IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)の特許一覧

特許7037578OFDM信号に含まれるFSK信号の生成
<>
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図1
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図2
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図3
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図4
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図5
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図6
  • 特許-OFDM信号に含まれるFSK信号の生成 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】OFDM信号に含まれるFSK信号の生成
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
H04L27/26 113
H04L27/26 310
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019557391
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2017059756
(87)【国際公開番号】W WO2018196954
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【弁理士】
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100150670
【弁理士】
【氏名又は名称】小梶 晴美
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルムソン, レイフ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス, ミゲル
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-045802(JP,A)
【文献】特開2012-165252(JP,A)
【文献】特開2005-210330(JP,A)
【文献】特開2014-168201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0163444(US,A1)
【文献】特開2015-186212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0299532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブキャリアを含む直交周波数分割多重(OFDM)信号内に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号を生成する方法であって、前記FSK信号はFSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有し、前記方法は、
近接するサブキャリアのセットを前記FSK信号の送信に割り当てること(310)であって、前記セットは前記複数のサブキャリアのサブセットである、割り当てること(310)、および各FSKシンボル周波数を前記近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けること、
送信されるべき各FSKシンボル(201、202、203)について、送信されるべき前記FSKシンボル(202)の始端(252)におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボル(201)の終端(251)における前記FSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を選択すること(330)、ならびに
前記複数のサブキャリアを含むOFDM信号と、前記FSK信号とを生成することであって、前記FSK信号は、前記選択されたFSKシンボル位相に基づいて前記FSKシンボル周波数に対応する前記サブキャリアを変調すること、および、前記セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべき前記FSKシンボルを含む、生成すること(340)、
を含み、
前記FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべき前記FSKシンボル位相を、前記OFDM信号のサイクリックプレフィックス(221)の持続時間(241)と、前記サイクリックプレフィックスのない前記OFDM信号のOFDMシンボル(222)の持続時間(242)との間の比率によって、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相に関係付けることを含む、
方法。
【請求項2】
前記位相差基準は、絶対位相差が位相差閾値よりも小さいことを含み、前記絶対位相差は、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相と、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間で決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FSKシンボル位相を選択することは、位相偏移キーイング(PSK)信号コンステレーションの位相を選択することを含み、前記選択された位相と前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間の絶対位相差は、前記PSK信号コンステレーションの任意の他の位相と前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間の絶対位相差よりも小さい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記位相差基準は、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相が、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相に等しいことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべき前記FSKシンボル位相を、前記対応するFSKシンボル周波数によって、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相に関係付けることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべき前記FSKシンボル位相を、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相に補償タームを加えたものと等しくさせることを含み、前記補償タームは、前記比率、および前記FSKシンボル周波数と前記近接するサブキャリアのセットの中心周波数との間の差に基づく、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記FSK信号は、ガウスFSK信号を受信するように設定された受信器への送信のためのものである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記FSKシンボル周波数は、Bluetooth Low Energy規格に準拠する周波数に対応する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プログラム命令を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、データ処理ユニットにロード可能であり、前記コンピュータプログラムが前記データ処理ユニットによって実行されるとき、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行させるように設定される、コンピュータプログラム。
【請求項10】
複数のサブキャリアを含む直交周波数分割多重(OFDM)信号に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号の生成のための、直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信器のための装置であって、前記FSK信号はFSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有し、前記装置は、
近接するサブキャリアのセットを前記FSK信号の送信に割り当てることであって、前記セットは前記複数のサブキャリアのサブセットである、割り当てること、および各FSKシンボル周波数を前記近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けること、
送信されるべき各FSKシンボルについて、送信されるべき前記FSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端における前記FSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を選択すること、ならびに
前記複数のサブキャリアを含むOFDM信号と、前記FSK信号とを生成することであって、前記FSK信号は、前記FSKシンボル位相に基づく前記FSKシンボル周波数に対応する前記サブキャリアの変調、および、前記セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべき前記FSKシンボルを含む、生成すること、
を実行させるように設定された、コントローラ(420)を含み、
前記FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべき前記FSKシンボル位相を、前記OFDM信号のサイクリックプレフィックス(221)の持続時間(241)と、前記サイクリックプレフィックスのない前記OFDM信号のOFDMシンボル(222)の持続時間(242)との間の比率によって、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相に関係付けることを含む、
装置。
【請求項11】
前記位相差基準は、絶対位相差が位相差閾値よりも小さいことを含み、前記絶対位相差は、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相と、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間で決定される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、位相偏移キーイング(PSK)信号コンステレーションの位相を選択させることによって、前記FSKシンボル位相を選択させるように設定され、前記選択された位相と、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間の絶対位相差は、前記PSK信号コンステレーションの任意の他の位相と、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相との間の絶対位相差よりも小さい、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記位相差基準は、送信されるべき前記FSKシンボルの前記始端における前記FSK信号位相が、前記直前のFSKシンボルの前記終端における前記FSK信号位相に等しいことを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記FSKシンボル周波数は、Bluetooth Low Energy規格に準拠する周波数に対応する、請求項10から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載の前記装置を含む、直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信器。
【請求項16】
請求項15に記載の前記OFDMA送信器または請求項10から14のいずれか一項に記載の前記装置を含む、アクセスポイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に無線通信の分野に関する。より詳細には、本開示は、直交周波数分割多重(OFDM)信号に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
モノのインターネット(IoT)によって、接続される無線デバイスの数が著しく増加することが予想される。数多くのデバイス、たとえば電子レンジなどの家庭用電化製品は、およそ2.4GHzの周波数で動作する。これらのデバイスからの電磁放射は、同じ周波数付近で動作する近くの無線通信デバイスとの干渉を発生させるリスクがある。無線通信を意図していないデバイスからの干渉を回避するために、国際協定を介して、ある周波数バンドが無線通信用に確保されている。確保された周波数バンドの使用はライセンスを用いて規制され、これが、これらのバンドがしばしばライセンスバンドと呼ばれる理由である。同様に、確保されていないバンド、したがってライセンスを用いて規制されていないバンドはアンライセンスバンドと呼ばれる。2.4GHzバンドにおける産業科学医療用(ISM)バンドは、アンライセンスバンドの一例である。
【0003】
大多数のIoTデバイスは、アンライセンスバンド、特に2.4GHzのISMバンド内で動作する可能性が高い。同時に、従来、ライセンスバンド内でサポートされてきたサービスにアンライセンスバンドを使用する需要も増加している。後者の例として、従来、ライセンスバンドのみのための規格を策定する3GPPは、現在では、5GHzのアンライセンスバンド内で動作する、ロングタームエボリューション(LTE)のバージョンも策定している。
【0004】
IoTサービスで優位を占めることが予想される技術は、ブルートゥース無線技術、特に、Bluetooth Low Energy(BLE)、およびIEEE802.11の将来のバージョン、802.11axなどである。IEEE802.11に関して、少なくともある程度802.11axに基づく、IoTをサポートするために適したモードを標準化するよう努力されることが予想できる。
【0005】
IoTの適用例は、ほとんどの場合、たとえばファイルダウンロードおよびビデオストリーミングなどの適用例に比べて、異なる要件および特徴を有することが予見される。具体的に言えば、IoT適用例は、典型的には低データレートのみを必要とし、単一パケット内で送信されるデータの量は、多くの場合数バイトのみであり得る。加えて、多くのデバイス間での送信は非常に稀であり、たとえば、1時間に1回またはしばしばそれ以下である。しかしながら、IoTデバイスの数は大量であることが予想され、これは、デバイスの各々へのデータの量は少ないが、アグリゲートされるIoTデータは依然としてかなりの量であり得ることを意味する。
【0006】
IoT適用例を使用する多くのケースは通常の家庭内に見出され、様々なセンサ、アクチュエータなどに関係する可能性がある。したがって、要求されるカバレッジの要件は、たとえば通常、セルラシステムによって達成可能な要件よりも大幅に少ない。他方で、たとえばブルートゥースまたはIEEE802.11b/g/n/acによって取得可能なカバレッジでは十分でない可能性がある。これは、特に、デバイスのうちの1つが屋外にあり、他方のデバイスが屋内にある場合、デバイス間に侵入損失の高い外壁が存在するため、当てはまる可能性がある。
【0007】
ブルートゥース無線技術およびIEEE802.11の現行バージョンの欠点に起因して、これらの標準化機関はどちらも、カバレッジを大幅に増加させる新しいバージョンに取り組んでいる。
【0008】
通信リンクのレンジを増加させるための単純な手法は、使用されるビットレートを減少させることである。必要に迫られてビットレートを減少させることは、あるサイズのパケットを送信するのにより長い時間がかかることを意味する。この副作用として、チャネルはより長い時間占有されることになる。次に、同じチャネルを多数のデバイスが共有することで、この共有が効率的に実行されない場合、チャネルは輻輳する可能性がある。長いパケットを必要とすることおよびユーザ数の増加は、この輻輳をさらに顕著にすることにつながる。
【0009】
さらに、同じチャネルを介して送信される非IoTデータ、たとえばデータダウンロードおよびビデオストリーミングの量も増加する可能性がある。これは、IoT適用例および非IoT適用例の両方にとって良好なパフォーマンスを得るために、好ましくは何らかの調整を行うべきであることを示唆している。現在、高データレートの適用例、およびセンサなどの非常に低コストのIoT適用例の両方を効果的にサポートする、単一の標準は存在しない。前者にとっての主な標準はIEEE802.11、たとえば802.11nおよび802.11acであり、後者にとっての主な標準はBluetooth Low Energyである。したがって、2つのシステムは典型的には並列に、および好ましくは同期された形で動作する必要がある。
【0010】
こうした調整を行うための明白な、またおそらく最も簡単なやり方は、システム間でのタイムシェアリングによるものである。たとえば、所定の方式に従ってデータを送信または受信することが可能なタイムスロットが、各システムに割り当てられる。これは一般に、時分割多重(TDM)と呼ばれる。次にこのシステムは、特定のシステムに割り当てられた各タイムスロットにおいて、たとえば、タイムシェアリングを実装する一般的なやり方である時分割複信(TDD)を使用することが可能であり、ユーザにはアップリンクおよびダウンリンク送信のためのタイムスロットが割り当てられる。TDDの主な理由は、周波数分割複信(FDD)が採用される場合に必要な、コストのかかる二重フィルタを必要としない低コストの実装が可能なことである。しかしながら、IoTシステムのデータレートが個々のリンクについて非常に低速であるため、システム間で時間を共有するためにTDMを使用して良好なスペクトル効率を得ることは困難な可能性が高い。
【0011】
代わって、2つのシステム、すなわちIoTシステムおよび非IoTシステムの両方が同時に動作可能であれば好ましい。これを達成するための1つの手段は、非IoTシステムが直交周波数分割多重(OFDM)に基づく場合であり得る。OFDMを使用する手法は、1つまたは複数のサブキャリアをIoTシステムに割り当て、残りのIoTシステムを非IoTシステムに割り当てることによって、同時動作が達成可能であるため、概念上単純である。このようにして、IoTシステムに割り振られるサブキャリアの数はかなり柔軟にすることができる。
【0012】
たとえば、マルチキャリア信号を複数の異なる受信器に送信するように、マルチ変調送信器を設定することが可能であり、受信器のうちの少なくとも1つは、直交周波数分割多重(OFDM)以外の変調方式を使用する受信器である。マルチ変調送信器は、異なる受信器のそれぞれの変調方式に従って、異なる受信器をターゲットとするデータを相互に直交するサブキャリア信号にマッピングするように設定された、データマッピングユニットを含むことができる。マルチ変調送信器は、相互に直交するサブキャリア信号を時間領域においてマルチキャリア信号に変換するように設定された、逆高速フーリエ変換(IFFT)ユニットも含むことができる。マルチ変調送信器は、マルチキャリア信号内に所定のサイクリックプレフィックスを挿入するように設定されたサイクリックプレフィックスユニットを、さらに含むことができる。加えて、マルチ変調送信器は、マルチキャリア信号を複数の異なる受信器に送信するように設定された無線ユニットを含むことができる。提案される送信器は、一方は高データレートを送信および受信することが可能であり、他方は大幅に低いデータレートを送信および受信することのみが可能である、異なるタイプの無線デバイスの同時使用をサポートする、ネットワークノード(アクセスポイント)を実行可能にすることができる。
【0013】
典型的なシナリオにおいて、IoTデバイスは、ガウス周波数偏移キーイング(GFSK)に基づき、ブルートゥース無線技術に従って送信される信号を受信するように適合可能である。GFSKは、極端にコスト効率の高い実装を可能にする定包絡線変調である。受信器側では単純な制限受信器が使用可能であり、すなわち、アナログ-デジタル変換器(ADC)を単純な比較器に交換することが可能であり、本質的に受信器内に自動利得制御(AGC)は必要がなくなり、さらに実装を単純化し、コストを削減することになる。さらにより重要であるのは、送信器側の利得である。GFSKが定包絡線であることに起因して、電力増幅器(PA)をバックオフする必要性がかなり減少し、PAの直線性要件は大幅に厳しくなくなるため、著しく高い電力効率を得ることができる。センサなどのIoTデバイスはコイン電池によって電力供給することができるため、電力効率が主要な特徴の1つであることは非常に重要である。
【0014】
上記の例示的なマルチ変調送信器は、こうしたシナリオにおいて、GFSK受信に適合されたIoTデバイスへ送信するように周波数偏移キーイング(FSK)を適用することができる。しかしながら、生成される信号がGFSKではないという事実は、IFFT生成FSK信号が、IoTデバイス内のチャネル選択フィルタによってフィルタリングされた場合の適当なGFSK信号よりも歪曲することになるという点において、GFSK復調器内に何らかの影響を与えることになる。加えて、IFFT生成FSK信号のより広いスペクトルも、近接チャネル内に追加の干渉を発生させることになり得る。
【0015】
したがって、直交周波数分割多重(OFDM)信号に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号を生成するための代替手法が求められている。好ましくは、こうした手法は、OFDM信号に含まれないGFSK信号の生成に比べて、こうした生成によって生じる歪みを最小限にするか、または少なくとも軽減する。
【発明の概要】
【0016】
「含む/含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、明言される特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を指定するために採用されるが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を除外するものではないことに留意されたい。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が特段明白に示していない限り、複数形も同様に含むことが意図される。
【0017】
本明細書では、IoTデバイスおよび適用例ならびに通信からの様々な標準に言及することになる。こうした言及は単なる例示的なものであり、決して限定的なものではないことに留意されたい。これに反して、実施形態は、FSK信号がOFDM信号に含まれるものとして生成されるいかなるシナリオにも、等しく適用可能であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態の目的は、上記または他の欠点のうちの少なくともいくつかを解決、または軽減、緩和、あるいは除去することである。
【0019】
第1の態様によれば、これは、複数のサブキャリアを含む直交周波数分割多重(OFDM)信号内に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号を生成する方法によって達成される。FSK信号はFSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有する。
【0020】
方法は、近接するサブキャリアのセットをFSK信号の送信に割り当てることを含み、セットは複数のサブキャリアのサブセットであり、また、各FSKシンボル周波数を近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けることを含む。
【0021】
方法は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を(送信されるべき各FSKシンボルについて)選択することも含む。
【0022】
方法は、選択されたFSKシンボル位相に基づいてFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアを変調すること、および、セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべきFSKシンボルを含むFSK信号を生成することをさらに含む。
【0023】
一般に、FSK信号位相は時間の関数である。FSKシンボル位相は、典型的には、OFDM信号のシンボルのサイクリックプレフィックスの終端に対応する時点におけるFSK信号位相に等しい。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、方法は、OFDM信号を送信することをさらに含むことができる。
【0025】
近接するサブキャリアのセットは、いくつかの実施形態による、OFDM信号の1つまたは複数のリソースユニット(RU)に対応することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、FSKシンボル位相を選択することは、FSK信号内の初期FSKシンボルについてデフォルトまたはランダムなFSKシンボル位相を選択することを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、選択されたFSKシンボル位相に基づいてFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアを変調することは、逆高速フーリエ変換(IFFT)変調器の入力を、選択されたFSKシンボル位相を有する複素数とすることを含むことができ、入力は、FSKシンボル周波数に対応するサブキャリアのためのものである。いくつかの実施形態において、FSKシンボルは複素数を介して明示されるFSKシンボル振幅を有することができる。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、セットの残りのサブキャリアをミュートすることは、逆高速フーリエ変換(IFFT)変調器の入力をゼロに等しくすることを含むことができ、入力は、FSKシンボル周波数に対応しないセットのサブキャリアのためのものである。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、位相差基準は、絶対位相差が位相差閾値よりも小さいことを含むことができ、絶対位相差は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相と、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間で決定される。
【0030】
いくつかの実施形態において、帯域外放出は位相差基準のパラメータとすることができる。たとえば、位相差基準は、絶対位相差は位相差閾値よりも小さいことを含むことができ、位相差閾値の値は、帯域外放出(たとえば、スペクトルマスク)の許容レベルに依存する。
【0031】
FSKシンボル位相を選択することは、いくつかの実施形態において、位相偏移キーイング(PSK)信号コンステレーションの位相を選択することを含むことができ、選択された位相と直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間の絶対位相差は、PSK信号コンステレーションの任意の他の位相と直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間の絶対位相差よりも小さい。
【0032】
いくつかの実施形態において、選択は、PSK信号コンステレーションの任意の位相と、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間の、すべての絶対位相差を比較すること、および最も小さい絶対位相差に対応する位相を選択すること、を含むことができる。
【0033】
PSK信号コンステレーションは、たとえば、サイズ2、4、8、または16を有することができる。一般に、上記の手法は純粋なPSK信号コンステレーションに限定されない。これに反して、異なる信号ポイントが異なる位相を有する任意の適切なコンステレーションが適切となる。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、位相差基準は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に等しいことを含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべきFSKシンボル位相を、対応するFSKシンボル周波数によって、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相に関係付けることを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべきFSKシンボル位相を、OFDM信号のサイクリックプレフィックスの持続時間と、サイクリックプレフィックスのないOFDM信号のOFDMシンボルの持続時間との間の比率によって、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相に関係付けることを含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、FSKシンボル位相を選択することは、選択されるべきFSKシンボル位相を、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相に補償タームを加えたものと等しくさせることを含むことができ、補償タームは、比率、およびFSKシンボル周波数と近接するサブキャリアのセットの中心周波数との間の差に基づく。
【0038】
FSK信号は、いくつかの実施形態によれば、FSK信号を受信するように設定された受信器への送信のためのものとすることができる。いくつかの実施形態において、FSK周波数は、Bluetooth Low Energy規格に準拠する周波数に対応することができる。次いで、Bluetooth Low Energy規格に従って動作するように設定された(したがって、ガウスFSK信号を受信するように適合された)受信器を、本明細書で説明する実施形態に従って生成されたFSK信号の受信のために使用することもできる。
【0039】
FSK周波数は、いくつかの実施形態による、Bluetooth Low Energy規格に準拠する周波数に対応することができる。
【0040】
第2の態様は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを有する、コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品である。コンピュータプログラムは、データ処理ユニットにロード可能であり、コンピュータプログラムがデータ処理ユニットによって実行されるとき、第1の態様による方法を実行させるように設定される。
【0041】
第3の態様は、複数のサブキャリアを含む直交周波数分割多重(OFDM)信号に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号の生成のための、直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信器のための装置である。FSK信号はFSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有する。
【0042】
装置は、セットが複数のサブキャリアのサブセットである近接するサブキャリアのセットをFSK信号の送信に割り当てること、および各FSKシンボル周波数を近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けること、を実行させるように設定されたコントローラを含む。
【0043】
コントローラは、送信されるべき各FSKシンボルについて、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を選択することを実行させるようにも設定される。
【0044】
さらにコントローラは、FSKシンボル位相に基づくFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアの変調、および、セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべきFSKシンボルを含むFSK信号を生成することを実行させるように設定される。
【0045】
割り当ては、いくつかの実施形態による、スケジューラによって実行可能である。選択は、いくつかの実施形態による、位相セレクタによって実行可能である。生成は、いくつかの実施形態による、信号生成器(たとえば、IFFT変調器)によって実行可能である。
【0046】
いくつかの実施形態において、コントローラは、送信器によるOFDM信号を送信することを実行させるように設定することもできる。
【0047】
第4の態様は、複数のサブキャリアを含む直交周波数分割多重(OFDM)信号に含まれる周波数偏移キーイング(FSK)信号の生成のための、直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信器のための装置である。FSK信号はFSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有する。
【0048】
装置は、セットが複数のサブキャリアのサブセットである近接するサブキャリアのセットをFSK信号の送信に割り当てるように、および、各FSKシンボル周波数を近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けるように設定された、スケジューラ(たとえば、スケジューリング回路要素)を含む。
【0049】
装置は、送信されるべき各FSKシンボルについて、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を選択するように設定された、セレクタ(たとえば、選択回路要素)も含む。
【0050】
さらに装置は、FSKシンボル位相に基づくFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアの変調、および、セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべきFSKシンボルを含むFSK信号を生成するように設定された、信号生成器(たとえば、信号生成回路要素)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、装置は、OFDM信号を送信するように設定された送信器(たとえば、送信機回路要素)も含むことができる。
【0052】
第5の態様は、第3または第4の態様のうちのいずれかの装置を含む、直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信器である。
【0053】
第6の態様は、第5の態様のOFDMA送信器、あるいは第3または第4の態様のうちのいずれかの装置を含む、アクセスポイントである。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記態様のうちのいずれかは、追加として、他の態様のうちのいずれかについて上記で説明したような様々な特徴のうちのいずれかに一致するかまたは対応する特徴を有することができる。
【0055】
OFDM信号に含まれるFSK信号を(たとえば、IFFT変調器を使用することによって)生成することは、FSK信号がOFDM信号の他の部分に対して直交するという利点を有する。いくつかの実施形態の利点は、本明細書に提示される実施形態のうちのいずれかを適用することのない、OFDM信号に含まれるFSK信号の生成に比べて、OFDMに含まれるFSK信号を生成するときに、歪みが最小化、または少なくとも軽減されることである。
【0056】
いくつかの実施形態の他の利点は、1つのFSKシンボルから直後のFSKシンボルへの転送において不連続性がないことである。いくつかの実施形態の利点は、こうした不連続性の有する絶対値が、本明細書に提示される実施形態が適用されない手法に比べて、低減されることである。
【0057】
さらなる目的、特徴、および利点は、添付の図面に対する言及と共に、実施形態の下記の詳細な説明から明らかとなろう。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、例示的な実施形態を示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】いくつかの実施形態による、例示のシナリオを示す概略図である。
図2】いくつかの実施形態による、時間周波数グリッド内に例示のFSK信号を示す概略図である。
図3】いくつかの実施形態による、例示の方法ステップを示すフローチャートである。
図4】いくつかの実施形態による、例示の装置を示す概略ブロック図である。
図5】いくつかの実施形態による、例示の送信器チェーンを示す概略ブロック図である。
図6】いくつかの実施形態による、例示の利点を示すペアまたはプロットである。
図7】いくつかの実施形態による、例示のコンピュータ可読媒体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照しながら下記でより完全に説明および例示する。しかしながら、本明細書に開示されるソリューションは、多くの異なる形で具体化可能であり、本明細書に示される実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。
【0060】
下記において、FSKシンボルの始端における位相が、直前のFSKシンボルの終端における位相に関して位相差基準に合致する(たとえば、等しいかまたはほぼ等しい)ように、送信されるべきFSKシンボルの位相が選択される、実施形態を説明する。こうした手法の利点は、送信されるFSKシンボル間の不連続性が最小化(または、少なくとも軽減)されることであり、これによって、こうした不連続性によって引き起こされる妨害(たとえば、帯域外放出、FSK信号が受信されるときの復調器内の歪み、近接信号に対する干渉など)が最小化(または、少なくとも軽減)される。FSK信号はその情報をシンボルの周波数内でのみ搬送するため、FSKシンボル位相の選択が、搬送される情報に影響を与えることはない。
【0061】
選択手法は、OFDM信号に含まれるFSK信号の生成に関連して適用され、OFDM信号の近接するサブキャリアのセットがFSK信号の送信に割り当てられ、各FSKシンボル周波数は、近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けられる。
【0062】
図1は、いくつかの実施形態が適用可能な例示的シナリオを概略的に示す。このシナリオにおいて、アクセスポイント(AP)100は、図に示されるように、それぞれ112、122において2つの異なる無線通信デバイス110、120に送信する。たとえば、無線通信デバイス110は、OFDM受信器を使用して信号を受信するように適合された非IoTデバイスとすることができ、無線通信デバイス120は、それほど複雑でない受信器(たとえば、GFSK受信器)を使用して信号を受信するように適合されたIoTデバイスとすることができる。上記で説明するように、OFDM信号に含まれるFSK信号として、無線通信デバイス120を対象とした信号を生成することが望ましい場合があり、OFDM信号の少なくとも一部は無線通信デバイス110を対象とする。
【0063】
したがって、図1に示されるシナリオにおいて、AP100は、一方の110は高データレートの送受信が可能であり、他方の120はかなり低いデータレートのみを送受信可能である、2つの異なるタイプの無線通信デバイス(たとえば、ステーション(STA))をサポートするように設定されるものと想定することができる。たとえば、無線通信デバイス110はIEEE802.11axに準拠し得、OFDMを使用して20MHzまたはそれ以上(たとえば、40、80、または160MHz)の信号を送受信することが可能である一方で、無線通信デバイス120はBluetooth Low Energy(BLE)に準拠し得、ガウス周波数偏移キーイング(GFSK)を使用して送受信することが可能である。無線通信デバイス120を対象とするFSK信号のFSK周波数がBluetooth Low Energy規格に準拠する周波数に対応するとき、無線通信デバイス120のBLE受信器は、FSK信号の受信のためにも使用可能である。
【0064】
図2は、いくつかの実施形態による、OFDM信号に含まれる例示のFSK信号を概略的に示す。信号は、時間周波数グリッド(t/f)に関して示される。
【0065】
OFDM信号は、複数のサブキャリア、231、232、233を含み、近接するサブキャリアのセット230がFSK信号の送信に割り当てられる。この例において、FSK信号は2進FSK信号であり、2つのFSKシンボル周波数の各々は、近接するサブキャリアのセット230内の対応するサブキャリア232、233に関連付けられる。
【0066】
図2に示される例において、第1のFSKシンボル201は第1の値(たとえば、論理「0」を表す)を有し、第2および第3のFSKシンボル202、203は第2の値(たとえば、論理「1」を表す)を有する。シンボル境界では、1つのFSKシンボルから次へ(たとえば、201から202へ)遷移するときに、不連続性が存在する場合がある。本明細書で開示される実施形態は、こうした不連続性を最小化(または少なくとも軽減)するような、送信されるべき各FSKシンボル(201、202、203)の位相の選択を提示する。たとえば、FSKシンボル202の位相は、FSKシンボル202の始端252における位相が、直前のFSKシンボル201の終端251における位相に関して位相差基準に合致するように選択することができる。
【0067】
FSK信号の送信に割り当てられないサブキャリアを占有する、OFDM信号の従来の部分は、斜めのストライプ状の時間周波数占有によって示される。周知のように、OFDMシンボル240の各サブキャリア部分は、典型的にはあるシンボル長さ(または持続時間)242のシンボル部分222およびあるサイクリックプレフィックス長さ(または持続時間)241のサイクリックプレフィックス部分221を有する。
【0068】
OFDM信号はサイクリックプレフィックスを含むため、および、FSK信号はOFDM信号に含まれるものとして生成されるため、従来のOFDM信号と同じ信号変調器を使用して、FSKシンボルの位相の選択は、非連続性の最小化(または、少なくとも軽減)を達成するために、FSKシンボル周波数を表すサブキャリアをどのように変調するかを決定することを含む。典型的には、選択されたFSKシンボルの位相を使用して、FSKシンボル周波数を表すサブキャリアを変調することが可能であり、選択されたFSKシンボルの位相は、FSKシンボルの始端における位相とは異なる(が、依存する)ことが可能である。
【0069】
図3は、いくつかの実施形態による、例示的方法300を示すフローチャートである。方法は、図2に例示されるように、複数のサブキャリアを含むOFDM信号に含まれるFSK信号(FSKシンボルを含み、各FSKシンボルは対応するFSKシンボル周波数を有する)を生成するためのものである。
【0070】
方法は、ステップ310で開始され、OFDM信号の近接するサブキャリアのセットが(図2の230に比べて)FSK信号の送信に割り当てられ、各FSKシンボル周波数は(図2の232および233に比べて)近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けられる。典型的には、近接するサブキャリアのセットはOFDM信号のリソースユニット(RU)に対応することが可能であり、FSKシンボル周波数は、RU内に均等に分散する対応するサブキャリアに関連付けることが可能である。たとえば、2進FSKが適用される場合、対応するサブキャリアは、RUの中心サブキャリアから等しく、しかし異なる方向に離れた、RU内の2つのサブキャリアとすることが可能である。
【0071】
送信されるべき各FSKシンボルの場合、当分野で周知のように、シンボルの情報データ(たとえば、2進FSKの場合、「0」または「1」)は対応するFSKシンボル周波数にマッピングされる。これはステップ320に示され、典型的には、(図2の232および233に比べて)近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに情報データをマッピングすることを含む。
【0072】
ステップ330において、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相が選択される。ステップ330の選択は、本明細書において後に実例が示されるように、様々なやり方で実装することができる。
【0073】
次いで、ステップ340において、FSK信号生成は、選択されたFSKシンボル位相に基づいて、FSKシンボル周波数に対応するサブキャリアを変調することを含む。FSK信号の送信に割り当てられたセットの残りのサブキャリアは、現行のシンボルの間、ミュートされる。典型的には、OFDM信号(および、それによるFSK信号)は、IFFT変調器を使用して生成することができる。次いで、選択されたFSKシンボル位相に基づくFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアを変調することは、IFFT変調器へのそのサブキャリアのための入力を、選択されたFSKシンボル位相に等しい位相を伴う複素数にすることを含むことができ、また、セットの残りのサブキャリアをミュートすることは、それらのサブキャリアのためのIFFT変調器への入力をゼロに等しくすることを含むことができる。
【0074】
生成されたOFDM信号は、典型的には、シンボルのために生成された後にシンボルごとに送信される。これは図3のステップ350によって示されている。
【0075】
次いで、ステップ320、330、340、および350は、次のFSKシンボルに対して反復可能である。実際には、マッピング、選択、生成、および送信のステップは、部分的または完全に並列に、非常に良好に実施可能であり、各ステップはFSK信号の異なるFSKシンボルを処理することに留意されたい。
【0076】
ステップ330に従い、FSKシンボル位相は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、選択されるべきである。
【0077】
理想的な選択手法と呼ぶことができる典型的な例において、位相差基準は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に等しいことを含むことができる。したがって、FSK信号位相は、シンボル境界において不連続性が発生しないように選択される。
【0078】
いくつかの実装において、こうした正確な選択は、不可能である(たとえば、使用可能な位相が限られた数しか存在しない場合、典型的にはPSK信号コンステレーションと同様に指定される)か、または面倒である(たとえば、かなりの複雑さを必要とする)可能性がある。次いで、結果が理想的な選択手法にできる限り近くなるように、FSK信号位相を選択することが望ましい可能性がある。これらのシナリオにおいて、位相差基準のいくつかの定義が可能であり、下記に数例を示す。
【0079】
第1の例において、位相差基準は、絶対位相差が位相差閾値よりも小さいことを含むことができ、絶対位相差は、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相と、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間で決定される。したがって、FSK信号位相は、不連続性の絶対値が閾値よりも小さいように選択される。
【0080】
第2の例(第1の例と重複する可能性がある)において、FSK信号位相は、限定数の使用可能な位相(たとえば、PSK信号コンステレーションの位相)から選択される。理想的な選択手法の位相に最も近い位相が選択可能であり、すなわち、選択された位相と直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間の絶対位相差は、任意の他の使用可能な位相と直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間の絶対位相差よりも小さい。たとえばこれは、任意の使用可能な位相と直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相との間のすべての絶対位相差を比較すること、および、最小の絶対位相差に対応する位相を選択することによって、達成可能である。
【0081】
FSK信号はOFDM信号に含まれるものとして変調されるべきであるため、FSKシンボル位相の選択は、典型的には、FSKシンボル位相を決定するためにFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相を関係付けること(たとえば、変換すること)を含む。こうした変換は、典型的には、サイクリックプレフィックスの長さ(持続時間)、サイクリックプレフィックスを伴わないOFDMシンボルの長さ(持続時間)、およびFSKシンボル周波数のうちの、1つまたは複数を考慮することができる。
【0082】
たとえば、FSKシンボル位相を選択することは、FSKシンボル位相を、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相に、補償タームを加えたものに等しくさせることを含むことができ、補償タームは、サイクリックプレフィックスの持続時間とサイクリックプレフィックスを伴わないOFDMシンボルの持続時間との間の比率、およびFSKシンボル周波数と近接するサブキャリアのセットの中心周波数との間の差に基づく。
【0083】
典型的には、補償タームは、サイクリックプレフィックスの間にどの程度位相が変化するかを考慮する。したがって、FSKシンボル位相は、典型的には、(上記で説明したような位相差基準に従って、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に等しいか、または少なくとも同様の)FSKシンボルの始端におけるFSK信号位相に、サイクリックプレフィックスの間に発生する位相遷移の表現である補償タームを加えたものとして、選択することができる。位相遷移は、サイクリックプレフィックスの持続時間とFSKシンボルの(すなわち、対応するサブキャリアの)周波数との間の積の計算を介して決定可能である。典型的には、FSKシンボルの周波数は、ベースバンド信号内に現れるように、すなわち、直流(DC)サブキャリアに関係して、得ることができる。
【0084】
したがって、FSKシンボルkの始端におけるFSK信号位相が、
と示される場合、(図2の241に比べて)サイクリックプレフィックスの持続時間はTCPと示され、FSKシンボルkの周波数に対応するサブキャリアの周波数はfと示され、FSKシンボルkについてのFSKシンボル位相は、引数
として選択可能であり、上式でMはIFFTへの入力として使用可能な複素数である。
【0085】
下記の実証部分において、FSKシンボルの始端におけるFSK信号位相
は、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相
に等しく、したがって、引数
であるとする。(図2の242に比べて)サイクリックプレフィックスを伴わないOFDMシンボルの持続時間は、Tと示される。
【0086】
この例では、1つのアクティブなサブキャリアのみを含むOFDMシンボルが考えられる。これは、OFDM送信器によるFSK生成の例示目的としては十分である。より一般的に言えば、FSKシグナリングのために割り当てられたRU内での、1つのアクティブなサブキャリアのみを伴うOFDMシンボルの生成を想定することができる。
【0087】
この例において、シンボルSk-1とSとの間の連続位相を取得するために、経時的な(時間がサイクリックプレフィックスの終端からシンボルの終端へと進む)Sの下記の式を考えることができる。
(t)=Mexp(i2πdΔft)、0≦t≦T
【0088】
上式で、dは(「0」または「1」が論理的に搬送されるべきか否かに依存して)+1または-1に対応する2進データを示し、Δfはサブキャリア間隔を示し、nはFSKシンボル周波数に対応するサブキャリア(DCサブキャリアに関してカウントされる)を示す。次いで、FSKシンボルkの始端におけるFSK信号位相は、下記のようになる。
【0089】
したがって、この例に従い、またΔf=1/Tu’とすると、FSKシンボル位相は、以下のように選択されるべきである。
【0090】
多くの実践的なシステムでは、比率
は整数である。この場合、結果として生じる位相は有限セット内となり、典型的には任意の適用可能コンステレーションサイズのPSKに使用される共通変調シンボルに対応する。たとえば、

および
の場合、可能な位相のセットは、
とすることができる。
【0091】
が整数でない場合、結果として生じる可能な位相のセットは無限とすることができる。次いで、PSK信号コンステレーションの最も近い信号ポイントを近似として使用することが可能であるか、または、PSK信号コンステレーションからの信号ポイントを使用するのではなく、あらゆるシンボルについて正確な位相の値を計算することが可能である。
【0092】
図4は、いくつかの実施形態による、例示の装置400の概略図である。装置400は、OFDMA送信器および/またはアクセスポイント(またはネットワークノード)のためのものであり、それらに含まれることが可能である。装置400は、たとえば、図3に関連して説明したような方法を実行させるように設定可能である。
【0093】
装置は、複数のサブキャリアを含む、OFDM信号に含まれるFSK信号の生成のためのものである。装置は、少なくとも図3の方法ステップ310、330、および340を実行させるように設定されたコントローラ(CNTR)420を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、コントローラは、スケジューラ(SCH)440、信号生成器(GEN)430、位相セレクタ(PS)425、および送信器(TX)410のうちの1つまたは複数を含むか、またはそうでなければこれらに関連付けることができる。
【0095】
コントローラ420は、セットが複数のサブキャリアのサブセットであるFSK信号の送信に、近接するサブキャリアのセットを割り当てること、および、各FSKシンボル周波数を近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けること、を実行させるように設定可能である。こうした割り当ておよび関連付けは、たとえば、スケジューラ440によって実行可能である。
【0096】
コントローラ420は、送信されるべき各FSKシンボルについて、送信されるべきFSKシンボルの始端におけるFSK信号位相が、直前のFSKシンボルの終端におけるFSK信号位相に関して位相差基準に合致するように、FSKシンボル位相を選択することを実行させるようにも設定可能である。こうした選択は、たとえば位相セレクタ425によって実行可能である。
【0097】
さらに、コントローラ420は、FSKシンボル位相に基づくFSKシンボル周波数に対応するサブキャリアの変調、および、セットの残りのサブキャリアをミュートすることによって、送信されるべきFSKシンボルを含むFSK信号を生成することを実行させるように設定可能である。こうした生成は、たとえば、信号生成器(たとえば、IFFT変調器を含む)によって実行可能である。
【0098】
コントローラは、生成されたOFDM信号を送信することを実行させるようにも設定可能である。送信は、たとえば送信器410によって実行可能である。
【0099】
図5は、いくつかの実施形態による、OFDM信号に含まれるFSK信号を生成するための例示の送信器チェーンを概略的に示す。たとえば、送信器チェーンは、図4の信号生成器430および送信器410の実装を表すことができる。
【0100】
例示の送信器チェーンは、IFFT510、サイクリックプレフィックス加算器(CP)520、デジタル-アナログ変換器(DAC)530、ミキサ(MIX)、および電力増幅器(PA)550を含む。これらの機能ブロックのすべてが、当分野で周知の従来の様式で動作可能である。
【0101】
しかしながら、近接するサブキャリアのセットをFSK信号の送信に割り当てることが可能であり、各FSKシンボル周波数を近接するサブキャリアのセット内の対応するサブキャリアに関連付けることが可能である。割り当てられた近接するサブキャリアのセットに対応するIFFTの入力(502)を使用して、前述のようなFSK信号が生成され、IFFTの他の入力(501、503)を使用して、OFDM信号の従来の部分が生成される。
【0102】
図6は、いくつかの実施形態による、例示の利点を示すペアまたはプロットである。プロットは、不連続性を回避するための努力が行われない場合(左)、および、本明細書で説明する方法を使用して不連続性が軽減される場合(右)の、送信された信号のパワースペクトル密度を示す。両方のプロットについて、参照番号600および610によって、-50dBmのパワースペクトル密度値が示される。図を見るとわかるように、これは、不連続性を軽減することによって、パワースペクトル密度を著しく向上させることができることを実証している。
【0103】
説明される実施形態およびそれらの等価物は、ソフトウェアまたはハードウェアあるいはそれらの組み合わせにおいて実現可能である。実施形態は汎用回路要素によって実行可能である。汎用回路要素の例は、デジタル信号プロセッサ(DSP)、中央処理ユニット(CPU)、コプロセッサユニット、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および他のプログラマブルハードウェアを含む。代替または追加として、実施形態は、特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用回路要素によって実行可能である。汎用回路要素および/または専用回路要素は、たとえば、ネットワークノード(アクセスポイント)などの装置に関連付けられるか、またはそれらに含まれることが可能である。
【0104】
実施形態は、本明細書で説明される実施形態のいずれかに従って、装置、回路要素、および/または論理を含む(ネットワークノードなどの)電子装置内に出現可能である。代替または追加として、(ネットワークノードなどの)電子装置は、本明細書で説明される実施形態のいずれかに従って、方法を実行するように設定可能である。
【0105】
いくつかの実施形態に従い、コンピュータプログラム製品は、たとえば、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリ、プラグインカード、組込み型ドライブ、または読み取り専用メモリ(ROM)などの、コンピュータ可読媒体を含む。図7は、コンパクトディスク(CD)ROM700の形の例示のコンピュータ可読媒体を示す。コンピュータ可読媒体は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを記憶している。コンピュータプログラムは、たとえば、ネットワークノード710に含めることが可能なデータプロセッサ(PROC)720にロード可能である。データ処理ユニットにロードされた場合、コンピュータプログラムは、データ処理ユニットに関連付けられるかまたは含まれる、メモリ(MEM)730内に記憶することができる。いくつかの実施形態によれば、コンピュータプログラムは、データ処理ユニットにロードされ、データ処理ユニットによって実行される場合、たとえば図3に示される方法に従って方法ステップを実行させることができる。
【0106】
本明細書では、様々な実施形態について言及してきた。しかしながら、当業者であれば、説明された実施形態に対する依然として特許請求の範囲内に入る多数の変形を理解されよう。たとえば、本明細書で説明される方法実施形態は、ある順序で実行されるステップを介して例示的な方法を開示している。しかしながら、これらのイベントのシーケンスは、特許請求の範囲から逸脱することのない別の順序で実施可能であることを理解されよう。さらにいくつかの方法ステップは、たとえ順番に実行されるように説明されている場合であっても、並行して実行可能である。
【0107】
同様に、実施形態の説明において、機能ブロックを特定のユニットに区分することは、決して限定することを意図していないことに留意されたい。これに反して、これらの区分は単なる例である。本明細書で1つのユニットとして説明される機能ブロックは、2つ以上のユニットに分割することができる。さらに、本明細書で2つまたはそれ以上のユニットとして実装されるように、説明される機能ブロックを、より少ない(たとえば単一の)ユニットに統合することができる。
【0108】
したがって、説明される実施形態の細部は例示的目的で提案されたものであり、特許請求の範囲に入るすべての変形は受け入れられるものと意図されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7