(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】搾乳システム
(51)【国際特許分類】
A01J 5/007 20060101AFI20220309BHJP
A01J 11/00 20060101ALI20220309BHJP
A01J 9/00 20060101ALI20220309BHJP
A01J 5/003 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A01J5/007
A01J11/00
A01J9/00
A01J5/003
(21)【出願番号】P 2019572211
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 NL2018050390
(87)【国際公開番号】W WO2019004819
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-08
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】510145956
【氏名又は名称】レリー パテント エヌ・ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ メーレンドンク ロベルトゥス カロルス マリア
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0094936(US,A1)
【文献】米国特許第4144804(US,A)
【文献】国際公開第2010/071413(WO,A2)
【文献】特開2003-180180(JP,A)
【文献】特開平7-31312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳を構成するために、制御ユニットを有し、酪農動物から全自動で搾乳するように構成された自動ロボット搾乳装置と、
前記搾乳における前記搾乳されたミルクを受け取って処理するための、前記搾乳装置に接続されたミルク処理装置と
を備え、
前記搾乳装置が、
前記酪農動物を識別するために前記制御ユニットに作動可能に接続されており、前記酪農動物からの前記ミルクの少なくとも組成についての情報を有する動物データベースを備える、動物識別装置、
及び/又は、
前記搾乳されたミルクの前記組成についての情報を収集するために前記制御ユニットに作動可能に接続されたミルクセンサ装置
を備え、
前記ミルク処理装置が、前記情報を受信するために前記制御ユニットに接続されて、前記搾乳における前記ミルクの脂肪分含有量及び/又はタンパク質含有量を標準化するように構成された標準化装置を備え、
前記ミルク処理装置が、その搾乳に関連する前記情報に基づいて前記搾乳における前記ミルクを標準化するために、前記標準化装置を制御する、
搾乳システム。
【請求項2】
前記標準化装置が、
前記受け取った搾乳を調整可能である第1の部分と第2の部分とに分割するための分割装置と、
前記搾乳の前記第1の部分を受け取り、前記第1の部分から脂肪及び/又はタンパク質を除去し、そのように加工乳として処理された前記第1の部分の前記ミルクを供給するための除去装置と、
標準化されたミルクを作るために前記加工乳と前記搾乳の前記第2の部分とを混ぜ合わせるための混合装置と
を備え、
前記標準化装置が、前記搾乳について受け取った前記情報に基づいて、前記分割装置による前記第1の部分と前記第2の部分との比率を設定する、
請求項1に記載の搾乳システム。
【請求項3】
前記除去装置が、前記第1の部分をスキミングするための遠心分離機を備える、
請求項2に記載の搾乳システム。
【請求項4】
前記搾乳装置が、前記酪農動物が自発的に訪れることができるロボット搾乳装置を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の搾乳システム。
【請求項5】
複数の自動搾乳装置を備え、そのそれぞれが前記ミルク処理装置に接続されており、
前記制御ユニットが、各搾乳を、前記関連する情報とともに、前記ミルク処理装置に個別に送るよう構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の搾乳システム。
【請求項6】
各搾乳装置が、
前記搾乳を収集するための第1のミルクジャーと、
前記ミルクジャーから前記搾乳を圧送するための第1のミルクポンプと
を備え、
各ミルクジャーが、前記ミルク処理装置の方へ向かうミルクパイプに接続されており、
さらに、第2のミルクジャーが、各第1のミルクポンプと、前記第1のミルクポンプ、及び前記第2のミルクジャーから前記ミルク処理装置まで前記搾乳を圧送するための第2のミルクポンプによって圧送される前記搾乳を収集するための前記ミルク処理装置との間に設けられている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の搾乳システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搾乳システムに関し、特に、搾乳を構成するために、制御ユニットを有し、酪農動物から全自動で搾乳するように構成された自動ロボット搾乳装置と、搾乳において搾乳されたミルクを受け取って処理するための、搾乳装置に接続されたミルク処理装置とを備え、搾乳装置が、酪農動物を識別するために制御ユニットに作動可能に接続されており、酪農動物からのミルクの少なくとも組成についての情報を有する動物データベースを備える、動物識別装置、及び/又は、搾乳されたミルクの組成についての情報を収集するために制御ユニットに作動可能に接続されたミルクセンサ装置を備える、搾乳システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような搾乳システムは一般に、先行技術において知られている。よって、たとえば、Lely Astronaut(登録商標)及びDeLaval VMS(商標)の搾乳ロボットは市販されている。このようなシステムによって搾乳される酪農動物からのミルクは通常、乳製品工場に供給される。しかしながら、農家の自家製乳製品は、ますます、一般的になっている。現在の搾乳システムは、多くの場合、このようにして、さらに、比較的高い効率及び正確さで製造及び市販される乳製品に関して、法律及び/又は消費者の要求に応えることができていないことが見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、法律の要件及び消費者の要求を満たす農家の自家製乳製品の製造により適切に対応する、導入部に記載された種類の搾乳システムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の搾乳システム、特に、搾乳を構成するために、制御ユニットを有し、酪農動物から全自動で搾乳するように構成された自動ロボット搾乳装置と、搾乳において搾乳されたミルクを受け取って処理するための、搾乳装置に接続されたミルク処理装置とを備え、搾乳装置が、酪農動物を識別するために制御ユニットに作動可能に接続されており、酪農動物からのミルクの少なくとも組成、特に、量についての情報を有する動物データベースを備える、動物識別装置、及び/又は、搾乳されたミルクの組成、特に、量についての情報を収集するために制御ユニットに作動可能に接続されたミルクセンサ装置を備え、ミルク処理装置が、前記情報を受信するために制御ユニットに接続されて、搾乳におけるミルクの脂肪分含有量及び/又はタンパク質含有量を標準化するように構成された標準化装置を備え、ミルク処理装置が、その搾乳に関連する情報に基づいて搾乳におけるミルクを標準化するために、標準化装置を制御する、搾乳システムによって、本発明で実現される。本発明による搾乳システムによって、要件及び要求を満たす乳製品、特に、特定の規格に適合する製品を効率的に製造することは容易に可能である。このような規格で最もよく知られている例は、ミルクの「半脱脂」表示であり、それは、ミルクが1.5~1.8%の乳脂肪を含有することを示す。0.5%未満の含有量に対する「脱脂」及び3.5%の含有量に対する全脂肪乳など、他の含有量も標準化されているが、3.5%の含有量は多くの場合、最小含有量とも見なされる。さらにまた、乳脂肪と同様、タンパク質含有量も、特に、一年を通して消費者に同一の製品を提供することができるようにするために、標準化されることが多くなってきている。
【0005】
本発明は、搾乳されたミルクの組成及び量の情報に関するすでに確立された特性を使用して、迅速且つ簡単な方法でこのような製品を提供することができる。この方法では、ミルクは、最初にすべてのミルクを処理する必要なしに、効率的に処理することができる。さらに、1つ又は複数の望ましい製品を作るために、個別に処理単位ごとに、たとえば、搾乳ごとにミルクを処理することが可能である。これらは、別個の製品として貯蔵することもできる。
【0006】
たとえば、搾乳システムで提供され、搾乳装置に作動可能に接続された動物データベースに格納された情報が使用される。有利なことには、制御ユニットは、動物識別装置によって動物データベースから前記情報を検索するように構成されている。次に、制御ユニットは、適切な設定を正確に使用して、標準化装置を調整し、搾乳のミルクを標準化することができる。この場合、前記情報は大抵、定期的に採取される乳試料を使用して酪農動物ごとに決定される組成情報などの履歴情報であろうことに注目すべきである。さらにまた、量情報は、搾乳作業/搾乳ごとに異なるが、この情報は原則として、搾乳作業の直後に格納され、次に、標準化装置でのその後の使用のために利用可能である。過去の値の分析に基づいて、これらの値が要件及び要求を満たすだけ十分に正確であるかどうか判定することが可能である。
【0007】
或いは、又は、それに加えて、有利なことには、搾乳されたミルクの組成、特に、量についての情報を収集するために、制御ユニットに作動可能に接続されたミルクセンサ装置が使用される。センサ装置によって、少なくとも量、さらに、乳脂肪含有量及び/又はタンパク質含有量が、搾乳ごとに判定される。それに基づいて、この目的のためにプログラムされた制御ユニットは、ミルク中の望ましい含有量を実現するために、標準化装置をどのように設定する必要があるか計算することができる。ミルクセンサ装置は、搾乳装置の搾乳カップの中又は下などの、搾乳システムにおける任意の適切な位置に設けられてもよい。また、ミルクセンサ装置は、搾乳のミルクが搾乳中に貯蔵される搾乳装置のミルクジャーに設けられてもよい。搾乳装置のミルクジャーに設ける場合、ミルクセンサ装置は単一の測定のみ実行すればよく、しかしながら、その測定は、より単純且つ正確な方法で実行することができるという利点がある。ミルクセンサ装置の最初に述べられた位置は、搾乳作業中でさえ、ミルクをさらに分けることができるという利点を提供する。たとえば、搾乳の最初のミルクは最後のミルクよりも脂肪分が非常に低いことが知られている。ミルクのこの最初及び二番目の/最後の部分的な量が分けられる場合、たとえば、脱脂又は半脱脂ミルクを作るために最初の量を処理し、全脂肪乳を作るために二番目の量を処理することが可能である。このように、エネルギー消費及びミルクの品質に関して有利であってもよい、より適度な又はより少ないスキミング作業が必要である。しかしながら、搾乳カップの中又は搾乳カップの後でインライン測定するミルクセンサ装置を備える実施形態では、測定された組成値は、搾乳の合計値又は部分的な量に到達するために、関連する量値で重み付けしなければならない。
【0008】
本発明のさらに大きな利点は、ミルクを搾乳ごと又はその部分的な量ごとに標準化できることである。これは、1頭又は複数頭の酪農動物の搾乳されたミルクが他の酪農動物のミルクと異なる場合に利点を提供することができる。たとえば、ミルクは、酪農動物が生成するベータカゼインタンパク質の種類に応じて、A1ミルクとA2ミルクとに分けられる。次に、これらの、及び遺伝学的に異なる又は改良された酪農動物からの特別なミルクなどの他の異なる種類のミルクは、同じ1つの標準化装置によって、処理単位ごとに、すなわち、搾乳ごとに処理して、異なる消費者製品を製造することができる。次に、必要に応じて、これらの標準化された製品は、冷却の有無にかかわらず貯蔵することができる。従来の搾乳装置では、ミルクは、別個の標準化製品を作るように処理して、貯蔵することができず、個々のミルク特性は製品に反映されない。
【0009】
ここで、「標準化」という用語は、ミルクの特定の物質の含有量が、含有量が検査された後に必要に応じて規格値にされることを意味すると理解されることに留意すべきである。たとえば、半脱脂ミルクの脂肪分含有量は、1.5~1.8%、多くの場合1.5%とされる。これを実現するためによく使用される方法は、ミルクを完全にスキミングして、次に、望ましい重量比までクリームを加えることである。この方法は、特にエネルギー消費に関して、あまり効率的ではなく、ミルクの集中的な処理のために、品質が低下する可能性もあることは明らかであろう。
【0010】
実施形態において、標準化装置は、受け取った搾乳を調整可能である第1の部分と第2の部分とに分割するための分割装置と、搾乳の前記第1の部分を受け取り、第1の部分から脂肪及び/又はタンパク質を除去し、そのように加工乳として処理された第1の部分のミルクを供給するための除去装置と、標準化されたミルクを作るために加工乳と搾乳の第2の部分とを混ぜ合わせるための混合装置とを備え、標準化装置は、前記搾乳について受け取った情報に基づいて、分割装置による第1の部分と第2の部分との比率を設定する。本発明によるこの実施形態の大きな利点は、搾乳装置からの情報に基づいて、ミルクの(少量の)知られている部分のみスキミングする必要があり、一方、それぞれの搾乳の又は別の方法の、残りのミルクは元のまま残すことができることである。明らかに、この方法及び装置は、すべてのミルクがスキミングされて、その後、要望通りに(再)混合される方法及び装置よりもエネルギー的に有利である。搾乳装置からのデータに基づく標準化装置の制御は、非常に効率的な方法でこれを可能にし、同時に、各搾乳を個別に処理及び貯蔵する可能性を維持することが再び強調される。これによって、できるだけ低い能力で除去装置を使用することが可能であることも明確になるであろう。さらに、特にバッチ式処理では、製品流れがあまり小さくならないことが重要である。本発明は、大きな酪農工場で知られているような、その後に、制御された方法で、しかし、非常に少ない量で成分を再び加えるために、最初にすべてのミルクから成分を完全に除去することによってではなく、ミルクの一部からのみ前記成分のみ除去することによって、これを提供する。処理されるミルクの量は常に、再び任意選択的に加えられる成分の量よりかなり多く、その結果、再び成分を加えることは、簡単な方法でより正確に実行することができる。
【0011】
実施形態において、除去装置は、第1の部分をスキミングするための遠心分離機を備える。遠心分離機は、ミルクをスキミングするために一般に使用される装置であるが、ミルク又は乳清からミルクタンパク質を分離するために、他の除去装置、たとえば、濾過、クロマトグラフィ、及び/又はイオン交換のための装置を使用することも可能である。この場合、ミルクの限定された部分のみ処理する必要があることは、エネルギー消費に関してさらに有利であることがあり、たとえば、比較的低い能力の装置を選択することが可能である。
【0012】
実施形態において、搾乳装置は、酪農動物が自発的に訪れることができる1つ又は複数のロボット搾乳装置を備える。実施形態において、搾乳システムはいくつかの自動搾乳装置を備え、そのそれぞれがミルク処理装置に接続されており、制御ユニットは、各搾乳を、関連する情報とともに、ミルク処理装置に個別に送るよう構成されている。
【0013】
これらの実施形態において、酪農動物は、自分の搾乳のタイミングを自分自身で選択し、そのことがストレスレベルの低下に寄与することがある。さらにまた、各搾乳を個別に処理することが可能である。これは、搾乳装置が単一である場合は明らかであるが、搾乳装置がいくつかある場合にも、たとえば、関連するミルクジャーでのそれぞれの場合において搾乳装置ごとに収集された各搾乳を、ミルクパイプに個別に圧送することによって実現できる。この場合、ミルクの混合は、仮にあったとしても、ほとんどない。さらに、その目的のために設けられた流量計によって、どの搾乳がミルクパイプのどの部分に位置するか追跡することがすぐに可能である。よって、搾乳を個別に処理及び貯蔵することも可能である。そして、ミルクを搾乳ごとに処理できるので、これは原則として、搾乳システムの残りの部分に対する要件に関して問題とならない。特に、ミルク処理装置の能力、少なくとも現在の能力は、制御ユニットによって、ミルク及びその組成の現在得られた量に対して調整できるので、問題とならない。それにもかかわらず、乳牛の強制的な往来も可能であり、その場合、酪農動物は、回転式コンベヤ、たとえば、GEA DairyProQのDeLaval AMRなどの搾乳装置に集団で送り込まれる。このように乳牛に強制的に往来させる場合、酪農動物は多くの場合、日に2回、連続的に搾乳される。結果的に、ミルク処理装置の必要な能力は、多くの場合、自由に乳牛を往来させる場合よりもいくぶん大きくする必要があるであろう。つまり、得られたミルクの圧送をさらに「広げる」余地は、そうしようとしてもほとんどなく、それは、多量生産と短い搾乳時間とを組み合わせた、酪農動物の高速搾乳で特に顕著である。それにもかかわらず、本発明のさらなる利点を実現することがさらに可能である。
【0014】
実施形態において、各搾乳装置は、搾乳を収集するための第1のミルクジャーと、ミルクジャーから搾乳を圧送するための第1のミルクポンプとを備え、各ミルクジャーは、ミルク処理装置の方へ向かうミルクパイプに接続されており、さらにまた、第2のミルクジャーは、各第1のミルクポンプと、第1のミルクポンプ、並びに第2のミルクジャーからミルク処理装置まで搾乳を圧送するための第2のミルクポンプによって圧送される搾乳を収集するためのミルク処理装置との間に設けられている。これらの実施形態は、搾乳システムの能力をほとんど又は全く失うことなく、非常に制御された方法且つ低流量で、搾乳のミルクをミルク処理装置に圧送する可能性を提供する。この場合、搾乳は、最初に、第1のミルクジャーから第2のミルクジャーまで第1のミルクポンプによって圧送される。これは速く、特に、少なくとも従来の搾乳装置と同程度に速く実行されてもよい。その後、搾乳装置はすぐに、後続の搾乳で利用可能とすることができ、そのため、全体としての搾乳能力は、少なくとも等しいままである。次いで、第2のミルクポンプは、非常に低速度/低流量で、搾乳をミルク処理装置に圧送することができる。原則として、第2のミルクポンプは、圧送に非常に長い時間がかかる、すなわち、最大で、関連する搾乳装置の次の搾乳の終了までかかることがある。制御ユニットは、それに応じて、第2のミルクポンプを制御することができる。この非常に低い流量のために、ミルク処理装置の能力又は現在の能力は、それに応じて、より低くなるように選択されてもよい。さらに、より低い流量はまた、複数の搾乳の互いに対する分離、及び、搾乳内のミルクと空気との分離の両方の分離に対する改善につなげることができ、前処理も同様に改善することができる。これらの利点は、単一の搾乳装置を備える搾乳システムによって、最適の方法で実現することができる。しかし、搾乳システムが、対応する数の第1及び第2のミルクジャーを有するいくつかの搾乳装置を備える場合も、利点は得ることができる。これは、たとえば、並行するミルクパイプを使用することによって可能であり、その結果、各搾乳装置は、ミルクをミルク処理装置に独立して流すことができる。しかしながら、2つ以上又はすべての第2のミルクジャーでさえ、全く同一のミルクパイプに接続することも可能である。次に、制御ユニットは、第2のミルクポンプのそれぞれがその関連する搾乳をミルクパイプに個別に圧送することができるように、それぞれの第2のミルクポンプを連続的にオンにするように構成、プログラムされてもよい。これによって、搾乳ごとに、量及び組成に応じて、個別に処理できることは保証されたままである。さらに、搾乳システムのすべての搾乳に対する合計圧送時間は、ほとんどの場合、対応する知られている搾乳システムによる場合よりも長いことはまだ当てはまるが、それは、圧送を、搾乳と独立して行うことができ、そのため、準備時間及び任意選択的に搾乳間の時間を含む合計搾乳時間にわたって広げることができるためである。
【0015】
ここで、本発明は、図面の非限定的な例示的実施形態によって、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による搾乳システムの図式的な表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、全体として参照番号1で示され、乳首101及びIDタグ102を有する酪農動物100からの搾乳に役立つ搾乳システムを示す。搾乳システム1は、搾乳カップ3(1つのみ示されている)を有する自動ロボット搾乳システム2と、ロボットアーム4と、データベース6を有する制御ユニット5とを備える。
【0018】
さらに、搾乳システム1は、センサ7と、第1のミルクジャー8と、第1のミルクポンプ9と、第2のミルクジャー10と、第2のミルクポンプ11と、ミルクパイプ12と、並びに、全体として示されたミルク処理装置20と、2つのミルクタンク13-1及び13-2と、クリームタンク14と、動物識別装置30とを備える。
【0019】
ミルク処理装置20は、標準化装置として機能し、制御可能な第1の三方弁21の形態の分割装置と、第1の分岐ライン22と、クリーム放出部24を有するスキマー23と、第2の分岐ライン25と、混合装置26と、制御可能な第2の三方弁27と、それぞれの乳製品放出部28-1及び28-2とを備える。
【0020】
最後に、搾乳システムは、任意選択の第2の搾乳装置2’も備え、そのうち、第2のミルクポンプ11’のみ示されている。
【0021】
ここで示された搾乳システム1は、2つのロボット搾乳装置2及び2’を備える。しかしながら、1つ、又は3つ、4つなどの任意の他の数も可能である。通常通り、ロボット搾乳装置2、2’は、酪農動物100、多くの場合、乳牛の乳首101に搾乳カップ3を接続するためのロボットアーム4を備える。以下では乳牛についてのみ論じられるが、ヤギなども可能である。搾乳装置には原則として、酪農動物100が自発的に訪れるが、いわゆる強制的な往来も、原則として可能であり、その場合、酪農動物は集団で搾乳装置の方へ送り込まれる。酪農動物が自由に行き来する場合、乳量は1日の間に変化することは明らかであろう。
【0022】
酪農動物100の搾乳からのミルクが搾乳を構成し、そのミルクは、知られている方法で自動搾乳装置2においてミルクジャー、ここでは第1のミルクジャー8に収集され、次いで、搾乳システムにおけるさらなる処理のために、ミルクポンプ、ここでは第1のミルクポンプ9によって圧送される。第2のミルクジャー10及び第2のミルクポンプ11の機能は、どちらも任意選択であるが、以下でさらに詳細に説明される。本発明による搾乳システム1において、次に、搾乳のミルクは、ミルクパイプ12を介して、ここで搾乳のための標準化装置として具現化されたミルク処理装置20に送られる。
【0023】
ここで、ミルク処理装置/標準化装置20は、搾乳のミルクの脂肪分含有量を標準化するように機能する。ミルクは、ミルクパイプ12を介して標準化装置20に入る。入ったミルクの第1の部分は、制御ユニット5によって制御可能な三方弁21を介して、且つ、第1の分岐ライン22を介してスキマー23に流され、脂肪、すなわちクリームがミルクから分離され、現時点で略脂肪分のない脱脂乳が放出される。ミルクの他の第2の部分は、略変化なく、第2の分岐ライン25を通過する。混合装置26では、脱脂乳及び無調整乳の両方の流れが、望ましい乳製品を構成するために混合される。この場合、望ましい乳製品は好ましくは、固定された脂肪分含有量を有する。たとえば、半脱脂乳は1.5~1.8%の脂肪分含有量を有し、脱脂乳は最大0.5%の脂肪分を有し、全脂肪乳の脂肪分含有量は3.5%まで標準化される。乳牛から搾乳されたとき、ミルクは通常、わずかに高い脂肪率を有し、約4.5%であり、それは個体によっても異なる。さらにまた、このパーセンテージは、授乳中、そして、飼料、季節、及び牛が搾乳される程度に応じて、変わることがある。それは、搾乳における最後のミルクは、最初のミルクより脂肪が多いためである。
【0024】
これらはすべて、たとえば、コンピュータシステムとして構成された制御ユニット5の制御下で行われる。これは、単一の専用コンピュータでもよいが、互いに作動可能に連結されたいくつかのサブシステムを備えるシステムでもよい。よって、制御ユニット5は、たとえば、拍動装置及びミルク真空ポンプなどのここではさらに詳細には示されていない構成要素を備える少なくとも1つの搾乳装置、さらに、たとえば、第1のミルクポンプ9及び第2のミルクポンプ11、並びに、標準化装置20及び/又はその構成要素を制御する(単一の制御接続によって概略的に示されている)。搾乳システム1を制御するために、制御ユニット5は、それに作動可能に接続されたデータベース6及び/又はセンサ7をさらに使用してもよい。これらはすべて以下でさらに詳細に説明される。
【0025】
本発明によると、制御ユニット5は、標準化装置20を異なる方法で制御することができる。最初に、制御ユニット5は、図で概略的に示されるように、データベース6に格納された動物特有のミルク情報を使用することができる。このデータベースは、たとえば、試料採取によって収集された、又は、ミルク工場若しくは別の方法で得られた、乳牛からのミルクのミルクデータを含む。脂肪分含有量は本当にわずかに変化するが、この変化は比較的ゆっくりと発生し、さらに、半脱脂乳では、たとえば、脂肪分含有量に関する若干の余裕が許容可能である。したがって、制御ユニット5は、これらのデータに基づいて十分な正確さで装置20を制御することができる。
【0026】
或いは、又は、それに加えて、さらなる正確さのために、センサ7は、本実施形態において、脂肪分含有量を測定するために設けられる。そのようなセンサは、それ自体は知られており、たとえば、搾乳カップ3から第1のミルクジャー8までのパイプ内のミルクによって反射及び/又は吸収/透過する光に基づいて作動する。脂肪分含有量に応じて、注目すべきシフトがスペクトルで生じる。センサ7は、脂肪分に関するデータをインラインで収集する。センサ7に接続された制御ユニット5は、脂肪データを収集し、それらをミルク容積メータ(通常通り設けられているが、示されていない)からのミルク流量データと組み合わせて、経時脂肪分含有量をもたらすことができる。ミルク流量で重み付けされた脂肪分の値を「積算」、すなわち加算することによって、制御ユニット5は、脂肪の総量、又は搾乳全体での脂肪分含有量を決定することができる。このようにして、その結果、飼料の変化、授乳日数などを自動的に考慮した現在の脂肪分が提供される。
【0027】
ちなみに、たとえば、搾乳カップ3に代替的なセンサ7を設けることも可能である。或いは、センサは、インライン測定を行う必要がない第1のミルクジャー8に配置される。ここで、センサは、一度の測定で搾乳の脂肪分を決定することができる。別の代替形態として、前記のセンサ又は別のセンサを、第2のミルクジャー又はミルクパイプなど、第1のミルクジャー8と標準化装置20との間のどこかに配置してもよい。示されたセンサ7を有する実施形態が以下でさらに詳細に説明される。
【0028】
搾乳システム1が使用中のとき、乳牛100は搾乳装置2に自分で現れ、タグ読取装置などの動物識別装置30がIDタグ102を読み出す。もちろん、他の識別手段及び方法も可能であるが、それは、動物の識別情報を判定できる場合に限られる。その後、制御ユニット5は、データベース6からこの乳牛に関連するデータを検索することができる。これらのデータから、制御ユニットは、たとえば、識別された乳牛のミルクは(平均)4.3%の脂肪を含有することを知る。次いで、たとえば、ミルク容積メータ(図示せず)で15リットルの搾乳が測定された場合に、搾乳のミルクを1.5%までスキミングするために、制御ユニットは以下のステップを実行する。15リットルの1.5%の脂肪は、その次に第2の分岐ライン25を介して未処理のミルクとして通過することができる15×(1.5/4.3)=5.2リットルのミルクによって与えられてもよい。次に、残りの9.8リットルは、脱脂乳を製造するためにスキミングすることができる。したがって、制御ユニット5は、それに応じて三方弁21を切り替えることによって、搾乳からのスキマー23に第1の分岐ライン22を介して9.8リットルのミルクを送る。9.8リットルのそれぞれの量は、示されてはいないが、たとえば、ミルクパイプ12に設けられた流量計によって測定できる。この場合、制御ユニットは、搾乳の開始時、搾乳の終了時、若しくは、その間のどこかの時点で、9.8リットルを分離することを選んでもよく、又は、一部を通過させる、一部をスキミングする、一部を通過させるなどを交互に切り替えることさえできる。
【0029】
スキマー23は、乳加工の分野でそれ自体知られているように、たとえば、遠心分離機である。スキマー23によって分離されたクリームは、貯蔵、冷却、及び/又は包装するために、クリームタンク14に放出されてもよい。これは、さらに詳細には説明しない。
【0030】
両方のミルクの流れは、混合装置26に集合し、そこで混合されて乳製品「半脱脂乳」を構成し、次いで、たとえば、第1の乳製品ライン28-1を介して、半脱脂乳を含む第1の乳製品タンク13-1に貯蔵される。混合装置26は、たとえば、部分流れが流れる2本の(又は、任意選択的に、それより多くの)パイプの合流をはるかに上回るものである必要はない。この場合、装置26には、部分流れの望ましくない混合を防ぐために、逆止弁又は同様のものが設けられてもよい。さらにまた、部分流れのための1つ又は複数のポンプ、及び/又は、効率的且つ/若しくは望ましい比率での部分流れの計量を支援できる他の計量装置が、混合装置に設けられてもよい。しかしながら、これらは、ここで本発明の範囲の一部を形成せず、低温殺菌、均質化、冷却、及び搾乳システムに任意選択的に設けられてもよい他の装置などの装置もそうである。
【0031】
同様に、制御ユニット5は、15×(3.5/4.3)=12.2リットルを処理せずに通過させ、そして、残りの2.8リットルをスキミングして、次に、これを未処理のミルクと混合することによって、3.5%の脂肪を含有する「全脂肪乳」も製造する可能性がある。次いで、制御ユニットは、第2の乳製品タンク13-2「全脂肪乳」の方へ、第2の三方弁27を第2の乳製品ライン28-2に切り替える。特定の製品に対する現在の要求に応じて、制御ユニット5は、実質的に即座に、それぞれの乳製品を製造することができる。この搾乳システムは、不必要なクリームのスキミング、及び、その後の特定の比率でのクリームの再追加をしないことで、エネルギーを節約することができることは明らかであろう。また、(非常に)少量のクリームの再追加よりも、大量のものからのクリームの除去の方が、より容易で、より正確である。それを示すものは以下のとおりである。15リットルを完全にスキミングした場合、半脱脂乳を製造するためには、わずか225mlのクリームを加えられなければならない。特に、実際にはさらに50%少ないこともある1回の搾乳からクリームのみ処理するときは、非常に不正確な方法が行われる。対照的に、(上述の例において)約3~12リットルのミルクをスキミングすることは、容易且つ十分な正確さで実現することができる。さらにまた、それはまさに、得られたデータ又は別の方法で利用可能なデータに基づいて、搾乳ごとにミルクを処理することであり、それは、本発明の強みであり、加えて、本発明に都合のいいように正確に行うことができる。
【0032】
明らかに、この目的のために別個のタンクを設けることによって他の製品を分離することも可能である。よって、個別に、たとえば、遺伝的に異なる動物から、必要に応じて、脱脂乳、半脱脂乳、及び/又は全脂肪乳としても特別なミルクを収集することが可能である。
【0033】
さらにまた、脂肪に代わるものとして、又は、脂肪に加えて、タンパク質又はラクトース含有量などの他の含有量を標準化することが可能である。このために、乳脂肪のためのものと同様の方法で、分配弁、分離機、及び混合装置が設けられてもよい。
【0034】
ロボット搾乳装置2、2’の詳細は、それ自体、十分によく知られており、必要以上により詳細にはここで論じない。よって、真空ポンプ及び乳首検出システムなどの標準的な構成要素は、図示されていない。示された搾乳システム1で、能力に関して、さらに、いくつかの搾乳装置2、2’が存在する場合に有利である任意選択の処置がとられたことに注目すべきである。特に、搾乳のミルクは、それ自体、恒例により、第1のミルクジャー8への搾乳として収集される。そこから、第1のミルクポンプ9は、搾乳システムのさらに下流に、最終的にミルク貯蔵タンクの方向に搾乳を圧送する。搾乳装置2ができるだけ早く後続の搾乳を利用可能とするために、第1のミルクポンプ9の流速は高いが、それは、大きな(ピーク)能力を結果的に有しなければならない後続のミルク処理装置20にはあまり好ましくない。この問題を解決するために、第1のミルクジャー8から搾乳を収集する第2のミルクジャー10が設けられ、その後、第2のミルクポンプ11は、収集した搾乳を非常に低流量でミルクパイプ12に圧送することができる。このような配置は、休止時間が短いことによる搾乳装置2の高い能力を提供するために有利であり、さらに、ミルクの供給をさらに安定させることができるという事実により、ミルク処理装置20にとっても有利である。つまり、第2のミルクポンプは、搾乳のすべての期間、前の搾乳を圧送することができる。さらに、ミルクが比較的低速度でミルクパイプの通路の比較的大きい部分を進むことができる場合、それはより好ましい。それにもかかわらず、ここで、エネルギー及び正確さに関する本発明の利点は搾乳ごとの有利な処理であることに留意すべきである。
【0035】
本実施形態での事例のように、いくつかの搾乳装置2、2’が設けられる場合、搾乳は好ましくは別個のままでなければならない。このために、制御ユニット5は、互いに対して調整された方法で、関連するミルクポンプを制御することができる。たとえば、2つの搾乳装置と2つの第2のミルクポンプ11’を備える本事例において、制御ユニット5は、最初に、第2のミルクポンプ11又は11’によってミルクパイプ12に全搾乳を圧送する。一方、搾乳が2つの搾乳装置のうちの他方で完了し、搾乳が第2のミルクジャーにすでに圧送された場合、前の搾乳がミルク処理装置20で処理されるまで、制御はそれぞれの第2のミルクポンプの作動前に待機する。ミルクパイプ12及び/又はミルク処理装置20ごとにいくつかの搾乳装置2、2’がある場合、第2のミルクポンプ11、11’の圧送速度は好ましくは調整され、本事例では、搾乳システムの能力に(過度の)悪影響を与えることなく待ち時間を短くするために増加されることは明らかであろう。ここで、第2のミルクジャー10及び関連する第2のミルクポンプ11、11’が任意選択であることはさらに強調される。第1のミルクジャー8にミルクを収集して、第1のミルクポンプ9でそれを圧送し、同時に、搾乳の分離及びミルクの有利な処理の本発明の利点を保持することは確かに可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 搾乳システム
2、2’ ロボット搾乳装置
3 搾乳カップ
4 ロボットアーム
5 制御ユニット
6 データベース
7 センサ
8 第1のミルクジャー
9 第1のミルクポンプ
10 第2のミルクジャー
11、11’ 第2のミルクポンプ
12 ミルクパイプ
13-1、13-2 乳製品タンク
14 クリームタンク
20 ミルク処理装置
21 分割装置、第1の三方弁
22 第1の分岐ライン
23 除去装置、スキマー
24 クリーム放出部
25 第2の分岐ライン
26 混合装置
27 第2の三方弁
28-1、28-2 乳製品放出部
30 動物識別装置
100 酪農動物
101 乳首
102 IDタグ