(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】繊維を処理する方法、繊維を処理するための設備及びそれによって得られる処理された繊維で作られたテープ
(51)【国際特許分類】
B29B 15/08 20060101AFI20220309BHJP
D06M 23/08 20060101ALI20220309BHJP
B05B 5/025 20060101ALN20220309BHJP
B29K 105/10 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
B29B15/08
D06M23/08
B05B5/025 B
B29K105:10
(21)【出願番号】P 2019502772
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 ES2017070497
(87)【国際公開番号】W WO2018015594
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-22
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】509037891
【氏名又は名称】トレース マルティネス, マヌエル
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】トレース マルティネス, マヌエル
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/121583(WO,A1)
【文献】特開昭53-138473(JP,A)
【文献】特開2011-074207(JP,A)
【文献】特表2014-521796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;
15/08-15/14;
C08J 5/04-5/10;5/24
D06M 13/00-15/715
B05B 5/025
B29K 105/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-繊維の束(1)を連続的に供給するステップと、
-第1の樹脂(51)を、該第1の樹脂(51)の粒子の静電沈着によって前記繊維の束(1)に塗布するステップと、
-加熱によって前記第1の樹脂(51)の粒子を前記繊維の束(1)に結合させるステップと、
-第2の樹脂(91)のフィラメントを付着させることによって前記繊維の束(1)の少なくとも片面に表面コーティングを施すステップと
、
-前記繊維の束(1)に貫通溝(121)を作るステップと
を含
み、前記貫通溝(121)は、前記繊維の束に平行な方向に延びることを特徴とする、繊維を処理する方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂(51)は前記繊維の束(1)に直に塗布され、前記第2の樹脂(91)の前記表面コーティングは、前記第1の樹脂(51)を有した前記繊維の束(1)に施されることを特徴とする、請求項1に記載の繊維を処理する方法。
【請求項3】
前記第2の樹脂(91)の前記表面コーティングは前記繊維の束(1)に直に塗布され、前記第1の樹脂(51)は、前記第2の樹脂の前記表面コーティングを有した前記繊維の束(1)に塗布されることを特徴とする、請求項1に記載の繊維を処理する方法。
【請求項4】
前記繊維の束(1)の重量の10%未満の量の前記第1の樹脂(51)が塗布されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂(51)の粒子が、1
μm~300
μmの間のサイズを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項6】
前記第2の樹脂(91)の前記表面コーティングが
、前記繊維の束(1)の表面から0.2mm未満の
最大高さで形成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項7】
前記繊維の束(1)が1m/分~100m/分の速さで供給されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項8】
前記第1の樹脂(51)及び前記第2の樹脂(91)を塗布する前に前記繊維の束(1)の幅が調整されるステップを更に含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項9】
前記繊維の束(1)の幅の調整が、前記繊維の束(1)の幅を狭くする凹面を備えた複数の第1のローラ(41)を前記繊維の束(1)が通過する第1のサブステップと、互いに対向しかつ離された円筒面を備えた複数の第2のローラ(42)を、摩擦によって前記繊維の束(1)の幅を増大及び調整するようにして、前記繊維の束(1)が通過する第2のサブステップとを含むことを特徴とする、請求項8に記載の繊維を処理する方法。
【請求項10】
前記第1の樹脂(51)の粒子が前記繊維の束(1)内で拡散されることができるように、前記第1の樹脂(51)の粒子に熱及び圧力を加えるステップを更に含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項11】
前記表面コーティングは、前記繊維の束(1)の少なくとも片面に前記第2の樹脂(91)の溶融フィラメントを螺旋状などの形態で付着させ、それに続いてコーティングされた前記繊維の束(1)に空気流を当てることによって又は同様の冷却システムによって得られることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項12】
前記表面コーティングは、前記繊維の束の少なくとも片面に静電沈着によって前記第2の樹脂(91)のフィラメントを付着させ、それに続いて前記繊維の束(1)を結合するために前記フィラメントに熱を加えて前記第2の樹脂(91)を溶融させ、コーティングされた前記繊維の束(1)に空気流を当てることによって又は同様の冷却システムによって得られることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の繊維を処理する方法。
【請求項13】
前記貫通溝(121)は、同期して動作する針又はカムを備えたローラを用いて作られることを特徴とする、請求項
1に記載の繊維を処理する方法。
【請求項14】
求項1から
13のいずれかに記載の方法を実施するための繊維を処理するための設備。
【請求項15】
請求項1から
13のいずれかに記載の方法に従って処理された繊維で作られて得たテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ積層工程で使用されるテープを得るための繊維の処理に関し、それにより得られる処理された繊維から作られたテープが、制御された静電沈着により第1の樹脂を塗布することと、螺旋又はフロッキング工程により第2の樹脂の部分的かつ透過性の表面コーティングを施すこととにより、使用される繊維に関して最小の樹脂充填を有する、繊維を処理するための方法及び装置を提案する。
【背景技術】
【0002】
処理された繊維から作られるテープは、一般に、炭素繊維又はガラス繊維などの繊維の束(「トウ」)と、樹脂などのバインダーとの形態である補強材から得られる。業界における現在の需要のペースは、複合材料からの部品の手作業での製造が、例えばATL(「自動テープ積層」)又はAFP(「自動繊維積層」)のような自動テープ積層工程に置き換えられることをもたらしている。そこでは、それらがテープ積層工程中に損傷を受けないように又はそれらの向きが逸れないように、繊維に十分な堅さを与えるために繊維の束は処理されなければならない。
【0003】
今日、繊維で作られるテープは、ドライファイバ、予備含浸繊維(プリペグ)又は半予備含浸繊維から得られる。
【0004】
ドライファイバは、その処理方法において主要な樹脂充填を導入するのではなく、むしろ主要な樹脂充填は、実際の部品の製造工程、例えば、注入工程又は樹脂トランスファー成形(RTM)工程の間に適用される。製織、三次元織物又は縫製などのドライファイバプリフォームの調製のための様々な方法があり、縫製は現在、自動テープ積層工程で用いるためのよりコンパクトで適切な成果をもたらしている。
【0005】
ドライファイバを処理するための方法を記載している1つの文書は特許文献1であり、これはベースとして一方向繊維の層を含み、1つ又は2つのバインダーに加えて、この方法で適用されて結合を確実なものにする、短繊維、熱可塑性グリッド又は多孔性熱可塑性膜によって達成されるその表面の少なくとも一方に取り付けられた熱可塑性ベールが追加された、自動テープ積層工程において使用されるドライファイバの材料を記載している。
【0006】
予備含浸繊維は、一方向繊維及び織物の両方とすることができ、それは部品を製造するのに必要な樹脂の量で予備含浸され、樹脂は通常は熱硬化性樹脂であるが、熱可塑性樹脂にすることもできる。一般に、樹脂が熱硬化性樹脂である場合、混合物はそれが完全に架橋することを防ぐために冷たい環境で保存されなければならないので、それは予備含浸繊維の取り扱いを容易にするために部分的に硬化される。予備含浸繊維は、ホットメルト法又は溶媒浸漬法によって得られる。ホットメルトは、補強材を熱い薄い樹脂フィルムでコーティングし、次に圧力と熱を加えて補強材に樹脂を含浸させることからなる。浸漬法は、溶媒浴に樹脂を溶解し、その中に補強材を浸し、それに続いてそこから溶媒を蒸発させることからなる。
【0007】
いくつかの文献が予備含浸繊維を処理する方法を記載しており、例えば特許文献2は、空気溜まり及び含浸むらを防止するプリプレグの製造方法を記載し、それは樹脂を移送させるために材料を加熱及び加圧することを含む。特許文献3は、そのタックを改良する目的でプリプレグの表面上に付着性粉体を塗布させるためのシステムを記載する。特許文献4は、完全に予備含浸された材料を形成するために、静電手段によって炭素繊維で作られたテープに樹脂を付着させ、その樹脂の融点より上のその後の加熱ステップを伴うシステムを記載する。特許文献5は、繊維基材の一方の面側に導電シートを、そして繊維基材の他方の面側に帯電した粉体樹脂を使用し、その樹脂は、静電気力によって繊維のフィラメント間に付着され、その後でその樹脂を加熱溶融してプリプレグを形成する、プリプレグを製造する方法を記載する。
【0008】
半予備含浸繊維から作られるテープは、その繊維に樹脂層を塗布することによって得られ、しかし部品の製造工程中に高温高圧に晒されるまで、その繊維を樹脂で完全には湿らせない。
【0009】
いくつかの文献が半予備含浸繊維を処理する方法を記載しており、例えば特許文献6は、第1の熱硬化性樹脂層を含み、その両面が繊維強化材の層でコーティングされ、その層の1つが特定の粘着性を備えた樹脂の第2の層でコーティングされるセミプリプレグを記載する。特許文献7は、部分的な熱硬化性樹脂部と部分的な熱可塑性樹脂部とで構成されたマトリックスを有し、熱可塑性樹脂部は、電界紡糸法によって付着され、ナノファイバーからなる不織布によって形成された、織物繊維をベースとする複合材料を開示する。
【0010】
これらの解決法のいずれもが、自動テープ積層工程で使用されることができる、結合及び処理されたドライファイバから作られるテープを作るために連続形式で繊維の束を処理し、そしてこのようにして得られた処理された繊維から作られたテープの、注入又はRTMベースの製造工程に導入される能力を維持することを目的としないことに注目すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2015/0375461号明細書
【文献】特開2010-260888号公報
【文献】特開平9-241403号公報
【文献】特開昭61-220808号公報
【文献】特開2007-99926号公報
【文献】米国特許出願公開第2011/0171034号明細書
【文献】特開2012-107160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、繊維を処理する方法、その処理方法を実施するための装置、及びそれによって得られる、その処理方法によって処理された繊維で作られたテープを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の繊維を処理する方法は、少なくとも、
-繊維の束を、好ましくは1m/分~100m/分の速さで連続的に供給するステップと、
-第1の樹脂を、第1の樹脂の粒子の静電沈着によって繊維の束に塗布するステップと、ここで好ましくは、塗布される第1の樹脂の量は、繊維の束の重量の10%未満であり、第1の樹脂の粒子は、好ましくは1ミクロン~300ミクロンのサイズを有し、これは繊維の束の片面又は両面に塗布されることができ、
-加熱によって第1の樹脂の粒子を繊維の束に結合するステップと、これは粒子を完全に又は部分的に溶融させることができ、
-第2の樹脂のフィラメントを付着させることによって繊維の束の少なくとも片面に部分的かつ透過性の表面コーティングを施すステップと、ここで表面コーティングの厚さは、好ましくは0.2mm未満である、
を含む。
【0014】
好ましくは、第一の樹脂は繊維の束に直に塗布され、第二の樹脂の表面コーティングは第一の樹脂を備えた繊維の束に塗布される。しかしながら、これは本発明の概念を変えることなく、第2の樹脂の表面コーティングが繊維の束に直に施され、そして第1の樹脂が、第2の樹脂の表面コーティングを備えた繊維の束に塗布されることができる。
【0015】
この方法は、第1及び第2の樹脂を塗布する前に、繊維の束の幅を調整するステップを追加で含み、繊維の束の幅を調整することは、繊維の束の幅を狭くする凹面を備えた複数の第1のローラを繊維の束が通過する第1のサブステップと、互いに対向しかつ離された円筒面を備えた複数の第2のローラを、第2のローラ表面での(追加で第1のローラ表面での)繊維の束の摩擦を制御することによって繊維の束の幅を所望の値まで増大させるようにして、繊維の束が通過する第2のサブステップとを含む。
【0016】
本発明の方法はまた、第1の樹脂の粒子が繊維の束内で拡散されることができるように、第1の樹脂の粒子に熱及び圧力を加えるステップを追加で含む。
【0017】
本発明の例示の実施形態によれば、表面コーティングは、繊維の束の少なくとも片面に第2の樹脂の溶融フィラメントを螺旋状の形態で付着させ、それに続いてその冷却のためにコーティングされた繊維の束に空気流を当てることによって得られる。
【0018】
本発明の別の例示の実施形態によれば、表面コーティングは、繊維の束の少なくとも片面に静電沈着によって第2の樹脂のフィラメントを付着させ、それに続いてそのフィラメントに熱を加えて第2の樹脂を溶融させ、第2の樹脂が繊維の束で溶融され又は拡散され、そしてその冷却のためにコーティングされた繊維の束に空気流を当てることによって得られる。
【0019】
そのいずれの方法においても、表面コーティングを施すことは、繊維で作られたテープに結合力を与え、平面に平行な方向におけるその透過性を向上させるという目的に役立ち、それは通常は材料に特有のパラメータk11及びk22によって定義される。
【0020】
更に、本発明の方法はまた、貫通溝が繊維の束に作られるステップも含む。その貫通溝は、繊維の束と平行な方向に延びる。このステップは、テープの機械的特性を損なうことなく、平面に垂直な方向における繊維で作られたテープの透過性を向上させ、それは通常は材料に特有のパラメータk33によって定義される。
【発明の効果】
【0021】
従って、他のドライファイバを処理する方法に対して改善された特徴を有する、処理された繊維から作られたテープを得ることを可能にする繊維を処理する方法が、このようにして得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の方法を実施するための設備の第1の例示の実施形態の概略図を示す。
【
図2】本発明の方法を実施するための設備の第2の例示の実施形態の概略図を示す。
【
図3】繊維の束の幅を調節する調節ユニットの概略斜視図を示す。
【
図4】本発明の方法から得られる処理された繊維から作られたテープの概略図を示す。
【
図5】
図4において参照符号V-Vで示された、処理された繊維から作られたテープの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の繊維を処理する方法を実施するための設備の例示の実施形態を示し、それによって、その後の例えばATL(自動テープ積層)若しくはAFP(自動繊維積層)などの自動テープ積層工程又は手作業でのテープ積層で使用されるドライファイバから作られたテープが得られる。
【0024】
本発明の方法によって得られるドライファイバから作られるテープは、補強材と繊維のバインダーとから形成される。補強材として、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、天然繊維、又は複合材料の製造用の繊維構造を有する他のいずれかの材料を使用することが考えられており、そしてバインダーとして熱可塑性樹脂(コポリアミド、コポリエステル、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタン)、又は熱硬化性樹脂を使用することが考えられている。使用される繊維に対して最小の樹脂充填を有する繊維から作られたテープは、いずれにせよ本発明の方法によって得られる。
【0025】
本発明では、繊維を処理するための設備ユニットは、
図1及び2での左右に従って、それらの図に矢印で示された繊維の束(1)の方向に従って説明される。
【0026】
その設備は、処理設備の異なる段階に沿って繊維の束(1)を連続的に供給するための手段を含み、繊維の束(1)の供給速度は、好ましくは、限定ではないが1m/分~100m/分であり、繊維が処理方法全体を通して緊張した状態に保たれて、波打ちが発生するのを防ぐようにされる。
【0027】
上記手段は、巻出装置(2)と巻戻装置(3)とを含み、それらの間に繊維の束(1)が供給され、繊維が波打つことなく平らに保たれるようにして繊維の束(1)を案内すると共に、幅と単位面積当たり重量を変えることに加えて、異なる繊維形式に適応するために、それらの張力及び速度を調整することができる。巻出装置(2)は、「ロービング」形式、又は「トウ」形式、すなわち、一方向繊維フィラメントの組の形式で、例えばこれらの値は限定ではないが、0.25インチ~50インチの全幅で繊維を供給することができる。
【0028】
巻出装置(2)の後に、繊維の束(1)の方向において、その設備は、最適な樹脂の受け入れが設備のその後の段階で行われるように、繊維の束(1)の幅を調整して繊維を分布させるための調整ユニット(4)を任意で含む。
【0029】
図3は、調整ユニット(4)の好ましい実施形態を示し、それは繊維の束(1)の幅を狭くするように構成された第1のローラ(41)と、繊維の束の幅を広げるように構成された第2のローラ(42)とを備え、それによりローラ(41、42)を順に作動させることによって、繊維の束(1)を様々な幅及び単位面積当たり重量に適合させるために、繊維の束(1)が修正されることができる。
【0030】
第1の組のローラ(41)は凹面を備えた3つのローラを含み、それにより繊維の束(1)がローラ(41)の凹面に擦り付けられてその幅が減少するようにされる。第1のローラ(41)のうちの少なくとも1つのローラはモータ駆動され、それにより少なくとも1つのモータ駆動ローラの回転速度を制御することによって、繊維の束(1)の幅の減少が制御されることができる。
【0031】
第2の組のローラ(42)は円筒面を備えた2つのローラを含み、それらは互いに対向しかつ離されており、その間を繊維の束(1)が通過し、繊維の束(1)が第2のローラ(42)の間を通過する際に、繊維の束(1)の厚さを減少させる摩擦が発生されて、それによりその幅が増加するようにされる。したがって、第2のローラ(42)の間の離された距離及びそれらの少なくとも1つの回転速度を制御することによって、繊維の束(1)の幅の増加を制御することができる。
【0032】
調整ユニット(4)の後に、繊維の束(1)に第1の樹脂(51)の粒子を静電沈着によって塗布するための第1の樹脂付着ユニット(5)が配置されている。第1の樹脂付着ユニット(5)は、粉末形態の第1の樹脂(51)を塗布するように構成されたスプレーノズルを有し、第1の樹脂(51)は、好ましくは1ミクロン~300ミクロンの粒子サイズを有し、通常の表面単位面積当たり重量については、第1の樹脂(51)の量は繊維の束の重量の10%未満である。具体的には、繊維の束(1)の一部が与えられると、繊維の束(1)のその部分の重量の10%未満の量の第1の樹脂(51)が、繊維の束(1)のその部分に塗布される。塗布される第1の樹脂(51)のその粒子サイズ及び量は、その粒子が本方法のその後のステップで加熱されると、繊維の束(1)での第1の樹脂(51)の最適な拡散を可能にする。また、使用される樹脂のその割合は、このようにして得られる繊維で作られたテープの最終的な機械的性質及び部品の重量が影響を受けないことを可能にする。
【0033】
第1の樹脂(51)の粒子は負の電荷を与えられて、接地した繊維の束(1)のある領域に噴霧され、それにより繊維の束(1)のその領域は電気的に中性な領域に変換され、これが第1の樹脂(51)の負に帯電した粒子を引き付ける。したがって、粒子が繊維の束(1)と接触すると、それらは、それらが付着された繊維の束(1)の領域に保持される。
【0034】
使用されるスプレーノズルは、第1の樹脂(51)の粒子に印加される電流及び電圧の両方を調節することを可能にし、ここでそれらのパラメータは調整されることができて、本方法の有効性は粒子のサイズ、スプレーノズルから繊維の束(1)までの距離、及びこの方法に影響を及ぼす他の要因(例えば、空気流速及び圧力など)に応じて最適化される。更に、第1の樹脂(51)の塗布の領域を通る繊維の束(1)の速さを制御することによって、付着する第1の樹脂(51)の量を制御することができ、したがって無駄となる樹脂の割合が、他の従来のスプレー式の塗布技術よりも少なくなる。
【0035】
付着しなかった樹脂(51)の噴霧粒子は、そのような使用のための市販の装置により更に回収されることができ、そして工程に戻して導入するために篩分けされることができ、100%に非常に近い沈着効果を達成する。
【0036】
第1の樹脂付着ユニット(5)の後に、マイクロ波装置、抵抗オーブン又は赤外線ランプのような加熱ユニット(6)が配置され、加熱ユニット(6)は、熱可塑性樹脂を使用する場合には、制御された方法で樹脂を加熱及び溶融するためのものであり、それは樹脂を繊維の束(1)の中に拡散させることができ、熱硬化性樹脂を使用する場合には、樹脂を部分的に硬化させるためのものである。加熱ユニット(6)は、繊維の束(1)の片面又は両面に向けられることができる。加熱ユニット(6)はまた、繊維の束(1)の片面に向けられて、繊維の束(1)の反対面には、繊維の束(1)の反対面を加熱するための反射器が配置されることができる。
【0037】
第1の樹脂(51)の加熱後に繊維の束(1)に制御された冷却をするために、冷却ユニット(7)が加熱ユニット(6)の直後に任意に配置されることができる。
【0038】
任意で、その設備は、第1の樹脂付着ユニット(5)の後に配置された加熱ユニット(6)及び冷却ユニット(7)の後に加熱及び加圧ユニット(8)を有することもできる。加熱及び加圧ユニット(8)は、ピンチローラと、それに続く加熱ユニットとを含み、それらは第1の樹脂(51)の粒子が繊維の束(1)内に拡散されることができるように、第1の樹脂(51)の粒子に熱と圧力を加える。第1の熱可塑性樹脂の使用は、それが再び加熱されることを可能にし、ピンチローラの圧力と共に、第1の樹脂(51)のより深い浸透及び繊維の束(1)のより良好な結合を得る。
【0039】
加熱及び加圧ユニット(8)の後に、第2の樹脂(91)のフィラメントを付着させることによって繊維の束(1)の少なくとも片面に部分的に透過性の表面コーティングを施すように構成された第2の樹脂付着ユニット(9)が配置される。第2の樹脂(91)は、第1の樹脂(51)と同じであることも、異なることもできる。
【0040】
第2の樹脂(91)の表面コーティングを施すことは、繊維から作られたテープが、複合材料から作られる部品を得るためのその後のテープ積層工程において貼り付けられる時に繊維から作られたテープ間に間隙を生じさせる働きをする多孔性コーティングを、繊維の束(1)に生成する。それによって、その間隙が注入又はRTM工程中にテープ間での樹脂の流れを容易にするので、繊維の平面に平行な方向における複合材料の透過性を向上させる。表面コーティングは、繊維の束(1)の片面、又は繊維の束(1)の両面に配置されることができる。
【0041】
図1に示す例示の実施形態によれば、表面コーティングを施すことは、螺旋などの形態で第2の樹脂(91)の溶融フィラメントを付着させる螺旋工程によって得られる。その目的のために、溶融材料の小さなフィラメントによって第2の樹脂(91)を塗布するノズルが使用され、第2の樹脂(91)は回転されて繊維の束(1)の表面に付着されて螺旋を形成し、それによって繊維の束(1)の表面に透過層を生成する。第2の樹脂(91)の塗布は可変流量に基づいて行われ、それぞれの場合において繊維の束(1)の速さ及び第2の樹脂の所望の濃度に対して調整される。第2の樹脂付着ユニット(9)の直後に、冷却ユニット(10)が、例えば「渦」型のシステムを用いて空気流を当てるなど、樹脂でコーティングされた繊維の束(1)に空気流を当てるために配置される。これは、その後の工程において繊維で作られたテープを取り扱うために、特にその工程が素早さを要求する場合に必要である。任意で、繊維の束(1)の表面での第2の樹脂(91)の付着性を向上させるために、螺旋の適用前に加熱装置を配置することができ、その目的のために、加熱及び加圧装置(8)の加熱装置又は他の追加のものが、事前の加熱ユニットとして使用されることができる。
【0042】
図2に示す別の例示の実施形態によれば、表面コーティングを施すことは、静電沈着によって第2の樹脂(91)のフィラメントを沈着させるフロッキング工程によって得られる。第1の樹脂(51)の静電沈着とは異なり、小さい粒径分布を有する粒子の代わりに、小さな寸法の熱可塑性材料の樹脂のフィラメントが繊維の束(1)の表面に付着される。この例示の実施形態では、第2の樹脂(91)のフィラメントを溶かしてそれらを繊維の束(1)に結合するために、第2の樹脂付着ユニット(9)の後に加熱ユニット(11)を配置すること、及び加熱ユニット(11)の後に、例えば「渦」型のシステムを用いて空気流を当てるなど、樹脂でコーティングされた繊維の束(1)に空気流を当てるための冷却装置(10)を配置することが必要である。これは、螺旋工程の場合と同様に、その後の工程において繊維で作られたテープを、特に素早く、取り扱うために必要である。
【0043】
図1の第1の例示の実施形態では、第2の樹脂付着ユニット(9)及び冷却ユニット(10)の後に、又は
図2の第2の例示の実施形態では、第2の樹脂付着ユニット(9)、加熱ユニット及び冷却ユニット(10)の後に、繊維の束(1)と平行な方向に延びる貫通溝を繊維の束(1)に作るように構成された切断ユニット(12)が配置されている。
【0044】
好ましくは、切断ユニット(12)は、繊維の束(1)を貫通する、交互の分布により配置された針又はカムを備えた1つの回転切断ローラを有する。
【0045】
更により好ましくは、切断ユニット(12)は、交互の分布に従って配置された針又はカムを備えたいくつかの回転切断ローラを有する。切断ユニットの複数のローラは、好ましくは、切れ込み形成を向上させるために同期した方法で動作する。
【0046】
任意で、1つ又は複数のローラは、適切な温度で作業するための加熱手段を有する。針又はカムが加熱手段を有することもできる。次に、処理される繊維の束(1)は、最適な結果を得るために溝加工の前に冷却段階を有することもでき、その段階は冷却装置(10)自体又はその直後に配置された別の冷却装置にされることができる。
【0047】
切断ユニット(12)は、溝を形成する繊維を損傷することなく繊維の束(1)に溝を生成することが可能であり、溝を形成する繊維の束(1)の平面に対する直角方向における、処理された繊維から作られて最終的に得たテープの透過性を向上させる空間を、繊維の束に平行な方向に生成し、したがってその溝は、複合材料から最終部品を製造するその後の工程において、注入又はRTMによって、それを通る樹脂の拡散を容易にする。このユニットの出口での圧力は、それが溝形成の正しい実施を可能にするようにして、制御された状態を維持される。
【0048】
切断ユニット(12)の後であって巻き取り機(3)の前に、繊維の束(1)を冷却するための最終的な冷却ユニット(13)が任意で配置されて、リールに最終的に貯蔵し、それはその後にテープ積層工程で使用される。
【0049】
好ましくは、
図1、2に示されるに、第1の樹脂(51)を繊維の束(1)に直に塗布し、第2の樹脂(91)の表面コーティングは、第1の樹脂(51)を有した繊維の束(1)に施される。この適用順序では、第1の樹脂(51)が繊維の束(1)でより良好に拡散し、繊維の束(1)を結合し、そして第2の樹脂(91)が、その後のテープ積層工程において、処理された繊維から作られた複数のテープの組の結合を向上させることを可能にする。しかしながら、第2の樹脂(91)の表面コーティングを繊維の束(1)に直に施し、第2の樹脂(91)でコーティングされた繊維の束(1)に第1の樹脂(51)をその後で塗布することが可能である。
【0050】
また、溝(121)は、好ましくは、
図1及び
図2に示されるようにして、第1の樹脂(51)及び第2の樹脂(91)でコーティングされた繊維の束(1)に形成されるが、樹脂(51、91)を塗布する前に、その塗布の間に、又はその両方なしで形成されることもできる。
【0051】
このようにして、従来のドライファイバに対して改善された性質を備えた、処理されドライファイバの形態の処理及び結合された繊維で作られたテープが、本発明の方法により得られる。それは、第1の樹脂(51)の静電沈着による塗布及び第2の樹脂(91)の表面コーティングの結果として、使用される繊維に関して最小量の樹脂で処理及び結合された繊維から作られるテープを得ることを可能にする。
【0052】
図4に見られるように、そのようにして本発明の方法によって処理された繊維から作られたテープは、第1の樹脂の粒子(51)で処理され、第2の樹脂(91)の部分的かつ透過性の表面コーティングを備えた繊維の束(1)を含む。繊維の束(1)での第1の樹脂(51)の粒子は、繊維の束(1)の表面に不規則だが均一に沈着され、50ミクロン~300ミクロンの粒子サイズを有し、繊維の束の重量の10%未満の重量である。繊維の束(1)での第2の樹脂(91)の表面コーティングは、0.2mm未満の厚さを有する。
【0053】
繊維の束(1)を形成する繊維に一旦付着した第1樹脂(51)の上記粒子は、全体として繊維から作られたテープに結合を提供し、またAFP、ATL又は手作業でのテープ積層によるその後のテープ積層工程において熱を加えることによって、処理された繊維から作られたテープを他のその後のテープと結合する能力も与え、それによって繊維で作られた一体的な多層テープの生成を可能にする。
【0054】
第2の樹脂(91)の粒子が、繊維の束(1)を形成する繊維に付着するので、繊維(1)の平面に平行な方向における処理された繊維から作られたその後のテープの間での浸透性が得られ、複合材料で作られる部品を形成することを目的としたその後の注入工程が容易になる。
【0055】
このようにして得られた本発明の方法によって処理された繊維から作られたテープは、繊維の束(1)と平行な方向に、等価直径で0.1mm~2mmの寸法を有する貫通溝(121)もまた有し、それは繊維の束(1)に垂直な方向での繊維で作られたテープの適切な浸透性を達成し、複合材料で作られる最終部品を形成するために必要な注入工程を容易にするが、繊維を破断させることなく、そして非常に限られた角変形である。
図4に見られるように、溝(121)は、好ましくは交互の分布に従って繊維の束の長手方向について整列して分布し、それは繊維の束(1)のより良好な構造的完全性を可能にする。
【符号の説明】
【0056】
1 繊維の束
2 巻出装置
3 巻戻装置
4 調整ユニット
41 第1のローラ
42 第2のローラ
5 第1の樹脂付着ユニット
51 第1の樹脂
6 加熱ユニット
7 冷却ユニット
8 加熱及び加圧ユニット
9 第2の樹脂付着ユニット
91 第2の樹脂
10 冷却ユニット
11 加熱ユニット
12 切断ユニット
121 溝
13 冷却ユニット