IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーヨット ゲーエムベーハー ウント コー カーゲーの特許一覧

特許7037545カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置
<>
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図1
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図2
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図3
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図4
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図5a
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図5b
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図6
  • 特許-カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】カバー層のプラズマジェットの予穿孔による、少なくとも2つの部材層を連結するための方法及び連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20220309BHJP
   H05H 1/32 20060101ALI20220309BHJP
   B23K 10/00 20060101ALI20220309BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20220309BHJP
   F16B 25/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F16B5/02 C
H05H1/32
B23K10/00 501A
B23K20/12 G
F16B25/00 Z
F16B5/02 V
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019509537
(86)(22)【出願日】2017-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017071013
(87)【国際公開番号】W WO2018033645
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】102016115463.6
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513321652
【氏名又は名称】エーヨット ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レイス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルソン メシュート
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-042417(JP,A)
【文献】特開2013-099773(JP,A)
【文献】特開平10-166155(JP,A)
【文献】特開平11-111492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0213954(US,A1)
【文献】国際公開第2015/088069(WO,A1)
【文献】特表2010-531737(JP,A)
【文献】特開2014-134279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/00
F16B 25/10
F16B 5/02
F16B 5/08
B23K 10/00
B23K 20/12
H05H 1/32
B29C 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結要素(34)によって少なくとも1つのカバー層(12)と少なくとも1つのベース層(14)とを連結するための方法であって、
前記カバー層(12)に貫通孔の形のパイロットホール(30)を形成し、前記パイロットホール(30)に対応する前記ベース層(14)の領域には予穿孔せず、
ショルダを有する前記連結要素(34)は、前記カバー層(12)の前記パイロットホールを通して前記ベース層(14)に連結されるものであり、
前記連結要素は、前記ショルダによって前記カバー層(12)を所定位置に保持するものであり、
特徴とするところは、
前記パイロットホール(30)は、前記ベース層(14)上に一時的に保持された前記カバー層(12)にのみ形成され、
前記パイロットホール(30)が前記カバー層(12)に形成された後、前記連結要素は、前記カバー層(12)を通過して案内され、前記予穿孔されていないベース層(14)に連結されるものであり、
前記パイロットホール(30)は、プラズマジェット(20)によって形成されるものである、方法。
【請求項2】
前記プラズマジェット(20)は、非転送電気アークによって生成され、前記プラズマジェット(20)は前記カバー層(12)を溶解させ、前記プラズマジェットの圧力は、溶解した材料を変位するように作用して前記パイロットホール(30)を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パイロットホール(30)を形成するときに変位する材料は、その変位の過程で同心ビード(32)を形成するのに使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記同心ビード(32)は、前記プラズマジェットによって前記パイロットホール(30)を形成するときに回転する型部材(82)によって作成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プラズマジェットを噴出するプラズマノズルと前記カバー層との間の距離は、前記パイロットホールの形成の間、変化する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマジェット生成のための電気アークを発生させるのに使用される電流は、予穿孔期間tの間は変化し、その電流は、プレアーク期間tの間はプレアーク電流Iであり、メイン電流期間の間はメインアーク電流Iであって、それはプレアーク電流Iよりも高く、ポストアーク期間tの間はポストアーク電流Iであり、それはプレアーク電流Iよりも高く、メインアーク電流Iよりも低い、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記連結要素(34)の前記ベース層(12)への連結は、摩擦溶接、くぎ打ち、摩擦くぎ打ち、又は穴形成ねじ込み、特に、フロードリルねじ込みを使用して達成される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのカバー層(12)と少なくとも1つのベース層(14)とを結合するための装置(50)であって、
前記装置は、パイロットホール形成ユニット(60)と結合ユニット(70)とを備え、これらのユニットは、連結要素(34)によって前記カバー層(12)と前記ベース層(14)とを結合するように相互作用するものであり、
前記パイロットホール形成ユニット(60)は、前記カバー層(12)にパイロットホール(30)を形成するものであり、
前記結合ユニット(70)は、前記パイロットホール(30)を通して前記連結要素(32)を前記ベース層(14)に連結するものであり、
特徴とするところは、
前記パイロットホール形成ユニットは、プラズマジェット予穿孔ユニット(60)を備え、
前記プラズマジェット予穿孔ユニット(60)は、高温のプラズマジェットを噴出するノズルオリフィスを有するプラズマノズル(62)を備え、
前記プラズマノズル(84)と同心に型要素(24,66,82)が配置され、前記型要素は、前記プラズマノズルを前記カバー層(12)から離隔させるものであり、
前記型要素(24,66,82)は、溶解物の変位を放射方向および軸線方向に制限するように設計されている、装置。
【請求項9】
前記プラズマジェット予穿孔ユニット(60)は、非転送アークによってのみ、プラズマジェット(20)を生成する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記型要素(24,66,82)は、高温耐熱材料又はセラミック材料から形成される、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記型要素(82)は回転可能に設計される、請求項8~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記型要素(82)は、型要素(82)の中心孔に対して、斜め、特に垂直であり、通気口である少なくとも1つの穴(86)を有する、請求項8~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記プラズマノズル(18,62,84)及び前記型要素(24,66,82)は、構造ユニット、特に組合せ要素(80)として設計される、請求項8~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記型要素(24,66,82)は、コーティング/合金を有する、請求項8~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記ノズルの開口部は、中心の円形切抜きを有する、請求項8~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記ノズルの開口部は、円の周囲に横たわる複数の円形切抜きを有する、請求項8~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
保持押下げ装置は、パイロットホール形成操作の間、及び連結操作の間、部材層に保持押下げ力を働かせるために使用されるよう提供される、請求項8~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
結合ユニット及び/又はパイロットホール形成ユニットには、保持押下げ装置(74)が設けられる、請求項8~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
制御ユニットが設けられ、前記制御ユニットは、結合されるべき部材層の材料特性に依存する操作パラメータを格納するパラメータメモリと相互作用するものである、請求項8~18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記操作パラメータは、パイロットホールの大きさによって決まる、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の連結要素によって、少なくとも2つの部材層を連結するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの板状の構成要素を連結させるためには、例えばDE19630518C2号公報から公知であるように、貫通孔を作り、連結要素によって、2つの部材層を連結することが必要である。この種類の連結の欠点は、貫通孔は、限られた数の連結方法の使用しか可能にせず、特にセルフタッピンねじの使用が制限されることである。
【0003】
この欠点は、少なくとも2つの部材層を、1つの連結要素によって連結することで排除可能である。その目的のため、パイロットホールは、パイロットホールの近くのベース層内に予穿孔(予めの穿孔)することなく、最上層に作られる。ショルダを有する連結要素は、カバー層内のパイロットホールを通って、ベース層に通常は連結される。その連結要素は、そのショルダを使用して、カバー層を適所で保持する。そのような方法は、例えばDE102012005203A1号公報から公知である。同様の方法が、DE102004042622B4号公報に開示されている。
【0004】
しかしながら、パイロットホールを使用した連結方法は通常、パイロットホールの機械加工に関して問題があり、フライス削り、ドリル、切断又は穴あけと同様に、激しい磨耗及び環境汚染をもたらす。これは、22MnB5のような、高強度又は超高強度の金属薄板の処理に特に当てはまる。
【0005】
本発明の目的は、互いの上にある少なくとも2つの部材層を連結するために特に有利な方法を提供することであり、少なくとも1つのカバー層内にパイロットホールを作るステップを含む。
【0006】
この目的は、請求項1の前文に記載の特徴と併せて、請求項1の特徴部分の特徴によって達成される。
【0007】
下位クレームは、本発明の有利な実施例を表す。
【発明の概要】
【0008】
公知の方法で、連結要素によって少なくとも2つの部材層を連結させるための方法においては、少なくとも1つのカバー層と少なくとも1つのベース層を含む1つの部材層を備えるが、パイロットホールは、パイロットホールの近くのベース層内に予穿孔することなく、カバー層に作成される。カバー層のパイロットホールを通して、ショルダを有する連結要素はパイロットホールに挿入され、ベース層に連結される。連結要素はそのショルダを使用して、カバー層を適所で保持し、ベース層に確実に連結され、及び/又はしっかりと結合され、及び/又は強く固定される。
【0009】
本発明に従えば、貫通孔の形のパイロットホールが、プラズマジェットのみを使用して、少なくとも1つのカバー層内に作られるように提供される。カバー層は、ベース層の適所で少なくとも一時的に保持される。一時的に互いに固定されるカバー層とベース層とを保持することにより、パイロットホールが作られるベース層内の同じ位置に、連結要素を置くことが可能となる。従って、十分に大きな層を、それらの重量及び摩擦を使用するだけで、互いに対して定位置で保持することが可能となる。2層を固定する別の方法は、連結構造を使用して、最小限の動きで、互いに対して適所で2層を固定する方法、あるいは外部保持装置又は保持押下げ手段を使用して、互いに対してそれらを固定する方法である。カバー層内にパイロットホールを作成した後、連結要素は、カバー層、すなわちカバー層内のパイロットホールを貫通され、その中にパイロットホールを有さないベース層に連結される。従ってパイロットホール作成プロセスは、貫通孔が少なくとも1つのカバー層内に作成されるとすぐに終結し、ベース層は、いずれにしてもそこに未だ貫通孔は無く、依然として大部分は損傷を受けていない。パイロットホール作成プロセスは、ある期間の後、プラズマジェットのスイッチを切ることで終結される。それは、とりわけ、ノズルとカバープレートとの間の距離、ガスの圧力、ノズルの形状、アークのエネルギー、ガスの種類、及び各々の材料で作成されるパイロットホールの寸法次第である。
【0010】
方法の基になる各々のパラメータの設定値は、各々のケースに対して決定され、そしてパイロットホール作成プロセスに対して入力変数として利用可能である。
【0011】
パイロットホールを作成するためにプラズマジェットを使用することでまた、部品の変形を生じさせることなく、より柔軟なベース層の上に、固い又は大変固いカバー層にパイロットホールを作成することができる。本発明の範囲内において、ベース層と、後の養生のために適用されるカバー層との間に接着剤層を有する部材層もまた、処理可能である。特に、カバー層はベース層よりも固い。
【0012】
本方法の好ましい実施例に従えば、プラズマジェットは、非転送アークによって生成される。高温プラズマジェットはカバー層を溶解し、結果として生じるプラズマの圧力は、溶解材料を変位させ(横に押しやる)、従ってパイロットホールを作成する。以下では、このプロセスをプラズマジェット予穿孔と言い、溶解切断タイプのプロセスである。パイロットホールから変位された溶解材料が、最上部の部材層の表面を硬化し、従ってカバー層と結合するので、追加の処理を要する予穿孔のステップにとどまるいかなるチップ又はスラグも存在しない。
【0013】
これが、本質的に小さな外形寸法を有する、プラズマジェット予穿孔ユニットを使用したパイロットホール作成プロセスが、追加の抽出装置を必要としない理由である。これにより、例えば連結ロボットの付属として、それを生産ラインに統合することが容易になる。
【0014】
本発明に従ったプラズマジェット予穿孔において、電気アークが、電極、特にタングステン電極と、プラズマノズルとの間で生成される。このアークは、プラズマの少なくとも一部をイオン化する。それは、プラズマジェット内のカバー層内に流れ、従って最上層を選択的に溶解させるために、カバー層内にエネルギーの投入を提供する。プラズマジェットは、非転送アークによって独占的に活性化される。
【0015】
アークの電源を切ると、プラズマジェットを通って提供されるエネルギーは直ちに不通になる。変位された溶解もまた直ちに、放熱の結果として表面全体を凝固させ、穴の輪郭のみを残す。本発明の方法は特に、0.5mmと50mmとの間のカバー層の材料の厚さに適している。
【0016】
パイロットホールが少なくとも1つのカバー層内の連結位置で作成された後、連結操作は、連結要素を、パイロットホールを通って、ベース層に挿入させることにより実行可能であり、カバー層に対するベース層の位置は変わらない。全く損傷を受けていないベース層が連結のために利用可能であるので、多くの連結プロセスが使用可能であり、例えば、摩擦溶接、リベット打ち、くぎ打ち、又はねじのねじ込み、特にフロードリルねじ込みによる連結が可能となる。
【0017】
単なる穴を形成するプロセスに追加して、プラズマジェット予穿孔は、追加のエネルギー投入により、連結要素によってベース層のより速い浸透の一助となり得る。
【0018】
電気アークは、プラズマノズルの中で絶えず燃焼する。プラズマノズルは、通常、水冷式の銅のノズルとして設計され、ガスを熱する。それは、プラズマノズルから高温プラズマジェットとして現れ、カバー層内に流れる。
【0019】
切断プロセスが転送アークによって達成される従来のプラズマアーク切断と対照的に、最上層に導入されるエネルギーがほとんどないので、下のベース層を激しく損なうことなく、特定のパイロットホールが、所望のカバー層内に作成されることが可能となる。特に、カバー層が通電されなくてもよいのは、エネルギーが、プラズマガスを通って排他的に送られるからである。
【0020】
機械的処理とは対照的に、プラズマジェット予穿孔は、予穿孔/連結システムの対応する複雑な寸法取りを必要とする重要な処理力を生成しない。
【0021】
別の好ましい実施例に従えば、システムのパラメータは、所望のパイロットホールの直径が得られるように設定される。パイロットホールの寸法は処理パラメータにのみ依存するので、直径は、例えば、ツールを変更することなく、一定の限度内で調整又は設定可能である。これは、パイロットホール作成プロセスにおいて、また異なるカバー層に対しても、高い柔軟性を可能にする。
【0022】
好ましくは、大電流のプロセスがプラズマジェットを生成するために使用され得る。これは、パイロットホール作成プロセスに対して、十分に高いプラズマジェットパワーを提供する。大電流のプロセスを使用した電気アーク生成の好ましい電流は、100アンペアと300アンペアとの間である。
【0023】
本発明に従えば、アーク生成のための電流の強さは、予穿孔期間tにおいて変更可能である。特に、プレアーク期間tの間で使用される電流は、プレアーク電流Iであり、メイン電流期間tの間で使用される電流は、メインアーク電流Iである。メインアーク電流Iは、プレアーク電流Iよりも高い。さらに、ポストアーク電流期間tの間で使用される電流は、ポストアーク電流Iであり得、プレアーク電流Iよりも高く、メインアーク電流Iよりも低い。
【0024】
従って、正確な穴の設計が達成可能であるのは、特にポストアーク電流期間において、メインアーク電流期間の間に導入されるカバープレートの溶解が、アークの減じられたパワーにより直ちに溶解を変位させるのみで、ベース層の更なる溶解に帰着しないからである。
【0025】
カバー層からプラズマノズルまでの距離は、カバー層へ十分に熱を伝達できるために選択され、ベース層の溶解を避ける。正確に距離を設定するために、カバー層までのプラズマノズルの距離を測定することは有利である。
【0026】
穴形成操作にさらに影響を与えるために、プラズマノズルとカバープレートとの間の距離は、穴形成操作の間、変更可能である。これにより、エネルギーの投入とプラズマジェットの有効範囲を、必要に応じて調整することが可能である。
【0027】
代わりに、スペーサが備えられてもよい。この要素は、サポート及びスペーサ手段として使用可能であり、ほとんど手間をかけずに、プラズマノズルとカバー層との間の距離を、正確で確かに調整できる。全ての不活性ガス、特にアルゴンが、基本的にプラズマガスとして適している。
【0028】
好ましくは型要素を使用して、パイロットホール形成操作におけるプラズマジェットによって変位されたカバー層の溶解は、パイロットホールを取囲む所望の形状のビード内に形成される。型要素は、中空のシリンダの内縁が凹んで丸くなるように、すなわち、溝を有するように、好ましくは設計され得る。
【0029】
特に、改良されたビード形成にとって、型要素は、パイロットホールがプラズマジェットによって作成されるように回転可能である。
【0030】
ビードにより、連結要素は、連結要素とカバー層との間で放射状方向に明確な連結をもたらすことができる。連結要素は後で挿入され、そのヘッドの底面に、ビードを収容するように構成された凹部、特に溝を有する。これにより横の引張強度が増加する。さらに、これは、ジョイントの密封を改良できる。
【0031】
電気アーク生成のソースは、約20ボルト、特に18ボルトと25ボルトとの間の直流電圧で、好ましくはアークを生成する。
【0032】
プラズマは好ましくは、1分間に約20リットルの流速でプラズマノズルから排出される。従って、プラズマノズルのプラズマの圧力及び直径は、十分な熱エネルギーが、パイロットホールを生成するために伝達され得るように、互いに適合可能である。
【0033】
生産されるパイロットホールに応じて、異なるプラズマノズルが使用可能であり、装置と関連して後述する。
【0034】
本発明の別の側面に従って、少なくとも1つのカバー層と、少なくとも1つのベース層とを含む構成要素となる連結を連結するための装置が備えられる。パイロットホール形成ユニット、及び連結要素を介して部材層を連結するための連結ユニットは、相互作用する。
【0035】
本発明に従って、パイロットホール形成ユニットは、プラズマジェット予穿孔ユニットを含む。プラズマジェット予穿孔ユニットは、プラズマノズル及び電極を含む。アークは、少なくとも部分的にプラズマガスをイオン化するために、プラズマノズルと電極との間で生成される。上述のように、パイロットホールは、カバー層に流れるプラズマジェットによって作成される。
【0036】
連結は連結要素によって作成され、少なくとも1つのカバー層内に作成されるパイロットホールを通って、損傷を受けていないベース層に連結する。連結ユニットは、摩擦撹拌溶接ユニット、リベットユニット、ねじ回しユニット又は同様のものであり得る。
【0037】
プラズマジェット予穿孔ユニットは好ましくは、予穿孔操作において生産される溶解を調整するための型要素であり得、型要素は、カバープレート上に配置される。
【0038】
特に、型要素はプラズマノズルに同軸で配置され、プラズマジェットが、パイロットホールが形成される近くに、型要素が通るのを許可する。
【0039】
型要素は、少なくとも放射状方向に、溶解の移動を制限するが、軸線方向の溶解の移動をも制限する外形を有し得る。
【0040】
型要素は、凹んだ丸い領域を有してもよく、カバー層からの溶解材料が凹型で収容されることを許可する。この方法で設計される型要素は、パイロットホールの回りにビードを生産する。この理由により、型要素をまたビード作成手段とも呼ぶ。
【0041】
型要素は好ましくは、プラズマジェットが導かれる型要素の中心孔に、斜め、特に垂直な少なくとも1つの穴を有する。少なくとも1つの穴は通気口である。これは、プラズマが型要素の内側で蓄積し、場合によっては意図的でなくビードを変位又は損なうことを防ぐ。
【0042】
これは、ビードがビード作成手段と接触した後においてプラズマガスが漏れるのを可能にする。
【0043】
これが意味するのは、型要素はカバー層上に直接配置可能であり、従って、一方ではスペーサ、そして他方では保持押下げ装置として役立つということである。
【0044】
型要素は好ましくは、プラズマノズルから一定の距離、又は調整可能な距離で配置可能である。これにより、プラズマノズルとカバー層との間の距離は、各予穿孔操作の間、容易でかつ信頼できる方法で調整できる。
【0045】
好ましくは、型要素はまた、冷却された設計であり得、及び/又は材料の適用に耐えるコーティングを有し得る。型要素の設計及び冷却特性は、十分な熱が溶解プロセスにとって利用可能である程度まで、プラズマジェットの放熱を妨げるようになってもよい。
【0046】
プラズマジェット予穿孔ユニットはまた、型要素を回転するためのドライブを有し得る。型要素の回転により、予穿孔プロセスで変位された溶解はまた、例えば、自動車産業における生産ラインで使用されるような、オーバーヘッド式の応用において、より均一なビード形成に帰着可能である。特に、型要素は、プラズマノズルに対して回転可能に設計可能である。
【0047】
他の有利な実施例に従えば、型要素は、高温耐熱材料又はセラミックで形成され得る。
【0048】
特に有利な設計が達成されるのは、プラズマノズル及び型要素が、統合して成形される場合である。
【0049】
本発明の別の有利な実施例において、装置は保持押下げ装置を含むことが可能で、予穿孔処理の間及び/又は連結処理の間、部材層に保持押下げ力を与える。
【0050】
保持押下げ装置の使用により、正確な連結操作が可能となる。さらに、保持押下げ力は、ベース層とカバー層との間、又は作成されるパイロットホールから離れた複数のカバー層の間にあってもよい接着剤を促すよう作用することができる。これは、予穿孔の間、粘着性の蒸気が生成されず、粘着層を取除くエネルギーが必要ないという利点を有する。保持押下げ力は、好ましくは0.5と1kNとの間である。
【0051】
連結ユニット及び予穿孔ユニットは、装置の連結保持押下げ手段を使用可能である。代わりに、連結ユニット及び/又は予穿孔ユニットは、保持押下げ装置を有し得る。
【0052】
プラズマノズルは、異なる開口部の直径及び開口部の形状を有する、異なるノズル開口部を有し得る。これらは、穴形成行動に作用する。例えば、ノズル開口部は、1つの中央の円形切抜き及び/又は円の円周にある複数の円形切抜きを有してもよい。
【0053】
別の好ましい実施例に従えば、装置は、パラメータメモリを含む。パラメータメモリは、プラズマジェット予穿孔ユニットのための対応する材料の組合せに対して、操作パラメータを格納する。従って、操作者は、層が連結される材料及び寸法、そして好ましくはパイロットホールの寸法のための適切な値を容易に用いることができる。これは、カバー層においてのみパイロットホールを作成する信頼できる方法である。操作者はまた、上位の制御ユニットであってもよい。
【0054】
さらに別の好ましい実施例において、装置は、プラズマジェット予穿孔ユニット及び/又はそこに取付けられる連結装置を有する少なくとも1つのロボットアームを備えてもよい。
【0055】
従って、上述の方法で、少なくとも1つのカバー層を含む構成要素の連結を生産することが可能である。ベース層上にあるカバー層は、パイロットホールを取囲むビードを有する。連結要素のシャフトはパイロットホールを通って延びる。シャフトは、少なくとも1つのベース層に連結され、そのヘッドは、パイロットホールを取囲むビードが、ヘッドの底面の溝内に収容されるよう構成される。特にカバー層は、ベース層よりも固い。
【0056】
本発明の追加の利点、特徴及び可能な適用が、以下の説明から収集可能であり、図面において説明する実施例を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】同軸に配置された型要素を使用して、パイロットホールの作成プロセスにおけるプラズマジェット予穿孔ユニットの概略図である。
図2】カバー層で作成されたパイロットホールの2次元断面図である。
図3】連結ステップの概略図である。
図4】本方法に従って作成された連結部の図である。
図5a】本発明に従ったパイロットホール作成プロセスにおける装置の図である。
図5b】本発明に従った連結部作成プロセスにおける装置の図である。
図6】プラズマノズルと一体形成された通気口を有する型要素の図である。
図7】予穿孔プロセスの間の電気アークの電流曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明に従った連結方法における第一ステップを示す。この方法に従えば、2つの重ね合わさった層12及び14が、互いに連結される。この実施例において、カバー層12は、ベース層14よりも固い。
【0059】
最初に、プラズマジェット予穿孔ユニット16を使用して、パイロットホールが、カバー層12内に作成される。プラズマジェット予穿孔ユニット16は、プラズマノズル18を備え、その中でプラズマジェット20が生成され、電気アークは、タングステン電極22と、プラズマノズル18との間で生産される。ここで、プラズマノズル18を通って流れるガスはイオン化され、そして高温プラズマジェット20の形で、カバー層12に排出される。プラズマジェット20は、パイロットホールの近くで、カバー層12の溶解を実行し、プラズマ圧力は、穴の領域から、カバー層12の溶解材料を放射状に変位させる。
【0060】
さらに、型要素24は、カバー層12上に配置される。この要素24は、中空の円筒形のスリーブとして設計され、溶解の移動を放射状方向に制限し、従って、型要素24によって明確に範囲を定められる円周のビードの形で、輪状の高さを作成する。
【0061】
プラズマジェット予穿孔ユニット16の操作パラメータは、予穿孔されるカバー層12の特徴に従って設定される。
【0062】
図2は、本発明の方法によって生産されるカバー層12におけるパイロットホール30の図である。パイロットホール30はビード32によって円周に取囲まれる。パイロットホール30の近くに位置するベース層14の領域は、完全に損傷を受けずに保持される。従ってその全材料の厚さは、連結要素との連結のために本質的に使用され得る。
【0063】
図3は、本発明の方法に従った連結ステップの図であり、フローホールフォーミングスクリュー(flow-hole forming screw)34は、カバー層12内に備えられるパイロットホール30内に挿入される。次のステップとして、フローホールフォーミングスクリューは、圧力及び回転を使用して、ベース層14内にねじ留めされる。そのステップで、スクリューは縁穴及びねじ山を刻み、従って図4で示すように、ねじ連結部を生産する。
【0064】
図4は、フローホールフォーミングスクリュー34によって連結される部材層12,14の図である。フローホールフォーミングスクリュー34は、ベース層14にねじ留めされ、そのショルダを使用してベース層14に対してカバー層12を押付け、それを軸線方向に確実に固定する。
【0065】
ビード32を収容するよう設計される輪状の溝は、フローホールフォーミングスクリュー34のヘッドの底面に備えられる。これにより、ねじを逆方向へ維持する効果が改善される。
【0066】
図5aは、本発明に従った、2つの部材層を連結するための装置50の図である。この装置50は、プラズマジェット予穿孔60及び連結装置70を備える。
【0067】
上述のように、プラズマジェット予穿孔60は、プラズマノズル62及びタングステン電極64を備える。直流電圧及び大電流を使用して、電気アークは、タングステン電極64とプラズマノズル62との間で生成される。さらに、型要素66は、プラズマノズル62の前に位置し、プラズマジェットによって変位された溶解に、所望の外形を与えるよう使用される。
【0068】
さらに、本発明に従った装置50は、制御ユニット(図示なし)を備え、それはまず、プラズマジェット予穿孔ユニット60を連結形成層の上に配置し、その後、パイロットホールが作成されると、図5bで示すように、この場所で連結手段を配置する。
【0069】
図5bは、連結場所の適所で、及びこの場所での、穴の開いていないより柔軟な層との連結のための連結要素の配置プロセスにおける連結装置70を示す。
【0070】
これは、従来の連結プロセスによって、大きな処理力を使用することなく、固いカバー層とより柔軟な層とを含む部材層を連結するための、速くて安価な方法である。
【0071】
図5a及び5bに一例として示すように、連結装置70及びプラズマジェット予穿孔ユニット60は、共通の保持押下げユニット78を使用可能で、それは、予穿孔操作の間及び連結操作の間の両方、保持押下げ力を部材層に働かせる。
【0072】
図6は、型要素82及びプラズマノズル84を備えるワンピースの組合せ要素80の断面図である。組合せ要素の円錐形の先細の上部は、プラズマノズル84を形成する。プラズマノズルと隣接する部分は、型要素82を構成する。通気口86は、組合せ要素80の軸線へ垂直に延びる。
【0073】
これにより、プラズマガスは、束ねられた態様で、プラズマノズル84を通って導かれる。構成要素によってもたらされる逆流は、通気口86を通って放出される。
【0074】
型要素82内の通気口86は、型要素内にプラズマガスが蓄積するのを大いに妨げ、従って、パイロットホール、及びパイロットホールを取囲むビードは、より正確に形成される。
【0075】
型要素82は、溶解が横方向に出て行くことを防ぐので、従って、プラズマジェットによってカバー層に作成されるパイロットホールを取囲むビードは、より均一に形成される。
【0076】
図7は、予穿孔操作の間、電気アークを生成するために使用される電流Iの曲線の典型的な質的な図である。プレアーク電流期間tの間、アークはプレアーク電流Iを使用して生成される。パイロットホールがカバー層内に作成される期間を本質的に表すメインアーク電流期間tの間、アークは、メインアーク電流Iを使用して生成される。これは、特に200アンペアである。パイロットホールがカバー層内に作成されると、すなわち、メインアーク電流期間の後、アークは、ポストアーク電流期間の間、ポストアーク電流Iを使用して生成される。ポストアーク電流は、メインアーク電流よりも低く、そして、溶解を横方向に単に変位させるには十分であるが、ベース層内に穴を作成しない強度である。特に型要素と組合せて、これにより、比較的正確なビードの外形が、カバー層の溶解物質から生産される。
【0077】
上述の電流期間は、少なくとも1つのカバー層及びベース層の材料及び厚さに適応される。
【符号の説明】
【0078】
12 カバー層、14 ベース層、34 フローホールフォーミングスクリュー、20 プラズマジェット。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7