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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】コークス炉の装入方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 31/02 20060101AFI20220309BHJP
   C10B 37/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C10B31/02
C10B37/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019541743
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018052700
(87)【国際公開番号】W WO2018141926
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】100063
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーンス,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ハットマッチャー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】トッカート,ポール
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-349953(JP,A)
【文献】特開昭53-016701(JP,A)
【文献】米国特許第02234825(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 31/02
C10B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉に石炭を装入する方法であって、
a)石炭をコークス炉室(65)に装入し、それによって前記室内に石炭の山(70)が形成されるステップと、
b)前記石炭の山を均すステップと、を含み、
前記均すステップb)は、
前記石炭の山にブラスト管(16)のブラスト端部(20)を導入するステップであって、前記ブラスト管が、ガスブラストを放出するように構成された加圧ガス貯蔵容器(14)と連通している、ステップと、
ブラスト衝撃力の下で前記山を崩壊させ、前記山のレベリングを引き起こすために、前記石炭の山の前記ブラスト端部から少なくとも1回ガスブラストを放出するステップと、
前記室から前記ブラスト管を除去するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ブラスト管(16)が、石炭の円錐状の山(25、72)の上面を介して前記石炭の山に突入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブラスト管の前記ブラスト端部が、前記円錐状の山(25、72)の頂点の下の領域配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記石炭が、前記室の屋根を通る装入穴(62)を介して緩く装入され、前記ブラスト管が、前記装入穴を通じて垂直または斜めの移動で前記石炭の山に突入する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)で複数の円錐状の石炭の山が形成され、前記複数の円錐状の山の各々に対して均すステップb)が実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブラスト管の前記ブラスト端部が、前記円錐状の山(25、72)の頂点の下に0.5~1.5m深さで導入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスブラストが5~15バール圧力で放出される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
屋根を有する少なくとも1つのコークス炉室(65)と、
石炭の山を均すための装置(10)とを備え、
前記装置は、
ガスブラストを放出するように構成された加圧ガスを備えた貯蔵容器(14)と、
接続ポート(19)とブラスト端部(20)とを備えたブラスト管(16)であって、前記接続ポートが前記ブラスト端部から軸方向に離間し前記貯蔵容器と連通している、ブラスト管と、
それを通じて加圧ガスのブラストを石炭の山に放出して前記石炭の山を均すことができる、前記ブラスト管の前記ブラスト端部にある少なくとも1つの開口部(22)と、
前記ブラスト管を前記屋根を介して静止位置と作業位置との間で移動させるように構成され、前記作業位置では前記ブラスト管の前記ブラスト端部が石炭の山内に導入されるマニピュレータ装置(27)と、を備える、コークス炉。
【請求項9】
前記貯蔵容器(14)は、所定の圧力で所定体積のガスを収容し、ブローアウト管を介して前記体積のガスを迅速に放出し、これによりガスブラストを作り出すように構成されているトリガ機構を有する急速放出弁を含む、請求項8に記載のコークス炉。
【請求項10】
前記ブラスト管が前記貯蔵容器に直接または間接的に接続されている、請求項8または9に記載のコークス炉。
【請求項11】
前記装置は、前記ブラスト管が前記貯蔵容器に対して移動できるように構成されている、請求項8、9または10に記載のコークス炉。
【請求項12】
前記ブラスト管の前記ブラスト端部が、少なくとも1つのブラストオリフィス(22、22)を有するノズル(40)を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のコークス炉。
【請求項13】
ノズルは、前記ブラスト管(16)の軸方向(L)に延出し、前記ブラスト管の軸方向前方にガスブラストを放出するように適合された独自のブラストオリフィス(122)を含む、請求項12に記載のコークス炉。
【請求項14】
ノズル(40)は、加圧ガスのブラストを2つの異なる方向放出するために、前記ブラスト管の軸(L)から所定の角度だけ各々偏向している一対のブローチューブ(42,42)を含む、請求項12に記載のコークス炉。
【請求項15】
前記所定の偏向角度(α)が20°~90°の間に含まれる、請求項14に記載のコークス炉。
【請求項16】
前記ブローチューブ(42、42)は、真っ直ぐな管であり、約70°または90°の角度を形成する2つのブラスト方向を規定する、請求項14に記載のコークス炉。
【請求項17】
前記ブローチューブ(242、242)は、湾曲部分を含み、前記ブラストオリフィス(222、222)は、反対のブラスト方向に沿って、特に180°の角度を形成して整列している、請求項14に記載のコークス炉。
【請求項18】
前記ノズルは正面ガイド(250)をさらに含み、前記正面ガイド(250)は、石炭の山への前記ブラスト管の導入を容易にするために、前記ノズルの前側に取り付けられている、請求項14~17のいずれか一項に記載のコークス炉。
【請求項19】
ブラスト中に前記コークス炉の前記屋根の装入穴(62)を閉じるために、前記装入穴(62)と協働するように構成されている締め付けリング(32)をさらに備える、請求項8~18のいずれか一項に記載のコークス炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コークス製造の分野に関する。特に、本発明は、コークス炉の装入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、現代のコークス製造プラントは、わずか10から100を超えるコークス炉室を含むことがあるバッテリで構築されている。コークス化室の物理的寸法(狭く、長く、高い)のため、スロット炉と呼ばれることもある。炉は、コークス化プロセス中に石炭から発生する揮発性生成物を回収できるように設計および運転される。
【0003】
通常、コークス化プロセスは周期的に行われ、以下の主な工程、すなわち装入、コークス化、および押し出し(空にする)を繰り返す。石炭は、炉の屋根に設けられた装入穴からコークス化室に装入される。コークス炉は、装入ごとに一定体積の石炭を使用するように設計されており、頭上の石炭貯蔵ビンとバッテリ上部から与えられる軌道上の炉との間で動作するラリーカーから装入される。石炭は屋根の装入穴から装入されるため、各装入穴の下に石炭の円錐状の山(峰になった堆積物)が形成され、コークス炉室の炭素床の表面構造は不均一になる。
【0004】
したがって、装入工程にはレベリング動作が含まれ、レベリング動作の間、一般的に押出し機側にあるレバーを使用して石炭床を均す。レバーの機能は、炉内の石炭装入を均し、装入された炉の屋根の下にガスの空きスペースを残すことである。レベラーは、押出し機側の炉のドア上部にあるレベリングドアによって炉内に導入される電動レベリングバーを含む。レベリングバーは、峰になった石炭の山を前後に移動し、それによって装入穴の下の石炭の峰が谷に加わるように均す。結果として、石炭床の実質的に平坦な上面が得られる。次にバーは炉から引き出され、レベリングドアと装入穴が閉じられ、コークス化動作が開始される。
【0005】
例えば、特許文献1は、スロット炉の装入中に形成された円錐状の石炭の山を分配するためのそのようなレベラーバーおよびレベリング動作について記載している。
【0006】
装入された石炭の過剰なレベリングは、レベラードアが開かれている時間を延長するだけでなく、装入の上部、特に装入穴の下に石炭を詰め込む傾向があり、炉壁の局所的な侵食を引き起こす可能性があることに注意すべきである。
【0007】
それにもかかわらず、ラリーカー、特に石炭の排出方法の改善は、可能性のあるより良い装入方法の実現を目指してきた。目標は、とりわけ、装入時間を短縮すること、ラリーホッパにおける石炭の膠着を防ぐこと、およびレベリングに必要なレベリングバーの通過回数を減らすことである。
【0008】
特許文献2は、コークス炉内で石炭を均一に供給するための器具を開示している。この器具は、石炭を均すために(レベラーバーの代わりに)ガスジェット手段を使用することを提案している。器具は、リフト装置9によって挿入穴5を介してコークス炉内に下げられるノズル7を含む。ノズル7は、レベリングを行うために、石炭の上または中に空気の流れを吹き込むことを可能にする。送風機15とノズル7との間には、流量調整装置12が設けられている。
【0009】
特許文献3は、コークス炉用の装入車を開示している。車は、装入穴の方向に加圧ガスの流れを供給するための装置を備えている。
【0010】
特許文献4は、ガスブラストシステムを使用し、かつコークス押し出し手段に取り付けられることを意図した石炭貯蔵ヤード用の多機能自然発火処理装置を開示している。この装置は、コークスの押し出し時、すなわちコークス蒸留プロセスの終了時に発生する火災を消火するために、石炭内部で空気ブラストを放射するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、効率的で実施が容易なレベリング動作を含むコークス炉装入の改善された方法を提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1に記載のコークス炉装入の方法により達成される。
【0013】
本発明によれば、コークス炉に石炭を装入する方法は、a)コークス炉室に石炭を装入し、それにより室内に石炭の山が形成される工程と、b)石炭の山を均す工程とを含む。
【0014】
均す工程b)は、
-石炭の山にブラスト管のブラスト端部を導入する工程であって、ブラスト管が、ガスブラストを放出するように構成された(すなわち、ガスブラスタを形成する)加圧ガス貯蔵容器と連通している、工程と、
-レベリングを引き起こすために石炭の山のブラスト端部を介して少なくとも1回ガスブラストを放出する工程と、
-室からブラスト管を除去する工程と
を含むことを理解されたい。
【0015】
本発明は、従来のレベリングバーをもはや使用しないが、ガスブラスタによって放射されるガスブラストを活用するレベリング動作を提供する。言い換えれば、レベリングは、室を横切って移動するレバー装置に基づいているのではなく、峰になった石炭の堆積物を崩壊させるガスブラスト(空気の爆発的な広がりを形成する)の衝撃力と空気体積量に基づき、石炭の山のレベリングを達成する。空気ブラスタやエア大砲などのガスブラスタは、当技術分野で周知である。
【0016】
ガスブラスタは、トリガ機構を有する急速放出弁を備え、かつ加圧ガスで満たされた貯蔵容器で構成される単純で信頼性の高い装置であり、トリガ機構は、ブローアウト管を通してガスの体積を迅速に放出し、したがってガスブラストを作り出すように構成されている。本方法では、任意の適切なタイプのガスブラスタを使用できる。したがって、本方法は、既知の技術を使用して、単純な適応で簡単に実施することができる。
【0017】
従来のガスブラスタ(またはエア大砲)を適切な長さのブラスト管と組み合わせることにより、本方法は、コークス炉の屋根の開口部を介して、特に装入穴(それを通して石炭が挿入される)を通して、垂直または斜めの下降運動によってブラスト管をコークス炉室内に導入することによって、便利に実施することができる。ブラスト管は、直接または間接的に(すなわち、中間配管を介して)貯蔵容器に接続できる。
【0018】
装入時に、コークス炉室内の石炭の山は、少なくとも1つの円錐状の山(通常、各装入穴の下に1つ)を含む。ブラスト管は、円錐状の石炭の山の上面を介して石炭の山に突入することが好ましい。特に、ブラスト管のブラスト端部は、円錐状の山の頂点の下の領域に、好ましくは中央に配置される。均す工程b)は、通常、コークス炉室内の円錐状の山の各々に対して実行される。
【0019】
好ましくは、ブラスト管の端部にノズルが設けられて、1つ以上のブラスト方向を規定する。さまざまなノズル構成が考えられ得る。
【0020】
本方法は、シャフト炉および高炉で使用するための石炭のコークス化プロセスのために特に考案された。これに関連して、石炭は、この分野で従来使用されている微粉炭であってもよい。特に、コークス炉に搭載される石炭は、10mm未満、より具体的には5mm未満の粒度を有し得る。
【0021】
理解されるように、本方法は、装入中に圧縮空気の連続的な流れが石炭に吹き付けられる日本特許第H11/349953号に開示されているような従来の方法とは著しく異なる。本発明は、ガスブラスタの使用に依拠しており、ブラスト管は、その中に所望の量の石炭を装入した後(および蒸留プロセスを開始する前に)コークス化室に導入され、室への石炭の搭載中に存在する必要はない。また、知られているように、ガスブラストは衝撃力を形成し、ガス/空気の一種の爆発的な広がりを形成し、ここで石炭の山の崩壊を引き起こすため、原理が異なる。したがって、本発明は装入後の石炭の山における時間通りのガスブラストを利用し、これは石炭に空気を連続的に吹き付けるのとは異なる。ガスブラストの放出は、石炭の堆積物に準瞬間的な影響を及ぼし、石炭の堆積物は、この爆発的な広がりによって(少なくとも部分的に)すぐに崩壊する。したがって、連続的なガスの流れよりも効率的であり、資源の消費量が少なく(送風機用の空気とエネルギーが少なく)、コークスの装入中に装入穴を塞がない。
【0022】
発明者の知る限りでは、石炭の装入中に形成された石炭の山を崩壊させる目的でガスブラストを放出するためにコークス炉の装入屋根を通じて、特に装入穴を通じてブラスト管が導入されるのは初めてである。
【0023】
実施形態では、石炭/コークスの高度は、例えば装入穴の近くに配置された適切なセンサ/レーダによって測定されてもよい。これにより、材料の高度を監視し、ガスチャネルの高さ(材料とコークス炉室の天井との距離)を通知して、良好なガスの流れを確保することが可能になる。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、
-ガスブラストを選択的に放出するように構成された加圧ガスを備えた貯蔵容器と、
-接続ポートとブラスト端部とを備えたブラスト管であって、接続ポートがブラスト端部から軸方向に離間し貯蔵容器と連通している、ブラスト管と、
-それを介して圧縮ガスのブラストを石炭の山に放出し石炭の山を均すことができるブラスト管のブラスト端部にある少なくとも1つの開口部と、
-ブラスト管を静止位置と作業位置との間で移動させるように構成され、ブラスト管のブラスト端部が石炭の山に配置されるマニピュレータ装置と
を含む石炭の山を均すための装置に関する。
【0025】
本装置は、上述の方法での使用に適合している。
【0026】
実施形態に応じて、ブラスト管と貯蔵容器は堅く接続され、それによりブラスト管と貯蔵容器が共に移動するか、または貯蔵容器に対するブラスト管の移動を可能にする関節および/または中間配管があってもよい。
【0027】
有利には、ブラスト管のブラスト端部は、少なくとも1つのブラストオリフィスを備えたノズルを含む。
【0028】
一実施形態では、ブラストノズルは、ブラスト管の軸方向に延出し、ブラスト管の軸方向前方にガスブラストを放出するように適合された独自のブラストオリフィスを含む。
【0029】
他の実施形態では、ブラストノズルは、圧縮ガスのブラストを2つの異なる方向、好ましくはブローイング管の軸に対して対称に放出するために、ブローイング管の軸から所定の角度だけ各々偏向している一対のブローチューブを含む。一般に、所定の偏向角度は20°~90°の間に含まれる。
【0030】
ブラストチューブは真っ直ぐなチューブであってもよく、約70°または90°の角度を形成する2つのブラスト方向を画定する。あるいは、ブラストチューブは湾曲部分を備え、排出オリフィスは、特に180°の角度を形成して反対のブラスト方向に沿って整列している。
【0031】
ノズルは、有利には、石炭の山へのブラスト管の導入を容易にするために、その頂点が第1および第2のブラストノズルの前方を指す、好ましくはV字形の正面ガイドを備えてもよい。
【0032】
好ましくは、装置は、ブラスト中に装入穴を閉じるために、コークス炉の装入穴と協働するように構成された締め付けリングを含む。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、屋根を有する少なくとも1つのコークス炉室と、前述で開示したような石炭の山を均すための装置とを含むコークス炉に関する。
【0034】
本発明は、以下のような多くの利点を提供する。
-押出し機車におけるさらに広範なレベリングバーの技術が不要である。
-コークス炉室の密閉性が向上する(押出し機のメインドア上のレベリングバー用入口ドアが不要である)。
-レベリングバーの技術と比較して、石炭の高度はより深く、等しく均される(石炭床の高度はレベリングバーよりも最大30%低くなる場合がある)。
-コークス炉室の外側にある収縮されたレベリングバーにより、これ以上広範囲にこぼれることがない。
-石炭体積が増加する。
-装入サイクル時間全体が短縮される。
-コークス炉室の屋根と均された石炭床との間のガスの流れが改善される。
-コークスの高さが一定であるため、ケーキ全体のガス透過性が向上し、結果として生産性が向上する。
-(レベリングバーと比較して)上部コークス炉室の高温に影響を受けない。実際、ブラストチューブは、装入穴まで上昇する冷たい石炭の円錐状の山に導入され、したがって、石炭の山によって熱から保護される。
-コークス炉室へのブラスト管の導入と除去の機構は、押出し機の機構に比べて単純である。
-コストが削減され、プログラミング、視覚化、ケーブル配線の労力が軽減され、駆動ユニットおよび計装が減少し、メンテナンスが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明のさらなる詳細および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】本発明の一実施形態によるレベリング装置の正面図である。
図2図1のブラスト管のブラスト端部の詳細図である。
図3】他の可能なノズル設計の図である。
図4】他の可能なノズル設計の図である。
図5】コークス炉室内の石炭の山を均すための本装置の使用を示すスケッチである。
図6】コークス炉室内の石炭の山を均すための本装置の使用を示すスケッチである。
図7】コークス炉室内の石炭の山を均すための本装置の使用を示すスケッチである。
図8】コークス炉室内の石炭の山を均すための本装置の使用を示すスケッチである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明によるコークス炉バッテリのコークス炉室内の石炭の山を均すための本装置10の一実施形態を示す。図1図4に関連して最初に装置10を説明し、図5図8を参照してコークス炉の装入に関する装置10の使用を以下でさらに説明する。装置10は主に、ブラスト管16と流体接続された加圧ガス用、好ましくは空気用の貯蔵容器14を含み、貯蔵容器14は、入口ポート19とブラスト端部20との接続端部18を有する。
実施形態では、ブラスト管16は真っ直ぐな剛性の管であり、ブラスト管16の軸方向反対側の端部で入口ポート19(管16の一端)とブラスト端部20との間に延出する内部ガス通路23を画定している。見て分かるように、ブラスト管16は、その入口19が貯蔵容器14の出口21に接続され、それにより両方の要素が流体連通している。
【0037】
ブラスト端部20では、1つ以上の開口部、ここでは一対の開口部22および22を介して空気ブラストが放射される。
【0038】
図1では、石炭の山の上面24を表す第1の点線を見ることができる。ここで円錐の形状を認識するであろう。実際、背景技術のセクションで説明したように、コークス炉が石炭で満たされると、石炭粒子の安息角に応じて、屋根の各装入穴の下に円錐状の山が形成される。より全体的に見ると、コークス炉内の石炭の山の全体的な形状は、上部に複数の円錐状の山(または峰になった堆積物)を有する石炭のベース層で構成されている。したがって、搭載された山の上部は、山と谷を形成する、離間した上部三角形のプロファイルを有する。このような山の形状は均す(レベリングする)、すなわち平らにする必要がある。
【0039】
ブラスト管16のブラスト端部20は、図示のように石炭の山、特に円錐状の山25に導入されるように設計され、装置10は、円錐状の山を崩壊させ、それにより石炭の山のレベリングを引き起こすために、開口部22、22を介して石炭の山25に圧縮空気の1回以上のブラストを排出/放射するように構成されている。
【0040】
図1の第2の点線は、ブラスト後の均された石炭の山の上面プロファイル26を表している。したがって、コークス炉室の石炭の山は、コークス炉の各装入穴で簡単に行うことができる空気/ガスブラストによって効率的に均すことができる。
【0041】
なお実際には、装置10は、図5の27で概略的に表すマニピュレータ装置に便利に関連付けられ、マニピュレータ装置は通常、ブローイング管16を静止位置と作業位置との間で移動させるように構成され、それらの位置においてブラスト管のブラスト端部は石炭の山に配置される。マニピュレータ装置の設計には、装置10それぞれのブローイング管16を垂直方向に沿って少なくとも移動させ、装入穴を介して石炭の山にブローイング管を導入し、ブローイング管を除去する機構が必要である。好都合なことに、マニピュレータ装置は、装置10を水平に移動させて、装入穴との位置合わせを可能にし、装入穴の上の領域を空けるようにも構成される。そのようなマニピュレータの構造は本発明の焦点ではないため、これ以上説明しない。当業者は、油圧シリンダ、歯付きラックなどに基づいて、さまざまな適切なマニピュレータ機構を考案することができる。
【0042】
しかし、本実施形態では、ブラスト管16が貯蔵容器14に直接接続され、ブラスト管16と貯蔵容器14のアセンブリが全体として上下に移動することに留意されたい。これは他の実施形態では異なる場合がある。ブラスト管は、例えば中間配管経由で、貯蔵容器に間接的に接続できる。また、場合によっては、貯蔵容器に対してブラスト管を操作できることが望ましい場合がある。ブラスト管および/または中間配管は、貯蔵容器とブラスト管との間の流体/気体の連通を確保しながら中間配管の移動を可能にするように設計された関節を含むことができる。
【0043】
好ましくは、貯蔵容器14は、従来の空気ブラスタ(または空気/ガス大砲)として構成される。したがって、貯蔵容器は従来、貯蔵容器に含まれる圧縮空気を即座に放出することを可能にするトリガ機構付き迅速放出弁(図では見えない、容器14の内側)を含む加圧リザーバで構成され、それにより、ある種の爆発的なガス/空気の広がりを形成する衝撃力と呼ばれるブラストを達成する。迅速放出弁(リザーバ14の内側、図示せず)は通常、貯蔵容器とブローアウトチューブとの間の移行部に配列された高速で開き広い表面を有する弁である。迅速放出弁は、トリガ機構によって選択的に作動される。図示の実施形態では、ブローアウトチューブは主に貯蔵容器14の内側に延出し、貯蔵容器から短く突出し、フランジ28で終わる。ブラスト管16は、その接続端部18でフランジ28に対して、入口19を囲む対応するフランジ31によって固定されている。したがって、ブラスト管16は、貯蔵容器14の出口21それぞれのブローアウトチューブと流体連通している。他の実施形態では、ブローアウトチューブとブラスト管は一体であってもよい。参照符号29は、貯蔵容器14の入口側を示しており、加圧ガス入口ポートを備えた弁および配管を含む。
【0044】
このようなガス大砲はよく知られており、任意の適切なタイプのガス大砲を使用してもよい。例えば、本発明の文脈において、VSR Industrietechnik GmbH(Duisburg、ドイツ)から入手可能なVSR Blaster(登録商標)を使用してもよい。貯蔵容器は、25L、50L、またはそれ以上の容量を有してもよい。貯蔵容器に含まれるガスの貯蔵圧力は、5~15バール、特に5~10バールであり得る。実際には、ガスは空気であってもよく、貯蔵容器14をプラントの空気ネットワークに接続すると便利である。空気以外のガス、例えば中性ガス、特に窒素での動作を検討することができる。
【0045】
また、図1で注目すべきは、ブラスト管16を囲む半径方向の締め付けリング32であり、これはブラスト管16の内径と一致する内径を有し、内径に沿って摺動可能に移動できる。このリング32は、装置10が定位置にありブラストの準備ができているときに、ブラスト管16が挿入される装入穴62を閉じるために、コークス炉の装入穴62の入口部分と協働するカバーを形成するように構成されている(図6参照)。したがって、カバー32は、有利には、山のブラスト中に装入穴62をしっかりと閉鎖することを可能にし、コークス炉室から外側に微粉が放射されることを回避する。
【0046】
図1に見られるように、ブラスト管16のブラスト端部20は、ノズル40で都合よく終わる。図示の実施形態では、ノズル40は二重ブローノズルであり、すなわち、2つの排出オリフィス22、22を含む。ノズル40は、ブラスト管16の先端部に固定されているが、ブラスト管16と一体であってもよい。
【0047】
図2でより詳細に見ることができるように、ノズル40は、ブラスト管16の内部ガス通路23の軸方向に連続する入口部分44を有し、入口部分44は、2つのブローチューブ42および42と連通し、各々がそれぞれのブローオリフィス22、22で終わる。ノズル40の入口部分44は、円形断面(断面B-B)を有する。2つのブローチューブ42および42は、真っ直ぐであり、円形の断面を有し、吹出し方向を規定するそれぞれの軸DまたはD´に沿って延出する。ブローチューブ42および42は、ブラスト管の長手方向軸Lに対して対称である。言い換えれば、各ブローチューブの軸D、D´は軸Lから角度αだけ偏向しており、それによって2つのブローチューブ42、42の軸DとD´との間に角度2αが存在する。
【0048】
したがって、ノズル40は、ブラスト管の前方で角度αに従って側方にガスブラストを放射するように設計されている。角度αは、20°~90°、好ましくは35°~90°の範囲で選択され得る。特に、角度αは、35°、45°、60°、および90°に等しくてもよい。図2に示す実施形態では、α=35°である。
【0049】
図3を見ると、別のノズル設計が示されている。ノズル240は、ブラスト管16と流体連通し、かつブラスト管16と軸方向に連続する入口部分を含む。ここでも、入口の流れは、それぞれのオリフィスを有する2つのブローチューブに分かれる。見て分かるように、ブローチューブ242および242は、湾曲したチューブ部分を備え、ブラスト管の軸方向Lと90°の角度(軸DおよびD´で示す)を形成するブラスト方向を規定する直線部分243で終わる。
【0050】
図3に見られるように、この変形例では、入口部分244は、ブラスト管の端部(さらに同様の形状)に一致する平坦な断面(D-D)を有することが好ましい。しかし、ブローオリフィス222および222は、(円形断面E-Eの)直線部分243によって画定されるため、円形断面である。
【0051】
有利には、ノズル240の前側に正面ガイド250が取り付けられている。正面ガイド250は、V字型の金属要素である。その頂点は、ブローチューブ242から軸方向Lに向いている。正面ガイド250は、石炭の山へのブラスト管の導入を促進するように設計されている。
【0052】
実施形態において、入口パイプ144および244の流れ断面は、200cm未満であり、好ましくは50cm~100cmである。ブローチューブ142および242の出口での流れ断面は、100cm未満、好ましくは25cm~50cmの間である。
【0053】
図4は、別の設計の可能性を示しており、ブラスト管の端部自体が、単一の排出オリフィスを備えたノズル142を形成している。円形断面のブラスト管は、その先端部が軸方向Lにおいて単純に開いており、したがって、排出開口部122は、軸Lに垂直な平面にある。このようなブラストノズル142により、ブラストはブラスト管16の前方、すなわち軸方向Lに独自に放射される。開口部122の断面は、200cm未満であり、好ましくは50cm~100cmの間に含まれる。
【0054】
今示している実施形態では、ブラスト管16は真っ直ぐな管であることに留意されたい。コークス炉バッテリの設計に応じて、ブラスト管の長さは1~6m、特に約2、3、4または5mの長さに変えることができる。公称直径は、80~120mm、特に約100mmであり得る。別の実施形態では、ブラスト管について他の形状を考慮してもよい。上記の寸法は、従来のコークス炉での動作に便利であり、コークス炉では、装入穴の入口部分の直径が最大500~600mmになる場合がある。したがって、カバーリング32は、対応する外径を有し得る。これらは例示的な値に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0055】
図5図8は、コークス炉60に石炭を装入する本方法の一実施形態を概略的に示している。この方法は、上述の装置10を使用して有利に実行される。
【0056】
図5において、参照符号60は一般に、屋根64とコークス炉室65とを含むコークス炉を示している。理解されるように、図は、1つの装入穴62の下のコークス炉の一部のみを示している。コークス炉室65は、典型的には、いくつかの装入穴を含む。参照符号70は石炭の山を一般的に示している。石炭は、重力により、装入穴62を介して室65内に緩く装入されている。石炭粒子は、典型的には、高炉/シャフト炉に従来使用されている微粉炭であり得る。すなわち、石炭は、10mm未満、さらには5mm未満の粒径を有していてもよい。例えば、コークス炉に装入された石炭のバッチにおいて、典型的な粒度分布は、石炭粒子の10~20重量%が3.15mm超、石炭粒子の約40~60重量%が1mm未満、大部分が500μm~1mmの範囲であり得る。これらは例示的な値に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0057】
図5に示す時点で、コークス炉室に石炭を装入する工程が終了する。石炭の山70が室内に形成されている。石炭の山70は、石炭のベース層71と、三角形として表される石炭の円錐状の山72(峰になった堆積物)とを含み、円錐状の山72は、各装入穴62の下に存在し、当業者には既知であり上記で説明したように、通常石炭のベース層71(すなわち三角形の下)の上にある。装置10は、本明細書では静止位置と呼ぶ、コークス炉への導入の準備ができた位置にある。ブラスト管16は、装入穴62の中心と垂直に整列している。
【0058】
図6は、方法の第2の工程を示し、ブラスト管16のブラスト端部20を石炭の山70内へ、好ましくは石炭70の峰になった堆積物の中心に導入するために、装置10をコークス炉室65内に下げる。これは単純に、装置10の垂直移動によって行われる。排出オリフィスを備えたブラスト端部20は、山の円錐72によって形成された頂点76の下の領域74に配置されている。したがって、ノズル40それぞれのブラスト端部20の先端部は、少なくとも0.5m、例えば0.5~1.5m、好ましくは約1mの深さで、山の円錐の頂点76の下に覆い隠されてもよい。これを本明細書では作業位置と呼ぶ。
【0059】
第3の工程(図7に示す)では、ブラスト管16のブラスト端部20を介して圧縮ガスのブラスト1回が放射された。衝撃力により、三角形の石炭堆積物72が崩壊し、図に示すように、コークス炉室65の内側の石炭の山70のレベリング(平坦化)が生じた。必要に応じて、1回以上のブラストを放出することができる。
【0060】
ブラスト中に装入穴62を実質的に閉じ、大気中への粉塵の放射を最小限に抑えるために、ブラスト管16に沿って摺動して装入穴62の入口に位置するカバー32に注目することができる。
【0061】
最後に、ブラスト管16を室65から除去するために、装置を上方に移動させる(図8を参照)。
【0062】
図5図8に関して本明細書に示されているレベリング手順は、典型的には、バッテリの単一のコークス炉ごとに繰り返される。各コークス炉について、各装入穴、すなわち装入中に形成されたそれぞれの峰になった各堆積物に対して動作が実行される。レベリングは、装置10のセットを用いて各装入穴に対して同時に賢明に実行できるか、または同じ装置10が各装入穴で次々に使用される。適切に設計されたガスブラストシステム(ブラスト管ならびに加圧された貯蔵容器の容量と圧力)を使用すると、単回のブラストで石炭の山を崩壊させることができる。したがって、本発明は非常に効率的で便利であり、これはコークス炉全体の管理にとって有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【文献】英国特許第362783A号
【文献】日本特許第平11/349953号
【文献】ドイツ特許第6929049U号
【文献】中国特許第201643487号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8