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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】風車の施工方法及び風車施工用架台
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/20 20160101AFI20220309BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20220309BHJP
   E04H 12/10 20060101ALI20220309BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F03D13/20
F03D1/06 A
E04H12/10 B
E04G21/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020178730
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】水上 魁
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308521(JP,A)
【文献】特許第6228774(JP,B2)
【文献】特開2009-242053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/20
F03D 1/06
E04H 12/10
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、
前記昇降架台に対して前記風車の正面を前方とする前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さのガーダと、
前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、
前記ガーダ上を移動して前記風車の部材を吊り上げた状態で搬送する搬送装置と、
を備える風車施工用架台を用いた前記風車の施工方法であって、
前記昇降架台を昇降させる際に前記ガーダが前記風車のブレードと接触しない接触回避位置に前記ガーダをスライドさせる接触回避工程と、
前記ガーダが前記接触回避位置にある際に前記昇降架台を昇降させる昇降工程と、
を含み、
前記ガーダをスライドさせる場合、及び、前記昇降架台を昇降させる場合の少なくとも何れかの場合には、平面視した場合の前記昇降架台の内側に前記搬送装置と前記昇降架台とが相互に固定された状態で行うことを特徴とする風車の施工方法。
【請求項2】
風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、
前記昇降架台に対して前記風車の正面を前方とする前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さのガーダと、
前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、
前記ガーダ上を移動して前記風車の部材を吊り上げた状態で搬送する搬送装置と、
を備える風車施工用架台を用いた前記風車の施工方法であって、
前記昇降架台を昇降させる際に前記ガーダが前記風車のブレードと接触しない接触回避位置に前記ガーダをスライドさせる接触回避工程と、
前記ガーダが前記接触回避位置にある際に前記昇降架台を昇降させる昇降工程と、
を含み、
前記ガーダをスライドさせる場合には、前記昇降架台と前記搬送装置を相互に固定し、前記昇降架台と前記ガーダの相互の固定、及び、前記搬送装置と前記ガーダの相互の固定を解除した状態で、前記ガーダをスライドさせることを特徴とする風車の施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の風車の施工方法であって、
前記風車を解体する場合には、
前記接触回避工程において、前記ガーダが前記ブレードと接触しない位置まで前記ガーダを後方にスライドさせ、
前記昇降工程において、前記昇降架台を上昇させることを特徴とする風車の施工方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、
前記風車を組み立てる場合には、
前記接触回避工程において、前記ガーダが前記ブレードと接触しない位置まで前記ガーダを後方にスライドさせ、
前記昇降工程において、前記昇降架台を下降させることを特徴とする風車の施工方法。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、
前記昇降工程において、前記昇降架台、前記ガーダ及び前記搬送装置をそれぞれ相互に固定した状態で前記昇降架台を昇降させることを特徴とする風車の施工方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、
少なくとも、平面視した場合の前記昇降架台の外側で前記搬送装置が前記部材を吊り上げ可能な位置まで前記ガーダを前方にスライドさせる搬送準備工程を含むことを特徴とする風車の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の風車の施工方法であって、
前記搬送装置が、平面視した場合の前記昇降架台の内側と外側を移動して前記風車の部材を搬送する搬送工程を含むことを特徴とする風車の施工方法。
【請求項8】
風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、
前記昇降架台に前記風車の前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さを持つガーダと、
前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、
前記風車の部材を吊り上げた状態で前記ガーダ上を移動して前記昇降架台の内外間で前記部材を搬送する搬送装置と、
前記ガーダをスライドさせる場合、及び、前記昇降架台を昇降させる場合の少なくとも何れかの場合に、平面視した場合の前記昇降架台の内側で前記搬送装置と前記昇降架台を相互に固定する第1固定手段と、
を備えることを特徴とする風車施工用架台。
【請求項9】
風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、
前記昇降架台に前記風車の前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さを持つガーダと、
前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、
前記風車の部材を吊り上げた状態で前記ガーダ上を移動して前記昇降架台の内外間で前記部材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置と前記昇降架台と相互に固定する第1固定手段と、
前記昇降架台と前記ガーダを相互に固定する第2固定手段と、
前記搬送装置と前記ガーダを相互に固定する第3固定手段と、
を備え、
前記スライド手段は、前記昇降架台と前記搬送装置が相互に固定され、前記昇降架台と前記ガーダの相互の固定、及び、前記搬送装置と前記ガーダの相互の固定が解除された状態で、前記ガーダをスライドさせることを特徴とする風車施工用架台。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の風車施工用架台であって、
ローラを有し、前記昇降架台に固定されるチルタンクを備え、
前記ガーダは水平に設けられた上フランジ及び下フランジを有し、
前記チルタンクは、前記ローラが前記下フランジの上面に接する位置に固定されることを特徴とする風車施工用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電等に用いられる風車の組み立て又は解体に係る施工方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風車の組立方法が開示されている。具体的には、特許文献1の図2、4、6、8に示されているように、ジャッキ用支柱の最上段の上部に2本のレールが、その先端がジャッキ用支柱の正面側から突出するように水平に設置され、更に、そのレール上にレールに沿って移動可能なジャッキ装置が設置されており、そして、ジャッキ装置が風車の部材(タワーを構成するマスト(タワー部材)、発電機(ナセル)、羽根(ブレード))を、下方の部材から順に吊り上げてジャッキ用支柱内に引き込み、組み立てていく。ジャッキ用支柱は複数段で構成されており、風車の組み立ての進捗に合わせて段を増やすことによりジャッキ用支柱の高さが調整される。
【0003】
特許文献1に開示された風車の組立方法によれば、大型クレーンを使用することなく、風力発電用の風車を構築することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法においては、ジャッキ用支柱の段を追加する場合に最上段のレール及びジャッキ装置を取り外して、これをジャッキ用支柱に沿って昇降可能な作業床に仮置きし、そしてジャッキ用支柱の段を追加した後に最上段となったジャッキ用支柱の上部に再度取り付けるため、ジャッキ用支柱の段を追加する度にレール及びジャッキ装置の取り外し及び取り付けという作業を高所で繰り返さなければならないという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、図1に示すような昇降式の風車施工用架台200が検討されている。風車の組み立て及び解体に使用可能な風車施工用架台200は2つの支持架台11、12と、支持架台11、12に支持されてこれらの間で昇降する昇降架台13を含む。支持架台11、12には昇降架台用ジャッキ14が複数設けられており、昇降架台用ジャッキ14が風車100の組み立て(又は解体)の進捗に合わせて昇降架台13を昇降させる。
【0006】
また、特許文献1と同様に、昇降架台13の上部には2本のガーダ15が、その先端が風車施工用架台200の正面側から突出するように水平に設置され、更に、そのガーダ15上を移動可能な搬送装置16が設置される。風車施工用架台200によれば、風車の組み立て(又は解体)の進捗に合わせて段を追加(又は削除)する必要が無いことから、昇降架台13を昇降させる度にガーダ15及び搬送装置16の取り外し・取り付けを行わずに済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6228774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、風車100の組み立てが完了した後に、風車施工用架台200を解体するために昇降架台13を下降させる場合、正面側に突出するガーダ15が風車100のブレードと接触してしまうという問題がある。また、風車施工用架台200を用いて風車100を解体する場合においては、昇降架台13を上昇させる場合にガーダ15が風車100のブレードと接触してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、こうした事情を鑑み、昇降可能な昇降架台と、昇降架台に設けられたガーダと、ガーダ上を移動する搬送装置とを有し、風車の組み立てや解体に用いられる風車施工用架台であって、昇降架台の昇降時にガーダが風車のブレードと接触することのない風車施工用架台、及び、当該風車施工用架台を用いた風車の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、前記昇降架台に対して前記風車の正面を前方とする前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さのガーダと、前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、前記ガーダ上を移動して前記風車の部材を吊り上げた状態で搬送する搬送装置と、を備える風車施工用架台を用いた前記風車の施工方法であって、前記昇降架台を昇降させる際に前記ガーダが前記風車のブレードと接触しない接触回避位置に前記ガーダをスライドさせる接触回避工程と、前記ガーダが前記接触回避位置にある際に前記昇降架台を昇降させる昇降工程と、を含み、前記ガーダをスライドさせる場合、及び、前記昇降架台を昇降させる場合の少なくとも何れかの場合には、平面視した場合の前記昇降架台の内側に前記搬送装置と前記昇降架台とが相互に固定された状態で行うことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、前記昇降架台に対して前記風車の正面を前方とする前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さのガーダと、前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、前記ガーダ上を移動して前記風車の部材を吊り上げた状態で搬送する搬送装置と、を備える風車施工用架台を用いた前記風車の施工方法であって、前記昇降架台を昇降させる際に前記ガーダが前記風車のブレードと接触しない接触回避位置に前記ガーダをスライドさせる接触回避工程と、前記ガーダが前記接触回避位置にある際に前記昇降架台を昇降させる昇降工程と、を含み、前記ガーダをスライドさせる場合には、前記昇降架台と前記搬送装置を相互に固定し、前記昇降架台と前記ガーダの相互の固定、及び、前記搬送装置と前記ガーダの相互の固定を解除した状態で、前記ガーダをスライドさせることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の風車の施工方法であって、前記風車を解体する場合には、前記接触回避工程において、前記ガーダが前記ブレードと接触しない位置まで前記ガーダを後方にスライドさせ、前記昇降工程において、前記昇降架台を上昇させることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、前記風車を組み立てる場合には、前記接触回避工程において、前記ガーダが前記ブレードと接触しない位置まで前記ガーダを後方にスライドさせ、前記昇降工程において、前記昇降架台を下降させることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、前記昇降工程において、前記昇降架台、前記ガーダ及び前記搬送装置をそれぞれ相互に固定した状態で前記昇降架台を昇降させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の風車の施工方法であって、少なくとも、平面視した場合の前記昇降架台の外側で前記搬送装置が前記部材を吊り上げ可能な位置まで前記ガーダを前方にスライドさせる搬送準備工程を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の風車の施工方法であって、前記搬送装置が、平面視した場合の前記昇降架台の内側と外側を移動して前記風車の部材を搬送する搬送工程を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、前記昇降架台に前記風車の前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さを持つガーダと、前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、前記風車の部材を吊り上げた状態で前記ガーダ上を移動して前記昇降架台の内外間で前記部材を搬送する搬送装置と、前記ガーダをスライドさせる場合、及び、前記昇降架台を昇降させる場合の少なくとも何れかの場合に、平面視した場合の前記昇降架台の内側で前記搬送装置と前記昇降架台を相互に固定する第1固定手段と、を備えることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、風車のタワーの左右を挟む位置で昇降する昇降架台と、前記昇降架台に前記風車の前後方向に沿って設けられ、前記昇降架台から前記前後方向に突出する長さを持つガーダと、前記ガーダを前記前後方向にスライドさせるスライド手段と、前記風車の部材を吊り上げた状態で前記ガーダ上を移動して前記昇降架台の内外間で前記部材を搬送する搬送装置と、前記搬送装置と前記昇降架台と相互に固定する第1固定手段と、前記昇降架台と前記ガーダを相互に固定する第2固定手段と、前記搬送装置と前記ガーダを相互に固定する第3固定手段と、を備え、前記スライド手段は、前記昇降架台と前記搬送装置が相互に固定され、前記昇降架台と前記ガーダの相互の固定、及び、前記搬送装置と前記ガーダの相互の固定が解除された状態で、前記ガーダをスライドさせることを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の風車施工用架台であって、ローラを有し、前記昇降架台に固定されるチルタンクを備え、前記ガーダは水平に設けられた上フランジ及び下フランジを有し、前記チルタンクは、前記ローラが前記下フランジの上面に接する位置に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、昇降架台を昇降させる際に風車のブレードと接触しない接触回避位置にガーダがスライドさせられることから、昇降架台の昇降時にガーダが風車のブレードと接触することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は、風車施工用架台200の正面図であり、(B)は、風車施工用架台200の側面図である。
図2】本実施形態に係る風車100の側面図である。
図3】(A)は、本実施形態に係る風車施工用架台1の正面図であり、(B)は、本実施形態に係る風車施工用架台1の側面図である。
図4】本実施形態に係る風車施工用架台1の平面図である。
図5】本実施形態に係る昇降架台13の上部側面図である。
図6】本実施形態に係る搬送装置16のA-A矢視図である。
図7】本実施形態に係る搬送装置16のB-B矢視図である。
図8】(A)は本実施形態に係る柱13aの上部側面図であり、(B)は本実施形態に係る柱13aの上部のC-C矢視図である。
図9】(A)本実施形態に係るガイド20内を示す正面図であり、(B)は本実施形態に係るガイド20を示す平面図であり、(C)は本実施形態に係るガイド20を示す側面図である。
図10】本実施形態に係る搬送装置固定用架構18を示す図である。
図11】本実施形態に係るガーダ15がスライド中の柱13aの上部側面図である。
図12】本実施形態に係るガーダ15が正面側に突出した状態における柱13aの上部側面図である。
図13】本実施形態に係る正面側に突出したガーダ15上を搬送装置16が移動中における柱13aの上部側面図である。
図14】(A)-(G)は、本実施形態に係る搬送装置16の搬送物吊り上げ時における動作例を示す遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態では、図2に示す風力発電用の風車100の組み立て/解体に用いられる風車施工用架台1について説明する。風車100は、タワー110と、ナセル120と、ブレード130とを含む。なお、タワー110は、例えば100m前後の塔状の構造物である。
【0025】
タワー110は、高さ方向に分割された3つのタワー部材111A、111B、111Cにより構成される(以下、3つのタワー部材を総称してタワー部材111という場合がある)。なお、タワー部材111Aが最上段のタワー部材であり、タワー部材111Bが上から2段目のタワー部材であり、タワー部材111Cが上から3段目(最下段)のタワー部材である。また、本実施形態では3分割したタワー110について説明するが、タワー110の分割数は他の数であってもよい。
【0026】
ナセル120は、軸受けや発電装置等を格納する。発電装置は、ブレード130の回転数を引き上げる増速機や、発電機(誘導発電機、同期発電機等)や、風車100の運転状況等を監視する監視装置を含む。ナセル120は、最上段のタワー部材111Aの上部に取り付けられる。また、ナセル120には、複数のブレード130が取り付けられる。
【0027】
図3(A)、図3(B)、図4に示すように、風車施工用架台1は、図1の風車施工用架台200と同様に、2つの支持架台11、12と、支持架台11、12に支持されてこれらの間で昇降する昇降架台13を含む。支持架台11、12には昇降架台用ジャッキ14が複数設けられており、昇降架台用ジャッキ14が風車100の組み立ての進捗に合わせて昇降架台13を昇降させる。
【0028】
次に、図5図10を参照して、昇降架台13の上部について説明する。
【0029】
図5等に示すように、昇降架台13の上部には、2本のガーダ15が風車施工用架台1の正面(風車100の正面に対応)を前方とする前後方向に沿って水平に設置されている。ガーダ15は、図5における2本の柱13aの間隔より長く、ガーダ15を前方にスライドさせて正面側に突出させた場合に、搬送装置16が平面視した場合の昇降架台13の内側と外側を移動して風車100の部材を搬送できる長さを有する。
【0030】
図10に示すように、ガーダ15は、下フランジ15a、上フランジ15b及びウェブ15cを有するH型鋼により構成され、下フランジ15aが上フランジ15bより幅広に形成されている。
【0031】
図5等に示すように、ガーダ15上には、ガーダ15上を移動可能な搬送装置16が設置されている。搬送装置16は、本体下部にトロリ36を有し、上フランジ15b上を走行する。また、搬送装置16は、風車100の部材(タワー部材111、ナセル120及びブレード130等)を吊り上げたり、部材を吊り上げた状態でガーダ15上を移動することにより、平面視した場合の昇降架台13の外側から内側(又は内側から外側)へ搬送したりする。すなわち、搬送装置16は、風車100を組み立てる場合には、風車100の部材を昇降架台13の正面の外側から内側に搬送し、昇降架台13の内側で組み立てる(但し、ブレード130については昇降架台13の外側で取り付けられる)。一方、風車100を解体する場合には、昇降架台13の内側で風車100を上方から順番に解体し、解体された風車100の部材を昇降架台13の内側から外側に搬送する(但し、ブレード130については昇降架台13の外側で取り外され、そのまま降下させられる)。
【0032】
昇降架台13の前後方向に並ぶ柱13a同士の間にはガーダ15に沿ってチルクライマー用梁23が設けられており、チルクライマー用梁23の上にはチルクライマー22が固定されている。チルクライマー22は、ガーダ15の前後端部の下部に設けられているストッパー21間に張られたワイヤー24を前後に牽引することにより、ガーダ15を前後にスライドさせる。なお、ワイヤー24の両端は、ストッパー21の下部に形成されたワイヤー孔21aにて固定されている。
【0033】
ガーダ15のウェブ15cの両面にはそれぞれ4つのカバープレート19が設けられている。また、柱13a上にはカバープレート19とピン接続されるガイド20が設けられている。ウェブ15cの両面において、カバープレート19とガイド20をピン接続することにより、ガーダ15と柱13a(昇降架台13)が相互に固定される。これにより、ガーダ15は、風車施工用架台1の後方(背面側)に突出した位置(ガーダ15が最も後ろにスライドした位置)と、風車施工用架台1の前方(正面側)に突出した位置(ガーダ15が最も前にスライドした位置)において昇降架台13と固定することができる。
【0034】
図8図9に示すように、昇降架台柱接続用プレート29は、ボルト接合により柱13a上に固定されており、その上面に2つのガイド20がガーダ15を挟んで対向して設けられている。また、昇降架台柱接続用プレート29の上面にはローラを有するチルタンク27Aが固定されており、チルタンク27Aの上部(頭部)にあるローラがガーダ15の下フランジ15aの下面と当接し、ガーダ15を滑らかにスライドさせる。また、ガイド20は正面側から見た場合においてL字型をしており、水平に折れ曲がった部分であるチルタンク取付部30にローラを有するチルタンク27B、27Cがチルタンク27Aと天地逆転して固定されている。チルタンク27B、27Cの下部(頭部)のローラが、ガーダ15の下フランジ15aの上面と当接することにより、チルタンク27B、27Cは、ガーダ15が昇降架台13から浮き上がらないように上方から押さえ付けるとともに、ガーダ15を滑らかにスライドさせる。
【0035】
なお、上述したように、ガーダ15と柱13a(昇降架台13)を相互に固定する場合には、カバープレート19に形成された挿通孔と、チルタンク取付部30に形成された挿通孔に接続ピン28を挿通させて固定する。
【0036】
ストッパー21は、ガーダ15の前後端部の下部に設けられており、ガーダ15が最も後ろにスライドした位置又は最も前にスライドした位置で柱13aの上部と当接し、それ以上ガーダ15が前方または後方にスライドすることを防止する。これにより、ガーダ15がガイド20から抜け出して柱13aから落下することを防止する。
【0037】
搬送装置16は、風車100の部材を吊り上げる4台のジャッキ17と、ジャッキ17を2本のガーダ15に掛け渡すジャッキ用梁35と、ガーダ15上を移動するためのトロリ36と、を含んで構成される。ジャッキ用梁35はジャッキ用梁脚部37を有し、ジャッキ用梁脚部37は、ガーダ15上でジャッキ用梁35を支持する。
【0038】
搬送装置固定用架構18は、チルクライマー用梁23に固定され、ガーダ15や搬送装置16と相互に接合されることによりこれらを昇降架台13に固定する。
【0039】
次に、図8図10を用いて、風車施工用架台1における各部位の固定方法について説明する。風車施工用架台1を用いて風車100を組み立てる(又は解体する)過程において、柱13a上をガーダ15がスライドし、また、ガーダ15上を搬送装置16が移動する。その際、以下で説明する5つの固定箇所を相互に固定することにより安全な施工を実現する。
【0040】
第1の固定箇所は、搬送装置16と搬送装置固定用架構18である。図10等に示すように、搬送装置16と搬送装置固定用架構18は、搬送装置接続用ピン33により固定される。第1の固定箇所を固定することにより、搬送装置16と昇降架台13が相互に固定される。
【0041】
第2の固定箇所は、ガーダ15と搬送装置固定用架構18である。図10等に示すように、ガーダ15と搬送装置固定用架構18は、目板25及びボルト・ナット26により固定される。第2の固定箇所を固定することにより、ガーダ15と昇降架台13とが固定される。
【0042】
第3の固定箇所は、チルクライマー用梁23と搬送装置固定用架構18である。図10等に示すように、チルクライマー用梁23と搬送装置固定用架構18は、目板34及びボルト・ナット26により固定される。第3の固定箇所を固定することにより、昇降架台13と搬送装置固定用架構18とが固定される。
【0043】
第4の固定箇所は、搬送装置16のジャッキ用梁脚部37とガーダ15の上フランジ15bである。図10等に示すように、ジャッキ用梁脚部37の底面は本体部分よりも幅広になっており、この底面と上フランジ15bをブルマン32により挟み込んで固定する。第4の固定箇所を固定することにより、ガーダ15と搬送装置16とが固定される。
【0044】
第5の固定箇所は、昇降架台13の柱13a上に設置されたガイド20とガーダ15のカバープレート19である。図8等に示すように、ガイド20とカバープレート19を接続ピン28により固定する。第5の固定箇所を固定することにより、ガーダ15と昇降架台13とが固定される。
【0045】
次に、風車施工用架台1を用いた風車100の解体施工方法の流れについて、ガーダ15及び搬送装置16の動きを中心に説明する。
【0046】
[手順1]
まず、支持架台11、12と昇降架台13を組み立てる。このとき、昇降架台13は、支持架台11、12の間であって、風車100のタワー110の左右を挟む位置に組み立てる。また、昇降架台13の柱13a上にガーダ15を前後方向に沿って設置し、更にガーダ15上に搬送装置16を設置する。
【0047】
[手順2(「接触回避工程」の一例)]
次に、図5に示すように、ガーダ15を最も後ろ(背面側)にスライドした位置(「接触回避位置」の一例)とし、また、搬送装置16をガーダ15上の最も前(正面側)の位置とする。また、第1の固定箇所~第5の固定箇所の全てを固定する。なお、ガーダ15を最も後ろにスライドさせるのは、昇降架台13を上昇させた際に、ガーダ15が風車100のブレード130と接触しないようにするためである。そのため、ガーダ15を最も後ろにスライドさせなくとも、ガーダ15とブレード130が接触しない位置(「接触回避位置」の一例)までガーダ15をスライドさせるだけでもよい(但し、カバープレート19の位置を予め変更しておくこととする)。また、[手順2]においてガーダ15をスライドさせるのではなく、[手順1]においてガーダ15を設置する際に、接触回避位置に設置することとし、ガーダ15をスライドさせる[手順2]を省いてもよい。
【0048】
[手順3(「昇降工程」の一例)]
次に、支持架台11、12の上部に設けた昇降架台用ジャッキ14を用いて昇降架台13を上昇させる。
【0049】
[手順4]
次に、ガーダ15を前方にスライドさせる準備として、第2の固定箇所、第4の固定箇所及び第5の固定箇所の固定を解除する(第1の固定箇所及び第3の固定箇所は固定したまま)。これにより、ガーダ15と昇降架台13の相互の固定、及び、ガーダ15と搬送装置16の相互の固定がそれぞれ解除される。なお、昇降架台13と搬送装置16は相互に固定されたままである。これにより、ガーダ15はスライド可能となる。
【0050】
[手順5(「搬送準備工程」の一例)]
次に、図11に示すように、チルクライマー22によりワイヤー24を前方方向に引っ張ることにより、ガーダ15を前方にスライドさせ、最も前にスライドした位置で停止させる(図12参照)。なお、ガーダ15が最も前にスライドした位置は、ガーダ15上を移動した搬送装置16が平面視した場合の昇降架台13の外側で風車100の部材を吊り上げ可能な位置である。
【0051】
[手順6]
次に、第2の固定位置及び第5の固定位置を固定する。これにより、ガーダ15と昇降架台13が相互に固定される。また、第1の固定位置の固定を解除する。これにより、搬送装置16と昇降架台13との固定が解除され、搬送装置16が昇降架台13に固定されたガーダ15上を移動可能となる。
【0052】
[手順7(「搬送工程」の一例)]
次に、搬送装置16は、昇降架台13の内側で解体された風車100の部材を吊り上げ、昇降架台13の正面側の外側(ガーダ15の前方側)にガーダ15上を移動し(図13参照)、地上に吊り下ろす。
【0053】
[手順8]
搬送装置16はガーダ15上を繰り返し往復して、昇降架台13の内側にある風車100の部材を全て搬出し、地上に下ろしたら、図12に示した位置(平面視した場合の昇降架台13の内側の位置である昇降架台13の上)に戻る。
【0054】
[手順9]
次に、第1の固定位置を固定する。これにより、搬送装置16と昇降架台13が固定される。また、第2の固定位置及び第5の固定位置の固定を解除する。これにより、ガーダ15と昇降架台13との固定が解除され、ガーダ15がスライド可能となる。
【0055】
[手順10]
次に、チルクライマー22よりワイヤー24を後方方向に引っ張ることにより、ガーダ15を後方にスライドさせ(図11参照(但し図中の矢印の向きは逆向きになる))、最も後ろにスライドした位置で停止させる(図5参照)。
【0056】
[手順11]
次に、第2の固定位置、第4の固定位置及び第5の固定位置を固定する。これにより、搬送装置16とガーダ15と昇降架台13が固定され、第1の固定箇所~第5の固定箇所の全てが固定されたことになる。
【0057】
[手順12]
次に、支持架台11、12の上部に設けた昇降架台用ジャッキ14を用いて昇降架台13を下降させる。
【0058】
[手順13]
次に、支持架台11、12及び昇降架台13を解体する。
【0059】
なお、風車100の解体後は、ガーダ15を前方に突出した状態のまま昇降架台13を下降させてもガーダ15とブレード130が接触することはないので、[手順9]~[手順11]を省略してもよい。
【0060】
また、ガーダ15をスライドさせる場合、平面視した場合の昇降架台13の内側において搬送装置16が昇降架台13と相互に固定された状態で行うこととする。例えば、ガーダ15を前方にスライドさせるとガーダ15の重心も前方に移動し、平面視した場合の昇降架台13の外側にはみ出てガーダ15の後方が浮き上がる恐れがあるが、平面視した場合の昇降架台13の内側に搬送装置16を固定することによりこれを防止することができる。
【0061】
同様に、昇降架台13を昇降させる場合には、平面視した場合の昇降架台13の内側において搬送装置16が昇降架台13と相互に固定された状態で行うことが好ましい。これにより、搬送装置16の荷重が平面視した場合の昇降架台13の外側に掛かることなく、昇降架台13を安定して昇降させることができる。なお、平面視した場合の昇降架台13の内側において搬送装置16と昇降架台13を固定することは、ガーダ15をスライドさせる場合、及び、昇降架台13を昇降させる場合の少なくとも何れか一方の場合に行うこととしてもよい。
【0062】
以上、風車施工用架台1を用いた風車100の解体施工方法の流れについて説明したが、風車施工用架台1を用いた風車100の組立施工方法の流れもほぼ同様である。但し、風車100の組み立て時には、[手順2]について、昇降架台13の上昇時にガーダ15が風車100のブレード130と接触することはないので、昇降架台13、ガーダ15及び搬送装置16が相互に固定されていればガーダを接触回避位置にスライドさせなくてもよい。一方、風車100の組み立てが済み、昇降架台13を下降させる際には、ガーダ15が風車100のブレード130と接触するので、[手順10]で示したように、ガーダ15を接触回避位置まで後方にスライドさせてから(「接触回避工程」の一例)、昇降架台13を下降させる(「昇降工程」の一例)。なお、ガーダ15を最も後ろにスライドさせるのは、昇降架台13を下降させた際に、ガーダ15が風車100のブレード130と接触しないようにするためである。そのため、ガーダ15を最も後ろ(「接触回避位置」の一例)にスライドさせなくとも、ガーダ15とブレード130が接触しない位置(「接触回避位置」の一例)までガーダ15をスライドさせるだけでもよい(但し、カバープレート19の位置を予め変更しておくこととする)。
【0063】
すなわち、風車100の解体時において昇降架台13を上昇させる場合には事前に接触回避位置にガーダ15をスライドさせておくことにより、ガーダ15とブレード130の接触を回避することができる。同様に、風車100の組み立て時における組み立て完了後に風車施工用架台1を撤去するために昇降架台13を下降させる場合には事前に接触回避位置にガーダ15をスライドさせておくことにより、ガーダ15とブレード130の接触を回避することができる。
【0064】
次に、風車施工用架台1を用いた風車100の組み立て手順について説明する。なお、風車100は、タワー部材111、ナセル120、ブレード130に分解された状態で設置現場まで輸送され、各部材が順次、平面視した場合の昇降架台13の内側に搬送装置16により搬送され、組み立てられる。また、搬送装置16がガーダ15上を移動する際には、図13に示したようにガーダ15が正面側に突出した状態となっている。
【0065】
まず、最下段のタワー部材111Cを昇降架台13の内側に搬送装置16により搬送し設置する。次に、中段のタワー部材111Bを昇降架台13の内側に搬送装置16により搬送しタワー部材111Cの上に接続する。次に、最上段のタワー部材111Aを昇降架台13の内側に搬送装置16により搬送しタワー部材111Bの上に接続する。次に、ナセル120を昇降架台13の内側に搬送しタワー部材111Aの上部に取り付ける。このとき、ナセル120の先端は、平面視した場合の昇降架台13の正面側に突出する(図4参照)。次に、ブレード130を搬送装置16により吊り上げてナセル120の先端に取り付ける。以上の手順により風車100を組み立てる。なお、風車施工用架台1を用いた風車100の解体については、組み立て手順の逆の手順で行う。
【0066】
次に、図14を用いて搬送装置16におけるジャッキ17の構成と動作の概略を説明する。ジャッキ17は、ストランド210を把持する第1グリップ17A及び第2グリップ17Bと、第1グリップ17Aを上方へと押し上げる油圧ジャッキ17Cを有する。油圧ジャッキ17Cはシリンダ17Dとピストン17Eを有する。ジャッキ17は、図示しない制御装置により制御される。
【0067】
制御装置は、第1グリップ17A及び第2グリップ17Bについて、ストランド210の把持状態に関して、把持する状態(「閉状態」という)と、把持しない状態(「開状態」という)の何れかの状態に制御する。
【0068】
次にジャッキ17がストランド210を上方に引っ張る際の手順について説明する。まず、図14(A)に示すように、初期状態では、第1グリップ17A及び第2グリップ17Bが閉状態に制御されている。このとき、ストランド210の荷重は第2グリップ17Bに掛かっている。
【0069】
次いで、制御装置は、図14(B)に示すように、第2グリップ17Bを開状態とする。これにより、ストランド210の荷重は第1グリップ17Aに掛かる。
【0070】
次いで、制御装置は、図14(C)に示すように、油圧ジャッキ17Cをジャッキアップする(シリンダ17Dからピストン17Eを伸長させる)。これにより、シリンダ17Dからピストン17Eが伸長した分だけストランド210が上方に引き上げられる。
【0071】
次いで、制御装置は、油圧ジャッキ17Cをジャッキダウンするために、図14(D)に示すように、第2グリップ17Bを閉状態とし、次いで、図14(E)に示すように、第1グリップ17Aを開状態とする。これにより、ストランド210の荷重が第1グリップ17Aに掛かっていた状態から、ストランド210の荷重が第2グリップ17Bに掛かる状態へと遷移する。
【0072】
次いで、制御装置は、図14(F)に示すように、油圧ジャッキ17Cをジャッキダウンする。
【0073】
次いで、制御装置は、図14(G)に示すように、第1グリップ17Aを閉状態とする。これにより、油圧ジャッキ17Cは図14(A)に示す状態と同様となる(但し、第1グリップ17A及び第2グリップ17Bがストランド210を把持している位置は異なる)。
【0074】
以降、図14(A)~図14(G)を繰り返すことにより、ストランド210を引き上げ続けることができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の風車施工用架台1は、風車100のタワー110の左右を挟む位置で昇降する昇降架台13と、昇降架台13に対して風車100の正面を前方とする前後方向に沿って設けられ、昇降架台13から前後方向に突出する長さのガーダ15と、ガーダ15を前後方向にスライドさせるチルクライマー22(「スライド手段」の一例)と、ガーダ15上を移動して風車100の部材(タワー部材111、ナセル120、ブレード130等)を吊り上げた状態で搬送する搬送装置16と、を備え、風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法では、昇降架台13を昇降させる際にガーダ15が風車100のブレード130と接触しない接触回避位置にガーダ15をスライドさせ(「接触回避工程」の一例)、ガーダ15が接触回避位置にある際に昇降架台13を昇降させる(「昇降工程」の一例)。
【0076】
したがって、風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法によれば、昇降架台13を昇降させる際に風車100のブレード130と接触しない接触回避位置にガーダ15がスライドさせられることから、昇降架台13の昇降時にガーダ15が風車100のブレード130と接触することを防ぐことができる。
【0077】
また、本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の解体施工方法では、ガーダ15がブレード130と接触しない位置までガーダ15を後方にスライドさせ(「接触回避工程」の一例)、昇降架台13を上昇させる(「昇降工程」の一例)。すなわち風車100を解体する際に、ガーダ15が前方に突出したまま昇降架台13をブレード130の下方から上昇させた場合、ガーダ15がブレード130と接触してしまうが、本実施形態の風車100の解体施工方法によれば、ガーダ15を後方にスライドさせてから昇降架台13を上昇させることから、ガーダ15がブレード130と接触することを回避することができる。
【0078】
一方、本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の組立施工方法では、ガーダ15がブレード130と接触しない位置までガーダ15を後方にスライドさせ(「接触回避工程」の一例)、昇降架台13を下降させる(「昇降工程」の一例)。すなわち風車100の組立施工における風車組み立て後の風車施工用架台1を撤去する際に、ガーダ15が前方に突出したまま昇降架台13をブレード130の上方から下降させた場合、ガーダ15がブレード130と接触してしまうが、本実施形態の風車100の組立施工方法によれば、ガーダ15を後方にスライドさせてから昇降架台13を下降させることから、ガーダ15がブレード130と接触することを回避することができる。
【0079】
さらに、本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法では、昇降架台13を昇降させる際において、昇降架台13、ガーダ15及び搬送装置16をそれぞれ相互に固定した状態で昇降架台13を昇降させる。これにより、昇降架台13の昇降時にガーダ15がスライドしたり、搬送装置16がガーダ15上を移動したりすることがなく、安全に昇降架台13を昇降させることができる。
【0080】
本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法では、ガーダ15をスライドさせる場合、及び、昇降架台13を昇降させる場合の少なくとも何れかの場合に、平面視した場合の昇降架台13の内側に搬送装置16が昇降架台13と相互に固定された状態で行う。ガーダ15をスライドさせる場合に、平面視した場合の昇降架台13の内側に搬送装置16を固定しておくことで、平面視した場合の昇降架台13からはみ出した位置に固定している場合と比較して、安定してガーダ15をスライドさせることができる。また、昇降架台13を昇降させる場合に、平面視した場合の昇降架台13の内側に搬送装置16を固定しておくことで、平面視した場合の昇降架台13からはみ出した位置に固定している場合と比較して、安定して昇降架台13を昇降させることができる。
【0081】
さらにまた、本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法では、少なくとも、平面視した場合の昇降架台13の外側で搬送装置16が風車100の部材を吊り上げ可能な位置までガーダ15を前方にスライドさせる(「搬送準備工程」の一例)。また、風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法は、搬送装置16が、平面視した場合の昇降架台13の内側と外側を移動して風車100の部材を搬送する(「搬送工程」の一例)。これにより、搬送装置16は、風車100を組み立てる場合であれば、平面視した昇降架台13の外側から内側に部材を搬送し、昇降架台13の内側で風車100を組み立てることができ、また、風車100を解体する場合であれば、平面視した昇降架台13の内側から外側に、昇降架台13の内側で解体した風車100の部材を搬出することができる。
【0082】
さらにまた、本実施形態の風車施工用架台1を用いた風車100の施工方法では、ガーダ15をスライドさせる場合には、昇降架台13と搬送装置16を相互に固定し、昇降架台13とガーダ15の相互の固定、及び、搬送装置16とガーダ15の相互の固定を解除した状態で、ガーダ15をスライドさせる。これにより、ガーダ15だけがスライド可能な状態となり、安定してガーダ15をスライドさせることができる。
【0083】
なお、本実施形態の風車施工用架台1は、ローラを有し、昇降架台13に固定されるチルタンク27B、27Cを備え、ガーダ15は水平に設けられた上フランジ15b及び下フランジ15aを有し、チルタンク27B、27Cは、ローラが下フランジ15aの上面に接する位置に固定される。これにより、ガーダ15の重心が平面視した場合の昇降架台13の外側に出ることによりガーダ15の反対側が浮き上がることを防止することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 風車施工用架台
11 支持架台
12 支持架台
13 昇降架台
13a 柱
14 昇降架台用ジャッキ
15 ガーダ
15a 下フランジ
15b 上フランジ
16 搬送装置
17 ジャッキ
17A 第1グリップ
17B 第2グリップ
17C 油圧ジャッキ
18 搬送装置固定用架構
19 カバープレート
20 ガイド
21 ストッパー
21a ワイヤー孔
22 チルクライマー
23 チルクライマー用梁
24 ワイヤー
25 目板
26 ボルト・ナット
27 チルタンク
28 接続ピン
29 昇降架台柱接続用プレート
29a ボルト孔
30 チルタンク取付部材
31 カバープレート接続部
32 ブルマン
33 搬送装置接続用ピン
34 目板
35 ジャッキ用梁
36 トロリ
37 ジャッキ用梁脚部
100 風車
110 タワー
111 タワー部材
120 ナセル
130 ブレード
200 風車施工用架台
210 ストランド
【要約】
【課題】昇降可能な昇降架台と、昇降架台に設けられたガーダと、ガーダ上を移動する搬送装置とを有し、風車の組み立てや解体に用いられる風車施工用架台であって、昇降架台の昇降時にガーダが風車のブレードと接触することのない風車施工用架台、及び、当該風車施工用架台を用いた風車の施工方法を提供する。
【解決手段】ガーダを前後方向にスライドさせるスライド手段を設け、昇降架台を昇降させる際にガーダが風車のブレードと接触しない接触回避位置にスライドさせる。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14