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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】結晶性シートの形成装置及び形成方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/22 20060101AFI20220309BHJP
   C30B 15/06 20060101ALI20220309BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C30B15/22
C30B15/06
C30B29/06 503
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019514031
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017048848
(87)【国際公開番号】W WO2018052693
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】62/395,732
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/455,437
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エル ケラーマン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ディー カーナン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック エム カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ダウェイ スン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マレル
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0080905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のガス流路及び第二のガス流路を有する結晶化器を含む、結晶性シートの形成装置であって、
前記結晶性シートを引き抜く側が下流であるとき、前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路が、前記結晶化器内を通って、上流端と下流端との間を前記結晶化器の下面まで延び、
前記第一のガス流路は前記第二のガス流路よりも前記下流端の近くに配置され、前記第一のガス流路にはヘリウム又は水素を含有する第一のガス源が接続され、
前記第二のガス流路には水素もヘリウムも含有しない第二のガス源が接続され
前記第二のガス流路が第一の距離をもって前記上流端から離れており、前記第一のガス流路が第二の距離をもって前記第二のガス流路から離れており、前記第一のガス流路が第三の距離をもって前記下流端から離れており、前記第三の距離が前記第一の距離よりも大きい、結晶性シートの形成装置。
【請求項2】
前記結晶化器が冷ブロック及び第二のブロックを含み、
前記冷ブロックは前記第一のガス流路を含み且つ冷ブロック温度を有し、
前記第二のブロックは前記冷ブロックに隣接して配置され且つ前記第二のガス流路を含み、前記第二のブロックが前記下面部分に沿って第二のブロック温度を有し、前記第二のブロック温度は前記冷ブロック温度よりも高い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記結晶化器に隣接して配置された断熱ブロックと;
水素もヘリウムも含まない第三のガス源と;
前記第三のガス源に接続されたガス分配アセンブリと;を更に含み、
前記ガス分配アセンブリが、複数のガス開口部を含み且つ前記断熱ブロックの下端に沿って配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
融液を収容するためのハウジングと;
結晶性シートを引き抜く側が下流であるとき、前記融液の上方に配置され、且つ、上流端、下流端、及び下面を有する結晶化器と;
第一のガス流路に接続された第一のガス源と;
第二のガス流路に接続された第二のガス源と;
を含む装置であって、
前記融液は融液温度を有し且つ融液表面を定め、
前記下面は前記融液表面に面し、前記結晶化器は少なくとも前記下面部分において第一の温度を生じ、前記第一の温度は前記融液温度よりも低く、前記結晶化器は前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路を有し、前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路は前記下面まで延び、前記第一のガス流路は前記第二のガス流路よりも前記下流端の近くに配置され、
前記第一のガス源はヘリウム又は水素を含有し、
前記第二のガス源は水素もヘリウムも含有せず、
前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路が、前記結晶化器の前記上流端と前記下流端との間に非対称的に構成され、前記結晶化器が中心線を更に含み、前記第一のガス流路及び前記第二のガス流路が前記中心線と前記上流端との間に配置される、結晶性シートの形成装置。
【請求項5】
前記結晶化器の下流に配置された結晶引上げ器を更に含み、前記結晶引上げ器が引き方向に沿って可動である、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記結晶化器が冷ブロック及び第二のブロックを含み、
前記冷ブロックは冷ブロック温度を有し且つ前記第一のガス流路を含み、
前記第二のブロックは前記冷ブロックに隣接して配置され且つ前記第二のガス流路を含み、前記第二のブロックが前記下面部分に沿って第二のブロック温度を有し、前記第二のブロック温度は前記冷ブロック温度よりも高く前記融液温度よりも低い、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記第二のガス源が第一の不活性ガス源を含有し、前記第一のガス流路が前記第一の不活性ガス源に接続される、又は前記第一の不活性ガス源とは別の第二の不活性ガス源に接続される、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記結晶化器に隣接して配置された断熱ブロックと;
水素もヘリウムも含まない第三のガス源と;
前記第三のガス源に接続されたガス分配アセンブリと;を更に含み、
前記ガス分配アセンブリが、複数のガス開口部を含み且つ前記断熱ブロックの下端に沿って配置される、請求項に記載の装置。
【請求項9】
結晶性シートを融液表面に沿って結晶化させつつ、非対称的なガス流を結晶化器から融液の前記融液表面へと向けることを含む方法であって、前記向けることが、
第一のガス流を、第一のガス流路を通じた第一の方向に沿って、前記結晶化器に通すことと;
第二のガス流を、第二のガス流路を通じた前記第一の方向に沿って、前記結晶化器に通すことと;を含み、
前記第一のガス流はヘリウム又は水素を含有し、
前記結晶性シートを引き抜く側が下流であるとき、前記第二のガス流路は前記第一のガス流路の上流に配置され、前記第二のガス流は水素もヘリウムも含有せず、
前記第一のガス流を通すことによって、前記第一のガス流路の近傍で、前記結晶性シートが形成し、
前記方法が、前記結晶化器の下流に配置された結晶引上げ器を用いて、前記融液の前記融液表面に沿って引き方向に前記結晶性シートを引くことを更に含む、結晶性シートの形成方法。
【請求項10】
前記結晶化器の下方にあり前記融液表面に沿った第一の領域において前記結晶性シートが形成し、前記結晶化器と前記結晶性シートとの間の前記第一の領域においてガス渦が形成し、前記第一の領域の上流に配置された第二の領域における前記結晶化器と前記融液表面との間にはガス渦が形成しない、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の方向が前記融液表面に対して垂直であり、前記方法が、
前記結晶化器が前記融液に対して前記第一の方向に沿って第一の間隔で配置されるとき、第一の不活性ガス流を前記結晶化器に通すことと;
前記結晶化器を前記融液に対して前記第一の方向に沿って第二の間隔まで移すことと;
前記結晶化器が前記第二の間隔で配置されるとき、第二の不活性ガス流としての前記第二のガス流を前記第二のガス流路に通しつつ、ヘリウムガス流又は水素ガス流としての前記第一のガス流を前記第一のガス流路に通すことと;
を更に含み、
前記第二の間隔は前記第一の間隔よりも小さい、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年9月16日に出願され且つ参照により本明細書に全体として組み込まれる「結晶性シート成長システム及び方法」と題する米国仮特許出願第62/395,732号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本実施形態は、融液からの結晶性材料の成長に関し、より詳しくは、融液を冷却するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンウェハ又はシートは、例えば、集積回路又は太陽電池の産業において使用されることがある。再生可能エネルギー源に対する需要が高まるにつれ、太陽電池に対する需要は高まり続けている。太陽電池産業における一つの大きなコストは、太陽電池の作製に使用されるウェハ又はシートである。ウェハ又はシートに対するコストを低減することで太陽電池のコストを低減し得、この再生可能エネルギー技術をより普及させ得る。太陽電池の材料コストを下げるために検討されてきた一つの方法は、冷え固まって結晶性シートとなる薄いシリコンリボンを融液から水平に引き上げる方法である。本明細書では、この方法を水平シート成長と呼ぶ。
【0004】
浮遊シリコン法(FSM)として知られる水平シート成長によりシリコン結晶性シートを製造するうえで、有用な構成部分は冷却デバイスである。この冷却デバイスは、例えばヘリウムといった冷却ガスのリボン表面上への衝突を介して、シリコン結晶性シートから潜熱を取り除く。冷却デバイスは、長いスリットとして又は冷却ガスが流れ通ってリボン表面上へと向けられる流路として構成され得る。冷却デバイスは、成長過程の結晶性シートの表面から数mm上方に位置し、リボン(結晶性シート)が成長していない時には表面から離れるように移動されることがある。リボンはスリットの下で成長し、連続した長さのリボンを成長させるために一定速度で片側に引き上げられる。
【0005】
とりわけ、シリコンの水平シート成長中においては、冷却デバイスは、シリコンの融液から水平シートを結晶化させるために使用され得る冷ブロックを備えることがある。シリコンの結晶構造に起因して、「単結晶リボン」又は「シリコンリボン」と呼ばれることもある単結晶シートの先端は(111)面で定められる。この面を有する先端を高速(>1mm/s)で成長させるには、単結晶リボンの先端における非常に狭い領域内で強烈に除熱することが必要であり、除熱のピークは100W/cm2をはるかに超え得る。このような高い冷却速度を生じさせるために、比較的高温の単結晶リボンの表面と冷却デバイスとの間に渦を発生させることが有用である。この渦は、冷ブロックなどの、冷却デバイス内の流路又は通路からシリコン融液(溶融Si)の融液表面に向かってガスを高速で流すことによって作り得る。このような渦は、都合の悪いことに、溶融Siから冷却デバイスの冷たい表面へとSiOをも運ぶことがあり、冷たい表面でSiOは凝縮し、SiOx微粒子を形成する。それゆえに、シリコンの結晶性シートの成長には、凝固しているシリコンリボンから冷却デバイスへの高い伝熱を維持することと、それと同時にSiOxの析出を回避することとのバランスが必要である。
【0006】
シリコン水平シート成長に関連した別の課題は、シート成長前の炉内でSiOxが形成することを回避する必要性である。シリコン融液から結晶性シートを形成するのに先立って、シリコン融液をつくるためにSiメルトイン手法を行うことがある。Siメルトイン手法の最中は、例えば、融液表面から1cm超といった間隔まで冷却デバイスを融液表面から離して持ち上げ得る。このメルトインの最中は、メルトイン中に高温(Si融液温度よりもはるかに高い)を使用したり、シリコン供給原料がシリコンの大きな有効表面積上にSiO2を有する可能性があったりするので、SiOの濃度が高いことがある。冷却デバイスが融液から>1cmの間隔で上方に離れて配置されている場合であっても、冷却デバイスの全ての「冷たい」表面(シリコンリボン成長の文脈における説明のために、「冷たい表面」は、1250°C未満の温度を有する表面として定義されることがある)におけるこのSiOの凝縮を防ぐことが特に有用である。とりわけ、水冷式冷ブロックを有する冷却デバイス内では、(除熱を提供する)水冷式冷ブロックの表面と、冷却デバイスの外壁(この外壁はSi融点の1412°C超に加熱される)との間に固有の温度勾配が存在する。この温度勾配の結果、1250°C未満でこのような「冷たい」表面を構成し、それによってSiO凝縮を受けやすい、露出面が冷却デバイスに生じる。従って、周囲炉ガスがこれらの「冷たい」表面に達することを防ぐ必要性がある。
【0007】
水平シート成長で直面する別の課題は、冷却デバイスによって生じた冷却域の下の領域における水平シート/融液の界面を操作者が又はカメラで視認することに限界があることである。とりわけ、シリコンシートを適切に成長させるにあたり、最大限冷却するために、冷却デバイスの下面をSi融液表面から約3mm未満の距離を保ったままにすることがあるので、リボンの先端に可視的にアクセスすることが困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの及び他の考慮事項に対して本改善が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、結晶性シートの形成装置が、第一のガス流路及び第二のガス流路を含む結晶化器を有し得る。第一のガス流路及び第二のガス流路は、結晶化器内を通って、上流端と下流端との間を結晶化器の下面まで延び得る。第一のガス流路は、第二のガス流路よりも下流端の近くに配置され得る。第一のガス流路には、ヘリウム又は水素を含有する第一のガス源が接続され得、第二のガス流路には、水素もヘリウムも含有しない第二のガス源が接続され得る。
【0010】
他の実施形態では、装置が、融液を収容するためのハウジングを含み得、ここで、融液は融液温度を有し且つ融液表面を定める。装置は、融液の上方に配置され、且つ、上流端、下流端、及び下面を有する結晶化器を更に含み得、ここで、下面は融液表面に面し、結晶化器は少なくとも下面部分において融液温度よりも低い第一の温度を生じる。結晶化器は、第一のガス流路及び第二のガス流路を有し得、ここで、第一のガス流路及び第二のガス流路は下面まで延び、第一のガス流路は第二のガス流路よりも下流端の近くに配置される。装置はまた、第一のガス流路に接続された第一のガス源と、第二のガス流路に接続された第二のガス源とも含み得、ここで、第一のガス源はヘリウム又は水素を含有し、第二のガス源は水素もヘリウムも含有しない。
【0011】
別の実施形態では、方法が、結晶性シートを融液表面に沿って結晶化させつつ、非対称的なガス流を結晶化器から融液の融液表面へと向けることを含み得る。非対称的なガス流を向けることは、第一のガス流を、第一のガス流路を通じた第一の方向に沿って結晶化器に通すことを含み得、ここで、第一のガス流はヘリウム又は水素を含有する。非対称的なガス流を向けることはまた、第二のガス流を、第二のガス流路を通じた第一の方向に沿って結晶化器に通すことも含み得、ここで、第二のガス流路は第一のガス流路の上流に配置され、第二のガス流は水素もヘリウムも含有しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本開示の実施形態に従った装置の側面断面図を示す。
図1B図1Bは、図1Aの装置の操作における第一のシナリオの側面断面図を示す。
図1C図1Cは、図1Aの装置の操作における第二のシナリオの側面断面図を示す。
図2図2は、本開示の他の実施形態に従った別の装置の側面断面図を示す。
図3図3は、本開示の実施形態に従った、結晶化器及び融液の近傍におけるガス流のシミュレーションを示す。
図4図4は、例示的なプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態は、水平成長を用いた、融液からのシリコンなどの半導体材料の連続的な結晶性シートを成長させるための装置及び技法を提供する。特に、本明細書に記載される装置は、形成されるシートが単結晶(モノクリスタリン)で、幅広で、均一な薄さであり、1秒当たり1ミリメートルを超えるといった高速で融液から引き抜かれるように、融液の表面上でのシリコンの連続的な結晶性シート又はリボンの成長を開始且つ持続させるように構成される。様々な実施形態において、複数の流路を有する新しい結晶化器が提供され、この結晶化器は、シリコンなどの前からある(erstwhile)融液の融液表面の近傍に非対称的なガス流をもたらす。様々な実施形態において、装置内部の表面上でのSiOの形成及びSiOの凝縮を抑制又は取り除きつつ、シリコン融液表面からの除熱のピーク速度が100W/cm2を超えるような結晶化器を含む装置が提供される。
【0014】
以下に記載される様々な実施形態において、新しい結晶化器の種々の流路が、SiOの形成を抑制しつつ結晶性シートの結晶化を高めるような種々の非対称構造で構成される。様々な実施形態において、第一の流路は、第二の流路よりも、結晶化器の下流側の近くに位置し、これは第一の流路が結晶性シートを引き抜く側のより近くに位置することを意味する。高熱伝導ガスが融液表面へと向けられる第一の流路には、ヘリウム又は水素或いはこれら2つの混合物が供給されてもよく、一方で第二の流路には、ヘリウムも水素も含まない熱伝導性のより低いガスがもたらされる。以下に詳述される通り、結晶化器に沿った位置関係としての、融液の表面にもたらされるガスの種類におけるこの非対称性により、上流側で非渦流が促進されつつ下流側で渦形成が促進され得るように、融液表面においてガス流を制御することを容易にし得る。また後述の通り、いくつかの実施形態では、第一の流路及び第二の流路は、第一の流路が、第二の流路と上流端との間の距離よりも大きな距離をもって結晶化器の下流端から離れているように、結晶化器において更に非対称的に位置してもよい。
【0015】
図1Aは、本実施形態に合致した融液からの結晶性シートの水平成長のための装置100の側面図を示す。以下に詳述される通り、装置100は、水平シート成長用の既知の装置を用いた際に提示されるいくつかの問題に取り組む。
【0016】
装置100はハウジング102及びヒーター104を含み、ここで、ハウジング102はるつぼであってもよく、ヒーター104は図示される通り融液106を発生させるために使用され得る。また、この図及びこれに続く図において、様々な構成部分は、互いに又は種々の方向に対して一定の縮尺で表示されていない場合がある。ハウジング102は、例えば、炉の外壁であってもよく、ハウジングの少なくとも一部分を形成する石英るつぼ等のるつぼを含んでいてもよい。融液106の形成には、実施形態によっては複数のヒーターを含むことがあるヒーター104が、ハウジング102内に熱流を生じさせ得、シリコンなどの融液106を形成する材料の溶融温度を超える温度を作り出し得る。
【0017】
装置100は結晶化器108を更に含み得、ここで、結晶化器108は少なくとも部分的にハウジング102内部に配置される。結晶化器108は、例えば、図示されたデカルト座標系のY軸に平行な、少なくとも方向130に沿って、可動式であり得る。
【0018】
結晶化器108は、図示される通り、第一のガス流路112及び第二のガス流路114を含み得る。図1Aには図示されていないが、様々な実施形態において、結晶化器108は冷ブロック110及び第二のブロックで構成され得、ここで、冷ブロック110は第一のガス流路112を含み、第二のブロックは冷ブロック110に隣接して配置され且つ第二のガス流路を含む。第二のブロックは、例えば、熱伝導性の低い石英材料から形成され得る。他の実施形態では、結晶化器108は単一のブロックであり得る。
【0019】
図1Aに示される通り、第一のガス流路112及び第二のガス流路114は、第一のガス流路112及び第二のガス流路114がブロック下面109まで延びている結晶化器108内を垂直に、つまり、Y軸に沿って延びていてもよい。様々な実施形態において、結晶化器108の少なくとも一部分が、水冷などの流体によって冷却され得る。水が冷却流路内を流れる際に冷ブロック110の冷ブロック温度が融液106の温度よりもはるかに低くなり得るように、冷却流路(図示されず)が結晶化器108の少なくとも一部分内に設けられてもよい。例えば、ブロック下面109の温度は、少なくともある領域では100°Cのオーダーであり得る一方で、融液106の温度は、一般に1415°C~1430°Cの範囲であり得る。実施形態はこれに限定されない。
【0020】
上述の場合では、融液106から水平シート成長を行うために、ブロック下面109の近傍の領域において、融液106の融液表面117から熱が急速に取り除かれることがある。ブロック下面109を比較的低温に維持しつつ、高速のガス流を第一のガス流路112を通じて融液表面117へと向けることがある。図1Aに更に図示される通り、装置100は、第一のガス流路112に接続された第一のガス源120を含み得、ここで、第一のガス源120はヘリウム又は水素などの第一のガスを含有する。このヘリウムガス又は水素ガスは、1リットル/(分‐X軸に沿った幅cm)超といった比較的高い流量で第一のガス流路112を通じてもたらされ得る。このようなガスは高い伝導性をもたらし得、融液116の上方で第一のガス流路112に隣接した領域において渦形成を促進し得る。
【0021】
さらに、第二のガス源124が第二のガス流路に接続され得、ここで、第二のガス源124は第二のガスを含有し、第二のガスは水素を含有せず且つヘリウムを含有しない。第二のガスは、例えば、アルゴン、ネオン、クリプトン、又はキセノンなどの不活性ガスであり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、第一のガス流路112は、第一のガス源120に接続されていることに加えて、(ヘリウム以外の)不活性ガス源に更に接続されることがある。図1Aに具体的に示された実施形態では、第一のガス流路112は、第二のガス源124とは別の(ヘリウムではない)不活性ガス源を表すガス源122に接続される。他の実施形態では、ガス源122を設ける代わりに、第二のガス源124が第一のガス流路112及び第二のガス流路114に接続されてもよく、ここで、第二のガス源はアルゴンガス又は他の非ヘリウム不活性ガスを供給する。
【0023】
装置100は、結晶化器108の種々の箇所へとガス流を向けるガス流制御器126を更に含み得る。例えば、ある条件下では、アルゴンガスが第一のガス流路112及び第二のガス流路114内に流され得る。他の条件下では、アルゴンガスは第二のガス流路114内のみに流されつつ、ヘリウムガスが第一のガス流路112内のみに流され得る。
【0024】
図1Aに更に示される通り、結晶化器108における様々な流路は、結晶化器108の中心線118に対して定められ得、ここで中心線118はY軸に平行に走る。言い換えれば、結晶化器108における様々な流路は、上流端115と下流端121との中間に中心線118が配置された、結晶化器108の上流端115及び下流端121に対して定められ得る。様々な実施形態において、第一のガス流路112及び第二のガス流路114は、上流端115と下流端121との間に非対称的に並べられ、特に、第一のガス流路112は、下流端121により近い第二のガス流路114よりも上流端115の近くにある。
【0025】
以下に詳述される通り、第一のガス流路112の下流側近傍での領域のみに冷却渦を発生させつつ、第一のガス流路112の上流側近傍に配置された領域での冷却渦の形成を有利に防止する助けとなるように、流路の位置におけるこの非対称性を有用に取り入れることができる。図1Aの例及び様々な実施形態において示唆される通り、第一のガス流路112は中心線118に対して上流に配置され得、第二のガス流路114は第一のガス流路112の上流に配置され得る。他の実施形態では、第一のガス流路112は中心線118の上流に配置される必要はなく、第二のガス流路114はそれでもなお、下流端121により近い第一のガス流路112よりも上流端115により近い。
【0026】
特に、第二のガス流路114は、結晶化器108の上流端115から距離D1に配置され得、一方で第二のガス流路114は、第一のガス流路112から距離D2に配置され得る。加えて、第一のガス流路112は、結晶化器108の下流端121から距離D3に配置され得、ここで、図示される通り、距離D3は距離D1よりも大きい。これらの距離の重要性は図1Cを参照して後述される。
【0027】
図1Aに更に示される通り、装置100は、既知の結晶化器におけるように、結晶化器108に隣接して配置されるか、又は結晶化器108の外側部分を形成する断熱ブロック128を含み得る。
【0028】
図1Aに更に示される通り、装置100は、結晶化器108の下流に配置された結晶引上げ器131を含み得、ここで、結晶引上げ器131は引き方向132に沿って可動である。この決まり事により、第二のガス流路114は第一のガス流路112の上流に配置されるものと見なされ得る。
【0029】
いくつかの実施形態に従えば、第一のガス流路112は50μm~500μmの流路長W1を引き方向132に沿って有し得、第二のガス流路114は200μm~2000μmの流路長W2を引き方向132に沿って有し得る。実施形態はこれに限定されない。異なる実施形態では、第一のガス流路112の流路長は、第二のガス流路114の流路長よりも小さく構成され得る。この構造により、第一のガス流路112を通るガスとは対照的に、第二のガス流路114を通るガスの流量が低くなる結果となり得る。
【0030】
特定の実施形態において、第一のガス源120は、第一のガス流路112中にヘリウムの第一のガス流量をもたらすように構成され得、第二のガス源124は、第二のガス流路114中にアルゴンの第二のガス流量をもたらすように構成され得、ここで、第一のガス流量に対する第二のガス流量の比は0.05~0.5の間である。中心線118に対する第一のガス流路112及び第二のガス流路114の非対称的な構成と併用した、第二のガス流路114を通るアルゴンの低いガス流量と、第一のガス流路112を通る高いガス流量との、この構成により、後述の通り、融液106へと向けられるガスにとって有利なガス流のパターンが得られ得る。
【0031】
図1Aには示されていないが、図2に関連して述べられる更なる実施形態において、装置100に類似した装置は、水素もヘリウムも含まない第三のガス源を含み得、第三のガス源に接続されたガス分配アセンブリを更に含み得る。このようなガス分配アセンブリは、複数のガス開口部を有し得、断熱ブロック128の下端119に沿って配置され得る。
【0032】
次に図1Bへと移る。図1Bには、本開示の実施形態に従った、装置100を操作するための第一のシナリオが示される。このシナリオでは、結晶化器108は、融液106に対して第一の間隔S1で配置され得、例えば、第一の間隔S1は1センチメートル以上であり得る。このシナリオでは、第一の不活性ガス流が結晶化器108を通って融液106へと向けられてもよく、ここで、不活性ガス流は、第二のガス流路114を通る流れ142と第一のガス流路112を通る流れ144とを含み得る。例えば、ガス源122は第一のガス流路112にアルゴンを供給し得、一方、第二のガス源124は第二のガス流路114にアルゴンを供給し得る。融液表面117へのアルゴン流は、例えば、材料を溶融して融液106を形成している最中のSiO形成を低レベルに保つのに役立つために、また、装置100内部の表面をSiO凝縮の無い状態に保つために、用いられ得る。
【0033】
次に図1Cへと移る。図1Cには、結晶化器108を融液106に対して第二の間隔S2まで移動させた後の第二のシナリオが示され、ここで、第二の間隔S2は第一の間隔S1よりも小さい。例えば、第二の間隔S2は、3mm、2mm、又はそれに近い距離であり得る。この間隔において、結晶化器108は、図示された通り結晶性シート150の結晶化を開始するのに十分に急速な除熱をもたらし得る。さらに、結晶引上げ器131は、結晶性シート150を引き方向132に沿って引くことに従事し得、結晶性シート150は連続的に形成されて結晶化器108の近傍の領域から引かれる。図1Cに更に図示される通り、流れ148として示された第一のガス流は第一のガス流路112に通される一方で、第二の不活性ガス流を含み且つ流れ146として示された第二のガス流は第二のガス流路114に通される。この例では、例えば、流れ146はアルゴンで形成され得る一方で、流れ148はヘリウムガス流又は水素ガス流であり得る。図1Aに示される通り、流れ148は渦140を含み、渦140は第一の領域152内で形成し、第一の領域152は結晶化器108の第一の部分と結晶性シート150の表面との間に位置し、第一の部分は第一のガス流路112の近傍に配置される。渦140の形成は融液106からの除熱能力に役立ち、それに応じて、目標シート厚を有する安定したシートをなお得つつ、結晶性シート150を引くための引上げ速度を高めるのに役立つ。
【0034】
図1Cに更に図示される通り、有利なことに、流れ146で示される、アルゴン流などの不活性ガス流は、結晶化器108の第二の部分と融液表面117との間に位置する第二の領域154の間に層流を形成し、ここで、第二の部分は第二のガス流路114に隣接している。図1Cに図示される通り、渦の形成は第二の領域154において、特に、融液表面117の上方において防がれる。この渦形成の防止は、融液106内でSiO形成が装置100の不必要な領域へと移動することを低減するのに役立つ。この不必要な領域とは、SiOがさもなければ凝縮してSiOx微粒子を形成し得る、結晶化器108の冷たい表面内などである。
【0035】
第一のガス流路112の下流側、つまり第一の領域152内に、渦が形成することを確実にし、且つ第一のガス流路112の上流側、つまり、第二の領域154内には渦が形成しないことを確実にするために、距離D1、距離D2、及び距離D3が以下のように配置され得る。例えば、距離D1は第二の間隔S2より小さくてもよく、距離D2は第二の間隔S2より小さくてもよく、そして距離D3は第二の間隔S2より大きくてもよい。第一のガス流路112と第二のガス流路114との間の水平間隔が、距離D2で表される通り、第二の間隔S2よりも小さい場合、流路間の領域に渦は形成され難い。同様に、第二のガス流路114と結晶化器108の上流端115との間の水平間隔が第二の間隔S2よりも小さい場合、第二のガス流路114と上流端115との間の領域に渦は形成され難い。第一のガス流路112と結晶化器108の下流端121との距離が第二の間隔S2よりも大きい場合、特に高速のヘリウムが第一のガス流路112を出る時に渦の形成が促進される。
【0036】
図2は、本開示の他の実施形態に従った、装置200として示される、別の装置の側面断面図を示す。装置200は、装置100と特徴を共有することができ、同様の特徴には同じ符号が記されている。装置200は、図示される通り結晶化器208を含み得る。結晶化器208は、冷ブロック210及び第二のブロック212を含み得、ここで、第二のブロック212は冷ブロック210に隣接して配置される。図示される通り、第二のブロック212は流路211を含む一方、冷ブロック210は流路209を含み、ここで、流路211は第二のガス流路114と同様であってもよく、流路209は第一のガス流路112と同様であってもよい。一般に、ヘリウム又は水素ガスは、結晶性シート250として示される結晶性シートの形成過程において、流路209に通され得る。結晶性シートが結晶化される前の融液の形成過程では、アルゴンなどのガスが流路209に通され得る。更に、結晶性シートの形成過程では、アルゴン又は(ヘリウムを除く)他の不活性ガスが流路211を通って融液106へと向けられ得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、第二のブロック212が、溶融石英(石英ガラス)、溶融シリカ(石英ガラス)、又は類似材料などの石英材料から形成され得る。実施形態によっては第二のブロック212は積極的に冷却されないことがあり、ここで、融液106の近傍の第二のブロック212の下面に沿った第二のブロック温度は300°C、400°C、又はそれに近い温度であり得る。それに応じて、アルゴン又は他の不活性ガスは比較的温かい温度で流路211から出てくることがある。加えて、例えば、アルゴンはヘリウムよりも熱伝導性が低いので、第二のブロック212の下方の領域260における融液106の上方での冷却速度は、冷ブロック210の下方の領域262における冷却速度よりも小さくてもよい。
【0038】
様々な実施形態において、流れ264は、流れ266の流量の5%~50%のオーダーの流量を有する低速のArジェットであり得、ここで、流れ266は高速のヘリウムジェット又は水素ジェットであり得る。いくつかの実施形態では、流れ264は流れ266の流量の約10%の流量を成し得る。実施形態はこれに限定されない。流れ264に含まれて供給された比較的低い流量のアルゴンは、融液表面117における乱れを低減するように作用し得、この低減によって結晶性シート250の固体表面がより平滑になり得る。
【0039】
本開示の実施形態に従えば、冷ブロック210の下面を、流路209のちょうど下流側222に対して、平坦且つ結晶性シートの表面に略平行に、言い換えればX‐Z面に平行に、配置することによって、流れ266などのHeジェットによってもたらされる冷却を高め得る。冷ブロック210及び結晶性シート250の外面によって作られるこの流路領域は、渦235として示された、He流内に渦を発生させるのに役立ち得る。ここで、渦235は、ヘリウムが結晶性シート250から熱を奪った後に、ヘリウムを周期的に冷却する。同時に、図2に示される通り、結晶化器208の上流側220に向かういかなるHe流も最小化されて、図示される通り領域260には渦が形成しない。図2では、流路211から出てくるアルゴン流は実際には層状であり得る。上流側220を流れるArの第二のガスジェットによってもたらされたこの層流が、融液表面117の上方のHeの流れに対する障害となる。アルゴンの熱伝導性はヘリウムの熱伝導性よりも低く、アルゴンの必要速度が低いので、アルゴン流は融液表面117を大幅には冷却せず、領域260の下方では融液106は溶融状態のままである、つまり、融液106の直接上方には渦は形成しない。
【0040】
様々な実施形態に従えば、結晶化器208内部における流路209、流路211の相対位置は、図1Cに関して上述した距離D1、D2、D3及び第二の間隔S2に対する基準に適合し得る。このように、流路209の下流側でのみ渦235の形成が促進され、流路209の上流側での渦の形成は抑制されるか妨げられる。
【0041】
有利なことに、流路211からのアルゴン流もまた、一酸化ケイ素ヒュームが、流路209から出てくる流れ266によって形成されたHeジェット内に混入するのを防ぐのに役立つ。この一酸化ケイ素ヒュームの防止によって、渦235は一酸化ケイ素を含有しないままとなり、冷ブロック210の露出面もまた凝縮した一酸化ケイ素の無い状態を維持し得る。冷ブロック210をSiO析出の無い状態に維持することにより、結晶性シートの引上げ過程においてより長時間にわたって高い冷却速度が持続される。一般に前述したとおり、第二のブロック212は、水冷でもなく、さもなければ積極的に冷却もされない、熱伝導性の低い材料であり得えるので、流路211を出る時のアルゴンは比較的温かい。更には、Arの伝導性はHeよりも低いので、Arは融液106上で衝突する。
【0042】
図2に更に示される通り、装置200は、図示される通り、ヒーターアセンブリ228と共に、第一のセクション230及び第二のセクション232を含む断熱ブロックを有し得る。断熱ブロック及びヒーターアセンブリ228は、結晶化器208による周囲の等温領域が冷却されることを防ぐ断熱ブロックは下面を含み得、断熱ブロックの下面は第一の下面236を含み、第一の下面236は冷ブロック210に直近して配置され、第二の下面238は第二のブロック212の近傍に配置される。第一の下面236は融液表面117に対して第一の角度を成し得、第二の下面238は融液表面117に対して第二の角度を成し得、第二の角度は第一の角度よりも大きい。いくつかの実施形態では、第二の角度は約45度であり得る。特に、装置200は、第二の下面238により形成されたより急な角度によって装置上の観測口から結晶性シートの形成プロセスをより容易に観察し得る、観察所246を含み得る。加えて、第二の角度は比較的急であり得、第二の下面238は流路211の非常に近くにあり得るので、上流側220上の第二の下面238によってもたらされた結晶化器208に直の傾斜、並びに、より低いAr流量及び流れ264の速度によって、渦形成を更に防ぎ、領域260における層流を確実なものにする。
【0043】
図2に更に例示される通り、装置200は第三のガス源223を含み得、ここで、第三のガス源223は水素もヘリウムも含有せず、実施形態によってはアルゴンガス源であり得る。第三のガス源223は、装置200内に備えられた、ガス分配アセンブリ234に接続されていてもよく、ここで、ガス分配アセンブリ234は図示された通り複数の開口部を含み得、ガス分配アセンブリ234は断熱ブロック(insulator block)の下面に沿って配置され得る。様々な実施形態において、ガス分配アセンブリ234における開口部間のスペースは約1mm、2mm、又は3mmであり得る。実施形態はこれに限定されない。図2の例では、第一のガス流路224及び第二のガス流路226は、ガス分配アセンブリ234にガス流を供給するために第三のガス源223に接続されていてもよい。実施形態はこれに限定されない。
【0044】
ガス分配アセンブリ234は、一酸化ケイ素が断熱ブロックの底面上、つまり第一の下面236及び第二の下面238上に蓄積することを防ぐのに役立ち得る。ガス分配アセンブリは、図示される通り、上流220上に低速アルゴン242を供給し、断熱ブロックの下流側222上に低速アルゴン240を供給するように構成されてもよい。ガス分配アセンブリ234を形成するシャワーヘッド材は、シリコンカーバイドで被覆されたグラファイトなどの不活性材料で作られていてもよく、この材料は断熱ブロックを囲んで断熱ブロックが成長領域を汚染することを防ぐのに役立つ(断熱粒子は、原理上、不純物を核とした多結晶成長の原因となり得るため)。第一のガス流路224及び第二のガス流路226は、流れているアルゴンによって融液106及び結晶性シート250が大幅に冷却されないように、ヒーターアセンブリ228に近接して配置されていてもよい。結晶化器208の上流側220、流路211の近くでは、渦が存在しないことにより、一酸化ケイ素が結晶化器208のより冷たい表面に運ばれることを防ぐ。
【0045】
図3は、本開示の実施形態に従った結晶化装置の数値流体力学(CFD)モデリングの結果であり、結晶化デバイス300からのガスの流れを示している。例示されている通り、融液302が示され、ヘリウムを融液302へと向けている第一のガス流路308が示され、加えて、同時にアルゴンを融液302へと向けている第二のガス流路310もまた示されている。Ar流はHe流の約10(体積)%である。このようにArの速度はHeの速度と比較して低い。第二のガス流路310の幅は第一のガス流路308の幅より大きくてもよく、これによりアルゴンの速度がヘリウムの速度と比べて比較的低いことを更に確実にする。Arジェットが低速であることで、融液302の液体表面における乱れが低減し、結晶化デバイス300の下方で形成される結晶性シート320の固体表面がより平滑になる。CFDモデルは、渦314がHe側で形成される一方で、Ar側には渦が存在せず、少量のHeが上流(Ar)側に漏れた場合であっても単なる層流312しか存在しないことを明確に示している。特に、第二のガス流路310に近接して第二のガス流路310から上流に配置された領域322においては、渦の形成が無く、一方、第一のガス流路308に近接して且つ一般に第一のガス流路308の下流に配置された領域324においては、強力な渦が形成している。このガス流の非対称性は、SiOの発生が極わずかである固体領域(結晶性シート320)の上方のみに渦の流れを起こしつつ、SiOが生じ得る液体領域(融液302)の上方では層流のみを与えるという利点をもたらす。それに応じて、液体領域の上方で生じたいかなるSiOも、渦中に混入される可能性がより低く、不必要な表面へと分配される可能性がより低い。注目すべきことに、第二のガス流路310中のAr流を所望の通り増大させることにより、融液側へのHe流の量を低減し得る。
【0046】
とりわけ、前述の実施形態によっては、第一の流路及び第二の流路が結晶化器の中心線の上流側に位置している構成を例示している一方で、他の実施形態においては、第一の流路は結晶化器の上流側に必ずしも位置していなくてもよい。特に、結晶化の最中に、上述で定められたようにD1及びD2の距離が一般に第二の間隔S2よりも小さいならば、第一の流路は、結晶化器の上流側にある必要はない。
【0047】
図4は、例示的なプロセスフロー400を示す。ブロック402では、結晶化器が融液に対して第一の間隔で配置されている場合に、第一の不活性ガス流が結晶化器に通される。結晶化器は第一のガス流路及び第二のガス流路を含み得る。様々な実施形態に従えば、融液はシリコン融液であり得、結晶化器は、ニッケルなどの材料で形成された冷ブロックを少なくとも部分的に含み得る。ブロック404では、結晶化器は融液に対して第二の間隔に移され、ここで、第二の間隔は第一の間隔よりも小さい。いくつかの実施形態では、第一の間隔は1センチメートル以上であり得、第二の間隔は5ミリメートル未満、例えば3ミリメートルであり得る。
【0048】
ブロック406では、結晶化器が第二の間隔で配置されている場合に、第二の不活性ガス流が第二のガス流路に通されつつ、ヘリウムガス流又は水素ガス流を含有する第一のガス流が第一のガス流路に通される。
【0049】
従って、前述の実施形態はいくつかの問題を減らすのに役立つ。第一の利点は、既知の結晶化デバイスでは結晶化デバイスの上流側及び下流側に渦を生じることがあるが、本実施形態に従って構成された装置によって形成されるのは下流側に位置するたった一つの渦である。この単一の渦形成により、一酸化ケイ素が、Si融液表面から、SiOが凝縮して膜又はウィスカーの凝集物として成長するニッケルブロックなどの水冷ブロックへと運ばれるきっかけがもたらされるという、二重渦デバイスの問題を回避できる。やがては、この凝縮物は、一酸化ケイ素が融液に接触するか、又は凝縮した材料が剥がれ落ちて融液中に落下するほどの厚み又は長さに達し得る。融液中に落下したいかなるものもシリコンの樹状粒の核形成を引き起こし得、その結果不適当な材料となり得る。本実施形態は、一酸化ケイ素が結晶化装置の下面上に蓄積した場合に引き起こされる冷却速度の低下を防ぐこと、結晶性シートのより良好なプロセスモニタリングを可能とすることも含む、更なる利点をもたらす。本実施形態は、ヘリウムに起因した冷却の他に、融液又は結晶性シートを冷却する熱損失を防止するという利点ももたらす。
【0050】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態及び変更に加えて、本開示における他の様々な実施形態及び本開示に対する他の様々な変更が、これまでの記載及び添付図面から当業者には明らかであるだろう。従って、このような他の実施形態及び変更は本開示の範囲内に含まれるものと意図される。更には、本開示は特定の目的のために特定の環境において特定の実施という文脈で本明細書に記載されてきたものの、当業者であれば、有用性がそれに限定されることなく、本開示が、いくつもの目的のためにいくつもの環境において有益に実施され得るということを認識するであろう。それに応じて、以下に記載された請求項は本明細書に記載された本開示の全幅及び精神を考慮して解釈されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4