
標的細胞を死滅させる方法は、a)複数の細胞と、本発明の可溶性融合タンパク質複合体とを接触させる工程であって、複数の細胞が、抗CD3抗体によって認識されるCD3を持つ免疫細胞、例えば抗CD3単鎖抗体、及びIL-15ドメインによって認識されるIL-15R鎖、又はFcドメインによって認識されるFc受容体鎖を持つ免疫細胞、及び抗原特異的scAb等の結合ドメインによって認識される抗原を持つ標的疾患細胞をさらに含む工程、b)免疫細胞を結合し、活性化させるのに十分な、抗原発現疾患細胞とCD3、IL-15R又はFc受容体発現免疫細胞との間の特異的結合複合体(ブリッジ)を形成する工程、c)結合活性化免疫細胞によって標的疾患細胞を死滅させる工程、によって行われる。例えば、標的疾患細胞は、腫瘍細胞、自己免疫疾患関連細胞、例えば自己免疫B細胞、又は感染細胞、例えば、ウイルスに感染した細胞である。例えば、抗原特異的結合ドメインは抗CD-20抗体を含む。
【0026】
また、疾患細胞が疾患関連抗原を発現する患者において疾患を予防又は治療する方法であって、a)scAb等の疾患抗原特異的結合ドメインを有する本発明の可溶性融合タンパク質複合体を患者に投与する工程、b)免疫細胞を局在化させるのに十分な、抗原発現疾患細胞とCD3、IL-15R又はFc受容体発現免疫細胞との間の特異的結合複合体(ブリッジ)を形成する工程、及びc)患者において疾患を予防又は治療するのに十分な疾患細胞を損傷させる又は死滅させる工程、を含む方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、疾患細胞が疾患関連抗原を発現する患者において、疾患を予防又は治療する方法であって、a)CD3、IL-15R鎖、又はFc受容体鎖を持つ免疫細胞と、疾患抗原特異的結合ドメインを含む本発明の可溶性融合タンパク質複合体とを混合する工程、b)患者に免疫細胞融合タンパク質複合体混合物を投与する工程;c)免疫細胞を局在化させるのに十分な、抗原発現疾患細胞とCD3、IL-15R又はFc受容体発現免疫細胞との間に特異的結合複合体(ブリッジ)を形成する工程、d)患者において疾患を予防又は治療するのに十分な疾患細胞を損傷又は死滅させる工程、を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、有効量の本発明の可溶性融合タンパク質複合体を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物において免疫応答を賦活する方法を提供する。また、本発明は、有効量の本発明のいずれか1つの可溶性融合タンパク質複合体を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物において免疫応答を抑制する方法を提供する。
【0029】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参照文献:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);及びand Hale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)は、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する。本明細書で使用される以下の用語は、別段の指示がない限り、以下にそれらについて記載される意味を有する。
【0030】
「薬剤、剤」によって、ペプチド、核酸分子又は低分子化合物を意味する。例示的な治療薬は2B8T3Mである。
【0031】
「2B8T3M」によって、抗CD3 scAb/huIL-15N72D及び抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fcを含む複合体を意味する。
【0032】
「改善する」によって、疾患の発症又は進行を減少する、抑制する、減ずる、減らす、停止する、又は安定化することを意味する。
【0033】
「類縁体」によって、同一でないが、類似した機能的又は構造的な特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類縁体は、対応する天然ポリペプチドの生物学的活性を保持しながら、天然起源のポリペプチドと比較して類縁体の機能を増強する特定の生化学的修飾を有する。かかる生化学的修飾は、例えば、リガンド結合を変更することなく、類縁体のプロテアーゼ抵抗性、膜透過性、又は半減期を増加し得る。類縁体は、非天然アミノ酸を含み得る。
【0034】
「結合ドメイン」又は「抗原特異的結合ドメイン」の用語は、抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、Fv、T細胞受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、又は当該技術分野で知られている他の抗原特異的ポリペプチドを包含することが意図される。
【0035】
本発明は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、抗体又はかかる抗体のフラグメントを含む。また、ヒト化抗体等のキメラ抗体が本発明に含まれる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から該ヒト化抗体に導入された1以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、ヒト抗体の対応する領域に代えて齧歯類の相補性決定領域の一部を用いることにより、本明細書に記載される方法を使用して行われ得る。
【0036】
「抗体」又は「免疫グロブリン」の用語は、ポルクローナルとモノクローナルの抗体の両方を包含することが意図される。好ましい抗体は、抗原と反応性のモノクローナル抗体である。また、「抗体」の用語は、抗原と反応性の2以上の抗体の混合物(例えば、抗原と反応性の異なる種類のモノクローナル抗体のカクテル)を包含することが意図される。「抗体」の用語は、抗体全体、その生物学的に機能性のフラグメント、単鎖抗体、及び2以上の種に由来する部分を含むキメラ抗体等の遺伝子改変抗体、二重特異性抗体、抗体コンジュゲート、ヒト化及びヒト抗体を包含することがさらに意図される。同様に使用され得る生物学的に機能性の抗体フラグメントは、抗原に結合するのに十分な抗体に由来するそれらのペプチドフラグメントである。本明細書で使用される「抗体」は、抗体全体と並んで目的のエピトープ、抗原、又は抗原性フラグメントに結合可能な任意の抗体フラグメント(例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv)を含むことを意味する。
【0037】
「に結合する、に結合すること」によって、その分子に対して物理化学的な親和性を有することを意味する。
【0038】
「検出する」は、検出される分析物の存在、欠如又は量を同定することを指す。
【0039】
「疾患」によって、細胞、組織又は臓器の正常機能を損傷する又はそれを妨げる任意の状態又は障害を意味する。疾患の例として、新生物、自己免疫疾患及びウイルス感染症が挙げられる。
【0040】
製剤又は製剤の成分の「有効量」及び「治療的有効量」の用語によって、単独で又は組み合わされて、所望の効果を提供するのに十分な量の製剤又は成分を意味する。例えば、「有効量の」によって、単独で又は組み合わされて、治療されていない患者と比較して疾患症状の改善に必要とされる化合物の量を意味する。疾患の治療的処置に対して本発明の実施に使用される活性化合物(複数の場合がある)の有効量は、投与様式、被験体の年齢、体重、及び健康全般に応じて変化する。最終的には、主治医又は獣医が適正量及び投与計画を決定する。かかる量は、「有効量」と称される。
【0041】
「フラグメント」によって、ポリペプチド又は核酸分子の部分を意味する。この部分は、好ましくは参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を含む。例えば、フラグメントは、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、又は100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、又は1000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含み得る。しかしながら、本発明は、また、全長ポリペプチド及び核酸の所望の生物学的活性をそれぞれ示す限り、ポリペプチド及び核酸のフラグメントを含む。ほとんどあらゆる長さの核酸フラグメントが利用される。例えば、約10000、約5000、約3000、約2000、約1000、約500、約200、約100、約50(全ての中間の長さを含む)の塩基対の長さの全長を有する実例となるポリヌクレオチドセグメントが本発明の多くの実施に含まれる。同様に、ほとんどあらゆる長さのポリペプチドフラグメントが利用される。例えば、約10000、約5000、約3000、約2000、約1000、約500、約200、約100、約50(全ての中間の長さを含む)のアミノ酸長を有する実例となるポリペプチドセグメントが本発明の多くの実施に含まれる。
【0042】
「単離された」、「精製された」、又は「生物学的に純粋な」の用語は、様々な程度まで、その天然の状態で見られるように通常伴う成分を含まない材料を指す。「単離株」は、本来の供給源又は環境からの分離された程度を意味する。「精製する」は、単離よりも高度な分離の程度を意味する。
【0043】
「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、任意の不純物がタンパク質の生物学的特性に物質的に影響を与えず、他の不利な結果をもたらさないように、十分に他の材料を含まない。すなわち、組み換えDNA技術によって産生された場合にそれが細胞物質、ウイルス物質又は培養培地を、又は化学合成された場合に化学前駆物質若しくは他の化学物質を実質的に含まなければ、本発明の核酸又はペプチドが精製される。純度及び均一性は、典型的には、分析化学技術、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動法、又は高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。「精製された」の用語は、核酸又はタンパク質が電気泳動ゲル中に一本のバンドを生じることを意味し得る。修飾、例えばリン酸化又はグリコシル化に供することが可能なタンパク質に対して、異なる修飾は、別々に精製され得る、異なる単離されたタンパク質を生じ得る。
【0044】
同様に、「実質的に純粋な」によって、生来それに伴う成分から分離されたヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチド又はポリペプチドは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、さらには99重量%のヌクレオチド及びポリペプチドが、天然ではそれらと関連するタンパク質及び天然起源の有機分子を含まない場合、実質的に純粋である。
【0045】
「単離された核酸」によって、その核酸が由来する生体の天然ゲノム中にそれに隣接する遺伝子を含まない核酸を意味する。上記用語は、例えば、(a)天然起源のゲノムDNA分子の一部であるが、それが天然に生じる生体のゲノム中の分子のその一部に隣接する両方の核酸配列によって隣接しないDNA;(b)得られた分子が任意の天然起源ベクター又はゲノムDNAと同一ではないような方法で、ベクター、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる核酸;(c)cDNA、ゲノムのフラグメント、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生されたフラグメント、又は制限酵素断片等の別々の分子;及び(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組み換えヌクレオチド配列を包含する。本発明による単離された核酸分子は、合成により産生された分子と並んで、化学的に変更された及び/又は修飾された骨格を有する任意の核酸をさらに含む。例えば、単離された核酸は、精製されたcDNA又はRNAのポリヌクレオチドである。単離された核酸分子もまた、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含む。
【0046】
「単離されたポリペプチド」によって、天然にそれに伴う成分から分離された本発明のポリペプチドを意味する。典型的には、上記ポリペプチドは、タンパク質及びそれと天然に関連する天然起源の有機分子を含まない場合に、少なくとも60重量%で単離される。好ましくは、上記調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が本発明のポリペプチドである。本発明の単離されたポリペプチドは、例えば、天然起源からの抽出により、かかるポリペプチドをコードする組み換え核酸の発現により、又は上記タンパク質を化学合成することにより得られてもよい。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定され得る。
【0047】
「マーカー」によって、発現レベルにおける変更、又は疾患若しくは障害と関連する活性を有する任意のタンパク質又はポリヌクレオチドを意味する。
【0048】
「新生物」によって、過剰な増殖又はアポトーシスの減少を特徴とする疾患又は障害を意味する。本発明が使用され得る実例としての新生物として、限定されないが、白血病(例えば急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、及び肉腫及び癌腫等の固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌(nile duct carcinoma)、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、多形膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫(oligodenroglioma)、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)が挙げられる。特定の実施形態では、新生物は、多発性骨髄腫、β細胞リンパ腫、尿路上皮/膀胱癌又は黒色腫である。本明細書で使用されるように、「薬剤を得ること」における「得ること」は、その薬剤を合成すること、購入すること、そうでなければ取得することを含む。
【0049】
「減少する」によって、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%又は100%の負の変更を意味する。
【0050】
「参照」によって、標準又は対照の条件を意味される。
【0051】
「参照配列」は、配列比較に対する基準として使用される定義された配列である。参照配列は、指定される配列のサブセット又はその全体であってもよく、例えば、全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列であってもよい。ポリペプチドについて、参照ポリペプチド配列の長さは、一般的には、少なくとも約16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約25個のアミノ酸、より一層好ましくは35個のアミノ酸約、約50個のアミノ酸、又は約100個のアミノ酸。核酸について、参照核酸配列の長さは一般的には、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75個のヌクレオチド、より一層好ましくは100個のヌクレオチド、若しくは約300のヌクレオチド、又はそのあたりの若しくはそれらの間の任意の整数である。
【0052】
「特異的に結合する」によって、本発明のポリペプチドを認識して結合するが、例えば天然に本発明のポリペプチドを含む試料中の他の分子、実質的に認識し結合しない化合物又は抗体を意味する。
【0053】
本発明の方法に有用な核酸分子は、本発明のポリペプチド又はそのフラグメントをコードする任意の核酸分子を含む。かかる核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも一本の鎖とハイブリダイズすることができる。本発明の方法に有用な核酸分子は、本発明のポリペプチド又はそのフラグメントをコードする任意の核酸分子を含む。かかる核酸分子は内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも一本鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズ」によって、様々なストリンジェンシーの条件下で、相補性ポリヌクレオチド配列間(例えば、本明細書に記載される遺伝子)二本鎖分子を形成するペア、又はその部分を意味する(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい)。
【0054】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常は、約750mM未満のNaCl及び75mMのクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaCl及び50mMのクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaCl及び25mMのクエン酸三ナトリウムとなる。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの不在下で得ることができ、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42度の温度を含む。ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、及び担体DNAを包含又は除外等の変動する追加のパラメーターが、当業者によく知られている。様々なレベルのストリンジェンシーは、これらの様々な条件を必要に応じて併せることにより遂行される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム、及び1%SDS中、30℃で起こる。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、及び100.mu.g/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で起こる。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、及び200μg/mlのssDNA中、42℃で起こる。これらの条件に対する有用な変化は、当業者に容易に明らかとなる。
【0055】
ほとんどの適用について、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もまた、ストリンジェンシーが異なる。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度及び温度によって規定され得る。上のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度の減少又は温度の上昇によって増加され得る。例えば、洗浄工程に対してストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM未満のNaCl及び3mMのクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaCl及び1.5mMのクエン酸三ナトリウムとなる。洗浄工程に対するストリンジェントな温度条件として、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、より一層好ましくは少なくとも約68℃の温度が挙げられる。好ましい実施形態では、洗浄工程は、30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム、及び0.1%SDSにおいて、25℃で起こる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム、及び0.1%SDSにおいて、42℃で起こる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム、及び0.1%SDSにおいて、68℃で起こる。これらの条件に対する追加の変化は、当業者に容易に明らかとなる。ハイブリダイゼーション技術は当業者によく知られており、例えば、Benton and Davis(Science 196:180,1977);Grunstein and Hogness(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 72:3961,1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York,2001);Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載される。
【0056】
「実質的に同一」によって、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つ)、又は核酸配列(例えば、本明細書に記載される核酸酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチド又は核酸分子を意味する。好ましくは、かかる配列は、比較に使用される配列に対するアミノ酸レベル又は核酸レベルで、少なくとも60%、より好ましくは80%又は85%、より好ましくは90%、95%、又はさらには99%同一である。
【0057】
配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequencher、Gene Codes Corporation、775 Technology Drive、Ann Arbor、MI;Vector NTI、Life Technologies、3175 Staley Rd.Grand Island、NY)を使用して測定される。かかるソフトウェアは、様々な置換、欠失、及び/又は他の修飾に対するホモロジーの程度を割り当てることによって同一又は類似の配列を一致させる。保存的置換は、典型的には以下の群内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を特定するための例示的なアプローチにおいて、e-3~e-100の確立スコアが密接に関連する配列を示す、BLASTプログラムが使用され得る。
【0058】
「被験体」によって、限定されないが、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコ等のヒト又は非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物を意味する。被験体は、好ましくは、かかる治療を必要とする哺乳動物、例えば、B細胞リンパ腫と診断された、又はそれに罹患しやすい被験体である。哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマと並んで、家畜又は食用(food consumption)に育てられる動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、ヤギである。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0059】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内の全ての値に対する簡略表記であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0060】
本明細書に使用される「治療する」及び「治療」の用語は、症状の重症度及び/又は頻度の減少、症状及び/又はそれらの根本的な原因の排除、及び/又は損傷の改善若しくは治療を果たすような、有害な状態、障害、又は疾患に悩まされる臨床的に症候性の固体に対する薬剤又は製剤の投与を指す。排除されないが、障害又は状態の治療は、それと関連する障害、状態、又は症状が完全に排除されることを必要としないことが理解される。
【0061】
「予防する」及び「予防」の用語は、特定の有害な状態、障害、又は疾患に罹患しやすい又はそれらになりやすい臨床的に無症候性の固体に対する薬剤又は組成物の投与を指し、したがって、症状の発症及び/又はそれらの根本的な原因の予防に関する。
【0062】
具体的に述べられていないか、又は文脈から明らかでない限り、「又は」の用語は包括的と理解される。具体的に述べられていない、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」の用語は単数又は複数と理解される。
【0063】
具体的に述べられていないか、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当該技術分野における通常の許容誤差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内と理解される。約は、述べられる値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と理解され得る。文脈から明確でない限り、本明細書に提供される全ての数値は、約の用語で修飾される。
【0064】
本明細書における変数の任意の定義における化学基の一覧の詳説は、任意の単一の基又は列挙される基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書における変数又は態様に対する実施形態の詳説は、任意の単一の実施形態、又は任意の他の実施形態若しくはその部分との組み合わせとしてその実施形態を含む。
【0065】
本明細書に提供される任意の組成物又は方法は、本明細書に提供される他の組成物及び方法のいずれか1以上と併用され得る。
【0066】
「含む」、「含有する、含む」又は「を特徴とする」と同義である「含む」の移行用語は、包含的又は無制限であり、追加の列挙されなかった要素又は方法の工程を排除しない。対照的に、移行句「からなる」は、特許請求の範囲で指定されていないいかなる要素、工程、又は原料も排除する。「から本質的になる」の移行句は、特許請求の範囲を、本発明の特許請求の範囲の指定される材料又は工程、「及び基本的な新規の特徴(複数の場合がある)に物質的に影響を与えないもの」に限定する。
【0067】
本発明の他の特徴及び利点は、その好ましい実施形態の以下の記載、及び特許請求の範囲から明らかとなる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似する、又はそれと等価な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用され得るが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で引用される全ての公開された外国の特許及び特許出願は、参照することにより本明細書の一部を成す。
【0068】
本明細書で引用されるアクセッション番号によって示されるGenbank及びNCBIの寄託は、参照することにより本明細書の一部を成す。本明細書で引用される全ての他の公開された参照文献、文書、原稿、及び科学文献は参照することにより本明細書の一部をなす。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は、解説に過ぎず、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、T3分子(T3M)、多鎖融合ポリペプチド及び疾患細胞に対するその免疫媒介効果を図示する概要図である。
図2図2は、抗CD3 scAb/huIL-15N72D及び抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1のFc融合タンパク質を含む、2B8T3M複合体、並びにCD20抗原を発現する疾患細胞に対するその免疫媒介効果を図示する概要図である。
図3図3は、ジスルフィド結合の還元後のT3M複合体の硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)分析を示す写真である。右レーン:2B8T3M(3μg);左レーン:マーカー。
図4図4Aは、Fc受容体を持つ細胞株に対する2B8T3Mの結合活性を説明する線グラフである。図4Bは、IL-15の受容体を持つ細胞株に対する2B8T3Mの結合活性を示す線グラフである。
図5図5Aは、CD20を持つヒトリンパ球に対する2B8T3Mの結合活性を示す線グラフである。図5Bは、CD3を持つヒトリンパ球に対する2B8T3Mの結合活性を示す線グラフである。図5Cは、IL-15受容体を持つヒトリンパ球に対する2B8T3Mの結合活性を示す線グラフである。
図6図6は、2B8T3M、2B8T2M及びALT-803によって媒介されるIL-15依存性32Dβ細胞の増殖を説明する線グラフである。
図7図7は、2B8T2M又は2B8T3Mによって誘導されたDaudi-B細胞リンパ腫に対するヒト免疫細胞の傷害性を説明する棒グラフである。
図8図8は、2B8T2M又は2B8T3Mによって誘導されたヒト免疫細胞からのインターフェロン-γ(IFN-γ)放出を示す棒グラフである。
図9図9A図9Cは、2B8T2M融合タンパク質の構造及び特性評価を示す。図9Aは、2B8の単鎖成分の構成を含む2B8T2M複合体の概要図である。図9Bは、還元条件下における精製された2B8T2M融合タンパク質のSDS-PAGE分析である。レーン:(1)MWマーカー、(2)2B8T2M。図9Cは、2B8T2Mタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
図10図10A図10Cは、2B8T2MのB細胞結合を示す。フローサイトメトリーによる2B8T2Mの標的特異的結合活性の分析。10分間、0.1mLの最終容量で1mg/mLにて、リツキシマブ、2B8T2M又はアイソタイプ対照としてのヒトIgGにヒトPBMC(5×105/試験)を添加した。2μg/試料のFITC複合化リツキシマブ(図10A)又はFITC複合化2B8T2M(図10B)、及び5μg/試料のPE複合化HLA-DRで30分間、反応を染色した。図10Cは、ヒト組織球性リンパ腫U-937細胞をFITC複合化したリツキシマブ、2B8T2M又は2B8T2M-LA突然変異体で30分間染色した後、フローサイトメトリーによってFc受容体の結合活性について分析したグラフである。
図11図11A図11Bは、2B8T2MがCDC及びアポトーシスを誘導することを示す。図11Aは、Daudi細胞(3×10/試験)を様々な濃度の2B8T2M、2B8T2M-LA突然変異体、2B8T2M-D8N突然変異体、及び陽性対照としてのリツキシマブと37℃で2時間、補体(正常ヒト血清)の存在下でインキュベートした。ヨウ化プロピジウムを添加し、フローサイトメトリーによって分析した。死細胞のパーセンテージは、ヨウ化プロピジウム陽性細胞のパーセンテージを示す。(n=3)。図11BはDaudi細胞を2B8T2M、2B8T2M-LA、2B8T2M-D8N、又はリツキシマブと37℃で3日間インキュベートしたグラフである。Daudi細胞は、Annexin Vで染色され、細胞死のパーセンテージをフローサイトメトリーによって特定した。データは平均±SEを表す。
図12図12A図12Dは、リツキシマブ及び2B8T2MのADCC活性を示す。Daudi細胞をCellTrace Violetで標識化し、新鮮なヒトPBMC(図12A、n=5)又は精製されたNK細胞(図12B、n=2名のドナー)をエフェクター細胞として使用した。指定の濃度のリツキシマブ又は2B8T2Mと共に、指定のエフェクター:標的比でエフェクター細胞をViolet標識化標的細胞と共に蒔いた。標的細胞の生存率を、フローサイトメトリーを使用するヨウ化プロピジウム陽性、Violet標識化Daudi細胞の分析によってPBMCについて2日目(図12A)、又はNK細胞について2日目(図12B)に評価した。死Daudi細胞のパーセンテージは、ヨウ化プロピジウム陽性細胞を示す。*は、2B8T2Mと比較したp<0.01(10nM)及びp<0.05(1nM)を示す。値は平均±SEを表す。図12C図12Dは、ヒトPBMC(5×106)を2B8T2Mと共に2mLのRPMI-10において2日間インキュベートしたグラフである。2B8T2M活性化PBMCを抗NKp46(図12C、NK細胞)又は抗CD8(図12D及びCD8T細胞)で染色した後、細胞内グランザイムB及びパーフォリンの染色を行った。活性化CD8T細胞及びNK細胞によるグランザイムB及びパーフォリンの発現レベルをフローサイトメトリーによって特定した。
図13図13A図13Fは、対照としてのリツキシマブによる、2B8T2MのPET画像化データの定量的分析を示す。図13A及び図13Dは、64Cu-NOTA-2B8T2M及び64Cu-NOTAリツキシマブの注射後の種々の時間点(0.5時間、6時間、30時間及び70時間)における連続二次元投影PET画像を示す。図13B及び図13Eは、PET画像化データに基づいて、主な臓器に対する組織1グラム当たりのパーセント注入量(%ID/g)を計算する関心領域の分析を種々の時間点に行ったグラフである。図13C及び図13Fは、マウスを安楽死させ、主な臓器/組織を収集し、計量したグラフである。2B8T2M及びリツキシマブの組織生体内分布を、ガンマカウンターを使用して特定した。データは、1群当たり4匹のマウスの代表である(平均±SD)。
図14図14A図14Dは、2B8T2Mによって誘導されたCD8T細胞及びNK細胞の拡大を示す。CellTrace Violet標識化された富化同系T細胞(1×10/マウス)をC57BL/6雌性レシピエント(n=5匹又は6匹/群)に養子移植した。移植から2日後、2B8T2M(5mg/kg)、2B8T2M-LA(5mg/kg)、2B8T2M-D8N(5mg/kg)、IL-15(0.056mg/kg)及びPBSを静脈内注射した。図14A図14B、5日目に採取した脾臓細胞は、フローサイトメトリーによって分析するため、T細胞に対して抗CD4、抗CD8(図14A)NK細胞に対して抗NK1.1(図14B)で染色される。図14Cは、細胞分裂がCellTrace Violetの蛍光強度に基づいて示される(最も明るい細胞は増殖していないことを示す)グラフである。図14Dは、増殖細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって分析したグラフである。p>0.05:IL-15対2B8T2M-D8N及び2B8T2M対2B8T2M-LA;他の群間でp<0.01。データは平均±SDを表す。
図15図15A図15Eは、2B8T2Mで治療した癌を持つマウスの生存の延長、及び2B8T2M抗腫瘍活性の効能を示す。図15Aは、1×10個のDaudi細胞/マウスの静脈内注射後、Daudi Bリンパ腫を持つマウスを3つの治療群(n=6)に無作為化し、接種から15日後及び18日後に10mg/kgのリツキシマブ(▲)、5mg/kgの2B8T2M(●)、及びPBS(■)ビヒクル対照で治療したグラフである。PBS対リツキシマブ:p=0.001;リツキシマブ対2B8T2M:p=0.006。図15B図15Dは、Daudi Bリンパ腫を持つマウスを治療群に無作為化し、図15Aのように、10mg/kgのリツキシマブ(n=7)、0.2mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、12.8mg/kg(n=6/投薬レベル)の2B8T2M、及びPBS(n=7)ビヒクル対照で治療した。マウスを安楽死させ、第2の治療から4日後に骨髄及び脾臓の細胞を採取した。図15Bは、骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーを使用してHLA-DR染色によって特定したグラフである。図15Cは、脾臓中のNK細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーを使用してNKp46染色によって特定したグラフである。図15Dは、骨髄中のNK細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーを使用してNKp46染色によって特定したグラフである。図15Eは、Daudi Bリンパ腫を持つSCIDベージュマウスを3つの治療群に無作為化し、接種から13日後及び16日後に10mg/kgのリツキシマブ(n=8)、5mg/kg(n=7)の2B8T2M、及びPBS(n=8)ビヒクル対照で治療したグラフである。マウスを安楽死させ、第2の治療から4日後に骨髄細胞を採取した。骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーを使用してHLA-DR染色によって特定した。データは平均±SDを表す。図15B図15E、*はPBSと比較したp<0.01を示す。†はリツキシマブと比較したp<0.01を示す。
図16図16A図16Bは、2B8T2Mの種々の変異タンパク質の抗腫瘍機能の比較を示す。図16Aは、1×107個のDaudi細胞/マウスの静脈内注射後、Daudi Bリンパ腫を持つSCIDマウスを4つの治療群(n=8)に無作為化し、図15のように、5mg/kgの2B8T2M、2B8T2M-LA、2B8T2M-D8N及びビヒクル対照としてのPBSで治療したグラフである。マウスを安楽死させ、第2の治療から4日後に骨髄細胞を採取した。図15のように、骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージを特定した。図16Bは、グラフである。Daudi Bリンパ腫を持つSCIDマウスを2つの治療群(n=10)に無作為化し、接種から18日後及び21日後に5mg/kgの2B8T2M及びc264scTCR-IL-15N72D/C264scTCR IL-15RαSuFcで治療したグラフである。全てのマウスを安楽死させ、骨髄細胞を第2の治療から4日後に採取した。図15のように、骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージを特定した。*はPBSと比較したp<0.01を示し、§は2B8T2Mと比較したp<0.05を示す。データは平均±SDを表す。
図17図17A図17Bは、カニクイザルにおける2B8T2MによるB細胞枯渇を示す。研究は、各群4匹の雄性動物を含む3群のカニクイザルからなった。動物を静脈内注射の5mg/kgの2B8T2M、10mg/kgのリツキシマブ及びPBSビヒクル対照で治療した。同じ治療を3日後に繰り返した。B細胞分析(図17A)用の血液試料を、治療前、第1の治療から1日(24時間)後、第1の治療から3日後及び第2の治療前、第1の治療4日後(第2の治療から24時間後)、5日後及び7日後に得た。全てのカニクイザルを第1の治療から7日後に安楽死させ、脾臓及び腸間膜リンパ節(LN)細胞をフローサイトメトリーによるB細胞分析(図17B)のため採取した。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、少なくとも一部は、多重特異性タンパク質複合体がエフェクターT細胞を活性化し、疾患細胞に対するそれらの活性を標的とすることによって疾患特異的傷害性をもたらすという驚くべき発見に基づく。本明細書には、疾患抗原(例えば、CD20)を認識する1つの結合ドメイン、及びT細胞上のCD3を認識する第2の結合ドメインを有する多重特異的タンパク質複合体が提供される。かかるタンパク質複合体は、被験体における新生物、感染症、又は自己免疫疾患を治療する方法において実用性を有する(図1)。具体的には、以下に詳述されるように、可溶性抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc複合体(「抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M」又は「2B8T3M」)がCD8及びCD4T細胞を賦活して腫瘍標的細胞を死滅させた(図2)。また、2B8T3Mは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、CD8及びCD4T細胞からのインターフェロン-γ(IFN-γ)の放出を賦活した。したがって、本明細書において、2B8T3Mを特色とする組成物、並びに新生物(例えばB細胞リンパ腫及び慢性リンパ球性白血病)に対する免疫応答の増強ため及び自己免疫疾患(例えば免疫性及び血栓性の血小板減少性紫斑病、及び関節リウマチ)を治療するため、B細胞を枯渇させるためにかかる組成物を使用する方法が提供される。
【0071】
本明細書に記載されるように、宿主免疫の認識及び応答に対して疾患細胞を標的化する能力を有するタンパク質の使用は、癌、感染症及び自己免疫疾患を治療するための有効な戦略である。米国特許第8,507,222号(参照することにより本明細書の一部を成す)に記載されるように、IL-15及びIL-15受容体αのドメインを含むタンパク質スキャフォルドは、疾患細胞上及び免疫細胞の受容体上の抗原を認識することができる多重特異性タンパク質を生成するために使用されている。米国特許第8,507,222号の実施例15を参照されたい。疾患関連抗原及びCD3を認識する結合ドメインに連結されたIL-15及びIL-15受容体αを含む、可溶性多重特異性タンパク質複合体の生成が本明細書に記載される。例えば、抗原特異的結合ドメインは、B細胞性リンパ腫の上のヒトCD20を認識する単鎖抗体(scAb)であり、CD3認識ドメインはヒトCD3に特異的なscAbである。
【0072】
幾つか場合には、抗CD20 scAbは、キメラモノクローナル抗CD20抗体であるリツキシマブの可変鎖に由来する。例えば、抗CD20 scAb配列は、可動性リンカー配列によって連結されたリツキシマブ抗体の重鎖及び軽鎖のVドメインのコーディング領域を含む。代替的には、当該技術分野で知られている他の抗CD20 Abに由来する結合ドメインを使用してもよい。
【0073】
幾つかの場合には、抗CD3 scAbは、ネズミ科モノクローナル抗CD3抗体であるOKT3の可変鎖に由来する。例えば、抗ヒトCD3 scAb配列は、可動性リンカー配列によって連結されたOKT3抗体の重鎖及び軽鎖のVドメインのコーディング領域を含む。代替的には、当該技術分野で知られている他の抗CD3 Abに由来する結合ドメインを使用し得る。
【0074】
疾患抗原及びCD3を認識する結合ドメインは、結合活性が維持される限り、追加のリンカー配列を伴って、又はそれを伴わずに、IL-15又はIL-15受容体αタンパク質のN末端又はC末端のいずれかに連結される。抗CD3 scAbドメインは、ヒトIL-15N72Dスーパーアゴニストタンパク質(huIL-15N72D)のN末端に連結されることが好ましい。代替的には、抗CD3 scAbドメインはヒトIL-15N72Dタンパク質のC末端に連結される。抗原特異的結合ドメインは、ヒトIL-15受容体αsushiドメイン(huIL-15RαSu)のN末端に連結されることが好ましい。幾つか場合に、本発明の多重特異性タンパク質複合体は、免疫細胞上のCD16受容体のタンパク質二量体化及び認識に対するIgG Fcドメインをさらに含む。かかるドメインは、標的細胞に対して抗体依存細胞性細胞毒素(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の賦活を媒介する。幾つかの例では、増強された又は減少されたCD16結合活性を有するFcドメインを使用することが有用である。或る1つの態様では、Fcドメインは、ADCC活性を減少させるが、ジスルフィド結合二量体を形成する能力を保持するアミノ酸置換L234A及びL235A(LALA)(Fcコンセンサス配列に基づく数)を含む。
【0075】
インターロイキン-15
インターロイキン-15(IL-15)は、エフェクターNK細胞及びCD8メモリーT細胞の発生、増殖及び活性化に重要なサイトカインである。IL-15は、IL-15受容体α(IL-15Rα)に結合し、エフェクター細胞上のIL-2/IL-15受容体β-コモンγ鎖(IL-15Rβγ)複合体に対してトランスで提示される。IL-15及びIL-2は、IL-15Rβγへの結合、並びにSTAT3及びSTAT5の経路によるシグナルを共有する。しかしながら、IL-2と異なり、IL-15はCD4CD25FOXP3調節性T細胞(Treg)細胞の維持を支持せず、活性化CD8T細胞の細胞死を誘導せず、これは、多発性骨髄腫に対するIL-2の治療活性をし得る作用である。さらに、IL-15はエフェクターCD8T細胞に対して抗アポトーシスシグナルを提供することが知られている唯一のサイトカインである。IL-15は、単独又はIL-15Rαとの複合体として投与され、実験動物モデルにおいて確立された固形腫瘍に対して強力な抗腫瘍活性を示し、したがって、癌を治療し得る最も有望な免疫療法薬の1つとして同定された。
【0076】
IL-15に基づく癌治療の臨床開発を促進するため、IL-15と比較して増加した生物学的活性を有するIL-15突然変異体(IL-15N72D)を同定した(Zhu et al.,J Immunol,183:3598-3607,2009)。このIL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)の薬物動態及び生物学的活性を、スーパーアゴニスト複合体が、in vivoで天然サイトカイン少なくとも25倍の活性を有するように、IL-15N72D:IL-15Rα/Fc融合複合体(ALT-803)を作製することによってさらに改善した(Han et al.,Cytokine,56:804-810,2011)。
【0077】
抗原特異的結合ドメイン
抗原特異的結合ドメインは、疾患細胞上の標的に特異的に結合するポリペプチドからなる。代替的には、これらのドメインは、腫瘍成長を支持する間質細胞上の標的等の病気の状態を支持する他の細胞上の標的、又は疾患媒介免疫抑制を支持する免疫細胞上の標的に結合し得る。抗原特異的結合ドメインとして、当該技術分野で知られている、抗体、単鎖抗体、Fab、Fv、T細胞受容体結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、ミニボディ、ナノボディ、ペプチボディ、又は様々な他の抗体模倣物(アフィマー(affimer)アフィチン(affitin)、アルファボディ(alphabody)、アトリマー(atrimer)、CTLA4に基づく分子、アドネクチン、アンチカリン、クニッツドメインに基づくタンパク質、アビマー(avimer)、ノッティン(knottin)、フィノマー(fynomer)、ダーピン(darpin)、アフィボディ、アフィリン、モノボディ及びアルマジロ反復タンパク質に基づくタンパク質(Weidle,UH,et al.2013.Cancer Genomics&Proteomics 10:155-168))が挙げられる。
【0078】
特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインに対する抗原は、細胞表面受容体又はリガンドを含む。さらなる実施形態では、抗原は、CD抗原、サイトカイン若しくはケモカインレセプター若しくはリガンド、増殖因子受容体若しくはリガンド、組織因子、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、陽性/陰性共同刺激受容体若しくはリガンド、細胞死受容体若しくはリガンド、腫瘍関連抗原、又は抗原をコードするウイルスを含む。
【0079】
抗原特異的結合ドメインは、腫瘍細胞上の抗原に結合することができることが好ましい。腫瘍特異的結合ドメインは、癌を有する患者の治療に対して承認された抗体に由来してもよく、リツキシマブ、オファツムマブ及びオビヌツズマブ(抗CD20 Ab);トラスツズマブ及びペルツズマブ(抗HER2 Ab);セツキシマブ及びパニツムマブ(抗EGFR Ab);並びにアレムツズマブ(抗CD52 Ab)が挙げられる。同様に、CD20(90Y標識化イブリツモマブチウクセタン、131I標識化トシツモマブ)、HER2(ado-ラスツズマブ エムタンシン)、CD30(ブレンツキシマブベドチン)及びCD33(ジェムツツマブ オゾガミシン)に特異的な承認された抗体エフェクター分子コンジュゲートに由来する結合ドメインを使用してもよい(Sliwkowski MX,Mellman I.2013 Science 341:1192)。
【0080】
さらに、本発明の好ましい結合ドメインは、当該技術分野で知られている様々な他の腫瘍特異抗体ドメインを含んでいてもよい。癌の治療に対する抗体及びそれらの各標的として、限定されないが、ニボルマブ(抗PD-1 Ab)、TA99(抗gp75)、3F8(抗GD2)、8H9(抗-B7-H3)、アバゴボマブ(abagovomab)(CA125治療(模倣))、アデカツムマブ(adecatumumab)(抗EpCAM)、アフツズマブ(afutuzumab)(抗CD20)、アラシズマブペゴール(alacizumab pegol)(抗VEGFR2)、アルツモマブペンテタート(altumomab pentetate)(抗CEA)、アマツキシマブ(抗メソセリン)、AME-133(抗CD20)、アナツモマブマフェナトックス(anatumomab mafenatox)(抗-TAG-72)、アポリツマブ(apolizumab)(抗-HLA-DR)、アルシツモマブ(arcitumomab)(抗CEA)、バビツキシマブ(抗フォスファチジルセリン)、ベクツモマブ(bectumomab)(抗CD22)、ベリムマブ(抗BAFF)、ベシレソマブ(CEA抗関連抗原)、ベバシズマブ(抗-VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)(抗CD44 v6)、ブリナツモマブ(blinatumomab)(抗CD19)、BMS-663513(抗CD137)、ブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin)(抗CD30(TNFRSF8))、カンツズマブメルタンシン(cantuzumab mertansine)(抗ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(cantuzumab ravtansine)(抗MUC1)、カプロマブペンチタイド(capromab pendetide)(抗前立腺癌細胞)、カルルマブ(carlumab)(抗MCP-1)、カツマキソマブ(catumaxomab)(抗EpCAM、CD3)、cBR96-ドキソルビシン免疫複合体(抗-ルイス-Y抗原)、CC49(抗-TAG-72)、セデリツマブ(cedelizumab)(抗CD4)、Ch.14.18(抗GD2)、ch-TNT(抗DNA関連抗原)、シタツズマブボダトックス(citatuzumab bogatox)(抗EpCAM)、シクツムマブ(cixutumumab)(抗-IGF-1受容体)、クリバツズマブテトラキセタン(clivatuzumab tetraxetan)(抗MUC1)、コナツムマブ(conatumumab)(抗-TRAIL-R2)、CP-870893(抗CD40)、ダセツズマブ(抗CD40)、ダクリズマブ(daclizumab)(抗CD25)、ダロツズマブ(dalotuzumab)(インスリン拮抗薬状の増殖因子I受容体)、ダラツムマブ(daratumumab)(抗CD38(環状ADPリボース加水分解酵素))、デムシズマブ(demcizumab)(抗DLL4)、デツモマブ(detumomab)(抗Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(drozitumab)(抗DR5)、デュリゴツマブ(duligotumab)(抗HER3)、デュシジツマブ(dusigitumab)(抗ILGF2)、エクロメキシマブ(ecromeximab)(抗GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(edrecolomab)(抗EpCAM)、エロツズマブ(elotuzumab)(抗SLAMF7)、エルシリモマブ(elsilimomab)(抗-IL-6)、エナバツズマブ(enavatuzumab)(抗TWEAK受容体)、エノチクマブ(enoticumab)(抗DLL4)、エンシツキシマブ(ensituximab)(抗5AC)、エピツモシツマブキセタン(epitumomab cituxetan)(抗エピシアリン)、エプラツズマブ(epratuzumab)(抗CD22)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)(抗HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(etaracizumab)(抗インテグリンαvβ3)、ファラリモマブ(faralimomab)(抗インターフェロン受容体)、ファルレツズマブ(farletuzumab)(抗葉酸受容体1)、FBTA05(抗CD20)、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)(抗HGF)、フィギツムマブ(figitumumab)(抗IGF-1受容体)、フランボツマブ(flanvotumab)(抗TYRP1(糖タンパク質75))、フレソリムマブ(fresolimumab)(抗TGFβ)、フツキシマブ(futuximab)(抗EGFR)、ガリキシマブ(galiximab)(抗CD80)、ガニツマブ(ganitumab)(抗-IGF-I)、ジェムツツマブオゾガミシン(抗CD33)、ギレンツキシマブ(girentuximab)(抗炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレンバツムマブベドチン(glembatumumab vedotin)(抗GPNMB)、グセルクマブ(guselkumab)(抗IL13)、イバリズマブ(ibalizumab)(抗CD4)、イブリツモマブチウクセタン(ibritumomab tiuxetan)(抗CD20)、イクルクマブ(icrucumab)(抗-VEGFR-1)、イゴボマブ(igovomab)(CA125治療)、IMAB362(抗CLDN18.2)、IMC-CS4(抗CSF1R)、IMC-TR1(TGFβRII)、イムガツズマブ(imgatuzumab)(抗EGFR)、インクラクマブ(inclacumab)(抗セレクチンP)、インダツキシマブラブタンシン(indatuximab ravtansine)(抗SDC1)、イノツズマブオゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin)(抗CD22)、インテツムマブ(intetumumab)(抗CD51)、イピリムマブ(ipilimumab)(抗CD152)、イラツムマブ(iratumumab)(抗CD30(TNFRSF8))、KM3065(抗CD20)、KW-0761(抗CD194)、LY2875358(抗MET)ラベツズマブ(labetuzumab)(抗CEA)、ランブロリズマブ(lambrolizumab)(抗PDCD1)、レクサツムマブ(lexatumumab)(抗-TRAIL-R2)、リンツズマブ(lintuzumab)(抗CD33)、リリルマブ(lirilumab)(抗KIR2D)、ロルボツズマブメルタンシン(lorvotuzumab mertansine)(抗CD56)、ルカツムマブ(lucatumumab)(抗CD40)、ルミリキシマブlumiliximab(抗CD23(IgE受容体))、マパツムマブ(mapatumumab)(抗TRAIL-R1)、マルジェツキシマブ(margetuximab(抗ch4D5)、マツズマブ(matuzumab)(抗EGFR)、マブリリムマブ(mavrilimumab)(抗GMCSF受容体α鎖)、ミラツズマブ(milatuzumab)(抗CD74)、ミンレツモマブ(minretumomab)(抗-TAG-72)、ミツモマブ(mitumomab)(抗GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(mogamulizumab)(抗CCR4)モキセツモマブパスドトクス(moxetumomab pasudotox)(抗CD22)、ナコロマブタフェナトクス(nacolomab tafenatox)(抗C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(naptumomab estafenatox)(抗5T4)、ナルナツマブ(narnatumab)(抗RON)、ネシツムマブ(necitumumab)(抗EGFR)、ネスバクマブ(nesvacumab)(抗アンジオポエチン2)、ニモツズマブ(nimotuzumab)(抗EGFR)、ニボルマブ(nivolumab)(抗IgG4)、ノフェツモマブメルペンタン(nofetumomab merpentan)、オクレリズマブ(ocrelizumab)(抗CD20)、オカラツズマブ(ocaratuzumab)(抗CD20)、オララツマブ(olaratumab)(抗-PDGF-Rα)、オナルツズマブ(onartuzumab)(抗c-MET)、オンツキシズマブ(ontuxizumab)(抗TEM1)、オポルツズマブモナトクス(oportuzumab monatox)(抗EpCAM)、オレゴボマブ(oregovomab)(CA125治療)、オトレルツズマブ(otlertuzumab)(抗CD37)、パンコマブ(pankomab)(MUC1の抗腫瘍特異的グリコシル化)、パルサツズマブ(parsatuzumab)(抗EGFL7)、パスコリズマブ(pascolizumab)(抗IL-4)、パトリツマブ(patritumab)(抗HER3)、ペムツモマブ(pemtumomab)(抗MUC1)、ペルツズマブ(pertuzumab)(抗HER2/neu)、ピディリズマブ(pidilizumab)(抗PD-1)、ピナツズマブベドチン(pinatuzumab vedotin)(抗CD22)、ピンツモマブ(pintumomab)(抗腺癌抗原)、ポラツズマブベドチン(polatuzumab vedotin(抗CD79B)、プリツムマブ(pritumumab)(抗ビメンチン)PRO131921(抗CD20)、クイリズマブ(quilizumab)(抗IGHE)、ラコツモマブ(racotumomab)(抗N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(radretumab)(抗フィブロネクチンエキストラドメイン-B)、ラムシルマブ(ramucirumab)(抗VEGFR2)、リロツムマブ(rilotumumab)(抗HGF)、ロバツムマブ(robatumumab)(抗-IGF-1受容体)、ロレデュマブ(roledumab)(抗RHD)ロベリズマブ(rovelizumab(抗CD11&CD18)、サマリズマブ(samalizumab)(抗CD200)、サツモマブペンデチド(satumomab pendetide)(抗-TAG-72)、セリバンツマブ(seribantumab)(抗ERBB3)SGN-CD19A(抗CD19)、SGN-CD33A(抗CD33)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)(抗FAP)、シルツキマブ(siltuximab)(抗-IL-6)、ソリトマブ(solitomab)(抗EpCAM)、ソンツズマブ(sontuzumab)(抗episialin)タバルマブ(tabalumab)(抗BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)(抗α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(taplitumomab paptox)(抗CD19)、テリモマブアリトクス(telimomab aritox)、テナツモマブ(tenatumomab)(抗テネイシンC)、テネリキシマブ(teneliximab)(抗CD40)、テプロツムマブ(teprotumumab)(抗CD221)、TGN1412(抗CD28)、チシリムマブ(ticilimumab)(抗-CTLA-4)、チガツズマブ(tigatuzumab)(抗-TRAIL-R2)、TNX-650(抗-IL-13)、トシツモマブ(tositumomab)(抗CS20)、トベツマブ(tovetumab)(抗CD140a)、TRBS07(抗GD2)、トレガリズマブ(tregalizumab)(抗CD4)、トレメリムマブ(tremelimumab)(抗-CTLA-4)、TRU-016(抗CD37)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin(抗EpCAM)、ウブリツキシマブ(ublituximab)(抗CD20)、ウレルマブ(urelumab)(抗-4-1BB)、バンチクツマブ(vantictumab)(抗Frizzled受容体)、バパリキシマブ(vapalixima
b)(抗AOC3(VAP-1))、バテリズマブ(vatelizumab)(抗ITGA2)、ベルツズマブ(veltuzumab)(抗CD20)、ベセンクマブ(vesencumab)(抗NRP1)、ビシリズマブ(visilizumab)(抗CD3)、ボロシキシマブ(volociximab)(抗インテグリンα5β1)、ボルセツズマブマホドチン(vorsetuzumab mafodotin)(抗CD70)、ボツムマブ(votumumab)(抗腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(zalutumumab)(抗EGFR)、ザノリムマブ(zanolimumab)(抗CD4)、ザツキシマブ(zatuximab)(抗HER1)、ジラリムマブ(ziralimumab)(抗CD147(ベイシジン))、RG7636(抗ETBR)、RG7458(抗MUC16)、RG7599(抗NaPi2b)、MPDL3280A(抗-PD-L1)、RG7450(抗STEAP1)及びGDC-0199(抗-Bcl-2)が挙げられる。
【0081】
本発明(例えばTCRドメイン)に有用な他の抗体ドメイン又は腫瘍標的結合タンパク質として、限定されないが、以下の抗原に結合するものが挙げられる(注、指定の癌適応症は非限定的な例を表す):アミノペプチダーゼN(CD13)、アネキシンAl、B7-H3(CD276、様々な癌)、CA125(卵巣癌)、CA15-3(癌腫)、CA19-9(癌腫)、L6(癌腫)、ルイスY(癌腫)、ルイスX(癌腫)、アルファフェトプロテイン(癌腫)、CA242(結腸直腸癌)、胎盤アルカリフォスファターゼ(癌腫)、前立腺特異的抗原(前立腺)、前立腺酸性ホスファターゼ(前立腺)、表皮増殖因子(癌腫)、CD2(ホジキン病、NHLリンパ腫、多発性骨髄腫)、CD3イプシロン(T細胞リンパ腫、肺癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、自己免疫疾患、悪性腹水)、CD19(B細胞悪性腫瘍)、CD20(非ホジキンリンパ腫、B細胞腫瘍、自己免疫疾患)、CD21(B細胞リンパ腫)、CD22(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、SLE)、CD30(ホジキンリンパ腫)、CD33(白血病、自己免疫疾患)、CD38(多発性骨髄腫)、CD40(リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(CLL))、CD51(転移性黒色腫、肉腫)、CD52(白血病)、CD56(小細胞肺癌、卵巣癌、メルケル細胞癌及び液性腫瘍、多発性骨髄腫)、CD66e(癌腫)、CD70(転移性腎細胞癌及び非ホジキンリンパ腫)、CD74(多発性骨髄腫)、CD80(リンパ腫)、CD98(癌腫)、CD123(白血病)、ムチン(癌腫)、CD221(固形腫瘍)、CD227(乳癌、卵巣癌)、CD262(NSCLC及び他の癌)、CD309(卵巣癌)、CD326(固形腫瘍)、CEACAM3(結腸直腸癌、胃癌)、CEACAM5(CEA、CD66e)(乳癌、結腸直腸癌及び肺癌)、DLL4(A-like-4)、EGFR(様々な癌)、CTLA4(黒色腫)、CXCR4(CD 184、ヘム腫瘍学、固形腫瘍)、エンドグリン(CD105、固形腫瘍)、EPCAM(上皮細胞接着分子、膀胱癌、頭頚部癌、結腸癌、NHL前立腺癌、及び卵巣癌)、ERBB2(肺癌、乳癌、前立腺癌)、FCGR1(自己免疫疾患)、FOLR(葉酸受容体、卵巣癌)、FGFR(癌腫)、GD2ガングリオシド(癌腫)、G-28(細胞表面抗原糖脂質、黒色腫)、GD3イデオタイプ(癌腫)、熱ショックタンパク質(癌腫)、HER1(肺癌、胃癌)、HER2(胸癌、肺癌及び卵巣癌)、HLA-DR10(NHL)、HLA-DRB(NHL、B細胞白血病)、ヒト絨毛膜性ゴナドトロピン(癌腫)、IGF1R(固形腫瘍、白血病)、IL-2受容体(T細胞白血病及びリンパ腫)、IL-6R(多発性骨髄腫、RA、カストルマン病、IL6依存性腫瘍)、インテグリン(ανβ3、α5β1、α6β4、α11β3、α5β5、ανβ5、様々な癌に対して)、MAGE-1(癌腫)、MAGE-2(癌腫)、MAGE-3(癌腫)、MAGE4(癌腫)、抗トランスフェリンレセプター(癌腫)、p97(黒色腫)、MS4A1(膜貫通4-ドメインサブファミリーAメンバー1、非ホジキンB細胞リンパ腫、白血病)、MUC1(乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、気管支癌及び消化器癌)MUC16(CA125)(卵巣癌)、CEA(結腸直腸癌)、gp100(黒色腫)、MARTI(黒色腫)、MPG(黒色腫)、MS4A1(膜貫通4-ドメインサブファミリーA、小細胞肺癌、NHL、ヌクレオリン、Neu癌遺伝子産物(癌腫)、P21(癌腫)、nectin-4(癌腫)、抗-(N-グルコイルノイラミン酸のパラトープ、乳癌、黒色腫癌)、PLAP様精巣アルカリフォスファターゼ(卵巣癌、精巣癌)、PSMA(前立腺腫瘍)、PSA(前立腺)、ROB04、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72、AML、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌)、T細胞膜貫通型タンパク質(癌)、Tie(CD202b)、組織因子、TNFRSF10B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B、癌腫)、TNFRSF13B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B、多発性骨髄腫、NHL、他の癌、RA及びSLE)、TPBG(栄養膜糖タンパク質、腎細胞癌腫)、TRAIL-R1、(腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体1、リンパ腫、NHL、結腸直腸癌、肺癌)VCAM-1(CD106、黒色腫)、VEGF、VEGF-A、VEGF-2(CD309)(様々な癌)。他の幾つかの腫瘍関連抗原標的が総説されている(Gerber,et al,mAbs 2009 1:247-253;Novellino et al,Cancer Immunol Immunother.2005 54:187-207,Franke,et al,Cancer Biother Radiopharm.2000,15:459-76,Guo,et al.,Adv Cancer Res.2013;119:421-475,Parmiani et al.J Immunol.2007 178:1975-9)。これらの抗原の例として分化のクラスタが挙げられる(CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CDl laCDl lb、CDl lc、CD12w、CD14、CD15、CD16、CDwl7、CD18、CD21、CD23、CD24)CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD31、CD32、CD34、CD35、CD36、CD37、CD41、CD42、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49b、CD49c、CD53、CD54、CD55、CD58、CD59、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD68、CD69、CD71、CD72、CD79、CD81、CD82、CD83、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD95、CD96、CD100、CD103、CD105、CD106、CD109、CD117、CD120、CD127、CD133、CD134、CD135、CD138、CD141、CD142、CD143、CD144、CD147、CD151、CD152、CD154、CD156、CD158、CD163、CD166、CD168、CD184、CDwl86、CD195、CD202(a、b)、CD209、CD235a、CD271、CD303、CD304、アネキシン Al、ヌクレオリン、エンドグリン(CD105)、ROB04、アミノペプチダーゼN、-like-4(DLL4)、VEGFR-2(CD309)、CXCR4(CD184)、Tie2、B7-H3、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、イデオタイプ、MAGE A3、p53、非変異体(nonmutant)、NY-ESO-1、GD2、CEA、MelanA/MARTl、Ras突然変異体、gp100、p53突然変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、survivin、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB l、 ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGMl、メソセリン、PSCA、MAGE Al、sLe(a)、CYPIB I、PLACl、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie 2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2、及びFos関連抗原1。
【0082】
さらに、本発明の好ましい結合ドメインは、当該技術分野で知られている、抗原対して特異的な結合ドメイン、及び感染細胞と関連するエピトープ標的を含む。かかる標的は、限定されないが、以下の目的とする感染性抗原に由来するものが挙げられる:HIVウイルス(特にHIVエンベロープスパイク及び/又はgp120及びgp41のエピトープに由来する抗原)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、イコバクテリアム・テュバーキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、ニューモコッカス(Pneumococcus)、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、インフルエンザB(-influenzae B)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ライム病スピロヘータ(Lyme disease spirochetes)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス(human serum parvo-like virus)、呼吸器多核体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、はしかウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血球ウイルス、エプスタインバーウイルス、マウス白血病ウイルス、おたふくかぜウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳腺腫瘍ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、西ナイルウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ・ランゲル(Trypanosoma rangeli)、トリパノソーマ・クルーズ(Trypanosoma cruzi)、トリパノソーマ・ロデシエンセイ(Trypanosoma rhodesiensei)、トリパノソーマ・ブルース(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、ウシバベシア(Babesia bovis)、アイメリア テネラ(Elmeria tenella)、回施糸状虫(Onchocerca volvulus)、リーシュマニア・トピカ、旋毛虫(Trichinella spiralis)、タイレリア・パルバ、胞状条虫(Taenia hydatigena)、テニア・オウィス(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、エキノコックス・グラニュロサス(Echinococcus granulosus)メソセストイド・コルチ(Mesocestoides corti)、マイコプラズマ・アルスリチジス(Mycoplasma arthritidis)、M.ハイオライニス(M.hyorhinis)、M.オラーレ(M.orale)、M アルギニニ(M arginini)、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acholeplasma laidlawii)、M.サリバリウム(M.salivarium)及びM.ニューモニエ(M.pneumoniae)。
【0083】
他の実施形態では、結合ドメインは免疫チェックポイント分子又はそのリガンドに特異的であり、免疫のチェックポイント抑制活性の阻害剤として、又は免疫チェックポイント刺激活性のアゴニストとして作用する。かかる免疫チェックポイント分子及びリガンドとして、PD1、PDL1、PDL2、CTLA4、CD28、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、B7-H5、ICOS-L、ICOS、BTLA、CD137L、CD137、HVEM、KIR、4-1BB、OX40L、CD70、CD27、OX40、GITR、IDO、TIM3、GAL9、VISTA、CD155、TIGIT、LIGHT、LAIR-1、Siglecs及びA2aRが挙げられる(Pardoll DM.2012.Nature Rev Cancer 12:252-264,Thaventhiran T,et al.2012.J Clin Cell Immunol S12:004)。さらに、本発明の好ましい抗体ドメインとして、イピリムマブ及びトレメリムマブ(抗CTLA4)、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、TSR-042、ANB011、AMP-514及びAMP-224(リガンド-Fc融合)(抗PD1)、MPDL3280A、MEDI4736、MEDI0680、及びBMS-9365569(抗PDL1)、MEDI6469(抗OX40アゴニスト)、BMS-986016、IMP701、IMP731及びIMP321(抗LAG3)が挙げられる。
【0084】
T細胞受容体(TCR)
T細胞は、他の免疫細胞型(多形核細胞、好酸球、好塩基球、肥満細胞、B細胞、NK細胞)と共に免疫系の細胞成分を構成する細胞のサブグループである。生理学的条件下では、T細胞は、免疫監視及び外来抗原の排除において機能を果たす。しかしながら、病的状況下では、T細胞が疾患の原因及びその伝播において主な役割を果たしているという有力な証拠が存在する。これらの疾患では、中枢であろうと末梢であろうと、T細胞の免疫寛容の崩壊が自己免疫疾患を引き起こす基本的なプロセスである。
【0085】
TCR複合体は、少なくとも7個の膜貫通タンパク質で構成される。ジスルフィド結合した(αβ又はγδ)ヘテロ二量体は、単一型抗原認識単位を形成するが、一方で、ε鎖、γ鎖、δ鎖、ζ鎖及びη鎖からなる、CD3の不変鎖は、T細胞の活性化及び細胞性免疫応答の発生をもたらすシグナル伝達経路に結合するリガンドのカップリングを担う。TCR鎖の遺伝子の多様性にもかかわらず、2つの構造特徴は、既知のサブユニット全てに共通する。第一に、それらは、恐らくはα-へリックス型の単一の膜貫通全域ドメインを有する膜貫通タンパク質である。第二に、全てのTCR鎖は、予想される膜貫通ドメイン内に荷電アミノ酸を持つという珍しい特徴を有する。不変鎖は、マウスとヒトの間で保存されて単一の負の電荷を有し、また不変鎖は1つ(TCR-β)又は2つ(TCR-α)の正電荷を持つ。TCR-αの膜貫通配列は、多くの種において高度に保存されているため、系統発生学的に重要な機能的役割を果たす可能性がある。親水性アミノ酸であるアルギニン及びリジンを含むオクタペプチド配列は、これらの種間で同一である。
【0086】
T細胞応答は、TCRに結合する抗原によって調節される。1つの型のTCRは、免疫グロブリンの可変(V)及び定常(C)領域に類似するα鎖及びβ鎖からなる膜結合型ヘテロ二量体である。TCRα鎖は、共有結合されたV-α鎖及びC-α鎖を含むが、β鎖は、C-β鎖に共有結合されたV-β鎖を含む。V-α鎖及びV-β鎖は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(ヒトにおいてはHLA複合体として知られている)と関連して超抗原又は抗原を結合することができるポケット又は間隙を形成する。Davis Ann.Rev.of Immunology 3:537(1985);Fundamental Immunology 3rd Ed.,W.Paul Ed.Rsen Press LTD.New York(1993)を参照されたい。
【0087】
また、TCR鎖の細胞外ドメイン(αβ又はγδ)も細胞表面での発現のため、異種性膜貫通領域に融合するように操作され得る。かかるTCRは、CD3、CD28、CD8、4-1BB、及び/又はキメラ活性化受容体(CAR)膜貫通性若しくは活性化ドメインへの融合を含み得る。また、TCRは、αβ鎖又はγδ連鎖の1以上の抗原結合ドメインを含む可溶性タンパク質であってもよい。かかるTCRは、TCR定常ドメインを含む、又はそれを含まないTCR可変ドメイン又はその機能フラグメントを含み得る。可溶性TCRは、二量体又は一本鎖の分子である。
【0088】
Fcドメイン
本発明のタンパク質複合体は、Fcドメインを含み得る。例えば、2B8T3Mは、抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合複合体を含む。様々なサイトカイン及び可溶性受容体等の別のタンパク質のドメインとIgGのFc領域を併せ持つ融合タンパク質が報告されている(例えば、Capon et al.,Nature,337:525-531,1989;Chamow et al.,Trends Biotechnol.,14:52-60,1996);米国特許第5,116,964号、及び同第5,541,087号を参照されたい)。プロトタイプ融合タンパク質は、IgG Fcのヒンジ領域中のシステイン残基によって連結されるホモ二量体タンパク質であり、重鎖可変ドメイン及びClドメイン、並びに軽鎖のないIgG分子に類似する分子を生じる。Fcドメインを含む融合タンパク質の二量体の性質は、他の分子との高次相互作用(すなわち二価又は二重特異性の結合)の提供において有利となり得る。構造の相同性により、Fc融合タンパク質は、同様のアイソタイプを持つヒトIgGのそれに匹敵するin vivo薬物動態学プロファイルを示す。IgGクラスの免疫グロブリンは、ヒト血液中で最も豊富なタンパク質の1つであり、それらの循環半減期は21日間に達し得る。IL-15又はIL-15融合タンパク質の循環半減期を延長させるため、及び/又はその生物学的活性を増加させるため。ヒト重鎖IgGタンパク質のFc部分に共有結合によって連結されたIL-15Rαに非共有結合によって結合されたIL-15ドメインを含む融合タンパク質複合体(例えば2B8T3M)が本明細書に記載される。
【0089】
「Fc」の用語は、Fc受容体と称される細胞表面受容体及び補体系の幾つかのタンパク質と相互作用する抗体の定常領域である、フラグメント結晶化可能領域を指す。かかる「Fc」は二量体形態である。天然のFcの本来の免疫グロブリン供給源は、好ましくはヒト起源であり、免疫グロブリンのいずれかであってもよいが、IgG1及びIgG2が好ましい。天然Fc’は、共有結合的な(すなわち、ジスルフィド結合)及び、非共有結合的な会合によって二量体又は多量体の形態へと結合され得る単量体ポリペプチドで構成される。天然Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えばIgG、IgA、IgE)又はサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)に応じて、1個~4個の範囲である。天然Fcの1つの例は、IgGのパパイン消化から生じるジスルフィド結合二量体である(Ellison et al.(1982),Nucleic Acids Res.10:4071-9を参照されたい)。本明細書で使用される「天然Fc」は、モノマー、二量体及び多量体の形態の総称である。プロテインA、プロテインG、様々なFc受容体及び補体タンパク質に対する結合部位を含むFcドメイン。幾つかの実施形態では、複合体のFcドメインは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は、抗体依存性細胞性食作用(ADCP)を媒介するためにFc受容体と相互作用することができる。他の適用では、複合体は、ADCC又はADCPを効果的に媒介することができないFcドメイン(例えばIgG4 Fc)を含む。
【0090】
幾つかの実施形態では、「Fc変異体」の用語は、天然Fcから修飾されるが、なおもサルベージ受容体、FcRnに対する結合部位を含む、分子又は配列を指す。国際出願第WO97/34631号及びWO96/32478号は、例示的Fc変異体と並んで、サルベージ受容体との相互作用を記載し、それらは参照により本明細書の一部を成す。したがって、「Fc変異体」の用語は、非ヒト天然Fcからヒト化された分子又は配列を含む。さらに、天然Fcは、本発明の融合分子に必要とされない構造的特徴及び生物学的活性を提供する部位を含むことから、それらの部位は除去され得る。したがって、特定の実施形態では、「Fc変異体」の用語は、(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択された宿主細胞との不適合(3)選択された宿主細胞での発現によるN末端不均質性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、(7)抗体依存細胞性細胞毒素(ADCC)又は(8)抗体依存性細胞貪食(ADCP)に影響する又は関与する1以上の天然Fc部位又は残基を変更する分子又は配列を含む。かかる変更は、これらのFc特性の任意の1以上を増加又は減少し得る。Fc変異体は、以下にさらに詳細に記載される。
【0091】
「Fcドメイン」の用語は、天然Fc及びFc変異体分子、及び上に定義される配列を包含する。Fc変異体及び天然Fcの同様に、「Fcドメイン」の用語は、抗体全体から消化されるか、又は組み換え遺伝子発現若しくは他の手段によって産生されるかにかかわらず、単量体又は多量体の形態の分子を含む。
【0092】
融合タンパク質複合体
本発明は、融合タンパク質複合体(図1)を提供する。幾つかの場合、第1の融合タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)又はその機能性フラグメント共有結合された第1の生物学的に活性なポリペプチドを含み、第2の融合タンパク質は、可溶性インターロイキン-15受容体アルファ(IL-15Rα)ポリペプチド又はその機能性フラグメントに共有結合された第2の生物学的に活性なポリペプチドを含み、ここで、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインは、第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインに結合して可溶性融合タンパク質複合体を形成する。また、本発明の融合タンパク質複合体は、第1及び第2の融合タンパク質のうちの1つ又はそれらの両方に連結された免疫グロブリンFcドメイン又はその機能性フラグメントを含む。融合タンパク質に連結されたFcドメインは、相互作用して融合タンパク質複合体を形成することが好ましい。かかる複合体は、免疫グロブリンFcドメイン間のジスルフィド結合によって安定化され得る。或る1つの態様では、本発明の可溶性融合タンパク質複合体は、IL-15ポリペプチド、IL-15変異体又はその機能性フラグメント、及び可溶性IL-15Rαポリペプチド又はその機能性フラグメントを含み、ここで、IL-15ポリペプチド及びIL-15Rαポリペプチドのうちの1つ又はそれらの両方が、免疫グロブリンFcドメイン又はその機能性フラグメントをさらに含む。
【0093】
特定の例では、第1及び第2のうちの1つ又はそれらの両方の生物学的に活性なポリペプチドは、抗体又はその機能性フラグメントを含む。例えば、生物学的に活性なポリペプチドの1つは、第1の可溶性抗-CD3単鎖抗体又はその機能性フラグメントを含む。別の例では、他の又は第2の生物学的に活性なポリペプチドは、疾患抗原特異的抗体又はその機能性フラグメントを含む。或る1つの実施形態では、本発明は、可溶性抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合タンパク質複合体を含む2B8T3Mを提供する。この複合体では、huIL-15N72Dドメイン及びhuIL-15RαSuドメインは相互作用し、2つの抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合タンパク質上のhuIgG1 Fcドメインは多重鎖融合タンパク質複合体を形成する(例えば、図2を参照されたい)。
【0094】
本明細書で使用される「生物学的に活性なポリペプチド」又は「エフェクター分子」の用語は、本明細書に記載される所望の効果をもたらすことができる、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチド等のアミノ酸配列;糖又は多糖;脂質又は糖脂質、糖タンパク質、若しくはリポタンパク質を意味する。また、エフェクター分子は、化学物質を含む。また、生物学的活性又はエフェクターのタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドをコードするエフェクター分子の核酸が意図される。したがって、好適な分子として、調節因子、酵素、抗体、又は薬物と並んでDNA、RNA、及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。生物学的に活性なポリペプチド又はエフェクター分子は天然起源のものであってもよく、又は例えば、組み換え又は化学合成によって既知の成分から合成され得て、異種由来の成分を含有することもできる。生物学的に活性なポリペプチド又はエフェクター分子は、一般に、遠心分離法又はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等の標準的な分子サイズ決定技術によって判定される、約0.1KD~100KD、又はこれよりも大きく、最大約1000KD、好ましくは約0.1KD、0.2KD、0.5KD、1KD、2KD、5KD、10KD、20KD、30KD、及び50KDの間である。本発明の所望の効果は、限定されないが、例えば、結合活性が増大した融合タンパク質複合体を形成させること、標的細胞を死滅させること、(例えば細胞増殖又は細胞死のいずれか誘導するため)、疾患を予防又は治療する際に免疫応答を開始すること、又は診断目的で検出分子として作用することが挙げられる。かかる検出のため、アッセイ、例えば、一連の、細胞を培養して増殖させる工程、該細胞を本発明の融合複合体と接触させる工程、その後、該融合複合体が細胞のさらなる発生を阻害するかどうかを評価する工程を含むアッセイが使用され得る。
【0095】
本発明の融合タンパク質複合体をエフェクター分子に共有結合させることにより、多くの顕著な利益が提供される。既知の構造を有するペプチドを含む、単一エフェクター分子を含有する、本発明の融合タンパク質複合体を作製することができる。さらに、多様なエフェクター分子を同様のDNAベクターで産生することができる。すなわち、感染細胞又は疾患細胞の認識のため、種々のエフェクター分子のライブラリを融合タンパク質複合体に連結させることができる。さらに、治療に応用するため、被験体に本発明の融合タンパク質複合体を投与するのではなく、融合タンパク質複合体をコードするDNAベクターを、該融合タンパク質複合体のin vivo発現のため投与することができる。かかる方法は、典型的には組み換えタンパク質の作製と関連する費用のかかる精製工程を回避し、従来のアプローチと関連する抗原の取り込み及びプロセッシングの複雑さを回避することができる。
【0096】
上記したように、本明細書に開示される融合タンパク質の成分、例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメイン若しくは他の生物学的に活性な分子、及び任意のペプチドリンカー等のエフェクター分子を、融合タンパク質が意図された機能を有する限り、ほぼいかなる様式でも構築することができる。特に、融合タンパク質の各成分を、望ましい場合は、少なくとも1つの好適なペプチドリンカー配列によって、別の成分との距離をあけて配置することができる。さらに、融合タンパク質は、例えば、融合タンパク質の修飾、同定、及び/又は精製を容易にするためにタグを含み得る。より具体的な融合タンパク質が、下記の実施例に記載される。
【0097】
リンカー
また、本発明の融合複合体は、好ましくは、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインと生物学的に活性なポリペプチドとの間に置かれた可動性リンカー配列を含む。リンカー配列は、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインの両ドメインの機能的活性を可能とするため、それらのドメインに対して生物学的に活性なポリペプチドの有効な配置ができるようにすべきである。
【0098】
特定の場合、可溶性融合タンパク質複合体はリンカーを有し、ここでは、第1の生物学的に活性なポリペプチドが、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15(又はその機能性フラグメント)に共有結合されている。別の態様では、本明細書に記載されている可溶性融合タンパク質複合体はリンカーを有し、ここでは第2の生物学的に活性なポリペプチドが、ポリペプチドリンカー配列によってIL-15Rαポリペプチド(又はその機能性フラグメント)に共有結合さている。
【0099】
リンカー配列は、提示抗原を認識するためにTCR分子の結合溝、又は抗原認識用の抗体分子の結合ドメインを効果的に配置することができるペプチドを生じさせるヌクレオチド配列によってコードされていることが好ましい。本明細書で使用される「生物学的に活性なポリペプチドをIL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインに対して効果的に配置すること」の句、又はその他同様の句は、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインが互いに相互作用してタンパク質複合体を形成することができるように、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインに連結された生物学的に活性なポリペプチドを配置することを意味する。例えば、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインは、免疫細胞と相互作用して、免疫応答を開始若しくは阻害するか、又は細胞発生を阻害若しくは賦活できるよう効果的に配置されている。
【0100】
また、本発明の融合複合体は、好ましくは、IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインと、免疫グロブリンFcドメインとの間に置かれた可動性リンカー配列を含む。リンカー配列は、各ドメインの機能的活性を可能とするため、Fcドメイン、生物学的に活性なポリペプチド、及びIL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインの有効な配置を可能としなければならない。例えば、Fcドメインは、正確な融合タンパク質複合体の形成、及び/又は免疫細胞上のFc受容体若しくは補体系のタンパク質との相互作用を可能として、オプソニン作用、溶菌、肥満細胞、好塩基球及びエオシン好性細胞の脱顆粒反応、並びに他のFc受容体依存性プロセス;補体活性化経路の活性化;並びに融合タンパク質複合体のin vivo半減期の増強を含むFc媒介作用を賦活するように有効に配置される。
【0101】
また、リンカー配列を使用して、生物学的に活性なポリペプチドの2以上のポリペプチドを連結し、所望の機能的活性を有する一本鎖分子を生成することができる。
【0102】
リンカー配列は、好ましくは約7個~20個のアミノ酸、より好ましくは約10個~20個のアミノ酸を含む。リンカー配列は、好ましくは、生物学的に活性なポリペプチド又はエフェクター分子を単一の望ましくない立体構造で保持しないように可動性である。リンカー配列を使用して、例えば、認識部位を融合分子から距離をあけて配置することができる。具体的には、ペプチドリンカー配列を、生物学的に活性なポリペプチドとエフェクター分子との間に配置して、例えば、それらを化学的に架橋して分子の柔軟性を与えることができる。リンカーは、柔軟性を与えるために、例えば、グリシン、アラニン及びセリン等の低分子側鎖を有するアミノ酸を主に含む。好ましくは、リンカー配列の約80%又は90%、又はそれ以上がグリシン残基、アラニン残基、又はセリン残基を含み、特にグリシン残基及びセリン残基を含む
【0103】
抗体の可変領域をうまく連結するために用いられてきた多くの可動性リンカー設計のいずれかを含有する、様々なリンカー配列を用いることもできる(Whitlow,M.et al.,(1991)Methods:A Companion to Methods in Enzymology,2:97-105を参照されたい)。
【0104】
薬学的治療薬
本発明は、治療薬としての使用に対する融合タンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。或る1つの態様では、本発明の融合タンパク質複合体は、全身投与され、例えば、生理的食塩水等の薬学的に許容可能なバッファー中に製剤化される。好ましい投与経路として、例えば、患者において継続的、持続的又は有効なレベルの組成物を提供する、膀胱への滴下注入、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、又は皮内の注入が挙げられる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理学的に許容可能な担体において、本明細書で識別される治療的有効量の治療薬を使用して行われる。好適な担体及びそれらの製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences by E.W.Martinに記載される。投与される治療剤の量は、投与様式、患者の年齢及び体重、並びに新生物の臨床症状に応じて変化する。一般的には、量は、新生物、自己免疫疾患、又は感染性疾患と関連する他の疾患の治療で使用される他の薬剤について使用される量の範囲となるが、特定の例では、化合物の特異性が増加しているため、より少ない量が必要とされる。化合物は、当業者に知られている方法によって特定される、被験体の免疫応答を増強する、又は新生物、感染細胞若しくは自己免疫細胞の増殖、生存若しくは侵入を減少させる投薬量で投与される。
【0105】
医薬組成物の製剤化
新生物、感染性又は自己免疫疾患の治療に対する本発明の融合タンパク質複合体の投与は、他の成分と併せて、上記新生物、感染性又は自己免疫疾患の改善、縮小、又は安定化に有効な治療薬の濃度をもたらす任意の好適な手段による。本発明の融合タンパク質複合体は、任意の好適な担体物質中に任意の適正量で含まれ得て、一般に、組成物の総重量の1重量%~95重量%の量で存在する。上記組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、小胞内、腫瘍内、腹腔内)投与経路に適した剤形で提供され得る。例えば、医薬組成物は、従来の薬学的な慣行に従って製剤化される(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。
【0106】
当業者が当該技術分野において慣例であると認識するように、動物モデルと比較して、ヒトに対する投与量を修飾するため、ヒト投与量は、SCIDマウス又は非ヒト霊長類で使用される化合物の量から推定することにより最初に決定される。例えば、投与量は、約1μg化合物/体重kg~約5000mg化合物/kg体重;又は約5mg/体重kg~約4000mg/体重kg、又は約10mg/体重kg~約3000mg/体重kg;又は約50mg/体重kg~約2000mg/体重kg;又は約100mg/体重kg~約1000mg/体重kg;又は約150mg/体重kg~約500mg/体重kgの間で変化し得る。例えば、上記用量は、約1mg/体重kg、5mg/体重kg、10mg/体重kg、25mg/体重kg、50mg/体重kg、75mg/体重kg、100mg/体重kg、150mg/体重kg、200mg/体重kg、250mg/体重kg、300mg/体重kg、350mg/体重kg、400mg/体重kg、450mg/体重kg、500mg/体重kg、550mg/体重kg、600mg/体重kg、650mg/体重kg、700mg/体重kg、750mg/体重kg、800mg/体重kg、850mg/体重kg、900mg/体重kg、950mg/体重kg、1000mg/体重kg、1050mg/体重kg、1100mg/体重kg、1150mg/体重kg、1200mg/体重kg、1250mg/体重kg、1300mg/体重kg、1350mg/体重kg、1400mg/体重kg、1450mg/体重kg、1500mg/体重kg、1600mg/体重kg、1700mg/体重kg、1800mg/体重kg、1900mg/体重kg、2000mg/体重kg、2500mg/体重kg、3000mg/体重kg、3500mg/体重kg、4000mg/体重kg、4500又は5000mg/体重kgである。代替的には、上記用量は、約5mg化合物/体重kg~約20mg化合物/体重kgの範囲にある。別の例では、上記用量は、約8mg/体重kg、10mg/体重kg、12mg/体重kg、14mg/体重kg、16mg/体重kg又は18mg/体重kgである。2B8T3Mは、0.5mg/kg~薬10mg/kg(例えば0.5mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kg)で投与されることが好ましい。もちろん、かかる治療プロトコルにおいて慣例的に行われるように、初期の臨床試験の結果及び特定の患者の要求に応じて、この投与量は上方又は下方に調整され得る。
【0107】
医薬組成物は、適切な添加剤と共に、投与に際して、制御された方法で治療薬を放出する医薬組成物に製剤化される。例として、単一又は複数の単位の錠剤又はカプセルの組成物、油剤、懸濁液、エマルジョン、マイクロカプセル、ミクロスフェア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ、及びリポソームが挙げられる。2B8T3Mは、非経口投与に適した賦形剤中で製剤化されることが好ましい。
【0108】
非経口組成物
本発明の融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、剤形、製剤において(皮下、静脈内、筋肉内、腫瘍内、小胞内、腹腔内の)注射、輸液若しくは移植によって、又は従来の無毒な薬学的に許容可能な担体及びアジュバントを含む好適な送達デバイス若しくはインプラントによって非経口的に投与される。かかる組成物の製剤及び調製物は、医薬製剤分野の当業者によく知られている。製剤は、上記Remington:The Science and Practice of Pharmacyに見ることができる。
【0109】
非経口的使用に対する本発明の融合タンパク質複合体を含む組成物は、ユニット剤形において(例えば1回用量のアンプルにおいて)提供される。代替的には、上記組成物は、幾つかの用量を含むバイアルにおいて提供され、そこには好適な防腐剤が添加されてもよい(以下を参照されたい)。上記組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、輸液器具又は移植用の送達デバイスの形態であるか、又は使用前に水若しくは別の好適なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提示されている。新生物、感染性又は自己免疫疾患を減少させるか改善する活性剤とは別に、上記組成物は、好適な非経口的に許容可能な担体及び/又は添加剤を含む。活性な治療薬(複数の場合がある)は、ミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、制御放出用のリポソームに組み込まれてもよい。さらに、上記組成物は、懸濁剤、安定剤、pH調節剤、等張化剤、及び/又は分散剤を含んでもよい。
【0110】
上に示されるように、本発明の融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、無菌注射に適した形態であってもよい。かかる組成物を作製するため、好適な活性治療薬(複数の場合がある)を非経口的に許容可能な液体ビヒクルに溶解又は懸濁させる。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒は、水適正量の塩酸、水酸化ナトリウムの添加によって好適なpHに調整された水、又は好適なバッファー、1,3-ブタンジオール、リンガー溶液、及び等張食塩水及びデキストロース溶液である。また、水性製剤は、1以上の防腐剤(例えばメチル、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)を含んでもよい。化合物の1つが水にかろうじて又はわずかに可溶性である場合、溶解促進剤又は可溶化剤を添加してもよく、又は溶媒が10重量/重量%~60重量/重量%のポリエチレングリコールを含んでもよい。
【0111】
本発明は、本明細書の式の化合物を含む、治療的有効量の医薬組成物を被験体(例えば、ヒト等の哺乳動物)に対して投与することを含む、新生物、感染性若しくは自己免疫の疾患、又はそれらの症状を治療する方法を提供する。したがって、或る1つの実施形態は、新生物、感染性若しくは自己免疫の疾患、又はそれらの症状に苦しむ、又はそれらにかかりやすい被験体を治療する方法である。上記方法は、上記疾患若しくは障害、又はそれらの症状を治療するのに十分な本明細書の化合物の有効量の量を、疾患又は障害が治療されるような条件下で、哺乳動物に投与する工程を含む。
【0112】
本明細書の方法は、かかる効果をもたらすため、被験体(かかる治療が必要であると識別された被験体を含む)に対して、有効量の本明細書に記載される化合物又は本明細書に記載される組成物を投与することを含む。かかる治療を必要とする被験体の識別は、被験体又は医療専門家の判断であり、又は主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、検査又は診断方法によって測定可能)であってもよい。
【0113】
本発明の治療方法(予防的治療を含む)は、一般に、本明細書の式の化合物等の治療的有効量の本明細書の化合物を、それを必要とする、哺乳動物、特にヒトを含む被験体(例えば、動物、ヒト)に投与することを含む。かかる治療は、新生物、感染症、自己免疫疾患、障害、又はその症状に苦しむ、それを有している、それにかかりやすい、又はそのリスクがある被験体、特にヒトに好適に投与される。「リスクがある」それらの被験体の判断は、診断検査、又は被験体若しくは医療従事者の意見(例えば遺伝子検査、酵素又はタンパク質のマーカー(マーカー(本明細書に定義される)家族歴等)によって客観的に又は主観的な判断によって行われ得る。本発明の融合タンパク質複合体は、免疫応答の増加が望まれる任意の他の治療に使用され得る。
【0114】
また、本発明は、治療の進行をモニターする方法を提供する。上記方法は、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書の化合物によって調節される本明細書に描かれる任意の標的、タンパク質、又はそれらの指標等)又は診断用の測定(例えばスクリーン、アッセイ)のレベルを、新生物と関連する障害又はその症状に苦しむ又はそれにかかりやすい被験体において特定する工程を含み、ここで、該被験体は、疾患又はその症状を治療するのに十分な治療的有効量の本明細書の化合物が投与されている。上記方法で特定されたマーカーのレベルを、健康な正常対照又は他の悩まされている患者のいずれかにおけるマーカーの既知のレベルと比較して、その被験体の疾患状態を確立する。幾つかの場合には、被験体におけるマーカーの第2のレベルを、第1のレベルの特定よりも後に特定し、2つのレベルを比較して一連の疾患又は治療の有効性をモニターする。特定の態様では、被験体におけるマーカーの予備治療レベルは、本発明による治療の開始に先立って特定され、その後、治療開始後に治療の効能を特定するため、このマーカーの予備治療レベルを、被験体のマーカーのレベルと比較することができる。
【0115】
併用療法
任意に、本発明の融合タンパク質複合体を他の標準的治療と組み合わせて投与する;かかる方法は、当業者に知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences by E.W.Martinに記載される。望ましい場合には、本発明の融合タンパク質複合体を、限定されないが免疫療法、治療用抗体、標的化療法、外科手術、放射線療法、又は化学療法を含む任意の従来の抗新生物療法と組み合わせて適用する。
【0116】
キット又は薬学的システム
本発明の融合タンパク質複合体を含む医薬組成物は、新生物、感染症、又は自己免疫疾患の改善における使用に対するキット又は薬学的システムに組み立てられてもよい。本発明のこの態様によるキット又は薬学的システムは、厳格に閉じられたバイアル、チューブ、アンプル、ボトル等の1以上の容器手段を有する、箱、カートン、チューブ等のキャリア手段を備える。また、本発明のキット又は薬学的システムは、本発明の融合タンパク質複合体の使用について関連する指示書を備えてもよい。
【0117】
組み換えタンパク質発現
一般に、本発明の融合タンパク質複合体(例えば2B8T3Mの成分)の作製は、本明細書に開示される手順、及び認知された組み換えDNA技術によって遂行され得る。
【0118】
一般に、組み換えポリペプチドは、好適な発現ビヒクル中のポリペプチドをコードする配列又はそのフラグメントの全て又は一部で好適な宿主細胞を形質転換することによって産生される。分子生物学の分野の当業者は、組み換えタンパク質を産生するため使用され得る種々様々な発現系のいずれかが使用され得ることを理解するであろう。使用される的確な宿主細胞は、本発明に決定的ではない。組み換えポリペプチドは、実質的には任意の真核生物宿主(例えばサッカロミセス・セレビシエ、昆虫細胞、例えばSf21細胞、又は哺乳動物細胞、例えばNIH 3T3、Hela、或いは好ましくはCOS細胞)において産生され得る。かかる細胞は、幅広い供給源から入手可能である(例えば、メリーランド州ロックランドのthe American Type Culture Collection;また、例えばAusubel et al.,Current Protocol in Molecular Biology,New York:John Wiley and Sons,1997を参照されたい)。トランスフェクションの方法及び発現ビヒクルの選択は、選択される宿主系に依存する。形質転換方法は、例えば、Ausubel et al.(上記)に記載され;発現ビヒクルは、例えば、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(P.H.Pouwels et al.,1985,Supp.1987)に提供されるものから選択され得る。
【0119】
組み換えポリペプチドの産生に対して、様々な発現ベクター系が存在する。かかるポリペプチドを産生するのに有用な発現ベクターとして、限定されないが、エピソーム及びウイルス由来のベクター例えば、細菌性プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来酵母エピソーム由来、挿入因子由来、酵母染色体エレメント由来、バキュロウイルス、SV40等のパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス等のウイルスに由来するベクター、及びそれらの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0120】
一旦、組み換えポリペプチドが発現されれば、例えば、親和性クロマトグラフィーを使用して該ポリペプチドが単離される。或る1つの例では、ポリペプチドに対して産生された(本明細書に記載されるように産生された)抗体を、カラムに付着させて、組み換えポリペプチドを単離するために使用してもよい。親和性クロマトグラフィーに先立って、ポリペプチドを持つ細胞の溶解又は分画を標準的な方法によって行ってもよい(例えば、上記Ausubel et al.,を参照されたい)。一旦単離されると、組み換えタンパク質は、所望に応じて、例えば高速液体クロマトグラフィーによってさらに精製され得る(例えば、Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry and Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980を参照されたい)。
【0121】
本発明で使用されるように、本発明の生物学的に活性なポリペプチド又はエフェクター分子として、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質毒素、免疫グロブリンドメイン等の因子、又は酵素との他の生物学的に活性なタンパク質が挙げられる。また、生物学的に活性なポリペプチドとして、非タンパク質毒素、細胞傷害剤、化学療法剤、検出可能な標識、放射性物質等の他の化合物とのコンジュゲートが挙げられる。
【0122】
本発明に係るサイトカインは、他の細胞に作用し、細胞性免疫の多くの多重効果のいずれかに関与している細胞によって産生される因子のいずれかによって規定される。サイトカインの例として、限定されないが、IL-2ファミリー、インターフェロン(IFN)、IL-10、IL-1、IL-17、TGFサイトカインファミリー、及びTNFサイトカインファミリー、並びにIL-1~IL-35、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TGF-β、TNF-α、並びにTNFβが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の1つの態様では、第1の融合タンパク質は、インターロイキン-15(IL-15)ドメイン又はその機能性フラグメントに共有結合した第1の生物学的に活性なポリペプチドを含む。IL-15は、T細胞の活性化及び増殖に影響するサイトカインである。免疫細胞の活性化及び増殖に影響を及ぼす場合のIL-15の活性は、幾つかの点でIL-2に類似するが、基本的な相違点は、既によく特徴付けられている(Waldmann,T A,2006,Nature Rev.Immunol.6:595-601)。
【0124】
本発明の別の態様において、第1の融合タンパク質は、IL-15変異体(本明細書でIL-15突然変異体とも称される)であるインターロイキン-15(IL-15)ドメインを含む。IL-15変異体は、天然(又は野生型)のIL-15タンパク質とは異なるアミノ酸配列を含むことが好ましい。IL-15変異体は、好ましくは、IL-15Rαポリペプチドを結合して、IL-15のアゴニスト又はアンタゴニストとして機能する。アゴニスト活性を有するIL-15変異体は、スーパーアゴニスト活性を有することが好ましい。IL-15変異体は、IL-15Rαとの会合とは無関係に、IL-15のアゴニスト又はアンタゴニストとして機能し得る。IL-15アゴニストは、野生型IL-15と比較して、それに匹敵する又はそれよりも高い生物学的活性によって例示される。IL-15のアンタゴニストは、野生型IL-15と比較して生物学的活性の減少によって、又はIL-15媒介応答を阻害する能力によって例示される。幾つかの例では、IL-15変異体は、高い活性又は低い活性で、IL-15Rβγ受容体に結合する。幾つかの場合に、IL-15変異体の配列は、天然IL-2配列と比較して、少なくとも1個のアミノ酸が変化しており、例えば、置換又は欠失しており、かかる変化が、IL-15のアゴニスト活性又はアンタゴニスト活性をもたらす。アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rβ及び/又はγと相互作用するIL-15のドメインに存在することが好ましい。より好ましくは、アミノ酸の置換/欠失は、IL-15Rαポリペプチドに対する結合にも、IL-15変異体を産生する能力にも影響しない。IL-15変異体を生じさせるのに適したアミノ酸の置換/欠失は、本明細書に記載されるように、推定上の若しくは既知のIL-15構造に基づいて、既知の構造を有するIL-2等の相同分子とIL-15との比較に基づいて、合理的若しくはランダムな突然変異誘発及び機能的アッセイによって、又は他の化学的方法によって同定され得る。さらに、好適なアミノ酸置換は、保存的又は非保存的な変化であってもよく、さらなるアミノ酸の挿入であってもよい。本発明のIL-15変異体は、成熟ヒトIL-15配列の6位、8位、10位、61位、65位、72位、92位、101位、104位、105位、108位、109位、111位又は112位において1個又は2個以上のアミノ酸置換/欠失を含む。特に、D8N(「D8」はアミノ酸及び天然成熟ヒトIL-15配列の残基の位置を指し、「N」はIL-15変異体おいてその位置で置換されたアミノ酸残基を指す)、I6S、D8A、D61A、N65A、N72R、V104P又はQ108Aの置換は、アンタゴニスト活性を有するIL-15変態をもたらし、N72D置換はアゴニスト化性を有するIL-15変異体をもたらす。
【0125】
ケモカインは、サイトカインと同様、別の細胞に曝露されると、細胞性免疫の多くの多重効果のいずれかを担う任意の化学的な因子又は分子と定義される。好適なケモカインとして、限定されないが、CXC、CC、C、及びCXCのケモカインファミリー、並びにCCL-1~CCL-28、CXC-1~CXC-17、XCL-1、XCL-2、CXCL1、MIP-1b、IL-8、MCP-1、及びRantesが挙げられる。
【0126】
増殖因子として、特定の細胞に曝露された場合に、影響を受ける細胞の増殖及び/又は分化を誘導する任意の分子が挙げられる。増殖因子としては、タンパク質及び化学分子を含みそれらの一部は、以下を含む:GM-CSF、G-CSF、ヒト増殖因子、及び幹細胞増殖因子。さらなる増殖因子は、本明細書に記載される用途にも適している。
【0127】
毒素又は細胞傷害性物質として、細胞に曝露された場合に、致死的効果又は増殖阻害効果を有する任意の物質が挙げられる。より具体的には、エフェクター分子は、例えば、植物又は細菌起源の細胞毒素、例えば、ジフテリア毒素(DT)、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、リシン、サポリン、シュードモナス外毒素(PE)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、又はゲロニンであってもよい。かかる毒素の生物学的に活性なフラグメントは、当該技術分野でよく知られており、例えば、DTのA鎖及びリシンA鎖等が挙げられる。さらに、上記毒素は、細胞表面上で活性を有する物質、例えば、ホスホリパーゼ酵素(例えば、ホスホリパーゼC)であってもよい。
【0128】
さらに、エフェクター分子は、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキサート、アドリアマイシン、ブレオマイシン、又はシスプラスチン等の化学療法薬であってもよい。
【0129】
さらに、エフェクター分子は、診断又は画像研究に適した検出可能に標識された分子であってもよい。かかる標識として、ビオチン若しくはストレプトアビジン/アビジン、検出可能なナノ粒子若しくは結晶、酵素若しくはその触媒活性フラグメント、緑色蛍光タンパク質、FITC、フィコエリトリン、サイクローム、テキサスレッド、若しくは量子ドット等の蛍光標識;放射性核種、例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90、レニウム-188若しくはビスマス-212;リン光分子若しくは化学発光分子、又はGdに基づく若しくは常磁性金属イオンに基づく造影剤等のPET、超音波、若しくはMRIによって検出可能な標識が挙げられるエフェクター又はタグを含むタンパク質の作製及び使用に関する開示については、例えば、Moskaug,et al.J.Biol.Chem.264,15709(1989);Pastan,I.et al.Cell 47,641,1986;Pastan et al.,Recombinant Toxins as Novel Therapeutic Agents,Ann.Rev.Biochem.61,331,(1992);“Chimeric Toxins”Olsnes and Phil,Pharmac.Ther.,25,355(1982);公開PCT出願第WO94/29350号;公開PCT出願第WO94/04689号;公開PCT出願第WO2005046449号、及び米国特許第5,620,939号を参照されたい。
【0130】
共有結合したIL-15ドメイン及びIL-15Rαドメインを含むタンパク質融合体又はコンジュゲート複合体は、幾つかの重要な用途を有する。例えば、抗CD3 scAbを及び抗CD20 scAbを含むタンパク質融合体又はコンジュゲート複合体を利用して、特定の細胞、例えば、CD20受容体を発現するB細胞リンパ腫、及びCD3受容体を発現するCD8+T細胞にIL-15:IL-15Rα複合体を送達することができる。したがって、上記タンパク質融合体又はコンジュゲート複合体は、リガンドを含む細胞を選択的に損傷するか、又は死滅させる手段を提供する。タンパク質融合体又はコンジュゲート複合体によって損傷又は死滅させることが可能な細胞又は組織の例として、1以上のリガンドを発現する腫瘍、及びウイルス感染細胞若しくは細菌感染細胞が挙げられる。損傷又は死滅させられやすい細胞又は組織は、本明細書に開示される方法によって容易にアッセイすることができる。
【0131】
本発明のIL-15及びIL-15Rαポリペプチドは、アミノ酸配列において、天然起源のIL-15及びIL-15Rα分子、例えばヒト、マウス若しくは他の齧歯類、又は他の哺乳動物のIL-15及びIL-15Rα分子に対して適切に対応する。これらのポリペプチドの配列及びコーディング核酸は、文献において既知であり、ヒトインターロイキン15(IL-15)mRNA-GenBank:U14407.1(参照することにより本明細書の一部を成す)、ハツカネズミインターロイキン15(IL-15)mRNA-GenBank:U14332.1(参照することにより本明細書の一部を成す)、ヒトインターロイキン15受容体α鎖前駆物質(IL-15RA)mRNA-GenBank:U31628.1(参照することにより本明細書の一部を成す)、ハツカネズミインターロイキン15受容体(α鎖)-GenBank:BC095982.1(参照することにより本明細書の一部を成す)を含む。
【0132】
幾つかの設定では、例えば、sc抗体の結合価を増加させるため、本発明のタンパク質融合複合体又はコンジュゲート複合体を多価にすることが有用な可能性がある。特に、融合タンパク質複合体のIL-15及びIL-15Rαドメイン間の相互作用は、多価複合体を生成する手段を提供する。さらに、例えば、標準的なビオチン-ストレプトアビジン標識技術を使用して、又はラテックスビーズ等の適切な固体支持体に複合化させて、1つのタンパク質と4つのタンパク質(異同を問わない)の間を共有結合的又は非共有結合的に共に連結することにより、多価の融合タンパク質を作製することができる。化学的架橋タンパク質(例えば、デンドリマーに対する架橋)もまた好適な多価の種である。例えば、タンパク質は、ビオチン化BirAタグの等の修飾可能なタグ配列、又はCys又はHis等の化学反応性側鎖を有するアミノ酸残基をコードする配列を含めることによって改変され得る。かかるアミノ酸タグ又は化学反応性アミノ酸を、融合タンパク質中の様々な位置、好ましくは生物学的に活性なポリペプチド又はエフェクター分子の活性部位から離れた位置に配置してもよい。例えば、可溶性融合タンパク質のC末端を、タグ、又はかかる反応性アミノ酸(複数の場合がある)を含む他の融合タンパク質に共有結合させることができる。2以上の融合タンパク質を、好適なデンドリマー又は他のナノ粒子に化学的に結合させて多価性分子を得るために、好適な側鎖を含めることができる。デンドリマーは、その表面の数ある様々な官能基のいずれかを有することができる、合成化学ポリマーである(D.Tomalia,Aldrichimica Acta,26:91:101(1993))。本発明よる使用に対する例示的なデンドリマーとして、例えばE9スターバーストポリアミンデンドリマー及びE9コンバスト(combust)ポリアミンデンドリマーが挙げられ、これらは、システイン残基を結合することができる。例示的なナノ粒子として、リポソーム、コア-シェル粒子又はPLGA系粒子が挙げられる。
【0133】
別の態様では、融合タンパク質複合体の1つ又は両方のポリペプチドは免疫グロブリンドメインを含む。代替的には、タンパク質結合ドメイン-IL-15融合タンパク質は、免疫グロブリンドメインに連結され得る。好ましい免疫グロブリンドメインは、他の免疫グロブリンドメインと相互作用して、上に提供されるような多重鎖タンパク質を形成させる領域を含む。例えば、免疫グロブリン重鎖領域(IgG1 C2-C3)は安定して相互作用し、Fc領域を作り出すことができる。また、Fcドメインを含む好ましい免疫グロブリンドメインは、Fc受容体若しくは補体タンパク質の結合活性を含むエフェクター機能及び/又はグリコシル化部位を有する領域も含む。幾つかの態様では、融合タンパク質複合体の免疫グロブリンドメインは、Fc受容体若しくは補体の結合活性、又はグリコシル化若しくは二量体化を減少する又は増大する突然変異を含有することにより、得られるタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼす。例えば、Fc受容体に対する結合を減少する突然変異を含有する免疫グロブリンドメインを使用して、Fc受容体を持つ細胞に対して結合活性のより低い本発明の融合タンパク質を生成することができ、それは特定の抗原を認識又は検出するように設計された試薬に有利な可能性がある。
【0134】
核酸及びベクター
本発明は、本発明の融合タンパク質(例えば、2B8T3Mの成分)をコードする核酸配列、特にDNA配列を提供する。DNA配列は、ファージ、ウイルス、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC、又はエピソーム等の染色体外での複製に適したベクターによって担持されることが好ましい。特に、所望の融合タンパク質をコードするDNAベクターを使用して、本明細書に記載される調製法を促進させることができ、相当量の融合タンパク質を得ることができる。上記DNA配列は、適切な発現ベクター、すなわち、挿入されたタンパク質コーディング配列の転写及び翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入され得る。様々な宿主-ベクター系を利用して、タンパク質コーディング配列を発現させることができる。これらは、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母等の微生物、又はバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNAで形質転換された細菌等を含む。利用する宿主-ベクター系に応じて、多くの好適な転写因子及び翻訳因子のいずれかを使用することができる。上記のSambrook et al.,及びAusubel et al.,を参照されたい。
【0135】
本発明は、可溶性融合タンパク質複合体を作製する方法を含み、該方法は、第1及び第2の融合タンパク質をコードする本明細書に記載されるDNAベクターを宿主細胞に導入すること、融合タンパク質を細胞又は培地中で発現させ、第1の融合タンパク質のIL-15ドメインと、第2の融合タンパク質の可溶性IL-15Rαドメインとの間で会合させて、可溶性融合タンパク質複合体を形成させるのに十分な条件下で、宿主細胞を培地中で培養すること、宿主細胞又は培地から可溶性融合タンパク質複合体を精製することを含む。
【0136】
一般的に、本発明による好ましいDNAベクターは、エフェクター分子をコードする配列に制御可能に連結された、生物学的に活性なポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を導入するための第1のクローニング部位を5’から3’の方向に含む、ホスホジエステル結合によって連結されるヌクレオチド配列を含む。
【0137】
DNAベクターによってコードされる融合タンパク質成分を、カセット形式で提供することができる。「カセット」の用語は、標準的な組み換え方法によって、角成分を別の成分に容易に置換することができることを意味する。特に、コードされた融合複合体を、血清型を生じさせる能力を有する可能性がある又はその能力を有する病原体に対して使用する場合には、カセット形式で設計されたDNAベクターが特に望ましい。
【0138】
融合タンパク質複合体をコードするベクターを作製するため、好適なリガーゼを使用して、生物学的に活性なポリペプチドをコードする配列を、エフェクターペプチドをコードする配列に連結させる。好適な細胞株等の天然の供給源からDNAを単離するか、又は既知の合成方法、例えばリン酸トリエステル法によって、提示ペプチドをコードするDNAを得ることができる。例えば、Oligonucleotide Synthesis,IRL Press(M.J.Gait,ed.,1984)を参照されたい。また、合成オリゴヌクレオチドは、商業的に入手可能な自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製され得る。生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子は、一旦単離されると、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当該技術分野において知られている他の手段によって増幅され得る。生物学的に活性なポリペプチド遺伝子を増幅するための好適なPCRプライマーは、PCR産物に制限酵素認識部位を付加し得る。PCR産物は、エフェクターペプチドのスプライス部位、及び生物学的に活性なポリペプチド-エフェクター融合タンパク質を適正に発現し、分泌するのに必要なリーダー配列を含むことが好ましい。また、PCR産物は、リンカー配列をコードする配列、又はかかる配列をライゲーションするための制限酵素部位を含むことが好ましい。
【0139】
本明細書に記載される融合タンパク質は、好ましくは、標準的な組み換えDNA技術によって産生される。例えば、一旦、生物学的に活性なポリペプチドをコードするDNA分子が単離されれば、エフェクターポリペプチドをコードする別のDNA分子に配列をライゲートすることができる。生物学的に活性なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、直接エフェクターペプチドをコードするDNA配列につながれてもよく、より典型的には、本明細書で検討されるリンカー配列をコードするDNA配列が生物学的に活性なポリペプチドをコードする配列とエフェクターペプチドをコードする配列との間に置かれて、好適なライゲースを使用して接合されてもよい。得られるハイブリッドDNA分子は、好適な宿主細胞において発現されて、融合タンパク質複合体を産生し得る。DNA分子は、ライゲーションの後にコードされるポリペプチドの翻訳フレームが変更されないように、5’から3’の方向で互いにライゲートされる(すなわち、DNA分子が互いにインフレームでライゲートされる)。得られるDNA分子はインフレームの融合タンパク質をコードする。
【0140】
また他のヌクレオチド配列を、遺伝子コンストラクトに含むことができる。例えば、エフェクターペプチドに融合された生物学的に活性なポリペプチドをコードする配列の発現を制御するプロモーター配列、又は細胞表面又は培養培地に対して融合タンパク質を先導するリーダー配列をコンストラクトに含めるか、又はそれらはコンストラクトが挿入される発現ベクター中に存在してもよい。免疫グロブリン又はCMVのプロモーターが特に好ましい。
【0141】
生物学上活性な変異体ポリペプチド、IL-15、IL-15Rα又はFcドメインのコーディング配列を得る際、当業者は、ポリペプチドが、生物学的活性を喪失又は減少することなく、特定のアミノ酸置換、付加、欠失、及び翻訳後飾によって改変され得ることを認識する。特に、保存的アミノ酸置換、すなわち、同様のサイズ、電荷、極性及び構造の別のアミノ酸に対する1個のアミノ酸の置換は、恐らく著しくタンパク質機能を変更しないことがよく知られている。タンパク質の構成要素である20種の標準的なアミノ酸は、以下の4つの群の保存的アミノ酸に大まかに分類される:非極性(疎水性)群は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンを含む;極性(非荷電、中性)群は、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン及びチロシンを含む;正に帯電した(塩基性)群は、アルギニン、ヒスチジン及びリジンを含む;及び、負帯電した(酸性)群は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。タンパク質において同じ群内の別のアミノ酸への1個のアミノ酸置換は、恐らくタンパク質の生物学的活性に有害な作用を有しない。他の例では、アミノ酸位置への修飾を行って、タンパク質の生物学的活性を減少させる又は増強することができる。かかる変化は、無作為に導入され得るか、又は標的とされる残基(複数の場合がある)の既知の若しくは推定される構造的又は機能的な特性に基づく部位特異的な突然変異導入によって導入され得る。変異体タンパク質の発現に続いて、結合又は機能性アッセイを使用して、改変に起因する生物学的活性の変化が容易に評価され得る。
【0142】
ヌクレオチド配列間の相同性は、DNAハイブリダイゼーション分析によって特定され、ここで、二本鎖DNAハイブリッドの安定性は、生じる塩基対合の程度に依存する。高温及び/又は低塩含有量の条件は、ハイブリッドの安定性を減少し、選択される程度よりも低い相同性を有する配列のアニーリングを防止するため変化され得る。例えば、約55%のG-C含有量を有する配列に対して、40℃~50℃、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウムバッファー)及び0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、約60%~70の相同性を示し、50℃~65℃、1×SSC及び0.1%SDSのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、約82%~97%の相同性を示し、52℃、0.1×SSC及び0.1%SDSのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は約99%~100%の相同性を示す。また、ヌクレオチド及びアミノ酸の配列を比較するため(及び相同性の程度を測定するため)の幅広いコンピュータープログラムが利用可能であり、商業的に入手可能、及び無料の両方のソフトウェアの供給元を提供する一覧はAusubel et al.(1999)に見られる。容易に入手可能な配列比較及び多重配列アラインメントアルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,1997)及びClustalWプログラムである。BLASTは、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.govで利用可能であり、ClustalWは2.ebi.ac.uk.で利用可能である。
【0143】
融合タンパク質の成分は、それぞれがその意図される機能を実施することができる限り、ほぼ任意の順番で体系化され得る。例えば、或る1つの実施形態では、生物学的に活性なポリペプチドは、エフェクター分子のC末端又はN末端に位置する。
【0144】
本発明の好ましいエフェクター分子は、それらのドメインに対して意図される機能に貢献するサイズを有する。本発明のエフェクター分子は、よく知られている化学的架橋法を含む様々な方法によって作製され、生物学的に活性なポリペプチドに対して融合され得る。例えば、Chemical Modification of Proteins,Holden-DayのMeans,G.E.and Feeney,R.E.(1974)を参照されたい。また、Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking,CRC PressのS.S.Wong(1991)も参照されたい。しかしながら、一般的には、インフレーム融合タンパク質を作製するための組み換え操作を使用することが好ましい。
【0145】
上に述べたように、本発明によれば、融合分子又は共役分子は、幾つかの方法で体系化され得る。例示的な立体配置では、生物学的に活性なポリペプチドのC末端は、エフェクター分子のN末端に制御可能に連結される。所望の場合、その連結は、組み換え法によって達成され得る。しかしながら、別の立体配置では、生物学的に活性なポリペプチドのN末端はエフェクター分子のC末端に連結される。
【0146】
代替的には、又はさらには、1以上の追加のエフェクター分子が、生物学的に活性なポリペプチドに挿入され得るか、又は必要に応じて複合体に共役され得る。
【0147】
ベクター及び発現
多くの戦略は、本発明の融合タンパク質複合体(例えば2B8T3M)の成分を発現するために使用され得る。例えば、本発明の融合タンパク質複合体の1以上の成分をコードするコンストラクトを、制限酵素を使用してコンストラクトを挿入するための切れ目を作った後にライゲーションして、好適なベクターに組み込むことができる。遺伝子コンストラクトをコードするベクターは、その後、融合タンパク質の発現のため好適な宿主に導入される。概論的には、上記のSambrook et al.を参照されたい。好適なベクターの選択は、クローニングプロトコルに関連する因子に経験的に基づいて行われ得る。例えば、ベクターは、利用される宿主と適合性であり、適切なレプリコンを有していなければならない。また、ベクターは、発現される融合タンパク質複合体をコードするDNA配列を収容することができなければならない。好適な宿主細胞として、真核生物及び原核細胞が挙げられ、好ましくは、容易に形質転換することができ、培養培地において急速な成長を示すことができる細胞が好ましい。具体的には、好ましい宿主細胞として、E.コリ、バチルス・サブチリス等の原核生物、及び動物細胞及び酵母株、例えばS.セレビジエ等の真核生物が挙げられる。哺乳動物は、一般的には好ましく、特にJ558、NSO、SP2-O、又はCHOが好ましい。他の好適な宿主として、例えば、Sf9等の昆虫細胞が挙げられる。従来の培養条件が採用される。上記Sambrookを参照されたい。その後、安定な形質転換又はトランスフェクトされた細胞株を選択することができる。本発明の融合タンパク質複合体を発現する細胞は、既知の手順によって特定され得る。例えば、免疫グロブリンに連結された融合タンパク質の発現は、連結された免疫グロブリンに対して特異的なELISA及び/又は免疫ブロッティングによって判断され得る。IL-15ドメイン又はIL-15Rαドメインに連結された生物学的に活性なポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を検出するための他の方法は、実施例に開示される。
【0148】
上に一般的に言及されるように、宿主細胞は、所望の融合タンパク質をコードする核酸を増やすための調製目的で使用され得る。したがって、宿主細胞として、具体的に融合タンパク質の産生が意図される、原核生物又は真核細胞が挙げられる。したがって、宿主細胞として、具体的には、融合体をコードする核酸を増やすことができる、酵母、ハエ、蠕虫、植物、カエル、哺乳動物細の胞及び器官が挙げられる。使用され得る哺乳動物細胞株の非限定的な例として、CHO dhfr細胞(Urlaub and Chasm,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980))、293細胞(Graham et al.,J Gen.Virol.,36:59(1977))、又はSP2若しくはNSOのような骨髄腫細胞(Galfre and Milstein,Meth.Enzymol.,73(B):3(1981))が挙げられる。
【0149】
所望の融合タンパク質複合体(protein comples)をコードする核酸を増やすことができる宿主細胞は、昆虫(例えばSp.フルギペルダ)、酵母(Fleer,R.,Current Opinion in Biotechnology,3(5):486496(1992)によって概論的に再検討されるように、例えば、S.セレビジエ、S.ポンべ、P.パトリス、K.ラクティス、H.ポリモルファ)、真菌細胞及び植物細胞を含めて、同様に非哺乳動物真核細胞を包含するまた、E.コリ及びバチルス等の特定の原核生物が意図される。
【0150】
所望の融合タンパク質をコードする核酸は、細胞をトランスフェクトする標準的な技術によって宿主細胞へと導入され得る「トランスフェクトする」又は「トランスフェクション」の用語は、リン酸カルシウム共沈、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、ウイルス形質導入及び/又は統合を含む、核酸を宿主細胞に導入するための全ての従来技術を包含することが意図される。宿主細胞をトランスフェクトする好適な方法は、上記のSambrook et al.及び他の実験室用の教科書に見ることができる。
【0151】
様々なプロモーター(転写開始制御領域)が本発明により使用され得る。適切なプロモーターの選択は、提案される発現宿主に依存する。異種性の供給源に由来するプロモーターは、それらが選択される宿主において機能的である限り、使用され得る。
【0152】
また、プロモーター選択は、ペプチド又はタンパク質の産生の所望の効率及びレベルに依存する。tac等の誘導性プロモーターは、E.コリにおいてタンパク質発現のレベルを劇的に増加させるためにしばしば使用される。タンパク質の過剰発現は宿主細胞に有害な場合がある。結果的に、宿主細胞生育が制限される可能性がある。誘導性プロモーターシステムの使用は、宿主細胞が遺伝子発現の誘導に先立って許容可能な密度で培養されることを可能にし、その結果、より高い生成物の収率を促進する。
【0153】
様々なシグナル配列は、本発明に従って使用され得る。生物学的に活性なポリペプチドコーディング配列に相同性のシグナル配列が使用され得る。代替的には、発現宿主における効率的な分泌及びプロセッシングのため選択されるか又は設計されるシグナル配列も使用され得る。例えば、好適なシグナル配列/宿主細胞対は、B.サブチリスにおける分泌に対するB.サブチリスsacBシグナル配列、及びサッカロミセス・セレビシエのα-接合因子、又はP.パトリス分泌に対するP.パトリス酸性ホスファターゼpohIシグナル配列を含む。シグナル配列は、シグナルペプチターゼ切断部位をコードする配列によって、又はブリッジが下流のTCR配列の正確なリーディングフレームを保証する、通常10個よりも少ないコドンからなる短いヌクレオチドブリッジによってタンパク質コーディング配列へ直接連結され得る。
【0154】
転写及び翻訳を増強する要素は、真核生物のタンパク質発現系において同定されている。例えば、異種性プロモーターのいずれかの側にカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター1000 bpを配置することは、植物細胞で10倍~400倍、転写のレベルを上昇させ得る。また、発現コンストラクトは、適切な翻訳開始配列を含まなければならない。正確な翻訳開始のため発現コンストラクトがKozakコンセンサス配列を含むように改変することは、翻訳のレベルを10倍増加し得る。
【0155】
マーカーが目的の遺伝子と異なる部位で統合し得るように、選択マーカーがしばしば使用され、該選択マーカーは発現コンストラクトの一部であってもよく、又はそれから分離され得る(例えば、発現ベクターによって運ばれる)。例は、抗生物質耐性を与えるマーカー、(例えば、blaは、E.コリ宿主細胞に対してアンピシリンに対する抵抗を与え、nptIIは、多様な原核生物及び真核細胞に対するカナマイシン抵抗を与える)、又は宿主が最少培地上で成長することを可能にするマーカーが挙げられる。(例えば、HIS4はP.パトリス又はHisS.セレビジエがヒスチジン不在下で成長することを可能とする)。選択性マーカーは、独立した該マーカーの発現を可能とするため、それ自身の転写及び翻訳の開始領域、並びに終了調節領域を有する。抗生物質耐性がマーカーとして使用される場合、選択に対する抗生物質の濃度は、抗生物質に応じて変化し、一般的には、培地1mL当たり10μg~600μgの抗生物質の範囲である。
【0156】
発現コンストラクトは、既知の組み換えDNA技術(Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1999)を利用することによって構築される。制限酵素消化及びライゲーションは、DNAの2つのフラグメントを連結するために使用される基本的な工程である。DNA断片の端部はライゲーションに先立って修飾を必要とする場合があり、これは、オーバーハングの充填により、ヌクレアーゼ(例えばExoIII)によりフラグメント末端部分を欠失させることにより、部位特異的突然変異誘発によって、又は、PCRによる新たな塩基対の付加によって遂行され得る。ポリリンカー及びアダプターは、選択されたフラグメントの接合を促進するために使用され得る。発現コンストラクトは、典型的には、E.コリの制限、ライゲーション及び形質転換の繰り返しを使用する段階で構築される。発現コンストラクトの構築に適した多数のクローニングベクターが当該技術分野で知られており(λZAP及びpBLUESCRIPT SK-1、カリフォルニア州ラホヤのStratagene、pET、ウィスコンシン州マディソンのNovagen Inc.、Ausubel et al.,1999に引用される)、特定の選択は本発明とって重大ではない。クローニングベクターの選択は、宿主細胞への発現コンストラクトの導入について選択された遺伝子導入システムによって影響を受ける。各段階の終わりに、得られたコンストラクトを制限、DNA配列、ハイブリダイゼーション及びPCRデンシメトリー分析によって分析してもよい。
【0157】
発現コンストラクトは、直鎖若しくは環状のいずれかのクローニングベクターコンストラクトとして宿主に形質転換され得るか、又はクローニングベクターから除去され得て、そのまま若しくは送達ベクターに導入されて使用され得る。送達ベクターが、選択された宿主細胞型において発現コンストラクトの導入及び維持を促進する。発現コンストラクトは、多くの既知の遺伝子導入システム(例えば天然コンピテンス、化学的に媒介される形質転換、プロトプラスト形質転換、電気穿孔、微粒子銃形質転換、トランスフェクション、又は接合)によって宿主細胞に導入される(Ausubel et al.,1999;Sambrook et al.,1989)。選択された遺伝子導入システムは、使用される宿主細胞及びベクター系に依存する。
【0158】
例えば、発現コンストラクトは、プロトプラスト形質転換又は電気穿孔によってS.セレビジエ細胞へと導入され得る。S.セレビジエの電気穿孔は容易に遂行され、スフェロプラスト形質転換に匹敵する形質転換率をもたらす。
【0159】
本発明は、目的の融合タンパク質を単離する生産プロセスをさらに提供する。上記プロセスでは、調節配列に制御可能に連結された目的のタンパク質をコードする核酸が導入された宿主細胞(例えば酵母、菌類、昆虫、細菌又は動物の細胞)を、培養培地において生産規模で成長させて、目的の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写を刺激する。その後、目的の融合タンパク質を採取した宿主細胞又は培養培地から単離する。標準的なタンパク質精製技術は、培地又は採取された細胞から目的のタンパク質を単離するために使用され得る。特に、精製技術は、ローラーボトル、スピナーフラスコ、組織培養プレート、バイオリアクター又は発酵槽を含む、様々な実施により大規模に所望の(すなわち少なくともミリグラム量で)融合タンパク質を発現させ、精製するために使用することができる。
【0160】
発現されたタンパク質融合複合体は、既知の方法によって単離し、精製され得る。典型的に、培養培地は遠心分離機又は濾過され、次いで、上清を親和性又は免疫親和性クロマトグラフィー、例えばプロテインA若しくはプロテインG親和性クロマトグラフィー、又は発現された融合複合体を結合するモノクローナル抗体の使用を含む免疫親和性プロトコルによって精製する。本発明の融合タンパク質は、既知の技術の適切な組み合わせによって分離され、精製され得る。これらの方法として、例えば、塩沈澱及び溶媒沈澱等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過及びSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等の分子量の差を利用する方法、イオン交換カラムクロマトグラフィー等の電荷の差を利用する方法、親和性クロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、及び等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法、Ni-NTA等の金属アフィニティーカラムが挙げられる。これらの方法に関する開示について、全般的には、上記のSambrook et al.及びAusubel et al.を参照されたい。
【0161】
本発明の融合タンパク質は、実質的に純粋であることが好ましい。すなわち、融合タンパク質は、天然にそれ付随する細胞置換物質(cell substituents)から単離され、したがって、融合タンパク質は、好ましくは少なくとも80%、又は90%~95%の均一性(重量/重量)で存在する。少なくとも98~99%の均一性(重量/重量)を有する融合タンパク質は、多くの医薬、臨床的及び研究の用途に対して最も好ましい。一旦、融合タンパク質が実質的に精製された場合、治療適用に対して汚染物質を実質的に含んではならない。一旦、部分的に又は本質的な純度に精製されたならば、可溶性タンパク質は治療に使用され得るか、又は本明細書に開示されるin vitro若しくはin vivoでの実施に使用され得る。実質的な純度は、クロマトグラフィー及びゲル電気泳動等の様々な標準的な技術によって特定され得る。
【0162】
本発明の融合タンパク質複合体は、癌性の若しくは感染した様々な細胞、又は1以上の疾患に感染するようになり得る細胞を用いるin vitro又はin vivoでの使用に適している。
【0163】
ヒトインターロイキン15(huIL-15)は、抗原提示細胞上に発現されたヒトIL-15受容体α連鎖(huIL-15Rα)によって免疫エフェクター細胞に対してトランス提示される。主として、IL-15Rαは、細胞外sushiドメイン(huIL-15RαSu)により、高い親和性(38pM)でhuIL-15を結合する。本明細書に記載されるように、huIL-15ドメイン及びhuIL-15RαSuドメインはマルチドメイン融合複合体を構築するためのスキャフォルドとして使用され得る。
【0164】
IgGドメイン、特にFcフラグメントは、承認された生物学的薬物を含む、多くの治療用分子に対する二量体のスキャフォルドとしての使用に成功した。例えば、エタネルセプトは、ヒトIgG1のFcドメインに連結された可溶性ヒトp75腫瘍壊死因子(TNF-α)受容体(sTNFR)の二量体である。この二量体化は、エタネルセプトが、単量体TNFRよりもTNF-α活性の阻害において最大1000倍強力となることを可能にし、単量体形態よりも5倍長い結成半減期を有する融合体を提供する。結果として、エタネルセプトは、in vivoでのTNF-αの炎症促進活性の中和に有効であり、多くの異なる自己免疫適用症に対する患者のアウトカムを改善する。
【0165】
また、その二量体化活性に加えて、Fcフラグメントは、補体活性化及びナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、食細胞及び樹状細胞上に提示されたFcγ受容体都の相互作用により、細胞傷害性エフェクター機能を提供する。抗癌治療用抗体及び他の抗体ドメインFc融合タンパク質に関して、これらの活性は、動物腫瘍モデル及び癌患者において観察される効能に重要な役割を果たす可能性がある。しかしながら、これらの細胞傷害性エフェクター応答は、多くの治療的用途において十分でない可能性がある。したがって、Fcドメインのエフェクター活性に対する改善及び拡大、並びに標的化治療分子による疾患部位に対して、T細胞活性を含む細胞溶解性免疫応答を誘引する他の手段の開発において相当な関心があった。従来のハイブリドーマ融合技術によって生成された製品の質及び量を改善するため、二重特異性抗体を形成するためにIgGドメインをスキャフォルドとして使用した。これらの方法は他のスキャフォルドの欠点を回避するが、臨床的開発及び使用を支持するのに十分なレベルに哺乳動物細胞において二重特異性抗体を産生するのは困難であった。
【0166】
ヒト由来免疫賦活性多量体スキャフォルドを開発しようとして、ヒトIL-15(huIL-15)及びIL-15受容体ドメインを使用した。huIL-15は、高い結合親和性(平衡解離定数(KD)約10-11M)でhuIL-15受容体α鎖(huIL-15Rα)と会合する、サイトカインの小さな4つのαヘリックスバンドルファミリーのメンバーである。得られた複合体は、その後、T細胞及びNK細胞の表面に提示されたヒトIL-2/15受容体β/コモンγ鎖(huIL-15RβγC)複合体にトランス提示される。このサイトカイン/受容体相互作用は、エフェクター細胞及びNK細胞の拡大をもたらし、それは、ウイルス感染細胞及び悪性細胞を根絶するのに重要な役割を果たす。通常は、huIL-15及びhuIL-15Rαは樹状細胞において同時生産されて、その後、分泌され、細胞表面上でヘテロ二量体分子として提示される複合体を細胞内で形成する。したがって、huIL-15とhuIL-15Rαの相互作用の特徴は、これらの鎖間結合ドメインが、ヒト由来免疫賦活性スキャフォルドとしてはたらき、標的特異的結合が可能な可溶性二量体分子を作製することを示唆した。
【0167】
以下に詳細に記載されるように、2B8T3Mを作製するため、huIL-15:huIL-15RαSu-系スキャフォルドを使用した。二量体融合タンパク質複合体は、それらのhuIL-15ドメイン及び結合ドメインの免疫賦活性及び標的特異性の生物学的活性を保持し、huIL-15及びhuIL-15Rαの付加が融合ドメインの空間的配置を著しく変更せず、サイトカイン活性に影響を与えずに、適切な程度の構造的柔軟性を提供したことを示した。したがって、分子の全体的な結合親和性を増加させるため、2B8T3M等の多価融合複合体を形成するためにこのスキャフォルドを使用することができる可能性がある。可溶性融合タンパク質は、組み換えCHO細胞培養において比較的高いレベルで産生され(広範囲な細胞株スクリーニング又は最適化をせずに、細胞培養上清中、1リットル当たりのmg)、細胞培養上清から容易に精製することができた。
【0168】
本発明の実施は、別段の指定がない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を利用し、それらは当業者の理解範囲に含まれる。かかる技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)等の文献に十分に説明される。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生に適用可能であり、それら自体が、本発明の作製及び実施において考慮され得る。特に、特定の実施形態に対して有用な技術は、以下の欄で検討される。
【0169】
以下の実施例は、当業者に対して、本発明のアッセイ、スクリーニング、及び治療方法をどのようにして作製し、使用するかの完全な開示及び説明を提供するように述べられ、本発明者らが彼らの発明であるとする範囲を限定することを意図するものではない。
【0170】
リンパ腫
リンパ腫は、Bリンパ球又はTリンパ球が正常細胞より速く分割するか、意図されるより長く生きている場合に生じる血液癌の一種である。例えば、B細胞リンパ腫はホジキンリンパ腫及びほとんどの非ホジキンリンパ腫の両方を含む。B細胞性リンパ腫はCD20を発現する。
【0171】
リンパ腫は、リンパ節、脾臓、骨髄、血液又は他の臓器において発症し得る。これらの悪性細胞は、リンパ節の肥大、すなわち、リンパ球系細胞の固形腫瘍を提示するリンパ節からしばしば始まる。リンパ腫は、リンパ節生検、リンパ節の部分的又は全部の切除により、顕微鏡下で検査されて、確定診断される。この検査は、リンパ腫を示す可能性がある組織病理学の特徴を明らかにし得る。治療は化学療法、放射線療法及び/又は骨髄移植を含み得る。
【実施例
【0172】
実施例1:T3融合タンパク質の作製及び精製
以下に詳細に記載されるように、抗CD3 scAb/huIL-15N72D及び抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fcを含むタンパク質複合体を作製した。この複合体は、抗CD20 scAbドメインによってB細胞リンパ腫を認識し、IL-15活性によってNK細胞及びT細胞の反応を誘導し、抗CD3 scAbドメインによってT細胞応答を活性化し、Fc結合ドメインによってADCC及びCDCを賦活する(図2)。
【0173】
具体的には、単鎖抗ヒトCD3抗体をhuIL-15N72D鎖に連結してコンストラクトを作製した。抗ヒトCD3単鎖抗体(抗CD3 scAb)配列は、可動性リンカーによって連結されたOKT3抗体の重鎖ドメイン及び軽鎖Vドメインのコーディング領域を含む。幾つかの場合では、抗CD3 scAbはhuIL-15N72DのC末端に連結される。他の場合では、抗CD3 scAbはhuIL-15N72DのN末端に連結される。huIL-15N72DのN末端に連結された抗CD3 scAbを含むコンストラクトの核酸及びタンパク質配列を以下に示す。
【0174】
抗CD3 scAb-IL-15N72Dコンストラクト(シグナルペプチド配列及び停止コドンを含む)の核酸配列は、以下の通り(配列番号1)である:
【0175】
(シグナルペプチド)
【0176】
(抗CD3 scAb(OKT3 VLリンカーVH scFv))
【0177】
(リンカー)
【0178】
(ヒトIL-15N72D)
【0179】
抗CD3 scAb-IL-15N72D融合タンパク質(シグナルペプチド配列を含む)のアミノ酸配列は、以下の通り(配列番号2)である:
【0180】
(シグナルペプチド)
【0181】
(抗CD3 scAb(OKT3 VLリンカーVH scFv))
【0182】
(リンカー)
【0183】
(ヒトIL-15N72D)
【0184】
上記配列を、以前(米国特許第8,507,222号、実施例1及び2、参照することにより本明細書の一部を成す)に記載される発現ベクターへとクローニングし、発現ベクターをCHO細胞に形質導入した。また、細胞を抗抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fcコンストラクトを発現するベクターで形質導入した(米国特許第8,507,222号、実施例18、参照することにより本明細書の一部を成す)。
【0185】
抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fcコンストラクト(リーダー配列を含む)の核酸配列は、以下の通り(配列番号3)である:
【0186】
(リーダー配列)
【0187】
(抗CD20軽鎖Vドメイン)
【0188】
(リンカー)
【0189】
(抗CD20重鎖Vドメイン)
【0190】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【0191】
(ヒトIgG1 C2-C3(Fc)ドメイン)
【0192】
成熟抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc融合タンパク質(リーダー配列を含む)のアミノ酸配列は、以下の通り(配列番号4)である:
【0193】
(抗CD20軽鎖Vドメイン)
【0194】
(リンカー)
【0195】
(抗CD20重鎖Vドメイン)
【0196】
(ヒトIL-15Rαsushiドメイン)
【0197】
(ヒトIgG1 C2-C3(Fc)ドメイン)
【0198】
例示的なIL-15N72Dアミノ酸配列(リーダーペプチドを含む)を以下に提供する(配列番号5):
【0199】
(リーダーペプチド)
【0200】
(IL-15N72D)
【0201】
幾つかの場合、リーダーペプチドは成熟IL-15N72Dポリペプチドから切断される。
【0202】
例示的なIL-15RαSu/Fcアミノ酸配列(リーダーペプチドを含む)を以下に提供する(配列番号6):
【0203】
(リーダーペプチド)
【0204】
(IL-15RαSu)
【0205】
(IgG1 CH2-CH3(Fcドメイン))
【0206】
幾つかの場合、成熟IL-15RαSu/Fcタンパク質はリーダー配列を欠く。
【0207】
CHO細胞における2つのコンストラクトの共発現は、プロテインA親和性クロマトグラフィーを使用してCHO細胞培養上清から精製された可溶性抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc複合体(抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M;2B8T3Mと称される)の形成及び分泌を可能とした。精製されたタンパク質のSDS-PAGE分析を図3に示す。約60kDa及び約40kDaにおいて可溶性抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc抗CD3 scAb/huIL-15N72Dのタンパク質にそれぞれ対応するバンドが観察された。
【0208】
実施例2:T3分子の結合活性のin vitro特性評価
ELISAに基づく方法は、抗CD3 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc複合体の形成を確認した。或る1つの例では、上記融合タンパク質複合体は、捕捉抗体、抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)、及び検出抗体であるビオチン化抗ヒトIL-15抗体(BAM 247、R&D Systems)を用いるhuIgG1/huIL-15特異的ELISAを使用して検出された。
【0209】
さらに、Fc受容体、IL-15βγ受容体、CD3及びCD20に対する複合体の結合は、受容体を持つ細胞を使用するフローサイトメトリーによって評価された。これらの研究では、Fc受容体陽性U937及びIL-15Rβγ-陽性32Dβ細胞(5×10細胞/試験)を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識化抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M(100μL中の4μg/試験)で染色した。図3に示されるように、フローサイトメトリー分析は、抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M複合体(2B8T3M)のU937細胞及び32Dβ細胞への結合を実証した。この結合の特異性を、Fcドメイン(抗CD20Ab:リツキシマブ)、又はIL-15ドメイン(IL-15N72D/IL-15R-Fc:ALT-803)を含有する非標識化ブロッキング試薬(80μg/試験)を細胞染色アッセイに添加することによって試験した(図3)。「ALT-803」によって二量体IL-15RαSu/Fc融合タンパク質に非共有結合的に会合したIL-15N72Dを含む複合体を意味し、ここで、その複合体は免疫賦活活性を示す(例えば、参照することにより本明細書の一部を成す。米国特許出願第13/769,179号を参照されたい)。これらの試薬は、Fc受容体陽性U937及びIL-15Rβγ-陽性32Dβ細胞のFITC-2B8T3M特異的染色を減少した(図4)。
【0210】
上記複合体が受容体を持つヒト末梢血単核細胞(PBMC)を結合し得るかどうかを次に判定した。ヒトPBMC(5×10細胞/試験)をブロッキング試薬(50μg/試験):CD20結合を阻止するリツキサン、CD3結合を阻止するcOKT3(キメラOKT3 Ab)、及びIL-15受容体結合を阻止するALT-803を含む及び含まないFITC標識化2B8T3M(140μL中の2μg/試験)で染色した。適切な抗体による染色は、PBMC集団において、CD20を持つHLA-DRB細胞、CD3を持つCD8T細胞及びIL-15Rを持つCD16NK細胞を同定した。各場合において、これらの細胞に対するFITC標識化2B8T3M複合体による特異的結合は、陽性染色及びブロッキング試薬による阻害によって観察された(図5)。
【0211】
実施例3:T3Mの生物学的活性の特性評価
IL-15Rβγ陽性32Dβ細胞の増殖に基づくIL-15生理活性アッセイを、抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M複合体(2B8T3M)を用いて行った。1×10細胞/ウェルのIL-15依存性細胞を、量が増加する2B8T3Mを含有する200μLのRPMI:10%FBS培地において37℃でインキュベートした。3日後、WST-1(水溶性テトラゾリウム塩)増殖試薬(10μL/ウェル)を添加した。4時間後、450nmで吸光度を測定し、代謝的に活性な細胞によるWST-1の可溶性ホルムアザン色素への切断に基づいて細胞増殖を判断した。ALT-803及び抗CD20 scAb T2M複合体(2B8T2M)の生理活性を陽性対照として評価した。「2B8T2M」によって、可溶性抗CD20 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc複合体を意味する(例えば、参照することにより本明細書の一部を成す米国特許第8,507,222号を参照されたい)。図6に示されるように、2B8T3Mは32Dβ細胞の細胞増殖を促進するでき、それによりIL-15活性を実証する。2B8T3Mの活性は、恐らくIL-15N72Dドメインへの抗CD3 scAbの結合に起因して2B8T2Mの活性よりわずかに低かったが、ALT-803の活性よりも著しく低かった。
【0212】
実施例4:T3M複合体の抗腫瘍活性
抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M複合体が、CD3媒介T細胞活性化を介して、CD20腫瘍細胞(Daudi細胞)を死滅させることができるかどうかを次に判定した。ヒト末梢血単核細胞をドナー血液のバフィーコートから単離した。ナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞をナイロンウールカラム上に細胞を通過させることにより濃縮した。CD4及びCD8のT細胞を、MACSカラムを使用する磁気ビーズ分離によって精製した。ヒト免疫エフェクター細胞(1×10細胞/ウェル)をViolet CellTrace標識化Daudi細胞(2×10細胞/ウェル)(E:T=5:1)、及び様々な濃度の抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M複合体と混合した。対照として、CD3認識を欠く、可溶性抗CD20 scAb/huIL-15N72D:抗CD20 scAb/huIL-15RαSu/huIgG1 Fc複合体(抗CD20 scAb T2M)を使用した。37℃でのRPMI-10%FBS培地中の20時間のインキュベーションの後、細胞を採取し、最終濃度10μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。FACSVerse血球計を使用するフローサイトメトリーによって細胞を分析した。Daudi標的細胞をviolet標識化細胞として同定し、死亡した標的細胞はviolet PI染色細胞であった。死亡したDaudi細胞の割合をCD20標的特異的傷害性の尺度として特定した。
【0213】
図7に示されるように、抗CD3 scAb-抗-CD20 scAb T3M(2B8T3M)複合体、及び抗CD20 scAb T2M(2B8T2M)複合体はいずれも、ヒトPBMC及びT細胞+NK細胞による強力なCD20細胞特異的傷害性を媒介することができた。しかしながら、予想外なことに、2B8T3MはCD8T、また、より低い程度にCD4T細胞を賦活して、2B8T2Mに匹敵するレベルよりも効果的にDaudi細胞を死滅させることができた。これらの結果は、2B8T3Mが腫瘍細胞に対するCD3陽性T細胞の傷害性を効果的に増強することができることを確認した。
【0214】
これらのヒト免疫細胞-Daudi細胞培養物におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)放出に基づく免疫活性化のレベルをELISAによって判定した。図8に示されるように、予想外に、10nMの2B8T3Mは2B8T2MよりもヒトPBMC、並びにCD4及びCD8のT細胞からより効果的にIFN-γの放出を賦活することができ、CD3結合ドメインを介する免疫細胞の活性化を実証した。
【0215】
本明細書に提示されるin vitroの結果に基づいて、抗CD20 scAb T3M分子は、標準的な異種移植片腫瘍モデルにおいてヒトリンパ種細胞に対する免疫応答を賦活し、抗腫瘍活性を呈する(例えば、Rossi et al.Blood 2009;114:3864;Gillis et al.Blood.2005;105:3972;及びXuan et al.Blood 2010;115:2864-2871を参照されたい。)
【0216】
scAb又は抗体認識ドメインを含む同様のT3Mコンストラクトは、他のCD抗原、サイトカイン又はケモカイン受容体又はリガンド、成長因子レセプター又はリガンド、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、陽性/陰性の共刺激受容体又はリガンド、細胞死受容体又はリガンド、腫瘍関連抗原、ウイルスにコードされた及び細菌にコードされた抗原、及び細菌特異的抗原に特異的な抗体配列を用いて容易に作製され得る。特に関心があるのはCD4、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD51、CD52、CD70、CD74、CD80、CD123、CD152、CD147、CD221、EGFR、HER-2/neu、HER-1、HER-3、HER-4、CEA、OX40リガンド、cMet、組織因子、Nectin-4、PSA、PSMA、EGFL7、FGFR、IL-6受容体、IGF-1受容体、GD2、CA125、EpCam、細胞死受容体5、MUC1、VEGFR1、VEGFR2、PDGFR、Trail R2、葉酸受容体、アンジオポエチン-2、αvβ3インテグリン受容体、HLA-DR抗原、及び本明細書に記載される他の疾患標的の抗原、に対する疾患特異的結合ドメイン(例えばscAbs)を有するT3Mである。HIV、HCV、HBC、CMV、HTLV、HPV、EBV、RSV及び他のウイルスに由来するウイルス性抗原に対する抗体ドメイン、特にHIVエンベロープスパイク及び/又はgp120及びgp41のエピトープを認識するものにも関心がある。かかる抗体ドメインは、当該技術分野で知られている配列から作製され得るか、又は当該技術分野で知られている様々な供給源(すなわち脊椎動物宿主又は細胞、コンビナトリアルライブラリー、無作為合成ライブラリ又は計算論的モデリング等)から新たに単離される。
【0217】
実施例5:抗体とのALT-803(IL-15スーパーアゴニスト)の新規な融合は、抗原特異的抗腫瘍性反応を実証する
インターロイキン(IL)-15、及びその受容体α(IL-15Rα)は、抗原提示細胞上に共発現され、IL-2Rβγを持つ免疫細胞へのIL-15のトランス提示及びエフェクター免疫応答の賦活を可能とする。IL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)と細胞外のIL-15Rαsushiドメイン(IL-15RαSu)との間の高親和性相互作用は、多価疾患標的化複合体設計に対する機能的スキャフォルドを作り出すのに利用できることが先に報告された。ALT-803としても知られるIL-15N72D:IL-15RαSuFc複合体は、IgG1のFcドメインへIL-15N72D:IL-15RαSuを融合させることにより構築された多量体複合体である。ALT-803は、強力な抗腫瘍免疫治療薬として開発され、臨床試験にあるIL-15スーパーアゴニスト複合体である。腫瘍を治療するモノクローナル抗体であるリツキシマブの4本の単鎖に融合されたALT-803スキャフォルドを使用する、新規な融合分子である2B8T2Mの作製が本明細書に記載される。この分子は、その腫瘍細胞上のCD20分子の認識、免疫エフェクター細胞上に提示されたIL-2Rβγによる賦活、並びにナチュラルキラー(NK)細胞及びマクロファージ上のFcγ受容体に対する結合によって、三重特異的結合活性を示す。2B8T2Mは、NK細胞を活性化して抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を増強し、補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介し、Bリンパ腫細胞のアポトーシスを誘導する。リツキシマブと比較した場合、2B8T2Mは、異種移植片SCIDマウスモデルにおいて著しくより強い抗腫瘍活性を示し、より効率的にカニクイザルにおいてB細胞を枯渇させる。したがって、ALT-803を、多特異性の標的化されたIL-15に基づく免疫治療薬を作り出すため、機能的スキャフォルドとして改変することができ、治療用抗体の抗腫瘍活性及び臨床効果を改善するための新規なプラットフォームとしての役割を果たす可能性がある。
【0218】
4つのヘリックスのコモンγ鎖(γ)サイトカインである、インターロイキン(IL)-15は、ナチュラルキラー(NK)細胞及びCD8T細胞の発生、増殖及び活性化に極めて重要な因子である(1、2)。IL-15は、抗原提示細胞によってそのα鎖受容体(IL-15Rα)と共発現され、その2つのタンパク質は細胞表面上に複合体を形成して、それがIL-2RβγC複合体を持つNK細胞及びT細胞にトランス提示される(2)。IL-15は高い親和性でIL-15Rαに結合し、IL-15Rαは、シャペロン及び立体配座安定化物質として機能して、IL-15とIL-2Rβγの間の相互作用を増強する(2)。IL-15変異体は、アミノ酸72においてアスパラギンのアスパラギン酸への突然変異を持つと同定され(N72D)、免疫細胞上のIL-2Rβγに優れた結合、及び免疫賦活性活性の増加を示す(3)。先の研究は、このIL-15変異体が、IgG1 Fcと融合した可溶性IL-15Rαsushiドメインと会合すると(IL-15RαSuFc)、二量体複合体IL-15N72D:IL-15RαSuFcを形成することができ(ALT-803と示される)、また該二量体複合体は、天然IL-15と比較して、IL-2Rβγ複合体に対する結合活性の増加、NK細胞及びT細胞を賦活する能力の増強を示し、より長い生物学的半減期を有する(4)。様々な動物モデルにおいて、ALT-803は、免疫系の強力な免疫部活物質として作用する。免疫系の固有の及び養子のアームを同時に活性化して、新生物チャレンジに対して迅速且つ長期間持続する両方の保護応答を誘発することができる(5)。さらに、チェックポイント遮断又は治療用抗体と組み合わせたALT-803は、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍負荷の減少及び生存の延長に有効である(6、7)。ALT-803に基づく分子を疾患との戦いにおいてより特異的でより効率的にするため、ALT-803を、それをIL-15N72Dタンパク質及びIL-15RαSuFcタンパク質のN末端で単鎖抗体(scFv)と遺伝学的に融合することにより、標的化免疫治療薬に変換した。この研究では、抗CD20 scFvを標的認識ドメインとして使用して、ALT-803が疾患標的化免疫賦活性分子を作る多目的で機能的なスキャフォルドであることを実証した。また、この新規な単一の融合タンパク質アプローチは、抗CD20治療用抗体、リツキシマブの抗体依存細胞性細胞毒素(ADCC)及びアポトーシス機能を改善することが分かった。
【0219】
IL-15:IL-15Rαスキャフォルドを使用する多機能タンパク質複合体の作製
生物学的に活性な融合タンパク質複合体は、IL-15タンパク質及びIL-15RαSuタンパク質のN末端をp53(264-272)特異的キメラ単鎖TCR(c264scTCR)に融合させることにより、IL-15:IL-15RαSuスキャフォルドを使用して生成され得ることが以前に示された(8)。したがって、ALT-803(すなわち、IL-15N72D:IL-15RαSuFc複合体)がタンパク質スキャフォルドとして機能して、多重特異性IL-15系標的化免疫治療剤を作り出すことができたと仮定された。これを試験するため、リツキシマブの重鎖及び軽鎖の可変領域をscFvに変換し(sc2B8)(9)、ALT-803のIL-15N72Dタンパク質及びIL-15RαSuFcタンパク質のN末端にsc2B8を遺伝学的に融合した。IL-15N72DドメインとIL-15RαSuドメインの間の高い結合親和性に基づいて、融合タンパク質は、sc2B8-IL-15N72Dとsc2B8-IL-15RαSuFcの間ヘテロ二量体複合体を形成し得ると予想された。さらに、sc2B8-IL-15RαSuFcは、Fcドメインによって提供されるジスルフィド結合を使用して共有結合二量体を形成すると予想された。したがって、この新規な融合タンパク質複合体(2B8T2Mと示す)は、2つのsc2B8-IL-15N72D及び2つのsc2B8-IL-15RαSuFcのタンパク質からなると予想された(図9A)。CHO細胞への融合タンパク質発現ベクターの安定した同時トランスフェクションの後、可溶性2B8T2Mが容易に産生され、10mg/リットル~40mg/リットルの範囲で細胞培養上清から精製された。還元SDS-PAGEにより評価した場合、精製された調製物は、約40kDa及び約60kDaで移動した2つのタンパク質からなり(図9B)、それぞれ、sc2B8-IL-15N72Dに対する38kDa及びsc2B8-IL-15RαSuFcに対する59kDaの予想された分子量に対応した。さらに、多量体融合タンパク質複合体の形成はサイズ排除クロマトグラフィーによって確認され、2B8T2Mの分子量がタンパク質サイズ標準に基づいて162kDaであることを示した(図9C)。2B8T2Mに加えて、同様の融合タンパク質複合体は、減少させられたFc受容体結合活性(2B8T2M-LA)を伴う突然変異体Fcドメイン(10)、又はIL-2Rβを結合することができない突然変異体IL-15ドメイン(2B8T2M-D8N)のいずれかを含んで生成された。種々のターゲッティングドメイン(c264scTCR(8))で構成された追加の融合タンパク質複合体(c264T2Mと表示される)は、IL-15N72Dタンパク質及びIL-15RαSuFcタンパク質のN末端に遺伝学的に融合された。2B8T2Mの生物学的活性におけるFc、IL-15N72D及びsc2B8のドメインの役割を特定するため、これらの複合体は対照としての役割を果たした。
【0220】
2B8T2Mは、CD20結合、Fc受容体結合及びIL-15生物学的活性を保持する
CD20結合特性を確認するため、FITC標識化された2B8T2M及びリツキシマブを生成し、ヒトHLA-DR+B細胞を染色するために使用した。結果は、ヒトB細胞が、FITC標識化2B8T2M(図10B)と並んで、FITC標識化リツキシマブ(図10A)を結合することができたことを示した。対照的に、これらの分子に対するCD20特異的結合活性は、非標識化リツキシマブ及び非標識化2B8T2Mによって阻止されたが、非特異的ヒトIgGによっては阻止されなかった。これらの知見は、2B8T2MがリツキシマブのCD20特異的結合活性を保持することを実証する。同様に、その細胞表面上にCD20又はIL-2RβγではなくFc受容体を持つヒト組織球性リンパ腫U937細胞株を使用して、フローサイトメトリーにより2B8T2MのFc受容体結合を評価した。図10Cに示されるように、2B8T2M及びリツキシマブは、いずれもU937細胞に結合することができたのに対し、Fc突然変異体2B8T2M-LA複合体は2B8T2Mに対する結合の減少を示した。
【0221】
先の報告では、scTCR-IL-15N72D及びscTCR-IL-15N72D:scTCR-IL-15RαSuの融合複合体は、IL-15と比較して減少したレベルではあるが、IL-15の生物学的活性を保持することが示された(3、8)。このより低い活性は、融合scTCRドメインとIL-15N72D:IL-2Rβγの相互作用の間の立体障害に起因すると仮定される。2B8T2MのIL-15生物学的活性を評価するため、先に記載されるように(3)、IL-15依存性細胞株32Dβ使用した。結果は、2B8T2Mが32Dβ細胞の増殖を支持したが、天然IL-15又はALT-803と比較して著しく低い活性を示したことを実証した(2B8T2M:EC50=889pM、対IL-15:EC50=34pM、及び対ALT-803:EC50=14pM)。総合すれば、これらの所見は、2B8T2MがリツキシマブのCD20及びFc受容体の結合能力と同様に、IL-15生物学的活性も保持することを実証する。
【0222】
2B8T2Mは、CD20+Bリンパ腫細胞の直接のアポトーシスと同様に補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介することができる
抗CD20抗体は、それらのCD20との別個の複合体を形成し、B細胞に対する種々の機能性活性を媒介する能力に基づいて、I型(リツキシマブ様)及びII型(トシツモマブ様)の2つのクラスに分けられた(10)。B細胞へのI型抗体結合は、再分布及び脂質ラフとへのCD20の密集をもたらし、より強いC1q結合及びCDCの強力な誘導に結び付くが、それは低レベルの直接的な抗体媒介細胞死(すなわち、アポトーシス活性)に過ぎない(10)。対照的に、II型抗体は脂質ラフト中でCD20を安定化しないため、I型抗体と比較して減少したCDCを示すが、これらの抗体はリソソーム細胞死を強力に誘導する。リツキシマブは、より高いCDC活性を示すが、トシツモマブ等のII型抗CD20mAbよりもBリンパ腫細胞のアポトーシスを誘導する能力が低い、I型抗CD20 mAbである(11)。2B8T2Mはリツキシマブと同じ結合ドメインを有し、同様の特性を有すると予想される。これを調べるため、CD20+Daudi細胞に対してCDCを媒介する2B8T2Mの能力を評価した。図11Aに示されるように、2B8T2M(又はIL-15突然変異体2B8T2M-D8N複合体)とインキュベートされた場合、Daudi細胞をヒト補体因子の存在下で溶解した。Fc突然変異体2B8T2M-LA複合体は、2B8T2Mより少ないCDCの活性を示し、それは、このFc突然変異体ドメインを含む抗体に対してより低いCDC活性を示す先の結果に基づいて予想される(10)。したがって、2B8T2MはCDC活性を示したが、リツキシマブよりも低いレベルであった。2B8T2Mのアポトーシス促進活性を評価するため、2B8T2Mを含有する培地中で培養されたDaudi細胞を、Annexin V染色を使用してアポトーシスについて分析した。驚いたことに、0.4nM~10nMの濃度範囲において、2B8T2MがDaudi細胞のアポトーシスの誘導に有効であってことが分かった(図11B)。対照的に、Daudi細胞に対して匹敵するアポトーシス活性を誘導するには、600倍超高い濃度のリツキシマブ(すなわち250nM)が必要であった。また、この活性も、Fc突然変異体2B8T2M-LA及びIL-15突然変異体2B8T2M-D8N複合体で観察されたが(図11B)、c264T2Mでは観察されず、活性はCD20結合に依存性であったことを示した。あわせると、これらの所見は、2B8T2MがI型及びII型のような抗CD20抗体の両方の特徴を呈することを示す。
【0223】
2B8T2Mはリツキシマブと比較して、優れた抗体依存細胞性細胞毒素(ADCC)を示す
I型及びII型のmAbはいずれも、Bリンパ種細胞株に対して効率的なFc依存性ADCCを証明するようにみえる(11)。しかしながら、2B8T2Mは、ALT-803による従来の研究(7)によって支持されるように、IL-15媒介免疫細胞活性化によってこの活性をさらに増大し得る。したがって、CD20+Bリンパ腫細胞に対してADCCを方向付ける2B8T2M及びリツキシマブの能力を比較した。これを評価するために、最初にエフェクター細胞としてヒトPBMCを使用し、Daudi細胞を標的細胞として使用した。図12Aに示されるように、2B8T2Mは、Daudi細胞に対するPBMCによるADCCの誘導において、リツキシマブより著しく有効であった。機能性Fcを含まない他のT2M複合体(2B8T2M-LA)、生物学的に活性なIL-15(2B8T2M-D8N)、又はCD20結合能(c264T2M)を使用することにより、2B8T2Mの増強されたADCC活性は、IL-15N72D突然変異体の活性と同様に(図12A)、一部は、抗CD20及びFc結合ドメインの各々に依存したことがさらに実証された。どの免疫細胞サブセットがADCCにおいて役割を果たすのかを調べるため、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びNK細胞を補完し、同じアッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。予想通り、結果は、NK細胞が、PBMCのADCC活性に対する主な寄与体であるのに対し、CD8+及びCD4+T細胞は小さい或いは無視できるほどの役割を担う(図12B)。さらに、リツキシマブと比較した場合、Daudi細胞に対する全ての細胞サブセットによって、2B8T2Mがより強いADCCを誘導した。
【0224】
ヒト免疫細胞の可能性のある傷害性に対する2B8T2Mの効果をさらに評価するため、ドナーPBMCを2B8T2M及びグランザイムBを含有する培地において言培養し、パーフォリンレベルをフローサイトメトリーによって評価した。2B8T2Mは、NK細胞においてグランザイムB及びパーフォリンの発現を上方制御し(図12C)、CD8+T細胞におけるグランザイムB発現(図12D)は濃度依存的様式であった。CD8+T細胞におけるパーフォリン発現は、200nMの2B8T2Mの添加よりもわずかに高いに過ぎなかった(図12D)。CD4+T細胞によって上方制御されるグランザイムB及びパーフォリンは、無視できるほどであるか、存在しなかった。
【0225】
2B8T2Mの薬物動態及び生体内分布の視覚的及び定量的な尺度
64Cu標識化2B8T2M及び64Cu標識化リツキシマブの全身分布及び薬物動態の視覚的及び定量的な尺度として、連続する非侵入性PETスキャンを使用した。64Cu-IL-15と比較した64Cu標識化ALT-803を投与したマウスの先の生体内分布の研究は、別個の薬物動態学的プロファイルを示し、腎経路による64Cu-IL-15の急速なクリアランスを実証するのに対し、ALT-803クリアランスは肝臓において生じたが、リンパ器官では少なくとも70時間保持された(12)。この研究では、64Cu-NOTA-2B8T2Mは肝胆道経路と腎経路の両方によってマウス身体から除去され、腎臓取り込みは低かった(図13A図13C)。リンパ節における64Cu-NOTA-2B8T2Mの取り込みは、以前に64Cu-NOTA-ALT-803で観察されたもの(12)に匹敵し、それは、これらの融合タンパク質の両方に対する高いIL-15受容体標的化効率を実証した。注射から(p.i.)6時間後に、64Cu-NOTA-2B8T2Mのリンパ節取り込みは、マウスにおけるALT-803(18時間)と比較して相対的により長い循環半減期(184時間)のため(4)、1グラムの組織当たり4.2±0.5パーセントの注射用量(%ID/g)で持続したままであり、注射から70時間後であっても5.3±1.3%ID/gであった。比較のため、64Cu-NOTA-リツキシマブ(rituxmab)は、異なる生体内分布プロファイルを有する64Cu-2B8T2Mより長い血液循環を示した。64Cu-NOTAリツキシマブのリンパ節取り込みはより低かった(注射から6時間後、3.5±0.2%ID/g、及び注射から70時間後、4.1±0.8%ID/g;図13B)のに対し、血液及び筋肉における取り込みはより高かったものの、より高いバックグラウンドシグナルを生成した(図13D図13F)。この結果は、ALT-803タンパク質スキャフォルドが、リンパ組織に対して2B8T2Mを優先的に送達するビヒクルを提供することを示唆する。
【0226】
in vivoでのNK細胞及びCD8+T細胞の増殖は2B8T2Mによって誘導される
先の研究は、ALT-803複合体が、IL-15と比較して、in vivoで著しくより強い免疫細胞賦活を示すことを実証した(4)。ALT-803、IL-15、及び他のT2M複合体とin vivoで比較した2B8T2Mの免疫賦活性活性を評価するためCD3+T細胞及びNK細胞を単離し、CellTrace Violetで標識した。富化された、violet標識化CD3+T細胞及びNK細胞を静脈内でC57BL/6雌性マウスに養子移植し、そのマスをPBS対照、2B8T2M、2B8T2M-LA、2B8T2M-D8N、ALT-803、又はモル等価用量の遊離IL-15のいずれかで移植後2日目に処理した。移植から5日後、マウス脾臓においてviolet陽性細胞をフローサイトメトリーによって評価した。図14Aに示されるように、2B8T2M治療マウスは、IL-15又はPBSで治療したマウスよりも脾臓において有意に高い(p<0.001)割合のCD8+T細胞を示したが、ALT-803治療群よりも有意少ないCD8+T細胞を示した(p<0.001)。2B8T2Mを受けたマウスもまた、IL-15又はPBSで治療したマウスと比較して、脾臓においてより多い割合のNK細胞を示した(p<0.001;図14B)。IL-15又はPBSで治療したマウスと比較して、脾臓におけるCD4+T細胞のパーセンテージは、2B8T2Mで治療したマウスにおいて比較的減少された(図14A)。Fc突然変異体2B8T2M-LAによるマウスの治療は、2B8T2M治療群で見られるように、脾臓における養子移植されたNK細胞及びCD8+細胞の同じパーセンテージの増加を示したのに対し、IL-15突然変異体、2B8T2M-D8Nによる治療は同様の効果を示さなかった。この結果は、IL-15N72Dドメインがこれらの免疫細胞のサブセットにおける変化を担ったことを示した。
【0227】
レシピエントマウスの脾臓におけるドナーCD8+T細胞及びNK細胞の増殖をさらに調べた。図14C及び図14Dに示されるように、2B8T2Mにぃおる治療は、IL-15又はPBSによる治療と比較した養子移植された細胞の増殖の増加をもたらしたが、2B8T2M治療後の増殖は、後のALT-803治療よりも低かった。脾臓の免疫細胞サブセットに対する効果と一致して、Fc突然変異体2B8T2M-LAは2B8T2Mに対して同様の免疫増殖性活性を有したのに対し、IL-15突然変異体、2B8T2M-D8Nによる治療は、養子移植されたリンパ球のわずかなin vivoでの増殖をもたらしたか、増殖がなかった。
【0228】
リツキシマブと比較したSCIDマウスにおけるDaudi Bリンパ腫に対する2B8T2Mの優れた効能
2B8T2M及びリツキシマブの全体的なin vivo抗腫瘍活性を比較するため、Daudi Bリンパ腫/SCIDマウスモデルを使用した。Daudi細胞(1×107)を雌性SCIDマウスに静脈内注射し、接種から15日後、骨髄における腫瘍細胞の存在を、PE複合化抗ヒトHLA-DR抗体を使用するフローサイトメトリーによって確認した(すなわち、2匹のマウスが骨髄において0.5%及び2.8%のDaudi細胞を示した)。残りのDaudi細胞を持つマウスを3群に無作為化し、15日目及び18日目に10mg/kgのリツキシマブ(非ホジキンリンパ腫(NHL)患者に対する臨床用量375mg/m2当量)、5mg/kgの2B8T2M又はビヒクル対照としてのPBSで治療した。後脚麻痺を生存エンドポイントとして本研究に使用した。図15Aに示されるように、PBS、リツキシマブ、及び2B8T2Mで治療されたマウス対するメジアン生存時間治療は、それぞれ、27日間、35日間、及び42日間であった。リツキシマブが、PBS対照群と比較してDaudi細胞を持つマウスの生存を有意に改善した(p=0.001)のに対し、2B8T2M治療はリツキシマブと比較して生存をさらに延長した(p=0.006)、
【0229】
フォローアップの用量応答研究では、Daudiを持つマウスを6群に無作為化し、接種から15日後及び18日後に10mg/kgのリツキシマブ;12.8(10mg/kgのリツキシマブに対してモル当量)、5、1、又は0.2mg/kgの2B8T2M;又はビヒクル対照としてのPBSで治療した。22日目にフローサイトメトリーによって骨髄中のDaudi腫瘍負荷を特定した。図15Bに示されるように、リツキシマブで治療されたマウスの骨髄中のDaudi細胞のパーセンテージは、PBS対照群よりも有意に低かった(p=0.003)。さらに1mg/kg、5mg/kg又は12.8mg/kgの2B8T2Mによるマウスの治療は、リツキシマブ(p<0.01)又はPBS治療群(p<0.001)で観察されたよりも、骨髄中の有意に低いDaudi腫瘍負荷をもたらしたのに対し、骨髄Daudi細胞の同等の減少が0.2mg/kgの2B8T2M及びリツキシマブで治療された群(p=0.24)で見られた。Daudi細胞に加えて、骨髄及び脾臓におけるNK細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって評価した。図15C及び図15Dに示されるように、リツキシマブ及びPBSで治療されたマウスの骨髄においてNK細胞パーのセンテージに差はなかった。しかしながら、全ての用量の2B8T2M治療マウスは、骨髄及び脾臓において、PBS対照マウスと比較して、有意に高い割合のNK細胞を示した(p<0.05)。NK細胞レベルの増加は、2B8T2Mの強力な抗腫瘍活性に対して大きく寄与している可能性がある。NK細胞が2B8T2Mの抗腫瘍活性にとって不可欠かどうか評価するため、同様の動物研究を、SCIDマウスと比較して、NK細胞活性が遺伝的に縮小されているSCID-beigeマウスで行った(図15E)。Daudiを持つSCID-beigeマウスを3つの治療群に無作為化し、10mg/kgのリツキシマブ、5mg/kgの2B8T2M、又はビヒクル対照としてのPBSで治療した。驚いたことに、Daudi細胞のパーセンテージは、対照と比較して、2B8T2M治療マウス及びリツキシマブ治療マウスの骨髄においてなおも有意に低く(p<0.01)、NK細胞が2B8T2M又はリツキシマブの抗腫瘍活性に必須ではないことを示した。これは、2B8T2MがADCCによって抗腫瘍活性を誘導しながら、この融合タンパク質のin vivo抗腫瘍活性はそのアポトーシス効果、及びNK細胞活性が縮小されたマウスにおける腫瘍細胞に対するCDCによって保持されることをさらに示唆する。また、マクロファージ及び好中球も、ADCC及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)機能を示すと知られている(13)。マクロファージ及び好中球がSCIDマウスにおけるこの融合タンパク質の抗腫瘍活性に寄与する可能性がある。さらに、このモデルにおける2B8T2Mの効能がDaudi SCIDマウスモデルにおける効能よりも減少されることから、NK細胞が2B8T2Mの抗腫瘍活性の増大に役割を果たす可能性がある。
【0230】
SCIDマウスにおけるDaudi Bリンパ腫に対する2B8T2Mの様々なドメインの抗腫瘍活性
2B8T2Mの種々のドメインの機能を詳細に調べるため、2B8T2M、Fc突然変異体2B8T2M-LA及びIL-15突然変異体2B8T2M-D8Nの抗腫瘍活性を、Daudi Bリンパ腫/SCIDマウスモデルにおいて比較した。図16Aに示されるように、5mg/kgで投与された全ての試験薬は、PBS治療群と比較して、骨髄におけるDaudi腫瘍負荷を著しく減少させた。さらに、Fc突然変異体2B8T2M-LA及びIL-15突然変異体2B8T2M-D8Nは、2B8T2Mよりも骨髄におけるDaudi腫瘍負荷減少させることにそれほど有効ではなかった(p<0.05)。さらに、c264T2Mを別々の実験において非ターゲッティング対照複合体として使用し、2B8T2Mよりも骨髄におけるDaudi細胞パーセンテージを減少させることにそれほど有効ではないと分かった(図16B)。総合すれば、これらの所見は、IL-15媒介免疫活性化、Fcドメイン活性、及びCD20の2B8特異的ターゲティングが、いずれもDaudi Bリンパ腫に対する2B8T2Mの有効なin vivo抗腫瘍活性に対する重要な寄与体であったことを示した。
【0231】
カニクイザルにおける2B8T2MによるB細胞枯渇
Daudi Bリンパ腫/SCIDマウスモデルにおける2B8T2Mに関する効能研究に続いて、2B8T2MがB細胞を消耗する能力をカニクイザルでさらに調査した。0日目及び3日目に動物(n=4/群)に5mg/kgの2B8T2M、10mg/kgのリツキシマブ、又はビヒクル対照としてのPBSを静脈内注射した後、7日目に安楽死させた。脾臓及び腸間膜リンパ節を収集し、フローサイトメトリーによってB細胞及び他のリンパ球サブセットのレベルについて評価した。また、末梢血中のB細胞パーセンテージの変化を、投薬前、並びに1日目(第1の投薬後24時間)、3日目(第2の投薬前)、4日目(第2の投薬後24時間)、5日目、及び7日目に採取した試料を使用して特定した。図17A図17Bに示されるように、末梢血中のB細胞は、第1の投薬の1日後に2B8T2M治療群と及びリツキシマブ治療群の両方で効果的に枯渇された。第2の投薬に続いて、2B8T2Mで治療した動物の末梢血中のB細胞レベルは、リツキシマブで治療された動物と比較してさらに減少されたが、この効果は必ずしも、統計学的有意だとは限らなかった(4日目にp=0.004、5日目にp=0.051及び7日目にp=0.067)。興味深いことに、2B8T2Mで治療されたサルのリンパ節中のB細胞のパーセンテージは、PBSで治療群より著しく低かった。しかしながら、リツキシマブ治療群とPBS治療群との間に有意差はなかった。2B8T2Mによる治療は、推測上は免疫細胞の増殖及び輸送に対するIL-15N72Dドメインの免疫賦活性効果に起因して、リンパ節NK細胞のパーセンテージの著しい増加(2.4倍対対照)、並びに血液CD8+及びCD4+T細胞(それぞれ、0.8倍及び0.5倍対対照)及び脾臓CD4+T細胞(0.4倍対対照)のパーセンテージの減少をもたらした。対照的に、リツキシマブ治療は、脾臓のCD8+及びCD4+T細胞パーセンテージの1.4倍~1.8倍の増加をもたらし(p<0.05)、B細胞喪失に対する補整効果の可能性がある。著しい有害作用は2B8T2M治療群又はリツキシマブ治療群のいずれでも観察されなかった。
【0232】
腫瘍細胞上の特異性抗原を認識するモノクローナル(mAbs)が現在癌治療として使用される。非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%超で発現されるCD20抗原を標的化するリツキシマブは、10年以上に亘って患者における使用に成功している。抗CD20mAbsの作用機構は、標的細胞のアポトーシス、ADCC、CDC、及び食作用を含む(14)。mAbsの抗腫瘍活性は主にADCCにより、それは、エフェクター細胞の活性化を増強するアジュバント療法でさらに改善され得る。IL-15は、CD8+T及びNK細胞の強力な賦活因子及び活性化因子であり、mAbsと組み合わされてNK細胞媒介ADCCを増強し得る、台頭しつつある癌免疫治療剤である(15)。IL-15スーパーアゴニスト、ALT-803、IL-15N72D突然変異体の複合体、及び二量体IL-15RαSuFc融合タンパク質が作られた。ALT-803は、in vitro及びin vivoで優れた活性を示す。IL-15と比較して、in vivoでN72D突然変異はIL-15の生物学的活性を約5倍増加させ、さらにIL-15N72D:IL-15RαSuFc複合体はIL-15の活性を約25倍増強する(3、4)。また、ALT-803は、天然IL-15よりも、免疫細胞表面に提示されたIL-2Rβγ複合体とのより大きな結合活性、実質的により長い結成半減期、並びにリンパ組織におけるより良好な分布及び保持を有する(3、4、12)。強力な免疫賦活性及び抗腫瘍特性を示すことにより、ALT-803は、単剤として又は他の治療法と組み合わせていずれかで動物モデルにおける様々な腫瘍に対して有効な薬剤である(5、6)。例えば、ALT-803賦活は、B細胞リンパ腫細胞株又は初代濾胞性リンパ腫細胞に対するヒトNK細胞によるリツキシマブ媒介ADCCをin vitroで著しく増加させた。さらに、2つの異なるB細胞リンパ腫マウスモデルにおいて、抗CD20 mAb治療に対するALT-803の添加は、腫瘍細胞負荷の著しい減少、及び生存の増加を提供した(7)。その結果、ALT-803は、現在、固体及び血液学的な悪性腫瘍に対する複数の臨床試験にある。(同種異系幹細胞移植後の血液系悪性腫瘍の再発、難治性多発性骨髄腫、及び無痛性非ホジキンリンパ腫;それぞれNCT01885897、NCT02099539及びNCT02384954)。本明細書に記載される研究では、ALT-803が、新規の多価抗原特異性免疫治療的複合体複合体の作製のための多目的なタンパク質スキャフォルドとして修飾され得ることをさらに実証した。2B8T2Mと称される標的化免疫治療薬が構築された。この融合タンパク質は、リツキシマブ及びIL-15N72D:IL-15RαSuFcの認識ドメインからなり、アポトーシス促進活性及びin vivo免疫細胞賦活を示しながら、Bリンパ腫に対してADCC及びCDCを媒介することができる。したがって、単一分子としての2B8T2M複合体は、ALT-803の免疫賦活性特性に加えてリツキシマブの抗CD20特性を保持する。リツキシマブと比較した場合、2B8T2Mは改善された抗腫瘍活性を実証し、Daudi Bリンパ腫を持つSCIDマウスの延長された生存をもたらす。さらに、2B8T2M治療SCIDマウスにおけるNK細胞の割合の増加は、NK細胞が、in vivoでの2B8T2Mの増強された抗腫瘍活性において極めて重要な役割を果たすことを示唆する。NK細胞が2B8T2Mの抗腫瘍活性にとって不可欠かどうかをさらに評価するため、NK細胞が欠乏しているSCID-beige SCIDマウスで同様の動物研究を行った。驚いたことに、Daudi細胞パーセンテージは、ビヒクル対照と比較して、2B8T2M-治療SCIDマウスの骨髄においてなおも著しく低くかった。これは、減少したNK細胞活性を有するマウスにおけるそのアポトーシスの作用及びCDCによってこの融合タンパク質のin vivo抗腫瘍活性が保持され得ることを示唆する。マクロファージ及び好中球もADCC機能を示すと知られている(13)。マクロファージ及び好中球が、SCID-beigeマウスにおけるこの融合タンパク質に対するNK細胞のADCC機能を置き換えることができる可能性がある。SCIDマウス研究による結果と異なり、SCID-beigeマウスにおける2B8T2Mとリツキシマブの間の抗腫瘍活性に著しい差はない。したがって、NK細胞はin vivoで2B8T2M抗腫瘍活性を増強した。これが、NK細胞集団を拡大した及び/又はNK細胞のADCC機能を上方制御した、2B8T2MのIL-15成分の結果であると考えられる。
【0233】
抗CD20 mAbsはNHLの治療では効果的に使用された。I型及びII型の抗CD20抗体は、各々、CD20+細胞に対するADCC及び食作用を媒介するため、FcR発現細胞を誘引することができる(16)。重要なことには、I型及びII型の抗体はいずれも、様々なCD20+B-リンパ腫又はB細胞媒介自己免疫疾患に対するそれらの活性に基づく臨床的な使用に対して承認されている(17、18)。この研究で示されるように、2B8T2Mは増強されたアポトーシス活性を示しながら、CD20+標的細胞に対するリツキシマブ様のCDCを保持する。これらの知見は、2B8T2Mが、強力なNK細胞エフェクター反応に対するIL-15に基づく免疫賦活性活性によるADCCの強い増強に加えて、I型及びII型の両方の抗CD20抗体の機能的利点を持つことを示す。2B8T2Mのアポトーシス促進活性は、FcR結合又はIL-15活性に対してではなく、CD20結合ドメインに依存する。先の研究は、化学架橋されたリツキシマブホモ二量体及び組み換え四量体リツキシマブscFv-Ig融合体が単量体リツキシマブよりも優れたBリンパ腫細胞に対するアポトーシス誘導活性を有することを示した(19、20)。また、これらの結果は、リツキシマブと比較された2B8T2Mの増強されたアポトーシス促進活性が、CD20+細胞に対してその多価結合能に起因する可能性があることを示唆する。
【0234】
ALT-803は、メモリーCD8+T細胞を誘導して増殖させ、NKG2Dを上方制御し、IFN-γを分泌させ、抗原刺激(5、21)の不在下で悪性細胞を死滅させる能力を獲得する。本明細書に提示される結果は、CD20特異的複合体(2B8T2M)がALT-803の特有の能力を保持することを示す。例えば、養子免疫細胞移植実験は、2B8T2MがメモリーCD8+T細胞及びNK細胞の拡大を促進したことを示した。したがって、ALT-803と比較して、scFvドメインは相対的なIL-15活性をほぼ60倍低下させたが、2B8T2Mの抗CD20 scFvドメインはメモリーCD8+T細胞上のALT-803成分の生物学的効果を変更しなかった。2B8T2MのIL-15活性の減少は、同様の効果が他のIL-15融合(3、8)で見られたことから、IL-2Rβγに対するIL-15N72Dの結合ドメインに影響する抗CD20単鎖Abの立体障害による可能性がある。これらの融合分子のより低いIL-15活性は、一般にこの種の分子の臨床的有用性を増強し得る。抗体のADCC有効性の決定的要因のうちの1つが、濃度であり、標的細胞上のその結合密度に影響することが示された(22)。これらの融合分子のより低いIL-15活性は、望ましくない免疫関連全身毒性を誘導することのない有効なADCCのため、潜在的により高い用量レベルでのそれらの投与を可能にし得る。この研究においてネズミ科と非ヒト霊長類モデルの両方で示される2B8T2MのADCC依存性の効能及び良好な耐用性を示す安全性プロファイルは、この点を実証し、これらの分子の臨床上の有用性を支持する。
【0235】
天然のIL-15による比較生体内分布研究では、ALT-803は、マウスのリンパ器官に分布され、より良好に保持された(12)。同様に、2B8T2M生体内分布データは、少なくとも70時間に亘り、リンパ組織における取り込み及び保持を示す。非ヒト霊長類におけるCD40+B細胞枯渇研究では、より低用量レベルの2B8T2Mは、特にリンパ節においてリツキシマブより効果的であったことが分かった。また、2B8T2M治療は、対照と比較して、リンパ節のNK細胞のパーセンテージの著しい増加を誘導した。2B8T2Mはリンパ組織において保持され、IL-15成分によってかなりの期間に亘ってT細胞及びNK細胞を潜在的に刺激すると考えられるのに対し、リツキシマブはこの活性を欠く。パーフォリン及びグランザイムBの誘導に起因する可能性がある(23)このNK細胞の刺激は、B細胞に対するADCCを著しく増強し得る。したがって、これらの融合分子は、B細胞リンパ腫に対して特に有効な可能性がある。
【0236】
また、治療抗体のADCCは、「ワクチン効果」によって癌細胞上に提示される標的抗原に対する適応的免疫応答を誘導することが実証された(14、24~26)。この効果はFc依存性であり、再チャレンジに続く腫瘍拒絶によって宿主に永続的なメモリー応答を提供する(27)。2B8T2Mの成分であるIL-15は、エフェクター及びメモリーCD8T細胞の発達に必要なサイトカインである。したがって、2B8T2M分子のIL-15成分は、CD8T細胞の免疫応答を活性化することにより、標的抗原に対して治療抗体単独より強い「ワクチン効果」を可能とし得る。また、ALT-803スキャフォルドは、リツキシマブ結合ドメインのリンパ組織保持を増強したことに注目すべきである。したがって、ALT-803スキャフォルドは、免疫系活性化のためリンパ器官に対して融合成分を送達するためのビヒクルとなり得る。
【0237】
これらの研究は、IL-15N72D:IL-15RαSuFcに基づく足場分子が抗体、接着分子又は他の受容体に由来する複数の標的認識ドメインに融合される可能性がある。適切な標的ドメインにより、得られる複合体は、様々な免疫のエフェクター細胞の接合を促進し、特異的な標的を提示する癌細胞又はウイルス感染細胞を含む標的細胞の破壊を媒介することができた。複合体のIL-15ドメインは、エフェクター細胞の増殖及び傷害性を支持するため、免疫賦活性活性を提供し得た。また、この単一の融合タンパク質アプローチは、併用免疫療法を使用する複雑な治療レジメンの必要をなくすであろう。したがって、IL-15N72D:IL-15RαSuFcスキャフォルド複合体は、癌及び感染症に対する標的化免疫治療薬としてのIL-15の有望な可能性を利用するための特有の機会を提供し得る。
【0238】
以下の実験手順を、この実施例に利用した。
【0239】
マウス及び細胞株
FOX Chase SCID(C.B-17/IcrHsd-Prkdc-scid)、SCID-beige(C.B-17/IcrHsd-PrkdcscidLystbg-J)及びC57BL/6NHsdマウス(6週齢~8週齢の雌Harlan Laboratories)をAltor BioScienceの動物施設で飼育した。全ての動物研究を、動物実験委員会(IACUC:Institutional Animal Care and Use Committee)に承認されたプロトコルのもと、国立衛生研究所(NIH)動物ケアガイドラインに従って行った。
【0240】
ヒトDaudi Bリンパ腫細胞株を米国培養菌保存施設(ATCC)から購入し、完全Roswell Park Memorial Institute(RPMI)-1640培地中、37℃、5%COにて、慣例に従って培養した。これらの研究での使用に先立って、2014年及び2015年に、細胞増殖形態学(リンパ芽球)、生育特性、フローサイトメトリーによるヒトCD20の均一な発現の表現型、及びADCCに対する抗CD20mAbオプソニン化標的として機能性であることを確認することで、Daudi細胞であることを証明した。IL-15依存性32Dβ細胞(3)を、(メリーランド州フレデリックの国立癌研究所、Dr.J.Yovandichの善意により提供された)1ng/ml~2ng/mlのIL-15で補足した完全イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)において培養した。
【0241】
sc2B8融合コンストラクトの作製
可溶性単鎖2ドメイン抗CD20 mAbコンストラクト(sc2B8)を作製するため、2B8 mAb軽鎖及び重鎖のV遺伝子セグメントを2B8ハイブリドーマ(ATCC)からクローニングした。VL遺伝子セグメントをリンカー(Gly4Ser)3によってVH遺伝子セグメントの5’末端に融合させた。sc2B8遺伝子を、以下を含むIL-15変異タンパク質配列の5’末端に融合した:(1)IL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)、(2)IL-15アンタゴニスト(IL-15D8N)、また同様に、以前に記載される融合コンストラクト(IL-15RαSuFc)の5’末端(3)。FcR結合不全変異タンパク質を作製するため、sc2B8を、そのhIgG1重鎖アミノ酸234及び235がロイシンからアラニンへと突然変異された(10)IL-15RαSuFc-LAへ融合した。可溶性単鎖3ドメインT細胞受容体(TCR)、c264scTCR(キメラヒトp53(264-272)特異的単鎖TCR)もまた、先に記載の通りに作製された(3、8)。sc2B8融合体と同様に、c264scTCR-IL-15N72D及びc264scTCR-IL-15RαSuFcのコンストラクトを作製するため、c264scTCRをIL-15N72D又はIL-15RαSuFcに融合させた。得られたsc2B8-IL-15N72D:sc2B8-IL-15RαSuFc(2B8T2M)、sc2B8-IL-15D8N:sc2B8-IL-15RαSuFc(2B8T2M-D8N)、sc2B8-IL-15N72D:sc2B8-IL-15RαSuFc-LA(2B8T2M-LA)、及びc264scTCR-IL-15N72D:c264scTCR-IL-15RαSuFc(c264T2M)の遺伝子をpMSGVレトロウイルスベクターにおいて発現させた(28)。
【0242】
融合タンパク質の産生及び精製
様々なコンストラクトを含む発現ベクターを、ATCC由来のCHO細胞へトランスフェクトした後、適切な抗生物質を含有する培地において選択した。融合タンパク質の産生のため、組み換えCHO細胞を、37℃にて血清不含限定培地(SFM4CHO、ユタ州ローガンのHyclone)中で成長させた。培養物の生存細胞密度が最大に達すると、可溶性複合体の蓄積のため、インキュベーション温度を10日間~14日間に亘って30℃に下げた。免疫親和性プロテインAクロマトグラフィーによって、融合タンパク質を組み換えCHO細胞培養物上清から精製した。試料充填に先立って、カラムを5カラム容量(CV)の20mM Tris-HCl、pH8.0で洗浄し、5CVの0.1N NaOHで1時間消毒し、次いで7CVの20mM Tris-HCl、pH8.0で平衡化した。上清を2mL/分でカラムに充填し、その後、カラムを8CVの20mM Tris-HCl、pH8.0で洗浄し、続いて7CVの洗浄バッファー(0.1Mクエン酸ナトリウム、pH5.0)で洗浄して非特異的に結合したタンパク質を除去した。その後、タンパク質を0.2Mクエン酸ナトリウム、pH4.0で溶出させ、収集されたピーク画分のpHを2M Tris-HCl、pH8.0を使用して直ちに中和した。上記調製物を濃縮し、Amicon Ultra-15遠心濃縮器(30kDaのカットオフ、マサチューセッツ州ビレリカのMillipore)を使用して、バッファーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。精製された融合タンパク質内の凝集塊をサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。精製融合タンパク質を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(12%Bis Trisゲル)を還元した後、SimplyBlue(商標)Safe Stain(Invitrogen)を行うことにより分析した。2B8T2M分子の均一性をサイズ排除クロマトグラフィーによって特性評価した。融合タンパク質は少なくとも12ヶ月間に亘って4℃で安定であった(データは示していない)。
【0243】
フローサイトメトリー分析
2B8T2MのCD20結合特性を確認するため、末梢血単核細胞(PBMC)をFITC標識化された2B8T2M又はリツキシマブで染色し、結合特異性を非標識化2B8T2M又はリツキシマブ出ブロッキングすることにより実証した。2B8T2MFc受容体結合を確認するため、ヒトヒト組織球性リンパ腫U937細胞株(ATCC)を、FITC標識化された2B8T2M、リツキシマブ又は2B8T2M-LAで染色した。染色されたPBMC及びU937細胞を、FACSuiteソフトウェア(BD Biosciences)を使用して、FACSVerseで分析した。
【0244】
細胞増殖アッセイ
以前に記載される通り(3、8)に、32Dβ細胞の増殖を測定した。簡潔には、32Dβ細胞(1×10細胞/ウェル)を融合タンパク質と37℃で48時間インキュベートした。細胞増殖試薬であるWST-1(Roche Applied Science)を少なくとも4時間の間添加した。WST-1の着色されたホルムアザン色素への変換を450nmでの吸光度測定によって判断した。Prism4ソフトウェア(GraphPad Software)を使用し、用量反応曲線に基づいてEC50を決定した。
【0245】
in vitro傷害性アッセイ
CDCアッセイ-Daudi細胞を、2B8T2M、その変異タンパク質又はリツキシマブの存在下、37℃で2時間に亘りRPMI-10中でインキュベートした。補体反応のため正常ヒト血清(Innovative Research)を使用した。Daudi細胞の生存率をヨウ化プロピジウム(Sigma)染色により特定し、BD FACSVerseで分析した。
【0246】
ADCCアッセイ
製造業者の指示に従って、Daudi細胞はCellTrace Violet(Invitrogen)で標識化され、標的細胞としての役割を果たした。新鮮なヒトPBMC又はMACS精製NK細胞を血液バフィーコート(OneBlood)から単離し、エフェクター細胞として使用した。2B8T2M、その変異タンパク質又はリツキシマブの存在下で指定のエフェクター:標的比でエフェクター細胞をDaudi細胞ト混合した。37℃、5%COでの2日間~3日間のインキュベーションの後、Daudi細胞生存率をヨウ化プロピジウム(Sigma)染色によって評価し、BD FACSVerseで分析した。
【0247】
アポトーシスアッセイ
Daudi細胞を2B8T2M、その変異タンパク質又はリツキシマブの存在下で37℃にて3日間、RPMI-10においてインキュベートした。3日目にDaudi細胞をFITC複合Annexin V(BioLegend)で染色し、パーセントアポトーシスDaudi細胞をBD FACSVerseで分析した。
【0248】
陽電子放射断層撮影(PET)イメージング及び組織生体内分布の研究
C57BL/6マウスに10MBq~15MBqの64Cu標識化2B8T2M及び64Cu-NOTAリツキシマブを静脈内(i.v.)注射した。Inveon microPET/microCT齧歯類モデルスキャナ(Siemens)を使用して、注射後の様々な時間点で麻酔をかけた動物に対して静的PETスキャンを行った。組織1グラム当たりのパーセント注入用量(%ID/g)を計算するため、データ取得、画像再構築、及び目的領域の分析を先に記載される(29、30)通りに行った。各組織における放射活性を、ガンマカウンター(Perkin Elmer)を使用して測定し、%ID/gとして提示する。
【0249】
腫瘍モデル
1×107個のDaudi細胞/マウスの静脈内注射の後、癌を持つFOX Chase SCIDマウス又はSCID-beigeマウスを生存エンドポイントとしての役割を果たす後脚麻痺について詳しくモニターした。骨髄中のDaudi細胞の割合を、PE複合化抗ヒトHLA-DR抗体(BioLegend)を使用するフローサイトメトリー(FACSVerse)によって特定した。
【0250】
T細胞標識化及び養子免疫細胞移植
ドナーC57BL/6NHsdマウスの脾臓及びリンパ節に由来するCD3+富化細胞(CD3濃縮カラム、R&D Systems)を、製造業者の指示に従ってCellTrace Violet(Invitrogen)で標識化した。研究0日目(SD)に1×107個のViolet標識化細胞を同系C57BL/6NHsdマウスに養子移植した。SD2に、静脈内注射でマウスを試験物質で治療した。SD5に脾臓を採取し、ドナーリンパ球増殖(Violet標識化)及びリンパ球サブセットの組成についてフローサイトメトリーによって分析した。
【0251】
カニクイザルの研究
雄性カニクイザル(2.20kg~2.85kg、2歳~3歳)は、Yunnan Laboratory Primate,Inc.(中国、昆明)によって提供された。この研究は、Yunnan Laboratory Primate,Inc.のIACUCによって承認された研究計画に従って行われた。研究の0日目及び3日目に5mg/kgの2B8T2M、10mg/kgのリツキシマブ、及び治療対照としての役割を果たすPBSを静脈内投与した。7日目にカニクイサルを安楽死させ、免疫細胞分析のため脾臓及び腸間膜リンパ節を採取し、処理した。血液試料を投薬前、1日目(投薬後24時間)、3日目(投薬後2)、4日目(投薬後24時間)、5日目及び7日目に採取した。
【0252】
データ分析
生存データをカプラン-マイヤー法を使用して分析した。連続変数の比較をスチューデントt検定又は分散分析(両側)(GraphPad Prism4)を使用して行った。p値≦0.05を有意とした。
【0253】
以下の参照文献を本実施例において引用した。
参照文献
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【0254】
他の実施形態
本発明はその詳細な記述に関連して記載されるが、先の記述は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を解説することを意図と、限定するものではない。他の態様、利点、及び修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲に含まれる。
【0255】
本明細書で参照される特許及び化学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての米国特許及び公開又は未公開の米国特許出願は、参照することにより本明細書の一部を成す。本明細書で引用される全ての公開された外国の特許及び特許出願は、参照することにより本明細書の一部を成す。本明細書で引用されるアクセッション番号によって示されるGenBank及びNCBIの寄託、参照することにより本明細書の一部を成す。本明細書で引用される全ての他の公開された参照文献、文書、原稿及び科学文献は、参照することにより本明細書の一部を成す。
【0256】
本発明は、特に、その好ましい実施形態を参照して示され、記載されているが、形態及び詳細における様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明において行われ得ることが当業者に理解される。
図1
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