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特許7037515水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法
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  • 特許-水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法 図1
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  • 特許-水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法 図3
  • 特許-水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/28 20060101AFI20220309BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20220309BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220309BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220309BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220309BHJP
   C02F 1/68 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B01D61/28
B01D65/10
B01D61/02
C02F1/44 H
C02F1/461 A
C02F1/68 510A
C02F1/68 510B
C02F1/68 520B
C02F1/68 530L
C02F1/68 530K
C02F1/68 540D
C02F1/68 540E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019041497
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142208
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】橘 孝士
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161605(JP,A)
【文献】特開2011-177242(JP,A)
【文献】特開2016-093767(JP,A)
【文献】特開2018-114452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/68
C02F 1/44、461、68
B01D 53/22、61/00-71/82
B01F 1/00-5/26
A61M 1/00-38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に水素を付加するための装置であって、
溶存水素水を生成する溶存水素水生成部と、
前記溶存水素水が供給される第1室と、
外部から供給された水を、逆浸透膜を用いて浄化して処理水を生成する逆浸透膜処理装置と、
前記処理水を供給される第2室と、
前記第2室で水素付加水を生成するために、前記溶存水素水に溶け込んだ水素分子を前記第1室から前記第2室へと移動させる水素透過膜と、
前記第2室から取り出された前記水素付加水の溶存水素濃度を検出する水素濃度検出部と、
前記溶存水素濃度が予め定められた閾値未満である場合に前記水素透過膜の消耗が進行していると判定する判定部とを備え
前記溶存水素水生成部は、陽極給電体と陰極給電体とを有し、水を電気分解することにより前記溶存水素水を生成し、前記第1室に供給する電解槽を有し、
前記溶存水素水生成部の前記電解槽と、前記第2室とは、同一の水源である前記逆浸透膜処理装置から前記処理水の供給を受ける、
水素付加装置。
【請求項2】
前記陽極給電体及び前記陰極給電体に印加する電圧を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記溶存水素水の溶存水素濃度が一定となるように、前記電圧を制御する、請求項1に記載の水素付加装置。
【請求項3】
前記溶存水素水には、前記水素分子が飽和状態で溶解している、請求項1又はに記載の水素付加装置。
【請求項4】
前記溶存水素水生成部と前記第1室との間で、前記溶存水素水を循環させる循環水路をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の水素付加装置。
【請求項5】
溶存水素水が供給される第1室と、原水が供給される第2室と、前記第2室で水素付加水を生成するために、前記溶存水素水に溶け込んだ水素を前記第1室から前記第2室へと移動させる水素透過膜とを備えた水素透過モジュールにおいて、前記水素透過膜の消耗度を判定する方法であって、
前記溶存水素水を、水を電気分解する電解槽を含む溶存水素水生成部により生成するステップと、
前記原水として、外部から供給された水を、逆浸透膜を用いて浄化した処理水を生成するステップと、
前記溶存水素水生成部の前記電解槽と、前記第2室とに、同一の水源である前記逆浸透膜処理装置で生成された前記処理水を供給するステップと、
前記第2室から取り出された前記水素付加水の溶存水素濃度を検出するステップと、
前記溶存水素濃度が予め定められた閾値未満である場合に前記水素透過膜の消耗が進行していると判定するステップと、
を含む、
水素透過膜の消耗度判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に水素が付加された水素付加水を生成する装置及び水素透過膜の消耗度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水に水素を付加する方法として、水素透過膜(ガス透過膜)によって水素ガス流通部と原料水流通部とが区画されたモジュールを用い、水素ガス流通部に加圧した水素ガスを供給して、原料水流通部に供給した原料水に水素を溶解させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-125654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、電解槽で電気分解により生成した水素ガスが水素ガス流通部に供給される旨開示されている。しかしながら、このような技術では、例えば、電解槽の水位を適切に制御する構成が必要となり、コストアップを招来する。そこで、上記特許文献1に開示されているような技術の他にも、安価に水素付加水を生成する技術が種々検討されている。
【0005】
一方、上記モジュールは、水素透過膜の消耗によって劣化するため、定期的な交換が推奨される。水素透過膜の消耗度は、例えば、上記モジュールの使用時間等によって簡易的に推定可能である。
【0006】
しかしながら、水素透過膜は高価であることから、低廉なランニングコストで水素付加水を生成するためには、水素透過膜の消耗度をより正確に判定する技術の確立が求められている。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、簡素かつ安価な構成で水素透過膜の消耗度を正確に判定できる水素付加装置及び水素透過膜の消耗度判定方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、水に水素を付加するための水素付加装置であって、溶存水素水が供給される第1室と、原水が供給される第2室と、前記第2室で水素付加水を生成するために、前記溶存水素水に溶け込んだ水素分子を前記第1室から前記第2室へと移動させる水素透過膜と、前記第2室から取り出された前記水素付加水の溶存水素濃度を検出する水素濃度検出部と、少なくとも、前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素透過膜の消耗度を判定する判定部とを備える。
【0009】
本発明に係る前記水素付加装置において、前記第1室に供給する前記溶存水素水を生成する溶存水素水生成部をさらに備える、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記水素付加装置において、前記溶存水素水生成部は、陽極給電体と陰極給電体とを有し、水を電気分解することにより前記溶存水素水を生成し、前記第1室に供給する電解槽を有し、前記陽極給電体及び前記陰極給電体に印加する電圧を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記溶存水素水の溶存水素濃度が一定となるように、前記電圧を制御する、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記水素付加装置において、前記溶存水素水には、前記水素分子が飽和状態で溶解している、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記水素付加装置において、前記溶存水素水生成部と前記第1室との間で、前記溶存水素水を循環させる循環水路をさらに備える、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記水素付加装置において、前記第2室への前記原水の単位時間あたりの供給量を検出する流量検出部をさらに備え、前記判定部は、さらに、前記供給量に基づいて、前記水素透過膜の消耗度を判定する、ことが望ましい。
【0014】
本発明の第2発明は、溶存水素水が供給される第1室と、原水が供給される第2室と、前記第2室で水素付加水を生成するために、前記溶存水素水に溶け込んだ水素を前記第1室から前記第2室へと移動させる水素透過膜とを備えた水素透過モジュールにおいて、前記水素透過膜の消耗度を判定する消耗度判定方法であって、前記第2室から取り出された前記水素付加水の溶存水素濃度を検出するステップと、少なくとも、前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素透過膜の消耗度を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本第1発明の前記水素付加装置では、前記溶存水素水に溶け込んだ水素が前記水素透過膜を透過して前記第1室から前記第2室へと移動することにより、前記第2室で前記水素付加水が生成される。前記第2室から取り出された前記水素付加水の前記溶存水素濃度は、前記水素透過膜の前記消耗度に依存し、前記水素透過膜が消耗するに従い低くなる。そこで、本第1発明では、前記判定部が、少なくとも、前記水素付加水の前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素透過膜の前記消耗度を判定することにより、簡素かつ安価な構成で前記水素透過膜の前記消耗度を正確に判定することが可能となる。
【0016】
本第2発明の前記水素透過膜の前記消耗度判定方法は、前記第2室から取り出された前記水素付加水の前記溶存水素濃度を検出する前記ステップと、少なくとも、前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素透過膜の前記消耗度を判定する前記ステップとを含む。従って、簡素かつ安価な構成で前記水素透過膜の前記消耗度を正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の一形態である水素付加装置の概略構成を示す図である。
図2】水素付加装置の主要な構成を示す図である。
図3】水素付加装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の一形態の消耗度判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の水素付加装置の一実施形態の概略構成を示している。水素付加装置1は、水に水素を付加するための装置であり、水素が付加された水素付加水は、例えば、透析液調製用水として透析液の調製に用いられる(以下、水素付加水を透析液調製用水と記すこともある)。近年、透析液の調製に水素付加水を用いた血液透析は、患者の酸化ストレス低減に有効であるとして、注目されている。
【0019】
水素付加装置1は、例えば、逆浸透膜処理装置200の下流側に配置される。水素付加装置1と逆浸透膜処理装置200とは、統合されて一つの装置として構成されていてもよい。水素付加装置1の下流側には、例えば、透析液調製用水を用いて液状の透析原剤を希釈する透析原剤希釈装置(図示せず)に接続されている。
【0020】
逆浸透膜処理装置200は、逆浸透膜を用いて外部から供給された水を浄化する。逆浸透膜処理装置200と、水素付加装置1とは、処理水供給路10によって接続されている。逆浸透膜処理装置200によって浄化処理された水(以下、処理水とする)は、処理水供給路10を通過して水素付加装置1に供給され、透析液調製用の水素付加水を生成するための原水(以下、原水と記す)として用いられる。
【0021】
透析液調製用水の生成に用いられる水素付加装置1は、逆浸透膜処理装置200から供給された原水に水素を付加して透析液調製用の水素付加水を生成する。水素付加装置1と、上記透析原剤希釈装置とは、水素付加水供給路20によって接続されている。水素付加装置1によって生成された水素付加水は、水素付加水供給路20を通過して、上記透析原剤希釈装置に供給され、透析液の調製に用いられる。
【0022】
図2は、水素付加装置1の主要な構成を示している。水素付加装置1は、溶存水素水生成部2と、水素透過膜モジュール3とを含んでいる。
【0023】
溶存水素水生成部2は、溶存水素水を生成し、水素透過膜モジュール3に供給する。溶存水素水とは、水素分子が溶け込んだ水である。本実施形態では、溶存水素水生成部2として電解槽4が適用されている。電解槽4は、水を電気分解することにより、水素分子を発生させ、溶存水素水を生成する。
【0024】
電解槽4は、第1給電体41が配された第1極室40aと第2給電体42が配された第2極室40bとが隔膜43によって区分されてなる。
【0025】
第1給電体41と第2給電体42とは、極性が異なる。すなわち、第1給電体41及び第2給電体42の一方は陽極給電体として適用され、他方は陰極給電体として適用される。本実施形態では、第1給電体41が陽極給電体として適用され、第2給電体42が陰極給電体として適用されている。電解室40の第1極室40a及び第2極室40bの両方に水が供給され、第1給電体41及び第2給電体42に直流電圧が印加されることにより、電解室40内で水の電気分解が生ずる。
【0026】
図3は、水素付加装置1の電気的な構成を示すブロック図である。第1給電体41及び第2給電体42の極性及び第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧は、制御部9によって制御される。制御部9は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等を有している。制御部9は、第1給電体41及び第2給電体42の他、装置各部の制御を司る。
【0027】
第1給電体41と制御部9との間の電流供給ラインには、電流検出器44が設けられている。電流検出器44は、第2給電体42と制御部9との間の電流供給ラインに設けられていてもよい。電流検出器44は、第1給電体41、第2給電体42に供給する電解電流を検出し、その値に相当する電気信号を制御部9に出力する。
【0028】
制御部9は、例えば、電流検出器44から出力された電気信号に基づいて、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御部9は、電流検出器44によって検出される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部9は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部9は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流が適切に制御される。
【0029】
図1、2において、電解室40内で水が電気分解されることにより、水素ガス及び酸素ガスが発生する。例えば、陰極側の第2極室40bでは、水素ガスが発生し、当該水素分子が溶け込んだ溶存水素水が生成され、水素透過膜モジュール3に供給される。なお、このような電気分解を伴って生成された溶存水素水は、「電解水素水」とも称される。一方、陽極側の第1極室40aでは、酸素ガスが発生する。
【0030】
隔膜43には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜が適宜用いられている。固体高分子膜は、電気分解により、陽極側の第1極室40aで発生したオキソニウムイオンを陰極側の第2極室40bへと移動させて、水素分子の生成原料とする。従って、電気分解の際に水酸化物イオンが発生することなく、電解水素水のpHが変化しない。
【0031】
水素透過膜モジュール3は、第1室31と、第2室32と、水素透過膜33とを備える。第1室31と第2室32とは、水素透過膜33によって隔てられている。
【0032】
第1室31と電解槽4の第2極室40bとは、水素水供給路50によって接続されている。電解槽4の第2極室40bにて生成された溶存水素水は、水素水供給路50を通過して、第1室31に供給される。
【0033】
一方、第2室32は、処理水供給路10と接続されている。第2室32には、逆浸透膜処理装置200から原水が供給される。
【0034】
水素透過膜33は、例えば、水素分子を透過する多孔質膜である中空糸膜によって構成されている。第1室31には、電解槽4にて生成された溶存水素水が次々と供給されるので、第1室31内の水の溶存水素濃度は、第2室32内の水の溶存水素濃度よりも大きい。中空糸膜は、液体に溶け込んだ水素を溶存水素濃度が大きい第1室31から溶存水素濃度が小さい第2室32へと移動させる。水素透過膜33は、液体に溶け込んだ水素分子を、高濃度な液体側から低濃度な液体の側に透過させる機能を有する膜であればよく、中空糸膜に限られない。
【0035】
本発明では、水素透過膜33は、第2室32で水素付加水を生成するために、第1室31内の溶存水素水に溶け込んだ水素分子を第1室31から第2室32へと移動させる。これにより、水素分子を加圧するための構成等を必要とすることなく、簡素かつ安価な構成で水素付加水を生成することが可能となる。
【0036】
ところで、水素透過膜33は、使用に伴い消耗する。そして第2室32から取り出された水素付加水の溶存水素濃度は、水素透過膜33の消耗度に依存する。より具体的には、水素透過膜33が新しいとき、第2室32にて生成される水素付加水の溶存水素濃度は高く、水素透過膜33が消耗するに従い、上記溶存水素濃度は低下する。そこで、本水素付加装置1では、制御部9が、水素透過膜33の消耗度を判定する判定部として機能し、水素透過膜33の消耗度を監視する。なお、制御部9による水素透過膜33の消耗度の判定は、随時又は定期的に実行される。
【0037】
水素付加水供給路20には、水素濃度センサー(水素濃度検出部)21が設けられている。水素濃度センサー21は、第2室32から取り出された水素付加水の溶存水素濃度を検出し、対応する電気信号を制御部9に出力する。
【0038】
水素透過膜33の消耗度は、第2室32から取り出された水素付加水の溶存水素濃度と相関がある。例えば、水素付加水の溶存水素濃度が予め定められた閾値未満である場合、水素透過膜33の消耗が進行していると判定できる。上記閾値は複数定められていてもよい。そこで、制御部9は、水素濃度センサー21から入力された電気信号、すなわち、水素付加水の溶存水素濃度に基づいて、水素透過膜33の消耗度を判定する。これにより、簡素かつ安価な構成で水素透過膜モジュール3の消耗度を正確に判定することが可能となる。
【0039】
既に述べたように、制御部9は、電流検出器44によって検出される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。これにより、電解槽4の陰極側の第2極室40bにて生成され、水素透過膜モジュール3の第1室31に供給される溶存水素水の溶存水素濃度が一定となり、制御部9が、水素透過膜モジュール3の消耗度をより一層正確に判定することが可能となる。
【0040】
水素透過膜モジュール3の第1室31に供給される溶存水素水は、水素が飽和状態で溶解している、のが望ましい。溶存水素水の上記飽和状態は、例えば、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧を高めることにより実現される。従って、電解槽4の制御が容易となり、かつ、制御部9が、水素透過膜モジュール3の消耗度をより一層正確に判定することが可能となる。また、第2室32にて生成される水素付加水の溶存水素濃度を高めることが可能となる。
【0041】
本水素付加装置1では、制御部9によって判定された水素透過膜33の消耗度を出力する出力部91が設けられている。出力部91は、上記消耗度を音声又は画像等によって出力する。このような出力部91は、スピーカー装置、LED(発光ダイオード)、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)等によって実現可能である。また、出力部91は、水素付加装置1を管理するコンピューター装置に、水素透過膜33の消耗度に対応する無線又は有線による信号を出力するように構成されていてもよい。このような出力部91により、水素付加装置1の管理者は、水素透過膜33の消耗度を容易に知得できる。
【0042】
図1に示されるように、本実施形態では、電解槽4で電気分解される水は、逆浸透膜処理装置200にて逆浸透膜処理された処理水が適用される。処理水は、処理水供給路10及び処理水供給路10から分岐する処理水供給路11等を経て、電解槽4に供給される。すなわち、溶存水素水生成部2の電解槽4と水素透過膜モジュール3の第2室32とは、同一の水源である逆浸透膜処理装置200から処理水の供給を受ける。このような構成により、水素付加装置1及びその周辺の配管が簡素化される。
【0043】
本実施形態の水素付加装置1では、電解槽4の第2極室40bと第1室31との間で溶存水素水を循環させる循環水路5をさらに備えている。電解槽4の第2極室40bと第1室31とを接続する水素水供給路50は、循環水路5の一部を構成する。
【0044】
電解槽4にて電気分解を継続しながら、循環水路5で溶存水素水を循環させることにより、第1室31内での溶存水素濃度が高められる。これにより、第1室31と第2室32での溶存水素濃度の差が維持されるので、水素付加水の溶存水素濃度を容易に高めることが可能となる。
【0045】
本実施形態の循環水路5には、循環水路5内で溶存水素水を循環させるためのポンプ6及び溶存水素水を蓄えるタンク7が設けられている。ポンプ6は、タンク7と電解槽4との間に配されている。ポンプ6は、上記制御部によって制御され、循環水路5内の溶存水素水を駆動し、循環させる。これにより、電解槽4にて生成された溶存水素水は、速やかに第1室31に供給され、第1室31内の水圧が高められる。一方、タンク7に溶存水素水が蓄えられることにより、循環水路5の容量が増大し、循環水路5内の溶存水素濃度の変動が抑制される。
【0046】
第2室32に原水を供給する前に、予め第1給電体41及び第2給電体42に印加する電圧を高めて、電解槽4を運転することにより、循環水路5内の溶存水素濃度を容易に飽和濃度まで高めることができる。これにより、第1室31と第2室32での溶存水素濃度の差が大きくなり、水素付加水の溶存水素濃度を容易に高めることが可能となる。
【0047】
タンク7の上部は開放されている。このため、電解槽4にて溶け込めなかった水素分子は、気泡となって循環水路5を移動し、タンク7に流入し、その一部がタンク7の上部から抜け出る。
【0048】
処理水供給路10には、入水弁12及び流量計(流量検出部)13が設けられている。入水弁12は、例えば、制御部9によって制御された電磁力によって駆動され、処理水供給路10内を流れる処理水を制限する。流量計13は、処理水供給路10内を流れる処理水、すなわち、第2室32に供給される原水の単位時間あたりの流量(以下、単に流量又は供給量と記す)を検出し、制御部9に出力する。制御部9は、流量計13から入力された流量に応じて入水弁12を制御する。これにより、原水として第2室32に供給される処理水の流量が適正化される。
【0049】
処理水供給路11には、給水弁14が設けられている。給水弁14は、例えば、制御部9によって制御された電磁力によって駆動され、処理水供給路11内を流れる処理水を制限する。より具体的には、タンク7に電気分解のための水を充填又は補充する際には、給水弁14が開かれ、その後、水素透過膜モジュール3の第2室32に原水を供給する際には、給水弁14が閉じられる。
【0050】
第2室32から取り出される水素付加水の溶存水素濃度は、第2室32への原水の供給量にも依存する。例えば、第2室32への原水の供給量が増加すると、水素付加水の溶存水素濃度は低下する傾向となる。
【0051】
そこで、制御部9は、上記水素濃度センサー21によって検出された水素付加水の溶存水素濃度に加えて、流量計13によって検出された原水の供給量に基づいて、水素透過膜33の消耗度を判定するように構成されている、のが望ましい。これにより、制御部9が、水素透過膜33の消耗度をより一層正確に判定することが可能となる。
【0052】
電解室40の第1極室40aから上方に延びる排気路15(図2参照)には、ガス抜き弁16が設けられている。電気分解によって第1極室40aで生成された酸素ガスは、排気路15及びガス抜き弁16から排出される。
【0053】
図4は、水素透過膜モジュール3において、水素透過膜33の消耗度を判定する方法の処理手順を示している。水素透過膜33の消耗度判定方法は、溶存水素濃度を検出するステップS1と、原水の供給量を検出するステップS2と、水素透過膜33の消耗度を判定するステップS3と、判定結果を出力するステップS4とを含んでいる。
【0054】
ステップS1では、第2室32から取り出された水素付加水の溶存水素濃度が、水素濃度センサー21によって検出される。ステップS2では、第2室32への原水の供給量が流量計13によって検出される。ステップS1乃至ステップS2の順序は、問われない。すなわち、先にステップS2が実行され、その後ステップS1が実行されてもよい。
【0055】
ステップS3では、ステップS1で検出された水素付加水の溶存水素濃度及びステップS2で検出された原水の供給量に基づいて、制御部9が水素透過膜33の消耗度を判定する。そして、ステップS4では、ステップS3の判定結果が、出力部91によって出力される。
【0056】
本消耗度判定方法によれば、簡素かつ安価な構成で水素透過膜33の消耗度を正確に判定することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の水素付加装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、水素付加装置1は、少なくとも、溶存水素水が供給される第1室31と、原水が供給される第2室32と、第2室32で水素付加水を生成するために、溶存水素水に溶け込んだ水素を第1室31から第2室32へと移動させる水素透過膜33と、第2室32から取り出された水素付加水の溶存水素濃度を検出する水素濃度センサー21と、少なくとも、溶存水素濃度に基づいて、水素透過膜33の消耗度を判定する制御部9とを備えていればよい。
【0058】
また、図1に示される水素付加装置1において、第1室31に供給するための溶存水素水を生成する溶存水素水生成部2は、水を電気分解する電解槽4に限られない。例えば、水とマグネシウムとの化学反応等により発生した水素分子を水に溶解させて溶存水素水を生成する装置、又は、水素ガスボンベから供給された水素ガス(水素分子)を水に溶解させて溶存水素水を生成する装置であってもよい。
【0059】
水素付加装置1は、透析液調製用の水素付加水の生成の他、種々の用途に適用可能である。例えば、飲用、料理用又は農業用の水素付加水の生成等にも広く適用可能である。
【0060】
また、消耗度判定方法は、少なくとも、水素透過膜33の消耗度判定方法は、溶存水素濃度を検出するステップS1と、水素透過膜33の消耗度を判定するステップS3とを含んでいればよい。例えば、原水の供給量を検出するステップS2が省略されてもよい。この場合、ステップS3では、ステップS1で検出された水素付加水の溶存水素濃度に基づいて、制御部9が水素透過膜33の消耗度を判定する。
【符号の説明】
【0061】
1 :水素付加装置
2 :溶存水素水生成部
3 :水素透過膜モジュール
4 :電解槽
5 :循環水路
9 :制御部(判定部)
13 :流量計(流量検出部)
21 :水素濃度センサー(水素濃度検出部)
31 :第1室
32 :第2室
33 :水素透過膜モジュール
33 :水素透過膜
41 :第1給電体(陽極給電体)
42 :第2給電体(陰極給電体)
図1
図2
図3
図4